(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塩化ビニリデンポリマー粒子または塩化ビニルポリマー粒子と、該ポリマー粒子の表面上にコートされた凝固ラテックス添加剤とを含む、塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマー組成物を含む単層構造であって、
前記ラテックス添加剤コートポリマー粒子が乾燥されており、
塩化ビニリデンポリマーが、91〜94質量%の塩化ビニリデンおよび6〜9質量%のメチルアクリレートから得られたポリマー、または80〜85質量%の塩化ビニリデンおよび15〜20質量%の塩化ビニルから得られたポリマーである、単層構造。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ここで用いられるように、用語「バリアポリマー」は、酸素、二酸化炭素または水蒸気等の気体の通過を制限する能力を示すポリマーを言う。ここで用いられるように、用語「塩化ビニリデンポリマー」は、塩化ビニリデンのホモポリマー、更には、主成分が塩化ビニリデンであり、残部がそれと共重合可能な一つ以上のモノエチレン性不飽和のコモノマーである、コポリマーおよびターポリマーをも含む。ここで用いられるように、用語「塩化ビニルポリマー」は、塩化ビニルのホモポリマー、更には、主成分が塩化ビニルであり、残部がそれと共重合可能な一つ以上のモノエチレン性不飽和のコモノマーである、コポリマーおよびターポリマーをも含む。
【0042】
塩化ビニリデンポリマーに対して、重合される塩化ビニリデンモノマーの効果的な量は、一般にポリマーの60〜100重量パーセント(質量%)の範囲にある。
塩化ビニルポリマーに対して、重合される塩化ビニルモノマーの効果的な量は、一般にポリマーの60〜100重量パーセント(質量%)の範囲にある。
【0043】
本発明の実施において塩化ビニリデンポリマーおよび塩化ビニルポリマーを製造するために使用可能なモノエチレン性不飽和のモノマーは、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびアクリロニトリル、メタクリロニトリルを含む。好ましいモノエチレン性不飽和のモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートを含む。より好ましいモノエチレン性不飽和のモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびアルキル基につき1〜8個の炭素原子を有するアルキルメタクリレートおよびアルキルアクリレートを含む。最も望ましくは、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートは、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびメチルメタクリレートである。最も好ましいモノエチレン性不飽和のモノマーは、メチルアクリレートである。
【0044】
最も好ましい塩化ビニリデンポリマーは、91〜94重量パーセント(質量%)の塩化ビニリデン、および6〜9%のメチルアクリレートから形成されるポリマー、および80〜85重量パーセント(質量%)の塩化ビニリデンおよび15〜20重量パーセント(質量%)の塩化ビニルから形成されるポリマーを含む。最も好ましい塩化ビニルポリマーは、91〜94重量パーセント(質量%)の塩化ビニル、および6〜9重量パーセント(質量%)のメチルアクリレートから形成されるポリマー、および80〜85重量パーセント(質量%)の塩化ビニルおよび15〜20重量パーセント(質量%)の塩化ビニリデンから形成されるポリマーを含む。
【0045】
塩化ビニリデンポリマーは公知であり、商業的に入手可能である。乳化または懸濁重合法等によってそれらを製造するための方法も、当業者に良く知られている。例えば、米国特許第2,558,728号;第3,007,903号および第3,879,359号を参照。特にここで記述した場合を除き、重合条件(例えば温度および攪拌)は、塩化ビニリデンまたは塩化ビニルの重合において慣習的に使用されるものである。種々の成分の添加の順序は重要ではないが、開始剤および乳化剤または懸濁剤を含む完全な水性相を製造し、次いでモノマー相を加えることが好ましい。有利には、水性相の製造において、開始剤、可塑剤および他の適当な添加剤(例えば、キレート化剤および酸化防止剤等)の添加の前に、重合のために必要な水の約4分の3が反応器に添加される。水性相成分の添加のこの順序は、水中モノマー(monomer-in-water)懸濁重合の維持を助長する。
【0046】
典型的には、モノマーが水性相(水中モノマー相)に添加されるとき、実質的な無酸素状態で、モノマーのポリマーへの所望の転化を与えるのに充分な期間、その混合物が約25℃〜95℃の間の温度に攪拌しつつ加熱される。ポリマーへのモノマーの転化は、一般に50〜99パーセントの間である。
重合が完結した後、塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマーまたは樹脂粒子の水性懸濁液またはディスパージョンが形成される。モノマーを含まないディスパージョンを形成するために、95℃まで反応器を加熱しつつ、大気圧に反応器をベントすることによって、先ず残留モノマーを除去することが好ましい。そのディスパージョンは、次いでバッチストリッパーへ移され、そこで残っている残留モノマーが90℃で減圧(vacuum)ストリップされる。その後、ディスパージョンは冷却され、取り出され、脱水され、および樹脂は集められ、更に乾燥される。
【0047】
本発明の実施において使用可能なラテックス添加剤は、凝固可能な任意のポリマーラテックスを含み、メタブレン(Metablen)L−1000、エルフ・アトケム(Elf Atochem)ノースアメリカ社からラテックスの形で得られるアクリル系ポリマー等のアクリル系ポリマーラテックス;サラン(SARAN;商標)樹脂F−278等の塩化ビニリデンポリマーラテックス;ダウケミカル社から商業的に入手可能な塩化ビニリデンポリマーマーラテックス;スチレン/ブタジエンラテックス、メタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリレート−メタクリレート(全てアクリル系)、およびアクリレート−ブタジエン−メタクリレート(改質アクリル系)を含む、グラフト化された粒子状ゴム状ポリマー等の衝撃改質剤ラテックスを含む。これらのラテックス添加剤は、例えば、改良された衝撃抵抗性、酸素、二酸化炭素または水蒸気への改良されたバリア、および改良された押出適性等の好ましい性質をバリアポリマー上へ付与する。
【0048】
ポリマーラテックスを製造するための方法は、公知である。例えば、米国特許第3,108,984号を参照。典型的には、ラテックスは、過硫酸カリウムまたは過酸化水素等の重合開始剤の0.05〜5パーセントから、およびモノマーを乳化することができる界面活性剤の0.05パーセントからの水溶液中にモノマーを分散させることによって製造される。多くの界面活性剤が、公知である。重合は、乳化された混合物を通常35℃〜100℃の間で加熱することによって開始され、選ばれた温度で重合している乳化液を維持することによって継続される。重合がモノマーからポリマーへの所望の転化に到達した後、ラテックスは任意のプレ凝固物(precoagulum)を除去するために濾過され、必要に応じて、少量の界面活性剤の添加によって貯蔵のために安定化される。
【0049】
本発明において使用可能なラテックス添加剤の量は、塩化ビニリデンポリマー組成物の組成、塩化ビニリデンポリマー組成物が晒されるプロセシング条件、塩化ビニリデンポリマーの意図された用途、およびポリマーの添加剤に対する許容量に依存する。すなわち、ポリマーの物理的性質が容認できないレベルに悪影響を受ける前に、どれだけの量の添加剤を加えることができるかである。他の要素は、ポリマー処方およびコンパウンディング技術の専門家にとって明らかである。一般に、その量は、塩化ビニリデンポリマー組成物重量に基づき、0.1〜10、好ましくは0.2〜5、および最も好ましくは2重量パーセント(質量%)である。
【0050】
上述したように、塩化ビニリデンまたは塩化ビニルの重合が完結した後に、塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマーまたは樹脂粒子の水性懸濁液またはディスパージョンが形成される。
塩化ビニリデンポリマーまたは塩化ビニルポリマー粒子の水性ディスパージョンは、(1)脱水されたが乾燥されていない塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマーに、または乾燥した塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマーに水を加え、および(2)塩化ビニリデンポリマーまたは塩化ビニルポリマー粒子の水性ディスパージョンを形成するのに充分な温度で、混合物を攪拌することによっても形成することができる。
【0051】
ラテックス添加剤は、モノマーストリパー容器に、または残存性モノマーの減圧ストリップに充分な温度にポリマー樹脂粒子ディスパージョンが加熱されるようにモノマーストリパー容器に、塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマー樹脂粒子の水性ディスパージョンを移す前に重合反応器に加えるか、または残留モノマーが除去された後に、重合反応器またはモノマーストリパー容器に加えるかのいずれも可能である。
【0052】
脱水されたが乾燥されなかった塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマーから、または乾燥された塩化ビニリデンポリマーまたは塩化ビニルポリマー粒子から、形成された塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマー樹脂粒子の前述した水性ディスパージョンに、ラテックス添加剤を加えてもよい。
ラテックス添加剤を塩化ビニリデンポリマーまたは塩化ビニルポリマー粒子の水性ディスパージョンに加えた後に、ラテックス添加剤は、粒子をコートするためにポリマー粒子の表面で凝固される。ポリマー粒子の表面上のラテックス添加剤の凝固は、機械的手段により、またはラテックス添加剤を含む塩化ビニリデンポリマーまたは塩化ビニルポリマー粒子の水性ディスパージョンに化学凝固剤を加えることによって行うことができる。ラテックスコートされた塩化ビニリデンポリマーまたは塩化ビニルポリマー粒子のディスパージョンは、次いで冷却され、取り出され、脱水され、およびラテックスコートされた塩化ビニリデンポリマーまたは塩化ビニルポリマー粒子は集められ、更に乾燥される。
【0053】
本発明の実施において使用可能な凝固剤は、ラテックス技術において周知であり、金属性イオンの水溶性の無機塩を含む。中でも好ましい材料は、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび硫酸アルミニウムである。最も好ましい凝固剤は、塩化カルシウムである。ラテックスを凝固させるために必要な最小濃度が好ましいが、凝固剤は通常、0.5〜20重量パーセント(質量%)の量で使用される。
【0054】
例えば、熱安定剤、光安定剤、ピグメント、加工助剤および滑剤等の好ましい性質を付与する他の添加剤は、例えば単純な混合および撹拌等の任意の適当な技術によってラテックス添加剤中に取り込みまたは処方化することができる。このような添加剤の例は、ピグメント、クレー、タルク、ナノ充填剤、炭酸カルシウム、ステアラミドおよびワックスを含む。これらの添加剤は公知であり、個々のいくつかのタイプが商業的に入手可能である。
【0055】
本発明の方法によって製造される塩化ビニリデンポリマーまたは塩化ビニルポリマー組成物は、溶融処理されて、任意の適当な最終生産物(例えば、種々のフィルムまたは他の物品)に押出すことができる。当該技術において周知であるように、フィルムおよび物品は、例えば、フィードブロック共押出、マルチマニホールド・ダイ共押出、またはこれら二つの組み合わせ;射出成形;共射出(co-injection)成形;押出成形;キャスティング;ブローイング;ブロー成形;カレンダー加工;およびラミネーティング等の従来の共押出(coextrusion)で作製される。
【0056】
典型的な物品は、ブローされキャストされた、単層および多層フィルム;硬質および軟質容器;硬質および発泡体シート;チューブ;パイプ;ロッド;ファイバー;および種々のプロフィルを含む。ラミネーション技術は、特に多層のシートを製造するために適している。当該技術において公知であるように、特定のラミネーティング技術は融解(fusion);すなわち、それにより自己支持(self-sustaining)性の単層が、加熱および圧力の印加によって一緒に接着されること;湿式組み合わせ(wet combining)、すなわち、それにより2以上の層が、湿式で塗布されたタイコート接着剤を用いてラミネートされ、その液体が除去され、および、以降の圧力ラミネーションによって1つの連続プロセスで層が組み合わされること;または、加熱再活性化、すなわち、プレコートされたフィルムを加熱により他のフィルムと組み合わせ、プレコート接着剤を再活性化して、以降の圧力ラミネーティングの後、それが接着に対して受容性になるようにすることを含む。
【0057】
本発明の塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマー組成物は、食品、飲物、医薬および他の生鮮食料品の保存のために用いられる単層および多層両方の構造の軟質および硬質の容器の製作に、特に適している。このような容器は、良好な機械的性質、並びに、例えば、酸素、二酸化炭素、水蒸気、臭気体または香味体、炭化水素または農薬に対する低い透過性をも有するべきである。
【0058】
単層構造は、本発明の塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマー組成物を含む。
多層構造は、(1)有機ポリマーまたは2以上の異なる有機ポリマーのブレンドの1以上の層であって、一つの層の有機ポリマーが他の層の有機ポリマーと同じかまたは異なるものと、(2)本発明の塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマー組成物の1以上の層とを含む。
【0059】
多層構造は、(1)有機ポリマーまたは2以上の異なる有機ポリマーのブレンドの第1の外層と、(2)本発明の塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマー組成物のコア層と、(3)第1の外層の有機ポリマーと同じかまたは異なる有機ポリマーの第2の外層とを含む3層を含むことができる。
多層構造は、本発明の塩化ビニリデンまたは塩化ビニルポリマー組成物の1以上の層と、有機ポリマーまたは2以上の異なる有機ポリマーのブレンドを含む残りの層とを含み、一つの層の有機ポリマーが、他の層の有機ポリマーと同じまたは異なっている5または7個の層をも含むこともできる。
【0060】
組成および多層構造を製造する方法に従い、多層構造の隣接する層の間に接着剤層を配置する(interposed)ことができる。
本発明の実施において多層構造を製造するために使用可能な有機ポリマーは、ポリオレフィン、ポリアミド、芳香族モノマーに基づくポリマー、および塩素化ポリオレフィンを含む。
【0061】
ここで用いられるように、用語「ポリオレフィン」は、α−モノオレフィンおよび置換α−モノオレフィン、特に2〜20個の炭素原子を有する置換α−モノオレフィンまたはα−モノオレフィンのホモポリマーまたはコポリマーを含む。本発明の実施において多層のラミネート構造を製造するために使用可能なポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびそれらのコポリマーおよびブレンド、並びにエチレン−プロピレン−ジエン ターポリマーを含む。好ましいポリオレフィンは、ポリプロピレン、線状高密度ポリエチレン(HDPE)、ダウレックス(DOWLEX;商標)ポリエチレン樹脂(ダウケミカル社の商標)等の不均一に枝分れした線状の低密度ポリエチレン(LLDPE);アテーン(ATTANE;商標)ULDPE(ダウケミカル社の商標)等の不均一に枝分れした超低線密度ポリエチレン(ULDPE);タフマー(TAFMER;商標)(三井石油化学社の商標)およびイグザクト(EXACT;商標)(エクソンケミカル社の商標)等の均一に枝分れした線状のエチレン/α−オレフィンコポリマー;それぞれ炭化水素ゴムとポリオレフィンエラストマーの、ノーデル(NORDEL;登録商標)IP、およびエンゲージ(ENGAGE;登録商標)(デュポンダウエラストマー社のポリオレフィンエラストマーの商標、アフィニティ(AFFINITY;商標)(ダウケミカル社の商標)等の均一に枝分れした実質的に線状のエチレン/α−オレフィンポリマー;および、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマー(例えばプリマコア(PRIMACOR;商標)ダウケミカル社の商標)、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー(エスコレン(ESCORENENE;商標)ポリマー(エクソンケミカル社の商標);およびエルバックス(ELVAX;商標)(E.I.デュポンドヌムール社の商標)等)等の高圧フリーラジカル重合エチレンポリマーおよびコポリマーである。より好ましいポリオレフィンは、0.85〜0.99g/cm3の密度(ASTM D−792に従って測定)、1.5〜3.0の分子量分布(重量平均分子量(Mw)−数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)として記述される場合がある)、0.01〜100g/10分の測定されたメルトインデックス(ASTM D−1238(190/2.16)に従って測定)および6〜20のI 10/I 2(ASTM D−1238(190/10)に従って測定)を有する均一に枝分れした線状および実質的に線状のエチレンコポリマーである。
【0062】
エチレンポリマーの分子量分布は、示差屈折計および混合された多孔度の3個のカラムを備えているウォーターズ社の150℃高温クロマトグラフユニット上で、ゲル化浸透クロマトフィー(GPC)により決定される。それらのカラムは、ポリマー・ラボラトリーズ社により供給され、一般に103、104、105および106オングストローム(Å)のポアサイズでパックされている。溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、それから、サンプルの約0.3重量%(質量%)溶液が注入のために用意される。流速は、約1.0ミリリットル/分、ユニット操作温度は約140℃であり、注入サイズは約100マイクロリットルである。
【0063】
一般に、高密度ポリエチレン(HDPE)は、立方センチメータにつき、少なくとも約0.94グラム(g/cc)の密度(ASTM テスト法 D−1505)を有する。HDPEは、線状低密度ポリエチレンの製造と同様の技術を用いて、一般に製造される。このような技術は、米国特許第2,825,721号;第2,993,876号;第3,250,825号および第4,204,050号に記述されている。本発明の実施において使用される好ましいHDPEは、0.94〜0.99g/ccの密度およびASTM テスト法 D−1238によって決定される10分につき0.01〜35グラムのメルトインデックスを有する。
【0064】
本発明の実施において使用可能な芳香族モノマーに基づくポリマーは、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリエチルスチレン、スチレン/メチルスチレンコポリマーおよびスチレン/クロロスチレンコポリマーを含む。
本発明の実施において使用可能なポリアミドは、ナイロン−6、ナイロン−66およびナイロン12等の種々のグレードのナイロンを含む。
【0065】
本発明の実施において接着層を製造するために使用可能な接着性材料は、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン/エチルアクリル酸エステルコポリマー、イオノマー、米国特許第5,443,874号に記述された変性ポリオレフィン、米国特許第3,753,769号に記述されたアクリル系ベースのターポリマー接着剤、米国特許第4,447,494号に記述されたようにエポキシ樹脂と、酸性化されたアミノエチル化ビニルポリマーとを反応させることによって形成された接着剤を含む。より好ましい接着性材料は、アドマー(ADMER;三井石油化学社の商標)接着性樹脂等の無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンまたはポリプロピレン、またはエルバックス(商標)(デュポン社の商標)等のエチレン−酢酸ビニルコポリマー樹脂である。最も好ましい接着性材料は、6のメルトインデックス、28パーセント酢酸ビニルのコポリマーであるエルバックス(商標)3175である。本発明の単層および多層構造の厚さは、予期される用途に従って広い範囲内で可変である。一般に、本発明の単層構造は1.27〜254μm(0.05〜10ミル(mil))、好ましくは5.08〜152.4μm(0.2〜6ミル)、最も好ましくは10.16〜45.7μm(0.4〜1.8ミル)の厚さを有する。一般に、本発明の多層構造は1.27〜5080μm(0.05〜200ミル)、好ましくは25.4〜2540μm(1〜100ミル)、より好ましくは50.08〜2032μm(2〜80ミル)の厚さを有し、PVDCポリマー層は、0.0127〜50.8μm(0.005〜20ミル)、好ましくは5.1〜254μm(0.2〜10ミル)、最も好ましくは5.1〜203.2μm(0.2〜8.0ミル)の厚さを有する。
【0066】
本発明は塩化ビニリデンポリマーおよび塩化ビニルポリマーに関して特に記述されるが、全てが当該技術において公知であって、本発明の目的のためにそれらが参照される、エチレンビニルアルコールポリマー(EVOH)、ポリエステル、ポリアミドおよびアクリロニトリルポリマー等の他のバリアポリマーをも本発明は含む。
【0067】
本発明の実施において好適に使用可能なエチレンビニルアルコールポリマーは、20〜30モルパーセントのエチレンを含むものである。
本発明の実施において好適に使用可能なポリエステルは、ポリ(エチレン)テレフタレート(PET)である。PETは、エチレングリコールとテレフタル酸またはエチレングリコールとテレフタル酸ジメチルから製造される。
【0068】
本発明の実施において好適に使用可能なポリアミドは、上述したナイロン6、ナイロン66、ナイロン11およびナイロン12である。
本発明の実施において好適に使用可能なアクリロニトリルポリマーは、バレックス(BAREX)(商標)210、オハイオ州のBP ケミカルズによって製造されるゴム変性アクリロニトリル−メチルアクリレートコポリマー、およびロパック(LOPAC;商標)、高ニトリル アクリロニトリル−スチレンコポリマーである。
【0069】
本発明の好ましい多層フィルム構造は、ダウケミカル社の米国特許第3,524,795号、第4,643,927号、第5,002,989号、および第5,164,268号;W.R.グレース社の米国特許第5,030,511号、第5,202,188号、第5,538,770号、および第5,679,465号;ビスケース(Viskase)社の米国特許第4,740,400号、第4、63,784号、第4,911,963号、第4,988,465号、および第5,077,109号;アメリカン・ナショナル・キャン社の米国特許第5,424,347号;アメリカン・ナショナル・キャン社の米国特許第4,057,667号;三菱瓦斯化学社の米国特許第4,868,026号;および東洋製罐社の米国特許第5,084,500号において開示された多層フィルムにおけるバリア層樹脂を、本発明のラテックスコートされたバリア樹脂で置換することによって得ることができるものである。最も好ましい多層フィルム構造は、ダウケミカル社の米国特許第3,524,795号、第4,643,927号、第5,002,989号、および第5,164,268号において開示された多層フィルムにおけるバリア層樹脂を、本発明のラテックスコートされたバリア樹脂で置換することによって得ることができるものである。
【0070】
バリアポリマーに加えて、水中または適当な非水溶媒中に懸濁または分散可能な他のポリマーも、本発明に従ってラテックス添加剤によりコートすることができる。このようなポリマーは、エチレン/酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン/アクリル酸、エチレン/メタクリル酸、およびポリメチルメタクリレート;固体触媒、固体金属、クレー、マイカ、ナノ充填剤、サンド、鉱石、ピグメント、染料、およびワックス等の粉体有機物質を含む。
【0071】
水または非水溶媒中のポリマー粒子のディスパージョンまたは懸濁液は、一様なディスパージョンまたは懸濁液を与えるための充分な攪拌を用いて、乾燥粉末、小球(prill)またはペレット混合物としてポリマー粒子を溶媒に加えることによって製造することができる。任意のプレ分散された添加剤と一緒に、ラテックス添加剤は次いでポリマー粒子ディスパージョンまたは懸濁液に加えられ、続いてポリマー粒子上へラテックス添加剤を凝固させることができる。
【0072】
本発明は、以下の例によって更に詳細に説明される。それらの例は、説明のみの目的であり、本発明の範囲を制限するように解釈されるべきでない。特に断らない限り、全ての部およびパーセンテージは重量(質量)基準である。
【実施例】
【0073】
例1
2000mLのビーカーに、脱水されたが、乾燥されなかった(460g)塩化ビニリデンコポリマー(91.5重量パーセント(質量%)の塩化ビニリデン/l8.5重量パーセント(質量%)のメチルアクリレート)樹脂および水(467g)を加えた。混合物を、磁気撹拌機で攪拌し、90℃まで加熱した。メタブレンL−1000ラテックス、50パーセント固体(16g)を加え、2分間攪拌させた。ラテックスを化学的に凝固させるために、塩化カルシウム、35パーセント(6g)を加えた。水が再びクリヤーになることによって決定されるように、凝固は2分で完結した。ラテックスコート樹脂を脱水して、60℃で一晩中乾燥させた。ラテックスコート樹脂の化学分析により、絶乾(bone dry)の樹脂固体に基づき、1.96重量パーセント(質量%)のメタブレンL−1000であると判明した。メタブレンL−1000ラテックスは、エルフ アトケム・ノースアメリカ社から得られるアクリル系ポリマーラテックスであって、
2−メチルブチル 2−プロペネート、ブチル 2−プロペネート/メチル 2−メチル−2−プロペネート(propenoate)
の三元ポリマー、およびラウリル硫酸ナトリウムを含む。
【0074】
単層および多層フィルムのサンプルを、上述した塩化ビニリデン/メチルアクリレート樹脂から調製した。これらのフィルムサンプルの外観検査は、樹脂粒子凝集物がフィルム内に無いことを示した。
例2
メタブレンL−1000ラテックスに代えてサラン(SARAN;商標)樹脂F−278ラテックスを用いた以外は、例1で記述した手順に従った。サラン(商標)樹脂F−278は、7.3重量%(質量%)のメタクリロニトリル、3.2重量%(質量%)のメチルメタクリレート、および89.5重量%(質量%)の塩化ビニリデンを含む塩化ビニリデンポリマーラテックスである。
【0075】
単層および多層フィルムのサンプルを、上述した塩化ビニリデン/メチルアクリレート樹脂から調製した。これらのフィルムサンプルの外観検査は、樹脂粒子凝集物がフィルム内に無いことを示した。