(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909009
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】塩化ポリ(プロピレンカーボネート)、及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 64/42 20060101AFI20160412BHJP
C08G 64/02 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
C08G64/42
C08G64/02
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-82312(P2015-82312)
(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-206040(P2015-206040A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】201410155108.8
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512071123
【氏名又は名称】中国科学院▲長▼春▲応▼用化学研究所
【氏名又は名称原語表記】CHANGCHUN INSTITUTE OF APPLIED CHEMISTRY,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】姜 ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 桂▲艶▼
(72)【発明者】
【氏名】董 ▲麗▼松
(72)【発明者】
【氏名】金 晶
(72)【発明者】
【氏名】崔 杰
【審査官】
井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−084123(JP,A)
【文献】
特表2016−501287(JP,A)
【文献】
特表2014−501316(JP,A)
【文献】
特開2013−216808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63/00−64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)。
【化1】
(但し、xが0〜3の整数であり、yが0〜2の整数であり、nが重合度である。)
【請求項2】
前記nが50〜5000であることを特徴とする、請求項1に記載の塩化ポリ(プロピレンカーボネート)。
【請求項3】
ポリ(プロピレンカーボネート)を第1分散剤と混合し、塩素ガスを導入して反応させ、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることを含むことを特徴とする、塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製方法。
【化2】
(但し、xが0〜3の整数であり、yが0〜2の整数であり、nが重合度である。)
【請求項4】
前記ポリ(プロピレンカーボネート)と分散剤とが、質量比で、100:(0.1〜10)であることを特徴とする、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
ポリ(プロピレンカーボネート)を有機溶剤と混合し、塩素ガスを導入して反応させ、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることを含むことを特徴とする、塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製方法。
【化3】
(但し、xが0〜3の整数であり、yが0〜2の整数であり、nが重合度である。)
【請求項6】
過酸化物、アゾ系化合物、t−ブチルパーオキシベンゾエート、過硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルp−トルイジン、及び、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジンから選ばれた一種類又は複数種類の第1開始剤が、さらに含まれることを特徴とする、請求項3又は5に記載の調製方法。
【請求項7】
ポリ(プロピレンカーボネート)、乳化促進剤、第2分散剤を、水と混合し、塩素ガスを導入して反応させ、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることを含むことを特徴とする、塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製方法。
【化4】
(但し、xが0〜3の整数であり、yが0〜2の整数であり、nが重合度である。)
【請求項8】
過酸化水素−亜硝酸ナトリウム系、過酸化水素−硝酸第一鉄系、過酸化水素−硝酸銀系、過酸化水素−亜硫酸水素ナトリウム系、過酸化水素−硫酸第一鉄アンモニウム系、過硫酸塩−亜硫酸塩系、過硫酸塩−チオール系、ジベンゾイルペルオキシド−硫酸第一鉄塩系、ジベンゾイルペルオキシド−蟻酸系、ジベンゾイルペルオキシド−チオール系、ジベンゾイルペルオキシド−チオフェノール系、ラウロイルペルオキシド−硫酸第一鉄塩系、ラウロイルペルオキシド−蟻酸系、ラウロイルペルオキシド−チオール系、ラウロイルペルオキシド−チオフェノール系、クメンヒドロペルオキシド−第一鉄塩系、クメンヒドロペルオキシド−ジヒドロキシアセトン系、クメンヒドロペルオキシド誘導体−第一鉄塩系、クメンヒドロペルオキシド誘導体−ジヒドロキシアセトン系、フランヒドロペルオキシド−第一鉄塩系、フランヒドロペルオキシド−ジヒドロキシアセトン系、t−ブチルヒドロペルオキシド−第一鉄塩系、及び、t−ブチルヒドロペルオキシド−ジヒドロキシアセトン系から選ばれた一種類又は複数種類の第2開始剤が、さらに含まれることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記乳化促進剤が、ポリオキシエチレン脂肪族アルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、及び、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテルから選ばれた一種類又は複数種類であることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
【請求項10】
前記ポリ(プロピレンカーボネート)と、乳化促進剤と、第2分散剤とが、質量比で、100:(0.1〜10):(0.1〜10)であることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明では、高分子材料技術分野に属し、特に、塩化ポリ(プロピレンカーボネート)及びその調製方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、無尽蔵な、尽きることない安価な化学工業の原材料であり、二酸化炭素を規模的に化学工業の材料に固定することが、既に世界中注目されてきた。1969年から、Inoueらは、二酸化炭素とエポキシ化合物とを共重合して高分子量の脂肪族ポリカーボネートを合成して以来、二酸化炭素とエポキシ化物との共重合に係る検討が深く入り込まれて進んでいて、二酸化炭素を原材料として高分子材料を合成することも、高分子科学分野の検討ホットポイントになっている。ポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)は、二酸化炭素−エポキシプロパンの交互共重合体であり、生分解性的な、環境友好な材料に属する。
【0003】
現在、二酸化炭素とエポキシ化物との共重合生成物、即ち、ポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)が既に工業化的な生産段階に入っているが、その自身のガラス転移温度(Tg)が、通常30℃〜40℃にあり、且つアモルファス状態であることから、低温脆性が大きく、高温寸法の安定性が劣るなどの欠陥があって、単独でプラスチックとしての使用が困難であり、一般的には、ゴム又はプラスチックの改質剤として用いられ、広範囲的な推し広めや適用に制限が受けている。
【0004】
公開番号がCN1176269である中国特許には、優れた耐熱性能及び力学性能を有する改質スチレン・ブタジエンゴムを提供することができるだけではなく、且つ安価なの脂肪族ポリカーボネート改質スチレン・ブタジエンゴムを採用した脂肪族ポリカーボネートスチレン・ブタジエンゴムの改質方法が開示されている。中でも、脂肪族ポリカーボネートは、二酸化炭素の共重合により合成され、改良された製品のコストが純スチレン・ブタジエンゴムに近づく。脂肪族カーボネートの広範囲的な適用が、新たな資源を開拓し、化学工業の原材料の欠乏状况を緩和することができるだけではなく、二酸化炭素の大気中における含有量の制御、世界的な温室効果の緩和、生態環境の保護に対しても重大な意義を持っている。
【0005】
公開番号がCN1436812Aである中国特許には、一種類又は複数種類のポリヒドロキシアルカン酸エステルを100重量部、ポリ(プロピレンカーボネート)を10〜100重量部、可塑剤を10〜100重量部、酸化防止剤を1〜3重量部、核剤を1〜4重量部、先に予備混合しており、さらにポリヒドロキシアルカン酸エステルの溶融温度で混合し造粒することにより得られたポリヒドロキシアルカン酸エステルとポリ(プロピレンカーボネート)の複合物が開示されている。当該複合物では、ポリヒドロキシアルカン酸エステルとポリ(プロピレンカーボネート)の利点を兼ねて、ポリヒドロキシアルカン酸エステルの脆性を改善し、良好な総合的な力学性能を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】CN1176269
【特許文献2】CN1436812A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑み、本発明が解决しようとする技術問題点は、広く適用できる塩化ポリ(プロピレンカーボネート)、及びその調製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を提供する。
【0009】
【化1】
【0010】
(但し、xが0〜3の整数であり、yが0〜2の整数であり、nが重合度である。)
【0011】
好ましくは、前記のnが50〜5000である。
【0012】
また、本発明では、ポリ(プロピレンカーボネート)を第1分散剤と混合し、塩素ガスを導入して反応させ、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることを含む、塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製方法を提供する。
【0013】
【化2】
【0014】
(但し、xが0〜3の整数であり、yが0〜2の整数であり、nが重合度である。)
【0015】
好ましくは、前記ポリ(プロピレンカーボネート)と分散剤とが、質量比で、100:(0.1〜10)である。
【0016】
また、本発明では、ポリ(プロピレンカーボネート)を有機溶剤と混合し、塩素ガスを導入して反応させ、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることを含む、塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製方法を提供する。
【0017】
【化3】
【0018】
(但し、xが0〜3の整数であり、yが0〜2の整数であり、nが重合度である。)
【0019】
好ましくは、過酸化物、アゾ系化合物、t−ブチルパーオキシベンゾエート、過硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルp−トルイジン、及び、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジンから選ばれた一種類又は複数種類の第1開始剤が、さらに含まれる。
【0020】
また、本発明では、ポリ(プロピレンカーボネート)、乳化促進剤、第2分散剤を、水と混合し、塩素ガスを導入して反応させ、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることを含む、塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製方法を提供する。
【0021】
【化4】
【0022】
(但し、xが0〜3の整数であり、yが0〜2の整数であり、nが重合度である。)
【0023】
好ましくは、過酸化水素−亜硝酸ナトリウム系、過酸化水素−硝酸第一鉄系、過酸化水素−硝酸銀系、過酸化水素−亜硫酸水素ナトリウム系、過酸化水素−硫酸第一鉄アンモニウム系、過硫酸塩−亜硫酸塩系、過硫酸塩−チオール系、ジベンゾイルペルオキシド−硫酸第一鉄塩系、ジベンゾイルペルオキシド−蟻酸系、ジベンゾイルペルオキシド−チオール系、ジベンゾイルペルオキシド−チオフェノール系、ラウロイルペルオキシド−硫酸第一鉄塩系、ラウロイルペルオキシド−蟻酸系、ラウロイルペルオキシド−チオール系、ラウロイルペルオキシド−チオフェノール系、クメンヒドロペルオキシド−第一鉄塩系、クメンヒドロペルオキシド−ジヒドロキシアセトン系、クメンヒドロペルオキシド誘導体−第一鉄塩系、クメンヒドロペルオキシド誘導体−ジヒドロキシアセトン系、フランヒドロペルオキシド−第一鉄塩系、フランヒドロペルオキシド−ジヒドロキシアセトン系、t−ブチルヒドロペルオキシド−第一鉄塩系、及び、t−ブチルヒドロペルオキシド−ジヒドロキシアセトン系から選ばれた一種類又は複数種類の第2開始剤が、さらに含まれる。
【0024】
好ましくは、前記乳化促進剤が、ポリオキシエチレン脂肪族アルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、及び、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテルから選ばれた一種類又は複数種類である。
好ましくは、前記ポリ(プロピレンカーボネート)と、乳化促進剤と、第2分散剤とが、質量比で、100:(0.1〜10):(0.1〜10)である。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)及びその調製方法を提供する。従来のポリ(プロピレンカーボネート)と較べて、塩化ポリ(プロピレンカーボネート)では、塩素原子の存在により、強い電気陰性度が有し、塩化ポリ(プロピレンカーボネート)とその他の極性材料との相互作用を強めることができ、相溶剤、粘着剤、塗料、インクなどとして広く適用し得る。塩素原子の導入後、塩化ポリ(プロピレンカーボネート)同士に水素結合の相互作用を発生させ、さらに、その加工性能と力学性能のいずれも改善され、そして、塩素原子が塩化ポリ(プロピレンカーボネート)材料の難燃性能を改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の固相法による式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製のプロセスフローチャートである。
【
図2】本発明の溶液法による式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製のプロセスフローチャートである。
【
図3】本発明の水相懸濁法による式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製のプロセスフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例1に用いたポリ(プロピレンカーボネート)の走査型電子顕微鏡のエネルギースペクトル解析のスペクトログラムである。
【
図5】本発明の実施例1で調製された塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の走査型電子顕微鏡のエネルギースペクトル解析のスペクトログラムである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明では、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を提供する。
【0029】
但し、xが0〜3の整数であり、好ましくは1〜2の整数である。yが0〜2の整数であり、好ましくは1〜2の整数である。nが重合度であり、好ましくは50〜5000である。
【0030】
また、本発明では、ポリ(プロピレンカーボネート)を第1分散剤と混合し、塩素ガスを導入して反応させ、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることを含む、上記の式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の固相調製方法を提供する。
【0031】
なお、本発明において、あらゆる原材料の出所に対して特な制限はないが、販売品であればよい。
【0032】
前記の第1分散剤は、当業者がよく知っている分散剤であればよく、特な制限はないが、本発明において、好ましくは、ホワイトカーボンブラックである。前記ポリ(プロピレンカーボネート)と第1分散剤とが、質量比で100:(0.1〜10)の割合で混合することが好ましく、100:(0.5〜6)であることがより好ましい。
【0033】
ポリ(プロピレンカーボネート)と第1分散剤とを混合した後、塩素ガスを導入して反応させ、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得る、固相法のプロセスフローチャートを
図1に示す。助剤が、第1分散剤と第1開始剤からなる。中でも、前記の塩素ガスとポリ(プロピレンカーボネート)とのモル比が(1〜6):1であることが好ましい。前記反応の温度が−10℃〜100℃であることが好ましく、0℃〜80℃であることがより好ましく、10℃〜60℃であることが更に好ましい。前記反応の時間が10〜300分であることが好ましく、50〜200分であることがより好ましい。
【0034】
前記反応の温度がポリ(プロピレンカーボネート)のガラス転移温度より低い際に(30℃〜40℃)、第1開始剤を添加することが好ましい。前記の第1開始剤では、過酸化物、アゾ系化合物、t−ブチルパーオキシベンゾエート、過硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルp−トルイジン、及び、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジンのうちの一種類又は複数種類であることが好ましく、酸化性の開始剤と還元性の開始剤との混合であることがより好ましい。中でも、酸化性の開始剤と還元性の開始剤とのモル比が1を超えることが好ましい。前記の酸化性の開始剤が、過酸化物及び/又はt−ブチルパーオキシベンゾエートであることが好ましく、ジベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及び、t−ブチルパーオキシベンゾエートのうちの一種類又は複数種類であることがより好ましい。前記の還元性の開始剤が、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ビスメチルp−トルイジン、及び、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジンのうちの一種類又は複数種類であることが好ましい。前記の第1開始剤の質量が、ポリ(プロピレンカーボネート)の質量の0.01%〜5%であることが好ましく、0.1%〜5%であることがより好ましい。
【0035】
前記反応の温度がアルキレンカーボネートのガラス転移温度より高い際に、第1開始剤を添加しなくてもよい。熱開始又は紫外線開始の条件で反応することができる。反応の発生を速めるため、第1開始剤を添加してもよい。この場合、第1開始剤では、ジベンゾイルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、及び、過硫酸カリウムのうちの一種類又は複数種類であることが好ましい。前記の第1開始剤の質量では、ポリ(プロピレンカーボネート)の質量の0.01%〜5%であることが好ましく、0.1%〜3%であることがより好ましい。
【0036】
また、本発明では、ポリ(プロピレンカーボネート)を有機溶剤と混合し、塩素ガスを導入して反応させ、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることを含む、溶液法による式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製方法を提供する。
【0037】
なお、前記の有機溶剤が、当業者によく知られている、ポリ(プロピレンカーボネート)を溶解できる有機溶剤であればよく、特な制限はないが、本発明において四塩化炭素であることが好ましい。前記のポリ(プロピレンカーボネート)の質量と有機溶剤の容積との比が、1g:(5〜20)mlであることが好ましく、1g:(8〜15)mlであることがより好ましい。
【0038】
ポリ(プロピレンカーボネート)と有機溶剤とを混合した後、塩素ガスを導入して反応させる。中でも、前記の塩素ガスとポリ(プロピレンカーボネート)とのモル比が、(1〜6):1であることが好ましい。前記反応の温度が、−10℃〜100℃であることが好ましく、0℃〜80℃であることがより好ましく、10℃〜60℃であることが更に好ましい。前記反応の時間が、10〜300分であることが好ましく、50〜200分であることがより好ましい。
【0039】
前記反応の温度がポリ(プロピレンカーボネート)のガラス転移温度より低い際に(30℃〜40℃)、第1開始剤を添加することが好ましい。前記の第1開始剤では、過酸化物、アゾ系化合物、t−ブチルパーオキシベンゾエート、過硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルp−トルイジン、及び、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジンのうちの一種類又は複数種類であることが好ましく、酸化性の開始剤と還元性の開始剤との混合であることがより好ましい。中でも、酸化性の開始剤と還元性の開始剤とのモル比が1を超えることが好ましい。前記の酸化性の開始剤では、過酸化物及び/又はt−ブチルパーオキシベンゾエートであることが好ましく、ジベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及び、t−ブチルパーオキシベンゾエートのうちの一種類又は複数種類であることがより好ましい。前記の還元性の開始剤では、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ビスメチルp−トルイジン、及び、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジンのうちの一種類又は複数種類であることが好ましい。前記の第1開始剤の質量が、ポリ(プロピレンカーボネート)の質量の0.01%〜5%であることが好ましく、0.1%〜5%であることがより好ましい。
【0040】
前記反応の温度がアルキレンカーボネートのガラス転移温度より高い際に、第1開始剤を添加しなくてもよい。熱開始又は紫外線開始の条件で反応することができる。反応の発生を速めるため、第1開始剤を添加してもよい。この場合、第1開始剤では、ジベンゾイルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、及び、過硫酸カリウムのうちの一種類又は複数種類であることが好ましい。前記の第1開始剤の質量では、ポリ(プロピレンカーボネート)の質量の0.01%〜5%であることが好ましく、0.1%〜3%であることがより好ましい。
【0041】
反応後、有機溶剤を除去させ、乾燥して、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることが好ましい。当該溶液法のプロセスフローチャートを
図2に示す。
【0042】
また、本発明では、ポリ(プロピレンカーボネート)、乳化促進剤、第2分散剤を、水と混合し、塩素ガスを導入して反応させ、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることを含む、水相懸濁法による式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)の調製方法を提供する。
【0043】
中でも、前記の乳化促進剤では、当業者によく知られている乳化促進剤であればよく、特な制限はないが、本発明において、ポリオキシエチレン脂肪族アルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、及び、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテルのうちの一種類又は複数種類であることが好ましい。前記の第2分散剤では、当業者によく知られている分散剤であればよく、特な制限はないが、本発明において、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体のうちの一種類又は複数種類であることがより好ましい。前記のポリ(プロピレンカーボネート)、乳化促進剤、及び、第2分散剤の質量比が、100:(0.1〜10):(0.1〜10)であることが好ましい。前記のポリ(プロピレンカーボネート)の質量と水の容積との比が、1:(10〜30)であることが好ましく、1:(15〜25)であることがより好ましい。
【0044】
また、ポリ(プロピレンカーボネート)、乳化促進剤、及び第2分散剤を、水と混合した後、第二開始剤を添加することが好ましい。前記の第2開始剤では、過酸化水素−亜硝酸ナトリウム系、過酸化水素−硝酸第一鉄系、過酸化水素−硝酸銀系、過酸化水素−亜硫酸水素ナトリウム系、過酸化水素−硫酸第一鉄アンモニウム系、過硫酸塩−亜硫酸塩系、過硫酸塩−チオール系、ジベンゾイルペルオキシド−硫酸第一鉄塩系、ジベンゾイルペルオキシド−蟻酸系、ジベンゾイルペルオキシド−チオール系、ジベンゾイルペルオキシド−チオフェノール系、ラウロイルペルオキシド−硫酸第一鉄塩系、ラウロイルペルオキシド−蟻酸体系、ラウロイルペルオキシド−チオール系、ラウロイルペルオキシド−チオフェノール系、クメンヒドロペルオキシド−第一鉄塩系、クメンヒドロペルオキシド−ジヒドロキシアセトン系、クメンヒドロペルオキシド誘導体−第一鉄塩体系、クメンヒドロペルオキシド誘導体−ジヒドロキシアセトン系、フランヒドロペルオキシド−第一鉄塩系、フランヒドロペルオキシド−ジヒドロキシアセトン系、t−ブチルヒドロペルオキシド−第一鉄塩系、及び、t−ブチルヒドロペルオキシド−ジヒドロキシアセトン系のうちの一種類又は複数種類であることが好ましい。前記の第2開始剤と、ポリ(プロピレンカーボネート)とが、質量比で(0.01〜2):100であることが好ましく、(0.1〜2):100であることがより好ましい。
【0045】
第2開始剤を添加しない場合、熱開始又は紫外線開始の条件で反応することができる。
【0046】
塩素ガスを導入して反応させる。中でも、前記の塩素ガスとポリ(プロピレンカーボネート)とのモル比が、(1〜6):1であることが好ましい。前記反応の温度が、4℃〜80℃であることが好ましく、10℃〜60℃であることがより好ましく、30℃〜60℃であることが更に好ましい。前記反応の時間が、10〜300分であることが好ましく、50〜200分であることがより好ましくい。
【0047】
反応後、アルコール類物質を添加して生成物を析出させ、洗浄し、乾燥した後、式(I)で表される塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得ることが好ましく、メタノールを添加して生成物を析出させることがより好ましい。この場合、水相懸濁法によるプロセスフローチャートを
図3に示す。
【0048】
更に本発明を説明するために、以下、実施例を組み合わせて本発明により提供された塩化ポリ(プロピレンカーボネート)、及びその調製方法を詳しく述べる。
【0049】
以下、実施例に用いられた試薬は、いずれも市販されているものである。
【実施例】
【0050】
実施例1
60目のポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)粉末を100g、ベンゾイルパーオキサイドとキシリジンとの混合物(ベンゾイルパーオキサイドとキシリジンとのモル比が、1.5:1)を0.5g、及び、ホワイトカーボンブラックを5g、反応容器に入れて、氷浴の条件で攪拌して徐々に温度を降ろした。温度が15℃より低くなった場合には、塩素ガスを導入し始めた。温度が10℃になるまでに、塩素ガスの導入量が塩素ガスの導入全量の60%になるようにした。さらに、続いて10℃まで温度を降ろし、塩素ガスの導入量が導入全量の95%になるようにした。最後の5%塩素ガスを、温度が5℃に降下した時に導入した。塩素ガスの導入全量が240gになった。反応を2時間行い、さらに清浄な空気で反応瓶に残った塩素ガスを追い出し、塩素の含有量が9%の白色粉末状の塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得た。
【0051】
実施例1に用いたポリ(プロピレンカーボネート)をシリコーンシートに塗膜し、走査型電子顕微鏡により解析を行い、その走査型電子顕微鏡によるエネルギースペクトル解析のスペクトログラムを得た。
図4のように示された。
【0052】
実施例1で得られた塩化ポリ(プロピレンカーボネート)をシリコーンシートに塗膜し、走査型電子顕微鏡により解析を行い、その走査型電子顕微鏡によるエネルギースペクトル解析のスペクトログラムを得た。
図5のように示された。
【0053】
実施例1に用いたポリ(プロピレンカーボネート)をシリコーンシートに塗膜した後、水接触角テストを行ったところ、その接触角は90°であった。
【0054】
実施例1で得られた塩化ポリ(プロピレンカーボネート)をシリコーンシートに塗膜した後、水接触角テストを行ったところ、その接触角は65°であった。塩化ポリ(プロピレンカーボネート)では、ポリ(プロピレンカーボネート)と較べて、極性が増加したことを示した。
【0055】
実施例2
60目のポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)粉末を100g、反応容器に入れて、氷浴の条件で徐々に温度を降ろし、さらにベンゾイルパーオキサイドとキシリジンとの混合物(ベンゾイルパーオキサイドとキシリジンとのモル比が、1.5:1)を0.3g、及び、ホワイトカーボンブラックを5g、添加し、塩素ガスを導入した後、徐々に室温に降りた。塩素ガスの導入全量が240gになった。反応を2時間行い、さらに清浄な空気で反応瓶に残った塩素ガスを追い出し、塩素の含有量が12%の白色粉末状の塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得た。
【0056】
実施例3
60目のポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)粉末を100g、ベンゾイルパーオキサイドを0.4g、及び、ホワイトカーボンブラックを5g、反応容器に入れて、塩素ガスを導入し、温度を55℃に上げた。塩素ガスの導入全量が240gになった。反応を2時間行い、さらに清浄な空気で反応瓶に残った塩素ガスを追い出し、塩素の含有量が24%の白色粉末状の塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得た。
【0057】
実施例4
60目のポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)粉末を100g、及び、ホワイトカーボンブラックを5g、反応容器に入れて、紫外線の照射において塩素ガスを導入し、温度を30℃に上げた。塩素ガスの導入全量が240gになった。反応を2時間行い、さらに清浄な空気で反応瓶に残った塩素ガスを追い出し、塩素の含有量が9%の白色粉末状の塩化ポリ(プロピレンカーボネート)を得た。
【0058】
以上に記載されたのは、本発明の望ましい実施方式だけである。本技術分野における普通の技術者に対しては、本発明の原理を超えない前提で、幾つかの改善や修飾を行うことができること、いうまでもない。これらの改善や修飾も本発明の保護範囲と見なすべきである。