特許第5909022号(P5909022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909022
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】フィルム外装電池の検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20160412BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20160412BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   H01M10/48 P
   H01M10/04 Z
   H01M2/02 K
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-506501(P2015-506501)
(86)(22)【出願日】2013年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2013058265
(87)【国際公開番号】WO2014147808
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】オートモーティブエナジーサプライ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】萬久 俊彦
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/040446(WO,A1)
【文献】 特開2002−164557(JP,A)
【文献】 特開2009−54300(JP,A)
【文献】 特開2010−32346(JP,A)
【文献】 特開2009−243929(JP,A)
【文献】 特開2008−243439(JP,A)
【文献】 特開2001−236985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00−27/32
31/36
H01M 2/00−2/08
10/00−10/04
10/06−10/34
10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板および負極板をセパレータを介して積層してなる発電要素が、金属層の少なくとも内側表面に合成樹脂層をラミネートしたラミネートフィルムからなる外装体の内部に電解液とともに収容され、端子を導出した状態で上記外装体が密封されてなる偏平なフィルム外装電池の検査方法であって、
上記発電要素の積層方向に沿って上記外装体を外側から加圧し、この加圧状態において、上記端子と上記金属層との間で絶縁不良検査を行う、フィルム外装電池の検査方法。
【請求項2】
上記積層方向に沿った平面視において上記外装体の表面を複数の領域に区分し、各領域毎に加圧して、各々の加圧状態において上記絶縁不良検査を行う、請求項1に記載のフィルム外装電池の検査方法。
【請求項3】
各回の加圧領域の総和が、少なくとも上記発電要素を覆う上記外装体の範囲の全体を含んでいる、請求項2に記載のフィルム外装電池の検査方法。
【請求項4】
電解液を充填しかつ外装体をシールしたフィルム外装電池を、第1の検査ステージに搬送し、
第1の検査ステージにおいて、上記発電要素を覆う上記外装体の範囲の一部に対応した加圧面を有する加圧バーによって上記外装体を加圧しつつ、上記金属層と端子との間で第1の絶縁不良検査を行い、
フィルム外装電池を第2の検査ステージに搬送し、
第2の検査ステージにおいて、上記範囲の残部に対応した加圧面を有する加圧バーによって上記外装体を加圧しつつ、上記金属層と端子との間で第2の絶縁不良検査を行う、
請求項1に記載のフィルム外装電池の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラミネートフィルムを外装体とした偏平なフィルム外装電池に関し、特に、内部の発電要素の電極とラミネートフィルムの金属層との間の絶縁状態を検査する検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属層の表面に合成樹脂層がラミネートされたラミネートフィルムを外装体として用い、正極板、負極板およびセパレータを複数積層してなる発電要素を、電解液とともに内部に収容した、偏平形状をなすフィルム外装電池が知られている(特許文献1,2)。
【0003】
この種のフィルム外装電池は、例えばリチウムイオン電池などとして用いられるが、特許文献2には、リチウムイオン電池として構成したフィルム外装電池の完成後に、外装体の接合面から導出された金属端子と外装体の金属層との間の絶縁を検査することが開示されている。この特許文献2においては、発電要素をラミネートフィルムからなる外装体内に収容して金属端子周囲をヒートシールした後(電解液充填前)に、金属端子と外装体の金属層との間にインパルス電圧を印加して第1の絶縁不良検査を行い、さらに、電解液を充填して外装体を完全に封止した後に、同様にインパルス電圧を印加して第2の絶縁不良検査を行っている。
【0004】
発電要素の電極と外装体の金属層との間の絶縁は、当然のことながら、電池として使用している状況下で担保されている必要があり、従って、絶縁不良検査としては、できるだけ実際の電池の使用状態に近い状態で行うことが望ましい。ここで、上記特許文献2の検査方法においては、ラミネートフィルムからなる外装体の内部に電解液を充填し外装体を封止した後に絶縁不良検査を行っているが、この検査の際に、検査対象となるフィルム外装電池が自由状態に置かれている。
【0005】
しかし、偏平形状をなすフィルム外装電池を複数積層した状態で使用する場合、フィルム外装電池の移動を防止するため、等により、外装体の主面と直交する方向(つまり正極板等の積層方向)に多少の加圧力を受けた状態で使用されることが考えられる。また、個々のフィルム外装電池の完成後における搬送やバッテリモジュールとして組み立てる際の取り扱い中などに加圧力を受けることもある。ラミネートフィルムからなる外装体は可撓性を有するので、このような外部からの力によって撓み変形し、内部の発電要素も積層方向に圧縮されることがある。
【0006】
従って、従来のようにフィルム外装電池を自由状態としたまま絶縁不良検査を行っても、必ずしも十分な検査の信頼性が得られない。
【0007】
この発明は、フィルム外装電池に対し、より信頼性の高い絶縁不良検査を行うことを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−303583号公報
【特許文献2】国際公開WO2011/040446A1
【発明の概要】
【0009】
この発明は、正極板および負極板をセパレータを介して積層してなる発電要素が、金属層の少なくとも内側表面に合成樹脂層をラミネートしたラミネートフィルムからなる外装体の内部に電解液とともに収容され、端子を導出した状態で上記外装体が密封されてなる偏平なフィルム外装電池の検査方法であって、
上記発電要素の積層方向に沿って上記外装体を外側から加圧し、この加圧状態において、上記端子と上記金属層との間で絶縁不良検査を行う。
【0010】
例えば極微小な異物が外装体内部に混入していたような場合に、フィルム外装電池が自由状態のままであれば絶縁が保たれているものの、実際の使用状況のように外装体が外側から加圧されてラミネートフィルムが発電要素を押圧している状態では絶縁不良となることが生じ得る。本発明では、外装体を外側から加圧した加圧状態において端子と金属層との間の絶縁不良を検査するので、このような不良品を事前に発見して排除することができる。
【0011】
ここで、外装体の表面の全面を一度に押圧すると、外装体の内部に密に充填されている電解液が加圧力に抵抗する形となり、外装体と発電要素との密接を阻害する。従って、本発明では、望ましくは、上記積層方向に沿った平面視において上記外装体の表面を複数の領域に区分し、各領域毎に加圧して、各々の加圧状態において上記絶縁不良検査を行う。このようにすれば、区分した領域の数に対応した回数の絶縁不良検査が必要となるが、可撓性を有する外装体が部分的に押圧されることから、外装体が内部の発電要素に対し確実に押し付けられた状態が得られ、実際の電池の使用状況に近似した絶縁不良検査が行える。
【0012】
このように複数の領域に分割して個々に絶縁不良検査を行う場合には、各回の加圧領域の総和が、少なくとも上記発電要素を覆う上記外装体の範囲の全体を含んでいることが望ましい。すなわち、発電要素を覆う外装体の範囲の各部が、少なくとも1回は加圧された状態でその絶縁不良が検査されることになる。
【0013】
好ましい一つの態様では、本発明のフィルム外装電池の検査方法は、
電解液を充填しかつ外装体をシールしたフィルム外装電池を、第1の検査ステージに搬送し、
第1の検査ステージにおいて、上記発電要素を覆う上記外装体の範囲の一部に対応した加圧面を有する加圧バーによって上記外装体を加圧しつつ、上記金属層と端子との間で第1の絶縁不良検査を行い、
フィルム外装電池を第2の検査ステージに搬送し、
第2の検査ステージにおいて、上記範囲の残部に対応した加圧面を有する加圧バーによって上記外装体を加圧しつつ、上記金属層と端子との間で第2の絶縁不良検査を行う。
【0014】
すなわち、発電要素を覆う外装体の範囲を2つの領域に区分した形で、第1および第2の検査ステージにおいて、それぞれ絶縁不良検査を行う。これにより、発電要素の全面について、正極板ないし負極板と外装体の金属層との間の絶縁不良の検査を確実かつ効率よく行うことができる。
【0015】
この発明によれば、電解液の充填後に、フィルム外装電池を外側から加圧した状態で絶縁不良検査を行うので、自由状態では絶縁が保たれているものの外側から外装体が押圧された状態では絶縁不良となるようなフィルム外装電池を確実に発見でき、不良品として未然に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明による検査の対象となるフィルム外装電池の一例を示す斜視図。
図2】同じくフィルム外装電池の断面図。
図3】この発明に係る検査ステージの構成を概略的に示す構成説明図。
図4】検査工程を示す工程説明図。
図5】検査の流れを示すフローチャート。
図6】検査工程の第2実施例を示す工程説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
初めに図1および図2に基づいて、この発明による検査の対象となるフィルム外装電池1の一例を説明する。フィルム外装電池1は、例えばリチウムイオン二次電池であり、図1に示すように、偏平な長方形の外観形状を有し、長手方向の一方の端縁に、導電性金属箔からなる一対の端子2,3を備えている。
【0019】
図2に示すように、フィルム外装電池1は、長方形をなす発電要素4を電解液とともにラミネートフィルムからなる外装体5の内部に収容したものである。上記発電要素4は、セパレータ43を介して交互に積層された複数の正極板41および負極板42からなり、例えば、3枚の負極板42と、2枚の正極板41と、これらの間の4枚のセパレータ43と、を含んでいる。つまり、この例では、発電要素4の両面に負極板42が位置している。但し、発電要素4の最外層に正極板41が位置する構成も可能である。なお、図2における各部の寸法は必ずしも正確なものではなく、説明のために誇張したものとなっている。
【0020】
正極板41は、長方形をなす正極集電体41aの両面に正極活物質層41b,41cを形成したものである。正極集電体41aは、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、又は、ニッケル箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。また、正極活物質層41b,41cは、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、または、コバルト酸リチウム(LiCoO2)等のリチウム複合酸化物からなる正極活物質と、カーボンブラック等の導電助剤と、バインダと、を混合したものを、正極集電体41aの主面に塗布し、乾燥及び圧延することにより形成されている。
【0021】
負極板42は、長方形をなす負極集電体42aの両面に負極活物質層42b,42cを形成したものである。負極集電体42aは、例えば、ニッケル箔、銅箔、ステンレス箔、又は、鉄箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。負極活物質層42b,42cは、例えば、非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、又は、黒鉛等のような上記の正極活物質のリチウムイオンを吸蔵及び放出する負極活物質に、バインダを混合したものを、負極集電体42aの主面に塗布し、乾燥及び圧延させることにより形成されている。
【0022】
上記負極集電体42aの長手方向の端縁の一部は、負極活物質層42b,42cを具備しない延長部として延びており、その先端が負極端子3に接合されている。また図2には示されていないが、同様に、上記正極集電体41aの長手方向の端縁の一部が、正極活物質層41b,41cを具備しない延長部として延びており、その先端が正極端子2に接合されている。
【0023】
上記セパレータ43は、正極板41と負極板42との間の短絡を防止すると同時に電解質を保持する機能を有するものであって、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン等から構成される微多孔性膜からなり、過電流が流れると、その発熱によって層の空孔が閉塞され電流を遮断する機能を有している。なお、セパレータ43としては、ポリオレフィン等の単層膜に限られず、ポリプロピレン膜をポリエチレン膜でサンドイッチした三層構造のものや、ポリオレフィン微多孔性膜と有機不織布等を積層したものも用いることができる。
【0024】
また、電解液としては、特に限定されるものではないが、リチウムイオン二次電池に一般的に使用される電解質として、例えば、有機溶媒にリチウム塩が溶解した非水電解液を用いることができる。
【0025】
上記のような構成の発電要素4を電解液とともに収容する外装体5は、図2に一部を拡大して示すように、熱融着層51と金属層52と保護層53との三層構造を有するラミネートフィルムからなる。中間の金属層52は、例えばアルミニウム箔からなり、その内側面を覆う熱融着層51は、熱融着が可能な合成樹脂例えばポリプロピレン(PP)からなり、金属層52の外側面を覆う保護層53は耐久性に優れた合成樹脂例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。なお、さらに多数の層を有するラミネートフィルムを用いることもできる。また、上記の例では金属層52の両面に合成樹脂層をラミネートしているが、金属層52の外側の合成樹脂層は必ずしも必須のものではなく、内側表面にのみ合成樹脂層を備えた構成であってもよい。
【0026】
なお、電極41,42およびセパレータ43の空孔体積の合計値に対する電解液量の割合は、1.3〜1.7が好ましい。
【0027】
上記外装体5は、一つの例では、図2の発電要素4の下面側に配置される1枚のラミネートフィルムと上面側に配置される他の1枚のラミネートフィルムとの2枚構造をなし、これら2枚のラミネートフィルムの周囲の4辺を重ね合わせ、かつ互いに熱融着した構成となっている。図示例は、このような2枚構造の外装体5を示している。また、他の一つの例では、外装体5は1枚の比較的大きなラミネートフィルムからなり、2つ折りとした状態で内側に発電要素4を配置した上で、周囲の3辺を重ね合わせ、かつ互いに熱融着した構成となっている。
【0028】
長方形をなすフィルム外装電池1の短辺側に位置する一対の端子2,3は、ラミネートフィルムを熱融着する際に、ラミネートフィルムの接合面を通して外部へ引き出されている。なお、図示例では、同じ一方の端縁に一対の端子2,3が並んで配置されているが、一方の端縁に正極端子2を配置し、かつ他方の端縁に負極端子3を配置するようにすることも可能である。
【0029】
上記のフィルム外装電池1の製造手順としては、以下の通りである。まず、正極板41、負極板42およびセパレータ43を順次積層し、かつ端子2,3をスポット溶接等により取り付けて発電要素4を構成する。次に、この発電要素4を外装体5となるラミネートフィルムで覆い、比較的小さな充填口を残して周囲の4辺(上記の2つ折りの場合は3辺)を熱融着する。次に、上記充填口を通して外装体5の内部に電解液を充填し、その後、充填口を熱融着して外装体5を密閉状態とする。これによりフィルム外装電池1が完成するので、次に、適宜なレベルまで充電を行い、この状態で、一定時間、エージングを行う。このエージングの完了後、電圧検査などのために再度充電を行い、出荷される。
【0030】
なお、この種のフィルム外装電池1は、複数個を偏平な箱状のケーシング内に収容したバッテリモジュールとして使用される。この場合、バッテリモジュールのケーシング内で複数のフィルム外装電池1が積層された配置となり、例えば、ケーシングの一部またはケーシングとは別個の弾性部材によって、外装体5は、発電要素4の積層方向(発電要素4の主面と直交する方向)に多少押圧された状態となり得る。
【0031】
本発明の絶縁不良検査は、外装体5の中間層であるアルミニウム箔からなる金属層52と、発電要素4の電極板、図2の例では特に最外層に位置する負極板42、との間で十分な絶縁が保たれているか否かを検査するためのものであり、上述した製造工程の中で、電解液の充填および外装体5の完全密閉(充填口の封止)の後の適宜な時期に実行される。例えば、フィルム外装電池1としての出荷の直前に検査工程を設けることができ、あるいは、外装体5を完全密閉した直後に検査工程を設けてもよい。また、上記のエージング工程中に内部で異物が析出することがあるので、エージング工程の直後に検査工程を設けることも効果的である。
【0032】
図3は、絶縁不良の検査工程としてフィルム外装電池1の製造ライン中に設けられる検査ステージの構成を概略的に示している。この検査ステージは、電解液の充填および外装体5の完全密閉が完了したフィルム外装電池1が順次搬送される準備台6と、第1回(換言すれば前半)の絶縁不良検査を行う第1検査ステージ7と、第2回(換言すれば後半)の絶縁不良検査を行う第2検査ステージ8と、を備えている。また、準備台6と第1検査ステージ7との間には、準備台6から第1検査ステージ7へ検査対象となる1つのフィルム外装電池1を搬送する第1ハンド9が配置されており、第1検査ステージ7と第2検査ステージ8との間には、第1検査ステージ7で前半の検査が完了したフィルム外装電池1を第2検査ステージ8へ搬送する第2ハンド10が配置されている。これらの第1,第2ハンド9,10は、いずれも先端の吸着カップ(図示せず)部分で負圧による部品の吸着を行う吸着ハンド形式のものであり、支持部9a,9bを中心とした旋回運動によりフィルム外装電池1の搬送を行う。
【0033】
第1検査ステージ7は、検査対象となるフィルム外装電池1が置かれる検査台71と、フィルム外装電池1の外装体5の一部を押圧するようにシリンダ機構や直進型サーボモータ機構等によって垂直方向上下に移動する第1加圧バー72と、検査用の電圧の印加および印加後の電圧信号の解析を行う第1検査装置73と、を備えている。上記第1検査装置73は、フィルム外装電池1の負極端子3およびラミネートフィルム内の金属層52にそれぞれ接続される一対のプローブ74,75を備えている。負極端子3に接続される一方のプローブ74は、例えば、負極端子3を挟む電極クリップや、上方から負極端子3を押さえる押さえ部材に対向して検査台71の上に配置された電極パッド、あるいは逆に負極端子3を上方から検査台71に押さえつける電極パッド、などとして構成され得る。またラミネートフィルムの金属層52に接続される他方のプローブ75は、例えば、ラミネートフィルムを貫通することが可能な鋭利な針状に構成され、外装体5となるラミネートフィルムの余白部分つまり熱融着した周縁部に突き刺すことで、金属層52との導通が得られる構成となっている。この針状のプローブ75は、垂直方向上方から下降してラミネートフィルムに刺さる構成としてもよく、逆に検査台71の下側から上方へ突出する構成としてもよい。なお、針状のプローブ75を用いる代わりに、ラミネートフィルムの一部に金属層52の露出部分を形成するようにしてもよい。
【0034】
また、第2検査ステージ8は、基本的には第1検査ステージ7と同様の構成であり、検査対象となるフィルム外装電池1が置かれる検査台81と、フィルム外装電池1の外装体5の一部を押圧するようにシリンダ機構や直進型サーボモータ機構等によって垂直方向上下に移動する第2加圧バー82と、検査用の電圧の印加および印加後の電圧信号の解析を行う第2検査装置83と、を備えている。上記第2検査装置83は、フィルム外装電池1の負極端子3およびラミネートフィルム内の金属層52にそれぞれ接続される一対のプローブ84,85を備えている。これらのプローブ84,85は、第1検査ステージ7のプローブ74,75と同様に構成される。
【0035】
ここで、上記第1検査ステージ7と上記第2検査ステージ8とでは、それぞれの加圧バー72,82の加圧面の形状が異なっている。第1検査ステージ7における第1加圧バー72は、例えば、長方形をなす外装体5の幅方向の中央部分を帯状に押圧するように細長い長方形の加圧面を下端に有している。この加圧面は、基本的には、検査台71の上面と平行な平坦面をなしている。
【0036】
これに対し、第2検査ステージ8における第2加圧バー82は、第1検査ステージ7の第1加圧バー72によって押圧されなかった外装体5の両側2箇所の部分を押圧するように、2つに分割された一対の長方形の加圧面を下端に有している。図中の符号82a,82bは、2分割された個々の加圧面を示している。詳しくは、外装体5における発電要素4の投影範囲(つまり発電要素4を覆っている範囲)よりも僅かに大きい矩形の外形状の中から、第1加圧バー72の加圧面に相当する領域を除いた形に加圧面82a,82bが構成されている。換言すれば、第1加圧バー72の加圧面と第2加圧バー82の加圧面とは相補の関係にあり、両者の加圧領域の総和が、外装体5における発電要素4の投影範囲全体をカバーしている。なお、加圧面82a,82bは、基本的には、検査台81の上面と平行な平坦面をなしている。
【0037】
上記検査ステージは、さらに、上記第1検査ステージ7あるいは上記第2検査ステージ8において絶縁不良と判定された不良品を搬送する不良品用コンベア11と、両検査ステージ7,8で絶縁が確認された良品を搬送する良品用コンベア12と、を有する。上記第1検査ステージ7あるいは上記第2検査ステージ8のいずれかで絶縁不良と判定された不良品は、図示せぬ排出機構によって各検査ステージ7,8から不良品用コンベア11へ排出される。また、良品は、図示せぬ吸着ハンドなどによって第2検査ステージ8から良品用コンベア12へ移送される。
【0038】
図4は、上記の検査ステージを用いて行う絶縁不良検査の工程を示している。工程aは、検査対象となるフィルム外装電池1が準備台6の上に置かれている状態を示している。この状態から、第1ハンド9がフィルム外装電池1を吸着して上方へ持ち上げ、かつ該第1ハンド9の旋回を伴って、工程bとして示すように、第1検査ステージ7の検査台71上にフィルム外装電池1を移送する。移送後、第1ハンド9は退避する。
【0039】
工程cは、検査台71の上に置かれたフィルム外装電池1に対する第1の絶縁不良検査を示すものであり、プローブ74,75が前述したように負極端子3およびラミネートフィルムの金属層52にそれぞれ接続され、かつ第1加圧バー72が下降して外装体5の幅方向中央部分を押圧する。そして、このように発電要素4の投影範囲の一部領域を押圧した加圧状態の下で、第1検査装置73がプローブ74,75の間に短時間電圧を印加し、かつその後の電圧低下の態様から、絶縁状態が得られているか絶縁不良であるか判別する。負極端子3ないし負極板42と金属層52との間で絶縁が保たれていれば、負極板42と金属層52とによって静電容量が構成され、また一方、絶縁不良であれば静電容量とはなり得ないので、それぞれで電圧印加後の電圧低下の態様が異なるものとなる。これにより、絶縁不良であるか否かが判別される。なお、絶縁不良の検査としては、このような手法に限定されず、公知の種々の方法を適宜に適用することが可能である。上記のように第1加圧バー72によって加圧した状態で検査を行うことにより、例えば、自由状態では絶縁が保たれているものの外装体5が発電要素4へ押し付けられたときに絶縁不良となるような不良も確実に検出できる。特に、外装体5の全面を一斉に押圧するのではなく、一部の領域が押圧されるので、内部に密に充填された電解液に阻害されることなく、外装体5が発電要素4を両側から適度に圧縮した状態が確実に得られる。
【0040】
工程cで絶縁不良と判定した場合は、不良品用コンベア11へフィルム外装電池1が排出される。それ以外の場合は、工程dとして示すように、第2ハンド10が検査台71上のフィルム外装電池1を吸着して上方へ持ち上げ、かつ該第2ハンド10の旋回を伴って、フィルム外装電池1を次の第2検査ステージ8の検査台81上に移送する。移送後、第2ハンド10は退避する。
【0041】
工程eは、検査台81の上に置かれたフィルム外装電池1に対する第2の絶縁不良検査を示しており、第2検査装置83のプローブ84,85が負極端子3およびラミネートフィルムの金属層52にそれぞれ接続され、かつ第2加圧バー82が下降して外装体5の幅方向両側部分を押圧する。そして、このように発電要素4の投影範囲の一部領域を押圧した加圧状態の下で、前述した第1検査ステージ7と同様に、第2検査装置83がプローブ84,85の間に短時間電圧を印加し、かつその後の電圧低下の態様から、絶縁状態が得られているか絶縁不良であるか判別する。上記のように第2加圧バー82によって加圧した状態で検査を行うことにより、例えば、自由状態では絶縁が保たれているものの外装体5が発電要素4へ押し付けられたときに絶縁不良となるような不良も確実に検出できる。特に、外装体5の全面を一斉に押圧するのではなく、一部の領域が押圧されるので、内部に密に充填された電解液に阻害されることなく、外装体5が発電要素4を両側から適度に圧縮した状態が確実に得られる。しかも、第1加圧バー72の加圧面と第2加圧バー82の加圧面とは相補の関係にあり、発電要素4を覆う外装体5の範囲の各部が、いずれかの絶縁不良検査において必ず1回押圧されることとなり、発電要素4の全面に亘って漏れなく加圧状態での検査を行うことができる。
【0042】
工程eで絶縁不良と判定した場合は、不良品用コンベア11へフィルム外装電池1が排出される。それ以外の場合は、良品として良品用コンベア12へ移送される。
【0043】
図5は、上記のような絶縁不良検査の処理の流れをフローチャートとして示したものである。まずステップ1として、フィルム外装電池1が第1検査ステージ7へ移送され、ステップ2で、外装体5の加圧および検査用の電圧印加が実行される。ステップ3では、絶縁不良であるか否かが判別され、絶縁不良でなければステップ4へ進む。ステップ4では、フィルム外装電池1が次の第2検査ステージ8へ移送され、ステップ5で、外装体5の加圧および検査用の電圧印加が実行される。ステップ6では、絶縁不良であるか否かが判別され、絶縁不良でなければ、ステップ7において、良品であると最終的に判断する。ステップ3もしくはステップ6で絶縁不良と判断した場合は、ステップ8へ進み、不良品として排除する。
【0044】
上記の実施例では、フィルム外装電池1の押圧すべき表面積(つまり発電要素4の投影範囲)を、発電要素4の積層方向に沿った平面視において、幅方向で3つの領域に区分し、その中央部分を第1検査ステージ7で押圧し、残りの2つの部分を第2検査ステージ8で押圧する。本発明においては、このような領域の区分は、任意であり、例えば、さらに多数の領域に分けて各々検査を行うようにしてもよい。
【0045】
図6は、長方形をなすフィルム外装電池1の押圧すべき範囲を、長手方向に2つの領域に区分するようにした第2の実施例を示している。工程Aは、第1検査ステージ7での第1の絶縁不良検査を示しており、検査台71に対し上下動する第1加圧バー72は、長方形をなすフィルム外装電池1の長手方向の略半分を覆う加圧面を有している。これにより、フィルム外装電池1の端子2,3とは反対側となる領域を押圧した加圧状態の下で、第1検査装置73による絶縁不良検査が実行される。また、工程Bは、第2検査ステージ8での第2の絶縁不良検査を示しており、検査台81に対し上下動する第2加圧バー82は、長方形をなすフィルム外装電池1の長手方向の略半分、特に端子2,3寄りの部分、を覆う加圧面を有している。これにより、第1検査ステージ7で押圧されていなかったフィルム外装電池1の残りの領域を押圧した加圧状態の下で、第2検査装置83による絶縁不良検査が実行される。
【0046】
以上、この発明の一実施例を説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では、多数のフィルム外装電池1を効率よく検査するために、第1の絶縁不良検査と第2の絶縁不良検査とをそれぞれ別の検査台の上で行うようにしているが、移送工程の削減のために、一つの検査台の上で、異なる領域を押圧しながら各々の絶縁不良検査を順次実行するようにしてもよい。また、上記実施例では、負極端子3に関して絶縁不良検査を行っているが、必要に応じて、正極端子2を対象として絶縁不良検査を行うことも可能であり、負極端子3と正極端子2の双方を対象として絶縁不良検査を行うことも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6