特許第5909031号(P5909031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5909031
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】液体フィルター用基材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/12 20060101AFI20160412BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20160412BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20160412BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20160412BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   B01D69/12
   B01D69/02
   B01D69/10
   B01D71/26
   C08J9/26 102
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-551287(P2015-551287)
(86)(22)【出願日】2015年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2015067502
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-130045(P2014-130045)
(32)【優先日】2014年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「次世代高容量リチウムイオン電池用革新的セパレーターの実用化開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】福田 豊充
(72)【発明者】
【氏名】古谷 幸治
(72)【発明者】
【氏名】本多 勧
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−182921(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/066488(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/125944(WO,A1)
【文献】 特表2012−522669(JP,A)
【文献】 特開平10−028852(JP,A)
【文献】 特開2008−255202(JP,A)
【文献】 特開2014−030951(JP,A)
【文献】 特開2014−218563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
B32B 5/00− 5/32
B32B 27/00−27/42
C08J 9/00− 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを含む微多孔膜状のA層の少なくとも1層と、ポリオレフィン及びフィラーを含む微多孔膜状のB層の少なくとも1層と、を有した積層ポリオレフィン微多孔膜からなり
前記A層及び前記B層に含まれるポリオレフィンは、重量平均分子量が90万以上である超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が20万〜80万で密度が0.92〜0.96g/cmである高密度ポリエチレンと、を混合したポリエチレン組成物からなり、
前記B層における前記フィラーの含有量が、前記B層の全固形分の合計質量に対して、40質量%以上80質量%以下であり、
バブルポイントが0.40Mpa以上0.80Mpa以下であり、
透水性能が1.0ml/min・cm以上4.0ml/min・cm以下である、液体フィルター用基材。
前記透水性能は、前記積層ポリオレフィン微多孔膜を直径37mmの透液セル(透液面積Scm)にセットし、該積層ポリオレフィン微多孔膜をエタノールで湿潤させた後、90kPaの差圧で純水V(100ml)を透過させて、純水全量が透過するのに要した時間Tl(min)を計測し、その純水の液量と純水の透過に要した時間から、90kPa差圧下における単位時間(min)、単位面積(cm)当たりの透水量Vsを以下の式より計算して求められる。計測は、24℃の温度雰囲気下で行う。
Vs=V/(Tl×S)
【請求項2】
空孔率が50%以上75%未満である、請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【請求項3】
厚さが7μm以上25μm以下である、請求項1又は請求項に記載の液体フィルター用基材。
【請求項4】
前記B層における前記フィラーの平均粒子径が0.2μm〜2.0μmである、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の液体フィルター用基材。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の液体フィルター用基材の製造方法であり、
ポリオレフィン及び溶剤を含む第1の溶液を調製する工程と、
ポリオレフィン、溶剤、及びフィラーを含む第2の溶液を調製する工程と、
前記第1の溶液を溶融混練して得た溶融混練物と、前記第2の溶液を溶融混練して得た溶融混練物と、をダイより共押出し、冷却固化することで、多層のゲル状成形物を得る工程と、
前記多層のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する工程と、
少なくとも一方向に延伸する工程の前又は後に、前記多層のゲル状成形物中の溶剤の少なくとも一部を除去する工程と、
を有する液体フィルター用基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体フィルター用基材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ますます電子機器の小型、高性能化が進んでおり、特にパーソナルコンピューター、スマートフォンを代表とするデジタル機器、携帯端末は飛躍的な進化を遂げている。それを牽引、サポートするさまざまな技術の中でも、半導体産業の技術革新が大きな役割を果たしているのは周知の事実である。近年の半導体産業において、配線パターン寸法は20nmを下回る領域での開発競争となっており、各社最先端製造ラインの構築を急いでいる。
【0003】
リソグラフィ工程は、半導体部品製造にてパターンを形成する工程である。近年のパターン微細化と共に、リソグラフィ工程で使用する薬液そのものの性状のみならず、ウェハー上へ塗布するまでの薬液の取扱いも、非常に高度な技術が要求されるようになってきている。
【0004】
高度に調製された薬液はウェハー上へ塗布する直前に緻密なフィルターで濾過され、パターン形成や歩留りに大きな影響を与えるパーティクルが除去される。最先端の20nmを下回るパターン形成においては、約10nm未満のパーティクルを捕集できることが要求され、フィルターメーカー各社は、精力的に開発を進めているところである。
一般的に、液体フィルターは、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリプロピレン等の樹脂からなる多孔質膜を基材として、カートリッジ形体に加工されて、使用される。基材は、薬液との相性や捕集性能、処理能力、寿命等の観点から、目的とする用途に応じて使い分けられている。最近では、特に基材由来の溶出物を低減させることが重視されており、基材としてポリエチレン微多孔膜が多く使用されるようになってきている。
【0005】
ポリエチレン微多孔膜の代表的な製造方法としては、相分離法や延伸法が挙げられる。相分離法は高分子溶液の相分離現象により細孔を形成する技術であり、例えば特開平2−251545号公報に記載されるように、熱により相分離が誘起される熱誘起相分離法、及び高分子の溶媒に対する溶解度特性を利用した非溶媒誘起相分離法などがある。また、熱誘起相分離と非溶媒誘起相分離の両方の技術を組み合せたり、さらには延伸により孔構造の形や大きさを調整して、バリエーションを増大させることも可能である。延伸法は、例えば、シート状に成形されたポリエチレン原反シートを延伸し、速度、倍率、温度等の延伸条件を調整して、結晶構造中の非晶質部分を引き伸ばし、ミクロフィブリルを形成しながらラメラ層の間に微細孔を形成する方法である(例えば、特開2010−053245号公報、特開2010−202828号公報、特開平7−246322号公報、特開平10−263374号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、約10nm未満の微細なパーティクルを効果的に捕集しようとすると、逆に液体透過性が悪化する傾向がある。つまり、捕集性能と液体透過性はトレードオフの関係にある。
【0007】
また、液体フィルターの長期の使用において、ポリオレフィン微多孔膜に繰り返し圧力がかかることで、多孔質構造が変化し、液体透過性が徐々に低下していく場合もある。このような長期安定使用の課題を解決するために、例えばポリオレフィン微多孔膜を剛直な構成にすることも考えられる。しかし、剛直なポリオレフィン微多孔膜では、捕集性能及び液体透過性にも影響を与えてしまう。
【0008】
そして、既述の公報に記載されているような従来技術においては、約10nm未満の微細なパーティクルに対する捕集性能及び液体透過性に優れたものにし、さらに長期の使用において安定した液体透過性も実現させた提案はなされていない。
【0009】
そこで、本開示は、上述した課題を解決すべく、約10nm未満の微細なパーティクルに対する優れた捕集性能を有しながら、優れた液体透過性を有し、かつ、長期使用において安定した液体透過性を有する液体フィルター用基材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
1. ポリオレフィンを含む微多孔膜状のA層の少なくとも1層と、ポリオレフィン及びフィラーを含む微多孔膜状のB層の少なくとも1層と、を有した積層ポリオレフィン微多孔膜からなり前記A層及び前記B層に含まれるポリオレフィンは、重量平均分子量が90万以上である超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が20万〜80万で密度が0.92〜0.96g/cmである高密度ポリエチレンと、を混合したポリエチレン組成物からなり、前記B層における前記フィラーの含有量が、前記B層の全固形分の合計質量に対して、40質量%以上80質量%以下であり、バブルポイントが0.40Mpa以上0.80Mpa以下であり、透水性能が1.0ml/min・cm以上4.0ml/min・cm以下である、液体フィルター用基材。
前記透水性能は、前記積層ポリオレフィン微多孔膜を直径37mmの透液セル(透液面積Scm)にセットし、該積層ポリオレフィン微多孔膜をエタノールで湿潤させた後、90kPaの差圧で純水V(100ml)を透過させて、純水全量が透過するのに要した時間Tl(min)を計測し、その純水の液量と純水の透過に要した時間から、90kPa差圧下における単位時間(min)、単位面積(cm)当たりの透水量Vsを以下の式より計算して求められる。計測は、24℃の温度雰囲気下で行う。
Vs=V/(Tl×S)
. 空孔率が50%以上75%未満である、上記1に記載の液体フィルター用基材。
. 厚さが7μm以上25μm以下である、上記1又は2に記載の液体フィルター用基材。
. 前記B層における前記フィラーの平均粒子径が0.2μm〜2.0μmである、上記1〜のいずれかに記載の液体フィルター用基材。
. 上記1〜のいずれかに記載の液体フィルター用基材の製造方法であり、
ポリオレフィン及び溶剤を含む第1の溶液(上記A層形成用液)を調製する工程と、ポリオレフィン、溶剤、及びフィラーを含む第2の溶液(上記B層形成用液)を調製する工程と、前記第1の溶液を溶融混練して得た溶融混練物と、前記第2の溶液を溶融混練して得た溶融混練物と、をダイより共押出し、冷却固化することで、多層のゲル状成形物を得る工程と、前記多層のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する工程と、少なくとも一方向に延伸する工程の前又は後に、前記多層のゲル状成形物中の溶剤の少なくとも一部を除去する工程と、を有する液体フィルター用基材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、約10nm未満の微細なパーティクルに対する優れた捕集性能を有しながら、優れた液体透過性を有し、かつ、長期使用において安定した液体透過性を有する液体フィルター用基材及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について順次説明するが、これらの説明及び実施例は本発明の実施形態を例示するものであり、本発明の実施形態の範囲を制限するものではない。
なお、本明細書全体において、数値範囲で「〜」を用いた場合、各数値範囲にはその上限値と下限値を含むものとする。
また、ポリオレフィン微多孔膜に関し、「長手方向」とは、長尺状に製造されるポリオレフィン微多孔膜の長尺方向を意味し、「幅方向」とは、ポリオレフィン微多孔膜の長手方向に直交する方向を意味する。以下、「幅方向」を「TD」とも称し、「長手方向」を「MD」とも称する
【0013】
[液体フィルター用基材]
本発明の実施形態に係る液体フィルター用基材は、ポリオレフィンを含む微多孔膜状のA層の少なくとも1層と、ポリオレフィン及びフィラーを含む微多孔膜状のB層の少なくとも1層と、を有する。すなわち、本発明の実施形態に係る液体フィルター用基材は、A層とB層とを少なくとも1層ずつ備えた積層ポリオレフィン微多孔膜からなるものである。また、A層及びB層に含まれるポリオレフィンは、重量平均分子量が90万以上である超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が20万〜80万で密度が0.92〜0.96g/cmである高密度ポリエチレンと、を混合したポリエチレン組成物からなり、B層におけるフィラーの含有量は、B層の全固形分の合計質量に対して、40質量%以上80質量%以下である。積層ポリオレフィン微多孔膜である液体フィルター用基材は、バブルポイントが0.40Mpa以上0.80Mpa以下であり、透水性能が1.0ml/min・cm以上4.0ml/min・cm以下である。
【0014】
このような本発明の実施形態によれば、約10nm未満の微細なパーティクルに対する優れた捕集性能を有しながら、優れた液体透過性を有し、かつ、長期使用において安定した液体透過性を有する液体フィルター用基材を提供することができる。
以下、各構成の詳細について説明する。
【0015】
(積層ポリオレフィン微多孔膜)
本開示において、液体フィルター用基材である積層ポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィンを含む微多孔膜状のA層の少なくとも1層と、ポリオレフィン及びフィラーを含む微多孔膜状のB層の少なくとも1層と、を備えた積層ポリオレフィン微多孔膜である。
積層ポリオレフィン微多孔膜は、A層とB層とを少なくとも1層ずつ備えていればよく、その積層数及び積層順序は、特に限定されるものではない。
積層数に関しては、製造上の観点から、2層〜3層であることが好ましい。
積層順序に関しては、例えば、A層/B層、A層/B層/A層、B層/A層/B層、A層/A層/B層、あるいはA層/B層/B層が好ましい。
なお、本発明の実施形態における積層ポリオレフィン微多孔膜には、本発明の実施形態の効果を阻害しない範囲で、さらにA層及びB層以外の第三の層を積層させてもよい。
【0016】
(A層)
本開示において、A層は、ポリオレフィンを含む微多孔膜状の層である。
ここで、「微多孔膜状」とは、ポリオレフィンのフィブリルが三次元のネットワーク構造を構成し、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜構造を意味する。
【0017】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等の単独重合体又は共重合体、あるいはこれらの2種以上の混合体が挙げられる。中でも、ポリエチレンが好ましい。
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンとの混合物、等が好適である。高密度ポリエチレンは、繰り返し単位のエチレンが直鎖状に結合した結晶性のポリエチレンを指し、JIS K6748(1995)に準拠した密度が0.92g/cm以上のポリエチレンと定義される。
【0018】
本発明の実施形態に用いるポリオレフィンとしては、重量平均分子量が60万以上である超高分子量ポリエチレンを5質量%以上含むポリエチレン組成物を用いることが好ましく、超高分子量ポリエチレンを7質量%以上含むポリエチレン組成物であることがさらに好ましく、特に超高分子量ポリエチレンを13質量%〜27質量%含むポリエチレン組成物であることが好ましい。
また、2種以上のポリエチレンを適量配合することによって、延伸時のフィブリル化に伴うネットワーク網状構造を形成させ、空孔発生率を増加させる効用がある。2種以上のポリエチレンを配合した後の、平均の重量平均分子量は、35万〜250万であることが好ましい。特に、上述した重量平均分子量が90万以上である超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が20万〜80万で密度が0.92〜0.96g/cmである高密度ポリエチレンとを混合させたポリエチレン組成物が用いられる。この場合、高密度ポリエチレンのポリエチレン組成物中の割合は、95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがさらに好ましく、87質量%〜73質量%であることが特に好ましい。また、高分子量ポリエチレンのポリエチレン組成物中の割合は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、13質量%〜27質量%が特に好ましい。
【0019】
なお、重量平均分子量は、ポリオレフィン微多孔膜の試料をo−ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、GPC(Waters社製、Alliance GPC 2000型、カラム:GMH6−HT及びGMH6−HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて測定を行うことで得られる。
【0020】
(B層)
本開示において、B層は、ポリオレフィン及びフィラーを含む微多孔膜状の層である。B層の「微多孔膜状」もA層と同様であるが、ポリオレフィンフィブリルからなる三次元ネットワーク構造の中にフィラーが捕捉された形で存在している。
【0021】
B層に用いるポリオレフィンは、A層に用いるポリオレフィンと同様のものを用いることができる。中でも、A層とB層とを同じポリオレフィンを用いて形成することが、両層の接着性を向上させる観点で好ましい。特に、A層とB層とのポリオレフィンとして、上述した超高分子量ポリエチレンと高密度ポリエチレンとを混合したポリエチレン組成物を用いることが好ましい。
【0022】
B層に用いるフィラーは、無機物又は有機物のいずれも使用可能である。フィラーには、積層ポリオレフィン微多孔膜を製造する過程で溶解せず、かつ、液体フィルター中においても被処理液に溶解しない性状が求められる。
【0023】
無機物フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化セリウム、水酸化ニッケル、水酸化ホウ素などの金属水酸化物;アルミナやジルコニア、酸化マグネシウム等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、タルク等の粘土鉱物等などが挙げられる。中でも、無機フィラーは、金属水酸化物及び金属酸化物の少なくとも一方からなることが好ましい。
上記の各種フィラーは、それぞれ単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、シランカップリング剤等により表面修飾された無機フィラーも使用することができる。
【0024】
有機物フィラーとしては、例えば、架橋ポリアクリル酸、架橋ポリアクリル酸エステル、架橋ポリメタクリル酸、架橋ポリメタクリル酸エステル、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリシリコーン(ポリメチルシルセスキオキサン等)、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子微粒子;ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子微粒子などが例示できる。また、これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
【0025】
本開示において、フィラーの平均粒子径は、被処理液中にゲル状パーティクルが含まれる場合に当該ゲル状パーティクルの捕集性能を高めるという観点から、0.2μm〜2.0μmであることが好ましい。
フィラーの平均粒子径が0.2μm以上であれば、延伸、熱処理で空孔を形成する際に良好な多孔質構造が形成されやすく、バブルポイント及び透水性能をさらに良好なものとすることができる。このような観点から、フィラーの平均粒子径は0.4μm以上であることがより好ましい。一方、フィラーの平均粒子径が2.0μm以下であれば、空孔を適切なサイズに形成しやすく、ゲル状パーティクルの捕集性能をより高めることができる。このような観点から、フィラーの平均粒子径は1.0μm以下であることがより好ましい。
フィラーの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定を行い、体積粒度分布における中心粒子径(D50)から求められる値である。
【0026】
本開示において、B層における前記フィラーの含有量は、B層の全固形分の合計質量に対して、40質量%以上80質量%以下である。
フィラーの含有量が40質量%以上であれば、良好なバブルポイントと透水性能を得やすくなる。このような観点から、フィラーの含有量は45質量%以上であることがより好ましい。一方、フィラーの含有量が80質量%以下であれば、樹脂中にフィラーが良好に分散するようになり、欠陥が発生し難く、かつフィルムの機械強度が向上する傾向にある。このような観点から、フィラーの含有量は75質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
−透水性能(水流量)−
本発明の実施形態に係る液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)は、流量特性に優れることを特徴とする。
液体フィルター用基材の透水性能は、90kPaの差圧下において1.0ml/min・cm〜4.0ml/min・cmである。液体フィルター用基材の透水性能が1.0ml/min・cm未満であると、約10nm未満のパーティクル用の液体フィルターとしての十分な透水性能が得られず、液体ろ過の生産性が低下する問題や送液量(生産性)を維持するためのエネルギー負荷増大の問題等が生じ得る。このような観点から、透水性能は1.5ml/min・cm以上であることがより好ましい。一方、液体フィルター用基材の透水性能が4.0ml/min・cmを超えると、約10nm未満の微小なパーティクルを十分に捕集できず、十分な捕集性能を発現しない問題が生じ得る。このような観点から、透水性能は3.5ml/min・cm以下であることがより好ましい。
【0028】
透水性能は、以下の方法により求められる値である。
液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)をエタノールに浸漬し、室温下で乾燥させた後、直径37mmのステンレス製の透液セル(透液面積Scm)上に載置する。透液セル上の液体フィルター用基材を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた後、90kPaの差圧で予め計量した純水V(100ml)を透過させて、純水全量が透過するのに要した時間Tl(min)を計測する。測定は、24℃の雰囲気で行う。得られた値を用いて以下の式より算出する。
透水性能(Vs)=V/(Tl×S)
【0029】
−バブルポイント−
本発明の実施形態に係る液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)は、約10nm未満のパーティクル(さらに好ましくは数nmのパーティクル)を高度に捕集することを特徴とする。
バブルポイントとは、液体(本実施形態ではエタノール)と接触させた状態の液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)に圧力を与えて一方面から他方面に向けてエア(泡)が孔を通過するのに必要な圧力(MPa)のことをいい、ASTM E−128−61に準拠して測定される値である。
【0030】
液体フィルター用基材のバブルポイントは、0.40MPa以上0.80MPa以下である。本発明の実施形態に係る液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)は、バブルポイントが0.40MPa以上0.80MPa以下の範囲でありながら、上記のような良好な透水性能を発揮する。
液体フィルター用基材のバブルポイントが0.40MPaより低いと、上述したような微小なパーティクルを十分に捕集できず、十分な捕集性能を発現しない。このような観点から、バブルポイントは0.45MPa以上であることがより好ましい。一方、液体フィルター用基材のバブルポイントが0.80MPaより高いと、透水性能が著しく不足してしまい、長期使用において安定した液体透過性を実現できない場合が生じ得る。このような観点から、バブルポイントは0.70MPa以下であることがより好ましい。
【0031】
なお、本開示においては、上述した透水性能及びバブルポイントを適正な範囲に調整することが必要である。これらの物性を制御する手法としては、特に限定されるものではなく、例えば、A層とB層とに用いるポリエチレン樹脂の平均分子量、B層中のフィラーの含有量、複数のポリエチレン樹脂を混合して使用する場合はその混合比率、原料中のポリエチレン樹脂濃度、原料中に複数の溶剤を混合して使用する場合はその混合比率、押出された多層のゲル状成形物(シート状物)内部の溶剤を絞り出すための加熱温度、押し圧力、延伸倍率、延伸後に熱処理する場合の熱処理(熱固定)温度、抽出溶媒への浸漬時間、等の製造条件を調整すること等が挙げられる。特に、以下の製造方法の説明でも示すが、A層とB層とに用いる超高分子量ポリエチレンが各層の全ポリエチレン組成物中の質量割合で1%〜35%であること、フィラーの含有量が全組成物中の質量割合で40%〜80%であること、押出された多層のゲル状成形物(シート状物)内に含まれる溶剤の一部を絞り出すために40℃〜100℃に加熱しながら好適な押し圧力をかけること、トータルの延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率の積)を20倍〜60倍にすること、あるいは、熱固定する場合の熱固定温度を110℃〜140℃にすること、等により好適に得られる。
【0032】
−空孔率−
本開示において、液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)の空孔率は、50%以上75%未満であることが好ましく、50%以上75%以下であることがより好ましく、更に好ましくは60%以上75%以下である。該ポリオレフィン微多孔膜の空孔率が50%以上である場合、透水性能がより向上する点で好ましい。一方、空孔率が75%以下である場合、液体フィルター用基材の力学強度がより良好になり、ハンドリング性も向上する点で好ましい。
ここで、液体フィルター用基材である積層ポリオレフィン微多孔膜の空孔率(ε)は、下記式により算出される。
ε(%)={1−Ws/(ds・t)}×100
Ws:ポリオレフィン微多孔膜の目付け(g/m
ds:ポリオレフィンの真密度(g/cm
t:ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm)
【0033】
−厚み−
本開示において、液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)の膜厚は、7μm〜25μmであることが好ましく、さらに好ましくは10μm〜20μmである。液体フィルター用基材の膜厚が7μm以上である場合、十分な力学強度が得られやすく、ポリオレフィン微多孔膜の加工時等におけるハンドリング性、及びフィルターカートリッジの長期使用における耐久性が得られやすくなる点で好ましい。一方、液体フィルター用基材の膜厚が25μm以下である場合、単膜で十分な透水性能を得られやすくなる点で好ましい。更には、所定の大きさのフィルターカートリッジにおいて、より多くのろ過面積を得られやすくなり、ポリオレフィン微多孔膜を加工して液体フィルター用基材を得る際のフィルターの流量設計及び構造設計がしやすくなる点でも好ましい。
【0034】
例えば、同じ大きさのハウジングにフィルターカートリッジを収めることを想定した場合、濾材(フィルター用基材を含む構成材全体)の厚みが薄いほど、濾材面積を大きくすることができるため、液体フィルターとして好ましい高流量・低ろ過圧力の設計が可能になる。すなわち、液体フィルターとして、同じ流量を維持したい場合にはろ過圧力が低くなり、同じろ過圧力を維持したい場合には流量が高くなるように設計することが可能になる。特に、ろ過圧力が低くなることによって、一旦捕集されたパーティクルが、濾材内部でろ過圧力に継続して曝されることにより、時間の経過とともに濾材内部からろ過液とともに押し出されて漏れ出す確率が著しく低下する。また、ろ過する液体中に溶存するガスが、ろ過前後での圧力差(ろ過後の圧力低下)によって微小な気泡となって現れる確率が著しく低下する。さらに、薬液等のろ過対象物のろ過歩留が向上することや、それらの品質を長時間に渡って高度に維持する効果も期待できる。
その一方で、濾材の厚みが薄いほど、濾材の強度や耐久性能が低下するが、例えば、フィルター設計において可能であれば、粗目の高強度支持体と複合化する(例えば、重ね合せて折込む等の加工を行う)ことで補強しながら、耐久性と流量の設計を調整することも可能になる。
【0035】
−液体フィルター−
上述した本発明の実施形態に係る液体フィルター用基材は、薬液との親和性付与加工が適宜行われた上で、カートリッジ形体に加工され、液体フィルターとして用いることができる。
液体フィルターは、有機物及び/又は無機物からなるパーティクルを含む被処理液から、当該パーティクルを除去するための器具である。パーティクルは被処理液中において固体状あるいはゲル状で存在する。本実施形態では、粒径が約10nm未満(さらに好ましくは数nm)のパーティクルを除去する場合に好適である。また、液体フィルターは、半導体の製造工程のみならず、例えばディスプレイ製造及び研磨等の他の製造工程においても用いることができる。
【0036】
液体フィルター用基材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン及び/又はポリプロピレンからなる多孔質基材がよく知られている。
上述した本発明の実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜からなる基材は、ポリテトラフルオロエチレン多孔質基材と比べて、薬液との親和性がよい。そのため、例えば、フィルターの薬液との親和性付与加工が容易になる。また、フィルターハウジング内にフィルターカートリッジを装填して、薬液を充填する際に、フィルターカートリッジ内に空気溜りが出来にくく、薬液のろ過歩留りが良くなる。さらに、ポリエチレン樹脂そのものがハロゲン元素を含まないため、使用済みのフィルターカートリッジの取扱いが容易であり、環境負荷を低減できる等の効果もある。
【0037】
[液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)の製造方法]
本発明の実施形態に係る液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)は、A層及びB層を少なくとも有し、かつ、上記のバブルポイント及び透水性能が得られる方法であればいずれの方法で製造されてもよい。本発明の実施形態では、好ましくは、以下に示す工程(I)〜工程(V)を有する液体フィルター用基材の製造方法によって製造される。すなわち、
(I)A層について、少なくとも、ポリオレフィン(好ましくは、ポリオレフィンを5質量%以上含むポリオレフィン組成物、更に好ましくは上記ポリエチレン組成物)、及び溶剤を含む第1の溶液を調製する工程、
(II)B層について、少なくとも、ポリオレフィン(好ましくは、ポリオレフィンを5質量%以上含むポリオレフィン組成物、更に好ましくは上記ポリエチレン組成物)、溶剤、及びフィラーを含む第2の溶液を調製する工程、
(III)上記工程(I)の第1の溶液を溶融混練して得た溶融混練物と、上記工程(II)の第2の溶液を溶融混練して得た溶融混練物と、をダイ(好ましくはフラットダイ)より共押出し、冷却固化することで、多層のゲル状成形物を得る工程、
(IV)前記多層のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する工程、
(V)少なくとも一方向に延伸する工程の前又は後に、前記多層のゲル状成形物中の溶剤の少なくとも一部を除去する工程、
【0038】
上記では、工程(IV)及び工程(V)は、いずれが先に行われてもよいが、好ましくは下記を順次実施することで、より好ましく製造することができる。
(VI)多層のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する前に、多層のゲル状成形物から予め一部の溶剤を絞り出す工程
(VII)溶剤を絞り出した後の多層のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する工程
(VIII)延伸後の中間成形物の内部から溶剤を抽出洗浄する工程
【0039】
工程(I)では、A層に含まれるポリオレフィン(好ましくは、ポリオレフィンを5質量%以上含むポリオレフィン組成物、更に好ましくは上記ポリエチレン組成物)、及び溶剤(好ましくは大気圧における沸点が210℃以上の不揮発溶剤)を含む第1の溶液(上記A層を形成するための溶液)を調製する。ここで、溶液は、好ましくは熱可逆的ゾル・ゲル溶液であり、すなわちポリオレフィンを溶剤に加熱溶解させることによりゾル化させ、熱可逆的ゾル・ゲル溶液を調製する。
【0040】
工程(I)における溶剤としては、ポリオレフィンを十分に膨潤できるもの又は溶解できるものであれば特に制限はないが、大気圧における沸点が210℃以上の不揮発溶剤、あるいは、当該不揮発溶剤と大気圧における沸点が210℃未満の揮発溶剤との混合溶剤を用いることが好ましい。不揮発溶剤としては、例えば、流動パラフィン、パラフィン油、鉱油、ひまし油、あるいはこれらを2種以上組み合わせた溶剤などが好ましく挙げられる。中でも、不揮発溶剤としては、流動パラフィンが好ましい。揮発溶剤としては、例えば、テトラリン、エチレングリコール、デカリン、トルエン、キシレン、ジエチルトリアミン、エチレンジアミン、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、あるいはこれらを2種以上組み合わせた溶剤などが好ましく挙げられる。
【0041】
工程(I)の溶液においては、液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)の液体透過性と濾材としての捕集性能を制御する観点から、ポリオレフィンの濃度は、溶液の全質量に対して、10質量%〜45質量%が好ましく、さらには13質量%〜25質量%が好ましい。ポリオレフィンの濃度が10質量%以上であると、力学強度を良好に維持することができ、ハンドリング性に優れたものとなり、さらにはポリオレフィン微多孔膜の製膜において切断の発生頻度が少なく抑えられる。また、ポリオレフィンの濃度が45質量%以下であると、空孔を形成しやすい。
【0042】
工程(II)では、B層に含まれるポリオレフィン(好ましくは、ポリオレフィンを5質量%以上含むポリオレフィン組成物、更に好ましくは上記ポリエチレン組成物)と溶剤とフィラーとを含む第2の溶液(上記B層を形成するための溶液)を調製する。工程(II)は、上記工程(I)と同時に実施することができる。
また、工程(II)に用いる溶剤及び溶剤の含有量、ポリオレフィン及びポリオレフィンの濃度は、上記工程(I)と同様である。
【0043】
フィラーの第2の溶液中における含有量は、ポリオレフィンとフィラーの合計質量に対して、40質量%以上80質量%以下にすることが好ましく、45質量%以上75質量%以下がより好ましい。
【0044】
工程(III)は、工程(I)及び工程(II)で調製した第1の溶液及び第2の溶液を別々の混練器で溶融混練し、それぞれで得られた溶融混練物をダイ(好ましくはフラットダイ)より共押出し、冷却固化して多層状のゲル状成形物を得る。好ましくは、溶融混練物を、ポリオレフィンの融点乃至「融点+65℃」の温度範囲において、ダイ(好ましくはフラットダイ)より共押出して押出物を得、次いで前記押出物を冷却して多層のゲル状成形物を得る。
【0045】
フラットダイとしては、マルチマニホールド型、フィードブロック型、スタックプレート型を用いることができる。成形物としては、シート状に賦形することが好ましい。
冷却は、水溶液又は有機溶媒へのクエンチでもよいし、冷却された金属ロールへのキャスティングでもよい。一般的には、冷却は、水又はゾル・ゲル溶液時に使用した揮発性溶媒へのクエンチによる方法が適用される。冷却温度は、10℃〜40℃が好ましい。
なお、水浴の表層に水流を設け、多層のゲル状成形物を作製することが好ましい。これにより、水浴中でゲル化した成形物(例えばシート)の中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤が成形物に再び付着しないようにすることができる。
【0046】
工程(IV)は、多層のゲル状成形物を一方向又は二方向(例えばMD及びTD)に延伸する工程である。一方向に又は二方向(例えばMD及びTD)に延伸する工程の前又は後には、工程(V)を設けることができ、工程(V)では、多層のゲル状成形物中の溶剤の少なくとも一部を除去する。
また、工程(VI)は、多層のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸する前に多層のゲル状成形物内の溶媒の一部を予め絞り出す工程である。工程(VI)では、例えば、上下2つのベルト又はローラーの間隙を通過させる等の方法により、多層のゲル状成形物の面に圧力をかけることで好適に実施することが可能である。
絞り出す溶媒の量は、液体フィルター用基材に要求される液体透過性及び濾過対象物の捕集性能により調整する必要があるが、その調整は、上下のベルト又はローラー間の押し圧力、絞り出し工程の温度、押し回数により適正な範囲に調整することができる。
なお、多層のゲル状成形物が受ける圧力は、ベルト等の面状体で行う場合は0.1MPa〜2.0MPaとなるように調整されることが好ましく、ローラー等で行う場合は2kgf/m〜45kgf/mとなるように調整されることが好ましい。
絞り出し温度は、10℃〜100℃であることが好ましい。
また、押し回数は、設備の許容スペースによるため、特に制限なく実施することは可能である。なお、必要に応じて、溶媒の絞り出し前に一段又は複数段の予備加熱を行い、一部の溶媒を成形物(例えばシート)内から除去してもよい。その場合、予備加熱温度は50℃〜100℃が好ましい。
【0047】
工程(VII)は、前記工程(VI)で溶剤を絞り出した後の多層のゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸して中間成形物を作製する工程である。ここで、工程(VII)の延伸は、二軸延伸が好ましく、縦延伸及び横延伸を別々に実施する逐次二軸延伸、又は縦延伸及び横延伸を同時に実施する同時二軸延伸のいずれの方法も好適に用いることが可能である。また、縦方向に複数回延伸した後に横方向に延伸する方法、縦方向に延伸した後に横方向に複数回延伸する方法、逐次二軸延伸した後にさらに縦方向及び/又は横方向に1回もしくは複数回延伸する方法も好ましい。
【0048】
トータルの延伸倍率(=縦延伸倍率と横延伸倍率の積)は、ポリオレフィン微多孔膜の液体透過性と濾過対象物の捕集性能を制御する観点から、好ましくは20倍〜60倍であり、より好ましくは20倍〜50倍である。延伸倍率が60倍以下であると、積層ポリオレフィン微多孔膜の製膜において、切断の発生頻度が低く抑えられる。また、延伸倍率が20倍以上であると、厚み斑の発生がより抑制される。延伸は、溶媒を好適な状態に残存させた状態で行うことが前述したように好ましい。延伸温度は、80℃〜125℃が好ましい。
【0049】
また(VII)の延伸工程に次いで熱固定処理を行ってもよい。熱工程処理時の熱固定温度は、液体フィルター用基材の液体透過性と濾過対象物の捕集性能を制御する観点から、110℃〜140℃であることが好ましい。熱固定温度が140℃以下であると、液体フィルター用基材の濾過対象物の捕集性能により優れたものとなる。熱固定温度が110℃以上であると、透過性能を良好に維持することができる。
【0050】
工程(VIII)は、延伸した中間成形物の内部から溶媒を抽出洗浄する工程である。ここで、工程(VIII)は、延伸した中間成形物(延伸フィルム)の内部から溶媒を抽出するために、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、ヘキサン等の炭化水素などの溶媒で洗浄することが好ましい。
洗浄は、溶媒を溜めた槽内に中間成形物を浸漬して洗浄する場合、20秒〜150秒の時間を掛けることが、不純物の溶出が少ない液体フィルター用基材(積層ポリオレフィン微多孔膜)を得るために好ましく、より好ましくは30秒〜150秒であり、特に好ましくは30秒〜120秒である。さらに、より洗浄の効果を高めるためには、槽を数段に分け、積層ポリオレフィン微多孔膜の搬送工程の下流側から洗浄溶媒を注ぎ入れ、工程搬送の上流側に向けて洗浄溶媒を流し、下流槽における洗浄溶媒の純度を上流層のものよりも高くすることが好ましい。
また、液体フィルター用基材への要求性能によっては、アニール処理により熱セットを行ってもよい。なお、アニール処理は、工程での搬送性等の観点から、50℃〜150℃で実施することが好ましく、50℃〜140℃で実施することがさらに好ましい。
【0051】
この製法により、優れた液体透過性と優れた濾過対象物の捕集性能を併せ持ち、かつ、長期使用において安定した液体透過性を有する液体フィルター用基材を提供することが可能になる。
【0052】
なお、本開示において、液体フィルター用基材の製造方法は、上述したものに限定されない。例えば、上記工程(III)においては、フラットダイ等による共押出によらずに、A層のためのダイとB層のためのダイとを別々に設けて各ダイで多層のゲル状成形物を押し出した後、両成形物を張り合わせ、積層ゲル状シートを作製する方法でもよい。また、A層となる微多孔膜とB層となる微多孔膜とを別々に作製しておき、接着剤等を用いてA層とB層が接着された液体フィルター用基材としてもよい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の一実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、本実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0054】
[測定方法]
(透水性能(水流量))
予め積層ポリオレフィン微多孔膜をエタノールに浸漬し、室温下で乾燥した。この積層ポリオレフィン微多孔膜を、直径37mmのステンレス製の透液セル(透液面積Scm)にセットした。透液セル上の該積層ポリオレフィン微多孔膜を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた後、90kPaの差圧で予め計量した純水V(100ml)を透過させて、純水全量が透過するのに要した時間Tl(min)を計測した。その純水の液量と純水の透過に要した時間から、90kPa差圧下における単位時間(min)・単位面積(cm)当たりの透水量Vsを以下の式より計算し、これを透水性能(ml /min・cm) とした。測定は、24℃の温度雰囲気下で行った。
Vs=V/(Tl×S)
【0055】
(バブルポイント)
積層ポリオレフィン微多孔膜のバブルポイントは、ASTM E−128−61に準拠し、測定溶媒にエタノールを用いて測定した。
【0056】
(厚さ)
接触式の膜厚計(ミツトヨ社製)にて積層ポリオレフィン微多孔膜の膜厚を20点測定し、これらを平均することで求めた。ここで接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状のものを用いた。測定圧は0.1Nとした。
【0057】
(空孔率)
積層ポリオレフィン微多孔膜の空孔率(ε)は、下記式により算出した。
ε(%)={1−Ws/(ds・t)}×100
Ws:積層ポリオレフィン微多孔膜の目付け(g/m
ds:ポリオレフィンの真密度(g/cm
t:積層ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm)
なお、積層ポリオレフィン微多孔膜の目付けは、サンプルを10cm×10cmに切り出し、その質量を測定し、質量を面積で割ることで目付を求めた。
【0058】
(固体捕集性能)
金コロイド(平均粒子径3nm)を0.0045質量%含有する水溶液100mlを差圧10kPaで積層ポリオレフィン微多孔膜を介してろ過を行った。ろ過前の金コロイド水溶液100mlの質量(M1)と、積層ポリオレフィン微多孔膜を通過したろ液の質量(M2)と、の差から、下記式にしたがって金コロイドの捕集率を求めた。
なお、固体捕集性能の評価は、捕集率が90%以上である場合を最良(AA)とし、捕集率が80%以上90%未満の場合を良好(A)とし、捕集率が80%未満の場合を不良(B)として判定した。
捕集率(%)=((M1−M2)/(M1×45×10−6))×100
【0059】
(透水量変化率(送液安定性))
予め積層ポリオレフィン微多孔膜をエタノールに浸漬し、室温下で乾燥した。この積層ポリオレフィン微多孔膜を、直径37mmのステンレス製の透液セル(透液面積Scm)上に、0.5mm間隔で5枚を重ねてセットし、透液セル上の積層ポリオレフィン微多孔膜を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた。その後、40kPaの差圧下で積層ポリオレフィン微多孔膜に純水200mlを透過させ、全量が積層ポリオレフィン微多孔膜を透過するのに要した時間(T1)を計測し、その後直ちに差圧状態を開放した。引き続き、同一サンプルを使って、40kPaの差圧下で純水200mlを透過させ、直ちに差圧を開放する操作を100回繰り返した。100回目の純水200mlの透過に要した時間(T100)を計測して、以下の式より透水量変化率(%)を算出した。
なお、評価は、透水量変化率が10%以下である場合を最良(AA)とし、透水量変化率が10%超15%以下の場合を良好(A)とし、透水量変化率が15%超の場合を不良(B)として判定した。なお、透水量変化率が良好であれば、長期使用において良好な多孔質構造が維持できているとも理解できる。
透水量変化率(%)=(T100−T1)/Tl × 100
【0060】
(実施例1)
A層用の溶液として、重量平均分子量が440万の超高分子量ポリエチレン(PE1)20質量%と、重量平均分子量が30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE2)80質量%と、を混合し、樹脂組成総量が17質量部になるようにして、予め準備していた流動パラフィン83質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Aを調製した。
B層用の溶液として、重量平均分子量が440万の超高分子量ポリエチレン(PE3)5質量%と、重量平均分子量が30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE4)20質量%と、平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウムからなるフィラー75質量%と、を混合し、固形分総質量が35質量部になるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン65質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Bを調製した。
【0061】
得られたポリエチレン溶液Aとポリエチレン溶液Bとをフィードブロックに供給し、温度175℃で溶融混練してそれぞれ混練物とし、この2つの混練物をダイより共押出して多層シート状に成形し、成形された多層シートを水浴中で20℃に冷却するとともに、積層ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。このとき、水浴の表層に水流を設けて、水浴中でゲル化した多層シートの中から放出されて水面に浮遊する溶剤が、再び多層シートに付着しないようにした。
【0062】
作製したベーステープを、40℃に加熱したローラー上を20kgf/mの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、ベーステープを長手方向(MD)に温度90℃にて倍率4倍で延伸し、引き続いて幅方向(TD)に温度105℃にて倍率7倍で延伸することで二軸延伸した。その後、直ちに128℃で熱処理(熱固定)を行った。
次に、二軸延伸したベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。ここで、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合、洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)とした。
その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、積層ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0063】
得られた積層ポリオレフィン微多孔膜は、粒径3nmの金コロイド粒子の捕集率が90%以上であり、優れた捕集性能を示し、送液安定性と液体透過性にも優れていた。
上記した製造条件を表1に示し、得られた積層ポリオレフィン微多孔膜の物性を表2に示す。なお、以下の実施例及び比較例についても同様に表1及び表2に示す。
【0064】
(実施例2)
B層用の溶液として、重量平均分子量が440万の超高分子量ポリエチレン(PE3)7.5質量%と、重量平均分子量が30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE4)29.5質量%と、水酸化マグネシウム(フィラー)63質量%と、を混合し、固形分総質量が35質量部となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン65質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Bを調製した。
実施例1において、上記のポリエチレン溶液Bに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、積層ポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られた積層ポリオレフィン微多孔膜は、粒径3nmの金コロイド粒子の捕集率が90%以上であり、優れた捕集性能を示し、送液安定性と液体透過性にも優れていた。
【0065】
(実施例3)
B層用の溶液として、重量平均分子量が440万の超高分子量ポリエチレン(PE3)9質量%と、重量平均分子量が30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE4)35質量%と、水酸化マグネシウム(フィラー;平均粒子径0.8μm)56質量%と、を混合し、固形分総質量が30質量部となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン70質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Bを調製した。
実施例1において、上記のポリエチレン溶液Bに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、積層ポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られた積層ポリオレフィン微多孔膜は、粒径3nmの金コロイド粒子の捕集率が90%以上であり、優れた捕集性能を示し、送液安定性と液体透過性にも優れていた。
【0066】
(実施例4)
B層用の溶液として、重量平均分子量が440万の超高分子量ポリエチレン(PE3)12質量%と、重量平均分子量が30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE4)48質量%と、水酸化マグネシウム(フィラー;平均粒子径0.8μm)40質量%と、を混合し、固形分総質量が26質量部となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン74質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Bを調製した。
実施例1において、上記のポリエチレン溶液Bに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、積層ポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られた積層ポリオレフィン微多孔膜は、粒径3nmの金コロイド粒子の捕集率が80%以上であり、優れた捕集性能を示し、送液安定性と液体透過性にも優れていた。
【0067】
(比較例1)
A層用の溶液として、重量平均分子量が440万の超高分子量ポリエチレン(PE1)20質量%と、重量平均分子量が30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE2)80質量%と、を混合し、樹脂組成総量が17質量部になるようにして、予め準備していた流動パラフィン83質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Aを調製した。B層用の溶液として、重量平均分子量が440万の超高分子量ポリエチレン(PE3)13質量%と、重量平均分子量が30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE4)49質量%と、平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウムからなるフィラー38質量%と、を混合し、固形分総質量が24質量部になるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン76質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Bを調製した。
実施例1において、上記のポリエチレン溶液B及びポリエチレン溶液Bに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、積層ポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られた積層ポリオレフィン微多孔膜は、バブルポイントが低い上に、粒径3nmの金コロイド粒子の捕集率が80%未満であり、送液安定性が不十分であった。
【0068】
(比較例2)
A層用の溶液として、重量平均分子量が440万の超高分子量ポリエチレン(PE1)17質量%と、重量平均分子量が30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE2)83質量部を混合し、樹脂組成総量が17質量部になるようにして、予め準備していた流動パラフィン83質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Aを調製した。
B層用の溶液として、重量平均分子量が440万の超高分子量ポリエチレン(PE3)17質量%と、重量平均分子量が56万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE4)83質量%を混合し、固形分総質量が25質量部になるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン72質量部とデカリン3質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Bを調製した。
得られたポリエチレン溶液Aとポリエチレン溶液Bをフィードブロックに供給し、温度160℃で溶融混練してそれぞれ混練物とし、この2つの混練物をダイより共押出して多層シート状に成形し、成形された多層シートを水浴中で25℃で冷却するとともに、積層ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。このとき、水浴の表層に水流を設けて、水浴中でゲル化した多層シートの中から放出されて水面に浮遊する溶剤が、再び多層シートに付着しないようにした。
【0069】
作製したベーステープを、55℃で10分、さらに95℃で10分乾燥させてデカリンをベーステープ内から除去した。その後、ベーステープを、85℃に加熱したローラー上を20kgf/mの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、ベーステープを長手方向(MD)に温度100℃にて倍率5.8倍で延伸し、幅方向(TD)に温度100℃にて倍率14倍で延伸することで二軸延伸した。その後、直ちに118℃で熱処理(熱固定)を行った。
次に、二軸延伸したベーステープを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。ここで、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合、洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)とした。
その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることで、積層ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0070】
得られた積層ポリオレフィン微多孔膜は、金コロイド粒径3nmの捕集率が80%以上であり、優れた捕集性能を示したが、送液安定性と透水性能が不十分であった。
【0071】
(比較例3)
A層用の溶液として、重量平均分子量440万の超高分子量ポリエチレン(PE1)20質量部と、重量平均分子量30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE2)80質量部と、を混合し、樹脂組成総量が17質量部になるようにして、予め準備していた流動パラフィン83質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Aを調製した。
B層用の溶液として、重量平均分子量440万の超高分子ポリエチレン(PE3)30質量%と、重量平均分子量が56万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE4)70質量%と、を混合し、固形分総量が32質量部になるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン53質量部及びデカリン15重量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Bを調製した。
比較例2において、上記のポリエチレン溶液A及びポリエチレン溶液Bに代えたこと以外は、比較例2と同様にして、積層ポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られた積層ポリオレフィン微多孔膜は、金コロイド粒径3nmの捕集率は80%以上であり、優れた捕集性能を示したが、バブルポイントが高い上に送液安定性と透水性能も不十分であった。
【0072】
(比較例4)
A層用の溶液として、重量平均分子量が440万の超高分子量ポリエチレン(PE1)20質量%と、重量平均分子量が30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE2)80質量%と、を混合し、樹脂組成総量が17質量部になるようにして、予め準備していた流動パラフィン83質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Aを調製した。B層用の溶液として重量平均分子量440万の超高分子ポリエチレン(PE3)3.9質量%と、重量平均分子量30万で、かつ、密度が0.96g/cmの高密度ポリエチレン(PE4)15.6質量%と、平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム(フィラー)80.5質量%と、を混合し、固形分総質量が34質量部になるようして、予め準備しておいた流動パラフィン66質量部を混ぜ、ポリエチレン溶液Bを調製した。
実施例1において、上記のポリエチレン溶液A及びポリエチレン溶液Bに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、積層ポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られた積層ポリオレフィン微多孔膜は、透水性能が高い上に、金コロイド粒径3nmの捕集率が80%未満であり、送液安定性も不十分であった。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
日本出願2014−130045の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【要約】
本発明の一実施形態は、ポリオレフィンを含む微多孔膜状のA層の少なくとも1層と、ポリオレフィン及びフィラーを含む微多孔膜状のB層の少なくとも1層と、を有し、バブルポイントが0.40Mpa以上0.80Mpa以下であり、透水性能が1.0ml/min・cm以上4.0ml/min・cm以下である、液体フィルター用基材を提供する。