【文献】
落合 宏明 Hiroaki Ochiai,OH1結晶を用いた差周波光混合によるテラヘルツ波発生 THz-wave generation from OH1 crystal by difference frequency mixing light,2010年秋季第71回応用物理学会学術講演会講演予稿集,2010年
【文献】
秋葉 拓也 Takuya Akiba,DAST結晶を用いたイントラキャビティDFGによるTHz波発生 THz-wave generation using DAST crystal by intra-cavity difference frequency generation,第55回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 Vol.3,2008年
【文献】
K.Termkoa, et al.,"Production of orientation-patterned GaP templates using wafer fusion techniques",Optical Meterials,2011年 8月27日,Vol.34,p.30-35
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の非線形光学結晶のいずれかの光学軸のベクトル方向と、前記第2の非線形光学結晶のいずれかの光学軸のベクトル方向とが同じ方向を向くように、前記第1の非線形光学結晶と前記第2の非線形光学結晶とを配置した請求項1に記載の光学結晶。
前記第2の非線形光学結晶の光学軸のベクトル方向と、該光学軸に対応する前記第1の非線形光学結晶の光学軸とのベクトル方向とが同じ方向を向くように、前記第1の非線形光学結晶と前記第2の非線形光学結晶とを配置した請求項2に記載の光学結晶。
前記第1の非線形光学結晶及び前記第2の非線形光学結晶の各々は、2価の連結基である主骨格と、前記主骨格に電子求引性基及び電子供与性基が結合した構造からなる化合物である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光学結晶。
前記化合物は、DAST結晶、DASC結晶、OH1、BNA、BDAS−TP、DAS−HTP、及びMC−TPSから選択された一種である請求項4に記載の光学結晶。
前記第1の非線形光学結晶と前記第2の非線形光学結晶とを、融着法、結晶育成法、及び接着剤法のいずれかの方法により接触させた請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光学結晶。
前記入射装置を、前記光発生装置から発生された異なる2波長の光が、前記第1の非線形光学結晶から前記第2の非線形光学結晶への方向へ透過する位置と、前記第2の非線形光学結晶から前記第1の非線形光学結晶への方向に透過する位置との間で、前記光学結晶及び前記光発生装置の少なくとも一方を回転させる回転部材とした請求項7に記載のテラヘルツ波発生装置。
前記入射装置を、前記光発生装置から発生された異なる2波長の光を反射するミラーと、前記異なる2波長の光及び前記ミラーで反射した光を透過する透過部、及び入射されたテラヘルツ波を反射する反射面を備え、前記入射されたテラヘルツ波を反射するように、前記光学結晶を挟むように前記光発生装置と前記ミラーとの間に配置された一対の軸外し放物面鏡とで構成した請求項7に記載のテラヘルツ波発生装置。
第1の分光特性のテラヘルツ波を発生させる場合には、異なる2波長の光が、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光学結晶の前記第1の非線形光学結晶から前記第2の非線形光学結晶への方向に透過するように、前記異なる2波長の光を前記光学結晶に入射し、前記第1の分光特性とは異なる第2の分光特性のテラヘルツ波を発生させる場合には、前記異なる2波長の光が、前記第2の非線形光学結晶から前記第1の非線形光学結晶への方向に透過するように、前記異なる2波長の光を前記光学結晶に入射するテラヘルツ波発生方法。
異なる2波長の光を共振させながら、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光学結晶の前記第1の非線形光学結晶から前記第2の非線形光学結晶への方向、及び前記第2の非線形光学結晶から前記第1の非線形光学結晶への方向に透過するように前記光学結晶に入射し、該光学結晶の前記第1の非線形光学結晶側から第1のテラヘルツ波を発生させ、前記第2の非線形光学結晶側から第2のテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のテラヘルツ波発生有機材料を使用して発生したテラヘルツ波は、特定の周波数領域におけるテラヘルツ波の強度の減少を多少抑制できてはいるものの、成分Aのみの非線形光学結晶を使用して発生したテラヘルツ波において強度が減少する周波数領域、及び成分Bのみの非線形光学結晶を使用して発生したテラヘルツ波において強度が減少する周波数領域の両方で強度が減少した特性となってしまう、という問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、1つの光学結晶で異なる分光特性のテラヘルツ波を発生することができる光学結晶、及びテラヘルツ波発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明の光学結晶は、入射された異なる2波長の光から差周波発生により前記異なる2波長の光の差周波数分に相当するテラヘルツ波を発生する第1の非線形光学結晶と、入射された前記異なる2波長の光から差周波発生により前記異なる2波長の光の差周波数分に相当するテラヘルツ波を発生し、かつ前記第1の非線形光学結晶と材質が異なる第2の非線形光学結晶と、から構成された光学結晶であって、前記第1の非線形光学結晶と前記第2の非線形光学結晶とを、接触または近接して配置して構成されている。
【0008】
第1の発明の光学結晶によれば、第1の非線形光学結晶は、入射された異なる2波長の光から差周波発生により異なる2波長の差周波数分に相当するテラヘルツ波を発生する。第2の非線形光学結晶は、第1の非線形光学結晶とは材質が異なるため、入射された異なる2波長の光から差周波発生により異なる2波長の差周波数分に相当するテラヘルツ波であって、第1の非線形光学結晶から発生するテラヘルツ波とは異なるテラヘルツ波を発生する。この第1の非線形光学結晶と第2の非線形光学結晶とを、接触または近接して配置して1つの光学結晶として構成し、光学結晶へ入射する異なる2波長の光の入射方向を切り替えることで、1つの光学結晶で異なる分光特性のテラヘルツ波を発生することができる。
【0009】
また、第1の発明の光学結晶において、前記第1の非線形光学結晶のいずれかの光学軸のベクトル方向と、前記第2の非線形光学結晶のいずれかの光学軸のベクトル方向とが同じ方向を向くように、前記第1の非線形光学結晶と前記第2の非線形光学結晶とを配置することができる。さらに、第1の発明の光学結晶において、前記第2の非線形光学結晶の光学軸のベクトル方向と、該光学軸に対応する前記第1の非線形光学結晶の光学軸とのベクトル方向とが同じ方向を向くように、前記第1の非線形光学結晶と前記第2の非線形光学結晶とを配置することができる。例えば、第1の非線形光学結晶と第2の非線形光学結晶とを、各々のa軸のベクトル方向が同じ方向を向くように配置することができる。また、第1の非線形光学結晶と第2の非線形光学結晶とを、各々の光学的特性が最大となる光学軸のベクトル方向が同じ方向を向くように配置することもできる。この場合、第1の非線形光学結晶及び第2の非線形光学結晶の性能を最大限に引き出すことができる。
【0010】
また、第1の発明の光学結晶において、前記第1の非線形光学結晶及び前記第2の非線形光学結晶の各々は、2価の連結基である主骨格と、前記主骨格に電子求引性基及び電子供与性基が結合した構造からなる化合物とすることができる。具体的には、前記化合物は、DAST結晶、DASC結晶、OH1、BNA、BDAS−TP、DAS−HTP、及びMC−TPSから選択された一種とすることができる。
【0011】
また、第1の発明の光学結晶において、前記第1の非線形光学結晶と前記第2の非線形光学結晶とを、融着法、結晶育成法、及び接着剤法のいずれかの方法により接触させることができる。
【0012】
第2の発明のテラヘルツ波発生装置は、第1の発明の光学結晶と、前記異なる2波長の光を発生する光発生装置と、前記光発生装置から発生された異なる2波長の光が、前記第1の非線形光学結晶から前記第2の非線形光学結晶への方向、及び前記第2の非線形光学結晶から前記第1の非線形光学結晶への方向に透過するように、前記異なる2波長の光を前記光学結晶に入射する入射装置と、を含んで構成することができる。
【0013】
第2の発明のテラヘルツ波発生装置によれば、光発生装置が異なる2波長の光を発生する。入射装置は、光発生装置から発生された異なる2波長の光が、第1の非線形光学結晶から第2の非線形光学結晶への方向、及び第2の非線形光学結晶から第1の非線形光学結晶への方向に透過するように、光学発生装置から発生された光を光学結晶に入射する。このように、入射装置により、光学結晶へ入射する異なる2波長の光の入射方向を切り替えることで、1つの光学結晶で異なる分光特性のテラヘルツ波を発生することができる。
【0014】
また、第2の発明のテラヘルツ発生装置において、前記入射装置を、前記光発生装置から発生された異なる2波長の光が、前記第1の非線形光学結晶から前記第2の非線形光学結晶への方向へ透過する位置と、前記第2の非線形光学結晶から前記第1の非線形光学結晶への方向に透過する位置との間で、前記光学結晶及び前記光発生装置の少なくとも一方を回転させる回転部材とすることができる。また、前記入射装置を、前記光発生装置から発生された異なる2波長の光を反射するミラーと、前記異なる2波長の光及び前記ミラーで反射した光を透過する透過部、及び入射されたテラヘルツ波を反射する反射面を備え、前記入射されたテラヘルツ波を反射するように、前記光学結晶を挟むように前記光発生装置と前記ミラーとの間に配置された一対の軸外し放物面鏡とで構成することができる。
【0015】
第3の発明のテラヘルツ波発生装置は、第1のミラーと、前記第1のミラーと共に共振器を構成する第2のミラーを備え、異なる2波長の光を発生する光発生装置と、入射された異なる2波長の光を透過する透過部、及び入射されたテラヘルツ波を反射する反射面を備え、前記入射されたテラヘルツ波を反射するように前記共振器内に配置された一対の軸外し放物面鏡と、前記一対の軸外し放物面鏡の間に配置された第1の発明の光学結晶と、を含んで構成されている。
【0016】
第3の発明のテラヘルツ波発生装置によれば、第1のミラーと、第1のミラーと共に共振器を構成する第2のミラーを備えた光発生装置が、異なる2波長の光を発生する。異なる2波長の光は、共振器内に配置された一対の軸外し放物面鏡の透過部を透過して、一対の軸外し放物面鏡の間に配置された上記光学結晶に入射され、光学結晶から各々異なる分光特性のテラヘルツ波が発生する。軸外し放物面鏡は、入射されたテラヘルツ波を反射する反射面を備えており、光学結晶から発生され、反射面に入射されたテラヘルツ波を反射する。
【0017】
このように、共振器内に配置された一対の軸外し放物面鏡の間に第1の発明の光学結晶を配置することで、異なる2波長の光が光学結晶に対して双方向から入射されることになり、1つの光学結晶で異なる分光特性のテラヘルツ波を発生することができる。
【0018】
また、第3のテラヘルツ波発生装置は、前記一対の軸外し放物面鏡の各々から反射されたテラヘルツ波を混合する混合器を含んで構成してもよい。これにより、異なる分光特性のテラヘルツ波を混合したテラヘルツ波を得ることができる。
【0019】
第4の発明のテラヘルツ波発生方法は、第1の分光特性のテラヘルツ波を発生させる場合には、異なる2波長の光が、第1の発明の光学結晶の前記第1の非線形光学結晶から前記第2の非線形光学結晶への方向に透過するように、前記異なる2波長の光を前記光学結晶に入射し、前記第1の分光特性とは異なる第2の分光特性のテラヘルツ波を発生させる場合には、前記異なる2波長の光が、前記第2の非線形光学結晶から前記第1の非線形光学結晶への方向に透過するように、前記異なる2波長の光を前記光学結晶に入射する方法である。
【0020】
また、第5の発明のテラヘルツ波発生方法は、異なる2波長の光を共振させながら、第1の発明の光学結晶の前記第1の非線形光学結晶から前記第2の非線形光学結晶への方向、及び前記第2の非線形光学結晶から前記第1の非線形光学結晶への方向に透過するように前記光学結晶に入射し、該光学結晶の前記第1の非線形光学結晶側から第1のテラヘルツ波を発生させ、前記第2の非線形光学結晶側から第2のテラヘルツ波を発生させる方法である。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の光学結晶、及びテラヘルツ波発生装置によれば、異なる分光特性のテラヘルツ波を発生する第1の非線形光学結晶と第2の非線形光学結晶とを、接着または近接して配置して1つの光学結晶として構成し、光学結晶へ入射する異なる2波長の光の入射方向を切り替えることで、1つの光学結晶で異なる分光特性のテラヘルツ波を発生することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の光学結晶及びテラヘルツ波発生装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、第1の実施の形態の光学結晶10は、材質が異なる2つの薄板状の非線形光学結晶を貼り合わせたものである。本実施の形態では、一方の非線形光学結晶をDAST(4−ジメチルアミノ−N−メチル−4−スチルバゾリウムトシレート)結晶10a、他方の非線形光学結晶をDASC(4−ジメチルアミノ−N−メチル−4−スチルバゾリウム−p−クロロベンゼンスルホネート)結晶10bとした例について説明する。
【0025】
非線形光学結晶であるDAST結晶10a及びDASC結晶10bの各々は、入射された異なる2波長の光(励起光)から差周波発生により異なる2波長の差周波数分に相当するテラヘルツ波を発生する。DAST結晶10a単体に励起光を入射した場合に発生するテラヘルツ波のスペクトルは、
図2に示すように、8.5THz付近に出力の吸収が見られる。また、DASC結晶10b単体に励起光を入射した場合に発生するテラヘルツ波のスペクトルは、
図3に示すように、7.7THz付近に出力の吸収が見られる。
【0026】
このように発生するテラヘルツ波の特性が異なる2つの非線形光学結晶を貼り合わせた本実施の形態の光学結晶10に、励起光を入射した際に発生するテラヘルツ波のスペクトルを
図4に示す。同図(B)は、DASC結晶10bからDAST結晶10aの方向(同図(A)に示す矢印Rの方向)から励起光を入射した場合のテラヘルツ波のスペクトルである。この場合、テラヘルツ波が発生する側の面の結晶であるDAST結晶10aの場合のスペクトル(
図2)の特徴と同様に、8.5THz付近に出力の吸収が存在するスペクトルのテラヘルツ波が発生する。一方、同図(C)は、DAST結晶10aからDASC結晶10bの方向(同図(A)に示す矢印Lの方向)から励起光を入射した場合のテラヘルツ波のスペクトルである。この場合、テラヘルツ波が発生する側の面の結晶であるDASC結晶10bの場合のスペクトル(
図3)の特徴と同様に、7.7THz付近に出力の吸収が存在するスペクトルのテラヘルツ波が発生する。なお、同図(B)及び(C)の各々で示された2つのスペクトルは、DASC結晶10aとDASC結晶10bとを重ね合わせる際の光学軸を反転させたものである。光学軸についての詳細は後述する。
【0027】
このように、光学結晶10への励起光の入射方向により、発生するテラヘルツ波の特性が異なることの原理について説明する。
図5に示すように、DAST結晶10a側から励起光を入射した場合には、まず、DAST結晶10aから
図2に示すような特性のテラヘルツ波(テラヘルツ波THz1)が発生するが、このテラヘルツ波THz1は、DASC結晶10bにおいて吸収されてしまう。また、DAST結晶10aを透過した励起光がDASC結晶10bに入射し、DASC結晶10bから
図3に示すような特性のテラヘルツ波(テラヘルツ波THz2)が発生する。従って、光学結晶10からはテラヘルツ波THz2のみが発生することになる。DASC結晶10b側から励起光を入射した場合も同様に、まず、DASC結晶10bからテラヘルツ波THz2が発生するが、DAST結晶10aにおいてテラヘルツ波2が吸収されると共に、テラヘルツ波THz1を発生する。従って、光学結晶10からはテラヘルツ波THz1のみが発生することになる。なお、
図5では、説明の便宜上、DAST結晶10aとDASC結晶10bとの間隔を離しているが、本実施の形態の光学結晶10では、これらの2結晶は接触または近接して配置されている。
【0028】
以上説明したように、第1の実施の形態の光学結晶10によれば、光学結晶10への励起光の入射方向により異なる分光特性のテラヘルツ波を得ることができる。
【0029】
ここで、第1の実施の形態の光学結晶10の作製方法について説明する
【0030】
まず、DAST結晶10a及びDASC結晶10bの光学軸を確認する。光学軸とは、光学異方性の複屈折結晶において、屈折率が一定になり、偏光していない光を入射しても複屈折が発生せず、常光線と異常光線とが一致する方向、または常光線と異常光線とのずれが最小となる方向である。
図6に示すように、非線形光学結晶の光学軸は、その結晶の屈折率や結晶構造により一意的に決定できる。なお、
図6は、DAST結晶の光学軸を示したものである。
【0031】
光学軸の確認は、例えば、吸収係数を測定し、クラマースクローニッヒの式から算出する方法のような屈折率を測定する方法により確認することができる。また、結晶構造解析による分子配列から光学軸を決定する方法により確認してもよい。また、結晶に対して任意の条件に設定した電磁波を直接照射し、最も性能が高まる方位を実験的に確認してもよい。さらに、結晶によっては、晶癖により視覚的に光学軸を確認できる結晶もあるため、視覚的に確認してもよい。
【0032】
次に、
図7に示すように、確認した光学軸を一致させるようにDAST結晶10aとDASC結晶10bとを重ね合わせる。DAST結晶やDASC結晶のように複屈折を有する複屈折結晶を重ね合わせる場合には、常光線または異常光線のどちらか一方の同一な光学軸を一致させるように重ね合わせることで、それぞれの結晶の性能を引き出すことができる。さらに、それぞれの結晶における光学的特性が最大となる光学軸を重ね合わせることで、最大限の性能を引き出すことが可能である。例えば、DAST結晶やDASC結晶ではa軸、OH1結晶ではc軸が光学的特性が最大になる光学軸にあたる。従って、本実施の形態のようにDAST結晶とDASC結晶とを重ね合わせる場合には、双方の結晶のa軸を一致させるように重ね合わせるとよい。また、例えば、DAST結晶とOH1結晶とを重ね合わせる場合には、DAST結晶のa軸とOH1結晶のc軸とを一致させるように重ね合わせるとよい。
【0033】
次に、重ね合わせたDAST結晶10aとDASC結晶10bとを貼り合わせる。貼り合わせ方法は、融着法、結晶育成法、または接着剤法を用いることができる。以下、各貼り合わせ方法について説明する。
【0034】
融着法は、融点の異なった物質を貼り合わせるために、融点の低い物質の融点まで加熱し、結晶をわずかに融かすことでそれぞれの結晶を貼り合わせ、その後冷却して固化させる方法である。具体的には、DAST結晶10a及びDASC結晶10bの融点は、それぞれ256℃、281.5℃であるため、2枚の結晶の光学軸を揃えて重ね合わせた状態で、DAST10a結晶の融点付近まで加熱してDAST結晶10aをわずかに融解させ、DASC結晶10bと融着させる。
【0035】
結晶育成法を用いる場合は、DAST結晶10aまたはDASC結晶10bを種晶として用いて、それぞれ異なった溶液(例えば、DAST結晶10aを種晶とした場合にはDASC溶液、DASC結晶10bを種晶とした場合にはDAST溶液)中で結晶成長させることで、分子レベルで結晶を貼り合わせる。
【0036】
接着剤法は、2枚の結晶の光学軸の屈折率の中間である接着剤が存在する場合、光学軸を揃えて重ね合わせる面を接着する。性能損失の少ない貼り合わせ結晶を作製できる。
【0037】
なお、ここでは、DAST結晶とDASC結晶とを接触させて貼り合わせる場合について説明したが、2つの非線形光学結晶を近接して、すなわち2つの非線形光学結晶間に隙間を設けて配置して、1つの光学結晶を構成するようにしてもよい。
【0038】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、第1の実施の形態の光学結晶10を用いて構成されたテラヘルツ波発生装置について説明する。
【0039】
図8に示すように、第2の実施の形態のテラヘルツ波発生装置12は、光学結晶10と、光学結晶10に入射される異なる2波長の励起光を発生する励起光光源14と、励起光が入射される光学結晶10の面を切り替えるための回転ステージ16と、を含んで構成されている。
【0040】
励起光光源14は、例えば、異なる2波長の光を発生することができる2波長発生半導体レーザ等を用いることができる。
【0041】
回転ステージ16は、光学結晶10を載置して回転可能に構成されている。回転ステージ16の回転は、手動で行うようにしてもよいし、モータ等の駆動源を設けて回転させるようにしてもよい。
【0042】
次に、第2の実施の形態のテラヘルツ波発生装置12の作用について説明する。
【0043】
まず、回転ステージ16に光学結晶10をセットする。そして、所望の特性のテラヘルツ波が得られるように、励起光が入射される光学結晶10の面を考慮して、回転ステージ16を回転させる。具体的には、DASC結晶により発生するテラヘルツ波THz2を得たい場合には、
図9の左図に示すように、DAST結晶10aの面が励起光光源14側となり、励起光の光路と光学結晶10の平面に対する法線方向とが一致するように回転ステージ16を回転させる。
【0044】
次に、励起光光源14から励起光を発生させて、光学結晶10へ励起光を入射する。これにより、DAST結晶10aで発生するテラヘルツ波THz1がDASC結晶10bで吸収されると共に、DASC結晶10bからテラヘルツ波THz2が発生し、所望のテラヘルツ波THz2を得ることができる。
【0045】
また、DAST結晶により発生するテラヘルツ波THz1を得たい場合には、
図9の右図に示すように、上述の状態から回転ステージを180°回転させて、DASC結晶10bの面が励起光光源14側となり、励起光の光路と光学結晶10の平面に対する法線方向とが一致するようにする。
【0046】
次に、励起光光源14から励起光を発生させて、光学結晶10へ励起光を入射する。これにより、DASC結晶10bで発生するテラヘルツ波THz2がDAST結晶10aで吸収されると共に、DAST結晶10aからテラヘルツ波THz1が発生し、所望のテラヘルツ波THz1を得ることができる。
【0047】
以上説明したように、第2の実施の形態のテラヘルツ波発生装置によれば、DAST結晶とDASC結晶とを貼り合わせた光学結晶を回転ステージにより回転させて、励起光が入射する面を切り替えるだけで、光学結晶の入れ替え等を行うことなく、異なる分光特性のテラヘルツ波を得ることができる。
【0048】
なお、第2の実施の形態では、光学結晶を垂直方向を軸として回転させる場合について説明したが、水平方向を軸として回転させるようにしてもよい。また、光学結晶を回転させる場合だけでなく、励起光光源の配置を変更して、または光学結晶を回転させると共に励起光光源の配置を変更して、一方の入射方向の励起光と他方の入射方向の励起光とを切り替えるようにしてもよい。また、一方の入射方向の励起光のための第1の励起光光源と他方の入射方向の励起光のための第2の励起光光源とを設けるようにしてもよい。ただし、装置の小型化やコスト面を考慮すると、本実施の形態のように光学結晶を回転させる構成が好ましい。
【0049】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、第1の実施の形態の光学結晶10を用いて構成されたテラヘルツ波発生装置について説明する。
【0050】
図10に示すように、第3の実施の形態のテラヘルツ波発生装置212は、異なる2波長の励起光を発生するKTPパラメトリック共振器(KTP−OPO)20と、KTP−OPO20内に配置されたテラヘルツ波発生部30と、テラヘルツ波発生部30で発生した2つのテラヘルツ波を混合する軸外し放物面鏡40と、を含んで構成されている。
【0051】
KTP−OPO20は、ポンプ光光源22と、2つのKTP(リン酸チタニルカリウム:KTiOPO
4)結晶24a、24bと、3つのミラー26a、26b、26cと、SHGカットフィルタ28と、を含んで構成されている。
【0052】
ポンプ光光源22は、KTP−OPO20において2波長の励起光を発生するための元となるポンプ光を出力する光源であり、例えば、YAGレーザ(波長:532nm、パルス幅:15ns、繰り返し周波数:50Hz)等を用いることができる。
【0053】
KTP結晶24a、24bの各々は、結晶へ入射されるポンプ光の入射角度を独立して調整可能なように回転ステージに載置されている。KTP結晶へのポンプ光の入射角度を変更することで、KTP−OPO20から発生する励起光の周波数を変更することができる。
【0054】
ミラー26a、26b、26cは、1300〜1500nmの波長の光に対して高い反射率を有するダイクロイックミラーである。ミラー26aは、ポンプ光の光路に対して45°の角度で配置されている。ポンプ光の光路の延長上に、ミラー26a、2つのKTP結晶24a、24b、ミラー26bが順に配置されている。また、ミラー26aで分岐したポンプ光の光路と垂直な方向には、SHGカットフィルタ28、テラヘルツ波発生部30、ミラー26cが順に配置されている。
【0055】
SHGカットフィルタ28は、532nmの波長成分を除去するためのフィルタである。励起光が光学結晶10に入射される前に、励起光に残留する532nm成分を除去して、光学結晶10に精度の高い励起光を入射するためのものである。
【0056】
テラヘルツ波発生部30は、一対の穴あき軸外し放物面鏡32a、32bと、一対の穴あき軸外し放物面鏡32a、32bとの間に配置された光学結晶10とで構成されている。
【0057】
光学結晶10は、第1の実施の形態で述べたように、DAST結晶10aとDASC結晶10bとを貼り合わせたものである。
【0058】
一対の穴あき軸外し放物面鏡32a、32bは、中央に穴(
図11中の一点破線部。
図10では図示省略。)が穿設された軸外し放物面鏡であり、励起光が穴を通過すると共に、放物面が対向するように配置されている。より具体的には、
図11に示すように、光学結晶10のDAST結晶10a側に穴あき軸外し放物面鏡32aが配置され、光学結晶10のDASC結晶10b側に穴あき軸外し放物面鏡32bが配置されている。穴あき軸外し放物面鏡32a、32bは、励起光が各々の穴を通過するように、かつDAST結晶10a側から発生したテラヘルツ波THz1、及びDASC結晶10b側から発生したテラヘルツ波THz2が同じ方向に反射するように配置されている。なお、
図11では、説明の便宜上、DAST結晶10aとDASC結晶10bとの間隔を離しているが、本実施の形態の光学結晶10では、これらの2結晶は接触または近接して配置されている。
【0059】
軸外し放物面鏡40は、穴あき軸外し放物面鏡32a、32bの各々で反射されたテラヘルツ波を混合して、検出器50に入射する。なお、ここでは、検出器50に入射することとしているが、実際には、検出器50の位置が、テラヘルツ波の使用目的に応じた検査ステージとなり、検査ステージにセットされた検体を透過または反射したテラヘルツ波を、検出器により検出する。
【0060】
次に、第3の実施の形態のテラヘルツ波発生装置212の作用について説明する。
【0061】
まず、KTP−OPO20において、ポンプ光光源22からポンプ光が出力されると、ポンプ光はミラー26aを透過してKTP結晶24a、24bに入射され、異なる2波長の励起光(1300〜1500nm)が発生する。発生した励起光は、ミラー26b及び26aで反射し、ミラー26c方向へ向かい、SHGカットフィルタ28で、残留する532nm成分が除去されて、テラヘルツ波発生部30に入射される。
【0062】
励起光は、穴あき軸外し放物面鏡32aの穴を通過して、DAST結晶10a側の面から光学結晶10に入射される。そして、DAST結晶10aで発生するテラヘルツ波THz1がDASC結晶10bで吸収されると共に、DASC結晶10bからテラヘルツ波THz2が発生する。
【0063】
発生したTHz波2が穴あき軸外し放物面鏡32bの放物面で同一方向(ここでは軸外し放物面鏡40方向)に反射されると共に、光学結晶10を透過した励起光が穴あき軸外し放物面鏡32bの穴を通過して、ミラー26cで反射する。
【0064】
ミラー26cで反射した励起光は、再び穴あき軸外し放物面鏡32bの穴を通過して、DASC結晶10b側の面から光学結晶10に入射される。そして、DASC結晶10bで発生するテラヘルツ波THz2がDAST結晶10aで吸収されると共に、DAST結晶10aからテラヘルツ波THz1が発生する。
【0065】
発生したTHz波1が穴あき軸外し放物面鏡32aの放物面で同一方向(ここでは軸外し放物面鏡40方向)に反射されると共に、光学結晶10を透過した励起光が穴あき軸外し放物面鏡32aの穴を通過して、ミラー26aで反射して、ミラー26b方向へ戻る。
【0066】
また、穴あき軸外し放物面鏡32aで反射したテラヘルツ波THz1、及び穴あき軸外し放物面鏡32bで反射したテラヘルツ波THz2は、軸外し放物面鏡40で混合されて、検出器50へ入射される。
【0067】
以上説明したように、第3の実施の形態のテラヘルツ波発生装置によれば、DAST結晶とDASC結晶とを貼り合わせた光学結晶をKTP−OPO内に設け、DAST結晶側から発生するテラヘルツ波とDASC結晶側から発生するテラヘルツ波とを別々に取り出した上で混合するため、各々のテラヘルツ波の特性を補い合った特性のテラヘルツ波を得ることができる。
【0068】
また、DAST結晶側から発生するテラヘルツ波、DASC結晶側から発生するテラヘルツ波、及び混合したテラヘルツ波の検出をそれぞれ切り替え可能に構成することで、1つのテラヘルツ波発生装置から3種類の異なる分光特性のテラヘルツ波を得ることができる。
【0069】
なお、第3の実施の形態では、KTP−OPOにより励起光を発生する場合について説明したが、
図12に示すように、ミラー220a、220bを備えた2波長光発生レーザユニット220を用いて励起光を発生するようにしてもよい。この場合、ミラー26cと2波長光発生レーザユニット内のミラー220bとで共振器が構成されている。
【0070】
また、第3の実施の形態では、共振器内に光学結晶を配置する場合について説明したが、励起光を共振させることなく、テラヘルツ波を発生させるようにしてもよい。例えば、KTP−OPO20や2波長光発生レーザユニット220等の光源と、ミラー26cと、光源とミラー26cとの間に光学結晶10を挟むように配置された一対の穴あき軸外し放物面鏡32a、32bとで構成することができる。この構成では、ミラー26c、及び一対の穴あき軸外し放物面鏡32a、32bが、本発明の入射装置の一例となる。
【0071】
また、第3の実施の形態では、2種類のテラヘルツ波を混合する部材として軸外し放物面鏡を用いる場合について説明したが、ミラーと集光レンズとを組み合わせた光学系により、2種類のテラヘルツ波を混合するように構成してもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、光学結晶をDAST結晶とDASC結晶とで構成する場合について説明したが、非線形性を示す異なる光学結晶を用いてもよい。非線形成を示す化合物は、π結合を有する主骨格に、電子求引性基及び電子供与性基が結合した構造からなる化合物であり、下記の式(1)で表される化合物である。また、結晶構造が非中心対称性である結晶である。また、上記条件を満たせばイオン性結晶であってもよい。
【0074】
式(1)中、Aは電子求引性基を表し、Dは電子供与性基を表し、Xは2価の連結基を表す。
【0075】
式(1)を満たす化合物としては、具体的には、DAST結晶及びDASC結晶以外に、BDAS−TP(ビス(4−ジメチルアミノ−N−メチル−4−スチルバゾリウム)テレフタレート)、DAS−HTP(4−ジメチルアミノ−N−メチル−4−スチルバリゾリウムヒドロゲンテレフタレート)、BNA(N−ベンジル2−メチル−4−ニトロアニリン)、OH1(2−(3−(4−ヒドロキシスチリル)−5,5−ジメチルシクロヘクス−2−エニリデン)マロノニトリル)、MC−PTS(メロシアニン−p−トルエンスルホン酸)等が挙げられる。これらの化学式を下記に示す。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。なお、本発明は本実施例に何ら限定されるものではない。本実施例では、第3の実施の形態のテラヘルツ波発生装置212(
図10)を用いて、下記条件により実験を行った。
【0078】
ポンプ光光源22としては、波長:532nm、パルス幅:24ns、繰り返し周波数:50Hzのレーザ光源を用いた。ミラー26aとしては、532nmの波長の光を透過し、1300nmの波長の光を反射するダイクロイックミラーを用いた。SHGカットフィルタ28としては、532nmの波長成分を除去するカットフィルタを用いた。検出器50としては、シリコン(Si)ボロメータを用いた。
【0079】
光学結晶10としては、上記各実施の形態で述べたように、DAST結晶とDASC結晶とを貼り合わせたものを用いた。また、DAST結晶の厚みは0.21mm、DASC結晶の厚みは0.16mmとした。なお、結晶の厚み方向が励起光の透過方向である。なお、本実施例では、光学結晶の縦及び横のサイズは、励起光が全て結晶に当たる程度のサイズとした。本実施例に限らず、本発明においては、励起光が全て結晶前面に当たる程度のサイズであれば、光学結晶の全方位のサイズは特に限定されない。
【0080】
また、KTP結晶24aの角度を固定とし、KTP結晶24bの角度を可変とした。これにより、1350.5nmの固定波長と可変波長との2波長の励起光を発生させ、その差周波数として0.5〜10THzのテラヘルツ波を発生させ、そのスペクトル特性を測定した。なお、周波数刻み幅0.1THz、積算回数50回で、スペクトル特性を測定した。
【0081】
図13に、測定されたテラヘルツ波のスペクトル特性を示す。なお、
図13では、出力の最大値が1となるように縦軸の値を正規化している。また、
図13において、「DASTのみ」及び「DASCのみ」は、参考例として、第3の実施の形態のテラヘルツ波発生装置212を用い、光学結晶としてDAST結晶のみ、またはDASC結晶のみを用いた場合に発生したテラヘルツ波のスペクトル特性を示したものである。また、「貼りあわせ(DASTに初めに入射)」及び「貼りあわせ(DASCに初めに入射)」は、本実施例の実験結果を示すスペクトル特性である。「貼りあわせ(DASTに初めに入射)」は、励起光が初めにDAST結晶側から入射されるように光学結晶が配置されている場合であり、「貼りあわせ(DASCに初めに入射)」は、励起光が初めにDASC結晶側から入射されるように光学結晶が配置されている場合である。
【0082】
図13に示すように、「貼りあわせ(DASTに初めに入射)」及び「貼りあわせ(DASCに初めに入射)」いずれの場合も、各結晶(DAST結晶またはDASC結晶)の特性に依存する出力の吸収は見られなかった。すなわち、DAST結晶とDASC結晶とを貼り合わせた光学結晶とすることで、各々のテラヘルツ波の特性を補い合った特性のテラヘルツ波を得ることができた。