特許第5909102号(P5909102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909102
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20160412BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   F24F5/00 102Z
   F24F5/00 101B
   F24F3/14
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-21434(P2012-21434)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-160416(P2013-160416A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】緒方 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸山 聡
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 宏明
(72)【発明者】
【氏名】河村 義彦
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−141721(JP,A)
【文献】 特開2007−064616(JP,A)
【文献】 特開2011−092163(JP,A)
【文献】 特開平02−115637(JP,A)
【文献】 特開平06−229593(JP,A)
【文献】 特開2001−116299(JP,A)
【文献】 特開2008−304180(JP,A)
【文献】 特開2001−099514(JP,A)
【文献】 特開2008−249247(JP,A)
【文献】 特開平08−303840(JP,A)
【文献】 特開2001−027429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも冷房を行う空調システムであって、
冷凍機によって冷却された冷水を蓄える第1蓄熱槽と、熱交換器へ熱交換水を供給する往き流路及び前記熱交換器からの熱交換水の戻り流路の少なくともいずれか一方の流路が接続される第2蓄熱槽と、前記冷凍機によって加熱された温水を蓄える第3蓄熱槽との少なくとも3つの蓄熱槽を備えると共に、
前記第1蓄熱槽の冷水が供給される調湿機と、
前記調湿機を経由して前記熱交換器で熱交換されて昇温された冷水が供給される放射パネルとを備え
前記放射パネルを経由した前記冷水が、前記第2蓄熱槽に供給される、
ことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
少なくとも冷房を行う空調システムであって、
冷凍機によって冷却された冷水を蓄える第1蓄熱槽と、熱交換器へ熱交換水を供給する往き流路及び前記熱交換器からの熱交換水の戻り流路の少なくともいずれか一方の流路が接続される第2蓄熱槽と、前記冷凍機によって加熱された温水を蓄える第3蓄熱槽との少なくとも3つの蓄熱槽を備えると共に、
前記第1蓄熱槽の冷水が供給される調湿機と、
前記調湿機を経由して前記熱交換器で熱交換されて昇温された冷水が供給される放射パネルとを備え、
暖房のときには、前記第1蓄熱槽の冷水に代えて、前記第3蓄熱槽の温水が、前記調湿機に供給され、前記放射パネルには、前記調湿機を経由して前記熱交換器で熱交換されて降温された温水が供給され、前記放射パネルを経由した前記温水が、前記第2蓄熱槽に供給される、
ことを特徴とする空調システム。
【請求項3】
暖房のときには、前記第1蓄熱槽の冷水に代えて、前記第3蓄熱槽の温水が、前記調湿機に供給され、前記放射パネルには、前記調湿機を経由して前記熱交換器で熱交換されて降温された温水が供給される、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
太陽熱及び温排水の排熱の少なくともいずれか一方の熱を利用して、前記第1〜第3蓄熱槽の少なくともいずれか一つの蓄熱槽の水を加熱する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院、高齢者施設、道路サービス施設、図書館等の各種建物内における空間内の調温および調湿を行うための空調システムに関し、更に詳しくは、放射パネルを用いて少なくとも冷房を行う空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーと快適性とを両立する空調方式として、現在、放射パネルを用いた放射空調が注目されている。放射空調は、熱媒体が流れる熱媒体流通管とパネル本体とを備えた放射パネルを、空調対象室の天井や壁面に配設し、熱媒体流通管に冷水又は温水を流してパネル本体の温度を上昇又は下降させ、パネル本体からの放射熱により冷房又は暖房を行うシステムである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−115379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる空調システムでは、冷房時には、凝縮器で放出された熱は、回収されることなく、冷却塔を介して大気に放出されており、効率の悪いものであった。
【0005】
また、上記特許文献1では、湿度を調整する調湿機に供給する冷水と、それより高温の放射パネルに供給する冷水とを、それぞれ個別の冷凍機によって生成しており、2台の冷凍機が必要である。
【0006】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、空調システムの効率を高めると共に、コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0008】
(1)本発明は、少なくとも冷房を行う空調システムであって、冷凍機によって冷却された冷水を蓄える第1蓄熱槽と、熱交換器へ熱交換水を供給する往き流路及び前記熱交換器からの熱交換水の戻り流路の少なくともいずれか一方の流路が接続される第2蓄熱槽と、前記冷凍機によって加熱された温水を蓄える第3蓄熱槽との少なくとも3つの蓄熱槽を備えると共に、前記第1蓄熱槽の冷水が供給される調湿機と、前記調湿機を経由して前記熱交換器で熱交換されて昇温された冷水が供給される放射パネルとを備え、前記放射パネルを経由した前記冷水が、前記第2蓄熱槽に供給される
【0009】
第1蓄熱槽に蓄えられる冷水は、該第1蓄熱槽に蓄えられた冷水を冷凍機との間で循環させて冷却してもよいし、第2蓄熱槽に蓄えられている水を、冷凍機で冷却して第1蓄熱槽に冷水として蓄えるようにしてもよく、あるいは、蓄熱槽を追加し、追加した蓄熱槽の水を、冷凍機で冷却して第1蓄熱槽に冷水として蓄えるようにしてもよい。
【0010】
熱交換器へ熱交換水を供給する往き流路は、第2蓄熱槽に接続するのが好ましいが、他の蓄熱槽に接続してもよい。
【0011】
熱交換器からの熱交換水の戻り流路は、第2蓄熱槽に接続してもよいし、第1蓄熱槽または第3蓄熱槽に接続してもよいし、あるいは、蓄熱槽を追加し、追加した蓄熱槽に接続してもよい。熱交換水の戻り流路を、第2蓄熱槽に接続しない場合には、前記放射パネルを経由した冷水を第2蓄熱槽に供給するのが好ましい。
【0012】
第3蓄熱槽に蓄えられる温水は、該第3蓄熱槽に蓄えられた温水を冷凍機によって加熱されるように循環させてもよいし、第2蓄熱槽に蓄えられている水を、冷凍機によって加熱して第3蓄熱槽に温水として蓄えるようにしてもよく、あるいは、蓄熱槽を追加し、追加した蓄熱槽の水を、冷凍機によって加熱して第3蓄熱槽に温水として蓄えるようにしてもよい。
【0013】
第1蓄熱槽の冷水は、調湿機に供給されて、該調湿機のコイル内を通過して冷却コイルとして機能させて除湿を行う。
【0014】
本発明によると、冷凍機の凝縮器の熱によって生成された温水を第3蓄熱槽に蓄えるので、この第3蓄熱槽に蓄えた温水を給湯等に利用することが可能となり、凝縮器の熱を、冷却塔を介して大気に放出していた従来例に比べて効率が高まる。
【0015】
また、第1蓄熱槽の冷水を、調湿機に供給して除湿を行うと共に、調湿機からの冷水を、熱交換器で熱交換水と熱交換させて昇温させ、この昇温させた冷水を放射パネルに供給して冷房を行う、すなわち、1台の冷凍機によって冷却された第1蓄熱槽の冷水を用いて調湿と冷房とを行うので、上記特許文献1のように、2台の冷凍機を必要とせず、その分、コストを削減することができる。
【0016】
更に、冷水が蓄えられる第1蓄熱槽と、温水が蓄えられる第3蓄熱槽に加えて、冷水と熱交換する熱交換水が流通する第2蓄熱槽との少なくとも3つの蓄熱槽を備えているので、各蓄熱槽に温度域の異なる水を貯留して、用途に応じて利用することができる。
【0017】
(2)本発明は、少なくとも冷房を行う空調システムであって、冷凍機によって冷却された冷水を蓄える第1蓄熱槽と、熱交換器へ熱交換水を供給する往き流路及び前記熱交換器からの熱交換水の戻り流路の少なくともいずれか一方の流路が接続される第2蓄熱槽と、前記冷凍機によって加熱された温水を蓄える第3蓄熱槽との少なくとも3つの蓄熱槽を備えると共に、前記第1蓄熱槽の冷水が供給される調湿機と、前記調湿機を経由して前記熱交換器で熱交換されて昇温された冷水が供給される放射パネルとを備え、暖房のときには、前記第1蓄熱槽の冷水に代えて、前記第3蓄熱槽の温水が、前記調湿機に供給され、前記放射パネルには、前記調湿機を経由して前記熱交換器で熱交換されて降温された温水が供給され、前記放射パネルを経由した前記温水が、前記第2蓄熱槽に供給される
【0018】
本発明によると、第3蓄熱槽の温水を、調湿機に供給して該調湿機のコイル内を通過させて加熱コイルとして機能させると共に、調湿機からの温水を、熱交換器で熱交換水と熱交換させて降温させ、この降温させた温水を放射パネルに供給して暖房を行うことができる。
【0019】
(3)上記(1)の本発明の他の実施態様では、暖房のときには、前記第1蓄熱槽の冷水に代えて、前記第3蓄熱槽の温水が、前記調湿機に供給され、前記放射パネルには、前記調湿機を経由して前記熱交換器で熱交換されて降温された温水が供給される
【0020】
この実施態様によると、第3蓄熱槽の温水を、調湿機に供給して該調湿機のコイル内を通過させて加熱コイルとして機能させると共に、調湿機からの温水を、熱交換器で熱交換水と熱交換させて降温させ、この降温させた温水を放射パネルに供給して暖房を行うことができる。
【0024】
)本発明の他の実施態様では、太陽熱及び温排水の排熱の少なくともいずれか一方の熱を利用して、前記第1〜第3蓄熱槽の少なくともいずれか一つの蓄熱槽の水を加熱する。
【0025】
太陽熱を利用する場合には、例えば、太陽熱焦熱器に蓄熱槽の水を循環させることによって蓄熱槽の水を加熱する、あるいは、太陽熱によって加熱される舗装道路に埋設された循環配管に蓄熱槽の水を循環させることによって蓄熱槽の水を加熱することができる。
【0026】
温排水の排熱を利用する場合には、厨房、浴室、洗面化粧室やペレットストーブなどの温排水と蓄熱槽の水とを熱交換させることにより、蓄熱槽の水を加熱することができる。
【0027】
太陽熱や温排水の排熱によって加熱された第1〜第3蓄熱槽の少なくともいずれか一つの蓄熱槽の水は、同一の蓄熱槽に戻してもよいし、別の蓄熱槽に供給するようにしてもよく、あるいは、蓄熱槽を追加し、追加した蓄熱槽に供給するようにしてもよい。
【0028】
この実施態様によると、太陽熱や温排水の排熱を利用することによって、異なる温度域の温水を、蓄熱槽に貯留することができ、この温水を、給湯や道路に埋設された温水循環配管に供給して冬季の融雪などの用途に利用することができる。
【0029】
なお、本発明の他の実施態様として、第1〜第3蓄熱槽以外の蓄熱槽を少なくとも一つ追加し、追加した蓄熱槽のみの水を、太陽熱や温排水の排熱を利用して加熱するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0030】
このように、本発明によれば、冷凍機の凝縮器の熱によって生成された温水を第3蓄熱槽に蓄えるので、この第3蓄熱槽に蓄えた温水を給湯等に利用することが可能となり、従来例に比べて効率が高まる。
【0031】
また、1台の冷凍機によって調温と調湿とを行うことができ、従来例のように2台の冷凍機を必要とせず、その分、コストを削減することができる。
【0032】
更に、少なくとも3つの蓄熱槽に、温度域の異なる水を貯留して、用途に応じて利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の一実施形態の空調システムの構成図である。
図2図2は、冷房時の動作を説明するための構成図である。
図3図3は、暖房時の動作を説明するための構成図である。
図4図4は、本発明の他の実施形態の空調システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面によって本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0035】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態の空調システムの全体構成図であり、この実施形態では、冷房と暖房とを行うことができる。
【0036】
この実施形態の空調システムは、冷凍機1と、この冷凍機1によって加熱あるいは冷却された温水や冷水を貯留する第1〜第3蓄熱槽2〜4と、冷房時には第1蓄熱槽2からの冷水が、また、暖房時には、第3蓄熱槽4からの温水が供給される調湿機5と、調湿機5からの冷水または温水と第2蓄熱槽3の熱交換水との間で熱交換を行う第1熱交換器6と、この第1熱交換器6で熱交換された冷水または温水が供給される複数の放射パネル7とを備えている。
【0037】
冷凍機1としては、水冷式のヒートポンプチラーや公知の水冷媒ルーツ冷凍機などを用いることができる。水冷媒ルーツ冷凍機は、冷水を負荷側と循環する蒸発器と、水冷媒(水蒸気)を圧縮するルーツ圧縮機と、冷却水を循環する凝縮器と、凝縮器から蒸発器に水冷媒(液)に戻す接続管とを備え、冷凍サイクルを構成する。
【0038】
調湿機5は、冷房時には冷水が、また、暖房時には温水が流通する熱媒体コイル45と、加湿器46とを備えており、加湿器46は冷房時には作動せず、暖房時にのみ作動するように構成されている。
【0039】
複数の各放射パネル7は、熱媒体としての冷水または温水が流通する熱媒体流通管7aとパネル本体7bとを備えており、空調対象室の天井や壁面に配設され、熱媒体流通管7aに冷水又は温水を流してパネル本体7bの温度を上昇又は下降させ、パネル本体7bからの放射熱により空調を行う。
【0040】
各蓄熱槽2〜4は、例えば、円筒状のタンクであって、図1では、上下に配置された状態で図示されているが、各蓄熱槽2〜4は、個別にそれぞれ水平に設置されている。各蓄熱槽2〜4には、水が貯留されており、上方ほど水温が高くなっている。第1蓄熱槽2の下部と第2蓄熱槽3の下部とは、連通管52によって連通している。第2蓄熱槽3には、水量が低下したときに、補給水が供給される。
【0041】
冷凍機1には、第2蓄熱槽3からの水が流入する流入配管8が接続され、この流入配管8には、給水ポンプ9が設けられている。第2蓄熱槽3からの水は、冷凍機1によって冷却されて流出配管10に流出し、第1蓄熱槽2に冷水として蓄えられる。
【0042】
また、冷凍機1には、該冷凍機1の凝縮器の熱で加熱された冷却水を、第2熱交換器11との間で循環させる循環配管12が接続されている。この循環配管12は、冷凍機1によって加熱された冷却水を第2熱交換器11に供給する往き配管12aと、第2熱交換器11で熱交換された冷却水を冷凍機1へ戻す戻り配管12bとを備えている。往き配管12aには、第1電動弁14が設けられる一方、戻り配管12bには、第2電動弁15及び循環ポンプ13が設けられている。
【0043】
冷凍機1で加熱された冷却水が循環する第2熱交換器11には、流入配管20及び流出配管21が接続され、流入配管20には、給水ポンプ22が設けられている。第2熱交換器11では、流入配管20を介して第2蓄熱槽3からの水が流入し、冷凍機1で加熱された冷却水と熱交換することによって加熱昇温され、この昇温された水が流出配管21を介して第3蓄熱槽4に温水として蓄えられる。すなわち、第3蓄熱槽4には、冷凍機1の冷却水によって加熱された温水が蓄えられる。
【0044】
冷凍機1の冷却水が循環する往き配管12a及び戻り配管12bには、第3,第4電動弁18,19がそれぞれ設けられた第1,第2分岐配管16,17を介して雑用水の戻り配管CDRと往き配管CDSとがそれぞれ接続され、冷却水と熱交換する第2蓄熱槽3の水の温度が高い場合には、第1〜第4電動弁14,15,18,19の開閉を切換えて、第1,第2分岐配管16,17を介して雑用水によって冷凍機1を冷却できるように構成されている。
【0045】
冷凍機1の冷却水と熱交換して加熱された温水が蓄えられる第3蓄熱槽4には、オーバーフロー配管23が設けられると共に、給湯用の混合水栓24に接続された給湯配管25が接続され、この給湯配管25には、給水ポンプ26が設けられている。
【0046】
調湿機5の熱媒体コイル45の入口側には、三方弁32を介して第1蓄熱槽2からの冷水または第3蓄熱槽4からの温水が流入する流入配管27が接続され、熱媒体コイル45の出口側には、第1熱交換器6に接続された流出配管28が接続される。流入配管27には、第5電動弁29及び給水ポンプ30が設けられている。
【0047】
流入配管27の給水ポンプ30と第5電動弁29との間には、第3蓄熱槽4からの温水を供給するための供給配管39が接続され、この供給配管39には、第6電動弁40が設けられる。第5電動弁29と第6電動弁40の開閉を切換えることによって、冷房時には、第1蓄熱槽2からの冷水を、また、暖房時には、第3蓄熱槽4からの温水を調湿機5へ供給できるように構成されている。
【0048】
調湿機1の入口側の流入配管27と出口側の流出配管28との間には、バイパス配管31が接続されると共に、流入配管27とバイパス配管31との接続部には、給水ポンプ30からの冷水または温水を、調湿機5またはバイパス配管31へ切換えるための上記三方弁32が設けられている。この三方弁32を切換えることによって、調湿の必要がない場合には、調湿機5をバイパスさせることができるように構成されている。
【0049】
調湿機5によって除湿を行う場合には、熱媒体コイル45に冷水を供給することにより、当該熱媒体コイル45を冷却コイルとして機能させ、空調対象室に取込む空気を過冷却して、当該熱媒体コイル45の表面に空気中の水分を凝縮させて除湿を行う。また、加湿を行う場合には、熱媒体コイル45に温水を供給することにより、当該熱媒体コイル45を加熱コイルとして機能させ、加湿器46により加湿し、空調対象室に取込む空気を高温多湿の状態とする。
【0050】
調湿機5を経由した冷水または温水が供給される第1熱交換器6には、第2蓄熱槽3の熱交換水が循環する循環配管33が接続される。この循環配管33は、第2蓄熱槽3からの熱交換水を第1熱交換器6に供給する往き配管33aと、第1熱交換器6からの熱交換水を第2蓄熱槽3に戻す戻り配管33bとを備えており、往き配管33aには、循環ポンプ34が設けられている。また、往き配管33aと戻り配管33bとの間には、分岐流路を構成する分岐配管35が接続され、この分岐配管35と戻り配管33bとの接続部には、分流手段を構成する三方弁36が設けられている。この三方弁36によって、戻り配管33bの熱交換水を、分岐配管35側と戻り配管33bの下流側である第2蓄熱槽3側とに分流することができる。
【0051】
この三方弁36による分流比を制御することによって、往き配管33aの熱交換前の熱交換水に、戻り配管33bの熱交換後の熱交換水を混合する割合を変化させて、第1熱交換器6に供給される熱交換水の温度を調整することができる。
【0052】
調湿機5を経由した冷水または温水は、第1熱交換器6で第2蓄熱槽3からの熱交換水と熱交換し、流入配管37を介して各放射パネル7の熱媒体流通管7aに流入し、流出配管38に流出して第2蓄熱槽3に供給される。
【0053】
この実施形態では、第1熱交換器6で熱交換水と熱交換した後、放射パネル7に供給される冷水または温水の温度を、流入配管37に設置した図示しない水温センサによって検出し、冷房時の冷水の温度または暖房時の温水の温度が、設定温度になるように、上記三方弁36の分流比を、コントローラ(図示せず)によって制御する。
【0054】
第1蓄熱槽2には、暖房時に、第3熱交換器41との間で冷水を循環させる循環配管42が接続されている。この循環配管42は、循環ポンプ43が設けられた往き配管42aと戻り配管42bとを備えている。暖房時には、第1蓄熱槽2からの冷水は、第3熱交換器41によって給湯器44からの温水と熱交換されて昇温される。
【0055】
三方弁36の分流比を制御する上記コントローラは、各電動弁14,15,18,19,29,40の開閉、三方弁32の切換え、各ポンプ9,13,22,26,30,34,43及び冷凍機1等の運転制御を行うように構成されている。
【0056】
次に、上記構成を有する空調システムの冷房運転について、図2に基づいて説明する。
【0057】
冷房運転では、第2蓄熱槽3の水が給水ポンプ9によって冷凍機1に供給されて、冷凍機1で、例えば、7℃〜10℃程度に冷却されて第1蓄熱槽2に冷水として供給される。冷凍機1で加熱されて、例えば、35℃〜45℃程度に昇温された冷却水は、第2熱交換器11に供給され、第2熱交換器11で、第2蓄熱槽3からの水と熱交換して冷凍機1へ戻る。第2蓄熱槽3からの水は、第2熱交換器11で冷却水と熱交換して加熱され、例えば、30℃〜40℃程度に昇温されて第3蓄熱槽4に温水として供給される。
【0058】
冷房運転では、第3蓄熱槽4から流入配管27に至る供給配管39に設けられている第6電導弁40は閉止され、流入配管27に設けられている第5電導弁29は開放される。
【0059】
第1蓄熱槽2に貯留された、例えば、7℃程度の冷水は、給水ポンプ30によって流入配管27を介して調湿機5に供給され、熱媒体コイル45を冷却コイルとして機能させることによって、空調対象室に取り込む空気の除湿を行い、熱媒体コイル45を通過して、例えば10℃程度に昇温されて、第1熱交換器6に供給される。第1熱交換器6に供給された冷水は、第2蓄熱槽3からの、例えば、21℃程度の熱交換水と熱交換を行って、例えば、18℃程度に昇温され、流入配管37を介して各放射パネル7に供給される。
【0060】
各放射パネル7に供給された冷水は、吸熱によって、例えば、21℃程度に昇温されて流出配管38を介して第2蓄熱槽3に供給される。
【0061】
以上の動作によって、放射パネル7によって冷房を行うと共に、調湿機5によって除湿を行う。
【0062】
この冷房運転時には、第1蓄熱槽2に貯留される冷水の温度は、例えば、7℃〜10℃程度となり、第2蓄熱槽3に貯留される水の温度は、例えば、15℃〜25℃程度となり、第3蓄熱槽4に貯留される温水の温度は、例えば、30℃〜40℃程度となる。
【0063】
第3蓄熱槽4に貯留された30℃〜40℃程度の温水は、給湯配管25を介して給湯に利用することができ、給湯に使用しないときには、オーバーフロー配管23を介してオーバーフローさせる。
【0064】
この実施形態によれば、冷凍機1の凝縮器で加熱された冷却水との熱交換によって生成した温水を第3蓄熱槽4に蓄え、給湯などに利用するので、凝縮器で放出された熱を回収することなく、冷却塔を介して大気に放出していた従来例に比べて効率を高めることができる。
【0065】
また、冷凍機1で冷却された第1蓄熱槽2の冷水を調湿機1に供給して除湿を行い、調湿機1を経由した冷水を、第1熱交換器6で第2蓄熱槽3の熱交換水と熱交換させて昇温し、この昇温した冷水を放射パネル7に供給して冷房を行うので、1台の冷凍機1によって、除湿と冷房とを行うことが可能となり、2台の冷凍機を必要とする特許文献1に比べて、コストを削減することができる。
【0066】
次に、上記構成を有する空調システムの暖房運転について、図3に基づいて説明する。
【0067】
暖房運転では、第2蓄熱槽3の水が給水ポンプ9によって冷凍機1に供給され、冷凍機1で、例えば、20℃〜25℃程度に冷却されて第1蓄熱槽2に冷水として供給される。冷凍機1の凝縮器で加熱されて、例えば、40℃〜45℃程度に昇温された冷却水は、第2熱交換器11に供給され、第2熱交換器11で、第2蓄熱槽3からの水と熱交換して冷凍機1へ戻る。第2蓄熱槽3からの水は、第2熱交換器11で冷却水と熱交換して加熱され、例えば、35℃〜40℃程度に昇温されて第3蓄熱槽4に温水として供給される。
【0068】
暖房運転では、第3蓄熱槽4から流入配管27に至る供給配管39に設けられている第6電動弁40は開放され、流入配管27に設けられている第5電動弁29は閉止される。
【0069】
第3蓄熱槽4に貯留された、例えば、40℃程度の温水は、給水ポンプ30によって流入配管27を介して調湿機5に供給され、熱媒体コイル45を加熱コイルとして機能させる。また、調湿機5の加湿器46を作動させて空調対象室に取込む空気を高温多湿の状態とする。熱媒体コイル45を通過して、例えば37℃程度に降温した温水は、第1熱交換器6に供給される。第1熱交換器6に供給された温水は、第2蓄熱槽3からの、例えば、25℃程度の熱交換水と熱交換を行って、例えば、26℃程度に降温され、流入配管37を介して各放射パネル7に供給される。
【0070】
各放射パネル7に供給された温水は、放熱によって、例えば、23℃程度に降温されて流出配管38を介して第2蓄熱槽3に供給される。
【0071】
第1蓄熱槽2の冷水は、第3熱交換器41との間で循環させることにより、給湯器44からの温水によって昇温させることができる。第1蓄熱槽2の冷水は、上述の連通管52を介して液面差によって第2蓄熱槽3に供給される。
【0072】
以上の動作によって、放射パネル7によって暖房を行うと共に、調湿機5によって加湿を行う。
【0073】
この暖房運転時には、第1蓄熱槽2に貯留される冷水の温度は、例えば、20℃〜25℃程度となり、第2蓄熱槽3に貯留される水の温度は、例えば、25℃〜35℃程度となり、第3蓄熱槽4に貯留される温水の温度は、例えば、35℃〜40℃程度となる。
【0074】
第3蓄熱槽4に貯留された35℃〜40℃程度の温水は、給湯配管25を介して給湯に利用することができる。
【0075】
(実施形態2)
図4は、本発明の他の実施形態の図1に対応する構成図であり、上述の実施形態に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0076】
この実施形態では、第4蓄熱槽47が設けられており、第3蓄熱槽4からの水が給水ポンプ48を介して太陽熱集熱器49に供給され、この太陽熱集熱器49で加熱昇温された温水が、第4蓄熱槽47に供給される。上述の実施形態では、混合水栓24が接続された給湯配管25は、第3蓄熱槽4に接続されていたけれども、この実施形態では、給湯配管25は、第4蓄熱槽47に接続されており、この第4蓄熱槽47からの、例えば、60℃程度の温水が、給湯配管25を介して混合水栓24に供給される。この第4蓄熱槽47には、オーバーフロー配管55が設けられている。
【0077】
また、この実施形態では、舗装道路に埋設されている循環配管51に第2蓄熱槽3からの水を供給し、循環配管51で太陽熱によって加熱された温水を、第3蓄熱槽4に蓄え、あるいは、路面が雪で覆われているような場合には、第3蓄熱槽4の温水を、循環配管51に供給して融雪し、循環配管51からの水を第2蓄熱槽3へ供給できるようにしている。
【0078】
すなわち、第3蓄熱槽4に温水を蓄える場合には、第7電動弁56を閉じると共に、第8電動弁57を開き、第1給水ポンプ50を駆動し、第2蓄熱槽3からの水を、第1給水ポンプ50を介して循環配管51に供給し、この循環配管51で加熱昇温された温水を、第8電動弁57を介して第3蓄熱槽4に供給する。
【0079】
また、路面の融雪を行う場合には、第7電動弁56を開くと共に、第8電動弁57を閉じ、第2給水ポンプ58を駆動し、第3蓄熱槽4の温水を、第2給水ポンプ58を介して循環配管51に供給して融雪を行い、第7電動弁56を介して第2蓄熱槽3に供給する。
【0080】
更に、高所に設置された貯水槽53からの雑用水の落下エネルギーによって発電する発電機54を設置し、この発電機54で発電した電力を、給水ポンプ等の電源として利用している。
【0081】
この実施形態では、太陽熱を利用して蓄熱槽の水を加熱したけれども、本発明の他の実施形態として、例えば、前記太陽熱集熱器49を、厨房、浴室洗面化粧室やペレットストーブなどの温排水と第3蓄熱槽4の水とを熱交換する熱交換器とし、厨房、浴室や洗面化粧室などの温排水によって第3蓄熱槽4の水を加熱するようにしてもよい。なお、蓄熱槽を更に追加してもよい。
【0082】
その他の構成は、上述の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0083】
1 冷凍機
2〜4 第1〜第3蓄熱槽
5 調湿機
6 第1熱交換器
7 放射パネル
24 混合水栓(給湯)
36 三方弁(分流手段)
47 第4蓄熱槽
49 太陽熱集熱器(厨房、浴室、洗面化粧室、ペレットストーブなどの温
排水との熱交換器)
51 循環配管(集熱、融雪)
図1
図2
図3
図4