(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
以下、本発明に係る第一実施形態のボルト連結体について、図面を参照して説明する。
図1は、第一実施形態のボルト連結体30の全体斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のボルト連結体30は、設備機器Wを天吊り支持(懸垂支持)するためのユニットであって、天井躯体F(例えば、天井コンクリート構造物)に埋設されたインサート固定具2に対して上端部31aが螺着された第一吊りボルト31と、設備機器W側に位置し、下端部32bがダンパーユニット10およびブラケット4を介して設備機器Wに連結された第二吊りボルト32と、第一吊りボルト31の下端部31bと第二吊りボルト32の上端部32aとを互いに連結する連結部材40と、を備えている。本実施形態では、四本のボルト連結体30により、設備機器Wを天吊り支持する天吊り支持体1を構成している。
【0021】
なお、本実施形態では、ボルト連結体30は、天井躯体Fから鉛直方向に垂下されている。そして、ボルト連結体30の中心を貫く軸をボルト軸Oといい、このボルト軸Oに沿ってブラケット4側から天井躯体F側に向かう方向を上側、その逆向きを下側という。また、ボルト軸Oに直交する方向を径方向という。更に、径方向のうち、設備機器Wを間に挟んでボルト連結体30が並ぶ方向を第一方向L1といい、径方向のうち、第一方向L1に直交する方向を第二方向L2とする。
また、上記設備機器Wとしては、特に限定されるものではないが、例えば空調機器の室内ユニット等が挙げられる。
【0022】
図2は、第一方向L1から見たときのボルト連結体30の説明図である。
図3は、第二方向L2から見たときのボルト連結体30の説明図である。
なお、
図2および
図3では、天井躯体F、インサート固定具2および設備機器Wを二点鎖線で図示している。
図2に示すように、第一吊りボルト31は、所定の直径及び長さを有するボルトである。第一吊りボルト31の上端部31aは、インサート固定具2に対して螺着されることで、天井躯体Fから垂下されている。
また、第一吊りボルト31の下端部31bは、後述する連結部材40に設けられた一対の噛合体50a,50bに連結されている。
【0023】
第二吊りボルト32は、所定の長さを有し、第一吊りボルト31と略同一の直径を有するボルトである。第二吊りボルト32の上端部32aは、連結部材40に設けられた一対の噛合体50a,50bに連結されている。
また、第二吊りボルト32の下端部32bは、固定用ナット63が螺着されてダンパーユニット10に連結されている。さらに、ダンパーユニット10は、設備機器Wに固定されたブラケット4に連結されている。すなわち、ボルト連結体30の第二吊りボルト32は、ダンパーユニット10およびブラケット4を介して設備機器Wに連結されている。
【0024】
ダンパーユニット10は、主に本体金具11と、コイルバネ12と、平板ワッシャ13と、により構成されており、ボルト連結体30に対して設備機器Wを弾性的に支持している。
本体金具11は、第一方向L1から見て、第二方向L2に開口を有する略U字形状に形成されており、上下方向に向かい合う上壁部11aおよび下壁部11bと、上壁部11aおよび下壁部11bを接続する本体壁部11cと、を備えている。
【0025】
本体金具11の上壁部11aには、上下方向に貫通する貫通孔11dが形成されており、第二吊りボルト32の下端部32bが挿通されている。また、上壁部11aと、第二吊りボルト32の下端部32bに螺着された固定用ナット63との間には、上方から下方に向けて順番にコイルバネ12および平板ワッシャ13が設けられている。
【0026】
コイルバネ12は、上端が上壁部11aと当接し、下端が平板ワッシャ13と当接して、上壁部11aと固定用ナット63との間に支持されている。これにより、コイルバネ12は、上壁部11aと固定用ナット63とを付勢している。
また、本体金具11の下壁部11bには、上下方向に貫通する貫通孔11eが形成されており、ボルト65が挿通されている。
【0027】
図3に示すように、本体金具11の下壁部11bの下方に配置されるブラケット4は、第二方向L2から見て略Z字形状をした金属板片であり、例えば設備機器Wの四隅に固定されている(
図1参照)。
ブラケット4には、設備機器Wの側面から第一方向L1の外側に向けて突出したフランジ部4aが形成されており、フランジ部4aには、貫通孔6が形成されている。貫通孔6内には、本体金具11の下壁部11bに挿通されたボルト65が挿通されている。このボルト65には、フランジ部4aの下面側においてナット66が螺着されている。これにより、ダンパーユニット10の下方において、ダンパーユニット10の本体金具11とブラケット4とが締結固定されている。
【0028】
ここで、上壁部11aと固定用ナット63とを付勢しているダンパーユニット10のコイルバネ12は、上下方向に弾性変形可能となっている。したがって、ブラケット4を介して支持される設備機器Wは、ボルト連結体30の下方において、ダンパーユニット10によって弾性的に支持される。これにより、地震発生等によって天井躯体Fを介してボルト連結体30が上下に振動した場合であっても、ダンパーユニット10で振動を緩衝できるので、設備機器Wに振動が入力されるのを抑制できる。したがって、ボルト連結体30の下方において、設備機器Wを過度に揺らすことなく安定して支持することができる。
【0029】
(連結部材)
図2に示すように、連結部材40は、上下方向に長手方向を有し、第二方向L2に幅方向を有し、第一方向L1に厚み方向を有する略ブロック状に形成された部材である。連結部材40は、第一吊りボルト31と第二吊りボルト32とを同軸のボルト軸O上に一致させた状態で、第一吊りボルト31の下端部31bと第二吊りボルト32の上端部32aとに跨るように設けられている。これにより、連結部材40は、第一吊りボルト31の下端部31bと第二吊りボルト32の上端部32aとを互いに連結している。
【0030】
図4は、
図2のA−A線に沿った断面図である。
図4に示すように、連結部材40は、ボルト軸Oを挟んで第一方向L1の一方側(
図4における下側)に配置される第一の分割体40aと、第一の分割体40aに設けられ、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32(
図2参照)に対して径方向外側から噛合する一対の噛合体50a,50bと、ボルト軸Oを挟んで第一方向L1の他方側(
図4における上側)に配置され第一の分割体40aと結合される第二の分割体40bと、により構成されている。
【0031】
(分割体)
図5は、一対の分割体40a,40bを互いに結合する前の説明図である。なお、
図5において、一対の分割体40a,40bを互いに結合したときの第二の分割体40bを二点鎖線で図示している。
図5に示すように、一対の分割体40a,40bは、第二方向L2の端部に設けられたヒンジ軸45を介して互いに回動可能に連結されており、回動操作によって互いに結合および分離が可能とされている。なお、本実施形態のヒンジ軸45は、第二方向L2の一方側の端部において、上下方向に二箇所設けられている(
図2参照)。
【0032】
第一の分割体40aは、例えば、不燃性または難燃性の材料や金属等からなる部材であり、機械加工や鍛造等によって形成される。第一の分割体40aは、略ブロック状に形成された第一本体部43aと、第一本体部43aにおける第二の分割体40bとの合わせ面側に形成された第一凹部41aとにより、ボルト軸Oと直交する断面形状が略U字形状に形成されている。
【0033】
第一本体部43aには、ヒンジ軸45とは反対側(
図5における左側)に、被係合部44aが形成されている。被係合部44aは、第一方向L1に貫通する貫通孔を有している。被係合部44aの貫通孔には、後述する第二本体部43bに形成された係合爪部44bが挿入される。これにより、被係合部44aと係合爪部44bとは、互いに係合可能となっている。
【0034】
第一凹部41aは、第一方向L1の深さが、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32(
図2参照)の半径と略同一となるように形成されている。第一凹部41a内には、第二方向L2の両側に、第一の噛合体50aおよび第二の噛合体50bが所定距離だけ離間した状態で配置されている。第一の噛合体50aおよび第二の噛合体50bは、例えば、接着剤や溶接等により固定されて第一凹部41a内に設けられている。なお、第一の噛合体50aおよび第二の噛合体50bは、同一形状の部材である。したがって、以下の説明では、第一の噛合体50aについてのみ説明をし、第二の噛合体50bについては、説明を省略している。
【0035】
図2に示すように、第一の噛合体50aは、所定の直径及び長さを有するボルトにより形成されている。本実施形態では、第一の噛合体50aの直径は、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と略同一となるように形成されている。また、第一の噛合体50aの長さは、上下方向における一対の分割体40a,40bの長さよりも短くなるように形成されている。これにより、第一の噛合体50aは、連結部材40の上下方向の端部から突出することなく配置されている。
【0036】
第一の噛合体50aの外周面に形成された雄ねじ部のねじ山の高さおよびピッチは、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32の外周面に形成された雄ねじ部のねじ山の高さおよびピッチと略同一に形成されている。これにより、第一の噛合体50aの雄ねじ部は、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32の雄ねじ部と噛合可能に形成されている。
【0037】
第一の噛合体50aおよび第二の噛合体50bは、第一凹部41a内において、第二方向L2における離間距離が、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32の直径と略同一となるように設けられている。これにより、第一の噛合体50aと第二の噛合体50bとの間には、第一の噛合体50aおよび第二の噛合体50bの雄ねじ部と、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32の雄ねじ部とが噛合した状態で、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32が配置される。
【0038】
図4に示すように、第二の分割体40bは、第一の分割体40aと同様に、例えば不燃性または難燃性の材料や金属等からなる部材である。第二の分割体40bは、第二本体部43bと第二凹部41bとを備えており、その外形が第一の分割体40aの外形と略同一に形成されている。したがって、第二の分割体40bの形状については、詳細な説明を省略する。
【0039】
第二本体部43bには、ヒンジ軸45とは反対側(
図4における左側)に、係合爪部44bが形成されている。係合爪部44bは、基端側から先端側(
図4における上側から下側)に向かって漸次肉厚が薄くなる傾斜部が形成されている。これにより、係合爪部44bは、第一本体部43aに形成された被係合部44aの貫通孔に容易に挿入できるとともに、被係合部44aと係合できる。
係合爪部44bと被係合部44aとは、互いに係脱されることで、一対の分割体40a,40bの係合状態を保持および解除可能なロック機構44を構成している。なお、本実施形態のロック機構44は、ヒンジ軸45とは反対側の第二方向L2の端部において、上下方向に二箇所設けられている(
図2参照)。
【0040】
(第一吊りボルトおよび第二吊りボルトと連結部材との連結方法)
続いて、以下に、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と、連結部材40との連結方法について、図面を用いて説明する。
図5に示すように、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と、連結部材40との連結前において、ロック機構44を形成する被係合部44aおよび係合爪部44bの係合が解除された状態となっている。このとき、第一の分割体40aの第一凹部41aの開口、および第二の分割体40bの第二凹部41bの開口は、第一方向L1の外方に面している。
【0041】
図6は、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と、連結部材40との連結時の説明図である。
図6に示すように、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と連結部材40とを連結する際、まず、第一吊りボルト31と第二吊りボルト32との位置合わせを行う。具体的には、天井躯体Fから吊り下がる第一吊りボルト31のボルト軸と、設備機器Wに接続された第二吊りボルト32のボルト軸とが一致するように、第二吊りボルト32を設備機器Wごと移動させる。これにより、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32は、上下方向に所定の離間距離を有した状態で、それぞれ同軸のボルト軸O上に配置される。
【0042】
続いて、第一吊りボルト31と第二吊りボルト32とを、ボルト軸O上に同軸に一致させた状態で連結部材40を移動する。そして、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aと、連結部材40の一対の噛合体50a,50bとを噛合する。
【0043】
具体的には、連結部材40の第一凹部41a内における一対の噛合体50a,50bの間に、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aを配置する。なお、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aは、上下方向において、連結部材40の略中央近傍に配置されるのが望ましい(
図2参照)。
【0044】
このとき、第一の噛合体50aは、第二方向L2における一方側(
図6における左側)の外方から、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aに対して噛合している。また、第二の噛合体50bは、第二方向L2における他方側(
図6における右側)の外方から、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aに対して噛合している。すなわち、一対の噛合体50a,50bは、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aを第二方向L2の両側から挟持するように噛合している。
【0045】
最後に、一対の噛合体50a,50bと、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aとを噛合させた状態で、第一の分割体40aと第二の分割体40bとを結合する。
具体的には、
図5に示すように、ヒンジ軸45を介して第二本体部43bの回動操作を行う。そして、第一の分割体40aに形成された被係合部44aと、第二の分割体40bに形成された係合爪部44bとを係合し、第一の分割体40aと、第二の分割体40bとを結合する。
【0046】
このとき、ロック機構44が機能するので、
図4に示すように、一対の分割体40a,40bは、第一方向L1の両側から、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aを挟持した状態で保持している。これにより、一対の分割体40a,40bは、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aが、一対の噛合体50a,50bの間から第一方向L1に抜け出るのを防止できる。そして、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と、一対の噛合体50a,50bとは、上下方向に相対移動が規制され、互いに噛合状態が保持される。
以上の手順により、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と連結部材40とが連結される。このように、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と連結部材40とは、工具等を用いることなくワンタッチで簡単に連結可能となっている。
【0047】
(第一実施形態の効果)
本実施形態によれば、一対の分割体40a,40bの結合に伴って、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に対して径方向外側から噛合する一対の噛合体50a,50bを備えているので、従来技術と比較して、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と噛合体50a,50bとの接触面積を十分に広く確保できる。これにより、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と連結部材40との連結強度を十分に確保できるので、安定して設備機器Wを天吊り支持できる。
また、連結部材40は、一対の分割体40a,40bの結合により、一対の噛合体50a,50bと第一吊りボルト31および第二吊りボルト32とが噛合して連結可能となっているので、工具等を用いることなく第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と連結部材40とを連結できる。したがって、設備機器Wを天吊り支持する際、良好な作業性を確保できる。
また、一対の噛合体50a,50bは、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に対して径方向外側から噛合するので、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32のボルト軸Oと、一対の噛合体50a,50bとの離間距離が等しくなるように第一吊りボルト31および第二吊りボルト32を配置できる。これにより、連結部材40は、天吊り支持された設備機器Wの荷重芯となる第一吊りボルト31および第二吊りボルト32のボルト軸Oのずれを抑制した状態で連結できるので、安定して強固に設備機器Wを天吊り支持できる。さらに、第一吊りボルト31と第二吊りボルト32とは、外方から見て同一直線上に配置される。したがって、二本のボルト111,112が並列に配置され、外方から見て異なる直線上に配置された従来技術(
図12参照)と比較して、優れたデザイン性を確保できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、市販のボルトを用いて一対の噛合体50a,50bを形成できるので、低コストにボルト連結体30を提供できる。また、ボルトにより形成された一対の噛合体50a,50bは、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32のねじ山と噛合可能なねじ山を有しているので、一対の噛合体50a,50bと第一吊りボルト31および第二吊りボルト32とを確実に噛合させて強固に連結できる。
【0049】
また、本実施形態によれば、一対の分割体40a,40bを回動操作のみで互いに結合および分離できるので、簡単に一対の分割体40a,40bを結合および分離できる。また、一対の分割体40a,40bの結合状態を保持および解除可能なロック機構44を備えているので、工具等を用いることなく、一対の分割体40a,40bの結合状態を保持および解除できる。特に、本実施形態のように、被係合部44aと係合爪部44bとによってロック機構44を形成することで、いわゆるスナップフィットにより、一対の分割体40a,40bの結合状態をワンタッチで保持および解除できる。したがって、設備機器Wを天吊り支持する際や、メンテナンスの際に、良好な作業性を確保できる。
【0050】
(第一実施形態の各変形例)
図7は、上方から見たときの第一実施形態の第一変形例に係る連結部材40の説明図である。
図8は、上方から見たときの第一実施形態の第二変形例に係る連結部材40の説明図である。
第一実施形態のボルト連結体30は、連結部材40に一対の噛合体50a,50bが設けられていた。これに対して第一実施形態の第一変形例および第二変形例は、連結部材40に設けられた噛合体の本数が、それぞれ第一実施形態と異なっている。なお、実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0051】
図7に示すように、第一実施形態の第一変形例に係る連結部材40は、一対の分割体40a,40bの結合に伴って、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に対して、三本の噛合体50a,50b,50cが径方向外側から噛合している。三本の噛合体50a,50b,50cは、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32の径方向外側において、ボルト軸O周りに、約120°ピッチで等間隔に配置されている。
【0052】
三本の噛合体50a,50b,50cのうち、第一の噛合体50aは、第一の分割体40aの内側に、例えば接着剤や溶接等により固定されて設けられている。また、第二の噛合体50bおよび第三の噛合体50cは、第二の分割体40bの内側に、それぞれ例えば接着剤や溶接等により固定されて設けられている。
これにより、一対の分割体40a,40bは回動可能に連結されるとともに、回動操作によって互いに結合および分離可能に形成される。また、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に対して、三本の噛合体50a,50b,50cが径方向外側から噛合可能に形成されるとともに、ロック機構44により一対の分割体40a,40bを結合することで噛合状態が保持される。
【0053】
図8に示すように、第一実施形態の第二変形例に係る連結部材40は、一対の分割体40a,40bの結合に伴って、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に対して、四本の噛合体50a,50b,50c,50dが径方向外側から噛合している。四本の噛合体50a,50b,50c,50dは、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32の径方向外側において、ボルト軸O周りに、約90°ピッチで等間隔に配置されている。
【0054】
四本の噛合体50a,50b,50c,50dのうち、第一の噛合体50aは、第一の分割体40aの内側に、例えば接着剤や溶接等により固定されて設けられている。また、第二の噛合体50b、第三の噛合体50cおよび第四の噛合体50dは、第二の分割体40bの内側に、それぞれ例えば接着剤や溶接等により固定されて設けられている。
これにより、第一実施形態および第一変形例と同様に、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に対して、四本の噛合体50a,50b,50c,50dが径方向外側から噛合可能に形成されるとともに、ロック機構44により一対の分割体40a,40bを結合することで噛合状態が保持される。
【0055】
(第一実施形態の各変形例の効果)
第一実施形態の第一変形例および第二変形例によれば、一対の分割体40a,40bの結合に伴って、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に対して径方向外側から噛合する三本以上の噛合体50a〜50c(または50a〜50d)を備えているので、従来技術および第一実施形態と比較して、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と噛合体50a〜50c(または50a〜50d)との接触面積をさらに広く確保できる。これにより、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と連結部材40との連結強度をさらに確保できるので、より安定して設備機器Wを天吊り支持できる。
【0056】
(
参考形態)
図9は、第二方向から見たときの
参考形態に係る連結部材140の説明図である。
図10は、側方から見たときの
参考形態に係る連結部材140の装着前状態における説明図である。
図11は、上方から見たときの
参考形態に係る連結部材140の装着前状態における説明図である。
第一実施形態のボルト連結体30は、一対の噛合体50a,50bが、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に対して噛合可能なボルトにより形成されていた(
図2参照)。
これに対して、
参考形態に係るボルト連結体130は、
図9〜
図11に示すように、一対の噛合体150a,150bが、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に対して噛合可能な長ナット141(請求項の「噛合用ナット」に相当。)により形成されている点で、第一実施形態の連結部材40とは異なっている。なお、第一実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0057】
(連結部材)
図11に示すように、連結部材140は、長ナット141が径方向に沿って二個に分割されて形成された第一の分割体140aおよび第二の分割体140bを備えている。
第一の分割体140aおよび第二の分割体140bの内周面には、それぞれ、長ナット141の雌ネジ部が形成されている。この雌ネジ部は、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に対して径方向外側から噛合可能な一対の噛合体150a,150bを構成している。
【0058】
第一の分割体140aおよび第二の分割体140bは、ヒンジ軸45を介して互いに回動可能に連結されており、回動操作によって組み合わせおよびその分離が可能とされる。そして、第一の分割体140aおよび第二の分割体140bを組み合わせることで、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32を径方向の外側から囲繞し、雌ネジ部である一対の噛合体150a,150bを第一吊りボルト31および第二吊りボルト32に径方向外側から螺着(噛合)させることが可能となる。
【0059】
第一の分割体140aには、ボルト軸Oを挟んでヒンジ軸45とは径方向の反対側に位置する部分に、第一の被係合部144aが取付けられている。また、第二の分割体140bには、第一の被係合部144aを上下から挟み込むように、第二の被係合部144bが上下方向に間隔を開けて一対設けられている。すなわち、第一の分割体140aおよび第二の分割体140bを組み合わせた際、第一の被係合部144aと第二の被係合部144bとは上下方向に沿って一列に配置される。
【0060】
そして、第一の分割体140aには、第一の被係合部144aおよび第二の被係合部144b内に挿通される係合ピン144cが、線材125を介して取付けられている。この係合ピン144cにより、第一の分割体140aおよび第二の分割体140bを固定することが可能とされている。すなわち、本実施形態では、第一の被係合部144a、第二の被係合部144bおよび係合ピン144cにより、ロック機構144(
図9参照)を構成している。なお、上記線材125としては、ワイヤや伸縮自在な弾性紐でも良いし、コイルバネ等でも構わない。
【0061】
(第一吊りボルトおよび第二吊りボルトと連結部材との連結方法)
図9に示すように、ヒンジ軸45(
図11参照)を介して一対の噛合体150a,150bの回動操作を行い、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aに、連結部材140の一対の噛合体150a,150bを噛合する。このとき、第一の噛合体150aおよび第二の噛合体150bは、第一吊りボルト31の下端部31bおよび第二吊りボルト32の上端部32aを囲繞するように噛合する。
【0062】
そして、第一の被係合部144aと第二の被係合部144b(
図10参照)とを上下方向に沿って一列に配置したあと、第一の被係合部144aおよび第二の被係合部144b内に係合ピン144cを挿通する。以上の手順により、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と連結部材140とが連結される。このように、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32と連結部材140とは、工具等を用いることなくワンタッチで簡単に連結可能となっている。
【0063】
(
参考形態の効果)
参考形態によれば、噛合体が長ナット141の雌ネジ部であり、例えば市販のナットを分割することにより低コストに一対の噛合体150a,150bを形成できるので、低コストにボルト連結体130を提供できる。また、一対の噛合体150a,150bとなる長ナット141の雌ネジ部は、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32のねじ山に対して、第一吊りボルト31および第二吊りボルト32の全周に渡って噛合するので、一対の噛合体150a,150bと第一吊りボルト31および第二吊りボルト32とを強固に連結できる。
【0064】
なお、本発明の技術範囲は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0065】
実施形態
および参考形態では、四本のボルト連結体30,130により、設備機器Wを天吊り支持する天吊り支持体1を構成していたが、ボルト連結体30,130の本数は四本に限定されることはない。ボルト連結体30,130の本数は、設備機器Wの重量や形状等に対応して、適宜変更することができる。
特に、設備機器Wがダクトや配管等の長尺部材である場合には、ダクトや配管等の延在方向にボルト連結体30,130を配置して天吊り支持してもよいし、ダクトや配管等の幅方向の両側にボルト連結体30,130を配置して天吊り支持してもよい。
【0066】
実施形態
および参考形態では、ボルト連結体30,130は、ダンパーユニット10およびブラケット4を介して設備機器Wに連結されていた。これに対して、ボルト連結体30,130は、ダンパーユニット10およびブラケット4を介することなく、直接設備機器Wに連結されていてもよい。ただし、ダンパーユニット10を設けることにより、例えば地震発生時の振動を緩衝でき、設備機器Wに振動が入力されるのを抑制できる点で、
第一実施形態に優位性がある。
【0067】
第一実施形態および
参考形態の構成を適宜組み合わせたボルト連結体としても構わない。
例えば、第一実施形態では、ボルト連結体30のロック機構44は、被係合部44aと係合爪部44bとを互いにスナップフィットすることにより構成されていた。しかし、第一実施形態のボルト連結体30に、
参考形態のボルト連結体130のロック機構144を適用してもよい。