特許第5909117号(P5909117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909117
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】柱と梁との接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   E04B1/24 L
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-49017(P2012-49017)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-185312(P2013-185312A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】316001674
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 倫夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】新飯田 匠
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−106320(JP,A)
【文献】 特開2002−356910(JP,A)
【文献】 特開2008−121419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁との接合構造であって、
本体部と、前記本体部の幅方向の端部の厚み方向に沿って、幅方向に垂直な方向の一方に突出する凸部とを有する補強部材を用い、
断面外形が略矩形であり、角部が曲面部で構成される柱と、
前記柱に接合される第1の梁と、
を具備し、
前記第1の梁の少なくとも一方のフランジ部は、前記柱の外面に接合されるとともに、幅方向の少なくとも一方の端部が、前記柱の前記曲面部にはみ出しており、
前記第1の梁の一方のフランジ部の高さにおいて、前記凸部が、前記曲面部と前記第1の梁の一方のフランジ部との隙間に挿入された状態で、前記補強部材が前記柱および前記第1の梁に接合され、
前記補強部材を介して、前記第1の梁の一方のフランジ部と前記柱との間の応力伝達が行われることを特徴とする柱と梁との接合構造。
【請求項2】
前記柱に形成される一対のダイアフラムと、
前記第1の梁と高さが異なり、前記第1の梁とは異なる方向に前記柱と接合され、上下の前記ダイアフラムにそれぞれのフランジ部が接合される第2の梁と、
をさらに具備し、
前記第1の梁の他方のフランジ部は、一方の前記ダイアフラムと接合されることを特徴とする請求項1記載の柱と梁との接合構造。
【請求項3】
柱と接合される柱接合面と、前記柱接合面と略垂直な面である梁設置面とを有し、前記柱接合面には、前記ダイアフラムとの干渉を防止するための切欠き部が本体の幅方向に渡って形成され、前記柱接合面側には、本体の厚みの半分以上の深さの凹部が設けられる接合部材をさらに用い、
前記第1の梁の一方のフランジ部と他方の前記ダイアフラムとの間の前記柱の外面側に前記接合部材の前記柱接合面が接合され、前記接合部材を介して、前記第1の梁の他方のフランジ部と他方の前記ダイアフラムとの間の応力伝達が行われることを特徴とする請求項2記載の柱と梁との接合構造。
【請求項4】
前記第1の梁の幅は、前記柱の幅よりも狭く、
前記第1の梁が、前記柱に対して幅方向に偏心して接合されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の柱と梁との接合構造。
【請求項5】
前記補強部材の前記凸部の内面形状は、前記曲面部の形状に略対応した凹曲面部を有し、前記凹曲面部の曲率半径は、前記曲面部の曲率半径よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の柱と梁との接合構造。
【請求項6】
前記補強部材の長さは、前記柱の幅の1/2以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の柱と梁との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角部に曲面部を有する角形鋼管柱に対して、異なる高さの梁を接合するための柱と梁との接合構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、角形鋼管柱を用いた構造物において、H形鋼からなる梁を接合する場合がある。柱と梁とを接合する場合には、接合部において、梁からの応力を柱に効率良く伝達させる必要があり、このためには、梁のフランジ部の高さに応じた通しダイアフラムを形成する必要がある。通しダイアフラムは、柱と柱の間に溶接等で接合される板状部材である。通しダイアフラムを用いた場合には、梁のフランジ部は、通しダイアフラムの側面で突きあわされて溶接される。
【0003】
しかし、柱に接合される梁のサイズ(高さ)が全ての方向で同じではない場合がある。例えば、一方向の梁のみ、高さが低い梁を接合する場合がある。このような場合には、当該梁の上下のフランジ部の内、少なくとも一方は他の梁が接合される通しダイアフラムと接合することができない。
【0004】
このような高さの異なる梁を接合するための柱梁接合構造として、角形断面管と、該角形断面管の並行する2辺を支持する十字プレートと、該角形断面管の角部を挟む2辺を支持する斜めプレートとが鋳造により一体的に成形され、且つ外周面の少なくとも梁が取り付けられる範囲が平坦に形成された柱梁接合金物の端部が角形断面管からなる柱に溶接接合され、H形鋼からなる梁が前記柱梁接合金物の外周面にノンスカラップ溶接により接合される柱梁接合構造がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−329613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、柱内部に内ダイアフラムを設ける作業は、溶接量が多く、作業性が悪いという問題がある。また、特許文献1に記載の構造では、柱梁接合部を一体成型する必要があり、金物の質量が大きくなるとともに高価なものとなる。しかし、異なる高さの梁毎に、通しダイアフラムを設けるためには、柱を切断し、それをダイアフラムで挟み込んで接合する必要があるため工数を要する。
【0007】
一方、柱が角形鋼管柱である場合には、柱は鋼板を曲げ加工して製造されるため、角部に曲面部が形成される。したがって、例えば、梁を柱に対して偏心させ、柱の側面と梁の側面とを一致させるように接合しようとすると、柱の曲面部に梁を接合する必要がある。しかし、梁と曲面部との間には隙間が形成されるため、梁からの応力を柱に効率良く伝達させるためには、当該部位に通しダイアフラムを形成する必要がある。しかしながら、前述の通り、通しダイアフラムを梁の高さ毎に配置することは工数を要し望ましくない。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、異なる高さの梁を角形鋼管柱に接合する場合において、通しダイアフラム等を設けることなく、簡易な構造で柱の外部のみで作業が可能な柱と梁との接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、柱と梁との接合構造であって、本体部と、前記本体部の幅方向の端部の厚み方向に沿って、幅方向に垂直な方向の一方に突出する凸部とを有する補強部材を用い、断面外形が略矩形であり、角部が曲面部で構成される柱と、前記柱に接合される第1の梁と、を具備し、前記第1の梁の少なくとも一方のフランジ部は、前記柱の外面に接合されるとともに、幅方向の少なくとも一方の端部が、前記柱の前記曲面部にはみ出しており、前記第1の梁の一方のフランジ部の高さにおいて、前記凸部が、前記曲面部と前記第1の梁の一方のフランジ部との隙間に挿入された状態で、前記補強部材が前記柱および前記第1の梁に接合され、前記補強部材を介して、前記第1の梁の一方のフランジ部と前記柱との間の応力伝達が行われることを特徴とする柱と梁との接合構造である。前記柱に形成される一対のダイアフラムと、前記第1の梁とは異なる方向に前記柱と接合され、上下の前記ダイアフラムにそれぞれのフランジ部が接合される第2の梁と、をさらに具備し、前記第1の梁の他方のフランジ部は、一方の前記ダイアフラムと接合されることが望ましい。
【0010】
柱と接合される柱接合面と、前記柱接合面と略垂直な面である梁設置面とを有し、前記柱接合面には、前記ダイアフラムとの干渉を防止するための切欠き部が本体の幅方向に渡って形成され、前記柱接合面側には、本体の厚みの半分以上の深さの凹部が設けられる接合部材をさらに用い、前記第1の梁の一方のフランジ部と他方の前記ダイアフラムとの間の前記柱の外面側に前記接合部材の前記柱接合面が接合され、前記接合部材を介して、前記第1の梁の他方のフランジ部と他方の前記ダイアフラムとの間の応力伝達が行われることが望ましい。
【0011】
前記第1の梁の幅は、前記柱の幅よりも狭く、前記第1の梁が、前記柱に対して幅方向に偏心して接合されてもよい。
【0012】
前記補強部材の前記凸部の側面形状は、前記曲面部の形状に略対応した凹曲面部を有し、前記凹曲面部の曲率半径は、前記曲面部の曲率半径よりも小さいことが望ましい。
【0013】
前記補強部材の長さは、前記柱の幅の1/2以下であることが望ましい。
【0014】
第1の発明によれば、角部に曲面部が形成される柱に対しても、梁からの応力を柱に効率良く伝達させることが可能な柱と梁との接合構造を得ることができる。具体的には、他の梁とは高さの異なる梁を柱に接合する際、当該梁の一部が柱の曲面部にはみ出す場合であっても、凸部を有する補強部材を用い、凸部を曲面部における柱と梁との隙間に配置して接合することで、当該部位における梁から柱への応力を効率良く伝達させることができる。
【0015】
また、柱の接合部材を用いることで、梁から柱への応力を効率良く伝達させることができるため、内ダイアフラムを設ける必要がない。また、この接合部材は、柱に接合される接合面側に凹部が形成され、凹部の深さが本体の厚みの半分以上であるため過剰な強度を有さずに軽量化を達成することができる。例えば、梁が柱から離れる方向に力が付与された際には、柱が引張力を負担し、接合部材が圧縮力を負担する。この際、接合部材に付与される圧縮力は、接合部材の厚みの中心から外方側が受け持つこととなる。
【0016】
すなわち、前述した梁からの力の向きに対しては、接合部材の厚みの中心から内方側は圧縮力を負担せず、また、引張力は柱が受け持つため、この部位に過剰な強度は不要である。したがって、この部位に凹部を形成することで、高い強度と軽量化を両立することができる。
【0017】
なお、このような構成は、当該梁が柱よりも狭く、柱に対して幅方向に偏心して配置される場合に、特に効果的である。
【0018】
また、凸部の側面形状を、柱の角部の曲面部の形状に略対応した凹曲面部とし、凹曲面部の曲率半径を柱の曲面部の曲率半径よりも小さくすることで、補強部材が柱の接合面から浮き上がることがない。
【0019】
また、補強部材の長さを柱の幅の1/2以下とすることで、柱の側面の略同一高さであって、二つの補強部材を同時に幅方向に並べて使用することができる。したがって、柱の対向面に接合されるそれぞれの梁が、いずれも一方の方向に偏心して、曲面部にはみ出しているような場合であっても、それぞれの梁に対して、補強部材を用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、異なる高さの梁を角形鋼管柱に接合する場合において、通しダイアフラム等を設けることなく、簡易な構造で柱の外部のみで作業が可能な柱と梁との接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】柱と梁の接合構造1を示す斜視図。
図2】補強部材13を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図。
図3】(a)は柱と梁の接合構造1を示す断面図であり、図1のA−A線断面図、(b)は(a)のC部拡大図。
図4】梁接合部材17を示す斜視図であり、(a)は上面斜視図、(b)は底面斜視図。
図5】柱と梁の接合構造1を示す断面図であり、図1のB−B線断面。
図6】(a)は柱と梁の接合構造1を示す断面図であり、図1のD−D線断面(b)は(a)のE−E線断面図。
図7】補強部材13a、13bを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態にかかる柱と梁の接合構造1について説明する。図1は、柱と梁の接合構造1を示す斜視図である。柱と梁の接合構造1は、角部に曲面部7を有する柱5に複数の梁9a、9bが接合された構造である。
【0025】
柱5は中空の角形鋼管柱であり、梁9a、9bはH形鋼である。梁9aと梁9bとは、梁の高さが異なる。なお、図1の例では、梁9aが柱5の一方向に形成され、梁9bがこれと隣り合う一方向に形成される例を示すが、本発明ではこれに限られず、梁9bを複数方向に設けてもよい。
【0026】
柱5には、一対のダイアフラム3a、3bが接合される。なお、ダイアフラム3a、3bは、柱5の外方に突出する通しダイアフラムである。ダイアフラム3a、3bは、柱5に所定の間隔をあけて上下に設けられる。
【0027】
梁9aの上下のフランジ部の端部は、それぞれダイアフラム3a、3bと溶接によって接合される。すなわち、ダイアフラム3a、3bの設置間隔は梁9aのフランジ部間隔と一致する。したがって、梁9aからの応力を柱に確実に伝達することができる。
【0028】
梁9bの上方のフランジ部11aの端部は、上方のダイアフラム3aと溶接によって接合される。梁9bは梁9aよりも高さが低いため、梁9bの下方のフランジ部11bとダイアフラム3bとの間には隙間が生じる。
【0029】
ダイアフラム3bと梁9bのフランジ部11bとの間には、梁接合部材17が接合される。すなわち、梁接合部材17を介して梁9bのフランジ部11bと柱5とが接合される。したがって、梁9bからの応力を柱に確実に伝達することができる。なお、梁接合部材17の詳細は後述する。また、梁接合部材17に代えて、内ダイアフラムを用いてもよい。
【0030】
梁9bは、柱5の幅方向に対して偏心した位置に接合される。すなわち、梁9bの幅は、柱5の幅よりも狭く、柱5の側面と梁9bの側面とが一致するように、梁9bが柱5の端部に合わせて接合される。梁9bと柱5との接合部であって、曲面部7に該当する高さには、補強部材13が接合される。補強部材13は、梁9bとの接合方向とは垂直な面であって、梁9bの偏心方向側の柱5の側面に接合される。
【0031】
図2は、補強部材13を示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は平面図である。補強部材13は、略直方体である本体部14と、凸部15とから構成される。補強部材13は、例えば溶接性に優れる鋼材である。なお、図では、本体部14を直方体で示すが、後述する溶接部に対して開先等を形成してもよい。
【0032】
本体部14の幅方向(図2(b)の左右方向)での一方の端部には、本体部14の厚み方向(図2(a)の上下方向)に沿って、幅方向に垂直な方向の一方に突出する凸部15が設けられる。凸部15の内面側には、円弧状である凹曲面部16が形成される。すなわち、凸部15は、先端に行くにつれて幅が狭くなり、根元部に行くにつれて幅が太くなる。
【0033】
図3(a)は、図1のA−A線断面図であり、補強部材13の部位における柱と梁の接合構造1の水平方向断面図である。また、図3(b)は、図3(a)のC部拡大図である。前述の通り、柱5の角部には、曲面部7が形成される。また、柱5の一方の側面(図中下側)と、梁9b(フランジ部11b)の一方の側面(図中下側)を一致させるように、梁9bを柱5の幅方向に偏心させると、梁9b(フランジ部11b)の端部が、曲面部7上にはみ出すように配置される。すなわち、梁9b(フランジ部11b)と柱5(曲面部7)との間に隙間が形成される。
【0034】
補強部材13の本体部14は、梁9bの接合方向とは垂直な方向であって、梁9bの偏心方向(曲面部7に梁9bがはみ出す)側の柱5の側面に接合される。この際、凸部15は曲面部7と梁9b(フランジ部11b)との隙間に挿入される。すなわち、補強部材13の端面が、柱5の側面(梁9bが接合される側面)と一致するように補強部材13が配置される。補強部材13の本体部14は、柱5と溶接部21で溶接される。
【0035】
凸部15の内面側は、曲面部7と対向するように配置される。ここで、凸部15の内面側の凹曲面部16は、曲面部7に対応する形状であり、その曲率半径R1(図2(b))は、柱5の曲面部7の曲率半径R2(図3(b))よりも僅かに小さく設定される。R1がR2よりも大きくなると、凸部15の先端部が、柱5と接触しなくなるためである。なお、凸部15と梁9bおよび梁9bと柱5とは、溶接部21によって溶接される。すなわち、補強部材13、柱5、梁9bがそれぞれ溶接される。なお、凹曲面部16と曲面部7との間には、多少の隙間が形成されてもよい。また、柱5、梁9bとの適切な溶接代を示すため、本体部14等に、溶接部を示すテーパ部等を形成してもよい。
【0036】
補強部材13の幅W(図2(b))は、柱5の全幅の1/2以下である。このようにすることで、補強部材13を同一高さで同一側面に一対接合することができる。例えば、図3(a)において、柱5の右側にも左側と同様に対称に梁9bが接合される場合、補強部材13は、左右の両方に向けて一対接合する必要がある。この場合、補強部材13の幅Wが柱5の全幅の1/2以下であれば、補強部材13同士が干渉することがない。
【0037】
次に、梁接合部材17について説明する。図4は、梁接合部材17示す斜視図であり、図4(a)は上面斜視図、図4(b)は底面斜視図である。梁接合部材17は、底面側が柱接合面24となり、一方の側面が梁設置面26となる。すなわち、柱接合面24と梁設置面26とは略垂直に形成される。
【0038】
柱接合面24は、柱の表面と接合される部位である。柱接合面24には、凹部25が形成される。凹部25の深さは、梁接合部材17の本体厚みの半分以上の深さであることが望ましい。
【0039】
また、柱接合面24には、幅方向に渡って切欠き部19が形成される。切欠き部19は、ダイアフラムとの干渉を避けるものである。切欠き部19の近傍において、凹部25には、必要に応じて幅方向にリブ27が設けられる。リブ27の端面は、柱接合面24と同一面となってもよく、または、リブ27の高さが、凹部25の深さよりも低くてもよい。リブ27は、梁接合部材の変形を防止して梁接合部材を補強するものである。
【0040】
梁接合部材17の両側面の柱接合面との縁部には、テーパ部23が設けられる。テーパ部23は、梁接合部材17と柱5との溶接代を示すものである。溶接代が小さすぎると、溶接強度を確保することができず、また、溶接代が大きすぎると、梁接合部材等の歪が大きくなるとともに、過剰なコストを要するためである。したがって、適切な溶接代を示すためのテーパ部23が形成される。
【0041】
梁接合部材17は、切欠き部19において、最も厚みが厚く、両端に向かって厚みが徐々に薄くなるように形成される。なお、梁接合部材17の形状は、図示した例に限られず、凹部25の形状や梁接合部材17の外形などは、前述した構成を有する限り、適宜設定される。
【0042】
図5は、柱と梁の接合構造1を示す図であり、図1のB−B線断面図である。また、同様に図6(a)は、図1のD−D線断面図である。
【0043】
図5に示すように、梁接合部材17は、上面(梁設置面26)が梁9bのフランジ部11bの下面と接触するように柱5に接合される。すなわち、梁接合部材17は、通しダイアフラムであるダイアフラム3bの突出部上面と梁9b下面との間を埋めるように固定される。
【0044】
梁接合部材17のダイアフラム3bとの接合部に対応する部位は、切欠き部19が形成される。このため、梁接合部材17とダイアフラム3bとが干渉することがない。梁接合部材17の下端は、ダイアフラム3bよりも下方に位置する。すなわち、梁接合部材17は、ダイアフラム3bをまたいで柱5の外周面と接合される。
【0045】
梁接合部材17と柱5とは、前述したテーパ部23において、溶接部29(図6(a))によって接合される。なお、梁9bのフランジ部11bの下面と梁設置面26との接触面は、必ずしも溶接する必要はなく、この場合には、フランジ部11bの下面と梁設置面26とは接触しなくてもよい。
【0046】
また、図5において、梁9bの上方のフランジ部11aとダイアフラム3aの接触部とを溶接し、梁9bのウェブ部およびフランジ部11bの端部と柱5の外周面との接触部とを溶接し、梁接合部材17と柱5およびダイアフラム3bとの接触部を溶接してもよいが、梁接合部材17は、柱5の外周面と溶接されれば良く、梁接合部材17とダイアフラム3bとは、必ずしも溶接する必要はない。この場合には、切欠き部19を大きくし、梁接合部材17とダイアフラム3bとの間には隙間が形成されてもよい。
【0047】
なお、図5に示すように、梁接合部材17が接合されるダイアフラム3bの延長部(梁接合部材17を鉛直方向の柱に接合した際に、これと直交する方向の延長部)と梁接合部材17との交差部における梁接合部材17の厚み(当該部位における凹部25の底部における厚み)をTとすると、Tは、柱5の厚みtよりも大きくなるように設定される。すなわち、凹部25の深さは、梁接合部材17の本体全厚の半分以上の深さであり、かつ、Tがtよりも大きくなるように設定される。
【0048】
このように、ダイアフラム3bと梁9bとの間に梁接合部材17を設けることで、梁9bからの下方に向かう応力や、ダイアフラム3aとの接合部を起点としたモーメント等を確実に柱5に伝達することができる。
【0049】
図6(b)は、図6(a)のE−E線断面図である。前述の通り、梁接合部材17は、テーパ部23で柱5と溶接される。この状態で、梁から柱に力が加わった場合には、梁接合部材17にも力が付与される。
【0050】
例えば、図5において、梁9bが柱5から離れる方向(図中右方向)に力が付与されるとする。この場合、図6(b)に示すように、柱5および梁接合部材17の厚み方向の中心(図中F)よりも内方側(図中G)には引張方向の力が付与される。また、梁接合部材17の厚み方向の中心(図中F)よりも外方側(図中H)には、圧縮力が付与される。
【0051】
この場合には、引張力は柱5が受け持つことができるため、梁接合部材17の中心Fよりも内方側Gにおいては、過剰な強度は不要である。一方、梁接合部材17の中心Fよりも外方側Hにおいては、梁接合部材17のみで圧縮力を受け持つため、高い強度が必要である。
【0052】
本発明に係る梁接合部材17は、この高い強度が要求される部位(H)を厚肉とし、強度を要さない部位(G)においては、肉を薄くするために凹部25が形成される。すなわち、柱5に接合された状態で、柱5の接合面から遠い部位の肉厚を厚くすることで、効率的に補強を行うとともに、凹部25によって、軽量化を達成することができる。特に、柱から遠い部位の肉厚を厚くすることで補強した柱の面外方向の耐力を向上させることができる。
【0053】
なお、梁接合部材17は、梁9bの下部に設置する必要はなく、上部に設けてもよい。この場合には、図5図6の上下が反転した状態で、梁9bと梁接合部材17とを接合すればよい。この場合には、梁接合部材17の底板と梁9bとの接触面とは溶接等で接合する必要がある。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態によれば、角部に曲面部7が形成される柱5に対して梁9bを接合する際、梁9bの一部が柱5の曲面部7にはみ出す場合であっても、梁9bからの応力を柱5に効率良く伝達させることができる。したがって、梁9bの幅が柱5の幅よりも狭く、梁9bを柱5に対して幅方向に偏心して配置される場合であっても、通しダイアフラムを用いることなく、梁9bと柱5との応力伝達を確保することができる。
【0055】
また、凸部15の内面の凹曲面部16の曲率半径R1を、柱5の曲面部7の曲率半径よりも小さくすることで、凸部15の先端が柱5の接合面から浮き上がることがない。また、補強部材13の幅Wを柱5の全幅の1/2以下とすることで、柱5の側面の略同一高さに、二つの補強部材13を同時に幅方向に並べて使用しても、互いに干渉することがない。
【0056】
また、梁接合部材17を用いることで、内ダイアフラムを用いることなく、梁9bから柱5への応力を効率良く伝達することができる。したがって、簡易な構造で確実に梁9bからの応力を柱5に伝達することができる。また、柱接合面側に凹部25が形成されるため、軽量であり、また、特に強度が必要な部位の肉厚が厚いため、効率的に補強を行うことができる。
【0057】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば、補強部材13においては、凸部15の内面を凹曲面部16としたが、当該部位は、必ずしも曲面でなくてもよい。たとえば、図7(a)に示す補強部材13aに示すように、凸部15の内面を複数の直線を結んで形成する凹面部16aとしてもよい。この場合にも、補強部材13aを柱5に接合した際に、凹面部16aが曲面部7と干渉しないようにすればよい。
【0059】
また、図7(b)に示す補強部材13bに示すように、凸部15の内面をテーパ形状としてもよい。この場合にも、補強部材13bを柱5に接合した際に、テーパ部が曲面部7と干渉しないようにすればよい。
【0060】
また、上述の例では、通しダイアフラムであるダイアフラム3a、3bを用いる例について説明したが、本発明の補強部材13等は、内ダイアフラムを用いた柱と梁との接合構造にも適用することができる。すなわち、角部に曲面部で構成される柱に対し、端部がはみ出すように梁を接合する場合であれば、本補強部材を適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1………柱と梁の接合構造
3a、3b………ダイアフラム
5………柱
9a、9b………梁
11a、11b………フランジ部
13、13a、13b………補強部材
14………本体部
15………凸部
16………凹曲面部
16a………凹面部
17………梁接合部材
19………切欠き部
21………溶接部
23………テーパ部
24………柱接合面
25………凹部
26………梁設置面
27………リブ
29………溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7