(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909128
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】消雪ポンプ設備の制御装置及び遠隔監視装置
(51)【国際特許分類】
E01H 5/10 20060101AFI20160412BHJP
E01H 3/04 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
E01H5/10 B
E01H3/04 Z
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-73546(P2012-73546)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-204290(P2013-204290A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】川勝 啓行
(72)【発明者】
【氏名】十川 孝志
(72)【発明者】
【氏名】末吉 康則
【審査官】
石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−011675(JP,A)
【文献】
特開2007−120254(JP,A)
【文献】
特開2008−150898(JP,A)
【文献】
特開2002−163299(JP,A)
【文献】
特開2004−044456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 5/10
E01H 3/04
E03B 5/00− 5/06
E03B 3/00− 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水源から揚水する電動ポンプと散水管とを含む消雪ポンプ設備に対して、地下水を前記散水管から散水するように前記電動ポンプを制御する消雪制御部を備えている消雪ポンプ設備の制御装置であって、
前記電動ポンプを自動制御して揚水量を変化させたときの水量と水位を計測する揚水試験を実行し、その計測値を記憶部に記憶する揚水試験制御部を備え、
前記揚水試験制御部は、前記消雪制御部により制御されている散水中に、消雪に必要な散水量に応じた所定の揚水量範囲で前記揚水試験を実行する消雪ポンプ設備の制御装置。
【請求項2】
前記揚水試験制御部は、降雪センサにより検知された降雪量に応じた揚水量範囲で前記揚水試験を実行する請求項1記載の消雪ポンプ設備の制御装置。
【請求項3】
前記揚水試験制御部は、所定期間内に段階揚水試験に必要となる複数の揚水量で揚水したときの各水量と水位を前記記憶部に記憶するように構成されている請求項1または2記載の消雪ポンプ設備の制御装置。
【請求項4】
前記記憶部に記憶された計測値を、通信部を介して遠隔監視装置に送信する通信制御部を備えている請求項1から3の何れかに記載の消雪ポンプ設備の制御装置。
【請求項5】
前記揚水試験制御部は、前記遠隔監視装置から送信される試験開始指令に基づいて前記揚水試験を実行する請求項4記載の消雪ポンプ設備の制御装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の消雪ポンプ設備の制御装置から計測値が送信される遠隔監視装置であって、
所定地域に分散設置される各消雪ポンプ設備の制御装置に、時期を異ならせて前記揚水試験を実行するように試験開始指令を送信する揚水試験計画処理部と、各消雪ポンプ設備の制御装置から送信された計測値に基づいて、各地下水源の状態を評価する評価処理部を備えている遠隔監視装置。
【請求項7】
請求項4または5記載の消雪ポンプ設備の制御装置から計測値が送信される遠隔監視装置であって、
所定地域に分散設置される各消雪ポンプ設備の制御装置に、同時期に前記揚水試験を実行するように試験開始指令を送信する揚水試験計画処理部と、各消雪ポンプ設備の制御装置から送信された計測値に基づいて、各地下水源の状態を評価する評価処理部を備えている遠隔監視装置。
【請求項8】
各消雪ポンプ設備の制御装置から送信された計測値を、ネットワークを介して複数の端末から閲覧可能なサーバを備えている請求項6または7記載の遠隔監視装置。
【請求項9】
前記揚水試験計画処理部は、前記端末から前記サーバを介して設定された揚水計画情報に基づいて、各消雪ポンプ設備の制御装置に試験開始指令を送信する請求項8記載の遠隔監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消雪ポンプ設備の制御装置及び遠隔監視装置に関し、特に地下水源から揚水する電動ポンプと散水管とを含む消雪ポンプ設備に対して、地下水を前記散水管から散水するように前記電動ポンプを制御する消雪制御部を備えている消雪ポンプ設備の制御装置及び遠隔監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、消雪装置の運転を確実かつ経済的に行うことができる消雪装置駆動方法を提供することを目的として、降雪の有無を親装置で検出して得られた降雪情報に応じて、消雪領域に設置された複数の消雪装置に対応する複数の子装置で該消雪装置を駆動する消雪装置駆動方法が開示されている。
【0003】
当該消雪装置駆動方法は、複数の消雪装置が設置された消雪領域を間にして設置された複数の親装置の少なくとも1つで降雪情報が得られた場合、各子装置で温度を検出し、検出した温度が所定の降雪温度より低いか否かを判定し、温度が降雪温度より低い場合、該温度を検出した子装置に対応する消雪装置を駆動することを特徴とする。
【0004】
また、特許文献2には、消雪ポンプを運転する際に、より省エネルギーで、節水を重視した制御を行うことを目的とする消雪ポンプの運転・停止を制御する消雪ポンプ運転制御方法が提案されている。
【0005】
当該消雪ポンプ運転制御方法は、単位時間あたりの雪片数をカウントし、検出降雪強度値を求める降雪強度判断工程と、検出降雪強度値に基づいて消雪ポンプの運転時間を所定の運転条件に基づいて制御する制御工程とを備え、運転条件は、検出降雪強度値が予め定められた第1降雪強度値よりも小さい場合を停止運転条件とし、検出降雪強度値が第1降雪強度値より大きく、第1降雪強度値よりも大きい第2降雪強度値よりも小さい場合に間欠運転条件とし、検出降雪強度値が第2降雪強度値よりも大きい場合は連続運転条件とすることを特徴とする。
【0006】
また、特許文献3には、地下水源となる井戸の設計方法及び老朽化の定量評価方法が開示されている。従来のこの種の評価は、段階揚水試験から得られる水位降下量〜揚水量(S〜Q曲線)を用いてローラボー等の方法で解析され、同図から曲線の勾配や井戸の限界揚水量とされる変曲点を求めることによって、施工の良否や老朽化の程度が定性的に求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−150898号公報
【特許文献2】特開2009−138340号公報
【特許文献3】特開平07−11675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、降雪情報に基づいて消雪ポンプ設備を自動運転する制御装置を備えることにより、消雪システムの経済性を向上させる試みがなされている。このような消雪ポンプ設備の地下水源となる各消雪用井戸に不都合が生じると、降雪シーズン中に保守することができないため、通常は降雪シーズンの前または後に揚水能力の評価試験が行なわれ、降雪シーズン前に不都合が解消されるようにメンテナンスが行なわれている。
【0009】
具体的には、保安スタッフが各消雪ポンプ設備の制御盤を手動操作することにより、段階揚水試験を行ない、その際の揚水量、水位、水の濁りや揚砂量等に基づいて老朽化の程度の判断を行なっていた。そして、このような試験は、降雪シーズンであっても、必要に応じて行なわれる場合もあった。
【0010】
このような点検作業は煩雑で非常に長い時間を要する作業で、短期間に各消雪用井戸を点検するためには多くの人手を要するため、作業の効率化の要請が高かった。
【0011】
本発明の目的は、上述の問題に鑑み、多くの人手や煩雑な作業を要することなく、適切な時期に適切に試験が行なえ、容易にその評価を行なうことができる消雪ポンプ設備の制御装置及び遠隔監視装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明による消雪ポンプ設備の制御装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、地下水源から揚水する電動ポンプと散水管とを含む消雪ポンプ設備に対して、地下水を前記散水管から散水するように前記電動ポンプを制御する消雪制御部を備えている消雪ポンプ設備の制御装置であって、
前記電動ポンプを自動制御して揚水量を変化させたときの水量と水位を計測する揚水試験を実行し、その計測値を記憶部に記憶する揚水試験制御部を備
え、前記揚水試験制御部は、前記消雪制御部により制御されている散水中に、消雪に必要な散水量に応じた所定の揚水量範囲で前記揚水試験を実行する点にある。
【0013】
上述の構成によれば、揚水試験制御部によって所定時期に揚水試験が自動で行なわれ、その計測値が記憶部に記憶されるので、その記憶部に記憶された計測値を読み出すことにより、極めて容易に評価できるようにな
る。
【0014】
揚水試験制御部によって実行される揚水試験は、所定時間毎に揚水量を切り替えて、そのときの飽和水位を計測する段階揚水試験が含まれる。消雪のための散水を行ないながら揚水試験を実行する場合に、消雪のための散水量よりも少ない量で揚水試験を行なうと、適切な消雪ができないという不都合が生じる。そこで、消雪制御部により制御されている散水量に応じた所定の揚水量範囲で揚水量を切り替えることにより、少なくとも消雪機能を損なわない範囲での揚水試験を経済的に行なうことができる。
【0015】
同第
二の特徴構成は、同請求項
2に記載した通り、上述の第
一の特徴構成に加えて、前記揚水試験制御部は、降雪センサにより検知された降雪量に応じた揚水量範囲で前記揚水試験を実行する点にある。
【0016】
上述の構成によれば、消雪に必要な水量が供給できるように、降雪センサにより検知された降雪量に応じた揚水量範囲で揚水試験を実行することによって、上述と同様、少なくとも消雪機能を損なわない範囲での揚水試験を経済的に行なうことができる。
【0017】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記揚水試験制御部は、所定期間内に段階揚水試験に必要となる複数の揚水量で揚水し、そのときの各水量と水位を前記記憶部に記憶するように構成されている点にある。
【0018】
段階揚水試験に必要となる揚水量範囲で、所定期間内に離散的に揚水量を異ならせて揚水したときの各水量と水位が記憶部に記憶されるので、消雪制御部の作動中であっても段階揚水試験が完結できる。
【0019】
同第
四の特徴構成は、同請求項
4に記載した通り、上述の
第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記記憶部に記憶された計測値を、通信部を介して遠隔監視装置に送信する通信制御部を備えている点にある。
【0020】
揚水試験制御部によって記憶部に記憶された計測値が、通信制御部によって遠隔監視装置に送信されるので、作業員は当該遠隔監視装置を介して各消雪ポンプ設備の計測値を認識でき、各消雪ポンプ設備の井戸の評価を極めて容易に行なえるようになる。
【0021】
同第
五の特徴構成は、同請求項
5に記載した通り、上述の第
四の特徴構成に加えて、前記揚水試験制御部は、前記遠隔監視装置から送信される試験開始指令に基づいて前記揚水試験を実行する点にある。
【0022】
遠隔監視装置を介して各消雪ポンプ設備の揚水試験制御部に試験開始指令を送信すれば、各消雪ポンプ設備で揚水試験が実行されるようになり、揚水試験が必要なときに容易に揚水試験を実行することができ、計画的な揚水試験、突発的に必要となった揚水試験の何れもが極めて容易に実行できるようになる。
【0023】
本発明による遠隔監視装置の特徴構成は、同請求項
6に記載した通り、上述した第
四または第
五の特徴構成を備えた消雪ポンプ設備の制御装置から計測値が送信される遠隔監視装置であって、所定地域に分散設置される各消雪ポンプ設備の制御装置に、時期を異ならせて前記揚水試験を実行するように試験開始指令を送信する揚水試験計画処理部と、各消雪ポンプ設備の制御装置から送信された計測値に基づいて、各地下水源の状態を評価する評価処理部を備えている点にある。
【0024】
揚水試験計画処理部によって所定地域に分散設置される各消雪ポンプ設備に対して、時期を異ならせて揚水試験を実行させることにより、評価処理部では他の消雪ポンプ設備の影響を受けることなく、当該消雪ポンプ設備の地下水源の状態を評価できるようになる。
【0025】
同
第二の特徴構成は、同請求項
7に記載した通り、上述した第
四または第
五の特徴構成を備えた消雪ポンプ設備の制御装置から計測値が送信される遠隔監視装置であって、所定地域に分散設置される各消雪ポンプ設備の制御装置に、同時期に前記揚水試験を実行するように試験開始指令を送信する揚水試験計画処理部と、各消雪ポンプ設備の制御装置から送信された計測値に基づいて、各地下水源の状態を評価する評価処理部を備えている点にある。
【0026】
揚水試験計画処理部によって所定地域に分散設置される各消雪ポンプ設備に対して、時期を同じくして揚水試験を実行させることにより、評価処理部では他の消雪ポンプ設備の影響を組み入れて、当該消雪ポンプ設備の地下水源の状態を評価できるようになる。つまり、共通の地下水を利用している地域での地下水の状況をも加味した消雪ポンプ設備の評価が行なえるようになる。
【0027】
同
第三の特徴構成は、同請求項
8に記載した通り、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、各消雪ポンプ設備の制御装置から送信された計測値を、ネットワークを介して複数の端末から閲覧可能なサーバを備えている点にある。
【0028】
遠隔監視装置に集中管理された計測値をネットワークを介して接続された複数の端末で共有できるので、複数の管理者が情報を共有して適切な処理を行なえるようになる。
【0029】
同
第四の特徴構成は、同請求項
9に記載した通り、上述した第三の特徴構成に加えて、前記揚水試験計画処理部は、前記端末から前記サーバを介して設定された揚水計画情報に基づいて、各消雪ポンプ設備の制御装置に試験開始指令を送信する点にある。
【0030】
遠隔監視装置が設置された場所から離隔した地域にいる管理者であっても、端末を介して各消雪ポンプ設備の揚水試験を計画し、実行させることができるようになる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、多くの人手や煩雑な作業を要することなく、適切な時期に適切に試験が行なえ、容易にその評価を行なうことができる消雪ポンプ設備の制御装置及び遠隔監視装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明による消雪ポンプ設備の制御装置及び遠隔監視装置を説明する。
図1に示すように、消雪ポンプ設備1は、消雪用の地下水源となる井戸2、井戸2に設置された消雪用の電動ポンプ3、道路Rに敷設された2本の散水管5、散水管5に沿って所定間隔で配置された散水ノズル6、揚水された地下水を散水管5に送る送水管4、電動ポンプ3等を制御する制御装置Cが収容された制御盤7、降雪量を計測する降雪センサ8等を備えている。図中、符号9は揚水管、Qは流量計、Wは投込圧力式等の水位計、Thはサーミスタ等の温度計を示す。
【0034】
降雪センサ8として、例えば、所定の開口面積の受雪部を備え、受雪部に堆積した雪をヒータで融かして水量を計測することにより、所定時間当りの降雪量を計測する形式や、所定の開口面積の受雪部を備え、受雪部に降雪した雪をヒータで融かして電極間の電気抵抗の変化を計測することで降雪量を計測する形式のセンサを採用することができる。
【0035】
降雪シーズンに井戸2から電動ポンプ3で汲み上げられた10℃前後の地下水が散水ノズル6を介して路面に散水され、融雪されて路面を流れる水が道路脇の側溝Dに排水される。
【0036】
散水管5は、井戸2の設置位置から道路に沿って2方向にそれぞれ敷設され、送水管4の基端側に設置された三方弁V1によって何れに送水されるかが切り替えられる。
【0037】
制御盤7には、電源装置P、制御装置C、無線通信装置Tが収容され、制御装置Cに降雪センサ8、流量計Q、水位計W、温度計Thからの信号が入力され、電動ポンプ3の駆動回路Iへの制御信号が出力される。
【0038】
駆動回路Iはインバータ回路であり、電動ポンプ3の回転数が駆動回路Iを介して任意の回転数に制御可能に構成されている。従って、電動ポンプ3による揚水量が任意に調整できる。
【0039】
制御装置Cは、CPUとROMやRAM等の記憶部Mを備え、ROMに記憶されたプログラムを実行するCPUにより、各種の制御機能が実現される。
【0040】
尚、
図6に示すように、インバータ回路に代えて流量調整弁V3を設けて、流量調整弁を制御することによって揚水量を任意に調整できる構成であってもよい。
【0041】
図2に示すように、制御装置Cは、消雪制御部C1、揚水試験制御部C2、通信制御部C3の三つの機能ブロックを備えている。尚、記憶部Mは上述の半導体メモリに限るものではなく、それらに加えてハードディスク装置等のストレージデバイスを用いることも可能である。
【0042】
消雪制御部C1は、温度計Thや降雪センサ8から入力される信号に基づいて、地下水を散水ノズル6から散水するように電動ポンプ3を自動制御し、その運転履歴を記憶部Mに記憶する。
【0043】
揚水試験制御部C2は、所定時期に電動ポンプ3を自動制御して揚水量を変化させたときの水量と水位を計測する揚水試験を実行し、その計測値を記憶部Mに記憶する。
【0044】
通信制御部C3は、通信装置Tを介して遠隔監視装置RMと交信する。つまり、通信制御部C3は、記憶部Mに記憶された運転履歴や計測値等の試験情報等を当該消雪ポンプ設備1の識別情報と共に遠隔監視装置RMに送信し、遠隔監視装置RMからの制御指令を受信する。
【0045】
通信装置Tは携帯電話に利用されるパケット式の無線通信モジュールで、本発明の通信部として機能する。尚、通信装置Tは無線方式に限らず有線方式でもよい。
【0046】
遠隔監視装置RMは、例えば汎用のパーソナルコンピュータで構成され、消雪ポンプ設備1の遠隔監視用のアプリケーションプログラムがインストールされている。
【0047】
遠隔監視装置RMには、通信制御部C3から送信された各消雪ポンプ設備1の運転履歴や計測値等の管理情報を、インターネットを介して複数の端末から閲覧可能なWEBサーバ10を備えている。尚、インターネット以外のネットワークを用いることも可能である。
【0048】
管理者は、個々の端末TMからWEBサーバ10にアクセスして、監視が必要な消雪ポンプ設備1の運転履歴や計測値等の管理情報を閲覧して、必要な作業を進める。例えば、降雪シーズンに電動ポンプ3、流量計Q、水位計W、サーミスタTh等に異常が発生し、消雪機能に支障が発生していると修理作業を準備し、降雪シーズン前に揚水に異常が発生していると井戸の修復作業を準備する等である。
【0049】
消雪制御部C1を詳述する。消雪制御部C1は、降雪センサ8で検知される降雪量及び温度計Thで検知される温度に基づいて、流量計Qの値が予め設定された揚水量となるように駆動回路Iを制御して電動ポンプ3を駆動し、2本の散水管5の何れか一方の散水ノズル6から散水する。三方弁V1を所定時間間隔、具体的には数十分間隔で切り替えることにより、2本の散水管5に交互に地下水が供給される。揚水量は水温、降雪量以外に交通量を加味して設定されてもよい。後述のウェブサーバを介して端末または遠隔監視装置から揚水量が遠隔設定される構成であってもよい。
【0050】
さらに、消雪制御部C1は、各センサの入力データ、電動ポンプ3の制御データ、電動ポンプ3の故障の有無等の運転情報を記憶部Mに定期的に記憶する。例えば、時刻情報、所定時間毎の電動ポンプ3の運転回数や累積運転時間、所定時間毎の揚水量、平均温度、平均降雪量等の運転情報である。
【0051】
揚水試験制御部C2を詳述する。消雪用の井戸は、打ち込み式の浅井戸、機械堀り工法による深井戸があり、何れの場合にも必要な水量が安定して継続的に得られるように維持管理される必要がある。長年の使用によりスクリーンが目詰まりし、或いは地下水脈が変動して必要な水量が得られない場合には、井戸の再生処理、或いは再掘削が必要になる。
【0052】
そこで、揚水試験制御部C2は、降雪シーズンの前後の所定時期、或いは降雪シーズン中の所定時期に、所定時間毎に揚水量を段階的に変化させるように電動ポンプ3を制御して、そのときの水量と水位を計測する段階揚水試験や、所定の揚水量で連続的に揚水して水位の変動を計測し、その後回復水位を計測する連続揚水試験、回復試験を実行する。
【0053】
図3に示すように、段階揚水試験とは、水位計Wで計測した自然水位を始点に、電動ポンプ3を制御して低水量から高水量まで段階的に揚水量を変化させ、各段階での安定水位を計測する試験である。例えば数十分間隔から数時間間隔で揚水量を数百l/min.単位で上昇させたときの飽和水位を計測する。
【0054】
図4には、両対数グラフにプロットした揚水量と水位低下の関係が示されている。揚水量が限界に達するまではグラフの傾きは一定で直線となり、限界を超えると傾きが大きくなる。グラフの傾きが変わる屈曲点が限界揚水量となり、その80%の値が適正揚水量となる。尚、
図3,4は説明の便宜のために示す図であり、両者に相関関係は無い。
【0055】
適正揚水量が消雪に十分な値であるか否か、さらに、掘削初期の井戸の段階揚水試験の特性と今回の段階揚水試験の特性と比較し、屈曲点の推移の程度によって井戸の揚水能力が評価される。同時に水の濁度や揚砂の有無を把握するため、揚水を撮影する撮像素子を設置し、その画像データを記憶部Mに記憶してもよい。そして、揚水試験制御部C2は、適正揚水量が消雪に十分な所定の閾値に達しない場合に、警告情報を記憶部Mに格納する。
【0056】
図5に示すように、連続揚水試験とは、24時間または48時間、適性揚水量で揚水を連続し、水位の変動状況等を計測する試験である。さらにその直後から水位の回復状況を計測する回復試験を実行し、このときの計測値から帯水層の透水量係数、透水係数、貯留係数を求め、その値を評価する。通常、連続揚水試験、回復試験は、降雪シーズンの前後に行なわれる。
【0057】
これらの試験データは記憶部Mに記憶され、通信制御部C3によって遠隔監視装置RMに送信される。
【0058】
揚水試験制御部C2は、通常、揚水が散水管5に送水されないように、送水管4に備えた切替弁V2を切り替えて揚水が試験管40に送水され、側溝D等へ排水されるように経路を切替制御した後に、上述の揚水試験を行なう。
【0059】
しかし、本発明による揚水試験制御部C2は、消雪制御部C1による散水中に、送水経路を試験管に切り替えることなく散水管5に維持した状態で揚水試験を実行することで、消雪機能を損なうことなく揚水試験を実行するように構成されている。
【0060】
例えば、消雪制御部C1による散水中に揚水試験を行なう場合、揚水試験制御部C2は、消雪制御部C1から散水中である旨の情報を得ることによって、消雪制御部C1の制御に割り込み、切替弁V2を切り替えることなく、
図3に示した段階揚水試験の全プロセスを実行する。尚、この場合、揚水試験制御部C2が三方弁V1の切替制御を代替する。段階揚水試験が終了すると割込み制御を終了し、以後消雪制御部C1が再び消雪制御を継続する。
【0061】
揚水試験制御部C2は、上述した消雪制御部C1による散水中に揚水試験を行なう場合、段階揚水試験の全プロセスを実行するのではなく、消雪制御部C1により制御されている散水量に応じた所定の揚水量範囲(適宜設定される値であり、特に限定されるものではない。)で段階揚水試験の一部を実行するように構成してもよい。
【0062】
例えば、
降雪量が多いときに、揚水量が少ない領域の試験を行なうと、消雪機能が妨げられる虞があるため、小水量領域での揚水試験を飛ばして大水量領域での揚水試験を行なうことができる。
【0063】
このような場合には、所定期間内、例えば1週間以内に全域の段階揚水試験が離散的に行なわれるように制御し、それらを統合することにより、
図4の特性グラフが得られる。
【0064】
消雪制御部C1により制御されている散水量に応じた所定の揚水量範囲で段階揚水試験の一部を実行する代わりに、揚水試験制御部C2は、降雪センサ8により検知された降雪量に応じた揚水量範囲で段階揚水試験の一部を実行してもよい。
【0065】
揚水試験制御部C2により実行される段階揚水試験や連続揚水試験の開始時期は予め記憶部Mにスケジューリングされている。記憶部Mとの間でデータを入出力可能なハンディターミナル用のインターフェースを備えている場合には、ハンディターミナルを介してスケジュール情報を設定することができる。尚、当該ハンディターミナルを介して運転情報や試験情報を読み出すことも可能である。
【0066】
遠隔監視装置RMから送信されるスケジュール情報を受信した通信制御部C3が、当該スケジュール情報を記憶部Mに格納し、揚水試験制御部C2が当該スケジュール情報を記憶部Mから読み出して段階揚水試験や連続揚水試験を開始することも可能である。つまり、スケジュール情報が揚水試験を実行する試験開始指令となる。
【0067】
このようにして、揚水試験制御部C2により揚水試験が自動的に実行されるように構成されているため、管理者が各消雪ポンプ設備1の設置箇所に赴いて手動で揚水試験を行なう煩雑な作業から開放されるようになる。
【0068】
次に、このような消雪ポンプ設備1の制御装置Cから運転履歴や計測値等の試験情報が送信される遠隔監視装置RMを詳述する。
【0069】
遠隔監視装置RMは、通信装置Tを介して所定地域に分散設置される各消雪ポンプ設備1の制御装置Cと定期的に交信し、運転履歴や計測値等の試験情報を受信するとともに、消雪制御部C1で参照される散水量テーブルや、揚水試験制御部C2で参照される揚水試験スケジュールを送信する。尚、散水量テーブルとは、例えば、温度、降雪量に応じた散水量が設定されたテーブルである。
【0070】
遠隔監視装置RMはウェブサーバ10に接続され、インターネットを介して各管理者の端末から遠隔監視装置RMで管理される運転履歴や計測値等の試験情報を閲覧でき、また、各管理者の端末からウェブサーバ10及び遠隔監視装置RMを介して消雪ポンプ設備1の揚水試験のスケジュールを設定できるように構成されている。
【0071】
そのような揚水試験のスケジュール設定等を行なう遠隔監視装置RMを詳述する。遠隔監視装置RMは、各消雪ポンプ設備1に対して試験スケジュールを設定する揚水試験計画処理部R1と、各消雪ポンプ設備1の制御装置Cから送信された計測値に基づいて、各地下水源の状態を評価する評価処理部R2を備えている。
【0072】
評価処理部R2では、段階揚水試験の計測値に基づいて、消雪ポンプ設備1毎に、
図4で説明した揚水量と水位低下の特性グラフを生成し、連続揚水試験の計測値に基づいて、消雪ポンプ設備1毎に、帯水層の透水量係数、透水係数、貯留係数を算出し、揚水能力が許容される範囲であるかの評価が行なわれる。
【0073】
例えば、揚水試験計画処理部R1は、所定地域に分散設置される各消雪ポンプ設備1の制御装置Cに、時期を異ならせて揚水試験を実行するように試験開始時間を含む試験開始指令を送信するか、同時期に揚水試験を実行するように試験開始時間を含む試験開始指令を送信するかの何れかの指令を送信する。
【0074】
つまり、揚水試験計画処理部R1は、端末TMからサウェブサーバ10を介して設定された揚水計画情報に基づいて、各消雪ポンプ設備の制御装置に試験開始指令を送信する。
【0075】
前者の場合、評価処理部R2では他の消雪ポンプ設備の影響を受けることなく、当該消雪ポンプ設備の地下水源の状態を評価できるようになり、後者の場合、他の消雪ポンプ設備の影響を組み入れて、当該消雪ポンプ設備の地下水源の状態を評価できるようになる。
【0076】
以上説明した消雪ポンプ設備の制御装置及び遠隔監視装置の具体的構成は実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1:消雪ポンプ設備
2:地下水源(井戸)
3:電動ポンプ
4:送水管
5:散水管
6:散水ノズル
10:ウェブサーバ
C:制御装置
C1:消雪制御部
C2:揚水試験制御部
C3:通信制御部
RM:遠隔監視装置
R1:揚水試験計画処理部
R2:評価処理部