特許第5909130号(P5909130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909130
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】ニーエアバッグの折り畳み収納方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/206 20110101AFI20160412BHJP
   B60R 21/237 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   B60R21/206
   B60R21/237
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-74819(P2012-74819)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-203258(P2013-203258A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】306009581
【氏名又は名称】タカタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104503
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 博文
(72)【発明者】
【氏名】深川 貴巳
(72)【発明者】
【氏名】早▲崎▼ 拓也
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−312432(JP,A)
【文献】 特開2005−193819(JP,A)
【文献】 特開2011−136682(JP,A)
【文献】 特開2005−306162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への設置時に乗員側に設けられる乗員側パネルと前記設置時に前記乗員側と反対側である車体側に設けられる車体側パネルとからなる、袋体により構成され、圧力ガスが流入される上流側であり、かつ乗員の脛付近で膨張展開する下側部位と、圧力ガスが流入される下流側であり、かつ乗員の膝付近で膨張展開する上側部位と、を備え、前記圧力ガスの流入により膨張展開し乗員の膝を拘束する、ニーエアバッグの折り畳み収納方法であって、
まず、前記車体側パネル下に前記乗員側パネルを上に重ねて平らに展延した状態から、前記上側部位の車幅方向の両側縁部を、前記乗員側パネルが内側へ折り込まれるように前記車幅方向の中心軸線に向かって折り返す側縁部折返ステップと、
前記側縁部折返ステップで折り返された部分を含み、前記上側部位を上端側から前記乗員側パネルが内側へ折り込まれるように前記下側部位に向けてロール状に折り畳む上側折畳ステップと、
前記上側部位の前記ロール状の折り畳みに引き続き前記下側部位の一部を前記乗員側パネルが内側へ折り畳まれるようにロール状に折り畳む下側折畳ステップと、
次いで、前記ロール状に折り畳んだ前記上側部位及び前記下側部位の前記車幅方向の両側縁部を、前記車体側パネルが内側へ折り込まれるように折り返すことで、折り返した前記両側縁部が互いに対向した対向部分がパネルの厚さ方向一方側に位置し前記対向部分以外のベース部分がパネルの厚さ方向他方側に位置するように積層された、ロール折り畳み体を形成する両側縁部折返ステップと、
前記下側折畳ステップにて折り畳まれていない前記乗員側パネルの延出部位及び前記車体側パネルの延出部位の間にインフレータを挿入する挿入ステップと、
前記乗員側パネルの延出部位及び前記車体側パネルの延出部位であって前記ロール折り畳み体の下方近傍に位置する所定の折り返し点を支点として、それよりも上方に位置する前記ロール折り畳み体を折り返し、前記対向部分が前記パネルの厚さ方向他方側に位置し前記ベース部分が前記パネルの厚さ方向一方側に位置するように反転させる、ロール反転ステップと、
を有することを特徴とするニーエアバッグの折り畳み収納方法。
【請求項2】
請求項1記載のニーエアバッグの折り畳み収納方法において、
前記ロール反転ステップの後、
前記車両に設置可能であり、前記乗員に向かって開口したリテーナに対し、前記ロール反転ステップで反転した前記ロール折り畳み体を挿入することにより、前記リテーナの下壁面側から上壁面側に向かって、前記車体側パネルの延出部位、前記乗員側パネルの延出部位、前記ロール折り畳み体の前記対向部分、前記ロール折り畳み体のベース部分、の順となるように、収納する収納ステップ
を有することを特徴とするニーエアバッグの折り畳み収納方法。
【請求項3】
請求項2に記載のニーエアバッグの折り畳み収納方法において、
前記上側折畳ステップと前記両側縁部折返ステップとの間に、
前記上側折畳ステップでロール状に折り畳んだ部位に向かって、規制片を前記上側折畳ステップで折り畳んだ上側部位を覆うように折り返す、規制折り畳みステップを有する
ことを特徴とするニーエアバッグの折り畳み収納方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時に乗員の脚部を拘束するニーエアバッグの折り畳み収納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の衝突時に乗員の脚部(特に膝)が座席前方のインストルメントパネルに当たることを抑制するニーエアバッグ装置として、従来、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
ニーエアバッグ装置では、一般に、パネルを用いた袋体からなるニーエアバッグを折り畳んで小型化し、その折り畳んだ状態で、車体側に設けたリテーナへ収納する。上記従来技術では、折り畳み手法として、袋体として構成されたニーエアバッグをロール状に折り畳んだ後、その折り畳み体を車幅方向内側に向けて折り返すことで、小型化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3818209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、エアバッグ装置の動作時に、インフレータからのガスがロール折り畳み体に流入することでロール折り畳み体が延び広がりつつ、リテーナから押し出される。この結果、ロール折り畳み体が円滑にリテーナから脱出できるように、ロール折り畳み体とリテーナ壁面との間に大きめのクリアランスを設ける必要があった。この結果、リテーナが大型化し、エアバッグ装置を設置するためのスペース低減が困難であった。
【0006】
本発明の目的は、エアバッグ装置を設置するためのスペースを低減し省スペース化を図ることができるニーエアバッグの折り畳み収納方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のニーエアバッグの折り畳み収納方法は、車両への設置時に乗員側に設けられる乗員側パネルと前記設置時に前記乗員側と反対側である車体側に設けられる車体側パネルとからなる、袋体により構成され、圧力ガスが流入される上流側であり、かつ乗員の脛付近で膨張展開する下側部位と、圧力ガスが流入される下流側であり、かつ乗員の膝付近で膨張展開する上側部位と、を備え、前記圧力ガスの流入により膨張展開し乗員の膝を拘束する、ニーエアバッグの折り畳み収納方法であって、まず、前記車体側パネル下に前記乗員側パネルを上に重ねて平らに展延した状態から、前記上側部位の車幅方向の両側縁部を、前記乗員側パネルが内側へ折り込まれるように前記車幅方向の中心軸線に向かって折り返す側縁部折返ステップと、前記側縁部折返ステップで折り返された部分を含み、前記上側部位を上端側から前記乗員側パネルが内側へ折り込まれるように前記下側部位に向けてロール状に折り畳む上側折畳ステップと、前記上側部位の前記ロール状の折り畳みに引き続き前記下側部位の一部を前記乗員側パネルが内側へ折り畳まれるようにロール状に折り畳む下側折畳ステップと、次いで、前記ロール状に折り畳んだ前記上側部位及び前記下側部位の前記車幅方向の両側縁部を、前記車体側パネルが内側へ折り込まれるように折り返すことで、折り返した前記両側縁部が互いに対向した対向部分がパネルの厚さ方向一方側に位置し前記対向部分以外のベース部分がパネルの厚さ方向他方側に位置するように積層された、ロール折り畳み体を形成する両側縁部折返ステップと、前記下側折畳ステップにて折り畳まれていない前記乗員側パネルの延出部位及び前記車体側パネルの延出部位の間にインフレータを挿入する挿入ステップと、前記乗員側パネルの延出部位及び前記車体側パネルの延出部位であって前記ロール折り畳み体の下方近傍に位置する所定の折り返し点を支点として、それよりも上方に位置する前記ロール折り畳み体を折り返し、前記対向部分が前記パネルの厚さ方向他方側に位置し前記ベース部分が前記パネルの厚さ方向一方側に位置するように反転させる、ロール反転ステップと、前記車両に設置可能であり、前記乗員に向かって開口したリテーナに対し、前記ロール反転ステップで反転した前記ロール折り畳み体を挿入することにより、前記リテーナの下壁面側から上壁面側に向かって、前記車体側パネルの延出部位、前記乗員側パネルの延出部位、前記ロール折り畳み体の前記対向部分、前記ロール折り畳み体のベース部分、の順となるように、収納する収納ステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
このようなニーエアバッグの折り畳み収納方法によれば、先に膨張展開を開始する両側縁部折返ステップで折り返した部位、すなわち下側部位が、エアバッグの略全体幅に対して両側縁部を対向させた各一回折りで広く折り返されているため、迅速に車幅方向(左右方向)に展開させた後に、全体的に広幅に膨張展開させることができる。
【0009】
そして、特に、本願発明では、両側縁部折返ステップで、ロール状に折り畳んだ上側部位及び下側部位の車幅方向の両側縁部を、車体側パネルが内側へ折り込まれるようにしつつ折り返してロール折り畳み体を形成する。これにより、ロール折り畳み体では、折り返された上記両側縁部からなる対向部分がパネルの厚さ方向一方側に位置すると共に、それ以外のベース部分がパネルの厚さ方向他方側に位置するように積層される。その後、挿入ステップにおいて、折り畳まれていない乗員側パネルの延出部位及び車体側パネルの延出部位の間にインフレータが挿入される。
【0010】
その後、上記のように積層されたロール折り畳み体は、ロール反転ステップにおいて所定の折り返し点から折り返されて反転することにより、上述とは向きが逆となり、上記対向部分がパネルの厚さ方向他方側に位置すると共に、ベース部分がパネルの厚さ方向一方側に位置する。これにより、エアバッグ装置の動作時において、車体側パネルの延出部位と乗員側パネルの延出部位との間の空間にインフレータからのガスが流入してその空間が膨張しようとするとき、その空間の上部に位置するロール折り畳み体を押し上げる作用を果たす。この結果、上記のガスがロール折り畳み体の上記ベース部分や上記対向部分に行き渡るより前の、ロール折り畳み体が収縮したままの状態である間に、ロール折り畳み体を迅速にリテーナの外部へ押し出すことができる。これにより、ロール折り畳み体が延び広がりつつリテーナから押し出される場合のように、リテーナ壁面とロール折り畳み体との間に大きめのクリアランスを設ける必要がない。この結果、リテーナの小型化を図ることができるので、エアバッグ装置を設置するためのスペースを低減し省スペース化を図ることができる。
【0011】
第2発明のニーエアバッグの折り畳み収納方法は、前記ロール反転ステップの後、前記車両に設置可能であり、前記乗員に向かって開口したリテーナに対し、前記ロール反転ステップで反転した前記ロール折り畳み体を挿入することにより、前記リテーナの下壁面側から上壁面側に向かって、前記車体側パネルの延出部位、前記乗員側パネルの延出部位、前記ロール折り畳み体の前記対向部分、前記ロール折り畳み体のベース部分、の順となるように、収納する収納ステップを有する。
【0012】
第2発明のニーエアバッグの折り畳み収納方法によれば、前述のようにして反転された後のロール折り畳み体が、収納ステップにおいてリテーナ内に収納される。これにより、リテーナ内では、リテーナの下壁面側から上壁面側に向かって、車体側パネルの延出部位、乗員側パネルの延出部位、前記ロール折り畳み体の前記対向部分、前記ロール折り畳み体のベース部分、の順となるように確実に配置することができる。
【0013】
第3発明のニーエアバッグの折り畳み収納方法は、上側折畳ステップと下側折畳ステップとの間に、上側折畳ステップでロール状に折り畳んだ部位に向かって、規制片を前記上側折畳ステップで折り畳んだ上側部位を覆うように折り返す、規制折り畳みステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
第3発明のニーエアバッグの折り畳み収納方法によれば、例えば乗員が運転者である場合に、通常、車体側のキースロットに差し込まれた状態で運転者の膝上近傍に位置する車両のキー(鍵)を、上述のようにニーエアバッグが膨張展開していくときに規制片によってはねのけることができる。これにより、上記キーがニーエアバッグ全体の円滑な膨張を阻害しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ニーエアバッグ装置を設置するためのスペースを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、エアバッグを展開した状態の正面図である。
図2】本発明の一実施形態のニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、エアバッグの側縁部を折り返した状態の正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、(A)はエアバッグの上側部位を折り畳んだ(1回折り)状態の正面図、(B)は図3(A)のA−A線に沿う断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、エアバッグの上側部位を折り畳んだ(2回折り)状態の正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、(A)エアバッグの規制片を折り畳んだ状態の正面図、(B)は図5(A)のB−B線に沿う断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、(A)はエアバッグの規制片で上側部位を覆った状態の正面図、(B)は図6(A)のC−C線に沿う断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、(A)はエアバッグの下側部位を折り畳んだ状態の正面図、(B)は図7(A)のD−D線に沿う断面図である。
図8】本発明の一実施形態のニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、(A)はエアバッグの両側縁部を折り返した状態の正面図、(B)は図8(A)のE−E線に沿う断面図である。
図9】本発明の一実施形態のニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、(A)はエアバッグの収納可能状態に折り畳んだ態の背面図、(B)は図9(A)のG−G線に沿う断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、(A)はエアバッグをリテーナに装着した状態のエアバッグ装置の断面図、(B)は図10(A)のH−H線に沿う断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、(A)はエアバッグをリテーナに収納した状態のエアバッグ装置の断面図、(B)は図10(A)のI−I線に沿う断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、エアバッグをリテーナに収納した、実際の車両への実装状態を表すエアバッグ装置の断面図である。
図13】ニーエアバッグが膨張展開するときの乗員側パネルによる押し上げ挙動を表す説明図である。
図14】ニーエアバッグの動作態様を示し、エアバッグが膨張展開して乗員の膝付近を拘束している状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、エアバッグを展開した状態の正面図、図2は本発明の一実施形態のニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、エアバッグの側縁部を折り返した状態の正面図、図3は本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、図3(A)はエアバッグの上側部位を折り畳んだ(1回折り)状態の正面図、図3(B)は図3(A)のA−A線に沿う断面図、図4は本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、エアバッグの上側部位を折り畳んだ(2回折り)状態の正面図、図5は本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、図5(A)エアバッグの規制片を折り畳んだ状態の正面図、図5(B)は図5(A)のB−B線に沿う断面図、図6は本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、図6(A)はエアバッグの規制片で上側部位を覆った状態の正面図、図6(B)は図6(A)のC−C線に沿う断面図、図7は本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、図7(A)はエアバッグの下側部位を折り畳んだ状態の正面図、図7(B)は図7(A)のD−D線に沿う断面図、図8は本発明の一実施形態のニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、図8(A)はエアバッグの両側縁部を折り返した状態の正面図、図8(B)は図8(A)のE−E線に沿う断面図、図9は本発明の一実施形態のニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、図9(A)はエアバッグの収納可能状態に折り畳んだ態の背面図、図9(B)は図9(A)のG−G線に沿う断面図、図10は本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、(A)はエアバッグをリテーナに装着した状態のエアバッグ装置の断面図、(B)は図10(A)のH−H線に沿う断面図、図11は本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、(A)はエアバッグをリテーナに収納した状態のエアバッグ装置の断面図、(B)は図10(A)のI−I線に沿う断面図、図12は本発明の一実施形態に係るニーエアバッグの折り畳み収納方法を示し、エアバッグをリテーナに収納してカバーで覆った状態のエアバッグ装置の断面図、図13はニーエアバッグが膨張展開するときの乗員側パネルによる押し上げ挙動を表す説明図、図14はエアバッグが膨張展開して乗員の膝付近を拘束している状態の説明図である。
【0021】
図1において、ニーエアバッグとして適用されるエアバッグ10は、車両への設置時に乗員側(紙面に向かって手前側。後述の図14では右側)に配置される乗員側パネル10Aと、車両への設置時に上記乗員側とは反対側の車体側(紙面に向かって奥側。後述の図14では左側)に配置される車体側パネル10とからなる、袋体により構成されている。この袋体は乗員拘束部12を備えており、乗員拘束部12は、図示左右の幅が図示上下の高さ方向の中途部を最大幅とし、その中途部を挟む上下が端部側に向かって幅狭となっている。また、エアバッグ10は、その上縁部12aから突出する帯状の規制片14と、その下縁部12bが間に位置するように配置されたリテーナ取付部16と、リテーナ取付部16の一部が重合するインフレータ収納部18と、が縫製によって設けられている。
【0022】
さらに、乗員拘束部12には、圧力流体を内部に導入するための導入口12cと、エア抜き開口12dとが形成されている。なお、乗員拘束部12は、その強度の確保や膨張点開示の立体形状を規定するための処理が適宜施されている。
【0023】
次に、このように構成されたエアバッグ10の折り畳み順序を説明する。
【0024】
(側縁部折返ステップ)
先ず、折り畳み当初、前述の図1に示したように車体側パネル10Bを下に乗員側パネル10Aを上に重ねて平らに展延した状態から、図2に示すように、乗員拘束部12の両側縁部12e,12fを、乗員側パネル10Aが内側へ折り込まれるようにしつつ、互いに同じ正面側(乗員と対面する正面側)へ車幅方向の中心軸線に向かって内側に向けて折り返す(1回折り)。この際、例えば、一方の側縁部12eの折返し幅と他方の側縁部12fとの折返し幅とは、同一ではない。すなわち、エアバッグ10の車体設置位置や乗員位置(右座席・左座席等)によって乗員拘束部12の中心(中心線Q)に対してもともとの左右幅(全幅)が、対称ではない場合が多い。したがって、この側縁部折返ステップでは、中心線Qに対して折返し後の左右幅が略均等か、もともとの左右幅の相違を比率等で考慮したうえで、乗員の両膝幅を基準とした幅で折り返される。なお、場合によっては、何れか一方のみが折り返されることもある。
【0025】
(上側折畳ステップ)
次に、図3及び図4に示すように、乗員拘束部12の上縁部12aを、上端側から乗員側パネル10Aが内側へ折り込まれるようにしつつ、両側縁部12e,12fの折返し面側と同じ正面側にロール状に数回折り畳む。本実施の形態においては、二回折りとしているが、その折幅や回数は乗員拘束部12の大きさ等によって任意である。また、この折り畳みによってエアバッグ10が膨張展開したときの乗員の膝部付近に対応する(言い換えれば圧力ガスが流入される下流側である)上側部位が折り畳まれる。
【0026】
(規制折り畳みステップ)
次に、図5及び図6に示すように、規制片14を断面蛇行状に折り畳んだうえで(図5(B)参照)、上側折畳ステップで折り畳んだ上側部位を覆うように折り返す(図6(B)参照)。これにより、乗員拘束部12が膨張展開したときに、通常、車体側のキースロットに差し込まれた状態で運転者の膝上近傍に位置する車両のキー(鍵)を規制片14によってはねのけることができる。これにより、上記キーがニーエアバッグ10全体の円滑な膨張を阻害しないようにすることができる。
【0027】
(下側折畳ステップ)
この状態から、図7に示すように、上側部位のロール状の折り畳みに引き続くように、さらに乗員拘束部12を乗員側パネル10Aが内側へ折り込まれるようにしつつ折り畳む。この折り畳みによってエアバッグ10が膨張展開したときの乗員の脛部付近に対応する(言い換えれば圧力ガスが流入される上流側である)下側部位が折り畳まれる。
【0028】
(両側縁部折返ステップ)
次に、図8に示すように、このロール状に折り畳んだ規制片14を含む乗員拘束部12の両側縁部12e,12fを、今までの折り返し・折り畳み方向とは逆方向に車体側パネル10Bが内側へ折り込まれるようにしつつ折り返す。この際、両側縁部12e,12fは、その端縁が付き合わされるように、縁部折り返しステップでの両側縁部12e,12fの折り返し幅よりも広幅で一回折り返す。これにより、両側縁部12e,12fが互いに対向したロール折り畳み体120が形成される。なお、ロール折り畳み体120は、折り返した上記左右縁部12e,12fが互いに対向している対向部分120A(後述の図10図11等参照)と、それ以外のベース部分120Bとから構成されている。そして、この時点では、ベース部分120Bがパネルの厚さ方向一方側(図8(A)における紙面の手前側)に位置しており、対向部分120Aがパネルの厚さ方向他方側(図8(A)における紙面の奥側)に位置するように積層されている。
【0029】
(挿入ステップ)
そして、図9に示すように、インフレータ20をインフレータ収納部18に収納する。具体的には、上記両側縁部折返ステップで形成されたロール折り畳み体120から外部に延びた乗員側パネル10Aの延出部位(言い換えれば上記下側折り畳みステップで折りたたまれていない部位)と車体側パネル10Bの延出部位(上記同様)との間に、インフレータ20を挿入する。
【0030】
(ロール反転ステップ)
その後、図10に示すように、挿入対象であるインフレータ20を準備すると共に、上記乗員側パネル10Aの延出部位、及び、上記車体側パネルの延出部位のうち、上記ロール折り畳み体120の下方近傍に位置する所定の折り返し点TPを支点として、それよりも上方に位置するロール折り畳み体120を、図10(A)中手前側(図10(B)中左側。白抜き矢印参照)に向かって折り返す。これによって、図11に示すように、対向部分120Aが上記パネルの厚さ方向他方側(図11(A)における紙面の奥側、図11(B)中の右側)に位置し、ベース部分120Bが上記パネルの厚さ方向一方側(図11(A)における紙面の手前側、図11(B)中の左側)に位置するように反転させる。
【0031】
(収納ステップ)
その後、上記図11に示すように、上記のように反転した姿勢のロール折り畳み体を、図示上方、すなわち、乗員に向かう膨出方向に開口した上記リテーナ22に対し収納して位置決め固定する。詳細には、リテーナ22の下壁面22d側から上壁面22u側に向かって、車体側パネル10Bの延出部位、乗員側パネル10Aの延出部位、ロール折り畳み体120の対向部分120A、ロール折り畳み体120のベース部分120B、の順となるように、収納する。図12は、この収納された状態を実際の車両への実装状態に近い角度で示した断面図である。
【0032】
<本実施形態の作用効果>
以上説明したように、本実施形態のニーエアバッグの折り畳み収納方法によれば、上記両側縁部折返ステップで、ロール状に折り畳んだ乗員拘束部12の両側縁部12e,12fを、車体側パネル10Bが内側へ折り込まれるようにしつつ折り返してロール折り畳み体120を形成する。これにより、ロール折り畳み体120では、折り返された上記両側縁部からなる対向部分120Aが上記パネルの厚さ方向一方側に位置すると共に、それ以外のベース部分120Bが上記パネルの厚さ方向他方側に位置するように積層される。その後、上記のように積層されたロール折り畳み体120は、上位ロール反転ステップにおいて所定の折り返し点TPから折り返されて反転することにより、上述とは向きが逆となり、上記対向部分120Aがパネルの厚さ方向他方側に位置すると共に、ベース部分120Bがパネルの厚さ方向一方側に位置する。そして、上記のように反転後のロール折り畳み体120が、収納ステップにおいてリテーナ22内に収納される。このとき、リテーナ22内で、下壁面22d側から上壁面22u側に向かって、車体側パネル10Bの延出部位、乗員側パネル10Aの延出部位、対向部分120A、ベース部分120B、の順となるように配置される。
【0033】
これにより、車体のインストルメントパネルPの下方に収納され、図示を略する衝撃感知センサの起動によりインフレータ20が起動すると、ニーエアバッグ26は、車体側パネル10Bの延出部位と乗員側パネル10Aの延出部位との間の空間にインフレータ20からのガスが流入してその空間が膨張しようとするとき、その空間の上部に位置するロール折り畳み体120を押し上げる作用を果たす(図13中の破線矢印参照)。その後、図14(A)に示すように、例えば座席Sに着座した乗員Fの膝付近の下方側でエアバッグ10が膨張展開した後、図14(B)に示すように、乗員Fの膝付近の上方側でエアバッグ10が膨張展開する。このようにして、迅速に車幅方向(左右方向)に展開させた後に、全体的に広幅に膨張展開させることができる。
【0034】
本実施形態によれば、上記のような膨張展開挙動となる結果、上記のガスがロール折り畳み体120の上記ベース部分120Bや上記対向部分120Aに行き渡るより前の、ロール折り畳み体120が収縮したままの状態である間に、ロール折り畳み体120を迅速にリテーナ22の外部へ押し出すことができる。これにより、ロール折り畳み体が延び広がりつつリテーナから押し出される場合のように、リテーナ壁面とロール折り畳み体との間に大きめのクリアランスを設ける必要がない。この結果、リテーナの小型化を図ることができるので、エアバッグ装置を設置するためのスペースを低減し省スペース化を図ることができる。
【0035】
なお、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各種変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0036】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0037】
10 エアバッグ
10A 乗員側パネル
10B 車体側パネル
12 乗員拘束部
12a 上縁部
12b 下縁部
12c 導入口
12d エア抜き開口
12e 側縁部
12f 側縁部
14 規制片
16 リテーナ取付部
18 インフレータ収納部
20 インフレータ
22 リテーナ
24 カバー
26 ニーエアバッグ
図1
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