特許第5909134号(P5909134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909134
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】プリキュア装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 9/14 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   B05C9/14
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-78725(P2012-78725)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-208515(P2013-208515A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】春山 祐司
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−138974(JP,U)
【文献】 実開平03−101312(JP,U)
【文献】 特開2006−305409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 9/00− 9/14
F26B 1/00−25/22
B21D 39/02
B21D 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面に塗布された熱硬化性の接着剤に熱風を吹き付けて硬化させるプリキュア装置において、
導入された熱風を前記ワークに塗布された接着剤に吹き付ける熱風導入チャンバーと、
該熱風導入チャンバーから吹き付けられる熱風の少なくとも一部を上記ワークの裏面に誘導する熱風保持チャンバーとを備えたことを特徴とするプリキュア装置。
【請求項2】
前記熱風導入チャンバーは、該熱風導入チャンバーに導入された熱風を前記接着剤に向けて噴出するノズルを備えたことを特徴とする請求項1に記載のプリキュア装置。
【請求項3】
前記ノズルは、該ノズル先端が前記接着剤に対向しかつ該接着剤の延在方向に沿って延在することを特徴とする請求項2に記載のプリキュア装置。
【請求項4】
前記熱風は前記熱風導入チャンバーに接続されたダクトを介して前記熱風導入チャンバー内に導入することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリキュア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリキュア装置に関し、特にワークに塗布された熱硬化性の接着剤に熱風を吹き付けて加熱硬化させるプリキュア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の生産工程において、ドア、フード、リヤゲート等の車体部品ではアウタパネルとインナパネルとを重ね合わせ、その端縁のヘミング部に熱硬化性の接着剤を塗布し、接着剤を加熱硬化してアウタパネルとインナパネルを結合する所謂プリキュア処理が広く行われている。
【0003】
このプリキュア処理での接着剤の加熱硬化には、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等種々の方法がある。
【0004】
熱風加熱による接着剤の加熱硬化処理の一例を図7及び図8を参照して説明する。
【0005】
図7はプリキュア装置の概要を示す一部を破断した構成説明図、図8図7のB−B線断面図である。
【0006】
プリキュア装置110は、矩形断面形状で延在すると共に両端が閉鎖された中空箱状のチャンバー111及びチャンバー111の下面に沿って延在する長尺のノズル112を有し、図示しないヒータによって加熱された熱風をブロア等によってダクト113介してチャンバー111内に供給し、チャンバー111内で攪拌混合して温度の均一化が図られた熱風がノズル112から、その全長に亘って帯状乃至エアカーテン状に噴出するように構成される。
【0007】
一方、ワークとなるドア100は、予めインナパネル101とアウタパネル102との端縁がヘミング処理され、その重ね合わせ部に沿って線状に熱硬化性の接着剤103が塗布される。このドア100を、その接着剤103が塗布された端縁100aが治具114の端縁114aから突出した状態で治具114上に載置してセットする。
【0008】
そして、プリキュア装置110のノズル102をドア100に塗布された接着剤103に近接して対向し、図8に示すようにヒータによって加熱された熱風をダクト113からチャンバー111に導入し、ノズル112から接着剤103に向けて熱風を吹き付けて接着剤103を加熱硬化させる。
【0009】
また、特許文献1のシール材硬化装置は、ワークの端部に沿って塗布された接着剤に対して熱風送風機のダクトを近接し、ブロアにより送風されたエアをヒータで加熱し、ダクトを経由した熱風を接着剤に吹き付けて加熱硬化する。このとき熱風が吹き付けられて硬化する接着剤の温度を測定してヒータの温度設定を行う。
【0010】
特許文献2のプリキュアヘムシーラ装置は、ロボットアームの先端に設けたシーラガンに接着剤を加熱硬化させるための高周波加熱コイルを併設し、シーラガンによりドア等のワークに塗布する接着剤に追従して高周波加熱コイルにより接着剤を加熱硬化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−186107号公報
【特許文献2】特開2005−131483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記図7及び図8に示すプリキュア装置110によると、インナパネル101とアウタパネル102とのヘミング部に塗布された接着剤103に対し、チャンバー111で攪拌されて温度が均一化された熱風をノズル112から吹き付けることで接着剤103の硬化処理が行われる。
【0013】
しかし、ノズル112から吹き付けられる熱風によって接着剤103の表面は加熱されて硬化するものの、インナパネル101及びアウタパネル102に接する接着面側はインナパネル101及びアウタパネル102によって冷却、或いは放熱されて内部まで十分に加熱されずに未硬化状態が残存して、接着剤103の硬化にバラツキが生して接着不良を誘発することが懸念される。これは、インナパネル101及びアウタパネル102の温度が低い冬季や作業開始時に顕著である。
【0014】
一方、接着剤103の内部まで十分に加熱して硬化するには加熱時間が増大すると共に接着剤103の表面が過剰に加熱されて焦げ等の品質低下を誘発するおそれがある。また、熱風が吹き付けられるドア100の表面に対する入熱量と裏面に対する入熱量とに差が生じてドア100の熱歪みが懸念される。
【0015】
上記特許文献1によると、ワークの端部に塗布された接着剤に対して熱風送風機のダクトを近接し、ブロアにより送風されたエアをヒータで加熱し、ダクトを経由した熱風を接着剤に吹き付けて硬化処理を行う。このとき熱風が吹き付けられて硬化する接着剤の温度を測定してヒータの温度設定を行う。しかし、接着剤の表面が熱風によって加熱されるものの接着面側がワークによって冷却、即ち放熱されて接着剤の表面が硬化するものの内部まで十分に加熱されず、接着剤の硬化にバラツキが生して接着不良が懸念される。
【0016】
一方、接着剤の内部まで十分に硬化せしめるために加熱時間が増大すると接着剤の表面が過熱されて焦げ等の発生による品質低下を誘発するおそれがある。また、熱風が吹き付けられるワークの表面に対する入熱量と裏面に対する入熱量とに差が生じてワークの表面と裏面に温度差が生じ、ワークの熱歪みが懸念される。
【0017】
上記特許文献2によると、ロボットアームの先端に設けたシーラガンをワークに接近させ、シーラガンによりワークに接着剤を塗布し、接着剤の塗布に追従して高周波加熱コイルにより接着剤を加熱硬化することで接着剤の塗布と加熱硬化を同時に行うことができる。
【0018】
しかし、高周波加熱コイルはワークのシーラガン側のみに配置され、ワークのシーラガン側、即ち表面側から加熱されるのでワークの表面に対する入熱量と裏面に対する入熱量とに差が生じてワークの表面と裏面に温度差が生じ、ワークの熱歪み発生が懸念され、かつ接着剤の表面だけが硬化し、接着剤の硬化にバラツキが生じる。また、接着剤の内部まで十分に硬化させると接着剤の表面が過剰に加熱されて焦げ付きの発生等が発生することが懸念さえる。
【0019】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、均一でかつ十分な接着剤の加熱硬化が得られ、優れた接着品質が達成できるプリキュア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成する請求項1のプリキュア装置は、ワークの表面に塗布された熱硬化性の接着剤に熱風を吹き付けて硬化させるプリキュア装置において、導入された熱風を前記ワークに塗布された接着剤に吹き付ける熱風導入チャンバーと、該熱風導入チャンバーから吹き付けられる熱風の少なくも一部を上記ワークの裏面に誘導する熱風保持チャンバーとを備えたことを特徴とする。
【0021】
これによると、熱風導入チャンバーから吹き付けられる熱風によって接着剤が加熱されて接着剤の表面側から加熱硬化すると共に、熱風導入チャンバーから吹き付けられる熱風の少なくとも一部が熱風保持チャンバーによってワークの裏面に誘導されてワークの裏面が加熱されて接着剤の接着面側からも加熱硬化が促され、効率的に接着剤の内部まで均一に加熱硬化されて優れた接着品質が得られる。また、加熱時間の短縮が得られると共に、過熱による焦げ等の発生による品質低下が未然に回避できる。
【0022】
更に、ワークの表面と裏面に対する入熱量が均衡、或いは入熱量の差が極めて小さくなりワークの熱歪みの発生が回避或いは抑制できる。
【0023】
請求項2の発明は、請求項1に記載のプリキュア装置において、前記熱風導入チャンバーは、該熱風導入チャンバーに導入された熱風を前記接着剤に向けて噴出するノズルを備えたことを特徴とする。これによると、ノズルにより接着剤に向けて熱風が吹き付けられ、より効率的に接着剤の加熱硬化が得られる。
【0024】
請求項3の発明は、請求項2に記載のプリキュア装置において、前記ノズルは、該ノズル先端が前記接着剤に対向しかつ該接着剤の延在方向に沿って延在することを特徴とする。これによると、ノズル先端が接着剤の延在方向に沿って延在することで、ノズルにより延在する接着剤に沿って熱風が吹き付けられ、より効率的に接着剤の加熱硬化が得られる。
【0025】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリキュア装置において、前記熱風は前記熱風導入チャンバーに接続されたダクトを介して前記熱風導入チャンバー内に導入することを特徴とする。
【0026】
これによると、ダクトを介して熱風導入チャンバー内に導入された熱風が熱風導入チャンバー内で攪拌混合されて温度の均一化が図られ、温度が均一化された熱風を接着剤に吹き付けることができ、接着剤の加熱硬化の均一化が得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、熱風導入チャンバーから吹き付けられる熱風によって接着剤が加熱されて表面側から加熱硬化すると共に、熱風導入チャンバーから吹き付けられる熱風の少なくとも一部が熱風保持チャンバーによってワークの裏面に誘導されてワークの裏面が加熱されて接着剤の接着面側からも加熱硬化が促され、効率的に接着剤の内部まで均一に加熱硬化されて優れた接着品質が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施の形態にかかるプリキュア装置の一部を破断した構成説明図である。
図2】作動説明図である。
図3】作動を説明する図2のA−A線断面図である。
図4】第2実施の形態にかかるプリキュア装置の一部を破断した構成説明図である。
図5】作動説明図である。
図6】第3実施の形態にかかるプリキュア装置の構成説明図である。
図7】従来のプリキュア装置の一部を破断した構成説明図である。
図8】作動を説明する図7のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
(第1実施の形態)
第1実施の形態を図1乃至図3を参照して、ワークであるドアに塗布された熱硬化性の接着剤を加熱硬化する場合を例に説明する。
【0031】
図1はプリキュア装置1の一部を破断した構成説明図、図2は作動説明図、図3は作動を説明する図2のA−A線断面図である。
【0032】
図1に示すように、プリキュア装置1は、ワークとなるドア100を載置してセットする載置台となる治具2とプリキュア装置本体10により構成される。
【0033】
ドア100は、予めインナパネル101とアウタパネル102との端縁100aがヘミング処理され、その重ね合わせ部に沿って線状に熱硬化性の接着剤103が塗布された状態で、図1に示すように接着剤103及び端縁100aが治具2の端縁3から突出して治具2に載置してセットされる。なお、ドア100の接着剤103が塗布される面を表面100Aまた接着剤103が塗布されない面を裏面100Bとする。
【0034】
一方、プリキュア装置本体10は、熱風導入チャンバー12と熱風保持チャンバー22とを有すチャンバー11を有する。熱風導入チャンバー12は、上面13、下面14,前面15及び後面16を有する矩形断面形状で延在し、その両端が側面17によって閉蓋された長尺の中空箱状に形成される。後面16は熱風導入チャンバー12の下面14から更に下方に延在する矩形板状に形成される。
【0035】
熱風導入チャンバー12の下面14にその略全長に亘る長尺のノズル18が設けられる。ノズル18の先端18aは、ドア100の表面100Aに塗布された接着剤103の延在方向に沿って対向して延在すると共に接着剤103が塗布されるドア100の形状に倣った、例えば中央部が突出する緩やかに湾曲した形状に形成される。
【0036】
熱風導入チャンバー12から下方に延在する後面16の下端に熱風導入チャンバー12と対向して熱風保持チャンバー22が設けられる。熱風保持チャンバー22は、後面16の下端縁から熱風導入チャンバー12と対向して少なくとも後面16とノズル18との離間距離より大きな距離で突出する矩形の底面部23と、底面部23の先端縁から立設する矩形の前面部24を有して後面16の全長に亘って連続すると共に、両端が矩形の側面部25によって閉じられた上方が開放された箱状に形成される。
【0037】
この上方が開放された箱状に形成される熱風保持チャンバー22の上端縁と、ノズル18の先端18aと間に、接着剤103が塗布されたドア100の端縁100aが進入可能な作業空間が設定される。
【0038】
熱風導入チャンバー12の後面16に、熱風導入チャンバー12内にヒータによって加熱された熱風を熱風導入チャンバー12内に導入するダクト19が接続される。これにより、ヒータによって加熱された熱風をブロア等によってダクト19を介して熱風導入チャンバー12内に導入すると、導入された熱風が熱風導入チャンバー12内で攪拌混合されて温度の均一化が図られ、温度が均一化された熱風がノズル18から、その全長に亘って帯状乃至エアカーテン状に噴出するように構成される。
【0039】
また、後面16とノズル18との離間距離は、接着剤103からドア100の端縁100aまでの距離より大きく、図2及び図3に示すように接着剤103がノズル18と対向した状態で後面16とドア100の端縁100aとの間に熱風通路21が形成される。
【0040】
このように構成されたプリキュア装置本体10は、図示しない移動手段、例えば作業用ロボットによって図1に示す治具2から離反した待機位置と、図2に示すように熱風導入チャンバー12と熱風保持チャンバー22との間に治具2に載置されたドア100の端縁100aが進入し、かつノズル18の先端18aが接着剤103に対向する作動位置との間で移動する。
【0041】
次に、このように構成されたプリキュア装置1の作用を説明する。
【0042】
図1に示す治具2からプリキュア装置本体10が離反した待機位置において、治具2上に載置セットされたドア100のインナパネル101とアウタパネル102とのへミング処理された重ね合わせ部に接着剤103を線状に塗布、或いは接着剤103が予め塗布されたドア100を治具2上に載置してセットする。
【0043】
この接着剤103が塗布されたドア100が治具2に載置セットされた状態で、作業ロボット等の移動手段によりプリキュア装置本体10を、図2に示す熱風導入チャンバー12と熱風保持チャンバー22との間にドア100の端縁100aが位置し、かつノズル18が接着剤103と対向する作動位置に移動する。
【0044】
この作動位置において図2及び図3に示すように熱風導入チャンバー12から突出する長尺のノズル18は、その先端18aが接着剤103に沿って延在すると共に接着剤103と対向し、ドア100の端縁100aが後面16から離反して端縁100aと後面16との間に熱風通路21が形成され、更にドア100の裏面100Bが端縁100aからノズル18及び接着剤103と対応する部位を超えた広い範囲に亘ってが熱風保持チャンバー22によって覆われる。
【0045】
この作動位置において、図示しないヒータによって加熱された熱風をブロア等によってダクト19を経由して熱風導入チャンバー12内に導入する。ダクト19から熱風導入チャンバー12に導入された熱風は、熱風導入チャンバー12内で攪拌混合されて温度が均一化されて、温度が均一化された熱風が図3に示すようにノズル18から噴出流F1となって接着剤103に吹き付けられ接着剤103を加熱する。更に、ノズル18から接着剤103に吹き付けられる熱風の一部はドア100の表面100Aに沿って流れる旋回流F2となりドア100の表面100Aを加熱する。
【0046】
また、接着剤103に吹き付けられた熱風の一部はドア100の端縁100aを迂回して端縁100aと後面16との間に形成された熱風通路21から後面16に沿って流下して熱風保持チャンバー22内に流入すると共に底面部23に沿って前面部24方向に誘導され、更に前面部24に沿って上昇し、更にドア100の裏面100Bに沿って端部100a方向に流れる旋回流F3が生成されて吹き付けられる熱風によってドア100の裏面100Bを加熱する。
【0047】
これにより、ノズル18から吹き付けられる噴出流F1の熱風によって接着剤103を表面側から加熱硬化する一方、旋回流F3の熱風によりドア100の裏面100Bからの加熱に伴って接着剤103の接着面側からも加熱硬化が促され、接着剤103の内部まで十分加熱されて効率的に接着剤103の全体が均一に硬化され、優れた接着品質が得られる。また、加熱時間の短縮が得られると共に過熱による接着剤103の表面が焦げ等の品質低下が未然に回避できる。
【0048】
また、ドア100は表面100Aが噴射流F1及び旋回流F2の熱風によって加熱されると共に、裏面100Bが旋回流F3の熱風によって加熱され、ドア100の表面100Aに対する入熱量と裏面100Bに対する入熱量が均衡、或いは入熱量の差が極めて小さくなりドア100の熱歪みの発生が回避或いは抑制できる。
【0049】
なお、熱風保持チャンバー22によるドア100の加熱範囲及び加熱量は温風通路21や熱風保持チャンバー22の大きさ及び形状によって変化することから、予め実験及びシミュレーション等によって適宜設定することが好ましい。
【0050】
また、本実施の形態によると、既存のプリキュア装置、例えば図7及び8に示す従来のプリキュア装置に熱風保持チャンバー22を付加する簡単な構成で良好な接着剤103の接着品質の向上が得られる。
【0051】
(第2実施の形態)
第2実施の形態を図4及び図5を参照して説明する。本実施の形態は熱風保持チャンバー22の構成の一部を治具2に配置し、プリキュア装置本体10の構成の簡素化を図るもので、他の構成は第1実施の形態と同様であり、図4及び図5において図1乃至図3と対応する部位に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0052】
図4はプリキュア装置の一部を破断した構成説明図、図5は作動説明図である。
【0053】
プリキュア装置は、ワークとなるドア100を載置してセットする載置台となる板状の治具2とプリキュア装置本体10により構成される。
【0054】
プレキュア装置本体10のチャンバー11は、第1実施の形態と同様に、上面13、下面14、前面15及び後面16を有する矩形断面形状で両端が側面17によって閉蓋された中空箱状に形成された熱風導入チャンバー12を有し、熱風導入チャンバー12の下面14にその略全長に亘る長尺のノズル18が設けられる。また、後面16は熱風導入チャンバー12から下方に延在する矩形板状に形成される。
【0055】
一方、板状の治具2の端縁3から下方に延在すると共にプリキュア装置本体10の後面16の下部と対向する矩形板状の前面部24、前面部24の下端から後面16の下端縁方向に延在する矩形板状の底面部23、前面部24の両側縁及び底面部23の両側縁間に架設されて対向する矩形の側面部25とによって、上方及び先端が開放された箱状に形成される。
【0056】
この底面部23及び側面部25の先端は図5に示すように後面16の下縁及び側縁に当接可能であって、これら底面部23及び側面部25が後面16に当接することで上方が開放された箱状の熱風保持チャンバー22が構成される。また、治具2に載置されたドア100の端縁100aと後面16との間に熱風通路21が形成されると共に、接着剤103がノズル18と対向する。
【0057】
このように構成されたプリキュア装置本体10は、図示しない移動手段、例えば、作業用ロボットによって図4に示す治具2から離反した待機位置と、図5に示すように後面15が治具2に設けられた底面部23及び側面部25に当接して熱風保持チャンバー22を形成すると共に治具2に載置したドア100に塗布して接着剤103がノズル18と対向する作動位置との間で移動する。
【0058】
次に、このように構成されたプリキュア装置の作用を説明する。
【0059】
図4に示す治具2からプリキュア装置本体10が離反した待機位置において、治具2上に載置セットされたドア100のインナパネル101とアウタパネル102とのへミング処理された重ね合わせ部に接着剤103を塗布、或いは接着剤103が予め塗布されたドア100を治具2上に載置してセットする。
【0060】
この接着剤103が塗布されたドア100が治具2に載置セットされた状態で、移動手段によりプリキュア装置本体10を、図5に示す後面16が治具2に設けられた底面部23及び側面部25に当接して熱風保持チャンバー22を形成すると共に治具2に載置したドア100に塗布して接着剤103がノズル18と対向する作動位置に移動する。
【0061】
この作動位置において、図示しないヒータによって加熱された熱風をブロア等によってダクト19を経由して熱風導入チャンバー12内に送給する。ダクト19から送給された熱風導入チャンバー12に送給された熱風は熱風導入チャンバー12内で攪拌混合されて温度が均一化されて、ノズル18から接着剤103に吹き付けられ接着剤103を加熱する。更に接着剤103に吹き付けられる熱風の一部はドア100の表面100Aに沿って流れてドア100の表面100Aを加熱する。
【0062】
また、接着剤103に吹き付けられた熱風の一部はドア100の端縁100aを迂回して端縁100aと後面16との間に熱風通路21から後面16に沿って流下して熱風保持チャンバー22内に流入すると共に底面部23に沿って前面部24方向に誘導され、更に前面部24に沿って上昇し、更にドア100の裏面100Bに沿って端部100a方向に流れる旋回流が生成され、ドア100の裏面100Bを加熱する。
【0063】
これにより、第1実施の形態と同様にノズル18から吹き付けられる熱風によって接着剤103を表面側から加熱硬化する一方、熱風保持チャンバー22を旋回流の熱風によりドア100の裏面100Bからの加熱に伴って接着剤103の接着面側からも加熱硬化が促され、接着剤103の内部まで十分加熱されて効率的に接着剤103の全体が均一に硬化され、良好に接着されて良好な接着品質が得られる。
【0064】
従って、本実施の形態によると、第1実施の形態の作用効果に加え、熱風保持チャンバー22の一部を構成する主要部を治具2に配置することで、プリキュア装置本体10の構成の簡素化及び軽量化が得られ、プリキュア装置本体10のメンテナンス作業性の向上が得られる。また、プリキュア装置本体10を待機位置と作動位置とで移動させる作業ロボット等の移動手段の負荷が軽減できる。
【0065】
(第3実施の形態)
第3実施の形態を図6を参照して説明する。本実施の形態はチャンバー11の熱風導入チャンバー12、ノズル18及び熱風保持チャンバー22の形状をドア100に塗布される接着剤103の塗布形態に合わせて湾曲乃至折曲形成するものであって、他の構成は第1実施の形態と同様であり、図6において図1乃至図3と対応する部位に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0066】
本実施の形態におけるドア100は、図6に示すようにインナパネル101とアウタパネル102との端縁100a、100bがヘミング処理され、重ね合わせ部に端縁100a及び100bに沿って延在するL字状に接着剤103が塗布される。即ち、ドア100の端縁100aに沿って塗布される領域103A及び端縁100bに沿って塗布される領域103Bを有してL字状に延在して塗布された接着剤103及び端縁100aと100bが治具2の端縁3から突出した状態で治具2上に載置してセットする。
【0067】
一方、プリキュア装置本体10の熱風導入チャンバー12は上面13及び下面14が接着剤103の塗布形状に倣って一端が突出するL字状であって、上面13及び下面14の前縁に倣って屈曲する前面15及び平面状の後面16を有し、両端が側面17によって閉蓋された略L字状の中空箱状に形成される。
【0068】
熱風導入チャンバー12の下面にドア100にL字状に塗布された接着剤103と対向すると共に接着剤103の延在方向に沿ってL字状に連続形成されて対向する先端108aを有するノズル18が設けられる。即ち、ノズル18は、ドア100の端縁100aに沿って塗布された接着剤103の領域103Aに対して対向する領域18A及びドア100の端縁100bに沿って塗布される領域103Bに対向する領域18Bを有するL字状に形成される。
【0069】
これにより、ヒータによって加熱された熱風をブロア等によってダクト19を介して熱風導入チャンバー12内に導入すると、熱風導入チャンバー12内で攪拌混合されて温度の均一化が図られた熱風がノズル18の領域18A及び18Bから接着剤103の領域103A及び領域103Bの延在方向に沿ってL字状に噴出するように構成される。
【0070】
一方、熱風保持チャンバー22は、後面16の下端縁に沿って延在する矩形でかつ一端が突出するL字状の底面部23と、底面部23の前縁に倣って屈曲して立設する前面部24を有し、両端が矩形の側面部25によって閉じられた略L字状で上方が開放された中空箱状に形成される。
【0071】
これにより、ヒータによって加熱された熱風をブロア等によってダクト19を介して熱風導入チャンバー12内に供給すると、熱風導入チャンバー12内で攪拌混合されて温度の均一化が図られた熱風がノズル18から、その全長に亘って帯状乃至エアカーテン状に噴出するように構成される。
【0072】
また、後面16とノズル18との離間距離は、接着剤103からドア100の端縁100aまでの距離より大きく、接着剤103がノズル18と対向した状態で後面16とドア100の端縁100aとの間に熱風通路21が形成される。
【0073】
この熱風導入チャンバー12からL字状に突出したノズル18は、その領域18A及び領域18Bにおける先端18aが接着剤103の領域103A及び領域103Bに沿ってL字状に延在すると共に接着剤103と対向し、ドア100の端縁100aが後面16から離反して端縁100aと後面16との間に熱風通路21が形成された状態にドア100が治具2上にセットされる。これにより、ドア100の裏面100Bが端縁100a及び100bからノズル18及び接着剤103と対応する部位を超えた広い範囲が熱風保持チャンバー22によって覆われる。
【0074】
ここで、図示しないヒータによって加熱された熱風をブロア等によってダクト19を経由して熱風導入チャンバー12内に送給する。ダクト19から送給された熱風導入チャンバー12に送給された熱風は熱風導入チャンバー12内で攪拌混合されて温度が均一化されて、L字状に折曲形成されノズル18からL字状に塗布された接着剤103に吹き付けられ接着剤103を加熱する。更に接着剤103に吹き付けられた熱風の一部はドア100の表面100Aに沿って流れてドア100の表面100Aを加熱する。
【0075】
また、接着剤103に吹き付けられた熱風の一部はドア100の端縁100aを迂回して端縁100aと後面16との間の熱風通路21から熱風保持チャンバー22内に流入すると共に底面部23に沿って前面部24方向に誘導され、更に前面部24に沿って上昇し、更にドア100の裏面100Bに沿って端部100a方向に流れる旋回流が生成され、ドア100の裏面100Bをドア100の端縁100a及び100bに沿ったL字状に加熱する。
【0076】
これにより、ノズル18から吹き付けられる熱風によってL字状に延在する接着剤103を表面側から加熱硬化する一方、熱風保持チャンバー22を旋回流の熱風によりドア100の裏面100Bからの加熱に伴って接着剤103の接着面側からも加熱硬化が促され、接着剤103の内部まで十分加熱されて効率的に接着剤103の全体が均一に硬化され、良好に接着されて良好な接着品質が得られる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第1実施の形態及び第2実施の形態では、直線状に延在して塗布された接着剤18及び第3実施の形態ではL字状に延在して塗布された接着剤18を加熱硬化する場合を例に説明したが、ノズル形状を変更することで他の形状、例えば、コ字状乃至U字状に延在して塗布された接着剤を加熱硬化せしめることもできる。また、複数のノズルを配置することで複数に分断して塗布された接着剤を加熱硬化せしめることができる。
【0078】
また、上記実施の形態ではドア100に塗布された接着剤を加熱硬化する場合を例に説明したが、フードやリヤゲート等の種々のワークに塗布された接着剤の加熱硬化に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 プリキュア装置
2 治具
12 熱風導入チャンバー
18 ノズル
18a 先端
19 ダクト
22 熱風保持チャンバー
100 ドア(ワーク)
100A 表面
100B 裏面
101 インナパネル
102 アウタパネル
103 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8