(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1および第2のアクチュエータと、これらにより駆動される被駆動体と、各アクチュエータの駆動量の合計に相当する量だけ被駆動体が駆動されるように各アクチュエータの駆動力を被駆動体に伝える動力伝達機構と、を備える駆動装置の制御装置であって、
生成された総駆動指令値に第1のゲインG1を乗じた値を、第1の駆動指令値として出力する第1の乗算部と、
総駆動指令値に第2のゲインG2を乗じた値を、第2の駆動指令値として出力する第2の乗算部と、
第1の駆動指令値に基づいて、第1のアクチュエータを制御する第1の制御部と、
第2の駆動指令値に基づいて、第2のアクチュエータを制御する第2の制御部と、
各ゲインG1,G2を算出するゲイン算出部と、
第1のアクチュエータの駆動量を検出して、その検出値を示す値Ef1をゲイン算出部に出力する第1の駆動量検出器と、
第2のアクチュエータの駆動量を検出して、その検出値を示す値Ef2をゲイン算出部に出力する第2の駆動量検出器と、
被駆動体の駆動量を検出して、その検出値を示す値Efをゲイン算出部に出力する総駆動量検出器と、を備え、
ゲイン算出部は、Ef1とEfを変数とした第1のゲイン算出式により、第1のゲインG1を算出し、Ef2とEfを変数とした第2のゲイン算出式により、第2のゲインG2を算出し、
駆動装置の正常時においては、前記変数の値にかかわらず、第1および第2のゲインG1,G2が1/2になるように第1および第2のゲイン算出式が設定されており、
Efは、ゼロから上限値Lmaxまでの範囲内で変化し、
ゲイン算出部は、Ef1、Ef2またはEfがゼロに近づいた時には、第1のゲインG1を、(Ef1−Lmax/2)/(Ef−Lmax)に近づけ、第2のゲインG2を、(Ef2−Lmax/2)/(Ef−Lmax)に近づける、ことを特徴とする制御装置。
【背景技術】
【0002】
従来において、2つのアクチュエータで、1つの被駆動体を駆動させることにより、一方のアクチュエータが故障しても、他方のアクチュエータで被駆動体の駆動を継続させるようにすることがある。
【0003】
この場合、アクチュエータの正常時と故障時とで、アクチュエータの駆動量を変えている。両アクチュエータが正常に動作している時には、各アクチュエータは、指令値が示す総駆動量の半分の駆動量だけ被駆動体を駆動させる。これにより、指令値が示す総駆動量だけ、被駆動体を駆動する。一方のアクチュエータが故障した時には、他方のアクチュエータは、指令値が示す総駆動量だけ被駆動体を駆動させる。
【0004】
このような制御を実現するために、特許文献1では、
図1の構成により次のようにしている。
(1)第1のモータ(アクチュエータ)61の駆動量E
f1と、第2のモータ(アクチュエータ)63の駆動量E
f2とを検出し、さらに、被駆動体の駆動量の検出値から第1および第2のモータ61,63の合計駆動量E
fを検出する。
(2)第1の乗算部65aは、指令値(
図1では位置指令値)E
pに、ゲインG
1(=ΔE
f1/ΔE
f)を乗じた値E
d1を、第1の減算部67aに出力し、第2の乗算部65bは、指令値E
pに、ゲインG
2(=ΔE
f2/ΔE
f)を乗じた値E
d2を、第2の減算部67bに出力する。ここで、記号Δは、E
f、E
f1、E
f2の変化量(時間変化率)を意味する。
(3)第1の減算部67aは、E
d1とE
f1との差を第1の制御部69aに出力し、第2の減算部67bは、E
d2とE
f2との差を第2の制御部69bに出力する。
(4)第1の制御部69aは、(E
d1−E
f1)が示す量だけ第1のモータ61を駆動し、第2の制御部69bは、(E
d2−E
f2)が示す量だけ第2のモータ63を駆動する。
以降は、上記(1)〜(4)を繰り返す。
【0005】
これにより、各モータ61,63の正常時には、各モータ61,63は、同じ量だけ駆動されるので、E
f1とE
f2は等しくなる。従って、E
fは、E
f1とE
f2の合計であるので、G
1(=ΔE
f1/ΔE
f)とG
2(=ΔE
f2/ΔE
f)は、いずれも1/2になる。これにより、第1および第2のモータ61,63の両方により、被駆動体は、E
pが示す位置へ駆動される。
【0006】
一方、第1のモータ61が故障して動かなくなった時には、ΔE
fはΔE
f2と同じ値になるので、G
2(=ΔE
f2/ΔE
f)は、1になる。これにより、第2のモータ63により、被駆動体は、E
pが示す位置へ駆動される。第2のモータが故障して動かなくなった時も同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、検出値E
f、E
f1、E
f2の変化量(変化率)ΔE
f、ΔE
f1、ΔE
f2ではなく、検出値E
f、E
f1、E
f2に基づいて、指令値に対するゲインG
1、G
2を算出することが考えられる。
【0009】
しかし、この場合、検出値E
f、E
f1、E
f2の値が、ゼロに近い時には、ノイズに対する検出値E
f、E
f1、E
f2の比率が小さくなる。その結果、ゼロに近いE
f、E
f1、E
f2に基づいて得られたゲインG
1,G
2は、その誤差が大きくなる可能性がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、第1および第2のアクチュエータの駆動量の検出値と被駆動体の駆動量の検出値とに基づいて、第1のアクチュエータに関する指令値に対してゲインを求め、第2のアクチュエータに関する指令値に対してゲインを求める場合に、第1および第2のアクチュエータの駆動量と被駆動体の駆動量がゼロに近い時に、ゲインの誤差を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明によると、 第1および第2のアクチュエータと、これらにより駆動される被駆動体と、各アクチュエータの駆動量の合計に相当する量だけ被駆動体が駆動されるように各アクチュエータの駆動力を被駆動体に伝える動力伝達機構と、を備える駆動装置の制御装置であって、
生成された総駆動指令値に第1のゲインG
1を乗じた値を、第1の駆動指令値として出力する第1の乗算部と、
総駆動指令値に第2のゲインG
2を乗じた値を、第2の駆動指令値として出力する第2の乗算部と、
第1の駆動指令値に基づいて、第1のアクチュエータを制御する第1の制御部と、
第2の駆動指令値に基づいて、第2のアクチュエータを制御する第2の制御部と、
各ゲインG
1,G
2を算出するゲイン算出部と、
第1のアクチュエータの駆動量を検出して、その検出値を示す値E
f1をゲイン算出部に出力する第1の駆動量検出器と、
第2のアクチュエータの駆動量を検出して、その検出値を示す値E
f2をゲイン算出部に出力する第2の駆動量検出器と、
被駆動体の駆動量を検出して、その検出値を示す値E
fをゲイン算出部に出力する総駆動量検出器と、を備え、
ゲイン算出部は、E
f1とE
fを変数とした第1のゲイン算出式により、第1のゲインG
1を算出し、E
f2とE
fを変数とした第2のゲイン算出式により、第2のゲインG
2を算出し、
駆動装置の正常時においては、前記変数の値にかかわらず、第1および第2のゲインG
1,G
2が1/2になるように第1および第2のゲイン算出式が設定されており、
E
fは、ゼロから上限値L
maxまでの範囲内で変化し、
ゲイン算出部は、E
f1、E
f2またはE
fがゼロに近づいた時には、第1のゲインG
1を、(E
f1−L
max/2)/(E
f−L
max)に近づけ、第2のゲインG
2を、(E
f2−L
max/2)/(E
f−L
max)に近づける、ことを特徴とする制御装置が提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によると、第1および第2のゲイン算出式は、それぞれ、
G
1=G
1A+G
1B
G
2=G
2A+G
2B
であり、
この式におけるG
1AとG
1BとG
2AとG
2Bは
【数1】
により求められ、
この式において、E
f1maxは、第1および第2のアクチュエータが正常に動作している場合に、第1のアクチュエータの駆動量がとり得る最大値であり、E
f2maxは、第1および第2のアクチュエータが正常に動作している場合に、第2のアクチュエータの駆動量がとり得る最大値であり、G
1AAとG
1BBとG
2AAとG
2BBは、
【数2】
により求められ、
この式において、L
maxは、理想的には、E
f1maxとE
f2maxとの和に等しくなる。
【0013】
これにより、E
f,E
f1,E
f2の変化に応じて、第1および第2のゲインG
1,G
2の値が徐々に変化するので、第1および第2のゲインG
1,G
2が安定して算出される。
また、E
f,E
f1,E
f2の全域にわたって、ゲインの算出過程で、第1および第2のゲインG
1,G
2の分子がゼロに近くならないので、ノイズの影響を抑制して、第1および第2のゲインG
1,G
2の誤差を小さくできる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によると、第1のアクチュエータが正常に動作しているかを判断する第1の状態判断部と、
第2のアクチュエータが正常に動作しているかを判断する第2の状態判断部と、を備え、
第1および第2の状態判断部により、それぞれ、第1および第2のアクチュエータが正常に動作していと判断されている時には、第1の乗算部は、ゲイン算出部により算出された第1のゲインG
1を総駆動指令値に乗じた値を、第1の駆動指令値として出力し、第2の乗算部は、ゲイン算出部により算出された第2のゲインG
2を総駆動指令値に乗じた値を、第2の駆動指令値として出力し、
第1の状態判断部により、第1のアクチュエータが動作していないと判断された時には、第2の乗算部は、値が1である第2のゲインG
2を総駆動指令値に乗じた値を、第2の駆動指令値として出力し、
第2の状態判断部により、第2のアクチュエータが動作していないと判断された時には、第1の乗算部は、値が1である第1のゲインG
1を総駆動指令値に乗じた値を、第1の駆動指令値として出力する。
【0015】
これにより、一方のアクチュエータが動作しなくなっても、自動的に、被駆動体は、総駆動指令値に従って動作することができる。
【0016】
また、本発明の好ましい実施形態によると、第1の状態判断部は、E
f1とE
fに基づいて、第1のアクチュエータが正常に動作しているかを判断し、
第2の状態判断部は、E
f2とE
fに基づいて、第2のアクチュエータが正常に動作しているかを判断する。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によると、総駆動指令値は、ゼロから最大値までの範囲内の位置指令値E
pと、E
fとの差であり、この差が、総駆動指令値として第1および第2の乗算部へ入力され、
さらに、
総駆動量検出器の故障を検出する故障検出器と、
故障検出器が総駆動量検出器の故障を検出した場合には、総駆動指令値として第1および第2の乗算部へ入力する信号値を、E
pと2E
f1との差、または、E
pと2E
f2との差にし、かつ、第1および第2の乗算部へ入力する第1および第2のゲインG
1,G
2を1/2に固定する信号値切替部と、を備える。
【0018】
本発明の他の実施形態によると、総駆動指令値は、ゼロから最大値までの範囲内の位置指令値E
pであり、
第1の乗算部が出力した第1の駆動指令値とE
f1とが入力され、入力された両信号値の差を第1の制御部へ出力する第1の減算部と、
第2の乗算部が出力した第2の駆動指令値とE
f2とが入力され、入力された両信号値の差を第2の制御部へ出力する第2の減算部と、を備え、
第1の制御部は、第1の駆動指令値とE
f1との前記差に従って、第1のアクチュエータを制御し、第2の制御部は、第2の駆動指令値とE
f2との前記差に従って、第2のアクチュエータを制御し、
さらに、総駆動量検出器の故障を検出する故障検出器を備え、
故障検出器が総駆動量検出器の故障を検出した場合には、第1および第2の乗算部へ入力する第1および第2のゲインG
1,G
2を1/2に固定する。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明によると、第1のアクチュエータの駆動量の検出値をE
f1とし、被駆動体の駆動量の検出値をE
fとし、被駆動体の駆動量を示すE
fの上限値をL
maxとして、E
f1、E
f2またはE
fがゼロに近づいた時には、第1のゲインG
1を、(E
f1−L
max/2)/(E
f−L
max)に近づける。従って、第1のゲインG
1の分子(E
f1−L
max/2)がゼロに近づかず、かつ、第1のゲインG
1の分母(E
f−L
max)もゼロに近づかない。よって、第1のゲインG
1の算出過程で、ノイズに対する(E
f1−L
max/2)および(E
f−L
max)の比率を高く保つことができ、その結果、第1のゲインG
1の誤差を小さくすることができる。第2のゲインG
2も同様である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0022】
本発明の実施形態による制御装置10は、駆動装置3を制御するものである。駆動装置3は、第1および第2のアクチュエータ5,7と、これらにより駆動される被駆動体9と、各アクチュエータ5,7の駆動量の合計に相当する量だけ被駆動体9が駆動されるように各アクチュエータ5,7の駆動力を被駆動体9に伝える動力伝達機構11と、を備える。
【0023】
図2に基づいて、駆動装置3の一例を説明する。
各アクチュエータ5,7は、
図2の例ではモータである。第1のモータ5は、被駆動体9を回転駆動し、第2のモータ7は、ギア13を回転駆動する。
被駆動体9は、ギア15に噛み合う多数の歯を外周面に有する。ギア15は、第1のモータ5の出力軸に固定されている。また、被駆動体9の中心には、その軸方向に、ネジ軸17が貫通している貫通穴9aが形成されている。貫通穴9aの内周面には、ネジ軸17が螺合する雌ネジが切られている。すなわち、ネジ軸17と被駆動体9とは、ボールネジを構成し、被駆動体9は、ボールネジのナットに相当する。
動力伝達機構11は、ギア13、14と、ネジ軸17と、ギア15とを有する。ギア13は、ネジ軸17に同軸に固定されている。ギア14は、第2のモータ7の出力軸に固定されており、ギア13に噛み合っている。このような動力伝達機構11により、第1および第2のモータ5,7の駆動量の合計に相当する量だけ、被駆動体9が、ネジ軸17の軸方向にネジ軸17に対して移動するように各モータ5,7の駆動力を被駆動体9に伝える。なお、ネジ軸17は、図示しない部材に回転可能に支持されていてよい。
【0024】
被駆動体9(
図2の例では、被駆動体9の基準点X)は、一方の限界位置P
0から他方の限界位置P
mまでの範囲を移動可能に構成されている。
【0025】
このような駆動装置3は、例えば、航空機やロケットに設けられたノズルまたは可変翼の向きを変えるために用いられてよい。このノズルは、航空機やロケットの後方へ燃焼ガスを噴出することにより、航空機やロケットの推進力を発生させる。可変翼は、航空機やロケットに空力的に作用する気体の流れの方向を変えることにより、気体がその機体に作用する力の向きを変え、または、そのエンジンの燃焼性能を調整する。
【0026】
図3は、本発明の実施形態による、駆動装置3の制御装置10を示す。
図4は、
図3の詳細図である。
【0027】
制御装置10は、指令値生成装置19と、第1および第2の乗算部21a,21bと、第1および第2の制御部23a,23bと、第1および第2の状態判断部25a,25bと、ゲイン算出部27と、を備える。
【0028】
指令値生成装置19は、総駆動指令値E
sを生成する。
【0029】
第1の乗算部21aは、総駆動指令値E
sに第1のゲインG
1を乗じた値を、第1の駆動指令値E
1として第1の制御部23aに出力する。
第2の乗算部21bは、総駆動指令値E
sに第2のゲインG
2を乗じた値を、第2の駆動指令値E
2として第2の制御部23bに出力する。
【0030】
第1の制御部23aは、第1の駆動指令値E
1に基づいて、第1のアクチュエータ5を制御する。
図3、
図4の例では、第1の制御部23aは、第1の駆動指令値E
1が示す量だけ第1のアクチュエータ5を駆動させる。
第2の制御部23bは、第2の駆動指令値E
2に基づいて、第2のアクチュエータ7を制御する。
図3、
図4の例では、第2の制御部23bは、第2の駆動指令値E
2が示す量だけ第2のアクチュエータ7を駆動させる。
【0031】
第1の状態判断部25aは、第1のアクチュエータ5が正常に動作しているかを判断する。本実施形態では、第1の状態判断部25aは、E
f1とE
fに基づいて、当該判断を行う。例えば、第1の状態判断部25aは、E
f1/E
fが1/2より小さいしきい値以下であるときには、第1の状態判断部25aは、第1のアクチュエータ5が、動作していないと判断する。すなわち、第1の状態判断部25aは、第1のアクチュエータ5により被駆動体9が駆動されていないと判断する。この場合、E
f1/E
fは、後述する第1の演算部41から第1の状態判断部25aに入力され、第1の状態判断部25aは、入力されたE
f1/E
fと前記しきい値とを比べることにより、当該判断を行う。一方、E
f1/E
fが前記しきい値より大きい場合には、第1の状態判断部25aは、第1のアクチュエータ5が正常に動作していると判断する。なお、第1の状態判断部25aは、他の方法で、第1のアクチュエータ5が正常に動作しているかを判断してもよい。
【0032】
同様に、第2の状態判断部25bは、第2のアクチュエータ7が正常に動作しているかを判断する。本実施形態では、第2の状態判断部25bは、E
f2とE
fに基づいて、当該判断を行う。例えば、第2の状態判断部25bは、E
f2/E
fが1/2より小さいしきい値以下であるときには、第2の状態判断部25bは、第2のアクチュエータ7が、動作していないと判断する。すなわち、第2の状態判断部25bは、第2のアクチュエータ7により被駆動体9が駆動されていないと判断する。この場合、E
f2/E
fは、後述する第6の演算部46から第2の状態判断部25bに入力され、第2の状態判断部25bは、入力されたE
f2/E
fと前記しきい値とを比べることにより、当該判断を行う。一方、E
f2/E
fが前記しきい値より大きい場合には、第2の状態判断部25bは、第2のアクチュエータ7が正常に動作していると判断する。なお、第2の状態判断部25bは、他の方法で、第2のアクチュエータ7が正常に動作しているかを判断してもよい。
【0033】
ゲイン算出部27は、上述した第1および第2のゲインG
1,G
2を算出する。
【0034】
本実施形態によると、制御装置10は、さらに、第1の駆動量検出器29aと、第2の駆動量検出器29bと、総駆動量検出器31と、を備える。
第1の駆動量検出器29aは、第1のアクチュエータ5の駆動量を検出して、その検出値を示す値E
f1をゲイン算出部27に出力する。
第2の駆動量検出器29bは、第2のアクチュエータ7の駆動量を検出して、その検出値を示す値E
f2をゲイン算出部27に出力する。
総駆動量検出器31は、被駆動体9の駆動量を検出して、その検出値を示す値E
fをゲイン算出部27に出力する。
図2の例では、E
fは、限界位置P
0を示すゼロから、限界位置P
mを示す上限値L
maxまでの範囲内で変化する。すなわち、E
fがゼロの時には、被駆動体9は、限界位置P
0に位置しており、E
fが上限値L
maxである時には、被駆動体9は、限界位置P
mに位置している。
E
f1とE
f2は、それぞれ、アクチュエータ5、7が、初期位置から駆動された量(動作した量)を示し、E
fは、アクチュエータ5が初期位置から駆動された量と、アクチュエータ7が初期位置から駆動された量と和を示す。駆動装置3の正常時では、E
f1とE
f2との和は、E
fに等しい。
【0035】
ゲイン算出部27は、第1および第2の状態判断部25a,25bにより、それぞれ、第1および第2のアクチュエータ5,7が正常に動作していると判断されている時には、E
f1とE
fを変数とした第1のゲイン算出式により、第1のゲインG
1を算出し、E
f2とE
fを変数とした第2のゲイン算出式により、第2のゲインG
2を算出する。駆動装置3の正常時であって、E
f1、E
f2、E
fなどがノイズに影響されない場合に、第1および第2のゲインG
1,G
2が1/2になるように第1および第2のゲイン算出式が設定されている。これにより、総駆動指令値E
sの1/2の値が第1の制御部23aと第2の制御部23bに入力され、第1の制御部23aと第2の制御部23bは、それぞれ、総駆動指令値E
sが示す量の1/2だけ第1および第2のアクチュエータ5,7を駆動させる。その結果、総駆動指令値E
sに相当する量だけ被駆動体9が駆動される。
【0036】
第1の状態判断部25aにより、第1のアクチュエータ5が動作していないと判断されている時には、切替器39dにより、第2の乗算部21bに入力する第2のゲインG
2の値を1にする。これにより、第2の乗算部21bは、値が1である第2のゲインG
2を総駆動指令値E
sに乗じた値を、第2の駆動指令値E
2として出力する。
【0037】
同様に、第2の状態判断部25bにより、第2のアクチュエータ7が動作していないと判断されている時には、切替器39bにより、第1の乗算部21aに入力する第1のゲインG
1の値を1にする。これにより、第1の乗算部21aは、値が1である第1のゲインG
1を総駆動指令値E
sに乗じた値を、第1の駆動指令値E
1として出力する。
【0038】
本実施形態によると、次の(A)(B)を満たすように、ゲイン算出部27は、第1および第2のゲインG
1,G
2を算出する。
(A)ゲイン算出部27は、E
f1、E
f2またはE
fがゼロに近づいた時には、第1のゲインG
1を、(E
f1−L
max/2)/(E
f−L
max)に近づけ、第2のゲインG
2を、(E
f2−L
max/2)/(E
f−L
max)に近づける。E
f1がゼロに近づいた時に、第1のゲインG
1の分子(E
f1−L
max/2)がゼロに近づかず、かつ、第1のゲインG
1の分母(E
f−L
max)もゼロに近づかない。よって、ノイズに対する第1のゲインG
1の比率を高く保つことができる。第2のゲインG
2も同様である。
(B)一方、ゲイン算出部27は、総駆動指令値E
sが上限値に近づいた時には、第1のゲインG
1をE
f1/E
fに近づけ、第2のゲインG
2をE
f2/E
fに近づける。
【0039】
好ましくは、第1および第2のゲイン算出式は、前記(A)(B)を満たすように設定されている。本実施形態では、第1および第2のゲイン算出式は、それぞれ、
G
1=G
1A+G
1B
G
2=G
2A+G
2B
である。
この式におけるG
1AとG
1BとG
2AとG
2Bとを、
【数1】
により求める。
この式において、E
f1maxは、第1および第2のアクチュエータ5,7が正常に動作している場合に、第1のアクチュエータ5の駆動量がとり得る最大値であり、E
f2maxは、第1および第2のアクチュエータ5,7が正常に動作している場合に、第2のアクチュエータ7の駆動量がとり得る最大値であり、G
1AAとG
1BBとG
2AAとG
2BBとを
【数2】
により求める。
この式において、L
maxは、理想的には、E
f1maxとE
f2maxとの和に等しくなる。なお、L
maxは、被駆動体9を限界位置P
mに移動させるための後述する位置指令値E
Pにも等しい。ここで、「理想的には」とは、E
f1maxやE
f2maxに誤差が生じておらず、E
f1maxやE
f2maxがノイズの影響を受けていないことをいう。この誤差とは、駆動装置3による誤差(例えば、機械的な誤差)や、制御装置10による誤差である。
【0040】
上述したG
1A,G
1B,G
2A,G
2BによりG
1とG
2を算出する場合、第1および第2のアクチュエータ5,7が正常に動作している時には、次の(a)(b)(c)のようになる。
(a)G
1A,G
1B,G
2A,G
2Bがノイズに影響されない場合には、G
1とG
2は1/2になる。E
f=2E
f1=2E
f2と、L
max=2E
f1max=2E
f2maxとが成り立つからである。
(b)E
f1,E
f2またはE
fがゼロに近づいた時には、第1のゲインG
1は、(E
f1−L
max/2)/(E
f−L
max)に近づき、第2のゲインG
1は、(E
f2−L
max/2)/(E
f−L
max)に近づく。
(c)E
fが上限値に近づいた時には、第1のゲインG
1はE
f1/E
fに近づき、第2のゲインG
2はE
f2/E
fに近づく。
【0041】
なお、制御装置10の起動時は、第1および第2のゲインG
1,G
2は、1/2の初期値であってよい。
【0042】
本実施形態によると、指令値生成装置19は、位置指令部33と、第1の減算部35aと、第2の減算部35bとを有する。
位置指令部33は、ゼロから最大値までの範囲内の位置指令値E
Pを出力する。
図2の例では、ゼロの位置指令値E
Pが出力された場合には、制御装置10は、被駆動体9を、上述の限界位置P
0に位置させ、上限値の位置指令値E
Pが出力された場合には、制御装置10は、被駆動体9を、上述の限界位置P
mに位置させるように被駆動体9を制御する。
第1の減算部35aには、E
PとE
fが入力される。第1の減算部35aは、入力された2つの信号値(E
PとE
f)の差を、上述の総駆動指令値E
Sとして第1の乗算部21aへ出力する。
第2の減算部35bにも、E
PとE
fが入力される。第2の減算部35bは、入力された2つの信号値(E
PとE
f)の差を、上述の総駆動指令値E
Sとして第2の乗算部21bへ出力する。
【0043】
制御装置10は、さらに、故障検出器37と、信号値切替部39とを備える。
【0044】
故障検出器37は、総駆動量検出器31の故障を検出する。故障検出器37は、総駆動量検出器31の故障を検出したら、その旨の信号S
bを信号値切替部39に出力する。
信号値切替部39は、第1の切替器39aと第2の切替器39bと第3の切替器39cと第4の切替器39dを有する。
【0045】
故障検出器37が総駆動量検出器31の故障を検出しない場合には、信号値切替部39は、第1の切替器39aにより、上述のようにE
fを第1の減算部35aへ入力し、第2の切替器39bにより、上述のように第1の乗算部21aに入力するG
1をゲイン算出部27が算出した値G
1にし、第3の切替器39cにより、上述のようにE
fを第2の減算部35bへ入力し、第4の切替器39dにより、上述のように第2の乗算部21bに入力するG
2をゲイン算出部27が算出した値G
2にする。従って、第1の乗算部21aは、上述のように、ゲイン算出部27が算出したG
1を、(E
p−E
f)に乗じた値を第1の制御部23aに出力し、第2の乗算部21bは、上述のように、ゲイン算出部27が算出したG
2を、(E
p−E
f)に乗じた値を第2の制御部23bに出力する。
ただし、ゲイン算出部27からの値G
1が、1/2より小さい値である場合には、第2の切替器39bは、第1の乗算部21aに入力するG
1を1/2に固定し、ゲイン算出部27からの値G
1が、1より大きい値である場合には、第2の切替器39bは、第1の乗算部21aに入力するG
1を1に固定し、ゲイン算出部27からの値G
2が、1/2より小さい値である場合には、第4の切替器39dは、第2の乗算部21bに入力するG
2を1/2に固定し、ゲイン算出部27からの値G
2が、1より大きい値である場合には、第4の切替器39dは、第2の乗算部21bに入力するG
2を1に固定するのがよい。
【0046】
一方、故障検出器37が総駆動量検出器31の故障を検出した場合には、その旨の信号S
bが信号値切替部39に入力される。これにより、信号値切替部39は、第1の切替器39aにより、第1の減算部35aへ入力する値をE
fから2E
f1に変更し、第2の切替器39bにより、第1の乗算部21aに入力するG
1を1/2に固定し、第3の切替器39cにより、第2の減算部35bへ入力する値をE
fから2E
f2に変更し、第4の切替器39dにより、第2の乗算部21bに入力するG
2を1/2に固定する。従って、第1の乗算部21aは、(E
p−2E
f1)に1/2を乗じた値を第1の制御部23aに出力し、第2の乗算部21bは、(E
p−2E
f2)に1/2を乗じた値を第2の制御部23bに出力する。
【0047】
ゲイン算出部27は、第1〜第10の演算部41〜50を有する。
【0048】
第1の演算部41は、第1の駆動量検出器29aから入力されるE
f1と、総駆動量検出器31から入力されるE
fとに基づいて、上述のG
1AAを算出する。
第2の演算部42は、第1の駆動量検出器29aから入力されるE
f1と、総駆動量検出器31から入力されるE
fとに基づいて、上述のG
1BBを算出する。
第3の演算部43は、第1の演算部41から入力されるG
1AAと、第1の駆動量検出器29aから入力されるE
f1とに基づいて、上述のG
1Aを算出する。
第4の演算部44は、第2の演算部42から入力されるG
1BBと、第1の駆量検出器29aから入力されるE
f1と、とに基づいて、上述のG
1Bを算出する。
第5の演算部45は、第3の演算部43から入力されるG
1Aと、第4の演算部44から入力されるG
1Bとに基づいて、G
1AとG
1Bとの和であるゲインG
1を算出する。
第6の演算部46は、第2の駆動量検出器29bから入力されるE
f2と、総駆動量検出器31から入力されるE
fとに基づいて、上述のG
2AAを算出する。
第7の演算部47は、第2の駆動量検出器29bから入力されるE
f2と、総駆動量検出器31から入力されるE
fとに基づいて、上述のG
2BBを算出する。
第8の演算部48は、第6の演算部46から入力されるG
2AAと、第2の駆動量検出器29bから入力されるE
f2とに基づいて、上述のG
2Aを算出する。
第9の演算部49は、第7の演算部47から入力されるG
2BBと、第2の駆量検出器29bから入力されるE
f2とに基づいて、上述のG
2Bを算出する。
第10の演算部50は、第8の演算部48から入力されるG
2Aと、第9の演算部49から入力されるG
2Bとに基づいて、G
2AとG
2Bとの和であるゲインG
2を算出する。
【0049】
好ましくは、制御装置10は、第1〜第4のリミッタ53a,53b,53c,53dを備える。
第1のリミッタ53aは、第1の演算部41が算出したG
1AAを1/2〜1までの範囲に制限する。すなわち、第1のリミッタ53aは、第1の演算部41が算出したG
1AAが1/2より小さい値である場合には、1/2に固定されたG
1AAを第3の演算部43に入力し、第1の演算部41が算出したG
1AAが1より大きい値である場合には、1に固定されたG
1AAを第3の演算部43に入力し、第1の演算部41が算出したG
1AAが1/2以上であって1以下である場合には、このG
1AAをそのままの値で第3の演算部43に入力する。
同様に、第2、第3および第4のリミッタ53b,53c,53dは、それぞれ、第2、第6および第7の演算部42,46,47が算出した値G
1BB,G
2AA,G
2BBを1/2〜1までの値に制限する。
【0050】
このようなリミッタにより、G
1AA,G
1BB,G
2AA,G
2BBが、ノイズのために、理論的にとり得ない値になる状態を排除できる。
【0051】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1〜4のいずれかを採用し、または、変更例1〜4を任意に組み合わせて採用してもよい。この場合、以下で説明しない点は、上述と同じであってよい。
【0052】
(変更例1)
第1のゲイン算出式は、E
f1/E
fであり、第2のゲイン算出式は、E
f2/E
fであってもよい。この場合、ゲイン算出部27は、E
f1、E
f2またはE
fがゼロに近づいた時には、第1のゲイン算出式を、(E
f1−L
max/2)/(E
f−L
max)に切り替え、第2のゲイン算出式を、(E
f2−L
max/2)/(E
f−L
max)に切り替える。
【0053】
(変更例2)
図5のように、指令値生成装置19は、ゼロから最大値までの範囲内の位置指令値E
pを、総駆動指令値として出力する位置指令部33で構成されてよい。この場合、制御装置10は、以下のように構成されてよい。
【0054】
第1の乗算部21aは、総駆動指令値E
pに第1のゲインG
1を乗じた値を、第1の駆動指令値として出力する。第1の減算部35aには、第1の乗算部21aが出力した第1の駆動指令値とE
f1とが入力される。第1の減算部35aは、入力された両信号値の差を第1の制御部23aへ出力する。第1の制御部23aは、第1の駆動指令値とE
f1との差に従って、第1のアクチュエータ5を制御する。
【0055】
第2の乗算部21bは、総駆動指令値E
pに第2のゲインG
2を乗じた値を、第2の駆動指令値として出力する。第2の減算部35bには、第2の乗算部21bが出力した第2の駆動指令値とE
f2とが入力される。第2の減算部35bは、入力された両信号値の差を第2の制御部23bへ出力する。第2の制御部23bは、第2の駆動指令値とE
f2との差に従って、第2のアクチュエータ7を制御する。
【0056】
第1の状態判断部25aにより、第1のアクチュエータ5が動作していないと判断されている時には、第2の減算部35bには、第2の乗算部21bが出力した第2の駆動指令値とE
fとが入力される。第2の状態判断部25bにより、第2のアクチュエータ7が動作していないと判断されている時には、第1の減算部35aには、第1の乗算部21aが出力した第1の駆動指令値とE
fとが入力される。
【0057】
第1および第3の切替器39a,39cが省略されて、以下のように故障検出器37が機能する。
【0058】
故障検出器37が総駆動量検出器31の故障を検出しない場合には、E
f1が第1の減算部35aへ入力され、第2の切替器39bにより、上述のように第1の乗算部21aに入力するG
1をゲイン算出部27が算出した値G
1にし、E
f2が第2の減算部35bへ入力され、第4の切替器39dにより、上述のように第2の乗算部21bに入力するG
2をゲイン算出部27が算出した値G
2にする。従って、第1の乗算部21aは、上述のように、ゲイン算出部27が算出したG
1をE
pに乗じた値を第1の減算部35aに出力し、第1の減算部35aは、(G
1×E
p−E
f1)を第1の制御部23aに出力し、第2の乗算部21bは、上述のように、ゲイン算出部27が算出したG
2をE
pに乗じた値を第2の減算部35bに出力し、第2の減算部35bは、(G
2×E
p−E
f2)を第2の制御部23bに出力する。
【0059】
一方、故障検出器37が総駆動量検出器31の故障を検出した場合には、その旨の信号S
bが信号値切替部39に入力される。これにより、信号値切替部39は、第2の切替器39bにより、第1の乗算部21aに入力するG
1を1/2に固定し、第4の切替器39dにより、第2の乗算部21bに入力するG
2を1/2に固定する。この時、E
f1が第1の減算部35aへ入力され、E
f2が第2の減算部35bへ入力される。
従って、第1の乗算部21aは、E
pに1/2を乗じた値を第1の減算部35aに出力し、第1の減算部35aは、(E
p/2−E
f1)を第1の制御部23aに出力し、第2の乗算部21bは、上述のように、E
pに1/2を乗じた値を第2の減算部35bに出力し、第2の減算部35bは、(E
p/2−E
f2)を第2の制御部23bに出力する。
【0060】
(変更例3)
図2、
図3、
図4を参照して上述した構成では、位置指令部33は、制御装置10の構成要素であったが、位置指令部33は、制御装置10の構成要素ではなく、制御装置10の外部に設けられたものであってもよい。すなわち、制御装置10の指令値生成装置19は、位置指令部33を有していなくてもよい。この場合、位置指令部33は、無線また有線により、位置指令値E
pを、指令値生成装置19の第1および第2の減算部35a,35bに出力する。
【0061】
(変更例4)
図5を参照して上述した変更例2では、位置指令部33(すなわち、指令値生成装置19)は、制御装置10の構成要素であったが、位置指令部33は、制御装置10の構成要素ではなく、制御装置10の外部に設けられたものであってもよい。この場合、位置指令部33は、無線また有線により、位置指令値E
pを、第1および第2の乗算部21a,21bに出力する。