(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記第1の発光部が投射した光によって生じた反射光について、前記受光部に対する入射位置を特定することにより、検知対象までの距離あるいは距離の度合いを求める測距手段を備える人体検知センサ。
請求項1又は2において、前記第2の発光部が投射した光によって発生し、前記受光部に入射した反射光の時間的な変化を検出して動体の有無を判定する動体判定手段を備える人体検知センサ。
【背景技術】
【0002】
従来より、使用者の手かざし操作を検知して自動的に吐水する自動水栓や、近づいて来た使用者を検知して自動的に洗浄水を供給する小便器用の自動洗浄装置などが知られている。これら自動水栓や自動洗浄装置などでは、人体を検知する人体検知センサが利用されている。人体検知センサとしては、発光素子と受光素子とを備えて構成された光電センサが一般的である。
【0003】
このような人体検知センサとしては、発光素子による光の投射に応じた反射光の時間的な変化によって動きを検出して対象物を検知するセンサや、オフセット配置された受・発光素子を備え、三角測量の原理を利用した測距を実行するセンサ等がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
動きを検出する人体検知センサは、比較的広い範囲の動きの検出に適しており、検知範囲を広く設定し易いという長所がある。一方、このタイプの人体検知センサによる検知では、風に揺れるカーテンの隙間からの光や、木漏れ日など、時々刻々変化する外乱光に起因する誤検知が発生することがある。
【0005】
測距を実行する人体検知センサでは、受・発光素子のオフセット方向における反射光の入射位置を特定することで測距が行われる。対象物までの距離あるいは距離の度合いが分かれば、距離的な判断によって対象物を背景物(洗面台であれば鉢面等。)から区別でき、検知精度を高めることができる。一方、オフセット方向における入射位置を精度良く特定するためには、オフセット方向の光の拡がりが抑制されたスリット状あるいはスポット状の光を対象物に向けて投射する必要がある。このタイプの人体検知センサでは、検知精度を高めようとすると、検知範囲が狭くなってしまう傾向がある。
【0006】
検知性能はそこそこながら検知範囲が広く設定し易い前者の人体検知センサと、検知精度を確保し易いが検知範囲が狭めの後者の人体検知センサと、を組み合わせ、双方の欠点を補完し合い双方の利点を活かすことができれば、高精度かつ広範囲をカバーできる検知性能の良い人体検知センサを実現できる可能性がある。
【0007】
しかしながら、動きの検出に適した光学的な構成と測距に適した光学的な構成とを両方組み込んだ人体検知センサでは、コスト上昇と共に大型化が招来されるおそれがあり、その人体検知センサを組み込んだ製品については、コンパクト設計が難しくなったり、製品コストが上昇するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、検知性能を確保し易く、コンパクトな人体検知センサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、発光部と受光部とを備えた光電式の人体検知センサであって、
前記受光部からオフセットして配置されていると共に、そのオフセット方向において拡がりが抑制された光を投射する第1の発光部と、
この第1の発光部と前記受光部との間隙に配置されていると共に、少なくとも前記オフセット方向に拡がる光を投射する第2の発光部と、を備え、
前記受光部は、前記第1の発光部と前記第2の発光部とで共用されると共に、光の入射位置について前記オフセット方向の分解能を備えている人体検知センサにある(請求項1)。
【0011】
本発明の第2の態様は、底部に排水口を設けたシンクに吐水する水栓と、
前記第1の態様の人体検知センサと、
この人体検知センサが出力するセンサ信号に応じて、前記水栓の吐水・止水の切換、あるいは吐水量の調整を実行する給水制御手段と、を備えた自動水栓にある(請求項6)。
【0012】
本発明に係る人体検知センサの受光部は、前記オフセット方向において光の入射位置の分解能を有している。前記オフセット方向の拡がりが抑制された光を投射する前記第1の発光部と、前記オフセット方向において光の入射位置の分解能を備える前記受光部と、の組み合わせを含む光学的構成は、三角測量の原理に基づく測距に適している。
【0013】
当然ながら、前記オフセット方向の拡がりが抑制された光を利用する場合、投射方向からずれて位置する対象物の検知が不得意になる。このような周囲の対象物の検知には、前記第1の発光部と前記受光部との間隙に配置された前記第2の発光部が有効に作用する。この第2の発光部は、前記第1の発光部の投射光とは相違し、少なくとも前記オフセット方向に拡がる光を投射する。前記オフセット方向に拡がる光を投射する前記第2の発光部を含む光学的構成は、前記オフセット方向に拡がるエリア内の対象物の検知に適している。
【0014】
本発明に係る人体検知センサでは、前記第1の発光部と前記第2の発光部とで前記受光部を共用することで部品コスト等の上昇が抑制されている。さらに、三角測量の原理に基づく測距のためにオフセットして配置する必要がある前記第1の発光部と前記受光部との間隙を有効に活用し、この間隙に前記第2の発光部を配置することにより大型化を抑制している。
【0015】
以上のように、本発明に係る人体検知センサは、広い検知エリアを確保するのに適した光学的構成と測距に適した光学的構成とが、低コストかつコンパクトに組み込まれたセンサである。この人体検知センサを組み込んだ自動水栓は、コンパクトな人体検知センサの設置自由度を活かした製品設計が可能であるうえ、検知性能の高い人体検知センサにより高い動作信頼性が実現された優れた製品となり得る。
【0016】
本発明に係る人体検知センサが備える受光部としては、PSDのほか、CCDやCMOS等の撮像素子を採用可能である。
本発明に係る人体検知センサは、洗面台の自動水栓や、キッチン用の自動水栓や、自動洗浄機能付きの小用便器の自動給水装置等に適用できる。さらに、手かざし操作や人体に反応して自動点灯する照明や自動扉等、各種の自動装置に対して、本例の人体検知センサを適用することも良い。
【0017】
本発明に係る好適な一態様の人体検知センサは、前記第1の発光部が投射した光によって生じた反射光について、前記受光部に対する入射位置を特定することにより、検知対象までの距離あるいは距離の度合いを求める測距手段を備えている(請求項2)。
例えば、検知対象までの距離あるいは距離の度合いを利用して検知対象の有無を判定すれば、検知精度を確実性高く向上できる。
【0018】
本発明に係る好適な一態様の人体検知センサは、前記第2の発光部が投射した光によって発生し、前記受光部に入射した反射光の時間的な変化を検出して動体の有無を判定する動体判定手段を備えている(請求項3)。
前記オフセット方向に拡がる光を投射する前記第2の発光部によれば、動体判定可能な範囲を前記オフセット方向に広く形成できる。なお、前記第2の発光部の光につき、前記オフセット方向に直交する方向の光の拡がりを抑制することも良い。
【0019】
本発明に係る好適な一態様の人体検知センサが備える動体判定手段は、前記受光部に入射した前記反射光の入射位置の時間的な変位量に関する閾値判断により動体を判定する(請求項4)。
特に、前記測距手段を備える人体検知センサであれば、この測距手段と前記動体検知手段とで前記入射位置を求める構成を共用でき、ハードウェア的あるいはソフトウェア的な資源(リソース)を効率良く活用できるようになる。ハードウェアコストあるいはソフトウェアの開発コスト等を抑制できるようになり、消費者等にとって魅力ある製品コストを実現できる。
【0020】
本発明に係る好適な一態様の人体検知センサが備える第2の発光部は、前記第1の発光部と前記受光部との間隙において、この受光部側に近づけて配置されている(請求項5)。
測距以外の用途では、発光部と受光部の位置が一致しているのが理想的である。光の投射方向と反射方向とが一致し、遮蔽や隠蔽が起きないからである。前記第1の発光部と前記受光部との間隙において、前記第2の発光部を前記受光部側に近づけて配置すれば、上記の理想的な配置に近づけることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例)
本例は、キッチンカウンター15の水栓(自動水栓)16に人体検知センサ1を適用した例である。この内容について、
図1〜
図10を参照して説明する。
本例のキッチンカウンター15は、
図1のごとく、凹状に窪むシンク151が設けられたカウンター155と、吐水口168を有する水栓16と、を備えている。水栓16は、カウンター155の上面をなすカウンタートップ156に立設されている。シンク151は、その最深部に排水口152を備えている。
【0023】
水栓16は、カウンタートップ156に立設されると共に先端がシンク151に向かうように屈曲された吐水パイプ160と、カウンタートップ156に対する台座をなす基部161と、を有している。基部161に連なる直線的な部分が断面略円形状を呈する一方、シンク151に向かう先端面は略矩形状を呈している。吐水パイプ160の断面形状は、屈曲部分を越えてから先端に至る範囲内の滑らかな断面形状の変化により円形状から矩形状に変化している。
【0024】
吐水パイプ160の上面には、非接触式のタッチレスセンサ167のセンサ面が配設されている。このタッチレスセンサ167は、フォトトランジスターなどの受光素子と発光素子との組合せによる光電式の近接センサである。タッチレスセンサ167は、センサ面から数cm程度の検知範囲内に近接した手や指による反射光を受光素子によって受光できたとき、検知と判断する。センサ面に指や手などをかざせば、タッチレスセンサ167による検知に応じて吐水と止水とを相互に切り換えできる。
【0025】
略矩形状を呈する吐水パイプ160の先端面では、
図1のごとく、人体検知センサ1の検知面を形成するフィルタ板165が上段側に配設され、断面略矩形状の吐水口168が下段側に設けられている。赤外領域の光を選択的に透過する樹脂製のフィルタ板165の裏側に当たる内部には、人体検知センサ1を構成するセンサユニット2(
図2)が配置されている。
【0026】
本例の水栓16は、このタッチレスセンサ167に加えて、吐水パイプ160の先端に組み込まれたセンサユニット2を備えている点に特徴を有している。タッチレスセンサ167のみであると、両手で支える必要がある大きな鍋や皿を洗うとき、一旦、鍋や皿をカウンタートップ156に置いてからタッチレスセンサ167のセンサ面に手かざしする必要がある。一方、吐水パイプ160の先端にセンサユニット2が組み込まれた本例の水栓16では、両手で支えた鍋や皿等を、吐水パイプ160の先端側の吐水エリアに差し入れる動作によって吐水を開始できる。洗い終えたときには、吐水エリアから鍋や皿を引き抜くだけで、止水でき大変便利である。
【0027】
本例の人体検知センサ1は、
図1及び
図2のごとく、水栓16に組み込まれたセンサユニット2と、センサユニット2を制御する制御ユニット3と、により構成されている。キッチンカウンター15では、この人体検知センサ1と、給水配管12に設けられた吐水弁(電磁弁)であるソレノイド(給水制御手段)11と、の組合せにより自動給水装置が形成されている。
【0028】
センサユニット2は、
図1及び
図2のごとく、2基のLED素子251と、1基のラインセンサ(撮像素子)261と、が筐体21に収容されたユニットであり、制御ユニット3から電力供給を受けて動作する。センサユニット2では、後述するエリア判定手段321による測距用の第1の発光部25A、後述する動体判定手段322による動体判定用の第2の発光部25B、及び共用される撮像部(受光部)26が、水栓16のフィルタ板165に面して並列配置されている。
【0029】
赤外光を発光する発光部25A・Bは、いずれも、LED素子251と投光レンズ255とにより構成されている。撮像部26は、ラインセンサ261と集光レンズ265とにより構成されている。発光部25A・B及び撮像部26は、遮光性を備えた隔壁211を挟んで水平方向(
図2中の左右方向に当たるオフセット方向)にオフセットして配置されている。
【0030】
センサユニット2では、第1の発光部25Aが測距用の発光部であり、第2の発光部25Bが動体判定用の発光部である一方、撮像部26については、第1の発光部25Aと第2の発光部25Bとの間で共用されている。本例では、発光部25Aの光による反射光を受光するタイミングと、発光部25Bの光による反射光を受光するタイミングと、を時間的に異ならせることで、発光部25A・Bによる撮像部26の共用を可能にしている。
【0031】
ここで、測距用の発光部25Aと撮像部26とは、三角測量の原理に基づく測距のため、オフセット配置が必須となっている。動体判定用の発光部25Bは、発光部25Aと撮像部26とのオフセット方向の間隙を有効に活用し、この間隙に配置されている。このような発光部25A・B及び撮像部26の配置構造によれば、センサユニット2のコンパクト設計が可能である。なお、本例では、発光部25Aと撮像部26との間隙において、オフセット方向の中央に当たる位置よりも撮像部26側に近づけて動体判定用の発光部25Bが配置されている。
【0032】
LED素子251は、
図2のごとく、パッケージ基板のキャビティに実装されたLEDチップ250が透明樹脂254により封止された発光素子である。発光部25A・Bでは、スリット孔253を設けた遮光性の素子ケース252によってLED素子251が覆われている。測距用の発光部25Aと、動体判定用の発光部25Bとでは、スリット孔253の形成方向に相違がある。鉛直方向のスリット孔253を備える発光部25Aによれば、水平方向の拡がり角が抑制されたシャープな光を検知対象に向けて投射可能である。水平方向のスリット孔253を備える発光部25Bによれば、鉛直方向の拡がり角が抑制され、水平方向に拡がる光を検知対象に向けて投射可能である。
【0033】
ラインセンサ261は、
図1〜
図3のごとく、受光量を電気的な物理量に変換する画素260が直線的に配列された1次元の撮像センサである。ラインセンサ261は、有効画素として64個の画素260を備えている。ラインセンサ261では、これら64個の画素260により受光エリア263が形成されている。このラインセンサ261は、図示しない電子シャッターを備えており、この電子シャッターを用いて受光(露光)時間を調整可能である。ラインセンサ261は、発光部25A又は発光部25Bの発光動作に同期して受光動作を実行する毎に撮像データを出力する。本例の撮像データは、受光量に応じた256階調の画素値が各画素260の並び順に配列された1次元のデジタルデータである。なお、本例のセンサユニット2では、受光エリア263の長手方向が、発光部25A・Bと撮像部26とのオフセット方向に一致するようにラインセンサ261が組み込まれている。
【0034】
制御ユニット3は、
図1及び
図4のごとく、センサユニット2及びソレノイド11を制御するユニットであり、商用電源から電力の供給を受けて動作する。この制御ユニット3は、センサユニット2及びソレノイド11を制御する制御基板30を備えている。制御基板30には、ラインセンサ261及び2基のLED素子251を制御する撮像制御部31と、検知処理を実行する検知処理部32と、ソレノイド11を制御する給水制御部33と、が設けられている。
【0035】
撮像制御部31は、2基のLED素子251及びラインセンサ261を制御する撮像制御手段311、ラインセンサ261から撮像データを読み出す読出手段312としての機能を備えている。
撮像制御手段311は、撮像動作が行われる動作期間と非動作期間が交互に現れる間欠動作が行われるようにラインセンサ261を制御する。撮像制御手段311は、前回の動作期間が終了してから所定のインターバル時間(本例では、0.3〜0.5秒程度。)が経過するまでラインセンサ261への電源供給を停止して非動作期間を設定し、インターバル時間が経過したときに電源供給を再開して動作期間を設定する。
【0036】
撮像制御手段311は、1回の撮像動作において、LED素子251の発光(LED光)と同期したラインセンサ261の受光(露光)と、無発光下のラインセンサ261の受光(露光)と、を連続的に実行し、2度の受光時の露光の差分の受光量を画素毎に求めている。この差分の受光波形では、周囲光の影響が抑圧され、LED光に起因した反射光の成分が抽出される。
【0037】
検知処理部32は、検知処理の実行手段であるエリア判定手段(測距手段)321及び動体判定手段322、検知状態か非検知状態かを判断する検知判断手段324、検知状態下で検知信号(センサ信号)を出力する検知出力手段325としての機能を備えている。
エリア判定手段321は、発光部25Aの発光に応じた反射光の入射位置(距離指標)に基づき、三角測量の原理を利用して検知対象の有無を判定する。エリア判定手段321は、発光部25Aの発光動作を含む1回の撮像動作(適宜、測距用の撮像動作という。)に応じて取得された
図5の受光波形(各画素260の受光量が分布する撮像データ)を利用して反射光の入射位置を特定し、その入射位置が所定の検知エリア内に属しているか否かによって検知対象の有無を判定する。同図の横軸xは、画素番号(画素位置)を示し、縦軸D(x)は、画素番号xの画素260の受光量(画素値)を示している。
【0038】
本例のエリア判定手段321は、受光波形の重心位置を入射位置として取り扱う。重心位置を特定するに当たっては、まず、
図6のごとく、受光波形を構成する画素毎の受光量データD(x)を積算し、64画素の画素値の総和SDを求める。この総和SDは、
図6中の右下がりの斜線ハッチングで示す領域の面積に相当している。受光エリア263の左端の画素番号ゼロの画素260から順番に各画素260の画素値を積算した積算値がSD/2に達したときの画素番号Nの画素(黒丸で図示)の位置が、この受光波形の重心位置として計算される。ここで、積算値SD/2は、右上がりの斜線ハッチングで示す領域の面積に相当している。この領域は、前記総和SDの領域に包含されており、同図において、クロスハッチの領域として把握される。なお、
図6の画素毎の受光量の分布は、
図5の受光波形を模式的に表したものである。
【0039】
エリア判定手段321が利用する三角測量の原理は、本例のキッチンカウンター15におけるセンサユニット2、シンク151の内周面150、使用者の手の位置関係を模式的に表す
図7を用いて説明される。なお、同図では、発光部25A及び撮像部26を図示する一方、動体判定用の発光部25Bの図示を省略してある。LED光のうち検知対象である手による反射光がラインセンサ261に入射する際、検知対象までの距離Hに応じてその入射位置(距離指標)が異なってくる。距離Hが短いほど、ラインセンサ261に入射する反射光の入射位置が同図中、上側となり、距離Hが長くなるほど下側に位置することになる。このように、ラインセンサ261に対する反射光の入射位置は、検知対象までの距離に比例しており、この距離の度合いを表す距離指標となり得る。受光エリア263内に設定された検知エリア(
図6)は、検知の対象となる検知距離(
図7)に対応するエリアである。上記のように計算された重心位置を入射位置として取り扱い、その重心位置が検知エリア内であるか否かの判定は、反射光を生じた検知対象までの距離が
図7の検知距離の範囲内であるか否かの判定と実質的に同義となっている。
【0040】
前記動体判定手段322は、発光部25Bの発光に応じた反射光の時間的な変化を利用して動体の有無を判定する。動体判定手段322は、時間的に連続する2回の撮像動作(適宜、動体判定用の撮像動作という。)によって、それぞれ取得された2つの受光波形を比較し、動体の有無を判定する。
【0041】
本例の動体判定手段322は、2回の撮像動作に対応する2つの受光波形について、それぞれ、上記と同様の計算方法により重心位置を求め、受光波形の入射位置として取り扱う。そして、求められた2つの重心位置の変位量が所定の閾値を超えているときに動体が有ると判定し、この変位量が所定の閾値未満であるときに動体が無いと判定する。
【0042】
以下、
図8のフローチャートを利用して、本例の人体検知センサ1の動作を説明する。 電源投入されると、まず、前記測距用の撮像動作を含む受光波形取得ルーチンが実行され(P101)、取得された受光波形(
図5参照。)を利用して測距判定ルーチン(P102)が実行される。この測距判定ルーチンでは、受光波形の重心位置(
図6参照。)が反射光の入射位置として特定されると共に、その重心位置が所定の検知エリア(
図6)内に属しているか否かの判定が行われる。重心位置が所定の検知エリア内に属しており、検知対象までの距離が所定の検知距離の範囲内であれば(S103:YES)、検知対象が有る旨の判定に応じて検知信号の出力が開始され、吐水が開始される(S104)。
【0043】
吐水中、すなわち検知状態下では、所定のインターバル時間が経過して動作期間に移行する毎に、前記測距用の撮像動作、及び前記動体判定用の撮像動作を含む受光波形取得ルーチンが実行される(P105)。このルーチンでは、測距用の撮像動作に対応する測距用の受光波形、及び動体判定用の撮像動作に対応する動体判定用の受光波形が取得される。特に、動体判定用の受光波形としては、時間的に連続する2つの受光波形が取得される。
【0044】
まず、測距用の受光波形を利用して、そのピークの受光量が所定の閾値を超えているか否かの判断が実行される(S106)。
図9(A)のごとく、食器洗い中の皿などによる反射光がセンサユニット2に入射し、いずれかの画素260の受光量が閾値以上の場合であれば(S106:NO)、そのままその受光波形を利用し、上記P102と同じ仕様の測距判定ルーチンが実行される(P117)。重心位置(入射位置)が所定の検知エリア内に属しており、検知対象までの距離が所定の検知距離の範囲内であれば(S118:YES)、検知対象が有る旨の判定に応じて検知信号の出力が継続され、吐水が継続される(S119)。
【0045】
一方、
図9(B)のごとく食器洗い中の皿などによる反射光の方向が逸れてセンサユニット2に入射せず、受光量が閾値以上の画素260が無い場合には(S106:YES)、動体判定用の2つの受光波形を利用し、動体判定ルーチンが実行される(P107)。この動体判定ルーチンでは、
図9(C)のごとく動体判定用の時間的に連続する2つの受光波形について、それぞれ、重心位置が計算される。これら重心位値の変位が所定値以上であったとき、動体が有ると判定される(S108:NO)。
【0046】
なお、S106の画素260の受光量が閾値未満となるケースとしては、上記のほか、対象部が存在しないケースや、ガラス等の皿を投射光が透過したケースや、コップ等を洗う水に含まれる気泡等によって投射光が乱反射したケースなどが考えられる。また、上記のように反射光の方向が逸れてセンサユニット2に入射しないケースは、ステンレスの包丁や銀のプレート皿などの鏡面物によるシャープな鏡面反射光ほど、発生する可能性が高くなる。
【0047】
ステップS108において動体が有ると判定された場合には(S108:NO)、検知信号の出力が継続され、吐水が継続される(S119)。この場合には、P105の受光波形取得ルーチンに移行し、その後、検知対象が検知されなくなるまで、P105〜S119に至る一連の処理が繰り返し実行される。
【0048】
ステップS108において動体が無いと判定された場合には(S108:YES)、非検知状態と判断されて検知信号の出力が停止され、止水に切り換えられる(S109)。この場合には、P101の受光波形取得ルーチンに移行し、その後、検知対象が検知されるまで、P101〜S103に至る一連の処理が繰り返し実行される。
【0049】
ここで、ステップS117等の測距判定ルーチン、ステップS107の動体判定ルーチンによる判定の傾向について説明する。
反射光の重心位置(入射位置)を利用して検知対象の有無を判定する測距判定ルーチンによれば、検知対象の色や反射率によらず、信頼性高く検知対象を検知可能である。一方、透明なガラス食器や、泡立つ水の層に覆われた皿などの場合、LED光が透過したり乱反射して十分な反射光が得られないおそれがある。十分な反射光が得られないと、その重心位置を精度良く特定することが難しくなるため、エリア判定手段321による判定精度が損なわれる傾向にある。
【0050】
このような場合には動体判定ルーチンが有効に作用する。ガラス食器であれ、表面が水の層に覆われた皿であれ、食器洗いの最中では細かい動きが絶え間なく発生している。このような細かい動きの最中では、たとえガラス食器であっても、その姿勢等に応じてLED光を反射したり、反射する箇所が時々刻々変動し、これにより、反射光の時間的な変化が発生する。このような反射光の時間的な変化に応じて動体の有無を判定する動体判定ルーチンによれば、洗い中のガラス食器等を比較的容易に判定できる。
【0051】
このように、本例の人体検知センサ1は、測距判定ルーチンを実行するエリア判定手段321、及び動体判定ルーチンを実行する動体判定手段322の長所を上手く組み合わせ、検知性能の向上を実現したセンサである。水栓16の止水中に当たる非検知状態では、エリア判定手段321のみを利用して検知判定を実行することで誤検知が未然に抑制されている。一方、水栓16の吐水中に当たる検知状態では、エリア判定手段321による判定に、動体判定手段322による判定を組み合わせている。検知状態下で受光量が閾値を超えている場合には、エリア判定手段321による判定結果を優先し、検知状態下で受光量が閾値未満である場合には、動体判定手段322による判定結果を優先して、非検知状態への切換判断を行っている。
【0052】
この人体検知センサ1によれば、例えば、キッチン用の水栓でガラスのコップを洗っているとき、投射光(LED光)がコップを透過して十分な反射光を返さず距離的な判断が不安定になっても、動体判定により検知状態を維持できる。これにより、コップを洗っている最中にも関わらず、非検知状態に切り換わって止水されてしまうおそれを未然に回避できる。
【0053】
以上の通り、本例の人体検知センサ1は、測距判定ルーチンと動体判定ルーチンとを組み合わせることで検知性能が向上されたセンサである。この人体検知センサ1では、測距用の発光部25Aと動体判定用の発光部25Bとの間で撮像部26を共用することで部品点数が低減され、コスト上昇が抑制されている。さらに、測距のために必須となる発光部25Aと撮像部26とのオフセット方向の間隙を有効に活用し、この間隙に動体判定用の発光部25Bを配置することで、センサユニット2の大型化を抑制している。
【0054】
人体検知センサ1は、動きの検出に適した光学的構成と測距に適した光学的構成とが両方組み込まれたセンサでありながら、コスト上昇と大型化が抑制されている。また、この人体検知センサ1では、光学的構成が異なる2種類の判定方法を組み合わせることで、高い検知性能が実現されている。この人体検知センサ1を採用した水栓16は、高い動作信頼性が低コストかつコンパクトに実現された製品であり、キッチン用の自動水栓として好適である。
【0055】
本例は、ラインセンサ261の露光時間の長さを制御するために電子シャッターを採用している。電子シャッターは必須ではなく省略することもできるが、電子シャッターに代えて、ラインセンサ261への光の入射を物理的に遮断する機械式シャッターを採用しても良い。
ラインセンサ261の各画素260に感度のばらつきがある場合には、各画素260の画素値を補正してから検知処理を実行することも良い。
【0056】
本例では、反射光の入射位置として、受光波形の重心位置を利用している。重心位置に代えて、受光波形のピークの位置を入射位置として特定しても良い。さらに、本例では、簡易的な計算により重心位置を算出しているが、計算処理能力に余裕があれば数学的に厳密に重心位置を算出することも良い。
【0057】
なお、本例は、キッチンカウンター15に人体検知センサ1を適用した例であるが、洗面台の水栓であっても良い。さらに、自動洗浄機能付きの小用便器の自動給水装置のセンサとして、本例の人体検知センサ1を適用することも可能である。さらには、手かざし操作や人体に反応して自動点灯する照明や自動扉等、各種の自動装置に対して、本例の人体検知センサ1を適用することもできる。
【0058】
なお、本例では、センサユニット2と制御ユニット3とを別体で構成している。これに代えて、センサユニット2と制御ユニット3とを一体的に構成し、水栓16に収容することも良い。
また、本例の人体検知センサ1は、給水制御部33を含んでいるが、給水制御部33を別体で構成することもできる。
【0059】
本例のセンサユニット2は、発光部25Aと発光部25Bとで撮像部(受光部)26が共用されてコンパクトに構成されたユニットである。これに代えて、受光部をそれぞれ設けても良い。動体判定用の発光部25Bに対応する受光部26として、受光波形の重心位置を出力可能なPSD素子を含む受光部を採用することも良い。重心位置を計算して求める必要がなくなるので、動体判定のための計算負荷を抑制できる。
【0060】
さらに、本例のセンサユニット2では、発光部25A・B及び撮像部26が一直線上に配置されている。測距用の発光部25Aは撮像部26に対して水平方向にオフセット配置されている必要があるが、動体判定用の発光部25Bについては、撮像部26の周囲であればどのような位置であっても良い。発光部25Bについては、発光部25Aよりも撮像部26に近づけて配置されていることが良い。
【0061】
センサユニット2における発光部25A・B、及び撮像部26の配置構造の要件について、
図10を参照して説明する。なお、同図では、隔壁211の断面を省略している。
本例では、同図のごとく、測距用の発光部25Aと、動体判定用の発光部25Bと、撮像部26と、を一直線上に配置している。当然ながら、測距用の発光部25Aと撮像部26とが配置された直線上に、動体判定用の発光部25Bを配置することは必須の要件ではない。発光部25Aと撮像部26との間隙に発光部25Bを配置することの意味は、筐体21の内側であって、かつ、発光部25Aと撮像部26との間隙である同図中のドットハッチング領域の中のいずれかの場所に発光部25Bを配置することにある。
【0062】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。