特許第5909173号(P5909173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5909173ポリアミンを有効成分とする、組織の再生を促進するための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909173
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】ポリアミンを有効成分とする、組織の再生を促進するための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/132 20060101AFI20160412BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   A61K31/132
   A61P1/16
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-231125(P2012-231125)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-80408(P2014-80408A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003912
【氏名又は名称】コンビ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】坂野 綾子
(72)【発明者】
【氏名】寺谷 工
(72)【発明者】
【氏名】藤本 康弘
(72)【発明者】
【氏名】土井 淳司
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−189714(JP,A)
【文献】 特開2007−291027(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/093454(WO,A1)
【文献】 ALHONEN,L. et al,Polyamines are required for the initiation of rat liver regeneration,Biochem J,2002年,Vol.362, No.Pt 1,p.149-53
【文献】 Hepatology,1990年,Vol.12, No.3,p.542-546
【文献】 J. Cell. Physiol.,1978年,Vol.94,p.87-91
【文献】 ポリアミン,オリザ油化株式会社,2011年10月 1日
【文献】 オリザポリアミン,オリザ油化株式会社,2012年 5月12日
【文献】 ACTA ANATOMICA SINICA,2008年 2月,Vol.39, No.1,p.102-105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/ 80
A61K 36/00−36/9068
A61P 1/16
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プトレスシン、スペルミジン及びスペルミンを有効成分とする、肝臓組織の再生を促進するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミンを有効成分とする、組織の再生を促進するための組成物に関し、また大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物を有効成分とする、組織の再生を促進するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な疾病や外傷、又は加齢により、組織は損傷や変性等の異常な変化を受ける。このような異常な変化を受けた組織を速やかに再生することが可能な組成物を得ることができれば、様々な疾病や外傷の治療又は予防に、又は所謂アンチエイジングにおいて、極めて有用である。
【0003】
例えば、肝臓組織は、代謝、解毒、胆汁の合成等を担う、生命活動を行う上で必須な組織であるため、肝硬変や肝癌における組織の変性や壊死、またはこれら疾患部位の切除及び肝臓移植に伴うドナー肝の切除に対し、速やかに失われた肝臓組織を再生する必要がある。しかしながら、このような組織の再生を促進するのに十分な活性を有する組成物は未だ開発されておらず、患者自身の組織の再生力だけを頼りに、回復を持つのが現状である。
【0004】
また、組織の再生において、細胞増殖は重要な要素となるため、細胞増殖活性を有する化合物等による組織再生が試みられている。しかしながら、生体内における組織の再生は、再生の場となる足場の構築、細胞間の結合、血管や神経等の誘導といった様々な要因も必要である。そのため、細胞増殖活性のみを有する化合物では、組織再生において十分な効果を奏するに至っていないのが現状である。さらに、細胞増殖活性を有する化合物等に関しては、その活性故、摂取によって発癌等の副作用が生じることが懸念されており、組織の再生を促進するための、安全性の高い組成物の開発が強く望まれている。
【0005】
また、肝臓等の再生促進を目的として、ラエンネック(Laennec、ヒト胎盤酵素分解物の水溶性物質)及び凍結乾燥血小板等の注射剤、バリン又はグリチルレチン酸誘導体を含む輸液製剤等の使用が試みられている、しかしながら、いずれの投与形態も侵襲性のものであるため、投与対象への負担が大きいものである。そのため、前述の組織再生の効果及び安全性のみならず、経口投与等の非侵襲性投与により組織再生促進の効果が得られる組成物の開発も強く望まれている。
【0006】
ポリアミンは、原核生物から真核生物まで、生物に普遍的に存在する生理活性アミンであり、細胞内に存在する代表的なポリアミンとしては、プトレスシン(PUT)、スペルミジン(SPD)、スペルミン(SPM)の3種が挙げられる。
【0007】
細胞内のポリアミン濃度は、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)をはじめとしたポリアミン生合成酵素群による「生合成」、ポリアミン分解酵素群による「分解」、そして細胞内への取り込みおよび細胞外への排出といった「輸送」を通じて厳密に制御されている。
【0008】
また、細胞内のポリアミンが枯渇すると細胞増殖の停止が生じるため、ポリアミンは細胞増殖必須因子であると考えられている。また、ポリアミンは核酸、特にRNAとの相互作用によりタンパク質合成を促進し、細胞増殖を促進すると考えられている(非特許文献1)。
【0009】
しかしながら、前述の通り、細胞増殖活性のみを有する化合物では、組織再生において十分な効果を奏するに至っていないのが現状である。また、細胞内のポリアミン濃度は厳密に制御されているので、ポリアミンを多く摂取することにより、生体内において組織の再生が促進され得るのか、そもそも細胞の増殖は促進され得るのかについて何ら明らかにはされていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Igarashi K,Kashiwagi K、Biochem Biophys Res Commun.、2000年5月19日、271巻、3号、559〜564ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、副作用が少なく、組織再生を促進することのできる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記目的を達成すべく、ポリアミンによる組織再生の促進効果について、肝切除したラットを用いて検証した。その結果、ポリアミン含有飼料を摂取させたラットにおいては、ポリアミン非含有飼料を摂取させたラットと比較して、有意に肝再生が促進されていることが明らかになった。また、大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物を混合した飼料を摂取させたラットにおいては、当該飼料とポリアミン含有率が同じポリアミン含有飼料を摂取させたラットよりも高い肝再生の促進効果が認められた。なお、ポリアミンは、大豆に限らず、食経験豊富な様々な植物、動物に含有されているので、副作用の少ない安全な物質である。
【0013】
すなわち、ポリアミンは組織の再生を促進する活性を有していること、さらには、大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物が、ポリアミン単独よりも高い組織再生を促進する活性を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は以下を提供するものである。
<1> プトレスシン、スペルミジン及びスペルミンを有効成分とする、肝臓組織の再生を促進するための医薬組成物
【0015】
なお、後述の実施例において示す通り、ポリアミン含有飼料を摂取させたラットにおいては、ポリアミン非含有飼料を摂取させたラットと比較して、全身のATPの濃度が上昇することも明らかになった。また、大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物を混合した飼料を摂取させたラットにおいては、当該飼料とポリアミン含有率が同じポリアミン含有飼料を摂取させたラットよりも高いATP濃度の上昇が認められた。従って、ポリアミンによって組織の再生が促進される理由は必ずしも定かではないが、かかるATP濃度の上昇が、その一因と推察される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、副作用少なく、組織再生を促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ポリアミン非含有試験飼料、0.01質量%ポリアミン含有試験飼料、0.05質量%ポリアミン含有試験飼料又は大豆由来ポリアミン含有試験飼料を摂取させた、70%肝切除ラットにおける肝再生率を示すグラフである。図中「*」は、P値が<0.05であり、統計的に有意であることを示す。
図2】ポリアミン非含有試験飼料、0.01質量%ポリアミン含有試験飼料、0.1質量%ポリアミン含有試験飼料又は大豆由来ポリアミン含有試験飼料を摂取させた全身でルシフェラーゼが発現しているラットにおける、ルシフェリン投与後の発光輝度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ポリアミンを有効成分とする、組織の再生を促進するための組成物を提供するものである。
【0019】
本発明の組成物によって再生が促進される「組織」としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、肝臓組織、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織が挙げられる。また、本発明において、「組織」とは、該組織を構成する細胞や該組織により構成される臓器をも含む概念である。さらに、本発明において、「組織」は、生体内に存在する組織であってもよく、体外に存在する組織(例えば、培養組織)であってもよい。前記組織はいずれの生物由来であってもよく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、動物由来(例えば、哺乳動物由来)であることができ、特にヒト由来であることができる。
【0020】
本発明において、組織の再生とは、損傷や変性等の変化を受けた組織を、物理的及び/又は機能的に、本来の正常な状態に近付ける又は戻すことを意味する。
【0021】
本発明において、「ポリアミン」とは、第一級アミノ基を2つ以上含む脂肪族炭水化物を意味し、例えば、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ペンタアミン、ヘキサアミンが挙げられ、より具体的には、プトレスシン、カダベリン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、カルジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、スペルミン、テルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、アミノプロピルホモスペルミン、カナバルミン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、アミノプロピルカナバルミン、ビス(アミノプロピル)ホモスペルミン、ビス(アミノプロピル)ノルスペルミン、アミノブチルカナバルミン、アミノプロピルホモスペルミン、ホモペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルドヘキサミン、セルモヘキサミン、ホモセルモヘキサミンが挙げられる。本発明の組成物には、このようなポリアミンが単種又は複数種含まれていてもよい。また、これらポリアミンの中では、組織再生を促進する活性が高く、また細胞内に主に存在しているポリアミンであるため、生体内において利用され易いという観点から、本発明の組成物には、プトレスシン[NH(CHNH]、スペルミジン[NH(CHNH(CHNH]、スペルミン[NH(CHNH(CHNH(CHNH〕が含まれていることが好ましい。
【0022】
また、本発明において、「ポリアミン」は、薬理学的に許容な塩の形態であってもよい。かかる塩としては、例えば、クエン酸、酢酸、トリクロル酢酸、スルホサリチル酸等の有機酸の塩(有機酸付加塩)、硫酸、塩酸、酢酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸の塩(無機酸付加塩)が挙げられる。
【0023】
ポリアミンは、種々の植物、動物の組織、細胞内に普遍的に存在するので、これら組織等、特にサケ等魚類の白子、牛や豚等の動物の精子から、公知の手法に沿って抽出することができる。また、ポリアミンは、化学合成又は酵素や微生物を用いた生化学的合成等によっても調製することができる。さらに、和光純薬工業株式会社やSIGMA社等から、購入することによりポリアミンを得ることもできる。また、前記ポリアミンンの酸付加塩は、遊離の塩基形態のポリアミンと、適当な酸とを、常法にて接触させることにより、調製することができる。
【0024】
後述の実施例に示す通り、大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物を混合した飼料を摂取させた肝切除ラットにおいては、当該飼料とポリアミン含有率が同じポリアミン含有飼料を摂取させた肝切除ラットよりも高い肝再生の促進効果が認められた。従って、本発明は、大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物を有効成分とする、組織の再生を促進するための組成物を提供するものである。
【0025】
本発明において、「大豆胚芽」とは、大豆のやがて生長して芽及び根になる部分のこと、すなわち、大豆の胚において子葉を除いた部分(胚軸、幼芽及び幼根の部分)を意味する。
【0026】
また、後述の酸抽出の前に、表面に付着した夾雑物を除去し、ポリアミン組成物の抽出効率を上げるという観点から、大豆胚芽を水又は弱塩基性水溶液にて洗浄してもよい。かかる弱塩基性水溶液としては特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム水溶液(pH10〜14)が挙げられる。さらに、細胞壁に損傷を与え、ポリアミン組成物の抽出効率を上げるという観点から、大豆胚芽を、ミキサー、ブレンダー、ホモジナイザー、乳鉢、超音波破砕機等により破砕した上で、後述の酸抽出に供してもよい。
【0027】
本発明において、かかる大豆胚芽から、組織再生を促進するために有効なポリアミン組成物を抽出するために有効な酸性条件は、pHが5以下の条件であり、好ましくはpHが4以下である。
【0028】
酸性条件下になるように、ポリアミン組成物を抽出するための液に添加される酸としては、硫酸、塩酸、酢酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸、クエン酸、酢酸、トリクロル酢酸、スルホサリチル酸等の有機酸が挙げられる。また、これら酸の添加濃度は、用いる酸の種類によって適宜調製され得るが、通常0.001〜1Mであり、好ましくは0.05〜0.5Mである。また、ポリアミン組成物を抽出するための液としては、特に制限はなく、例えば、水、アルコール類、有機溶媒が挙げられる。
【0029】
かかる酸性条件下における、大豆胚芽から組織再生を促進するために有効な組成物を抽出するその他の条件としては、大豆胚芽と、前記酸が添加されたポリアミン組成物を抽出するための液(以下「酸性溶液」とも称する)との比率は、通常1〜1000g/Lである。また、大豆胚芽からポリアミン組成物を抽出するために、通常攪拌を行うが、かかる攪拌の時間としては、通常、0.5〜10時間であり、温度は、通常、25〜100℃である。
【0030】
このようにして、大豆胚芽に含まれていたポリアミン等を酸性溶液中(液体画分)に十分に抽出した後に、遠心分離やろ過によって残渣と分離することによって、本発明にかかる「大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物」を調製することができる。
【0031】
遠心分離の条件としては、特に制限はないが、通常、100〜10000×Gの遠心力を0.1〜60分間かけて行うことができる。ろ過の条件としても、特に制限はなく、通常、1〜5000μmの孔径のフィルターを用いて行うことができる。
【0032】
また、「大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物」(前記液体画分)は、必要に応じて、イオン交換法、ゲルろ過法、膜分画法、電気透析法、溶媒抽出法、減圧濃縮法、加熱処理法等により、濃縮してもよい。
【0033】
さらに、「大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物」は、必要に応じて、中和処理してもよい。かかる中和処理においては、中和剤として、例えば、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム等のアルカリ金属の水酸化物、弱酸塩が用いられる。
【0034】
また、安全性の観点から、「大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物」には、殺菌処理を施してもよい。かかる殺菌処理としては、加熱殺菌、加圧殺菌、放射線殺菌、フィルター除菌等が挙げられる。
【0035】
さらに、「大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物」は、必要に応じて、スプレードライやフリーズドライ等の処理を施すことにより、乾燥させ、粉末としてもよい。
【0036】
本発明にかかる「大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物」のポリアミン含有比率としては、好ましくは、0.01〜50質量%であり、より好ましくは、0.05〜5質量%である。また、「大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物」のプトレスジン、スペルミジン及びスペルミンの含有比率としては、好ましくは、各々0.0005〜2.5質量%、0.008〜40質量%及び0.0015〜7.5質量%であり、より好ましくは、0.0025〜0.25質量%、0.04〜4質量%及び0.0075〜0.75質量%である。
【0037】
また、このようにして調製される「大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物」は、例えば、そのまま、本発明の組織の再生を促進するための組成物として使用してもよいし、後述の通り、他の成分と組み合わせることにより、本発明の組織の再生を促進するための組成物として使用してもよい。
【0038】
前記ポリアミン、又は大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物は、後述の実施例に示す通り、組織再生を促進する優れた活性を有する。従って、これらを有効成分とする、本発明の組織の再生を促進するための組成物は、損傷や変性等の組織変化を伴う様々な疾病や外傷の治療又は予防(例えば、肝硬変及び肝癌等の治療又は予防、肝硬変及び肝癌等における疾患部位の切除及び肝臓移植に伴うドナー肝の切除後の肝臓組織の治療)のための医薬組成物、飲食品として用いることができる。また、培養組織の再生を促進するための試薬として用いることができる。
【0039】
本発明の組織の再生を促進するための組成物は、公知の製剤学的方法により製剤化することができる。例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、トローチ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、塗布剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、経皮吸収型製剤、ローション剤、吸引剤、エアゾール剤、注射剤、坐剤等として、経口的又は非経口的に使用することができる。しかしながら、投与対象への負担が少ないという観点から、本発明の組成物は、経口用組成物として用いることが好ましい。
【0040】
これら製剤化においては、薬理学上若しくは飲食品として許容される担体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、芳香剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、無痛化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等と適宜組み合わせることができる。
【0041】
また、本発明の組織の再生を促進するための組成物を飲食品として用いる場合、当該飲食品は、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、病者用食品、食品添加物又は動物用飼料であり得る。本発明の飲食品は、上記のような組成物として摂取することができる他、種々の飲食品として摂取することもできる。飲食品の具体例としては、食用油、ドレッシング、マヨネーズ、マーガリンなどの油分を含む製品;スープ類、乳飲料、清涼飲料水、茶飲料、アルコール飲料、ドリンク剤、ゼリー状飲料、機能性飲料等の液状食品;飯類、麺類、パン類等の炭水化物含有食品;ハム、ソーセージ等の畜産加工食品;かまぼこ、干物、塩辛等の水産加工食品;漬物等の野菜加工食品;ゼリー、ヨーグルト等の半固形状食品;みそ、発酵飲料等の発酵食品;洋菓子類、和菓子類、キャンディー類、ガム類、グミ、冷菓、氷菓等の各種菓子類;カレー、あんかけ、中華スープ等のレトルト製品;インスタントスープ,インスタントみそ汁等のインスタント食品や電子レンジ対応食品等が挙げられる。さらには、粉末、穎粒、錠剤、カプセル剤、液状、ペースト状またはゼリー状に調製された健康飲食品も挙げられる。
【0042】
本発明の組織の再生を促進するための組成物は、前述の通り、いずれの生物を対象として使用することができるが、特にヒトを含む動物に好適に用いられる。ヒト以外の動物としては特に制限はなく、種々の家畜、家禽、ペット、実験用動物等を対象とすることができる。具体的には、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、カモ、ダチョウ、アヒル、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、マウス、ラット、サルが挙げられるが、これらに制限されない。
【0043】
本発明における飲食品の製造は、当該技術分野に公知の製造技術により実施することができる。当該飲食品においては、他の機能性食品と組み合わせることによって、多機能性の飲食品としてもよい。
【0044】
本発明の組織の再生を促進するための組成物を投与または摂取する場合、その投与量または摂取量は、対象の年齢、体重、症状、健康状態、組成物の種類(医薬品、飲食品等)等に応じて、適宜選択されるが、ヒト(成人)を対象とした場合、1日に、0.2〜200mgのポリアミンを含む本発明の組織の再生を促進するための組成物を1回若しくは数回に分けて投与することが好ましく、また、1日に、プトレスシン、スペルミジン及びスペルミンを各々0.01〜10mg、0.16〜160mg及び0.03〜30mg含む本発明の組織の再生を促進するための組成物を1回若しくは数回に分けて投与することが好ましい。
【0045】
本発明の組成物の製品(医薬品、飲食品、試薬)又はその説明書は、組織の再生を促進するために用いられる旨の表示を付したものであり得る。ここで「製品又は説明書に表示を付した」とは、製品の本体、容器、包装等に表示を付したこと、あるいは製品の情報を開示する説明書、添付文書、宣伝物、その他の印刷物等に表示を付したことを意味する。
【0046】
本発明は、このように、本発明の医薬組成物を対象(例えば、肝硬変及び肝癌等の患者、肝硬変及び肝癌等において、疾患部位を切除した患者、肝臓移植に伴い、肝臓を切除したドナー)に投与させることを特徴とする、対象の組織再生の促進を伴う、疾患の治療又は予防の方法をも提供する。
【0047】
なお、本発明の組織の再生を促進するための組成物の有効成分である、ポリアミンは、大豆に限らず、食経験豊富な様々な植物、動物に含有されているので、副作用の少ない安全な物質である。従って、本発明は、組織再生を促進することのみならず、副作用の少ない組成物を提供することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、本実施例は下記組成物、飼料及び実験動物を用いて行った。
【0049】
(大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物)
大豆胚芽から酸抽出にてポリアミン組成物を調製するために、先ず、大豆(品種名;銀河、WONDER等)の胚芽を採取した。そして、得られた胚芽を水又は弱塩基性溶液(pH12〜13の水酸化ナトリウム水溶液)にて洗浄し、ポリアミンの抽出効率を上げるために、該胚芽に付着した夾雑物を除去した。
【0050】
次いで、洗浄した胚芽を、pH2.5〜3.5の酸性溶液(0.1Mのクエン酸水溶液)に加え、60℃にて攪拌しながら、1時間かけて処理した。そして、この処理物を100メッシュフィルター(孔径:150μm)に通した後、さらにろ紙(孔径:5μm)に通すことにより、試料残渣を大豆胚芽の酸抽出液から除去した。そして、回収した酸抽出液を減圧濃縮にて濃縮した。次いで、得られた濃縮物に水酸化ナトリウムを加えることにより中和処理し、スプレードライすることにより粉末化した。
【0051】
このようにして調製して得られた「大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物」におけるポリアミン含有率を表1に示す。なお、ポリアミン含有量は高速液体クロマトグラフ法により測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
(ポリアミン含有試験飼料)
ポリアミン非含有試験飼料は、標準的なげっ歯類用飼料(オリエンタルバイオ株式会社製)製造の際に、該飼料の成分である大豆油(ポリアミンを豊富に含有する原材料)の代わりに、コーン油を混合することにより、調製した。
【0054】
0.1質量%ポリアミン含有試験飼料は、合成スペルミン及びスペルミジン(和光純薬工業株式会社製)を前記ポリアミン非含有試験飼料に各々、飼料中のポリアミン含有率が0.02及び0.08質量%になるよう混合して調製した。
【0055】
0.05質量%ポリアミン含有試験飼料は、合成スペルミン及びスペルミジン(和光純薬工業株式会社製)を前記ポリアミン非含有試験飼料に各々、飼料中のポリアミン含有率が0.01及び0.04質量%になるよう混合して調製した。
【0056】
0.01質量%ポリアミン含有試験飼料は、合成スペルミン及びスペルミジン(和光純薬工業株式会社製)を前記ポリアミン非含有試験飼料に各々、飼料中のポリアミン含有率が0.002及び0.008質量%になるよう混合して調製した。
【0057】
また、前記大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物と、ポリアミン非含有試験飼料とを、質量比5対95にて混合して、大豆由来ポリアミン含有試験飼料を調製した。なお、大豆由来ポリアミン含有試験飼料中におけるポリアミン含有率は、0.009〜0.011質量%である。
【0058】
なお、これら試料はペレットにして、後述のラットに与えた。
【0059】
(実験動物)
実験には、本発明者らが以前に樹立した、ホタルルシフェラーゼ発現トランスジェニックLewisラット(Luc−Tg LEWラット、雄、体重260〜310g、10〜12週齢)を用いた。なお、このラットにおいて、ジーントラップ ROSA 26プロモーター制御下、全身においてルシフェラーゼが発現している。ルシフェラーゼはルシフェリンを酸化させることにより、光を生じさせることができるが、この発光反応においてアデノシン三リン酸(ATP)は必須であるため、生じる発光を通して、当該ラット体内のATP量を評価することができる(Hakamata Y,ら、Transplantation、2006年、81巻、1179〜1184ページ、Teratani T,ら、Islets、2011年5−6月、3巻、3号、111〜117ページ 参照)。 これらラットは、温度・湿度制御環境下、12時間毎の明/暗サイクルにて、標準的な実験室用飼料又は前記試験飼料、及び水を不断に与えて飼育した。また、本実施例における全ての動物実験は、自治医科大学動物実験指針に従って行った。
【0060】
(実施例1)
生体肝臓移植のドナーにおける、ポリアミンによる肝臓組織の再生促進効果について、モデル動物を用いて検証した。すなわち、ポリアミン非含有試験飼料、0.01質量%ポリアミン含有試験飼料、0.05質量%ポリアミン含有試験飼料又は大豆由来ポリアミン含有試験飼料を3日間、自由摂取させたLuc−Tg LEWラットに、古典的70%肝切除術を施した。そして、術後も術前と同じ飼料を各々与え、術後7日目にこれらラットを安楽死させた。次いで、肝臓を摘出し、それらの重量を測定した。得られた測定値から、肝再生率(平均値±標準偏差)を算出した。なお、肝再生率は下記式にて算出した。
肝再生率(%)=古典的70%肝切除後7日目に摘出した肝重量(g)/推定全肝重量(g)×100
また、前記「推定全肝重量(g)」は、「古典的70%肝切除時に摘出した肝重量(g)+推定残肝重量(g)」であり、「推定残肝重量」は、「(古典的70%肝切除時に摘出した肝重量(g)/0.667)×0.333」より求めた。さらに、連続的データに対してはスチューデントt検定を適用し、非連続低データに対してはマン・ホイットニー検定を適用し、統計解析を行い、P値が<0.05である場合に、統計的に有意であると判断した。得られた結果を図1及び表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
図1及び表2に示す通り、0.05質量%ポリアミン含有試験飼料又は大豆由来ポリアミン含有試験飼料(ポリアミン含有率が0.01質量%である試料)を摂取させたラットにおいては、統計的に有意に肝再生が促進されていることが明らかになった。また、0.01質量%ポリアミン含有試験飼料を摂取させたラットにおいては、統計的な有意差は無いものの、肝再生が促進されていることが明らかになった。
【0063】
従って、ポリアミンは組織の再生を促進する活性を有していることが明らかになった。また、大豆由来ポリアミン含有試験飼料と0.01質量%ポリアミン含有試験飼料とは、ポリアミン含有率が同じ0.01質量%であるのにも関わらず、0.01質量%ポリアミン含有試験飼料の摂取例と比較し、大豆由来ポリアミン含有試験飼料の摂取例において、顕著な組織再生の促進効果が認められたため、大豆胚芽を酸抽出して得られるポリアミン組成物は、ポリアミン単独よりも高い、組織再生を促進する活性を有していることも明らかになった。
【0064】
(実施例2)
Luc−Tg LEWラットに、ポリアミン非含有試験飼料、0.01質量%ポリアミン含有試験飼料、0.1質量%ポリアミン含有試験飼料、大豆由来ポリアミン含有試験飼料を自由摂取の条件化で4週間与え、当該ラットの全身のATP代謝を1週間おきに観察した。
【0065】
すなわち、各試験飼料摂取開始時、1週間摂取後、2週間摂取後、3週間摂取後又は4週間摂取後のLuc−Tg LEWラットをイソフルラン吸引により麻酔した後に、D−ルシフェリン 30mg/kg体重の条件下にて腹腔投与し、発光輝度がピークに達する投与10分後にインビボ発光イメージングシステム(IVIS(登録商標)、Xenogen社製)を用い撮影を行なった。そして、撮影したデータより発光輝度を数値化した。さらに、解析ソフトウェア(Living Image ver.2.12a、Xenogen社製)を用い、各群の試験飼料摂取開始時の発光輝度を100%とし、相対的な変化を求めた。得られた結果を図2に示す。
【0066】
図2に示した結果から明らかなように、ポリアミン非含有試験飼料の摂取例と比べて、0.01質量%ポリアミン含有試験飼料の摂取例では約1.2倍、0.1質量%ポリアミン含有試験飼料の摂取例では約1.6倍、大豆由来ポリアミン含有試験飼料の摂取例では約1.3倍、全身における発光輝度、すなわち全身のATP濃度が上昇した。また、前記実施例1にて評価した組織再生の促進同様に、ポリアミン含有率が同じ0.01質量%であるのにも関わらず、0.01質量%ポリアミン含有試験飼料の摂取例よりも、大豆由来ポリアミン含有試験飼料の摂取例の方が、高いATP濃度の上昇率を示した。
【0067】
よって、ポリアミンには全身の細胞内(組織内)のATP濃度を上昇させる活性を有していることも明らかになった。また、この組織内におけるATP濃度の上昇が、ポリアミンによる組織再生の促進の一因として考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明によれば、組織再生を促進することが可能となる。従って、本発明の組成物は、副作用が少なく、組織再生を促進することができるため、損傷や変性等の組織変化を伴う様々な疾病や外傷の治療又は予防(例えば、肝硬変及び肝癌等の治療又は予防、肝硬変及び肝癌等における疾患部位の切除及び肝臓移植に伴うドナー肝の切除後の肝臓組織の治療)のための医薬組成物、飲食品、又は培養組織の再生を促進するための試薬等として有用である。
図1
図2