(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
5−エチル−2−{4−[4−(4−テトラゾール−1−イル−フェノキシメチル)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−1−イル}−ピリミジンの塩の結晶であって、ここで、該塩が、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、カンファースルホン酸塩(カンシル酸塩)、エタンスルホン酸塩(エシル酸塩)、HBr塩、HCl塩、メシル酸塩、硫酸塩およびトシル酸塩からなる群から選択される、結晶。
約8.8、10.8、16.1、17.4、20.4、20.9、21.5、21.7、26.6および28.1度の2シータ回折角にピークを含むXRPDパターンを有する前記HCl塩の多形(形態I)であり、ここで、約はプラスまたはマイナス0.5度の2シータの変動を指す、請求項1に記載の結晶。
約7.8、10.1、12.5、18.4、19.0、20.8、23.0および23.5度の2シータ回折角にピークを含むXRPDパターンを有する前記HCl塩の多形(形態II)であり、ここで、約はプラスまたはマイナス0.5度の2シータの変動を指す、請求項4に記載の結晶。
アセトン溶液からの5−エチル−2−{4−[4−(4−テトラゾール−1−イル−フェノキシメチル)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−1−イル}−ピリミジン塩酸塩の結晶化を含む、請求項5に記載の結晶を調製する方法。
酢酸エチルまたはアセトンを場合によって含有するメタノール溶液からの5−エチル−2−{4−[4−(4−テトラゾール−1−イル−フェノキシメチル)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−1−イル}−ピリミジン塩酸塩の結晶化を含む、請求項9に記載の結晶を調製する方法。
インスリン産生の刺激、グルコース依存性インスリン分泌の刺激、血中グルコースの低減、または血中トリグリセリドレベルの低減の1つ以上のための組成物であって、請求項1〜11のいずれか一項に記載の有効量の結晶を含む組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書および続く請求項において、いくつかの用語を参照するが、他に指定しない限り、以下の意味を有すると定義するものとする。
略語
【0014】
XRPD(X線粉末回折);DSC(示差走査熱量測定法);TGA(熱重量分析);ベシル酸塩(ベンゼン(bezene)スルホン酸塩);カンシル酸塩(カンファースルホン酸塩);エシル酸塩(エタンスルホン酸塩);メシル酸塩(メタンスルホン酸塩);トシル酸塩(p−トルエンスルホン酸塩);アセトン(CH
3)
2(CO);RH(相対湿度)。
【0015】
本明細書および請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈に明示されない限り、複数形の照応を含む。
【0016】
本明細書において使用される場合、「を含む」という用語は、組成物および方法が記述された要素を含むが他のものを除外しないことを意味するよう意図されている。
【0017】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、測定において用いられる場合、または値、単位、定数、または値の範囲を修飾するために用いられる場合、+/−3%の変動を指す。
【0018】
本明細書において使用される場合、「結晶塩」という用語は、無水物で溶媒和されていない結晶に加えて、程度の異なる水和物または溶媒和物と関係し得る結晶を包含する。
【0019】
本明細書において使用される場合、「実質的に」という用語は、+/−約1%、約5%、約10%、約15%、または約20%の程度の変動を指す。
【0020】
本明細書において使用される場合、「実質的に純粋な」という用語は、化合物の特定の多形相に関して、その多形相(polymorph form)が約30重量%未満、または約20重量%未満、または約15重量%未満、または約10重量%未満、または約5重量%未満、または約1重量%未満の不純物を含むことを意味する。このような不純物は、同じ化合物の他の多形相または微量の溶媒を包含し得る。
【0021】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、当業界で通常知られているように、あらゆる溶媒および分散媒、被覆物、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗カビ剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬剤、薬剤安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、芳香剤、染料、同様の材料、およびこれらの組合せを含む。(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版 Mack Printing Company, 1990年,1289〜1329頁を参照のこと、また、これは参照により本明細書に組み込まれる。)有効成分と両立困難な場合を除き、任意の従来の担体は、治療組成物または医薬組成物へのその使用が企図される。
【0022】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物を指し、ヒト、家庭動物(例えば、イヌまたはネコ)、家畜(ウシ、ウマまたはブタ)、および実験動物(マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ブタ、ラビット、イヌ、またはサル)を含み、これらに限定されない。
【0023】
「治療有効量」という用語は、下に定義されるように、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与された場合、治療を達成するのに十分な有効成分の量を指す。治療有効量は治療される対象および疾患症状、対象の体重および年齢、疾患症状の重篤度、投与方式などに依存して変化し、主治医はこれを容易に決定することができる。
【0024】
「治療」または「治療すること」という用語は、(i)疾患の予防、すなわち、疾患の臨床症候を発症させないこと;(ii)疾患の阻止、すなわち、臨床症候の発症を妨げること;および/または(iii)疾患の軽減、すなわち、臨床症候の退行を引き起こすことを含む、哺乳動物における疾患の任意の治療を意味する。
【0025】
「真性糖尿病」または「糖尿病」という用語は、体内の適切な血糖レベルの維持の不全を生じる、グルコースの産生および利用における代謝障害を一般的特徴とする疾患または症状を意味する。この欠陥の結果が血中グルコースの上昇であり、これを「高血糖」と呼ぶ。糖尿病の2つの主な形態は、I型糖尿病およびII型糖尿病である。上記のように、I型糖尿病は一般的に、グルコース利用を調節するホルモンであるインスリンの絶対的欠乏の結果である。II型糖尿病は、インスリンのレベルが正常であるか高いにもかかわらず起こることが多く、細胞組織がインスリンに適切に反応できないことから生じる可能性がある。II型糖尿病対象の大部分は、インスリン抵抗性であり、インスリン分泌が末梢組織のインスリン反応抵抗性を補うことができないという点で、インスリンの相対的な欠乏を有する。さらに、多くのII型糖尿病患者が肥満である。他のタイプのグルコース恒常性障害には、正常なグルコース恒常性と糖尿病との間の代謝中間段階である耐糖能異常、およびI型またはII型糖尿病の病歴がない女性における妊娠中の耐糖能障害である妊娠糖尿病が含まれる。
【0026】
「メタボリック症候群」という用語は、腹部脂胖症、インスリン抵抗性、耐糖能異常、糖尿病、高血圧および脂質異常症を含む一群の代謝異常を指す。これらの異常は、血管事象の高いリスクを伴うことが知られている。
【0027】
「腹部脂胖症」という用語は、成人の高血中コレステロール値の検出、評価および治療に関する米国コレステロール教育プログラム専門家パネルの第3報告書(NCEP/ATP Panel III)によって推奨される、ウエスト周囲のカットオフポイントが、男性で≧102cmおよび女性で≧80cmであることによって定義される。
【0028】
「インスリン抵抗性」という用語は、一般に、グルコース代謝の障害として定義することができる。より具体的には、インスリン抵抗性は、インスリンが広範囲の濃度にわたってその生物学的作用を及ぼす能力が低下し、予想されるよりも低い生物学的効果しかもたらさないこととして定義することができる(例えば、Reaven GM,J.Basic & Clin. Phys. & Pharm(1998年) 9巻:387〜406頁およびFlie J, Ann Rev. Med(1983年)34巻:145〜60頁を参照)。インスリン抵抗性の者は、グルコースを適切に代謝する能力が低下しており、インスリン療法に対し、ほとんど全く反応しない。
【0029】
インスリン抵抗性の症状発現としては、筋肉におけるグルコースの取込み、酸化および貯蔵に関する不十分なインスリン活性化、ならびに、脂肪組織における脂肪分解、および肝臓におけるグルコース産生および分泌の不適切なインスリン抑制が挙げられる。インスリン抵抗性は、多嚢胞性卵巣症候群、耐糖能異常、妊娠性糖尿病、メタボリック症候群、高血圧、肥満、アテローム性動脈硬化症および様々なその他の障害を引き起こすかまたはこれらの一因となる恐れがある。最終的に、インスリン抵抗性の個体は、糖尿病状態に達する点まで進行し得る。
【0030】
「アテローム性動脈硬化症」という用語は、関連する医学分野において業務を行っている医師によって認識され理解される、血管の疾患および症状を包含する。アテローム性動脈硬化性の心血管疾患、冠状動脈心疾患(冠動脈疾患または虚血性心疾患としても知られる)、脳血管疾患および末梢血管疾患は、すべてアテローム性動脈硬化症の臨床徴候であり、したがって「アテローム性動脈硬化症」および「アテローム性動脈硬化疾患」という用語によって包含される。
【0031】
糖尿病の「症候」という用語は、本明細書において用いられる場合、多尿症、多渇症、および多食症をその一般的な用法も含めて含むが、これらに限定されない。例えば、「多尿症」は、所与の期間中の大量の尿の排出を意味し;「多渇症」は、慢性の多渇を意味し;「多食症」は、過度の摂食を意味する。糖尿病のその他の症候には、例えば、ある種の感染(特に、真菌感染およびブドウ球菌感染)に対する感受性の増大、悪心、ならびにケトアシドーシス(血中におけるケトン体の産生増加)が含まれる。
【0032】
糖尿病の「合併症」という用語は、微小血管合併症および巨大血管合併症を含むが、これらに限定されない。微小血管合併症は、一般に、微小血管の損傷をもたらす合併症である。これらの合併症としては、例えば、網膜症(眼における血管損傷に起因した視力の欠陥または喪失);神経障害(神経系に対する血管損傷に起因した神経損傷および足の障害);ならびに腎症(腎臓における血管損傷に起因した腎臓疾患)が挙げられる。巨大血管合併症は、一般に、大血管の損傷から生じる合併症である。これらの合併症としては、例えば、心血管疾患および末梢血管疾患が挙げられる。心血管疾患とは、心臓の血管の疾患のことをいう。例えば、Kaplan RMら、「Cardiovascular diseases」in HEALTH AND HUMAN BEHAVIOR、206〜242頁(McGraw−Hill、New York、1993年)を参照されたい。心血管疾患は一般的に、例えば、高血圧(hypertension)、(高血圧(high blood pressure)ともいわれる)、冠状動脈心臓疾患、発作、およびリウマチ性心疾患を含めて、いくつかの形態のうちの1つである。末梢血管疾患とは、心臓外部の血管のいずれかの疾患のことをいう。末梢血管疾患は多くの場合、血液を脚および腕の筋肉に運搬する血管の狭窄である。
【0033】
「脂質異常症」という用語は、リポタンパク質レベルの低下および/または上昇(例えば、LDLおよび/またはVLDLレベルの上昇、およびHDLレベルの低下)の両方を含む、血漿中のリポタンパク質の異常なレベルを指す。
【0034】
「高脂血症」という用語には、以下が含まれるが、これらに限定されない。(1)家族性高カイロミクロン血症:脂肪分子を分解する酵素LPリパーゼの不足を引き起こす、稀な遺伝的障害。LPリパーゼの不足は、血中における大量の脂肪またはリポタンパク質の蓄積を引き起こす恐れがある;
(2)家族性高コレステロール血症:根源的欠陥がLDL受容体の機能不全および/またはLDL受容体の欠如をもたらす、LDL受容体遺伝子の一連の突然変異である場合に引き起こされる比較的よくある遺伝的障害である。これによりLDL受容体によるLDLのクリアランスが無効となり、血漿中のLDLおよび総コレステロールレベルの上昇が起こる;
(3)家族性複合型高脂血症:多種リポタンパク質型高脂血症としても知られる。対象およびその罹患一親等親族が様々な時点で高コレステロールおよび高トリグリセリドを示しうる遺伝性障害。HDLコレステロールのレベルは中等度に低下することが多い;
(4)家族性アポリポタンパク質B−100欠損は、比較的よくある常染色体優性遺伝子異常である。この欠損は、アルギニンの代わりにグルタミンへの置換を引き起こす1個のヌクレオチドの突然変異によって起こり、LDL粒子のLDL受容体への親和性を低下させる恐れがある。その結果、血漿中のLDLおよび総コレステロールレベルの上昇を引き起こす可能性がある;
(5)家族性異常βリポタンパク質血症は、III型高リポタンパク質血症とも呼ばれ、アポリポタンパク質E機能の異常を伴う、血清TGおよびコレステロールレベルの中等度から重度の上昇を来す、まれな遺伝性障害である。HDLレベルは通常は正常である;および
(6)家族性高トリグリセリド血症は、血漿VLDLの濃度が上昇する、よくある遺伝性障害である。これは軽度から中等度のトリグリセリド(TG)レベルの上昇を引き起こすことがあり(通常はコレステロールレベルの上昇は見られない)、血漿HDLレベルは低いことが多い。
【0035】
高脂血症の危険因子としては、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:(1)I型糖尿病、II型糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能低下症およびある種の腎不全の病歴などの疾患危険因子;(2)経口避妊薬;エストロゲンおよびコルチコステロイドなどのホルモン;ある種の利尿薬;および種々のβ遮断薬を含む薬物危険因子;(3)食事性危険因子には、総カロリー当たり、40%を超える食物脂肪摂取量;総カロリー当たり、10%を超える飽和脂肪摂取量;1日当たり300mgを超えるコレステロール摂取量;習慣的および過度のアルコール摂取;ならびに肥満が含まれる。
【0036】
「肥満の」および「肥満」という用語は、世界保健機関によれば、男性の場合には27.8kg/m
2および女性の場合には27.3kg/m
2を超える肥満度指数(「BMI」)のことをいう(BMIは体重(kg)/身長(m
2)に等しい)。肥満は、糖尿病および高脂血症を含む様々な医学的症状に関連している。肥満はII型糖尿病発症の公知の危険因子でもある(例えば、Barrett−Conner E、Epidemol Rev(1989年)11巻:172〜181頁;および、Knowlerら、Am J Clin Nutr(1991年)53巻:1543〜1551頁を参照)。
【0037】
遊離塩基5−エチル−2−{4−[4−(4−テトラゾール−1−イル−フェノキシメチル)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−1−イル}−ピリミジン(MBX−2982)は、以下の構造:
【化1】
を有する。
【0038】
本明細書において提供される5−エチル−2−{4−[4−(4−テトラゾール−1−イル−フェノキシメチル)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−1−イル}−ピリミジンのベシル酸、カンシル酸、エシル酸、HBr、HCl、メシル酸、硫酸およびトシル酸の塩は、それらのXRPDパターンによってさらに証拠づけられるように結晶性(cyrstalline)固体であることが見出される。対照的に、酢酸、アジピン酸、L−アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、クエン酸、ギ酸、ゲンチシン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香)、L−グルタミン酸、グルタル酸、乳酸、マレイン酸、L−リンゴ酸、リン酸、および、L−酒石酸から形成された塩は、取り扱い、単離するのに困難で、大量調製に使用するのに適切ではない、油状物またはゲルであることが見出された。したがって、結晶性ベシル酸、カンシル酸、エシル酸、HBr、HCl、メシル酸、硫酸およびトシル酸の塩は、5−エチル−2−{4−[4−(4−テトラゾール−1−イル−フェノキシメチル)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−1−イル}−ピリミジンの医薬の(pharamceutical)塩を調製する使用に対して優れている。
【0039】
塩は、DSCおよびTGAなどのいくつかの固体状態の技法によって特性評価される。融点温度およびサーモグラムが、機器および、使用される加熱速度を含む使用される手順に依存して変動し得ることは理解される。したがって、本明細書において開示された温度データおよびグラフはそのような変動を含むものと理解されている。
【0040】
塩はまた、XRPD(X線粉末回折)によって特性評価される。相対強度およびピーク帰属は、スペクトルを得るために使用される試料調製、ならびに装備および装置、ならびに分析操作法および設定を包含するいくつかの因子に依存して変動し得る。本明細書に記載のピーク帰属は、プラスまたはマイナス0.5度2シータの変動を包含するように意図される。
【0041】
一実施形態において、約153℃にDSCの吸熱を有する結晶性ベシル酸(besyalte)塩が提供される。一態様において、ベシル酸塩は、
図8に実質的に示されるようなDSCまたはTGAサーモグラムを有する。他の態様において、ベシル酸塩は、
図15で実質的に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0042】
一実施形態において、約184℃にDSCの吸熱を有する結晶性カンシル酸塩が提供される。一態様において、カンシル酸塩は、
図9に実質的に示されるような、DSCまたはTGAサーモグラムを有する。他の態様において、カンシル酸塩は、
図16に実質的に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0043】
一実施形態において、約99℃でDSCの吸熱を有する結晶性エシル酸塩が提供される。一態様において、エシル酸塩は、
図10に実質的に示されるような、DSCまたはTGAサーモグラムを有する。他の態様において、エシル酸塩は、
図17に実質的に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0044】
一実施形態において、約142℃でDSCの吸熱を有する結晶性HBr塩が提供される。一態様において、HBr塩は、
図11に実質的に示されるような、DSCまたはTGAサーモグラムを有する。他の態様において、HBr塩は、
図18に実質的に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0045】
一実施形態において、約86℃でDSCの吸熱を有する結晶性メシル酸塩が提供される。一態様において、メシル酸塩は、
図12に実質的に示されるようなDSCまたはTGAサーモグラムを有する。他の態様において、メシル酸塩は、
図19に実質的に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0046】
一実施形態において、約97℃でDSCの吸熱を有する結晶性硫酸塩が提供される。一態様において、硫酸塩は、
図13に実質的に示されるようなDSCまたはTGAサーモグラムを有する。他の態様において、硫酸塩は、
図20に実質的に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0047】
一実施形態において、約94℃でDSCの吸熱を有する結晶性トシル酸塩が提供される。一態様において、トシル酸塩塩は、
図14に実質的に示されるようなDSCまたはTGAサーモグラムを有する。他の態様において、トシル酸塩は、
図21に実質的に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0048】
一実施形態において、結晶性HCl塩が提供される。結晶性(crytalline)HCl塩は、下記の結晶(crytstal)「パターンO」、および実施例(表6)に記載のものを含む。HCl塩はまた、下記の形態Iもしくは形態IIなどの多形またはこれらの混合物を含んでいてもよい。結晶性HClは、またアセトン、エタノール、メタノールおよび酢酸エチルなどの微量の溶媒を含んでいてもよい。いくつかの態様において、本明細書に提供される形態I多形は、実質的に純粋であり、残留するアセトン(acetaone)を含んでいてもよい。本明細書に提供される形態II多形は、実質的に純粋であり、残留するメタノールおよび/または酢酸エチルを含んでいてもよい。
【0049】
一実施形態において、微量のエタノールを含有する結晶性HCl塩(パターンO)が提供される。一態様において、EtOHとHCl塩の比率はおよそ1:6である。一態様において、HCl塩は、
図22に実質的に示されるようなXRPDパターンを有する。
【0050】
一実施形態において、約191℃でDSCの吸熱開始点を有する多形(形態I)HCl塩が提供される。一態様において、形態I多形は、
図2に実質的に示されるようなDSCサーモグラムを有する。他の態様において、形態I多形は、
図3に実質的に示されるようなTGAサーモグラムを有する。他の態様において、形態I多形は、
図4に実質的に示されるようなラマンスペクトルを有する。他の態様において、形態I多形は、約8.8、10.8、16.1、17.4、20.4、20.9、21.5、21.7、26.6および28.1度2シータ回折角のXRPDピークを含む。さらに別の態様において、形態I多形は、
図1に実質的に示されるようなXRPDパターンを有する。表1は観察された形態1のXRPDピークを列挙し、表2は代表的なピークを列挙し、どちらの表においても相対強度を添えてある。表3は、形態Iの観察されたラマンピークを列挙している。
【0051】
一実施形態において、約150℃にDSCの吸熱開始点を有する多形(形態II)HCl塩が提供される。一態様において、形態II多形は、
図6に実質的に示されるようなDSCサーモグラムを有する。他の態様において、形態II多形は、
図7に実質的に示されるようなTGAサーモグラムを有する。他の態様において、形態II多形は、約7.8、10.1、12.5、18.4、19.0、20.8、23.0および23.5度2シータ回折角のXRPDピークを含む。さらに別の態様において、形態II多形は、
図5に実質的に示されるようなXRPDパターンを有する。表4は観察された形態IIのXRPDピークを列挙し、表5は代表的なピークを列挙し、どちらの表においても相対強度を添えてある。
【0052】
下表において、ピークの位置は、PatternMatch(商標)3.0.1ソフトウェアを使用して自動的に決定し、上記基準に基づいて小数点より後の1または2つの有効数字に四捨五入した。ピーク位置のばらつきは、X線粉末回折におけるばらつきの米国薬局方(USP32,NF27,Vol.1,pg.392,2009)の議論で略述された推奨に基づいて±0.10度2シータ内で得られる。本明細書において報告する具体的な測定に関連する正確度および精度は求めなかった。さらに、相異なる装置で独立して調製される試料の第三者測定は、±0.10度2シータ(例えば±0.50度2シータ以上)より大きいばらつきをもたらし得る。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0053】
本明細書において開示される結晶性塩は、有機または混合有機溶媒からの沈澱によって調製することができ、有機/水溶媒からも調製することができる。
好適な有機溶媒は、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、ヘプタン、ヘキサン、ヘキサフルオロイソプロパノール、イソプロピルアルコール、イソプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メタノール、メチル−tert−ブチルエーテル、2,2,2−トリフルオロエタノールおよびテトラヒドロフランを含む。
【0054】
HCl塩(形態I)は、通常、アセトン、アセトニトリル、エタノール/酢酸エチル、メタノール/酢酸エチルおよびTHFなどの溶媒中で高温で遊離塩基にHClを添加することによって、場合によって、続いてアセトン中でさらに結晶化することによって調製することができる。HCl塩(形態II)は、通常、メタノール中で結晶化することによって調製することができる。メタノール溶液は、場合によって、酢酸エチルまたはアセトンなどの他の溶媒を含んでいてもよい。
【0055】
そのような調製の例示の非限定的な例は、以下の実施例の部に示す。当業者は、本開示に接すると、代替結晶化法を想起して実施例を修正することができ、そのような方法が所望の結晶性塩を製造することができるか、判断することができよう。
【0056】
本発明の実施形態によると、本明細書に記載の1種または複数の結晶性塩を含む医薬組成物が提供される。他の実施形態において、医薬の調製における結晶性塩の使用およびI型糖尿病、II型糖尿病およびメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の治療におけるそれらの使用が提供される。塩はまた、DPP IV阻害薬との併用治療において使用されてもよい。
【0057】
一実施形態において、インスリン産生の刺激、グルコース依存性インスリン分泌の刺激、血中グルコースの低減、または血中トリグリセリドレベルの低減の1つ以上のために、そのような治療を必要とする対象に本明細書に記載の有効量の結晶性塩を投与することを含む方法が提供される。
【0058】
本発明において有用なDPP IV阻害薬は、シタグリプチン(Merck)、ビルダグリプチン(Novartis)、BM−477118(サキサグリプチン)(Bristol−Myers Squibb)、R1438(アミノメチルピリジン(Roche)(NVP DPP728(Novartis)、PSN9301(Prosidion)、P32/98(イソロイシンthiozolidide)(Probiodrug)、GSK823093C(デナグリプチン)(Glaxo Smithkline)、SYR−322(アログリプチン)(Takeda)、NN−7201(NovoNordisk)、ALS2−0426(Alantos)である。(Green BD,Flatt PR,Bailey CJ,Dipeptidyl peptidase IB(DPP IV)inhibitors:a newly emerging drug class for the treatment of Type II diabetes(ジペプチジルペプチダーゼ−IB(DPP IV)阻害薬:II型糖尿病の治療用に新しく現われた薬物の種類),Diabetes Vasc Dis Res 2006,3:159−165)好ましいDPP IV阻害薬はシタグリプチン、ビルダグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチンおよびアログリプチンである。より好ましいDPP IV阻害薬はシタグリプチンおよびビルダグリプチンである。シタグリプチンはJanuvia(商標)として上市されている承認薬であり、またビルダグリプチンはGalvus(商標)として上市されている承認薬である。
【0059】
結晶性塩およびDPP IV阻害薬は、単一用量でまたは別々の用量で投与される。単一用量は1日当たり1回または1日当たり複数回投与される。別々の用量として投与される場合、用量は、1日当たり1回または1日当たり複数回投与することができる。
【0060】
一実施形態において、塩およびDPP IV阻害薬が単一用量で投与される場合、塩およびDPP IV阻害薬は、医薬として単一ピル、単一錠剤、または単一カプセルに製剤化される。塩およびDPP IV阻害薬が、別々の用量で投与される場合、塩は、ピル、錠剤、またはカプセルに製剤化され、DPP IV阻害薬は、医薬として別のピルまたはカプセルに製剤化される。
【0061】
塩およびDPP IV阻害薬が別々の用量で投与される場合、本発明の塩を最初に投与し、塩の投与後、次にDPP IV阻害薬を投与することができる。代替として、DPP IV阻害薬を最初に投与し、DPP IV阻害薬の投与後、次に本発明の塩を投与することができる。順次の第1の投与と第2の投与との時間間隔は、当業者により変動し得る。一実施形態において、第1の投与(塩、またはDPP IV阻害剤)後すぐに、第2の投与(塩、またはDPP4阻害薬)が行われる。別の実施形態において、第2の投与は、第1の投与後、2分、5分、10分、15分、30分、または60分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、または12時間内である。さらに別の実施形態は、朝に塩および/またはDPP IV阻害薬を対象に投与した後、夜に塩および/またはDPP IV阻害薬を先に治療された対象に投与することを提供する。別の実施形態において、塩およびDPP IV阻害薬は、好ましくは一日に一度投与される。
【0062】
本発明の別の態様は、塩およびDPP IV阻害薬を投与することによる、対象の血中グルコースレベルを低下させる方法を提供する。本方法は、哺乳動物に、有効量の塩およびDPP IV阻害薬を投与するステップを含む。本方法は、本発明の式(I)の塩およびDPP IV阻害薬を投与する前後に、血中グルコースレベルを測定するステップをさらに含む。血中グルコースレベルは、血液または尿の試料から血中グルコースを測定する、多くの市販のグルコースモニター装置によって、または本明細書に教示されるように、容易に測定することができる。血中グルコースは、血液または尿試料を必要としない市販の血糖計(glucometer)で測定することもできる。
【0063】
本発明の別の態様は、塩およびDPP IV阻害薬を投与することによる、対象の血中インスリンレベルを低下させる方法を提供する。本方法は、哺乳動物に、有効量の塩およびDPP IV阻害薬を投与するステップを含む。本方法は、塩およびDPP IV阻害薬を投与する前後に、血中インスリンレベルを測定するステップをさらに含む。血中インスリンレベルは、血液または尿試料からインスリンを測定する、周知のインスリンモニタリングアッセイによって、または本明細書に教示されるように、容易に測定される。
【0064】
別の態様において、本発明は、塩およびDPP IV阻害薬を投与することによる、対象の血中インクレチンレベルを上げる方法を提供する。インクレチンはGLP−1およびGIPである。本方法は、哺乳動物に、有効量の塩およびDPP IV阻害薬を投与するステップを含む。本方法は、塩およびDPP IV阻害薬を投与する前後に、血中インクレチンレベルを測定するステップをさらに含む。血中インクレチンレベルは、周知のインクレチンモニタリングアッセイによって、または本明細書に教示されるように、容易に測定される。
【0065】
本発明のさらに別の態様は、塩およびDPP IV阻害薬を投与することによる、対象の血中トリグリセリドレベルを低下させる方法を提供する。本方法は、哺乳動物に、有効量の塩およびDPP IV阻害薬を投与するステップを含む。本方法は、塩およびDPP IV阻害薬を投与する前後に、血中トリグリセリドレベルを測定するステップをさらに含む。血中トリグリセリドレベルは、血液試料から血中トリグリセリドレベルを測定する多くの市販装置によって、容易に測定される。
【0066】
本発明のさらなる態様は、塩およびDPP IV阻害薬を投与することによる、対象の胃内容の排出を低下させる(lowing)方法を提供する。本方法は、有効量の塩およびDPP IV阻害薬を哺乳動物に投与するステップを含む。本方法は、塩およびDPP IV阻害薬を投与する前後に、血中インクレチンレベルを測定するステップをさらに含む。血中インクレチンレベルは、周知のインクレチンモニタリングアッセイによって、または本明細書に教示されるように、容易に測定される。
【0067】
本発明の別の態様は、塩およびDPP IV阻害薬を投与することによる、対象の膵島細胞でのインスリン産生量を上げる方法を提供する。本方法は、哺乳動物に、有効量の塩およびDPP IV阻害薬を投与するステップを含む。本方法は、塩およびDPP IV阻害薬を投与する前後に、膵臓の膵島細胞またはβ細胞におけるインスリン産生量を測定するステップをさらに含む。膵島細胞およびβ細胞のインスリン産生量は、周知のアッセイによって、または本明細書に教示されるように、容易に測定される。
【0068】
さらに別の態様において、本発明は、塩およびDPP IV阻害薬を投与することによる、対象の膵島機能を保存する方法を提供する。本方法は、哺乳動物に、有効量の塩およびDPP IV阻害薬を投与するステップを含む。本方法は、塩およびDPP IV阻害薬を投与する前後に、膵島細胞またはβ細胞がインスリンを産生する機能を測定するステップをさらに含む。膵島細胞およびβ細胞のインスリン産生量は、周知のアッセイによって、または本明細書に教示されるように、容易に測定される。
【0069】
治療有効量の塩およびDPP IV阻害薬を、II型糖尿病の治療および/または血漿グルコースレベルの低下に有用な1種または複数の医薬組成物を調製するのに使用することができる。さらに、治療有効量の塩およびDPP IV阻害薬を、要素として糖尿病を含む他の適応症(例えば、メタボリック症候群を含む)およびインスリン産生の増大の結果として改善可能な適応症(例えば、I型糖尿病の初期段階)の治療に有用な1種または複数の医薬組成物を調製するのに使用することができる。
【0070】
本発明の組成物は、塩、および、場合によって、DPP IV阻害薬、その薬学的に許容される塩またはその加水分解可能な前駆体を含んでもよい。一般に、塩は、治療有効量で適切な担体または賦形剤と混合される。「治療的に有効な用量」、「治療有効量」、または交換可能に「薬学的に許容される用量」または「薬学的に許容される量」とは、所望の結果を達成する(例えば、II型糖尿病の症候または合併症を緩和する)のに、本発明の化合物および薬学的に許容される担体の十分な量が存在することを意味する。
【0071】
本発明の方法で使用するMBX−2982塩は、治療のために投与する様々な製剤に組み込むことができる。さらに詳しくは、適切な医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて、塩を医薬組成物に製剤化することができ、固体形態または半固体形態の調製物(例えば、錠剤、カプセル、丸薬、散剤、顆粒、糖衣錠、ゲル剤、スラリー、軟膏、坐剤、注射液、吸入剤)に製剤化することができる。投与は、経口、口腔内、直腸、皮内、および経皮を含む種々の方法で達成することができる。さらに、デポー製剤または徐放性製剤で、塩を全身ではなく局所的に投与することもできる。さらに、塩をリボソームで投与することができる。
【0072】
本発明で使用するのに適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company (1985) Philadelphia, PA, 17th ed.)に記載されており、本明細書に参照により組み込まれる。本明細書に記載の医薬組成物は、当業者に公知の様式で(すなわち、従来の混合、顆粒化、糖衣錠製造、微粉化、乳化、カプセル化、または封入法によって)製造することができる。以下の方法および賦形剤は、単なる例であり、決して限定するものではない。
【0073】
経口投与の場合、塩を、当分野で周知の薬学的に許容される担体と混合することによって、容易に製剤化することができる。化合物と固体賦形剤とを混合し、得られた混合物を場合によって粉砕し、顆粒混合物を加工することによって、所望の場合、錠剤または糖衣錠コアを得るために適切な補助剤を加えた後、経口使用の医薬調製物を得ることができる。適切な賦形剤は、特に、充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖)、セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドンなどの)である。所望の場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を加えてもよい。
【0074】
糖衣錠コアは、適切な被覆が施される。この目的のために、濃縮糖溶液を使用してもよく、この溶液は、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を場合によって含有してもよい。判別のため、または活性化合物の用量の組み合わせが異なることを知らせるために、錠剤または糖衣錠被覆に染料または顔料を加えてもよい。
【0075】
経口的に使用することができる医薬調製物は、ゼラチン製のプッシュフィット(push−fit)カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)から製造する軟質密閉カプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、場合によって安定剤と混合して、活性成分を含有してもよい。軟質カプセルの場合、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコール)に溶解または懸濁してもよい。さらに、安定剤を加えてもよい。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に適した用量であるべきである。
【0076】
口腔投与の場合、組成物は、従来の様式で、錠剤またはロゼンジの形態をとることができる。
【0077】
吸入投与の場合、本発明による塩は、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体)を用い、加圧パックまたはネブライザからエアロゾルスプレー組成の形態で、または噴射剤を使わず、乾燥粉末吸入器によって簡便に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、一定量を送達するようにバルブを合わせることによって決定することができる。吸入器または注入器に使用するためのカプセルおよびカートリッジ(例えばゼラチン製)は、化合物と、適切な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)との粉末混合物を含有するように製剤化することができる。
【0078】
塩は、例えば、従来の坐剤基剤(例えば、ココアバター、カルボワックス、ポリエチレングリコールまたは他のグリセリド、これらはすべて体温で溶解し、室温では固体である)を含有する直腸組成物(例えば、坐剤または停留浣腸)に製剤化することができる。
【0079】
先に記載した製剤に加え、塩を、デポー調製物として製剤化することができる。このような長期にわたって作用する製剤は、移植によって投与してもよく(例えば皮下投与または筋肉内投与)、または、筋肉注射によって投与してもよい。したがって、例えば、塩を、適切なポリマー物質または疎水性物質とともに(例えば、許容される油中の乳剤として)、またはイオン交換樹脂とともに、または難溶性誘導体(例えば、難溶性塩)として製剤化することができる。
【0080】
代替として、疎水性医薬化合物のための他の送達系を利用してもよい。リポソームおよび乳剤は、疎水性薬物を送達するビヒクルまたは担体の周知の例である。現時点で好ましい実施形態において、長期間循環するもの(すなわちステルスリポソーム)を使用してもよい。そのようなリポソームは、一般的に、Woodleら、米国特許第5,013,556号に記載されている。本発明の化合物はまた、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号および同第4,008,719号に記載されている、制御放出手段および/または送達装置によって投与してもよい。
【0081】
本発明で使用するのに適した医薬組成物は、活性成分を治療有効量含有する組成物を含む。組成物の投与量は、当然、治療の対象、対象の体重、疾患の重篤度、投与様式および主治医の判断によって変わる。有効量の決定は、特に、本明細書の詳細な開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0082】
担体物質と組み合わせて単一の剤形を製造することができる活性化合物の量は、治療対象の疾患、哺乳動物の種類および具体的な投与様式によって変わる。しかし、一般的指針として、本発明の化合物の適切な単位用量は、例えば、好ましくは、活性化合物を0.1mg〜約1000mgを含むものである。好ましい単位用量は、1mg〜約500mgである。さらに好ましい単位用量は、1mg〜約300mgである。別の好ましい単位用量は、1mg〜約100mgである。他の好ましい単位用量は、25、50、100、150、200、250、300、350、400、450および500mgを含む。例えば70kgの成人の合計用量が対象のkg体重あたり投与あたり、0.001〜約15mgとなるように、単位用量はまた、1日に1、2、3、4、5または6回、好ましくは1日に1回または2回、より好ましくは1日に1回投与されてもよい。好ましい用量は、対象のkg体重あたり投与あたり、約0.5から約10mg、約0.5から約7.5mg、約0.5から約5mg、約0.5から約4mg、約0.5から約3mg、約0.5から約2mgまたは約0.5から約1mgであり、このような治療は、数週間または数ヶ月続いてもよく、ある場合には、数年続いてもよい。しかし、任意の特定の対象に対する具体的な用量レベルは、当業者が十分に理解しているように、使用する具体的な化合物の活性、治療対象の個体の年齢、体重、全体的な健康状態、性別および食事、投与時間および投与経路、排泄速度、すでに投与している他の薬物、および治療を受ける具体的な疾患の重篤度を含む種々の要因によって変わることが理解されよう。
【0083】
典型的な用量は、1mg〜約500mgもしくは25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、または500mgの錠剤を1日に1回、または活性化合物の含有量が比例して高い徐放性カプセルまたは徐放性錠剤を1日に1回であってもよい。徐放性の効果は、相異なるpH値で溶解するカプセル材料によって、浸透圧でゆっくりと放出するカプセルによって、または他の既知の制御放出手段によって得ることができる。
【0084】
さらに、本発明は、単位用量の塩および/またはDPP IV阻害薬を、経口用または注射用の用量で含むキットを提供する。単位用量を含有する容器に加え、糖尿病、肥満、高脂血症、アテローム性動脈硬化およびメタボリック症候群、ならびに/またはそれぞれの関連する症候、合併症および障害を治療する薬物の使用および付随する利益を記載した添付情報文書も含有する。
【0085】
以下の実施例は、本発明の特定の態様をさらに説明し、当業者が本発明を実施するのを支援するために提供される。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するようには意図されない。
【実施例】
【0086】
【表5A】
機器技法
【0087】
XRPD:XRPDパターンは、Inel XRG−3000回折計またはPANalytical X’Pert Pro回折計を使用して収集した。
【0088】
Inel:120°の2θ範囲で湾曲した位置感受性検出器を装備したInel XRG−3000回折計。Cu Kα照射(40kV、30mA)の入射光線を使用し、0.03°2θの分解能でリアルタイムにデータを収集した。分析前に、シリコン標準(NIST SRM 640c)はSi111ピーク位置を分析して検定した。分析のために壁の薄いガラス毛細管に試料を充填することにより、試料を準備した。毛細管を各ゴニオメーター上部に搭載し、データ収集中に回転した。
【0089】
PANalytical:Optix社製の長焦点微小焦点線源(long,fine−focus source)を用いてCu Kα放射線の入射光線を生成させた。楕円形の段階型多層鏡を使用し、線源のCu KαX線を試験片に通して検出器上に焦点を合わせた。データを収集し、X’Pert Pro Data Collectorソフトウェア(v.2.2b)を用いて解析した。分析前に、シリコン試験片(NIST SRM 640c)を分析して、Si111ピーク位置を検定した。試験片を3μm厚のフィルム間にサンドイッチし、透過幾何学において分析し、回転させて配向統計値を最適化した。軸方向の発散を最小化するため、入射光線および回折光線には、ソーラースリットを使用した。回折パターンは、試験片から240mmに配置した走査位置感受性検出器(X’Celerator)を用いて収集した。
【0090】
DSC:DSCはTA Instruments Q2000示差走査熱量計を使用して行った。温度較正をNIST由来のインジウム金属を使用して行った。試料はアルミニウム製DSCパンに入れ、重量を正確に記録した。レーザーピンホールで穿孔した蓋でパンを覆い、蓋は密封し、または穿孔していない蓋で覆って折り目を付けた。試料セルを−30℃または25℃のいずれかで平衡に保ち、250℃の最終温度まで10℃/分の速度で窒素パージ下に加熱した。報告された温度は、転移最高点にある。
【0091】
TGA:TG分析をTA Instruments Q5000 IR熱重量アナライザーを使用して行った。温度較正はニッケルおよびアルメル(商標)を使用して行った。各試料をアルミニウムパンに装入した。パンは、TG炉に挿入する直前にパンチ機構を使用して開けた蓋で密封した。350℃の最終温度から10℃/分の速度で、炉を窒素下に加熱した。
【0092】
1H NMR:溶液NMRスペクトルはVarian
UNITYINOVA400スペクトロメーターを用いて得られた。試料は、DMSO
6中にまたはCDCl
3中に溶解することにより準備した。
【0093】
FT−ラマン分光法:ラマンスペクトルは、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)検出器を装備した、Nexus670FT−IR分光光度計(Thermo Nicolet)に接続されたNexus 670 FT−ラマン付属品モジュールで得られた。波長検定は硫黄およびシクロヘキサンを使用して行った。分析のために、試料をガラス管に入れ、金被覆管の保持器内にその管を位置決めすることにより各試料を準備した。
結晶化法
【0094】
徐冷(SC):関心のある遊離塩基および酸を含有する溶液を様々な溶媒中で室温で調製した。固体は溶けにくかったので、溶解を容易にするために試料を加熱した。一旦透明な(固形物を含まない)溶液が得られたら、溶液をゆっくり室温に冷却した。
【0095】
体積減少(VR):関心のある遊離塩基および酸を含有する溶液を様々な溶媒中で室温で調製した。固形物は溶液中に見当たらなかった。試料は蓋をし、常温で数時間から数日間の間放置した。固形物が生じなかった場合、試料の蓋を外し、試料体積を減少させた。試料は蓋をし、常温条件下に静置した。固形物が溶液から沈殿したら、固形物を真空濾過によって集めて乾燥した。
【0096】
沈澱(Ppt):関心のある遊離塩基および酸を含有する溶液を様々な溶媒中で室温で調製した。固体は溶けにくい場合は、溶解を容易にするために試料を加熱する、または常温に保ち撹拌した。結果として透明な溶液が生じた場合、試料は蓋をし常温で保った。高温の試料を常温に冷却した。生じた固形物は、真空濾過によって集めて乾燥した。
実施例1:遊離塩基5−エチル−2−{4−[4−(4−テトラゾール−1−イル−フェノキシメチル)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−1−イル}−ピリミジンの調製
4−(4−((4−(1H−テトラゾール−1−イル)フェノキシ)メチル)チアゾール−2−イル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルの合成
【0097】
4−(4−クロロメチル−チアゾール−2−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(549mg)、4−テトラゾール−1−イル−フェノール(270mg)、Cs
2CO
3(890mg)のアセトニトリル中混合物を、還流下に終夜加熱した。冷却後、反応混合物を、セライトのパッドに通してろ過し真空内で濃縮した。クロマトグラフィー(40−100%EtOAc/ヘキサン)によって精製し、白色固体として所望の生成物を得た。
1H NMR (CDCl
3): δ 8.01 (1H, s), 7.61 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.25 (1H, s), 7.15 (2H, d, J = 8.8 Hz), 5.22 (2H, s), 4.2 (2H, br), 3.17 (1H, m), 2.87 (2H, m), 2.11 (2H, m), 1.73 (2H, m), 1.46 (9H, s).
4−[4−(4−テトラゾール−1−イル−フェノキシメチル)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン塩酸塩の合成
【0098】
4−(4−((4−(1H−テトラゾール−1−イル)フェノキシ)メチル)チアゾール−2−イル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(0.60g)のメタノール/ジクロロメタン(1.0mL/1.5mL)中溶液に、0℃でジオキサン(1.7mL)中4NHClを添加し、次いで、室温で7時間撹拌した。溶媒を真空内で除去した後、粗製の所望化合物HCl塩がオフホワイト色の固体として得られた。
【0099】
4−[4−(4−テトラゾール−1−イル−フェノキシメチル)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン塩酸塩(403mg)、2−クロロ−5−エチルピリミジン(0.15mL)及びジイソプロピルエチルアミン(1mL)のイソプロパノール中混合物を、90℃で終夜加熱し、EtOAcおよび水の間で分配した。有機層を水/塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥し、真空内で濃縮した。クロマトグラフィーによってシリカゲル(40−100%EtOAc/ヘキサン)で精製し、白色固形物として所望の化合物を得た。
1H NMR (DMSO−d
6): δ 9.98 (1H, s), 8.24 (2H, s), 7.80 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.66 (1H, s), 7.28 (2H, d, J = 8.8 Hz), 5.20 (2H, s), 4.67 (2H, m), 3.32 (1H, m), 3.01 (2H, m), 2.43 (2H, q, J = 7.2 Hz), 2.07 (2H, m), 1.59 (2H, m), 1.11 (3H, t, J = 7.2 Hz) ppm.
実施例2:ベシル酸塩
【0100】
ベシル酸塩をアセトン溶液の体積減少試験から生じさせた。この物質は積層プレートとして結晶化した。XRPD分析は、ベシル酸塩が結晶性であることを示した。終夜のRHストレスの後にも、この物質は自由流動する粉体であった。ストレスをかけた試料を熱分析すると、125℃までにわずかな重量損失(0.9重量%)、および153℃を中心とする鋭い吸熱を示した。この吸熱に伴ってショルダーがおよそ147℃に認められた。急速な重量損失がおよそ155℃を超えて観察された。
1H NMR分光法結果は、1:1塩が存在することを示した。
1H NMR (CDCl
3): δ 8.95 (1H, s), 8.54 (2H, br s), 7.95 (2H, m), 7.63 (2H, dt, J = 3, 9.2 Hz), 7.40 (3H, m), 7.29 (1H, s), 7.18 (2H, dt, J = 3, 9.2), 5.24 (2H, s), 4.76 (2H, m), 3.42 (3H, m), 2.61 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.33 (2H, dd, J = 3, 13.8 Hz), 1.97 (2H, m), 1.26 (3H, t, J = 7.6 Hz).
実施例3:カンシル酸塩
【0101】
カンシル酸塩を、沈降反応およびアセトン中での徐冷によって生じさせた。この物質は未知の形態に結晶化した。XRPD分析は、カンシル酸塩が結晶性であることを示した。終夜のRHストレスの後にも、この物質は自由流動する粉体であった。ストレスをかけていない試料を熱分析すると、125℃までにわずかな重量損失(0.3重量%)、および184℃を中心とする鋭い吸熱を示した。急速な重量損失(通常分解を示す)がおよそ180℃を超えて観察された。
1H NMR分光法の結果は1:1塩を形成していたことを示す。
1H NMR (CDCl
3): δ 8.70 (1H, s), 8.61 (2H, br s), 7.74 (2H, d, J = 9.2 Hz), 7.28 (1H, s), 7.18 (2H, d, J = 9.2 Hz), 5.24 (2H, s), 4.78 (2H, d, J = 13.6 Hz), 3.42 (4H, m), 2.92 (1H, d, J = 15.2 Hz), 2.73 (1H, m), 2.62 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.34 (3H, m), 1.99 (4H, m), 1.89 (1H, d, J = 18.4 Hz), 1.79 (1H, m), 1.39 (1H, m), 1.27 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.12 (3H, s), 0.86 (3H, s).
実施例4:エシル酸塩
【0102】
エシル酸塩を、アセトン中の沈降反応によって生じさせた。エシル酸塩の物質は積層プレートおよび薄片として存在した。XRPD分析はエシル酸塩が結晶性であることを示した。終夜のストレスの後にも、この物質は自由流動する粉体であった。ストレスをかけた粉体を熱分析すると、125℃までに4.8%の重量損失、および98.5℃を中心とする鋭い吸熱を示した。吸熱の事象は、通常、溶融の事象を示す。重量損失は、塩が溶媒和物または水和物であることを示すことがある。急速な重量損失(通常分解を示す)がおよそ125℃を超えて観察された。
1H NMR分光法の結果は1:1塩を形成していたことを示す。
1H NMR (CDCl
3): δ 8.95 (1H, s), 8.56 (2H, br s), 7.63 (2H, d, J = 9.2 Hz), 7.29 (1H, s), 7.18 (2H, d, J = 9.2 Hz), 5.24 (2H, s), 4.79 (2H, m), 3.43 (3H, m), 2.97 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.61 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.36 (2H, m), 1.98 (2H, m), 1.39 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.27 (3H, t, J = 7.6 Hz).
実施例5:HBr塩
【0103】
HBr塩を、アセトン中の沈降反応によって生じさせた。この物質は未知の形態に結晶化した。XRPDの結果はHBr塩が結晶性であることを示した。終夜のストレスの後にも、この物質は自由流動する粉体であった。ストレスをかけていない物質の熱分析は、分解する前に幅が広く弱い吸熱が存在することを示した。分解以前に1.5%の重量損失が検出された。
1H NMR分光法は、周囲条件下では分解物が形成されないことを示した。塩をCDCl
3の存在下で沈澱させ、
1H NMR分析をDMSO中で行った。
1H NMR (DMSO−d
6): δ 10.00 (1H, s), 8.30 (2H, s), 7.82 (2H, d, J = 9.2 Hz), 7.68 (1H, s), 7.30 (2H, d, J = 9.2 Hz), 5.22 (2H, s), 4.66 (2H, d, J = 13.2 Hz), 3.36 (1H, tt, J = 3.8, 11.6 Hz), 3.08 (2H, dt, J = 2.6, 12.8 Hz), 2.50 (2H, q, J = 7.4 Hz), 2.12 (2H, m), 1.64 (2H, m), 1.14 (3H, t, J = 7.4 Hz).
実施例6:メシル酸塩
【0104】
メシル酸塩を徐冷/体積減少技法を使用して、様々な形態に生じさせた。XRPDの結果は、モノ塩が結晶性であることを示した。高いRHストレスの後も、この物質は自由流動する粉体であった。ストレス後の試料の熱分析は、86℃を中心とする吸熱、および125℃までに4.5%の重量損失を示した。1つの可能な説明は、溶媒(恐らく水)損失が迅速に生じ、試料は溶融事象後に分解するということである。
1H NMR分光法の結果は、1:1塩が形成されたことを裏付けた。
1H NMR (CDCl
3): δ 8.95 (1H, s), 8.55 (2H, br s), 7.63 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.29 (1H, s), 7.18 (2H, d, J = 9.2 Hz), 5.24 (2H, s), 4.76 (2H, m), 3.42 (3H, m), 2.88 (1H, s), 2.61 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.36 (2H, m), 1.99 (2H, m), 1.27 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0105】
XRPD(Intel XRG−3000回折計)の選択した格子面間隔:d間隔[Å](±0.1Å):10.23、6.28、4.83、4.75、4.57、4.43、4.32、3.49、3.43、3.32.
実施例7:硫酸塩
【0106】
硫酸塩を沈澱実験から生じさせた。XRPDの結果は、モノ塩が結晶性物質を生じさせたことを示した。高いRHストレスの後に、この物質が粘着性になった。ストレスをかけていない試料を熱分析すると、大きい重量損失(125℃までで9%)が97℃を中心とする吸熱に伴っていることを示した。この初期の重量損失の後、さらなる加熱で、水の消失によると思われる物質の急速分解が生じたが、この仮説は検証されなかった。
1H NMR分光法の結果は、分解物が形成されなかったことを示した。塩をCDCl
3の存在下で沈澱させ、
1H NMR分析をDMSO中で行った。
1H NMR (DMSO−d
6): δ 10.00 (1H, s), 8.32 (2H, s), 7.82 (2H, d, J = 9.2 Hz), 7.68 (1H, s), 7.30 (2H, d, J = 9.2 Hz), 5.22 (2H, s), 4.65 (2H, d, J = 13.6 Hz), 3.36 (1H, tt, J = 3.6, 11.2 Hz), 3.09 (2H, m), 2.48 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.12 (2H, m), 1.65 (2H, m), 1.14 (3H, t, J = 7.6 Hz).
実施例8:トシル酸塩
【0107】
トシル酸塩をアセトン中の徐冷および体積減少によって生じさせた。この物質は未知の形態に結晶化した。XRPDの結果は結晶性物質が存在することを示した。高RH条件に曝露した後でも、この物質は自由流動する粉体であった。この物質の熱分析は、125℃までにわずかな(0.9%)重量損失を示し、94℃を中心とする非常に弱い吸熱を伴っていた。この広く弱い吸熱は溶媒消失を示している可能性がある。152℃を中心とする吸熱の後に、大きい重量損失が認められた。
1H NMR分光法の結果は、1:1塩を形成したことを裏付けた。
1H NMR (CDCl
3): δ 8.95 (1H, s), 8.54 (2H, br s), 7.83 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.63 (2H, d, J = 9.2 Hz), 7.30 (1H, s), 7.19 (4H, m), 5.25 (2H, s), 4.76 (2H, m), 3.43 (3H, m), 2.61 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.36 (3H, s), 2.33 (2H, m), 1.96 (2H, m), 1.26 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0108】
XRPD(Intel XRG−3000回折計)の選択した格子面間隔:d間隔[Å](±0.1Å):10.61, 8.41, 5.78, 5.17, 5.02, 4.84, 4.37, 4.22, 3.95, 3.44.
実施例9:HCl塩
【0109】
HCl塩を調製するための様々な溶媒系の選別を、下記手順に従って実施し、結果は以下の表6に示される。
【0110】
蒸発試験:HCl塩を所与の溶媒に溶解した。溶液は0.2μmナイロンフィルターに通して濾過した。周囲温度での蒸発実験のために、溶液は開放したバイアル(高速蒸発)中に放置し、またはピンホールがあるアルミ箔で覆った(遅い蒸発)。真空(回転式の蒸発)下での蒸発実験のために、試料を周囲温度または高温でロータリーエバポレーターに置き、溶媒を蒸発乾固させた。
【0111】
徐冷および高速冷却実験:HCl塩を所与の溶媒と接触させ、試料はホットプレート上の油浴内で高温にした。選択した試料は0.2μmナイロンフィルターを使用して濾過した。次いで、熱源を切り、ホットプレートおよびバイアルを油浴内で、徐冷するためにゆっくり常温に放冷し、または高速冷却するために実験台に置いた。常温で固形物を生じなかった選択した試料は、冷蔵庫または冷凍庫に入れた。固形物は真空濾過によって回収した。
【0112】
急速冷却実験:飽和溶液を様々な溶媒中で高温で調製した。実験はホットプレート上の油浴内で行った。結果として得られた溶液またはスラリーは、まだ温いうちに、温めた0.2μmフィルターに通して、開放したバイアル中へ速やかに濾過した。バイアルをドライアイスによって冷却したアセトン浴に入れた。固形物は真空濾過によって集めた。
【0113】
蒸気拡散:少量のMBX2982HClを最小量の適切な溶媒に溶解した。試料は、0.2μmナイロンフィルターに通して1ドラムバイアル中へ濾過した。ジエチルエーテルを20mLシンチレーションバイアルに加えた。1ドラムバイアルの蓋を外し、20mLバイアルに入れた。20mLバイアルは蓋をしパラフィルムで封じた。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0114】
実施例10:HCl塩形態I
遊離塩基(46.0g)を500mLEtOHと接触させ、暖め/撹拌した。9.5mL濃HClを懸濁液に添加した。試料はおよそ30分間放置し、次いで、室温に冷却した。濾過した物質は、真空乾燥(3日)し、微量のエタノールを含有する「パターンO」であると同定した。
【0115】
固形物をもとの母液と再度合わせ、試料を速やかに撹拌し、追加の0.5mL濃HClを添加した。試料はおよそ30分間加熱、撹拌し、次いで、室温にゆっくり冷却した。濾過した物質を、アセトン中にスラリー化し(26.8g/125mL)、およそ1時間暖めた。試料を常温にゆっくり冷却し、6日間スラリー化しHCl形態Iを得た。
【0116】
HCl形態Iの熱特性評価(DSC、TGA)の結果は、この物質が恐らく溶媒和されていないことを示した。TGA曲線は、〜23℃から〜73℃の間で〜0.2%重量損失を示し、これは恐らく残留アセトンの蒸発を伴うものであった(残留アセトンの存在は
1H NMRから見られる)。およそ13.1%の重量損失は、〜113℃から〜210℃の間で観察され、〜302℃(開始点)で、分解によると思われる急落が続いた。この物質は初期にHClを失うことがあるが、これにはより高温でさらなる分解が伴う。DSCサーモグラムは〜191℃(開始点)で鋭い吸熱事象を示し、続いて直ぐに熱揺らぎがあったが、これは恐らく分解に起因する。
【0117】
吸湿性は、〜5%RHで平衡させると結果として〜0.3重量%損失を示した。小さい重量損失はTGA損失と同等であり、恐らく残留アセトンの損失を伴う。〜5%から〜95%RHの間では、安定した〜0.9重量%の増加が観察された。完全な脱着が、相対湿度を〜5%に減少させることで生じた(〜95%から〜5%RHの間で〜0.9重量%損失)。
【0118】
1H NMRは、ピリミジン環のプロトンおよび微量の残留アセトン(遊離塩基1モル当たりアセトン〜0.06モル)に起因する8.42ppmのピークの著しいシフトおよびブロード化を示した。
1H NMR (CDCl
3): δ 8.96 (1H, s), 8.42 (2H, br s), 7.63 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.28 (1H, s), 7.18 (2H, d, J = 8.8 Hz), 5.24 (2H, s), 4.98 (2H, m), 3.45 (3H, m), 2.61 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.38 (2H, m), 1.99 (2H, m), 1.27 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0119】
元素分析データはモノ塩酸塩である物質と一致した:(C
22H
25ClN
8OS)C:54.16%;H:5.29%;N:22.89%;Cl:7.40%。
【0120】
FT−ラマンスペクトル:(cm−1):154, 193, 214, 243, 324, 346, 384, 420, 460, 467, 495, 539, 573, 596, 628, 648, 680, 687, 718, 751, 766, 787, 800, 845, 856, 946, 967, 992, 1009, 1051, 1068, 1094, 1110, 1172, 1203, 1225, 1253, 1282, 1300, 1311, 1334, 1375, 1394, 1404, 1432, 1458, 1474, 1480, 1517, 1533, 1591, 1609, 1637, 2734, 2869, 2903, 2928, 2937, 2967, 2999, 3015, 3030, 3063, 3075.
実施例11:アセトンからのHCl塩形態I
【0121】
MBX−2982(0.9g)のアセトン(4mL)中懸濁液に、HCl(濃縮水溶液)1当量を55℃で添加した。この懸濁液を55℃で2時間撹拌し、次いで、室温に冷却した。HCl塩形態Iは固形物として真空濾過によって集めた。Intel XRG−3000回折計からのX線粉体パターンから選択した格子面間隔:d[Å] (±0.1 Å): 10.09, 8.20, 5.51, 5.08, 4.36, 4.26, 4.14, 4.08, 3.35, 3.18.
実施例12:酢酸エチルからのHCl塩形態I
【0122】
MBX−2982(2g)の酢酸エチル(9mL)中懸濁液に、HCl1.05当量(酢酸エチル中の1M溶液)を、55℃で添加した。この懸濁液は55℃で2時間撹拌し、次いで、室温に冷却した。HCl塩形態Iは固形物として真空濾過によって集めた。Intel XRG−3000回折計からのX線粉体パターンから選択した格子面間隔:d [Å] (±0.1 Å): 10.09, 8.22, 5.51, 5.09, 4.36, 4.26, 4.14, 4.09, 3.35, 3.18.
実施例13:HCl塩形態II:
【0123】
21.5gのパターンO物質(実施例10に記載のように調製した)を、125mLMeOHおよびHCl形態IIの種と接触させた。試料を室温で6日間スラリー化し、形態II物質を得た。
【0124】
HCl形態IIのXRPD分析は、物質が結晶性であることを示す。
【0125】
HCl形態IIの
1H NMR分析は、ピリミジン環のプロトンに起因する〜8.42ppmのピークの著しいシフトおよびブロード化を示し、これはHClが恐らくピリミジン窒素原子近くに位置することを示唆する。さらにスペクトルは微量のメタノール(塩基の1モル当たり0.3モルのメタノール)および残留酢酸エチルを示した。
1H NMR (CDCl
3): δ 8.98 (1H, s), 8.42 (2H, br s), 7.63 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.29 (1H, s), 7.18 (2H, d, J = 9.2 Hz), 5.24 (2H, s), 4.98 (2H, m), 3.47 (3H, m), 2.61 (2H, q, J = 7.6 Hz), 2.37 (2H, m), 1.99 (2H, m), 1.27 (3H, t, J = 7.6 Hz).
【0126】
形態IIの熱特性評価(DSC、TGA)の結果は、この物質が恐らく溶媒和されていないことを示した。TG曲線は、〜21℃から〜113℃の間で〜0.6%の重量損失を示し、これは恐らく残留メタノールおよび酢酸エチル蒸発に伴うものである。およそ14.6%の重量損失は、〜113℃から〜220℃の間で観察され、〜312℃(開始点)で、分解によると思われる急落が続いた。この物質は初期にHClを失うことがあるが、これにはより高温でさらなる分解が伴う。DSCサーモグラムは〜150℃(開始点)から始まる吸熱事象を示し、続いて幾つかの熱揺らぎがあったが、これは恐らく分解に起因する。
生物学的実施例1
【0127】
微晶質のMBX−2982およびMBX−2982の塩形態の全身系の曝露および薬物動態学(PK)を比較するために、絶食させたオスSprague Dawley(SD)ラットで200mg/kgの単回経口胃管栄養(PO)投薬に続いて、2つの検討を行った。その検討では、MBX−2982の4種の塩形態(foms)を調査した。試験した塩は、HCl形態I、HCl塩形態II、メシル酸塩およびトシル酸塩であった。
【0128】
材料および装置
標準:MBX−2982
内標準:MBX−2982、6個のフェニル環炭素原子が
13Cとして標識付けされている
ブランクのプールしたラット血漿(Bioreclamation)
薬品:試薬等級
溶媒:HPLC等級
96ウェルの深いプレートおよびマット:1mL(Corning)
HPLCカラム:Lunar C18(2)、5μ、内径50×2.1mm(Phenomenex)
プレカラムフィルター:0.2μm(Thermo− Fisher Scientific)
LCシステム:LC−20 ADポンプおよびCTC Analytics AG付きSCL−10A VP LCコントローラーPal Autosampler(Shimadzu Scientific Instruments, Inc.)
質量スペクトロメーター:Analyst 1.4.2 Software付き 4000 Q−TRAP(登録商標)(Applied Biosystem Inc.)
化学天秤:モデルaccu−124(Fisher Scientific)
ピペット:(Rainin Instrument,LLC)
【0129】
試料調製
【0130】
試料の調製は、1mL/ウェルの96ウェルプレート中の血漿タンパクの溶媒沈澱によって行った。標準は、標準溶液10μL(MBX−2982を、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、100μg/mLで含有するアセトニトリル)、および内標準として0.2μg/mL含有するアセトニトリル中の0.1%ギ酸300μLを、ブランク血漿10μLに加えることにより調製した。血漿試料は、血漿試料10μL、アセトニトリル10μL、およびアセトニトリル中の0.1%のギ酸中の0.2μg/mL内標準300μLを添加することにより調製した。有機溶媒の添加後、試料はすべて手短かにボルテックスし、3600rpmで10分間遠心分離機にかけた。試料の一部を、ブランク血漿で1.3から2倍に希釈した。上澄み(25μL)のアリコートを1mL/ウェルの96ウェルプレートに移し200μL水/ACN(50/50、体積/体積)と混合しHPLCに注入した。
【0131】
すべての原液およびスパイク溶液はポリプロピレン管中に保ち、およそ−80℃で保管した。
【0132】
微晶質のMBX−2982(遊離塩基)およびMBX−2982の塩形態の懸濁液を、カルボキシメチルセルロース1%および水中2%(w/w/v)のトゥイーン80中で調製した。
【0133】
動物の5つの群に、MBX−2982の微晶質および塩形態の懸濁液用量を、それぞれ200mg/kgで経口的に与えた。食物は投薬前の夜に保留し、投薬の9時間後に戻した。血液試料は、投薬0.25、0.5、1、2、4、6、9、24、30及び48時間後に集めた。これらの試料からのMBX−2982血漿中濃度は、検定していない高性能液体クロマトグラフィーによって質量スペクトロメトリー(LC−MS/MS)法と組み合わせて分析した。
【0134】
個々の動物の血漿中濃度−時間データはWinNonlinソフトウェア(プロフェショナル、バージョン5.0.1;Pharsight Corp.)を使用して分析した。非コンパートメントモデル(モデル200)を使用した。内標準および濃度に対するMBX−2982のピーク面積比率を、アナリストバージョン1.4.2(Applied Biosystem Inc)の二次回帰プログラムを使用して、二次方程式(検量線)に1/xで重み付けしてあてはめた。次いで、この式を使用して、内標準とのピーク面積比率から試料中のMBX−2982の濃度を内挿した。
【0135】
以下の薬物動態学のパラメーターを算定した:
1) C
max:最大(ピーク)血漿中濃度
2) T
max:C
maxが生じた時間
3) t
1/2:終末過程半減期
4) AUC
0−t:時間0から最後の測定可能濃度にかけての濃度−時間曲線下の面積
5) AUC
0−inf:時間0から無限大に外挿した濃度−時間曲線下の面積
【0136】
1回の200mg/kgPO投薬に続く、オスSDラット中のMBX−2982の平均薬物動態学パラメーターを、表7に示す。平均血漿中濃度−時間データおよびプロファイルを表8および
図23に示す。
【0137】
その結果、等価な量を投薬した場合、微小化MBX−2982(遊離塩基)と比較して、試験したMBX−2982の塩形態は高度の薬物曝露を与えた。全身的な薬物曝露は、AUC
0−tで、HCl塩形態I、HCl形態II、メシル酸塩およびトシル酸塩に対し、それぞれ、2.4倍、2.9倍、1.4倍および1.7に増加した。
【表7】
【表8】
【0138】
糖尿病の治療において、1日1回の投薬を可能にする時間にわたって、血液中に薬物の有効濃度を維持することは有利である。表8および
図23で示すように、投薬24時間後では、微粉化遊離塩基MBX−2982の血漿レベルは0.26μg/mlであった。対照的に、24時間で、塩形態の血漿レベルは、7.3μg/ml(HCl形態I)、12.02μg/ml(HCl形態II)、0.476μg/ml(メシル酸塩)および4.2μg/ml(トシル酸塩)であった。投薬30時間後では、微粉化遊離塩基MBX−2982の血漿レベルは、0.08μg/mlであったが、塩形態は、7.52μg/l(HCl形態I)、14.9μg/ml(HCl形態II)、0.574μg/ml(メシル酸塩)および3.18μg/ml(トシル酸塩)であった。このようにして、投薬30時間後での、MBX−2982の塩の血漿中濃度の倍数の差は、微粉化遊離塩基2982と比較した場合、94倍高い血漿中濃度(HCl形態I)、186倍高い血漿中濃度(HCl形態II)、7倍高い血漿中濃度(メシル酸塩)、および40倍高い血漿中濃度(トシル酸塩)であった。
【0139】
本発明に対する変形は、本開示を得た当業者には明らかであろう。そのような変形、および上記の実施形態および実施例から結果として得られた等価物は、以下の特許請求の範囲の範囲に包含されるように意図される。