(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記毛束離間植毛部が、芯部と前記芯部の外側に設けられた少なくとも1層の鞘部とにより構成された多重芯構造を有するポリエステル製用毛を備えている請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【背景技術】
【0002】
歯周病を予防するためには、歯頸部の清掃が重要であることが知られている。歯ブラシによる歯頸部の清掃性を高めるためには、歯頸部への毛先進入性が高いこと、歯頸部に進入した毛先による歯垢の掻き取り性が高いことが求められる。
歯頸部への毛先の進入性を高めた歯ブラシとして、毛先を先鋭化した用毛を用いた歯ブラシが知られている。また、毛束を植毛する植毛穴のピッチを全体的に拡げて、毛束の物理的な間隔を大きくした歯ブラシが知られている。
しかしながら、単に植毛穴のピッチを広げるだけでは、毛束のコシが失われるため、歯頸部に進入した歯垢の掻き取り性が低下する傾向がある上に、毛束の密度が低くなり、歯ブラシとしての使用感を大きく損なうことがあった。
【0003】
特許文献1〜4に記載されているように、歯ブラシは、目的に応じて様々なパターンで植毛される。
すなわち、特許文献1には、臼歯の頂面および側面に毛束の先端を到達させることを目的として、ヘッド部先端且つ歯ブラシ幅方向の中央に切り欠き部が形成されて、先端側が開口した略U字状に毛束が植毛された歯ブラシが提案されている。
特許文献2には、歯と歯の隙間への毛先の進入性を高めることを目的として、植毛領域の中央に複数の無植毛部を設けた歯ブラシが提案されている。
特許文献3には、各個人の口腔内状況に適応させることを目的として、植毛領域の中央に無植毛部を1つ設けた歯ブラシが提案されている。
特許文献4には、口腔内の自浄作用のない領域を磨くことを目的として、植毛領域の基端側が開口したV字状に毛束が植毛された歯ブラシが提案されている。
しかし、特許文献1および4に記載の歯ブラシは、歯面清掃時の使用感が不充分であった。
特許文献2および3に記載の歯ブラシは、歯頸部への毛束の毛先の進入性が不充分であった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の歯ブラシの一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の歯ブラシの側面図を示す。本実施形態の歯ブラシ1は、毛束11が植毛されたヘッド部10と、ヘッド部10に延設された長尺状のハンドル部20とを備える。
【0010】
歯ブラシ1において、ヘッド部10およびハンドル部20は、全体として長尺状に一体成形されており、例えば、樹脂を材料とし射出成形により得られる。
前記樹脂は、歯ブラシ1に求める剛性や機械特性等を勘案して決定できる。例えば、曲げ弾性率(JIS K7203)が500〜3000MPaの範囲にある高硬度樹脂を用いることによって、歯ブラシ1に必要とされる機械特性が得られる。このような高硬度樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等が挙げられる。これらは1種または複数種を用いることができる。
また、ハンドル部20においては、把持性を向上させるため、例えばエラストマー等の柔軟な樹脂が部分的または全体的に被覆されていてもよい。
【0011】
図2に示すように、ヘッド部10の植毛領域12には、複数の用毛を束ねた毛束11が、格子配列の植毛穴13に植設されている。
ここで、植毛領域12は、最外側の各植毛穴13の穴縁の最外部分を結んだ際に得られる仮想線Aによって囲まれる領域である。この仮想線Aは隣接する植毛穴13同士の接線を構成する。
植毛領域12は、ヘッド部10の基端側から先端側に向かって配置された毛束離間植毛部12aと、毛束離間植毛部12aよりも先端側に配置された前部植毛部12bとを有する。
ここで、毛束離間植毛部12aとは、ヘッド部10の基端から先端に向かう植毛領域12の中心線Bを挟んで隣接する毛束11同士が離間して配置された部分である(
図2においては、中心線Bを挟んで隣接する毛束11同士が長さL
3で離間して配置された例が示されている)。すなわち、毛束離間植毛部12aとは、ヘッド部10の基端から先端に向かう方向における下記緩衝部12cの最先端において、植毛領域12の中心線Bと直交する線を仮想線Cとした場合、下層線Cと仮想線Aとで囲まれたヘッド部10の基端側の領域を意味する。
このような毛束離間植毛部12aにおいては、植毛領域12の中心線B付近に、毛束が植毛されていない部分12c(以下、「緩衝部12c」という場合がある。)が形成される。したがって、植毛領域12において、毛束11が存在する領域は、基端側に開口しており、真上から見た形状は、例えば略U字状である。
また、前部植毛部12bとは、仮想線Cと仮想線Aとで囲まれたヘッド部10の先端側の領域を意味する。
ここで、ヘッド部10の基端とは、ベッド部10においてハンドル部20側に位置する植毛穴13の最外部分を意味する。
本実施形態における緩衝部12cは、ヘッド部10の基端から先端に向かう方向を長手とする矩形状にされている。矩形状の緩衝部12cの長手方向が、ヘッド部10の基端から先端に向かう方向であれば、歯頸部に進入させる毛束11を充分に確保できるようになる。
上記の緩衝部12cは、植毛領域12の幅方向の中央に位置する。植毛領域12の側端側に緩衝部12cが位置する場合には、毛束11の毛先の歯頸部への進入性が発揮されない。
【0012】
毛束離間植毛部12aのヘッド部10の基端から先端に向かう方向の長さL
1は、ヘッド部10の基端から先端に向かう方向の植毛領域12の長さL
2の25〜75%、好ましくは30〜70%、より好ましくは50〜60%である。前記L
1は、詳細には、ヘッド部10の基端から先端に向かう方向において、植毛領域12におけるヘッド部10の基端側と、前部植毛部12bの基端側の植毛穴13における基端側との距離である。また、前記L
2は、詳細には、ヘッド部10の基端から先端に向かう方向において、植毛領域12におけるヘッド部10の基端側と、前部植毛部12bの最先端側の植毛穴13における最先端側との距離である。
前記L
1が前記下限値未満であると、毛束離間植毛部12aの毛束11の毛先の歯頸部への進入性が低下する。
前記L
1は緩衝部12cのヘッド部10の基端から先端に向かう方向の長さでもある。
したがって、L
1が前記上限値を超えると、緩衝部12cが植毛領域12の先端側にも形成されることを意味する。通常、奥歯や歯面の清掃時には先端側の毛束11に圧力が強く加えられるため、植毛領域12の先端側に毛束11のない緩衝部12cが形成されると、奥歯や歯面の清掃の際に毛束11が不足しているような疎毛感を生じ、使用感が損なわれる。
【0013】
毛束離間植毛部12aにおいて、中心線Bを挟んで隣接する毛束11同士の離間距離L
3は、植毛領域12の中心線Bと直交する方向の長さL
4の15〜70%、好ましくは20〜50%、より好ましくは25〜30%の距離である。前記L
3は、詳細には、植毛領域12の中心線Bを挟んで隣接する毛束離間植毛部12aの植毛穴13の最内側同士の距離である。また、前記L
4は、詳細には、中心線Bと直交する方向において、植毛領域12の一方の側端側に位置する植毛穴13の最外側と、他方の側端側に位置する植毛穴13の最外側との距離である。
前記L
3が前記下限値未満であると、毛先の歯頸部への進入性が低下し、前記L
3が前記下限値を超えると、歯垢の掻き取り性が低下する。
【0014】
植毛領域12が設けられるヘッド部10の大きさは、口腔内での操作性等を勘案して決定でき、例えば、幅が10〜15mmとされ、厚さが4〜8mmとされる。
【0015】
毛束11を構成する用毛としては、毛先に向かって漸次その径が小さくなる用毛(テーパー毛)、毛先の丸め部を除いて外径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)等が挙げられる。毛束離間植毛部12aにおいては、毛先の歯頸部への進入性がより高くなり、歯周病予防により効果的になることから、用毛の少なくとも一部がテーパー毛であることが好ましく、用毛の全部がテーパー毛であることがより好ましい。
テーパー毛としては、例えば、両端がテーパー加工されたテーパー毛、片端のみテーパー加工されたテーパー毛、1本の毛に多数の先鋭部が形成されたテーパー毛等が挙げられる。
また、用毛はテーパー毛とストレート毛とを混在させてもよい。例えば、毛束離間植毛部12aの用毛をテーパー毛とし、前部植毛部12bの用毛をストレート毛としてもよい。また、毛束離間植毛部12aにおいて、テーパー毛とストレート毛とを混在させてもよい。
【0016】
用毛の材質は、例えば、6−12ナイロン、6−10ナイロン等のポリアミド;PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル;PP等のポリオレフィン;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等のエラストマー等の合成樹脂材料を用いることができる。
これらの樹脂材料は、複数組み合わせて用いてもよく、中でも、容易にコシを強くでき、歯垢の掻き取り性がより高くなる点では、複数のポリエステルの混合物が好ましく、2〜3種のポリエステルの混合物が好ましい。
複数のポリエステルの混合物としては、例えば、好ましくは、PETおよびポリブチレンテレフタレート(PBT)の混合物が挙げられる。 また、用毛は、芯部と前記芯部の外側に設けられた少なくとも1層以上の鞘部とを有する多重芯構造を有するポリエステル製用毛も好ましい。多重芯構造を有すると、芯部と鞘部とで異なるポリエステルを用いることができるため、機械的物性の調整が容易になる。そのため、コシの強く、歯垢の掻き取り性がより高い用毛を容易に得ることができる。上記芯部と鞘部の用毛に用いることができる異なるポリエステルの組み合わせとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびPETが好ましい
【0017】
用毛の横断面形状は円形が好ましいが、円形に必ずしも限定されるものではなく、歯ブラシ1の目的用途に応じて任意の形状とすることができる。例えば、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等が挙げられる。)、異形(例えば、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等が挙げられる。)等の形状にすることができる。
横断面が円形の場合、コシが強くなって歯垢の掻き取り効果がより高くなることから、用毛の太さ(すなわち、最大径)は6mil以上、10mil以下が好ましい。
ただし、用毛として、多重芯構造を有する用毛やポリエステル混合物からなる用毛を用いてコシを強くした場合には、用毛の太さが6mil未満であっても高い掻き取り効果が得られる。
また、使用感や、刷掃感、清掃効果、耐久性等を考慮して、太さの異なる複数本の用毛を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0018】
用毛の毛丈は、ヘッド部10の植毛面から、大人用で8mm〜13mm、子供用で6mm〜9mmとすることが好ましい。用毛の長さは全て同一でもよいし、同一でなくてもよい。用毛の長さが同一でない毛束としては、毛束の中央が盛り上がるように各用毛の長さを選択した毛束が挙げられる。
【0019】
なお、全ての用毛が同種用毛である必要はない。例えば、毛束離間植毛部12aに植毛された毛束11と、前部植毛部12bに植毛された毛束11とが異なっていてもよい。毛束離間植毛部12aの毛束11の主な役割は歯頸部の歯垢の除去であり、前部植毛部12bの毛束11の主な役割は歯頸部以外の清掃であるため、役割に適した用毛を用いることが好ましい。
【0020】
毛束11の植毛方法としては、平線を打ち込む方法、熱溶着する方法等公知の方法を適用できる。
平線を打ち込む方法では、用毛を複数本束ねて二つ折りにし、その間に平線と呼ばれる抜止め具を挟んで植毛穴に打ち込むことによって、毛束11を各植毛穴13に植毛する。
平線は、植毛穴13の中心部を通り、且つ、植毛穴13を跨ぐように植毛穴13に打設されている。平線の材質としては、例えば、真鍮やステンレス等の金属を挙げることができ、その他にも硬質プラスチックや生分解性プラスチック等を挙げることができる。
平線の長さや幅、厚みは、毛束11や植毛穴13に合わせて任意に調整すればよいが、通常、平線の長さは植毛穴13の直径よりも大きく、平線の幅は植毛穴13の深さよりも小さくされる。また、平線の厚みを調節することによって、毛束11を植毛穴13内に確実に固定して空隙を少なくすることができる。また、平線は、植毛穴13からの抜けを防ぐため、植毛穴13の両側からはみ出した部分の長さの合計が0.3〜0.6mmであることが好ましい。
【0021】
毛束11が植毛される植毛穴13の形状は特に限定されず、例えば、円形、楕円形、四角形等が挙げられる。
植毛穴13の一部または全部の直径は、毛束11の太さをその毛先が歯頸部に進入可能にする穴径であれば、特に限定されないが、1.0〜1.3mmであることが好ましい。
植毛穴13の直径が1.0mm以上であると、平線を打ち込む方法による植毛でも穴ピッチを狭めやすく、疎毛感を感じにくい。一方、植毛穴13の直径が1.3mm以下であれば、歯頸部への進入性をより高くできる。また、植毛穴13の直径が小さくなれば、植毛穴配置の自由度が向上する。
特に、毛束離間植毛部12aにおける植毛穴13の直径は1.0〜1.3mmであることが好ましい。毛束離間植毛部12aの毛束11は、歯頸部への進入を主な目的としている。そのため、毛束離間植毛部12aに形成される植毛穴13の直径を1.0〜1.3mmにすることにより、歯頸部への進入性においてとりわけ高い効果が発揮される。
植毛領域13の緩衝部12c以外の部分での植毛穴13のピッチについては特に制限されない。疎毛感を抑制させたい場合には、植毛領域13の緩衝部12c以外の部分における植毛穴13のピッチを狭くすることが好ましい。
【0022】
図3Aに示すように、緩衝部12cが形成されていない従来の歯ブラシ100を用いてスクラブ法で歯磨きする場合、毛束11を歯面Cに押し当てた際には、毛束11同士が互いに支えあう。そのため、毛束11が撓みにくく、毛先の歯頸部への進入性が低い。
しかし、
図3Bに示すように、毛束のない緩衝部12cが形成された本実施形態の歯ブラシ1を用いてスクラブ法で歯磨きする場合には、毛束離間植毛部12aの毛束11を歯面Cに押し当てた際に、毛束11同士で互いに支えあうことを抑制できる。そのため、毛束が撓みやすく、毛先の歯頸部への進入性が高い。
また、上記のように、緩衝部12cを設けて毛束離間植毛部12aの毛束11を撓みやすくした本実施形態の歯ブラシ1では、全体の植毛穴12のピッチを拡げた歯ブラシではないから、毛束のコシの低下や、疎毛感を抑制でき、歯垢の掻き取り性を充分に確保できる。
さらに、緩衝部12cは植毛領域12の先端側には形成されていないため、毛束11が不足しているような疎毛感を生じず、歯ブラシ1としての使用感に優れる。また、緩衝部12cが形成されていることにより、口腔内清掃時において唾液等の流通が阻害されず、また、使用後に乾燥しやすく、衛生的である。
歯面に接する前部植毛部12bは、緩衝部12cが形成されておらず、毛束11が密に存在しているため、歯面を充分に清掃できる。
また、前部植毛部12bの毛束11が疎に存在すると、前部植毛部12bの毛束11のコシが弱くなるため、口腔内清掃時に歯面への毛束11の押圧力を高めた際にヘッド部10が歯面に接触しやすくなるが、本実施形態の歯ブラシ1では、前部植毛部12bの毛束11が充分に確保されているから、歯面への毛束11の押圧力を高めてもヘッド部10が歯面に接触することを防止できる。歯面への毛束11の押圧力を高めることで、毛束離間植毛部12aの毛束11の歯頸部への進入性をより向上させることができる。
【0023】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
植毛穴13の配列は、格子配列である必要はなく、千鳥配列や非対称な配列、その他どのような配列でもよい。中心軸Bに対して植毛穴13の配列が対称である必要もない。しかし、歯頸部への毛束11の毛先の進入性の点では、中心軸Bに対して植毛穴13の配列が対称であることが好ましい。
上記実施形態では、緩衝部12cは、その長手方向が、植毛領域12におけるヘッド部10の基端側から先端に向かう方向であったが、緩衝部12cの長手方向が植毛領域12の中心線Bと直交する方向でも構わない。
また、緩衝部12cは矩形状でなくてもよい。ただし、緩衝部12cの形状は、緩衝部12cに隣接する植毛穴13の配列により決定される。植毛穴13の配列が、中心軸Bに対して非対称である場合は、緩衝部12cは線対称でない複雑な形状となる。
また、本発明の歯ブラシは電動歯ブラシ用のブラシとして使用してもよい。本発明の歯ブラシを電動歯ブラシ用のブラシに用いても、毛先の歯頸部への進入性と歯垢の掻き取り性とを両立できる上に、使用感に優れる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(実施例1)
植毛領域の幅方向の略中央且つ基端側に矩形状の緩衝部が形成された歯ブラシを作製した。この歯ブラシにおいて、植毛穴配置、植毛穴の直径、植毛穴の数、毛束を構成する用毛の種類、L
1、L
2、L
1/L
2×100、L
3、L
4、およびL
3/L
4×100については、表1に示すとおりとした。また、ヘッド部の基端から先端に向かう方向の植毛穴同士のピッチを0.7mm、用毛の毛丈を10mm、用毛の太さを7.5milとした。
【0025】
(実施例2〜12、比較例1〜4)
植毛穴配置、植毛穴の直径、植毛穴の数、毛束を構成する用毛の種類、L
1、L
2、L
1/L
2×100、L
3、L
4、およびL
3/L
4×100を表1、2、および3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の歯ブラシを作製した。
なお、実施例5で使用した用毛はPBTとPETとの混合物からなっており、その混合比率をPBT:PET=7:3とした。
実施例6で使用した用毛は芯鞘二重構造を有し、芯の半径を76μm、鞘の厚さを19μm、合計の直径を190μmとした。
実施例12における毛束離間植毛部では片端テーパー毛とした。
【0026】
各実施例および各比較例の歯ブラシについて、以下に記載する方法により歯垢除去性および使用感を評価した。評価結果を表1、2および3に示す。
[歯垢除去性]
ライオン株式会社製ブラッシングマシーンを用い、顎模型の歯牙に塗布した人工歯垢の除去率を測定した。上顎第2小臼歯前面と第1大臼歯前面と第2大臼歯前面に人工歯垢を塗布し、各実施例および各比較例の歯ブラシを用い、刷掃条件(ブラッシング力=200g、ストローク=20mm、速度=40mm/秒)で刷掃試験を行った。そして、人工歯垢が除去された部分の面積を画像解析により測定し、歯垢除去率を(歯垢除去面積/歯頸部全面積)×100(%)の式より求めた。表中の数値は、6回の試験の平均値である。
歯垢除去率が高い程、毛束の毛先の歯頸部への進入性と歯垢の掻き取り性の両方に優れることを意味する。毛束の毛先の歯頸部への進入性、または歯垢の掻き取り性の一方のみが優れても、歯垢除去性は高くならない。
[使用感]
7人のテスターが、7日間、各実施例および各比較例の歯ブラシを使用し、ブラッシングした際の歯頸部と歯面の磨き心地について使用感を官能評価にて評価した。評価は1点〜7点の7段階とし、点数が高い程、良好な使用感とした。
【0027】
[総合評価]
上記歯垢除去性および使用感より判定される総合評価は以下の通りである。この総合評価についても表1、2および3に示す。
◎:歯垢除去率が80%以上且つ歯頸部と歯面に対しての使用感が共に4点以上
○:歯垢除去率が70%以上且つ歯頸部と歯面に対しての使用感が共に4点以上
×:歯垢除去率が70%未満、または、歯頸部に対しての使用感が4点未満、または、歯面に対しての使用感が4点未満
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
植毛領域の幅方向の略中央且つ基端側に緩衝部が形成されている実施例1〜12の歯ブラシは、歯垢除去性に優れていた。したがって、毛束の毛先の歯頸部への進入性と歯垢の掻き取り性の両方に優れる。また、実施例1〜12の歯ブラシは、使用感も優れていた。
緩衝部を有さない比較例1の歯ブラシは、歯垢除去性、および歯頸部に対する使用感が不充分であった。
L
1/L
2×100が80.9%の比較例2の歯ブラシは、歯面に対しての使用感が不充分であった。
L
1/L
2×100が23.1%の比較例3の歯ブラシは、歯垢除去性、および歯頸部に対する使用感が不充分であった。
緩衝部が植毛領域の幅方向の略中央に形成されているが、基端側に形成されていない比較例4の歯ブラシは、歯垢除去性、歯頸部および歯面に対する使用感が不充分であった。
これは、比較例4の歯ブラシでは、先端側の毛束と基端側の毛束とが支えになってしまうため、緩衝部を有しても毛束の撓みが抑制されるためと思われる。
【0032】
また、実施例1、4および6の比較より、ストレート毛を用いるよりもテーパー毛を用いる方が高い歯垢除去率が得られ、さらに、テーパー毛でも多重芯構造のテーパー毛を用いると、歯垢除去率がより高くなることがわかった。
また、実施例1、7および8の比較より、植毛穴の直径が小さくなる程、歯垢除去性が良好になることがわかった。
【0033】
(実施例13〜23)
植毛穴配置、植毛穴の直径、L
1、L
2、L
1/L
2×100、L
3、L
4およびL
3/L
4×100を表4に示すようにした歯ブラシを作製した。
【0034】
【表4】