【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、エナメル質に浸透する浸透剤であって、以下の式を用いて得られる浸透係数の値が50cm/sより大きい、又は50cm/sより大きい低粘度の光硬化性樹脂を含む浸透剤を確認する方法を用いて解決することができる。
【数3】
[式2]
ここで、
PCは、浸透係数、
γは、液体樹脂の空気に対する表面張力、
θは、液体樹脂のエナメル質に対する接触角、
ηは、液体樹脂の動粘度を表す。
【0020】
一の態様として、本発明の方法は、
(a)浸透剤候補(potential infiltrant)を準備し、
(b)上記浸透剤候補の接触角、表面張力、そして動粘度の値を決定し、
(c)決定された上記(b)の値に式2を適用し上記浸透剤候補の浸透係数を決定する。
【0021】
一態様として、本発明の方法は、さらに、
(d)50cm/sより大きい浸透係数を有する浸透剤候補を選定する。
【0022】
本発明の好ましい態様として、(d)の選定が、50cm/sより大きい浸透係数を有する浸透剤候補を、浸透係数が50cm/sより小さい他の浸透剤候補から分けるものである。
【0023】
別の態様として、本発明は、さらに、
(d)上記浸透剤候補の硬化能力を評価するものである。
【0024】
さらに別の態様として、本発明の方法は、
(d)上記浸透剤候補の硬化後のコンシステンシーを評価するものである。
【0025】
さらに別の態様として、本発明の方法は、
(d)上記浸透剤候補の浸透指数を決定するものである。
【0026】
本発明の目的は、さらに、エナメル質に浸透する浸透剤を確認する方法を用いて確認された浸透剤であって、以下の式を用いて得られる浸透係数の値が50cm/sより大きい、又は50cm/sより大きい低粘度の光硬化性樹脂を含む、浸透剤を用いることにより解決することができる。
【数4】
[式2]
ここで、
PCは、浸透係数、
γは、液体樹脂の空気に対する表面張力、
θは、液体樹脂のエナメル質に対する接触角、
ηは、液体樹脂の動粘度を表す。
【0027】
本発明の目的は、さらに、ビス-GMA:2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス-PMA:プロポキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-EMA:エトキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-MA:ビスフェノール-A-ジメタクリレート、UDMA:1,6-ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、UPGMA:ウレタンビスフェノール-A-ジメタクリレート、TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、TEGMMA:トリエチレングリコールモノメタクリレート、TEEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート、DEGDMA:ジエチレングリコールジメタクリレート、EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、DDDMA:1,10-デカンジオールジメタクリレート、HDDMA:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、PDDMA:1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、BDDMA:1,4-ブタンジオールジメタクリレート、MBDDMA 1/2:BDDMA-メタノール付加物 1/2、DBDDMA 1/2:BDDMA-自己付加物 1/2、PRDMA:1,2-プロパンジオールジメタクリレート、DMTCDDA:ビス(アクリルオキシメチル)トリクロデカン、BEMA:ベンジルメタクリレート、SIMA:3-トリメトキシシランプロピルメタクリレート、SYHEMA 1/2:1/2-シクロヘキセンメタクリレート、TYMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート、MMA:メチルメタクリレート、MAA:メタクリル酸、そしてHEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、から成る群から選択された少なくとも1種の低粘度樹脂を含む浸透剤により解決できる。
【0028】
一態様において、浸透剤は、さらに、CQ:カンファーキノン(camphoroquinone)、BL:ベンジル、DMBZ:ジメトキシベンゾイン、CEMA:N-(2-シアノエチル)N-メチルアニリン、DMABEE:4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、DMABBEE:4-N,N-ジエチルアミノ安息香酸ブチルエトキシエステル、DMABEHE:4-N,N-ジエチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、DMAEMA:N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、DEMAEEA:N,N-(ビス-エチルメタクリレート)-2-エトキエチルアミン、HMBP:2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、TINP:2(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、TIN326:チヌビン(Tinuvin)326、TIN350:チヌビン350、TIN328:チヌビン328、HQME:ヒドロキシキノンモノメチルエステル、BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、MBP:2,2-メチレン-ビス(6-t-ブチルフェノール)、MBEP:2,2-メチレンビス(6-t-ブチル-4-エチルフェノール)、BPE:安息香酸フェニルエステル、MMMA:メチルメタクリレートメタノール付加物、CA:カンファー無水物、HC 1/2:2(3)-エンド−ヒドロキシエピカンファー、TPP:トリフェニルホスファン(triphenyl phosphane)、TPSb:トリフェニルスチバン(triphenyl stibane)、DMDDA:ジメチルドデシルアミン、DMTDA:ジメチルテトラデシルアミン、DCHP:ジシクロヘキシルフタレート、DEHP:ビス-(2-エチルヘキシル)フタレート、そしてホルムアルデヒド、からなる群から選択された添加剤を含むことができる。
【0029】
一態様において、浸透剤は、50cm/sより大きい浸透係数を有しており、あるいは50cm/sより大きい浸透係数を有する低粘度の光硬化性樹脂を含むものである。
【0030】
本発明の目的は、少なくとも1種の樹脂又は低粘度樹脂、好ましくは、歯科用複合樹脂、歯科用接着剤、及び/又は裂溝用充填樹脂から成る群から選択された少なくとも1種の樹脂又は低粘度樹脂を含む浸透剤であって、50cm/sより大きい浸透係数を有する浸透剤、あるいは50cm/sより大きい浸透係数を有する低粘度の光硬化性樹脂を含む浸透剤を用いることよっても解決することができる。
【0031】
浸透剤の一態様として、樹脂は、メタクリレート及び/又はジメタクリレート及び/又はトリメタクリレートから成る群から選択することができ、好ましくは、ビス-GMA:2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス-PMA:プロポキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-EMA:エトキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-MA:ビスフェノール-A-ジメタクリレート、UDMA:1,6-ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、UPGMA:ウレタンビスフェノール-A-ジメタクリレート、TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、TEGMMA:トリエチレングリコールモノメタクリレート、TEEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート、DEGDMA:ジエチレングリコールジメタクリレート、EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、DDDMA:1,10-デカンジオールジメタクリレート、HDDMA:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、PDDMA:1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、BDDMA:1,4-ブタンジオールジメタクリレート、MBDDMA 1/2:BDDMA-メタノール付加物 1/2、DBDDMA 1/2:BDDMA-自己付加物 1/2、PRDMA:1,2-プロパンジオールジメタクリレート、DMTCDDA:ビス(アクリルオキシメチル)トリクロデカン、BEMA:ベンジルメタクリレート、SIMA:3-トリメトキシシランプロピルメタクリレート、SYHEMA 1/2:1/2-シクロヘキセンメタクリレート、TYMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート、MMA:メチルメタクリレート、MAA:メタクリル酸、そしてHEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、から成る群から選択することができる。
【0032】
好ましい態様として、メタクリレートは、酸基を有するモノマー、好ましくは、カルボキシル基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基又はホウ酸基を有するモノマーを含む。その一例は、MDP:10-メタクロイルデシル二水素リン酸塩である。
【0033】
好ましい態様では、浸透剤は、さらに1種以上の硬化用の添加剤を含む。
【0034】
その添加剤は、1成分浸透剤又は2成分浸透剤を調製する時に添加することができる。添加剤は、光硬化型又は自己硬化型の浸透剤に用いることができる。
【0035】
好ましい態様として、添加剤は、CQ:カンファーキノン、BL:ベンジル、DMBZ:ジメトキシベンゾイン、CEMA:N-(2-シアノエチル)N-メチルアニリン、DMABEE:4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、DMABBEE:4-N,N-ジエチルアミノ安息香酸ブチルエトキシエステル、DMABEHE:4-N,N-ジエチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、DMAEMA:N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、DEMAEEA:N,N-(ビス-エチルメタクリレート)-2-エトキエチルアミン、HMBP:2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、TINP:2(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、TIN326:チヌビン(Tinuvin)326、TIN350:チヌビン350、TIN328:チヌビン328、HQME:ヒドロキシキノンモノメチルエステル、BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、MBP:2,2-メチレン-ビス(6-t-ブチルフェノール)、MBEP:2,2-メチレンビス(6-t-ブチル-4-エチルフェノール)、BPE:安息香酸フェニルエステル、MMMA:メチルメタクリレートメタノール付加物、CA:カンファー無水物、HC 1/2:2(3)-エンド−ヒドロキシエピカンファー、TPP:トリフェニルホスファン(triphenyl phosphane)、TPSb:トリフェニルスチバン(triphenyl stibane)、DMDDA:ジメチルドデシルアミン、DMTDA:ジメチルテトラデシルアミン、DCHP:ジシクロヘキシルフタレート、DEHP:ビス-(2-エチルヘキシル)フタレート、そしてホルムアルデヒド、からなる群から選択することができる。
【0036】
これらの添加剤は、光硬化型の浸透剤に用いることができる。
【0037】
別の好ましい態様として、添加剤は、有機酸又はその塩、好ましくは、スルフィン酸(sulfinic acids)とその塩、バルビツル酸とその塩、そしてバルビツル酸誘導体から成る群から選択することができる。
【0038】
スルフィン酸塩の例としては、リチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩又はバリウム塩等のアルカリ土類金属塩、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アニリン、トルイジン、フェニルアミン又はキシレンジアミン基を有する一級アミンや、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、ジフェニルアミン、又はN-メチルトルイジン基を有する二級アミンや、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)アニリン、N,N-ジエチルアミン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジエチルトルイジン又はN,N-(β-ヒドロキシエチル)トルイジン基を有する三級アミンや、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム又はトリメチルベンジルアンモニウム塩等を含むアンモニウム塩、を挙げることができる。
【0039】
好ましい態様では、スルフィン酸は、パラフィン系炭化水素系スルフィン酸、脂環系スルフィン酸、芳香族系スルフィン酸から成る群から選択されたものを用いることができる。
【0040】
特に好ましい態様としては、パラフィン系炭化水素系スルフィン酸は、エタンスルフィン酸、プロパンスルフィン酸、ヘキサンスルフィン酸、オクタンスルフィン酸、デカンスルフィン酸、そしてドデカンスルフィン酸から成る群から選択される。
【0041】
別の特に好ましい態様としては、脂環系硫酸はシクロヘキサンスルフィン酸又はシクロオクタンスルフィン酸である。
【0042】
別の特に好ましい態様としては、芳香族系スルフィン酸は、ベンゼンスルフィン酸、o-トルエンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロロベンゼンスルフィン酸、そしてナフタレンスルフィン酸から成る群から選択される。
【0043】
ベンゼンスルフィン塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、ブチルアミン塩、アニリン塩、トルイジン塩、フェニルジアミン塩、ジエチルアミン塩、ジフェニルアミン塩、トリエチルアミン塩、アンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、そしてトリメチルベンジルアンモニウム塩がある。
【0044】
o-トルエンスルフィン酸塩の例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、シクロヘキシルアミン塩、アニリン塩、アンモニウム塩、そしてテトラエチルアンモニウム塩がある。
【0045】
p-トルエンスルフィン酸塩の例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、エチルアミン塩、トルイジン塩、N-メチルアニリン塩、ピリジン塩、アンモニウム塩、そしてテトラエチルアンモニウム塩がある。
【0046】
β−ナフタレンスルフィン酸塩の例としては、ナトリウム塩、ストロンチウム塩、トリエチルアミン塩、N-メチルトルイジン塩、アンモニウム塩、そしてトリメチルベンジルアンモニウム塩がある。
【0047】
最も好ましい芳香族系スルフィン酸塩は、ベンゼンスルフィン酸ナトリウムとトルエンスルフィン酸ナトリウムである。
【0048】
より好ましい態様として、バルビツル酸は、1,3,5-トリメチルバルビツル酸、1,3,5-トリエチルバルビツル酸、1,3-ジメチル-5-エチルバルビツル酸、1,5-ジメチルバルビツル酸、1-メチル-5-エチルバルビツル酸、1-メチル-5-プロピルバルビツル酸、5-エチルバルビツル酸、5-プロピルバルビツル酸、5-ブチルバルビツル酸、5-メチル-1-ブチルバルビツル酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツル酸、そして1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツル酸から成る群から選択される。
【0049】
さらに、別の好ましい態様として、添加剤が、過硫酸塩と有機パーオキサイドから成る群から選択される。
【0050】
過硫酸塩と有機パーオキサイドは、浸透剤を使用する前に、予め浸透剤に混ぜておくことが好ましい。
【0051】
有機パーオキサイドの例としては、ジアセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジカプリルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、BPO、ジベンゾイルパーオキサイド、p,p'-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p,p'-ジメトキシベンゾイルパーオキサイド、p,p'-ジメチルベンゾイルパーオキサイド、p,p'-ジニトロジベンゾイルパーオキサイドがある。
【0052】
浸透剤の好ましい態様として、低粘度の樹脂は、22%のビス-GMA:2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、67%のTEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、10%のエタノール、>1%のDABE:エチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、>1%のカンファーキノンを含んでいる。
【0053】
本発明の目的は、必要とされている対象に対しう蝕欠損の予防及び/又は治療を行うために使用される医療用品を製造するために、本発明の浸透剤を用いることにより解決することができる。
【0054】
本発明の目的は、必要とされている対象に対しう蝕欠損の予防及び/又は治療を行うために使用される医療用品を製造するために、塩酸を使用することによっても解決することができ、医療用品は、約1〜30%(w/w)の塩酸、好ましくは約5〜15%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0055】
本発明の目的は、エナメル質に浸透させるためのキットによって解決することができ、そのキットは、
(a)塩酸を含む状態調節剤と、
(b)浸透剤、とを含むものである。
【0056】
一態様として、キットは、さらに、
(c)高粘度の光硬化性モノマーの混合物、を含む。
【0057】
キットの一態様として、状態調節剤(a)は、約1〜30%(w/w)の塩酸、好ましくは約5〜15%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0058】
キットの一態様として、浸透剤(b)は、本発明の充填剤を用いることができる。
【0059】
一態様として、キットは、さらに、少なくとも1つの塗布用片、及び/又は少なくとも1つの洗浄用片、及び/又は分離手段を有している。
【0060】
本発明の目的は、エナメル質に浸透させるためのキットによっても解決することができ、そのキットは、
(a)塩酸を含む状態調節剤を含む塗布用片と、
(b)浸透剤を含む塗布用片と、そして、
(c)少なくとも1つの洗浄用片と、を含むものである。
【0061】
一態様として、キットは、さらに、
(d)高粘度の光硬化性モノマー混合物を含む塗布用片を含むものである。
【0062】
一態様として、キットは、さらに、
(e)分離手段を含むものである。
【0063】
キットの一態様として、状態調節剤(a)は、約1〜30%(w/w)の塩酸、好ましくは約5〜15%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0064】
キットの一態様として、浸透剤(b)には、本発明の浸透剤を用いることができる。
【0065】
本発明の目的は、エナメル質に浸透させる方法により解決することができ、その方法は、
(a)浸透させるエナメル質の領域を、塩酸を含む状態調節剤に曝し、
(b)工程(a)で状態調節されたエナメル質を浸透剤に曝し、そして、
(c)浸透剤を硬化させることを含むものである。
【0066】
一態様として、状態調節剤は、約1〜30%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0067】
一態様として、状態調節剤は、約5〜15%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0068】
別の態様として、状態調節剤は、さらに、グリセロール、高分散された二酸化ケイ素、そしてメチレンブルーから成る群から選択された添加剤を含むことができる。
【0069】
一態様として、浸透剤は少なくとも1種の低粘度の樹脂を含むこともできる。
【0070】
好ましい態様として、低粘度の樹脂は、ビス-GMA:2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス-PMA:プロポキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-EMA:エトキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-MA:ビスフェノール-A-ジメタクリレート、UDMA:1,6-ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、UPGMA:ウレタンビスフェノール-A-ジメタクリレート、TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、TEGMMA:トリエチレングリコールモノメタクリレート、TEEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート、DEGDMA:ジエチレングリコールジメタクリレート、EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、DDDMA:1,10-デカンジオールジメタクリレート、HDDMA:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、PDDMA:1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、BDDMA:1,4-ブタンジオールジメタクリレート、MBDDMA 1/2:BDDMA-メタノール付加物 1/2、DBDDMA 1/2:BDDMA-自己付加物 1/2、PRDMA:1,2-プロパンジオールジメタクリレート、DMTCDDA:ビス(アクリルオキシメチル)トリクロデカン、BEMA:ベンジルメタクリレート、SIMA:3-トリメトキシシランプロピルメタクリレート、SYHEMA 1/2:1/2-シクロヘキセンメタクリレート、TYMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート、MMA:メチルメタクリレート、MAA:メタクリル酸、そしてHEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、から成る群から選択することができる。
【0071】
特に好ましい態様として、低粘度の樹脂は、ポリメタクリル酸とその誘導体とから成る群から選択することができる。
【0072】
最も好ましい態様として、低粘度の樹脂は、ビス-GMA:2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、UDMA:1,6-ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、そしてHEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、から成る群から選択することができる。
【0073】
さらに別の態様として、浸透剤は、さらに、CQ:カンファーキノン、BL:ベンジル、DMBZ:ジメトキシベンゾイン、CEMA:N-(2-シアノエチル)N-メチルアニリン、DMABEE:4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、DMABBEE:4-N,N-ジエチルアミノ安息香酸ブチルエトキシエステル、DMABEHE:4-N,N-ジエチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、DMAEMA:N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、DEMAEEA:N,N-(ビス-エチルメタクリレート)-2-エトキエチルアミン、HMBP:2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、TINP:2(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、TIN326:チヌビン(Tinuvin)326、TIN350:チヌビン350、TIN328:チヌビン328、HQME:ヒドロキシキノンモノメチルエステル、BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、MBP:2,2-メチレン-ビス(6-t-ブチルフェノール)、MBEP:2,2-メチレンビス(6-t-ブチル-4-エチルフェノール)、BPE:安息香酸フェニルエステル、MMMA:メチルメタクリレートメタノール付加物、CA:カンファー無水物、HC 1/2:2(3)-エンド−ヒドロキシエピカンファー、TPP:トリフェニルホスファン(triphenyl phosphane)、TPSb:トリフェニルスチバン(triphenyl stibane)、DMDDA:ジメチルドデシルアミン、DMTDA:ジメチルテトラデシルアミン、DCHP:ジシクロヘキシルフタレート、DEHP:ビス-(2-エチルヘキシル)フタレート、そしてホルムアルデヒド、からなる群から選択された添加剤を含むことができる。
【0074】
本発明の目的は、必要とされる対象に対しう蝕欠損の予防及び/又は治療を行うために、本発明のエナメル質に浸透させる方法を用いることにより解決することができる。
【0075】
一態様として、その対象は哺乳動物、好ましくは人間である。
【0076】
本発明の目的は、エナメル質に浸透させるためのキットによっても解決することができ、そのキットは、
(a)塩酸を含む状態調節剤と、そして、
(b)浸透剤と、を含むものである。
【0077】
一態様として、状態調節剤は、約1〜30%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0078】
好ましい態様として、状態調節剤は、約5〜15%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0079】
別の態様として、状態調節剤は、さらに、グリセロール、高分散された二酸化ケイ素、そしてメチレンブルーから成る群から選択された添加剤を含むことができる。
【0080】
一態様として、浸透剤は少なくとも1種の低粘度の樹脂を含む。
【0081】
好ましい態様として、低粘度の樹脂は、ビス-GMA:2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス-PMA:プロポキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-EMA:エトキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-MA:ビスフェノール-A-ジメタクリレート、UDMA:1,6-ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、UPGMA:ウレタンビスフェノール-A-ジメタクリレート、TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、TEGMMA:トリエチレングリコールモノメタクリレート、TEEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート、DEGDMA:ジエチレングリコールジメタクリレート、EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、DDDMA:1,10-デカンジオールジメタクリレート、HDDMA:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、PDDMA:1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、BDDMA:1,4-ブタンジオールジメタクリレート、MBDDMA 1/2:BDDMA-メタノール付加物 1/2、DBDDMA 1/2:BDDMA-自己付加物 1/2、PRDMA:1,2-プロパンジオールジメタクリレート、DMTCDDA:ビス(アクリルオキシメチル)トリクロデカン、BEMA:ベンジルメタクリレート、SIMA:3-トリメトキシシランプロピルメタクリレート、SYHEMA 1/2:1/2-シクロヘキセンメタクリレート、TYMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート、MMA:メチルメタクリレート、MAA:メタクリル酸、そしてHEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、から成る群から選択することができる。
【0082】
特に好ましい態様として、低粘度の樹脂は、ポリメタクリル酸とその誘導体とから成る群から選択することができる。
【0083】
最も好ましい態様として、低粘度の樹脂は、ビス-GMA:2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、UDMA:1,6-ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、そしてHEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、から成る群から選択することができる。
【0084】
さらに別の態様として、浸透剤は、さらに、CQ:カンファーキノン、BL:ベンジル、DMBZ:ジメトキシベンゾイン、CEMA:N-(2-シアノエチル)N-メチルアニリン、DMABEE:4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、DMABBEE:4-N,N-ジエチルアミノ安息香酸ブチルエトキシエステル、DMABEHE:4-N,N-ジエチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、DMAEMA:N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、DEMAEEA:N,N-(ビス-エチルメタクリレート)-2-エトキエチルアミン、HMBP:2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、TINP:2(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、TIN326:チヌビン(Tinuvin)326、TIN350:チヌビン350、TIN328:チヌビン328、HQME:ヒドロキシキノンモノメチルエステル、BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、MBP:2,2-メチレン-ビス(6-t-ブチルフェノール)、MBEP:2,2-メチレンビス(6-t-ブチル-4-エチルフェノール)、BPE:安息香酸フェニルエステル、MMMA:メチルメタクリレートメタノール付加物、CA:カンファー無水物、HC 1/2:2(3)-エンド−ヒドロキシエピカンファー、TPP:トリフェニルホスファン(triphenyl phosphane)、TPSb:トリフェニルスチバン(triphenyl stibane)、DMDDA:ジメチルドデシルアミン、DMTDA:ジメチルテトラデシルアミン、DCHP:ジシクロヘキシルフタレート、DEHP:ビス-(2-エチルヘキシル)フタレート、そしてホルムアルデヒド、からなる群から選択された添加剤を含むことができる。
【0085】
本発明の目的は、必要とされる対象に対しう蝕欠損の予防及び/又は治療を行うために、本発明のエナメル質に浸透させる方法を用いることにより解決することができる。
【0086】
一態様として、その対象は哺乳動物、好ましくは人間である。
【0087】
本発明の目的は、キットを作製する方法によっても解決することができる。
【0088】
本発明の目的は、う蝕欠損の予防及び/又は治療のための医療用品の製造のために塩酸を用いることによっても解決することができる。
【0089】
一態様として、医療用品は、約1〜30%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0090】
好ましい態様として、医療用品は、約5〜15%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0091】
別の態様として、医療用品は、さらに、グリセロール、高分散された二酸化ケイ素、そしてメチレンブルーから成る群から選択された添加剤を含むことができる。
【0092】
本発明の目的は、医療用品を製造する方法によっても解決することができる。
【0093】
本発明の目的は、少なくとも1種の低粘度の樹脂を含む充填剤によっても解決することができる。
【0094】
一態様として、低粘度の樹脂は、ビス-GMA:2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス-PMA:プロポキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-EMA:エトキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-MA:ビスフェノール-A-ジメタクリレート、UDMA:1,6-ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、UPGMA:ウレタンビスフェノール-A-ジメタクリレート、TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、TEGMMA:トリエチレングリコールモノメタクリレート、TEEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート、DEGDMA:ジエチレングリコールジメタクリレート、EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、DDDMA:1,10-デカンジオールジメタクリレート、HDDMA:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、PDDMA:1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、BDDMA:1,4-ブタンジオールジメタクリレート、MBDDMA 1/2:BDDMA-メタノール付加物 1/2、DBDDMA 1/2:BDDMA-自己付加物 1/2、PRDMA:1,2-プロパンジオールジメタクリレート、DMTCDDA:ビス(アクリルオキシメチル)トリクロデカン、BEMA:ベンジルメタクリレート、SIMA:3-トリメトキシシランプロピルメタクリレート、SYHEMA 1/2:1/2-シクロヘキセンメタクリレート、TYMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート、MMA:メチルメタクリレート、MAA:メタクリル酸、そしてHEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、から成る群から選択することができる。
【0095】
特に好ましい態様として、低粘度の樹脂は、ポリメタクリル酸とその誘導体とから成る群から選択することができる。
【0096】
最も好ましい態様として、低粘度の樹脂は、ビス-GMA:2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、UDMA:1,6-ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン、TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、そしてHEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、から成る群から選択することができる。
【0097】
さらに別の態様として、浸透剤は、さらに、CQ:カンファーキノン、BL:ベンジル、DMBZ:ジメトキシベンゾイン、CEMA:N-(2-シアノエチル)N-メチルアニリン、DMABEE:4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、DMABBEE:4-N,N-ジエチルアミノ安息香酸ブチルエトキシエステル、DMABEHE:4-N,N-ジエチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、DMAEMA:N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、DEMAEEA:N,N-(ビス-エチルメタクリレート)-2-エトキエチルアミン、HMBP:2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、TINP:2(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、TIN326:チヌビン(Tinuvin)326、TIN350:チヌビン350、TIN328:チヌビン328、HQME:ヒドロキシキノンモノメチルエステル、BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、MBP:2,2-メチレン-ビス(6-t-ブチルフェノール)、MBEP:2,2-メチレンビス(6-t-ブチル-4-エチルフェノール)、BPE:安息香酸フェニルエステル、MMMA:メチルメタクリレートメタノール付加物、CA:カンファー無水物、HC 1/2:2(3)-エンド−ヒドロキシエピカンファー、TPP:トリフェニルホスファン(triphenyl phosphane)、TPSb:トリフェニルスチバン(triphenyl stibane)、DMDDA:ジメチルドデシルアミン、DMTDA:ジメチルテトラデシルアミン、DCHP:ジシクロヘキシルフタレート、DEHP:ビス-(2-エチルヘキシル)フタレート、そしてホルムアルデヒド、からなる群から選択された添加剤を含むことができる。
【0098】
本発明の目的は、浸透剤を調製する方法によっても解決することができる。
【0099】
本発明の目的は、う蝕欠損の予防及び/又は治療のための医療用品の製造のために、浸透剤、好ましくは本発明の浸透剤を用いることによっても解決することができる。
【0100】
本発明の目的は、医療用品を製造する方法によっても解決することができる。
【0101】
本発明の目的は、エナメル質に浸透する浸透剤であって、以下の式を用いて得られる浸透係数の値が50cm/sより大きい、又は50cm/sより大きい低粘度の光硬化性樹脂を含む、浸透剤を確認する方法を用いて解決することができる。
【数5】
[式2]
ここで、
PCは、浸透係数、
γは、液体樹脂の空気に対する表面張力、
θは、液体樹脂のエナメル質に対する接触角、
ηは、液体樹脂の動粘度を表す。
【0102】
本発明の目的は、さらに、エナメル質に浸透する浸透剤であって、上記の式を用いて得られる浸透係数の値が50cm/sより大きい、又は50cm/sより大きい低粘度の光硬化性樹脂を含む浸透剤を確認する方法を用いて確認した浸透剤を用いることにより解決することができる。
【0103】
本発明の目的は、さらに、50cm/sより大きい浸透係数を有する浸透剤、あるいは50cm/sより大きい浸透係数を有する低粘度の光硬化性樹脂を含む浸透剤を用いることよっても解決することができる。
【0104】
好ましい態様として、50cm/sより大きい浸透係数を有することは、上記の式(2)を用いて決定する。
【0105】
好ましい態様として、低粘度の樹脂は、22%のビス-GMA:2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、67%のTEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート、10%のエタノール、>1%のDABE:エチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、>1%のカンファーキノンを含んでいる。
【0106】
本発明の目的は、本発明の浸透剤を用いてう蝕欠損を予防及び/又は治療する方法により解決することができる。
【0107】
本発明の目的は、う蝕欠損の予防及び/又は治療を行うために使用される医療用品を製造するために、本発明の浸透剤を用いることにより解決することができる。
【0108】
本発明の目的は、必要とされる対象に対しう蝕欠損の予防及び/又は治療を行うために、エナメル質に浸透させる方法により解決することができ、その方法は、
(a)浸透させるエナメル質の領域を、塩酸を含む状態調節剤に曝し、
(b)工程(a)で状態調節されたエナメル質を、浸透係数の値が50cm/sより大きい、又は50cm/sより大きい低粘度の光硬化性樹脂を含む、浸透剤に曝し、そして、
(c)浸透剤を硬化させることを含むものである。
【0109】
一態様として、状態調節剤は、約1〜30%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0110】
好ましくは、状態調節剤は、約5〜15%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0111】
一態様として、その対象は哺乳動物、好ましくは人間である。
【0112】
本発明の目的は、エナメル質に浸透させるためのキットによって解決することができ、そのキットは、
(a)塩酸を含む状態調節剤と、
(b)浸透係数の値が50cm/sより大きい、又は50cm/sより大きい低粘度の光硬化性樹脂を含む、浸透剤、とを含むものである。
【0113】
一態様として、状態調節剤は、約1〜30%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0114】
好ましくは、状態調節剤は、約5〜15%(w/w)の塩酸を含むゲルをベースとしている。
【0115】
一態様として、キットは、さらに、塩酸及び/又は浸透剤の塗布装置を含む。
【0116】
ここで用いている「曝す」という言葉は、状態調節剤又は浸透剤をエナメル質に適用するためのあらゆる操作を意味するものである。通常、曝露は、簡単な適用方法、例えば塗布を用いて行うことができる。そのために、キットは、さらに、適用を実際するのに適した装置、例えば、ブラシ、スポンジ、ティッシュ、ピペット、シリンジ等を1以上有していても良い。
【0117】
本発明では、浸透剤を適用する前に状態調節剤を取り除くこともできる。そのため、キットは、その目的のために用いる装置をさらに有していても良い。
【0118】
また、本発明では、余分は浸透剤を取り除くこともできる。そのため、キットは、その目的のために用いる装置をさらに有していても良い。
【0119】
状態調節剤の適用時間は、約60〜300秒が好ましくは、さらに好ましくは約90〜120秒である。
【0120】
浸透剤の適用時間は最大約120秒が好ましく、さらに好ましくは約120秒である。
【0121】
最も好ましくは、浸透剤の浸透係数が50cm/sより大きく、浸透剤の適用時間が60秒より短いことである。
【0122】
浸透剤は、2回適用することが好ましい。
【0123】
「浸透されるエナメル質の領域」は、う蝕欠損を含む領域である。しかし、そのような欠損を予防するために、すなわち、歯の掃除を行うと、すべてのう蝕による損傷が、この領域には存在しないこともある。
【0124】
状態調節剤は、水溶液をベースとすることもでき、あるいは石膏に埋め込むこともできる。
【0125】
本発明においては、状態調節剤は、さらに、最大約40%(w/w)、好ましくは約20%〜37%(w/w)のリン酸を含んでも良い。
【0126】
「浸透剤の硬化」は、光重合で行うことが好ましい。
【0127】
隣接面に近づくために、歯列矯正用弾性材を用いてう蝕歯の歯間を拡げることができる。この技術は、診断目的のために良く知られている。
【0128】
本発明の樹脂は、歯科用接着剤及び/又は裂溝充填材としても使用することができる。
【0129】
上記の樹脂は、別々にあるいは組み合わせて用いることにより、本発明の浸透剤の成分として用いることができる。
【0130】
浸透剤の「浸透係数」という言葉は、液体(浸透剤)が多孔質固体(う蝕欠損)に速やかに浸透する能力を指すものである。それは、以下の物理的特性、すなわち、空気に対する表面張力(γ)、固体に対する接触角(θ)、そして動粘度(η)を含むものである(式2を参照)。
【0131】
浸透剤の(空気に対する)表面張力は、液体−気体界面に作用する力を指し、表面上の薄膜に適用される。液体分子への周りからの引力が減り、液体表面の分子間の引力が増大するためである。
【0132】
浸透剤の(エナメル質に対する)「接触角θ」という言葉は、液滴(浸透剤)と固体表面(エナメル質)の間の界面における接線のなす角を指す。
【0133】
浸透剤の「動粘度η」という言葉は、所定の力を加えた時の液体の流動抵抗の指標である。動粘度は、単位距離の厚さの液体を挟んだ一の垂直面を別の垂直面に対し単位速度(速度勾配又は剪断速度)で移動させる時に必要な、単位面積当たりの接線方向の力(剪断又は接線応力)である。
【0134】
結論として、本発明は、浸透剤を用いることにより、初期又は進行中のエナメル質の欠損等のエナメル質の欠損に対し、優れた浸透能を有する。従来の技術では、エナメル質を閉塞させる方法を用いているが、「見かけ上無傷の表面層」のみを閉塞させるだけで、樹脂が十分に浸透していないう蝕部分が残ってしまうという危険性がある。本発明の方法及び手段、例えば、状態調節剤及び/又は浸透剤又は低粘度の樹脂を用いることにより、欠損部分を閉塞させることが可能となる。
【0135】
まず、浸透させるべきエナメル質の領域を、塩酸を含む状態調節剤に曝すことにより、「見かけ上無傷の表面層」を除去して、う蝕領域への浸透剤の浸透を大きく促進させることができる。に次に、上記の樹脂が低粘度であるので、浸透剤は速やかに欠損穴に到達し、それらを閉塞する。
【0136】
また、本発明は、浸透剤の浸透係数(PC)を決定する方法を提供するものであり、それにより、優れた浸透特性と使用可能な適用時間とを有する浸透剤の確認及び調製を可能とする。
【0137】
本発明の方法及び手段を用いることにより、エナメル質欠損の侵襲治療を不要にしたりあるいは遅らせることができる。閉塞方法が、非侵襲的であるので、患者の承諾も非常に得やすくなる。本発明の方法は、低コストで実施することができる。最後に、本発明の方法は、純然たる歯の掃除と、う蝕の侵襲的治療との間を結ぶ治療的なリンクとなるものである。