特許第5909225号(P5909225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909225
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】テトラセンの代替物
(51)【国際特許分類】
   C07D 257/06 20060101AFI20160412BHJP
   C06B 43/00 20060101ALI20160412BHJP
   C06C 7/00 20060101ALI20160412BHJP
   F42B 3/10 20060101ALN20160412BHJP
   F42C 19/10 20060101ALN20160412BHJP
【FI】
   C07D257/06 ZCSP
   C06B43/00
   C06C7/00
   !F42B3/10
   !F42C19/10
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-506292(P2013-506292)
(86)(22)【出願日】2011年4月21日
(65)【公表番号】特表2013-530932(P2013-530932A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】US2011033356
(87)【国際公開番号】WO2012003031
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2013年10月31日
(31)【優先権主張番号】61/326,768
(32)【優先日】2010年4月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/370,563
(32)【優先日】2010年8月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507075565
【氏名又は名称】パシフィック・サイエンティフィック・エナジェティック・マテリアルズ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(72)【発明者】
【氏名】フロナバーガー, ジョン, ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, マイケル, ディー.
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04023352(US,A)
【文献】 仏国特許発明第02897864(FR,B1)
【文献】 英国特許第00412460(GB,B)
【文献】 仏国特許発明第01582964(FR,B1)
【文献】 英国特許第00201009(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D255/00−259/00
C06B 43/00
C06C 7/00
F42B 3/10
F42C 19/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式
【化1】
で表される化合物を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が下記化学式
【化2】
で表される化合物の代用として用いられる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物を含む雷管用組成物。
【請求項4】
下記化学式
【化3】
で表される化合物の単塩又は錯体を含む組成物。
【請求項5】
前記組成物が下記化学式
【化4】
で表される化合物の代用として用いられる請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
下記化学式
【化5】
で表される化合物。
【請求項7】
下記化学式
【化6】
で表される化合物の代用として用いられる請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項6に記載の化合物を含む雷管用組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の化合物の単塩又は錯体。
【請求項10】
下記化学式
【化7】
で表される化合物を調製する方法であって、
(a)酸と下記化学式
【化8】
で表される化合物を混合して懸濁液を作ることと、
(b)前記懸濁液に亜硝酸塩を添加すること
を含む化合物を調製する方法。
【請求項11】
前記酸が硝酸、硫酸、過塩素酸、又は塩酸である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記亜硝酸塩が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸リチウム、又は亜硝酸カリウムである請求項10に記載の方法。
【請求項13】
さらに前記懸濁液を撹拌することを含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記懸濁液が少なくとも4時間撹拌される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記懸濁液が白い外観になるまで前記懸濁液を撹拌する請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照情報:本願は、2010年4月22日に出願された、「テトラセンの代替物」と題する米国仮特許出願第61/326,768号、及び2010年8月4日に出願された、「テトラセンの代替物」と題する米国仮特許出願第61/370,563号の利益を主張する。各々の開示全てをここに援用して本文の記載の一部とする。
【0002】
本発明は爆薬に関し、より具体的には、雷管用増感剤の調製に関する。
【背景技術】
【0003】
1‐アミノ‐1(1H‐テトラゾール‐5‐イル)‐アゾ‐グアニジンハイドレート(「テトラセン」、1、スキーム1)は、軍需装置において、撃発式及び刺突式の両方に用いられる雷管用混合物の増感剤として広く用いられている。
【0004】
【化1】
雷管用混合物の他の成分と比べて、テトラセンは熱安定性及び加水分解安定性が低く、安定性を向上させたものとの置き換えが現時点で望まれている。
【0005】
この材料は1910年に、Hoffman及びRoth,Ber.Dtsch.Chem.Ges.,43,682(1910)によって調製され、分子構造は1971年に決定された。Duke,J.R.C.,“X‐Ray Crystal and Molecular Structure of Tetrazene”,J.Chem.Soc.D Chemical Communications,2(1971)。テトラセンがそれまで用いられていた有毒な雷酸水銀を含まないとともに、非腐食性であることを実証したVon Herzの業績を主な拠り所として、テトラセンは1920年代にドイツで初めて雷管用組成物中で用いられた。米国では、雷酸水銀系雷管は当初、塩素酸カリウム、チオシアン酸鉛及びTNTを含むFA20に置き換えられた。Fedroff,Encyclopedia of explosives and Related Items,Vol.8,P373 (S.M.Kaye ed.,US Army ARDEC 1978)。これらの組成物は高温用途には適していたが、腐食性があることがわかり、1948年に、Rathsburgによって開発されたテトラセンとスチフニン酸鉛を含有するFA956に置き換えられた。
【0006】
NOL‐130などの現在の雷管用混合物は、塩基性スチフニン酸鉛40%、アジ化鉛20%、硝酸バリウム20%、硫化アンチモン15%及びテトラセン5%から概ね構成されている。Cooper,P.W.,Explosives Engineering,323‐326(Wiley‐VCH,New York,1996)。しかし、他の成分を含む混合物が知られている。同文献(VH2及びL Mixの使用を教示している);Fedoroff、上記参照(PA100の使用を教示している)。
【0007】
NOL‐130組成物は、テトラセン成分を含まない場合、刺突起爆に対して比較的感度が低い。高い刺突感度を確保するためには、テトラセンを2%以上添加することが現在は必要である。テトラセン系組成物の起爆に必要な機械的エネルギーが小さいことは、テトラセンが準安定な化学構造であることに関連して、低発火点(143℃)であることの直接的結果であるということが提唱されてきた。Bird,R.,“The Stab Sensitizing Action of Tetrazene,”Materials Research Laboratories Technical Note,362(1975)。これは、機械的エネルギーが雷管に与えられ、爆薬材料及び/又は爆薬粒の間の摩擦及び衝突によって熱に変換されるという起爆機構と関係し得る。Field,J.,“Hot Spot Ignition Mechanisms for Explosives,”Acc.Chem.Res.,25,489(1992)。Spear及びElischerはアジ化鉛を増感するテトラセンの代替として17個の化合物を検討した。Spear,R.J.及びElischer,P.P.,“Studies on Stab Initiation.Sensitization of Lead Azide by Energetic Sensitizers”,Aust.J.Chem.,35,1(1982)。彼らは発火点と起爆エネルギーの相互関係を示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
テトラセンは多数の問題点があるが、最も重要なのは低い熱安定性及び加水分解安定性である。テトラセンは、約90℃で容易に分解するということが明らかになっており、その温度は世界のどこかで保存及び取扱いをする間に遭遇し得る範囲内の温度である。以下のスキーム2に示すように、BirdはIR及びUVモニタリングを用いて、90℃で1molのテトラセンが、分裂反応とそれに続くグアニルアジド中間体の大部分の環化反応を介して分解して、1.7molの5‐アミノテトラゾール(2、スキーム2)が生じることを示した。Bird,R.及びPower,A.J.,“Thermal Decomposition of Tetrazene at 90℃,”Materials Research Laboratories Report MRL‐R‐710(1978)。
【0009】
【化2】
【0010】
分解は90℃では1週間後に完了し、自己触媒性であるように思われる。したがって、低温でもある程度分解が起こると推測するのが妥当である。より最近の研究はこれらの成果を裏付けている。Whelan,D.J.及びFitzgerald,M.R.,“The Kinetics and Thermochemistry of the Thermal Decomposition of the Initiating Explosive,Tetrazene,”DSTO Aeronautical and Maritime Research Laboratory Report DSTO‐TR‐0450(1996)。テトラセンは加水分解しやすいこともわかってきており、単に沸騰した水に加えるだけで壊れる/分解する。Spear及びElischer、上記参照。
【0011】
結果として、通常または高温用途で用いる雷管用に、熱安定性を改善した刺突感度が高い材料を開発する必要があることは明白である。現在の環境問題をふまえると、この新規材料を安価に、かつ反応物又は廃液として有毒な物質を使用することなく作り出すことも望まれるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の実施形態によると、テトラセン(上記スキーム1の要素1の化学式で表される化合物)の代用として使用するのに適した材料と、そのような材料を調製する方法が提供される。ある実施形態では、前記材料はMTX‐1(後述するスキーム3の要素3の化学式で表される化合物)及び、それから得られる単塩又は錯体を含む。いくつかの実施形態ではこの材料は雷管用組成物に使用されてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、テトラセン(上記スキーム1の要素1の化学式で表される化合物)の代用として使用するのに適した材料を調製する方法は、テトラセンと酸を混合して懸濁液を作ることと、前記懸濁液に亜硝酸塩を加えることを含む。前記酸は、硝酸、硫酸、過塩素酸、又は塩酸であって、前記亜硝酸塩は亜硝酸ナトリウム、亜硝酸リチウム又は亜硝酸カリウムを含んでもよい。前記方法はまた、前記懸濁液を撹拌することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記懸濁液は少なくとも4時間、又は前記懸濁液の外観が白くなるまで撹拌される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本技術によって調製された材料についてのX線分析の結果を示している。
図2図2は、テトラセン水溶液についてのUV分析の結果を示している。
図3図3は、本技術によって調製された材料の水溶液についてのUV分析の結果を示している。
図4図4は、テトラセンと本技術によって調製された材料についてのTGA分析の結果を示している。
図5図5は、テトラセンについての100倍の倍率で撮影された光学顕微鏡写真である。
図6図6は、本技術によって調製された材料についての100倍の倍率で撮影された光学顕微鏡写真である。
図7図7は、本発明のある実施形態による雷管試験ユニットについての断面正面図である。
図8図8は、図7の雷管試験ユニットについての断面透視図である。
図9図9は、本技術によって調製された材料についての示差走査熱量分析の結果を示している。
図10図10は、本技術によって調製された材料についてのフーリエ変換赤外分光分析の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の実施形態によるとテトラセンの代用として使用するのに適した材料と、そのような材料を調製する方法が提供される。そのテトラセンの代用材料は雷管組成物での使用を検討されているが、決してそのように限定するものではない。それどころか、その材料は、テトラセンの代用として随意に他の用途又はその他で使用してもよい。
【0016】
可能性のあるテトラセンの代替物を以下のスキーム3に示す。この材料の1‐[(2E)‐3‐(1H‐テトラゾール‐5‐イル)トリアザ‐2‐エン‐1‐イリデン]メタンジアミン(“MTX‐1”、3、スキーム3)は、テトラセン誘導体とみなしてもよく、水溶液中でテトラセンから一段階で簡便に調製される。
【0017】
【化3】
【0018】
MTX‐1の分子構造は、水溶液中での低速な再結晶化によって得たセシウム、ルビジウム、及びテトラフェニルホスホニウム塩すべてについての単結晶X線分析によって決定した。セシウム塩の置換楕円プロットを図1に示す。上記スキーム3に示したように、MTX‐1は亜硝酸を反応させることによって生じた不安定なニトロソアミンから、亜酸化窒素が脱離することを介して形成されると推定される。
【0019】
テトラセン及びMTX‐1の加水分解安定性を、各材料の水溶液を長時間にわたってUV分析することによって評価した。試料(およそ0.5gを正確に測りとり、250mLの水に懸濁した)は、最初の8時間の間は室温で撹拌し、完全に均一化させた。その後はスペクトルをとる直前に手短に撹拌した。試料はUVスペクトルの取得の前に濾過し、濃度を一定に保つためサンプリング後にバルク溶液に戻した。テトラセン及びMTX‐1両方のUVスペクトルをそれぞれ図2及び3に、サンプリング時間と共に示す。
【0020】
図2に示すように、テトラセン試料は最初の8時間にわたって濃度が変化して、その後350nmへの深色シフト及び250nm未満の減衰の増大が起こる。これは、材料が水に長時間さらされる間に分解することを示唆している。この結果は、Spearsらのテトラセンの加水分解の観察を裏付けているようである。Spears及びElischer、上記参照。一方、図3に示すように、MTX‐1のUV分析は、継時的なシフトはなく、この材料には加水分解不安定性がないということを示唆しているようである。興味深いことに、吸光度が増加した後減少しており、それは長時間水にさらす間に安定しているようである。これは、少量の不安定な不純物又はpHの長期平衡化によるものかもしれない。T=199日のとき、実験を終え、懸濁液は濾過してテトラセンとMTX‐1にあたる固体分を得た。テトラセン懸濁液からは少量の固体分しか残っていなかった。これは、材料の大半が5‐アミノテトラゾール及び未確認の硝酸塩含有物質(FTIRによる)に分解し、その後溶解したことによる。MTX‐1の場合は、119日間の試験期間の間に1%未満が分解し、原料のほぼすべてが固体として回収された。これらの結果はMTX‐1を水性条件下で長期保存することが可能であり得ることを示唆している。
【0021】
図4に示すように、テトラセンとMTX‐1の熱安定性をTGAで評価した。これらの実験では、各材料の試料を90℃に加熱後、長時間90℃に保持して、その温度での安定性を評価した。テトラセンは10000分(167時間)試験を行い、その間に36重量%減少した。重量の減少のほとんどは、初めの1000分で急速に起こった。TGAの残留物のFTIR分析により、殆ど5‐アミノテトラゾールしか存在していないことが示唆され、これはBirdの分解の仮説を裏付けているようである。Bird及びPower、上記参照。MTX‐1は同様の条件に18000分(300時間)間さらされ、その間に4重量%だけ徐々に減少した。これらの実験は、MTX‐1がテトラセンよりも改善された熱安定性を有し、したがって、感度要求さえ満たせばテトラセンの代用として適しているかもしれないということを示唆しているようである。
【0022】
テトラセンとMTX‐1の感度分析データを以下の表1に示す。この分析はこれらの材料についての衝撃、摩擦及びESDの値を含んでいる。データの評価により、MTX‐1はテトラセンを上回る衝撃感度を有することが示唆される。
【0023】
【表1】
【0024】
テトラセンとMTX‐1の倍率100倍の光学顕微鏡写真をそれぞれ図5及び6に示す。材料を比較すると、それらは似た結晶形態と破断面を有していることがわかる。各顕微鏡写真に示した矢印で示すように、両方の材料は一端が平坦になっている長い剣状の針の形態である。両方の材料において、結晶破断はその平坦な端部に平行に起きる。
[雷管試験]
【0025】
これらの材料の雷管を増感する能力について以下のようにして評価した。テトラセン及びMTX‐1を、ふるいわけしたBLS(塩基性スチフニン酸鉛)と5:95の比で混合し、標準PVU−12真鍮雷管体10の中に10kpsi(約700kg/cm)で圧入した。図7及び8に示すように、雷管体10は試験ユニット12の中に設置され、試験ユニット12は基部14及びカップ16を有する。撃針18は試験ユニット12内、雷管体12の上方に設置される。この実施形態では、撃針18は直径0.048インチ(約0.12cm)で、適当な先端半径を有している。位置決め装置20が撃針18の反対端に取り付けられて、撃針18をカップ16内の適所に保持する。いくつかの実施形態では、通気口22がカップ16内に設けられ、撃針18と雷管体10の間の嵌合面の近傍に開口部を形成する。
【0026】
この装置で試験を行う時には、BLS(未粉砕、#100ふるい)を母材として用い、5%の試験増感剤を添加し、約10分間ロールミルで乾式混合して粉末を調製した。MTX‐1及びテトラセンの両方の増感剤は、BLSに添加する前に#40ふるいでふるいにかけた。粒子サイズによる不均一性(沈降)を防ぐため、粉末の取扱いは最小限にした。 30個の雷管体には、21±2mgのBLS単独、BLS/5%テトラセン及びBLS/5%MTX‐1が詰め込まれ、その粉末を160lbs(約73kg)、10秒間のドウェル時間(dwell time)で雷管内に圧入された。雷管(合計90個)は、試験までデシケータ内で保管した。
【0027】
上述の治具に取り付けた標準電磁気落球起爆試験器と、3.35オンス(約95g)のステンレス球を用いて、全20ユニットのNeyer分析をそれぞれの組の雷管について行った。撃針はショット毎に清掃し、劣化の兆候がないか検査した。また、撃針は10ショット毎に新しい撃針に交換された。BLS及び、5%のテトラセン及びMTX‐1を加えて増感したBLSについての結果を、以下の表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
データは、テトラセンとMTX‐1の両方が雷管体に圧入したBLSの増感剤として作用し、テトラセンのほうがわずかに効果的であることを示している。しかし、Neyer分析から外れる1点の異常値のため、テトラセンの標準偏差は極めて高くなっている。増感の観点からは二つの材料はほぼ同等であり、そうでないとしても、MTX‐1は間違いなくより安定性の高い増感剤であるだろう。
【0030】
テトラセンは熱にも加水分解にも不安定であることが分かっている。この材料の代用となり得るMTX‐1は、向上した安定性、及び同等の試験雷管の増感作用を示した。
【0031】
調製方法は、テトラセンを、テトラセンを懸濁させるのに適した量で酸に導入することを含む。いくつかの実施形態では、酸は硝酸である。他の実施形態では、酸は硫酸、過塩素酸、又は塩酸を含むが、それに限定されない。
【0032】
次いで亜硝酸塩を懸濁液に添加し、反応温度は亜硝酸塩の添加速度によって制御する。これらの実施形態では、亜硝酸塩は亜硝酸ナトリウムであり、亜硝酸ナトリウムは水溶液として添加してもよい。他の実施形態では、亜硝酸塩はそれに限定されないが、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウムを含み、亜硝酸リチウム又は亜硝酸カリウムは水溶液として添加してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、懸濁液は次に環境温度で少なくとも4時間撹拌される。典型的には、懸濁液は、白い外観になるまで環境温度で撹拌される。
【0034】
懸濁液はさらに、濾過して懸濁物質を回収してもよい。懸濁物質は水洗して乾燥させる。
【実施例】
【0035】
以下の実施例では、ここに教示したような材料の調製および特性評価について説明している。
【0036】
この実施例では、250mLビーカー中でテトラセン(4.53g、24.09mmol)を1NのHNO150mL中に懸濁させ、400RPMで磁気的に撹拌した。ビーカーはヒートシンクとして働く室温のウォーターバス中に設置した。NaNO(2.50g、1.50eq)を水30mLに溶解させた溶液を、反応温度が上昇しないように一定速度で、約10分間にわたって添加した。添加中に沸騰が見られた。混合物は環境温度で4.5時間撹拌し、その間に当初の小麦色の懸濁液は白くなった。白い懸濁液をワットマン#1濾紙で濾過し、水洗し(3回)、対流オーブン中で65℃で2時間乾燥した。収量は3.13g(66%)であった。回収した材料は、示差走査熱量計(「DSC」)で分析した。その結果を図9に示す。回収した材料はフーリエ変換赤外(「FTIR」)分光分析でも分析した。その結果を図10に示す。
【0037】
ここまでに示したことは、本発明の実施形態を、例示し、説明し、及び記述する目的で与えられている。これらの実施形態へのさらなる改変及び適合性が当業者にとっては明らかになろうし、且つ、本発明の範囲又は意図から逸脱することなくなされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10