特許第5909232号(P5909232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5909232耐クリープ性ジルコン物品およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909232
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】耐クリープ性ジルコン物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/16 20060101AFI20160412BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   C04B35/16 B
   C03B17/06
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-527105(P2013-527105)
(86)(22)【出願日】2011年8月19日
(65)【公表番号】特表2013-538778(P2013-538778A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】US2011048410
(87)【国際公開番号】WO2012030558
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年8月6日
(31)【優先権主張番号】61/378,049
(32)【優先日】2010年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】アディエゴ,ウィリアム ピー
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,マイケル ジェイ
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/142695(WO,A2)
【文献】 特表2010−519163(JP,A)
【文献】 特表2010−526752(JP,A)
【文献】 特許第5479460(JP,B2)
【文献】 特公昭38−014289(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐クリープ性ジルコン物品を製造する方法において、
少なくとも5μm未満の寸法の微細なジルコン粒子、メジアン径が5μm〜100μmの範囲の粗いジルコン粒子、および熱分解促進剤を含むジルコン物品を供給するステップと、
前記ジルコン物品を1580℃超に加熱して前記ジルコン物品の熱分解を促進するステップであって、前記微細なジルコン粒子が前記粗いジルコン粒子よりも速く、より多く分解する、ステップと、
前記1580℃超の温度から、8℃/時未満の冷却速度で前記ジルコン物品を冷却して、熱分解した前記微細なジルコン粒子を前記熱分解促進ステップ中に分解しなかった前記粗いジルコン粒子上に再結晶させ、前記耐クリープ性ジルコン物品を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記供給ステップがさらに、少なくとも5μm未満の寸法の前記微細なジルコン粒子、メジアン径が5μm〜100μmの前記粗いジルコン粒子、および前記熱分解促進剤を含む組成を有するジルコンバッチを用意するステップと前記ジルコンバッチをプレスして前記ジルコン物品を形成するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジルコン物品が、30〜10μm、10〜5μm、5μm未満のジルコン粒子がそれぞれ対応してバッチの40〜20重量%、40〜30重量%、20〜50重量%である3成分ジルコン組成を有し、前記熱分解促進剤が、前記微細なジルコン粒子および前記粗いジルコン粒子と混合されたとき、0.2〜2重量%の範囲内の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ジルコン物品が、20〜10μm、10〜5μm、3μm未満のジルコン粒子がそれぞれ対応してバッチの35〜20重量%、35〜30重量%、30〜50重量%である3成分ジルコン組成を有し、前記熱分解促進剤が、前記微細なジルコン粒子および前記粗いジルコン粒子と混合されたとき、0.2〜2重量%の範囲内の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ジルコン物品が、60〜40μm、30〜10μm、10〜5μm、5μm未満のジルコン粒子がそれぞれ対応してバッチの1〜10重量%、10〜30重量%、20〜10重量%、69〜50重量%である4成分ジルコン組成を有し、前記熱分解促進剤が、前記微細なジルコン粒子および前記粗いジルコン粒子と混合されたとき、0.2〜2重量%の範囲内の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ジルコン物品が、50〜40μm、20〜10μm、10〜5μm、3μm未満のジルコン粒子がそれぞれ対応してバッチの1〜5重量%、20〜30重量%、10〜25重量%、69〜40重量%である4成分ジルコン組成を有し、前記熱分解促進剤が、前記微細なジルコン粒子および前記粗いジルコン粒子と混合されたとき、0.2〜2重量%の範囲内の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記熱分解促進剤がチタニアであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記熱分解促進ステップが、前記ジルコン物品を6時間超、1580℃超に加熱することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記再結晶ステップが前記ジルコン物品を2℃/時以下で1500℃まで冷却することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記耐クリープ性ジルコン物品が、1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定された2.2×10−7/時より低いひずみ速度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記耐クリープ性ジルコン物品が3.7g/cc超の密度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
耐クリープ性ジルコン物品を製造する方法において、
少なくとも5μm未満の寸法の微細なジルコン粒子、メジアン径が5μm〜100μmの範囲の粗いジルコン粒子、および熱分解促進剤を含むジルコン物品を供給するステップと、
前記ジルコン物品を加熱して前記ジルコン物品の熱分解を促進するステップと、
前記熱分解の後に、前記ジルコン物品を冷却して、熱分解した前記微細なジルコン粒子を前記熱分解促進ステップ中に分解しなかった前記粗いジルコン粒子上に再結晶させ、前記耐クリープ性ジルコン物品を形成するステップと、
を含み、
得られた前記耐クリープ性ジルコン物品が、1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定された7.15×10−8/時以下のひずみ速度を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
溶融したガラス(126)を提供するように構成された少なくとも1つの容器(110、115、120、125)と、
前記溶融したガラスを受け取り、ガラスリボン(141)を形成するように構成された形成装置(102)と、
前記ガラスリボンを受け取って引っ張り、ガラスシート(105)を形成するように構成された引っ張りロールアッセンブリ(130)と、
を含むガラス製造装置(100)において、
前記形成装置が、少なくとも部分的に1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定された7.15×10−8/時以下のひずみ速度を有する耐クリープ性ジルコン物品からできていることを特徴とするガラス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
本願は、米国特許法第119条に基づき、2010年8月30日に出願された米国仮特許出願第61/378,049号の利益を主張するものである。この文書の内容は、参照により本明細書に含まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して耐火性セラミック材料に関し、特に耐クリープ性ジルコン物品および耐クリープ性ジルコン物品を製造する方法に関する。一実施形態において、耐クリープ性ジルコン物品は、ガラスシートを製造する溶融工程で使用される形成装置(たとえば、アイソパイプ)の形状を有する。
【背景技術】
【0003】
溶融工程(たとえば、ダウンドロー工程)は、液晶ディスプレイ(LCD)等の種々の装置に使用できる高品質の薄いガラスシートを製造するために用いられる基本技術の1つである。溶融工程は、他の方法で製造されたガラスシートと比べて表面の平坦度および平滑性に優れたガラスシートが製造されるため、溶融工程は液晶ディスプレイ等の装置に使用されるガラスシートを製造するのに好ましい技術である。溶融工程は、特許文献1および特許文献2において説明されており、その内容は参照により本明細書に含まれる。
【0004】
溶融工程は、アイソパイプ(たとえば、形成装置)と呼ばれる特殊形状の耐火ブロックを利用する。溶融ガラスがアイソパイプの両サイド上を流下してその底面で合流して単一のガラスシートを形成する。アイソパイプは一般的にはガラスシートを形成するために有効に機能するが、アイソパイプはその断面に比べて長く、それ自体が、溶融工程に関連する負荷と高温によって時間とともにクリープしたり、撓んだりすることがある。アイソパイプが過度にクリープしたり、撓んだりすると、ガラスシートの品質および厚みを制御するのが非常に難しくなる。このことは、製造工程においてガラスシートが引っ張られるときのガラスシートの均一な寸法が重要な、Gen10(すなわちアイソパイプ長さ157インチ(398.8センチメートル))以上の幅の広いガラスシートを作る場合にとくに面倒なものとなり得る。この問題に対処しうる方法の1つは、アイソパイプを作るために使用される要素を、クリープに対する耐性を改善する方向でその物理的な特性を変える方法で変更することである。
【0005】
コーニング社(Corning Inc.)は、LCDガラスを形成するため用いられる、アイソパイプを作るために用いられる現行材料であるジルコンの耐クリープ性を改善するためのいくつかの方法を開発してきた。これらの方法はすべて、特有の粒度分布を有するジルコン粉末粒子の混合および均質化ならびに混合されたジルコン粒子へのチタニアおよびイットリアの添加による耐クリープ性アイソパイプの製作に関する。チタニアおよびイットリアは、焼成されアイソスタティックプレスでプレスされたジルコンアイソパイプにおいてジルコンの粒径を増大させ、ジルコン粒界濃度を減少させることによって粒成長を改善する。これらの異なる方法の詳細な議論は、同一出願人による特許出願、(1)特許文献3、(2)特許文献4、(3)特許文献5、および(4)特許文献6において知ることができる。これらの文書の内容は、参照により本明細書に含まれる。これらの方法はすべてジルコンアイソパイプのクリープ耐性を改善するために有効に機能するが、改善されたクリープ耐性のジルコンアイソパイプを作製することに対する要望が依然として存在し、この要求およびその他の要求が本発明によって満たされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,338,696号明細書
【特許文献2】米国特許第3,682,609号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0196449A1号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0277835A1号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0272482号明細書
【特許文献6】国際公開第2009/142695A2号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
製造方法および耐クリープ性ジルコン物品(アイソパイプ)は、本願の独立請求項に記載される。有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0008】
1つの態様において、本発明は耐クリープ性ジルコン物品を製造する方法を提供する。その方法は、(a)少なくとも5μm未満の寸法の微細なジルコン粒子、メジアン径が5μm〜100μmの範囲の粗いジルコン粒子、および熱分解促進剤を含むジルコン物品を提供するステップと、(b)微細なジルコン粒子が粗いジルコン粒子よりも速く、より多く分解する、ジルコン物品の熱分解を促進するステップと、(c)熱分解した微細なジルコン粒子を熱分解促進ステップ中に分解しなかった粗いジルコン粒子上に再結晶させ、耐クリープ性ジルコン物品を形成するステップとを含む。一実施形態において、熱分解促進ステップは、ジルコン物品を6時間超、1580℃超に加熱することを含む。さらに、再結晶ステップは、加熱したジルコン物品を2℃/時未満で約1500℃まで冷却することを含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、熱分解および再結晶工程の前に少なくとも5μm未満の寸法の微細なジルコン粒子、メジアン径が5μm〜100μmの範囲の粗いジルコン粒子、および熱分解促進剤を含み、熱分解および再結晶工程の後に1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定された2.2×10−7/時よりはるかに少ない時間あたりのひずみ速度を有するジルコン物品を含む耐クリープ性ジルコン物品を提供する。一実施形態において、ジルコン物品は、1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定された1×10−7/時よりはるかに低い、より好ましい時間あたりのひずみ速度を有し得る。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、(a)溶融ガラスを供給するように構成された少なくとも1つの容器と、(b)溶融ガラスを受け取り、ガラスリボンを形成するように構成され、少なくとも部分的に1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定された2.2×10−7/時よりはるかに少ない時間あたりのひずみ速度を有する耐クリープ性ジルコン物品からできている形成装置と、(c)ガラスリボンを受け取って引っ張り、ガラスシートを形成するように構成された引っ張りロールアッセンブリとを含むガラス製造システムを提供する。一実施形態において、耐クリープ性ジルコン物品は、1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定された1×10−7/時よりはるかに低い、より好ましい時間あたりのひずみ速度を有し得る。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、溶融ガラスを受け取り、ガラスリボンを形成する形成装置を提供する。形成装置は溶融ガラスを受け取る取入れ口を有する本体を含み、溶融ガラスは本体中に形成されたトラフに流入し、その後トラフの2つの頂面をオーバーフローし、本体の2つの側面を流下した後、本体の2つの側面が一緒になる場所で融合してガラスリボンを形成し、そして、本体は1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定された2.2×10−7/時よりはるかに低い時間あたりのひずみ速度を有する耐クリープ性ジルコン物品で作られている。一実施形態において、耐クリープ性ジルコン物品は1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定された1×10−7/時よりはるかに低いより好ましい時間あたりのひずみ速度を有し得る。
【0012】
本解決策の追加の態様は、一部が詳細な説明、図面、および下記の任意の特許請求の範囲によって説明され、また一部は詳細な説明から導かれるか、本解決策の実践によって知ることができる。上述の概要説明および以下の詳細説明は例示および説明だけのためのものであり、開示したとおりに本解決策を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0013】
添付図面とともに以下の詳細な説明を参照することによって、本解決策のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による、溶融ドロー工程および改良された例示的な耐クリープ性ジルコンイソパイプを用いる例示的なガラス製造装置の概略図である。
図2】本発明の実施形態による、図1に示す改良された耐クリープ性ジルコンイソパイプをより詳細に示す透視図である。
図3A】本発明の一実施形態による、既知の耐クリープ性ジルコン物品の微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図3B】本発明の一実施形態による、改良された例示的な耐クリープ性ジルコンの微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による、ガラスシート105’を製造するための、溶融ドロー工程および改良された耐クリープ性ジルコンアイソパイプ102を用いる例示的なガラス製造装置100の概略図が示されている。示されるとおり、例示的なガラス製造装置100には、溶融容器110、清澄化容器115、混合容器120(たとえば、攪拌室120)、供給容器125(たとえば、ボウル125)、耐クリープ性ジルコンアイソパイプ102(形成装置102、垂直ガラス供給装置102)、引っ張りロールアッセンブリ130、およびガラスシート分離装置135が含まれる。
【0016】
溶融容器110では、矢印109で示すようにガラスバッチ原料導入されて溶融され、溶融ガラス126が形成される。清澄化容器115(たとえば、清澄管115)は、耐熱管113経由で溶融容器110から溶融ガラス126(ここでは非表示)を受け取る高温処理エリアを有し、そこにおいて溶融ガラス126から気泡が除去される。清澄化容器115は、清澄管攪拌室連絡管122によって混合容器120(たとえば、攪拌室120)に接続される。混合容器120は、攪拌室ボウル接続管127によって供給容器125に接続される。供給容器125は、下降管129を通じて取入れ口132およびアイソパイプ102内に溶融ガラス126を供給する。
【0017】
アイソパイプ102は、トラフ137に流入し、次いでオーバーフローし、2側面138’および138”を流下した後、根元部139として知られる位置で融合する溶融ガラス126を受け取る取入れ口136を含む。根元部139では、2つの側面138’および138”が一緒になり、溶融ガラス126の2つのオーバーフロー壁体が再合流(たとえば、再溶融)してガラスリボン141が形成される(図2参照)。
【0018】
ガラスリボン141はつぎに引っ張りロールアッセンブリ130中の2つの回転ロール150aおよび150bの間を下方に引かれ、ガラスシート105を形成する。その後、機械式切断線付与装置140(たとえば、切断線付与輪140)および緩速送り装置145を有し得るガラスシート分離装置135(任意選択的)がガラスシート105に機械的に切断線を付けるために用いられ、ガラスシート105は別個のガラスシート片105’に分離できる。新しい、改良された例示的な耐クリープ性アイソパイプ102についての詳細な議論を、図2に関して以下に示す。
【0019】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による例示的な耐クリープ性アイソパイプ102の透視図が示されている。耐クリープ性アイソパイプ102は、取入れ口136を経てトラフ137に溶融ガラス126を供給する供給管202を含む。トラフ137は、底部表面206に対してほぼ垂直な関係を有するように表示されているが、任意の関係を有することのできる内面側壁204’および204”によって境界付けられる。この実施例において、アイソパイプ102は、取入れ口136から最も遠い端部208近くで高さが著しく減少する輪郭を有する底部表面206を有する。必要に応じて、アイソパイプ102は、取入れ口136から最も遠い端部208近くに埋め込み物体−プラウを上部に配置した底部表面206を有し得る。代わりに、アイソパイプ102は、その両端にエッジディレクタ(非表示)を備えてよい。
【0020】
アイソパイプ102は、楔状物体210(くさび形物体210)と向かい合って配置された合流する側壁138’および138”を有する。底部表面206と場合によっては埋め込み物体(非表示)を有するトラフ137は、くさび形物体210の上部表面上長手方向に配置される。底部表面206および埋め込み物体(使用されている場合)の両方が、取入れ口136から最も遠い端部208で浅くなる数学的に記述されたパターンを有する。示されるとおり、トラフ137の底部表面206と頂部表面212’および212”の間の高さは取入れ口136から端部208に向かうにしたがって減少する。しかし、トラフ137の高さは、底部表面206と頂部表面212’および212”の間でいかようにも変化し得る。必要に応じて、くさび形物体210は、調整可能なローラー、くさび、カムまたは他の装置(非表示)等の装置で枢動可能に調整して、平行な頂部表面212’および212”の水平位置からの角度変化であるθとして示される、所望の傾斜角度を提供してよい。
【0021】
アイソパイプ102は、溶融ガラス126が供給管202および取入れ口136からトラフ137に入ることを可能とすることによって、平坦で傷の付いていない表面を有するガラスリボン141を形成する。溶融ガラス126は、次にトラフ137の平行な頂部表面212’および212”を越えて分かれ、くさび形物体210の、向かい合って配置された合流する側壁138’および138”のそれぞれの側面を流下する。くさび形部分の底部すなわち根元部139において、分割された溶融ガラス126が再合流し、非常に平坦で滑らかな、傷の付いていない表面を有するガラスリボン141を形成する。ガラスリボン141の高い表面品質は、分かれて、向かい合って配置された合流する側壁138’および138”を流下し、アイソパイプ112の外側と接触せずにガラスリボン141の外面を形成する溶融ガラス126の自由表面に由来する。耐クリープ性アイソパイプ102の組成および新しい、改良された耐クリープ性アイソパイプ102を作るために使用される、直感に反した製造工程についての詳細な議論を以下に示す。
【0022】
従来、アイソパイプ102を作るために用いられるジルコンは、通常1580℃付近または未満で6〜24時間焼成されたが、それはより高い温度がジルコン、ケイ酸ジルコニウムの通常クリストバライト結晶層としてのシリカ、正方晶および単斜晶層としてのジルコニアへの分解を促進すると考えられるためである。そのような相転移はアイソパイプ102の機械的完全性を傷つける可能性があり、またいくらかの材料が溶融ガラスを汚染することが有り得るため、この熱分解は望ましいものではなかった。結果として、この熱分解は、ジルコンバッチに対して添加物(たとえば、チタニア、イットリア)を加え、かつ分解を促進しない焼成温度を用いることによって回避された。しかし、本発明において、新しい製造方法では、6〜48時間以上の長時間にわたって1580℃以上の高温で焼成することによってジルコンの分解を促進することを実際には追求している。さらに、新しい製造工程はチタニア等の添加物を包含しており、その存在下における高温焼成温度によって、ジルコンはジルコニア、シリカ、チタン酸ジルコニウムを含むガラス液相を形成し、その後約1500℃まで約2℃/時未満の緩速冷却を受けると、ジルコンの再結晶とオストワルド熟成が生じる。冷却速度は、1500℃未満で増加させてよい。
【0023】
オストワルド熟成は、より小さな結晶を大きな結晶が取り込んで成長することによって結晶成長が生じる現象である。さらに具体的に言うと、オストワルド熟成は系の全エネルギー状態を減じる熱力学的に駆動されるプロセスである。相が析出する場合、それは既存のより大きな粒子上に生成することによってエネルギー的に好ましい方法で行われるであろう。本発明において、オストワルド熟成は、焼成工程中に、より大きなジルコン粒子よりも速くかつ多く分解し、反応してチタニア(または他の適切な促進剤)と共晶混合物を形成する非常に小さいジルコン粒子の存在によって促進される。緩速冷却工程では、分解されたジルコンが、十分に速く分解しなかった大きなジルコン粒子上に再結晶するように、ガラス液相に失透および析出が生じる。したがって、この製造工程は、ジルコン粒界濃度を減少させ、かつより小さなジルコン粒子濃度を減少させて、より大きなジルコン粒子の成長を促進することによって、ジルコン結晶の成長を促進する。特に、この新しい製造方法によって、ジルコン物品中のジルコン結晶(粒子)がより大きく、粒界濃度がより低くなり、それによって高温応力下のクリープが減少する。
【0024】
製造工程は、少なくとも5μm未満の寸法の微細なジルコン粒子、メジアン径が5μm〜100μmの粗いジルコン粒子、およびチタニア等の熱分解促進剤を含む組成物を有するジルコンバッチを用意することによって開始してよい。特に、その組成物は、メジアン径が5μm未満、好ましくは3μm未満、より好ましくは1μm、さらに好ましくは1μm未満の容易に分解可能なジルコン(A)とメジアン径が5μm超、100μm以下のジルコンを含む残りのジルコン成分(B)を含み得る。成分(B)自体は、別個の粒径分布を有するジルコン粉末の混合物を含むことができ、任意の混合物の正味のメジアン径が成分(B)について指定された範囲内に入ってもよい。
【0025】
一用途において、全体のジルコン成分(A)および(B)は、成分Aとして定義されたメジアン径を持つ1種の粉末と成分Bとして一緒に定義されることになる他の2種の粉末の形の、3成分ジルコン組成物として記述することもできる。成分Aの濃度は1重量%から40重量%とすることができ、残りのジルコン成分の成分Bはそれぞれ99重量%から60重量%となるであろう。一実施例として、ジルコン粉末の3成分混合物は、(1)30重量%の成分(A)すなわち1μmのメジアン径を持つ30重量%のジルコン、(2)70重量%の成分(B)すなわち20μmのメジアン径を持つ50重量%のジルコンおよび7μmのメジアン径を持つ50重量%のジルコン。この3成分ジルコン混合物においては、30重量%が1μm、35重量%が20μm、そして35重量%が7μmとなるであろう。別の実施例として、3成分組成物が、粗い粒子から微細な粒子までの好ましいメジアン径30〜10μm、10〜5μm、5μm未満をそれぞれ対応してバッチの40〜20重量%、40〜30重量%、20〜50重量%有してよい。別の実施例において、3成分組成物が粗い粒子から微細な粒子までのより好ましいメジアン径20〜10μm、10〜5μm、3μm未満をそれぞれ対応してバッチの35〜20重量%、35〜30重量%、30〜50重量%有してよい。これらすべての実施例において、チタニアの粒径は10μm未満、好ましくは5μm未満、最も好ましくは1μm未満、かつ濃度はジルコンと混合して0.2〜2重量%超、または2重量%超とすべきである。
【0026】
別の用途において、全体のジルコン成分(A)および(B)は、成分Aとして定義されたメジアン径を持つ1種の粉末と成分Bとして一緒に定義されることになる他の3種のジルコン粉末の形の4成分ジルコン組成物として記述することもできる。一実施例において、4成分組成物が粗いジルコン粒子から微細なジルコン粒子までの好ましいメジアン径60〜40μm、30〜10μm、10〜5μm、5μm未満をそれぞれ対応してバッチの1〜10重量%、10〜30重量%、20〜10重量%、69〜50重量%有してよい。別の実施例において、4成分組成物が粗いジルコン粒子から微細なジルコン粒子までのより好ましいメジアン径50〜40μm、20〜10μm、10〜5μm、3μm未満をそれぞれ対応してバッチの1〜5重量%、20〜30重量%、10〜25重量%、69〜40重量%有してよい。これらすべての実施例において、チタニアの粒径は10μm未満、好ましくは5μm未満、最も好ましくは1μm未満、濃度はジルコンと混合して0.2〜2重量%超、または2重量%超とすべきである。
【0027】
任意の場合において、ジルコンバッチは、ジルコン粒子を粉砕し、水またはアルコール等の液体とせん断混合して所望の粒径範囲における所望の粒径分布を作り出す粉砕装置にジルコン粒子をかけることで作ることができる。または、ジルコンバッチは、ターブラまたは他のミキサによってあらかじめ粉砕したジルコン粒子の乾式混合によって作ることができ、その後に調合されたスラリー(その後に乾燥される)または乾燥粉末として均一性を確保するためにせん断混合される。その後、その粉末は、任意選択によりアクリルラッテクス、他のポリマー、澱粉、または他の有機物等の有機結合剤と乾式混合してよい。
【0028】
製造工程は、粉末にしたジルコンバッチをプレスしてジルコン物品を形成するステップも含んでよい。たとえば、プレス操作には、粉末をゴム(または類似の)バッグに装入し、バッグを振動プラットフォームまたは類似の装置上に置いてバッグを振動させ、最大限の粉体沈降を確保することを含んでよい。バッグを振動させた後、綿または布等の多孔質の詰め物で頂部を覆い、バッグは1気圧よりはるかに低い圧力(たとえば、500ミリトール未満)まで空気を抜かれた後、密封される。次に、密封されたバッグはアイソスタティックプレス内に入れられ、アイソプレスのために油圧油中に沈められる。次に、沈められたバッグをアイソスタティックプレスで1〜5分間、場合によっては10分間超、最終製品および他の条件に依存して10,000psi(68.9MPa)超(たとえば、15,000〜20,000psi(103.4〜137.9MPa))でプレスする。所望のプレス時間後、アイソスタティックプレスは圧力を減じ、バッグが取り出され、そして未焼成のジルコン物品がバッグから取り出される。
【0029】
別法として、製造工程は、混合ステップおよびプレスステップをバイパスし、代わりに少なくとも5μm未満の寸法の微細ジルコン粒子、メジアン径が5μm〜100μmの粗いジルコン粒子、およびチタニア等の熱分解促進剤を含む上述の組成を有する、予め焼成された(場合により以前生産に用いられた)アイソパイプ102を提供してよい。
【0030】
製造工程は、微細なジルコン粒子が粗いジルコン粒子よりも速く、より多く分解するジルコン物品熱分解促進ステップをさらに含む。熱分解促進ステップには、6〜48時間以上、1580℃超に加熱することが含まれる。たとえば、ジルコン物品は、約1580℃〜1585℃、約1585℃〜1590℃、約1590℃〜1595℃、約1595℃〜1600℃、約1600℃〜1605℃、および1605℃〜1610℃のいずれの温度に加熱してよい。加熱されたジルコン物品は、これらのうち1つの温度に、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間、37時間、38時間、39時間、40時間、41時間、42時間、43時間、44時間、45時間、46時間、47時間、48時間、またはそれ以上のいずれかの時間の間保持されるであろう。
【0031】
製造工程はさらに、熱分解した微細なジルコン粒子を、熱分解促進ステップ中に分解しなかった粗いジルコン粒子上に再結晶させ、耐クリープ性ジルコン物品を形成するステップを含む。一実施例において、耐クリープ性ジルコン物品は、1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定した時間あたりのひずみ速度8−11×10−8/時を有し得る。あるいは、耐クリープ性ジルコン物品は、1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定したさらに好ましい時間あたりのひずみ速度5〜7×10−8/時を有してよい。再結晶ステップには、加熱されたジルコン物品を約2℃/時未満で約1500℃まで冷却することを含む。たとえば、加熱されたジルコン物品は約1500℃まで、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、および8℃/時のうちの任意の冷却速度で冷却してよい。冷却速度は、1500℃未満で増加さ得る。その後、焼成されたジルコン物品は、この実施例においてはアイソパイプ102である、目的とする形状および寸法に粉砕される。
【0032】
本発明において、背景のセクションで議論した製造工程に従って作られたジルコン物品と本発明による改善された製造工程で作られたジルコン物品を比較するために、いくつかの実験を行った。改善された製造工程において、焼成温度は1580℃から1600℃または1610℃に引き上げられた。焼成時間は24時間から48時間に延長された。焼成温度から1500℃までの冷却速度は8℃/時から2℃/時まで減少させた。1つの実験結果を以下の通り表1に示す。
【表1】
【0033】
表#1に示す実験結果には、改良された製造工程を用いて作られたジルコン物品試験時の著しいクリープ耐性の改善が示されている。たとえば、古いジルコン物品が1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定したひずみ速度2.23×10−7/時を有していたのに対して、新しいジルコン物品は1,000psi(6.89MPa)の下、1180℃において測定したひずみ速度7.15×10−8/時未満を有していた。もっと高い温度、たとえば1250℃でこれらの焼成したジルコン物品のひずみを試験した場合においてさえ、既知の製造工程で作られたジルコン物品と比べるとクリープはまだ非常に低い。たとえば、新しいジルコン物品は1,000psi(6.89MPa)の下、1250℃において測定したひずみ速度9.72×10/時未満を有していた。
【0034】
図3Aおよび3Bを参照すると、サンプルID355−49を有するジルコン物品300(図3A−従来技術)および1600℃で焼成された、サンプルID355−111を有するジルコン物品302(図3B)のSEM画像が示されている。図に示すように、新しいジルコン物品302は、古いジルコン物品300よりも緻密な微細構造(より大きなジルコン粒子およびより低い粒界濃度)を有している。このように、新しいジルコン物品302は、古いジルコン物品300よりも高温における応力下でより低いクリープを有している。
【0035】
別の実験結果が下の表#2に示され、新しい製造工程によって作られたいくつかの例示的なジルコン物品が既存のLCZ製品および既存のAtlas製品と比較されている。最高1300℃までのすべての試験温度において、新しい製造工程によって作られたサンプルID355−51および355−54LBの焼成されたジルコン物品は、LCZ製品およびAtlas製品と比べて改良されたひずみ速度を有していた。
【表2】
【0036】
表2に示す実験結果には、改良された製造工程を用いて作られたジルコン物品試験時の著しいクリープ耐性の改善が示されている。たとえば、古いジルコン物品が1,000psi(6.89MPa)の下1299℃において測定したひずみ速度1.54×10−5/時超を有していたのに対して、新しいジルコン物品は1,000psi(6.89MPa)の下、1299℃において測定したひずみ速度9.41×10−6/時未満を有していた。さらに、新しいジルコン物品は、1,000psi(6.89MPa)の下、1250℃において測定したひずみ速度1.21×10−6/時未満を有していた。また、古いジルコン物品が250psi(1.72MPa)の下1300℃において測定したひずみ速度2.58×10−6/時超を有していたのに対して、新しいジルコン物品は250psi(1.72MPa)の下1300℃において測定したひずみ速度1.17×10−6/時未満を有していた。
【0037】
上記により、当業者は、新しい製造プロセスがジルコン分解およびチタニア添加剤との再結晶の直感に反した利用ならびに形成されたジルコン物品中の選択されたジルコン粒径分布を含むことを理解するであろう。製造工程には、ジルコンの分解を促進するための、一般的に1580℃超の高温で、6時間超、好ましくは12時間超、より好ましくは24時間超、さらに好ましくは48時間超の均熱時間を伴って、ジルコン物品を焼成し、再結晶を促し、その後、8℃/時以下、好ましくは2℃/時以下等で物品が超緩速冷却され、その結果、ジルコン結晶の再結晶と成長が促され、粒界が減少し、かつ粒径の増大およびかさ密度および機械的強度が増大することが含まれる。たとえば、ジルコン物品は、1,000psi(6.89MPa)の下、1300℃において測定した好適なひずみ速度1×10−5/時、1,000psi(6.89MPa)の下、1300℃において測定したさらに好適な時間あたりのひずみ速度1×10−5/時未満を有し得る。さらに、ジルコン物品は、好適な密度3.7g/cc超、さらに好適な密度4.1g/cc超を有し得る。
【0038】
高いクリープ耐性を有するジルコン物品に関連するいくつかの利点が存在する。たとえば、耐クリープ性ジルコン物品はアイソパイプ102の全体的な耐用年数を延ばし、大きな節約となる。さらに、耐クリープ性物品によって、LCD製品に必要不可欠な品質を備えたより幅の広い(Gen10幅超)ガラスシートを作ることのできるより長いアイソパイプ102の製作が可能となる。新しい製造工程は、現行のアイソパイプの製作および焼成方法にとって容易に採用可能であるという利点を有している。さらに、新しい製造工程は、十分なチタニア、たとえばバッチ中に0,1%超のTiOを含むほとんどのジルコン組成物のクリープの耐性を改善して、有益な巨視的熱機械的影響を結果として生じるジルコン物品を生じさせる役目をするであろう。
【0039】
本解決策の一実施形態について添付図面に示し、前述の詳細な説明において説明したが、本解決策は開示した実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲で説明および規定される解決策から逸脱することなく多数の再構成、修正、置換えが可能であることを理解すべきである。
図1
図2
図3A
図3B