(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サンプル測定をデータバッファを通してフィルタにかけるステップをさらに備え、前記フィルタにかけることにより、前記サンプルストリームの中の低速化学データポイズニングに起因する汚染を防止する、請求項5に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一般に、微量または低濃度の化学物質は、コンピュータプログラムを使用して、連続的にサンプリングされる液体または気体のサンプルストリームからのスペクトルデータを分析することによって検出および定量化される。「スペクトル」および「デジタル化スペクトル」という用語は、デジタル化スペクトル情報を指すために交換可能に使用することができる。コンピュータプログラムは、多段階背景アルゴリズムと、多段階欠陥検出、ライブラリ検索、および定量化アルゴリズムと、データ品質診断モジュールを含む。
【0030】
多変量多段階背景アルゴリズムは、経時的にスペクトルプロファイルにおいて観察される体系的および/または環境的な変動をモデル化する。多変量多段階背景アルゴリズムは、計器機能および環境条件を正確かつ動的に説明することができる。多変量多段階背景アルゴリズムは、例えば、第1のモデル(例えば、進化型背景モデル)と、第1のモデルの中の残りの雑音をモデル化する第2のモデル(例えば、多変量雑音モデル)とを含む。多変量多段階背景アルゴリズムは、いくつかの実施形態では、(単変量ではなく多変量の測定値である)多変量スペクトルプロファイルにアプローチを適用することができるので、「多変量」であると呼ばれる。多変量多段階背景アルゴリズムは、アルゴリズムが背景モデルを生成する1つ以上の段階を含むことができるので、「多段階」と呼ばれる。例えば、背景アルゴリズムは、背景をモデル化するために、第1のモデルを計算する段階を含むことができる。いくつかの実施例では、背景アルゴリズムは、第1のモデルによってモデル化されない雑音を考慮するために、第2のモデルを計算する(他の段階から分離されているか、または他の段階に付加する)段階を含む。システムは、背景補正サンプルスペクトルを生成するために、多変量多段階背景アルゴリズムをサンプル測定値に適用する。多変量多段階背景アルゴリズムはしばしば、省略のために本明細書では「背景アルゴリズム」であると呼ばれる。
【0031】
多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムは、1つ以上の関心化学物質の確率を計算するために、背景補正サンプルスペクトルに適用される。多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムは、多変量欠陥検出アルゴリズムと、関連化学物質のスペクトルの大型コンピュータ化ライブラリを参照しながら、微量レベルにある広範囲の化合物を迅速に認識および定量化することが可能であるスペクトル残差分析とを含む。多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムは、いくつかの実施形態では、多変量スペクトルプロファイルにアプローチを適用することができるので、「多変量」であると呼ばれる。多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムは、アルゴリズムが、関心化学物質および各同定された化学物質の計算された濃度を同定する1つ以上の段階を含むことができるので、「多段階」であると呼ばれる。例えば、ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムは、(例えば、スペクトル参照ライブラリを使用して生成される管理図に基づいて)背景補正サンプル測定から1つ以上の候補化学物質を計算する第1の段階を含むことができる。いくつかの実施例では、ライブラリ検索、定量化、および欠陥検出アルゴリズムは、1つ以上の候補化学物質に基づいて(例えば、残差、t値、および/または濃度に基づいて)1つ以上の関心の化学物質を決定および精緻化する第2の段階を含むことができる。多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムはしばしば、省略のために本明細書では「検索、検出、および定量化アルゴリズム」と呼ばれる。
【0032】
データ品質診断モジュールは、ライブラリ検索、欠陥検出、および定量分析の前に、データ完全性のために現在のサンプル測定値を選別する。データ品質診断モジュールはまた、背景アルゴリズムに含むためのサンプルを限定し、さらに、サンプルストリームの中の低速化学ポイズニングに起因する背景汚染を防止するために、データバッファを通して背景をフィルタにかける。コンピュータプログラムは、背景型プロセスにおいてより複雑な多変量モデルを動的に更新することが可能な状態のままでありながら、リアルタムでサンプル測定を迅速に分析するために、マルチスレッドアーキテクチャを使用する。
【0033】
本明細書および/または図は、背景補正サンプルスペクトルを生成するために背景アルゴリズムを適用することと、補正サンプルスペクトルを分析するために検索、検出、および定量化アルゴリズムを使用することとに関する技法を説明するが、これらの技法は、アルゴリズムが併用されることを必要としない。いくつかの実施形態では、背景アルゴリズムのみが、背景補正サンプルスペクトルを生成するために使用される(例えば、異なるアルゴリズムが欠陥を検出するために使用される)。いくつかの実施形態では、検索、検出、および定量化アルゴリズムのみが、欠陥を検出するために使用される(例えば、検索、検出、および定量化アルゴリズムは、非補正サンプル測定、進化型背景補正サンプル測定、または異なる背景補正アルゴリズムによって生成される別の背景に適用される)。
【0034】
図1は、サンプル中の化合物を監視、検出、および/または定量化するため(例えば、気体サンプル中の微量気体を監視するため)の検出システムの例示的なブロック図を図示する。検出システム10は、例えば、サリン、タブン、ソマン、硫黄マスタード、およびVX神経ガス等の微量の物質を検出および定量化するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、固体または液体物質の蒸気を検出および定量化することができる。検出システム10は、例えば、吸光度計となり得る、および/またはフーリエ変換分光法、例えば、光学分光法、赤外線分光法(FTIR、FT−NIRS、FT−Raman)、核磁気共鳴(NMR)および磁気共鳴分光イメージング(MRSI)、質量分析法、および電子スピン共鳴分光法等となり得る。いくつかの実施形態では、FT分光法は、パーツバービリオン(ppb)濃度レベルである化学剤および有毒産業化学物質(TIC)を急速に検出および定量化するように設計されている、MKS Instruments,Inc.(Wilmington,MA)によって提供されるAIRGARD(登録商標)空気分析器となり得る。図示される実施形態では、検出システム10は、気体サンプル源26と、測定ユニット27と、検出器30と、プロセッサ34と、ディスプレイ38とを含む。種々の実施形態では、検出システム10は、該当する場合、誤検出または検出漏れとともに、数秒の短期間で、微量の気体を検出するために使用することができる。
【0035】
サンプリングシステム22は、例えば、干渉計を含むことができる。干渉計モジュールは、その供給源によって産生され、サンプル(例えば、サンプリングシステム22内に含有されるサンプル26)を通して伝達される全ての光周波数を測定することができる。干渉信号は、サンプル26を通過させられ、検出器30によって測定されることができる。異なるサンプル(例えば、固体、液体、または気体)の存在が、検出器30によって検出される放射線の強度を変調することができる。検出器の出力は、時間依存性の変数となり得る。この出力信号は、インターフェログラムと表すことができる。インターフェログラムは、受信したエネルギー強度対時間(「時間領域」信号)のプロットとして表すことができる(例えば、インターフェログラムは、可動鏡の変位によって生じる可変光路差の関数となり得る)。インターフェログラムは、供給源によって発せられ、サンプルを通過させられたエネルギーの全ての波長の合計であると理解することができる。フーリエ変換(FT)の数学的プロセスを使用して、コンピュータまたはプロセッサは、インターフェログラムを、サンプルを通して吸収または伝達される光の特徴を示すスペクトルに変換することができる。個々の種類の化合物が、エネルギーの特定の波長を吸収するので、インターフェログラムおよび対応するスペクトルに基づいて、サンプル中に存在する化合物を決定することが可能である。同様に、サンプルによって吸収、またはサンプルを通して伝達されるエネルギーの大きさは、サンプル中の化合物の濃度を決定するために使用されることができる。
【0036】
種々の実施形態では、気体のサンプル源26は、周囲空気となり得る。サンプリングシステム22(例えば、気体サンプリングシステム)は、周辺空気を収集し、それをサンプリングシステム22のサンプリング領域に導入することができる。気体のサンプルは、サンプリングシステム22の入口46および出口50を含む流動システムを使用して、所定の流速でサンプリングシステム22に導入されることができる。
【0037】
いくつかの実施例では、検出器30は、赤外線検出器であり得る。いくつかの実施形態では、検出器30は、冷却検出器である。プロセッサ34は、検出器30から信号を受信して、そのスペクトル指紋によって微量気体を同定するか、またはサンプル内の特定の物質についての相対または絶対濃度を提供することができる。プロセッサ34は、例えば、信号処理ハードウェア、またはパーソナルコンピュータ上で実行する定量分析ソフトウェアとなり得る。プロセッサ34は、処理装置および/またはメモリを含むことができる。プロセッサ34は、サンプル内の複数の気体の濃度を算出しながら、スペクトルを連続的に取得および処理することができる。プロセッサ34は、微量気体の同定、微量気体のスペクトル、および/または微量気体の濃度等の情報をディスプレイ38に伝送することができる。プロセッサ34は、図式および表の形式でのスペクトル濃度時間履歴、ならびに測定されたスペクトルおよびスペクトル残差を保存することができ、これらも表示することができる。プロセッサ34は、再処理のために種々の他のデータを収集および保存する、または後で再検討することができる。ディスプレイ38は、陰極線管ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、フラットスクリーンディスプレイ、または当技術分野で公知である他の好適なディスプレイとなり得る。
【0038】
図2は、サンプル中の化合物を監視、検出および/または定量化するための
図1の検出システム10のための例示的なプロセスフロー200を図示する。サンプル(データ)が、(例えば、
図1の検出器30を介して)202において収集される。206において、データ品質診断モジュール204が、(例えば、計器および/またはサンプルの完全性を検証するために)サンプルを前処理する。前処理がサンプルおよび/または計器の正当性の立証に成功しなかった場合は、データが破棄される。ステップ206における前処理がサンプルの正当性の立証に成功した場合、検出システム10は、背景補正サンプルを生成してサンプルから任意の既知の背景雑音を除去するために、208において(プロセッサ34を介して)背景モデルを適用する(
図3のステップ310を参照)。有利なことに、背景補正サンプルは、検出システム10が、未知の/予期しない化学物質についてサンプルを分析すること、および既知の/予期された化学物質を無視することを可能にする。
【0039】
検索、検出、および定量化モジュール210は、任意の主要化学物質(例えば、検出システム10が警告モジュール224を介して警告をトリガすることに十分な濃度である化学物質)を検索するために、背景補正サンプルを分析する。いくつかの実施形態では、背景モデルは、208において適用されず、検索、検出、および定量化モジュール210は、非補正データを処理する。検索、検出、および定量化モジュール210は、主要化学物質(例えば、0、1、または最大で「n」個の化学物質、nは検出システム10によって事前に定めることができる)があるかどうかを決定するために、背景補正サンプルの反復分析を行う。反復分析は、最小二乗回帰モジュールを使用し、最小二乗回帰モジュール212および欠陥検出モデルアプリケーションモジュール214を使用して実行される。2つのモジュールは、以下でさらに詳細に説明される。
【0040】
検索、検出、および定量化モジュール210は、主要化学物質検索の結果をデータ品質診断モジュール204に伝送する。216において、データ品質診断モジュール204は、サンプルが背景モデル(BGM)および/または欠陥検出モデル(FDM)に組み込まれるべきかどうかを決定する。決定が「はい」である場合、データ品質診断モジュール204は、サンプルを時間遅延バッファ218に伝送する。決定が「いいえ」である場合には、データ品質診断モジュール204は、サンプルを破棄する。例えば、検索、検出、および定量化モジュール210が、主要化学物質を同定しなかった場合には、(例えば、背景モデル220および欠陥検出モデル更新222を介して)サンプルを用いてモデルを更新することが、いずれの主要化学物質をもサンプルに組み込まないので、データ品質診断モジュール204は、サンプルをバッファ218に伝送する。しかしながら、検索、検出、および定量化モジュール210が、1つ以上の主要化学物質を同定した場合には、データ品質診断モジュール204は、主要化学物質が背景モデルに組み込まれることを防止するために、サンプルを破棄し、バッファ218の中のサンプルを一気に消去する(検出システム10に主要化学物質を不適切に無視させ得る)。
【0041】
主要スレッド201は、検出システム10が(例えば、検出器30から伝送されたインターフェログラム上の)データを取得すると、リアルタイムで実行する。並列スレッド226は、関心化学物質または気体の検出、定量化、および警告のための検出システム10のアルゴリズムを更新するために、背景で(例えば、非リアルタイムで)実行する。主要スレッド201および並列スレッド226は、別個のコンピュータプログラムスレッド、別個の中央処理装置(CPU)コア、別個のコンピュータシステム、および/または同等物として実行することができる。例えば、主要スレッド201および並列スレッド226は、主要スレッド201が第1のスレッドであり、背景スレッド226が第2のスレッドであるマルチスレッドアーキテクチャとして実装することができる。
【0042】
概して、主要スレッド201は、(例えば、第1のモデル更新モジュール220Aを介して)第1のモデル更新を計算すること、(例えば、欠陥検出モデルアプリケーション214を介して)1つ以上の関心化学物質を同定するための欠陥検出モデルを含む検索、検出、および定量化モジュール210を介してリアルタイム分光測定を分析すること、(例えば、警告モジュール224を介して)1つ以上の関心化学物質を報告することを行うように構成される。主要スレッド201は、一組の処理された吸光度スペクトル(例えば、背景補正吸光度スペクトル)、背景スペクトル(例えば、背景モデルを更新するために使用されるスペクトル)、および検出された関心化学物質およびそれらの関連濃度ならびに警告情報のリストを出力する。この情報は、例えば、リアルタイム表示のために、
図1のディスプレイ38(例えば、ユーザインターフェース)にストリーミングすることができ、および/または背景モデル220および欠陥検出モデル更新222が情報を取り出してモデルを更新することができるように、バッファ218に入力することができる。
【0043】
概して、並列スレッド226は、(例えば、第2のモデル更新モジュール220Bを介して)第2のモデル更新を計算するように、および(例えば、欠陥検出モデル更新222を介して)欠陥検出モデルを更新するように構成される。さらに、並列スレッド226は、主要スレッド201と並行して実行することができる他の機能性を果たすように構成することができる。例えば、並列スレッド226は、検出システム10の性能を決定すること等の、データ品質診断モジュールにおいて記述される何らかの機能性を実行することができる。いくつかの実施例では、並列スレッド226は、(例えば、計器機能における実際の動向、環境条件、または両方に基づいて、データ品質診断モジュール204を介して)背景モデル、検索、検出、および定量化アルゴリズム、または両方の更新速度を決定することができる。
【0044】
データ収集202を参照して、モジュールはまた、コンテキストデータ(例えば、タイムスタンプ、温度、検出システム10に関する情報、信号レベル(例えば、信号対雑音比が低下した場合)等)を取得することもできる。データ収集モジュール202は、例えば、検出システム10に対するインターフェログラムおよび/または診断データに作用する。診断データは、例えば、時間、インターフェログラム最大振幅(PP)、インターフェログラム直流(DC)、変調効率、レーザ最大振幅(PP)(ボルト(V))、レーザ直流(DC)(V)、検出器(例えば、検出器30)の温度、レーザ周波数(cm
−1)、サンプル気体の流速(L/分)、電池(例えば、サンプリングシステム22内の電池、気体電池等)の温度(摂氏(C))、圧力(atm)、ポンプ(例えば、サンプルを入力するサンプル)、流入サンプル26の温度、スターリング検出器30の温度(ケルビン(K))、検出システム10の内側の温度、基板温度(例えば、検出システム10が実装される回路基板の温度)等を含むことができる。
【0045】
データ品質診断モジュール204を参照して、モジュールは、(206を介して)データを検出システムに入れるかどうか、および(を208介して)データをモデルに組み込むかどうかを決定する。データ品質診断モジュール204は、処理されたインターフェログラムを生成するために、他のモジュールによって使用するためのインターフェログラムを前処理することができる。例えば、前処理は、センターバースト位置整列、スキャン方向整列、スキャン方向補正、その単一の長さおよび大きさにおけるインターフェログラム検証、2つ以上のインターフェログラムの共同追加(例えば、2つ以上の連続したインターフェログラムを平均化する)、広域フィルタ、および/または線形化を行うことを含むことができる。データ品質および診断モジュール204は、本願の明細書によれば、単一掃引インターフェログラム(10インターフェログラム/秒)を処理する、および/またはインターフェログラムを共同追加するように構成することができる。
【0046】
データ品質および診断モジュール204をさらに参照すると、モジュールは、吸光度スペクトルを生成するために処理されたインターフェログラムを適格とすることができる。例えば、データ品質診断モジュール204は、インターフェログラムの不具合およびセンターバーストの急上昇を検出して記録することによって、処理されたインターフェログラムを適格とする。データ品質診断モジュール204は、診断データ(例えば、上記で説明されるようなインターフェログラムPP、インターフェログラムDC等)を表にすることができる。データ品質診断モジュール204は、時間領域にある限定インターフェログラムを周波数領域に変換することができる。例えば、データ品質診断モジュール204は、適格とされたインターフェログラムを透過率スペクトルに変換する。周波数領域への変換プロセスは、例えば、DCおよび勾配補正、アポディゼーション、高速フーリエ変換(FFT)、位相補正、および/または他の変換を含むことができる。データ品質診断モジュール204は、吸光度スペクトルを計算するために透過率を使用することができる。データ品質診断モジュール204は、吸光度スペクトルを背景モデル適用ユニット208に伝送することができる。
【0047】
データ品質診断モジュール204をさらに参照して、モジュールは、現在較正されている条件下で、検出システム10の実際の性能を反映するデータおよび統計を記憶することができる。データ品質診断モジュール204は、(例えば、システム設計仕様に基づいて)システム性能を監視することができる。データ品質診断モジュール204は、標的化学物質に対する検出限度(例えば、関心化学物質として分類される化学物質に対する検出閾値)を提供することができる。データ品質診断モジュール204は、検出限度を推定するために、検索、検出、および定量化モジュール210によって実行されるアルゴリズムに基づいて、検出分布の不確実性を計算することができる。
【0048】
検索、検出、および定量化モジュール210を参照すると、モジュールは、(例えば、高速実行プロセスを介して)欠陥があるかどうかを検出し、次いで、欠陥検出を微調整するためにライブラリ検索を行う。概して、検索、検出、および定量化モジュール210は、最初に、マスク関数を吸光度スペクトルに適用して、マスクされたスペクトルを生成する。マスク関数(例えば、重み付け関数)は、例えば、同じ次元のサンプル信号を有する一連の値(例えば、0から1の間)であり得る。0という値が、信号から対応する変数を完全に除外する一方で、1は、変数が正常に処理されることを可能にする。0から1の間で値が高いほど、変数に対する重み付けが大きくなる。マスク関数は、一般的な干渉物(例えば、H
2OおよびCO
2、空気中の2つの化学物質)の吸光度ピークに基づいて定義することができる。マスク関数は、事前に定義、または動的に決定されることができる。マスク関数更新は、EWMAアルゴリズムによる(例えば、スペクトル更新モジュール130からの)干渉物の質および数量に従って実装することができる。次いで、検索、検出、および定量化モジュール210は、得られたスペクトルで検索、検出、および定量化アルゴリズムを実行する。検索、検出、および定量化モジュール210は、任意の検出された化合物(または化学物質)に対する濃度、スペクトル、残差、およびt値を生成する。
【0049】
欠陥検出モデルアプリケーション214は、候補化学物質を同定する第1の段階を実行する。第1の段階は、例えば、(例えば、以下の式13?14を使用して)ライブラリの中の各化学物質に対する回帰係数を計算するために、スペクトルライブラリ228(例えば、化学スペクトルのライブラリ)に対する多変量回帰を行うことを含むことができる。第1の段階は、回帰係数に基づいて、(例えば、式15を使用して)管理図を計算することを含むことができる。第1の段階は、検索、検出、および定量化モジュール210の第2の段階に伝えられる、最高係数(例えば、最上位の「n」スコア、数字nは事前に定められる)を伴う最上位の化学物質(候補化学物質)を同定することを含むことができる。
【0050】
最小二乗回帰モジュール212は、欠陥検出モデルアプリケーション214によって計算される、最上位の同定された化学物質に多変量残差分析を行うことを含む、第2の段階を実行する。第2の段階は、最高残差低減を伴う主要化学物質を検出(または同定)ことを含むことができる。検出された化学物質について、(「残差分析」とも呼ばれる)第2の段階は、(検出信頼を測定する)t値および/または化学物質の濃度を計算することを含むことができる。第2の段階はまた、例えば、決定された化学物質に基づいて、残差スペクトルを更新することを含むことができる。更新された残差スペクトル(主要化学物質が除去されたスペクトル)は、(例えば、候補化学物質が所定の閾値を上回る場合に)第1および第2の段階の次の反復のために、欠陥検出モデルアプリケーション214にフィードバックすることができる。各反復において、例えば、急激な変化がなくなる(例えば、最高残差低減を伴って化学物質が同定されなくなる)、および/または最大化学物質数が決定されるまで、単一の化学物質(または化合物)を同定することができる。検索、検出、および定量化モジュール210は、1つ以上の関心化学物質に対するデータ(例えば、t値および検出された濃度)を警告モジュール224に伝送する。データ品質診断モジュール204はまた、検索、検出、および定量化モジュール210からのデータを、バッファ218の中にバッファリングすることもできる。有利なことには、検索、検出、および定量化210における2つの段階は、検出システム10が、欠陥が存在するかどうかを迅速に決定し、次いで、データを精緻化して実際の効果(例えば、主要化学物質を同定するか警告をトリガするかどうか)を決定することを可能にする。
【0051】
警告モジュール224を参照すると、このモジュールは、1つ以上の関心化学物質と関連付けられるデータに基づいて、警告をトリガするか否かの決定を行う。警告モジュール224が警告をトリガする場合、モジュールはまた、警告の信頼レベル(例えば、低、中、高)を決定するように構成することもできる。警告モジュール224は、1つ以上の関心化学物質のうちのそれぞれに対する別個の警告決定構造を定義することができる。例えば、警告モジュール224は、関心化学物質の現在の濃度が、ユーザ定義された脅威濃度レベルを超えるかどうかを決定することができる(例えば、化学剤については、閾値は0に設定することができ、アンモニア等のTICについては、閾値は多くのppmに設定することができる)。警告モジュール224は、警告の信頼レベルを計算するために、異なる警告閾値を使用することができる(例えば、警告モジュール224は、それぞれ、低、中、および高警告に、低、中、および高信頼レベルを使用することができる)。警告をトリガするために、種々の基準を(単独で、または組み合わせて)使用することができる。例えば、t値を警告のために事前構成することができ、「nおよびm」値を設定することができ(例えば、最後の「m」スペクトルからの「n」がt値を超える場合、警告がトリガされる)、および/または他の警告基準を構成することができる。警告モジュール224はまた、(例えば、現在のスペクトルがアルゴリズム更新に使用されるべきであるかどうかを決定するために使用することができる)検出の種類を示す更新フラグを出力することもできる。例えば、更新フラグは、(例えば、干渉物および/または脅威化合物を含む)化学物質検出がなかった場合には0、脅威検出がなかった(しかし干渉物検出があった)場合には1、警告がなかった(干渉物および/または脅威化合物検出があったが、警告がトリガされなかった)場合には2に設定される、整数となり得る。
【0052】
背景モデル220を参照して、第1のモデル更新モジュール220Aは、バッファ218の中のデータに基づいて(例えば、以下で説明されるような式4を使用することによって)、背景モデル220の第1のモデルを算出する。データバッファ218は、サンプルストリームの中の低速化学データポイズニングに起因する汚染を防止することができる。例示目的のみで、サンプルが0.1秒ごとに採取され、化学物質の量が少なすぎて、(例えば、検索、検出、および定量化アルゴリズムによって)それを主要化学物質として分類させることができないため、システムが最初の4分間に化学物質を検出することができないように、化学物質がサンプルにゆっくりと導入されると仮定されたい。さらに、5分で、化学物質のレベルがシステムに化学物質を主要化学物質として分類させるほど十分大きいと仮定されたい。背景モデルが各サンプルで更新される場合、背景モデルは、システムが化学物質を検出することができない場合に、最初の4分間中に、新しい化学物質をゆっくりと組み込み始めてもよい。これは、背景モデルが化学物質を組み込んでいるため、5分後にシステムに化学物質を検出させないことができる。有利なことには、背景モデルに組み込む前に、データを記憶するために十分なサイズ(例えば、5分)にデータバッファを設定することによって、背景モデルは、微量の化学物質を有する測定のうちのいずれかを組み込むように更新されない。いったんシステムが4分後に化学物質を検出すると、データバッファに記憶されたデータは破棄され、背景モデルに組み込まれない。加えて、データ品質診断モジュール204は、1つ以上の条件に基づいて、サンプルがバッファ218の中へストリーミングされることを可能にするように構成することができる。条件は、例えば、サンプルがいずれの警告も引き起こさなかったこと、サンプルが関心化学物質のいずれの検出も含まなかったこと、および/またはサンプルが干渉物のいずれの検出も含まなかったこととなり得る。
【0053】
データバッファ218のサイズは、2分等の遅延時間(例えば、進化型背景モデルを更新する前に検出システム10が待機する時間量)に基づいて計算することができる。データバッファ218は、背景更新フラグが「オン」に設定された場合に、更新し続けるように構成することができる。背景更新フラグが「オン」に設定された場合に、第1のモデル更新モジュール220Aは、データバッファ218から最後のサンプル(例えば、インターフェログラム)を取り出し、(例えば、以下の式5を使用することによって)、第1のモデルをスペクトルの中へ算出する。第1のモデル更新モジュール220Aは、背景更新フラグが「オフ」に設定された場合に、データバッファ218を一気に消去することができる。データバッファ218は、背景更新フラグが「オン」状態に設定されるまで、再び満たされない。第2のモデルは、第2のモデル更新モジュール220Bを使用することによって計算することができる。有利なことには、第1のモデル更新モジュール220Aは、第2のモデル(またはその複数部分)が並列スレッド226によって計算されている間に、背景モデル220の第1のモデルを更新することができる。
【0054】
検出システム10によって使用されるモデル(例えば、背景モデルおよび欠陥検出モデル)は、任意の計器および/または環境変動(あるいは動向)を考慮に入れるように更新することができる。有利なことに、進化背景データをバッファリングすることによって、検出システム10は、検出された化学物質(例えば、干渉物および/または標的化合物)を有するものとして同定されるサンプル測定(例えば、サンプルスペクトル)が、背景モデルに組み込まれることを防止することができる。したがって、バッファ218に記憶された(したがって、背景モデルに組み込まれた)スペクトルは、「クリーンな」スペクトルと見なすことができる。データバッファに適用される時間遅延は、モデルが、関心化学物質または気体を含有するスペクトルによって汚染されることを防止することができる。例えば、検出システム10が、バッファの中の任意のスペクトルから関心化学物質または気体を検出するときに、データバッファの中の全てのスペクトルを拒絶することができる。さらに、アルゴリズムモデルの更新が、時間のかかる行列演算を伴い得るため、検出システム10は、(例えば、主要スレッド201による)個別サンプルの化学的同定および定量化の分析から独立して、(例えば、並列スレッド226によって)モデルを更新するように構成することができる。
【0055】
並列スレッド226を参照して、主要スレッド201は、検出システム10の分析が所望の処理速度を満たすことを確実にする高い優先度で実行するように構成することができる一方で、並列スレッド226は、(例えば、主要スレッド201に必要であるように、バッファ218の中のデータを更新する比較的低い優先度で)背景で実行するように構成することができる。並列スレッド226によって使用されるスペクトルデータは、上記で説明されるようにデータ品質診断モジュール204によって更新される。並列スレッド226は、(例えば、バッファ218から)データおよび結果を受信することができる。
【0056】
背景モデル220を参照して、第2のモデル更新モジュール220Bは、背景モデル220について第2のモデルを計算する(例えば、以下で説明されるような多変量雑音モデル)。第2のモデルは、例えば、較正前多変量雑音モデルまたはいくつかの多項式次数によって初期化することができる。第2のモデル更新モジュール220Bは、(例えば、以下の式8を使用することによって)第2のモデルを計算(または再較正)することができる。有利なことには、第2のモデルは、計器(例えば、レーザPPおよびレーザDCを通した検出システム10)および/または環境(例えば、周囲温度および圧力)の動向に従うように更新することができる。
【0057】
赤外線分光法について、時間t(t=1、2、…、τ)における赤外線吸光スペクトルa
tは、以下のベールの法則;
【0058】
【数1】
によって化学的濃度に関連付けられる。
【0059】
式1について、s
t、s
t,0、およびε
iは、光周波数ν(ν=1、2、…、n)についての全ての関数である。したがって、既知の濃度である化学物質(種)の吸光度を測定することによって、既知の濃度および所与の波長(例えば、波数)に対する化学物質の吸収を決定することが可能である。吸収スペクトルは、一連の波長に対する、既知の濃度における化学物質の吸光度を測定することによって生成することができる。式1は、行列形式:
【0061】
【数2-2】
で書き換えることができる。
【0062】
式2の中の重要変数はしばしば、S
0(「背景スペクトル」または「複数の背景スペクトル」)であり、これは、一般的に単一の背景スペクトルによって近似される。しかしながら、単一の背景スペクトルを使用する場合の実践において、(例えば、
図5を参照して説明されるように)変化を無視できない程度に、体系的変動およびスペクトル変動が経時的に変化し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるシステムおよび方法は、背景スペクトルをより正確に予測するために、背景モデルを生成する。
図3は、背景モデルを生成するための例示的なコンピュータ実装方法300を図示する。
図3は、段階304および306において第1および第2の背景モデルを計算することを描写するが、背景モデルは、任意の数の段階を含むことができる。例えば、背景モデルは、段階304(例えば、進化型背景モデル)だけ、段階306(例えば、多変量雑音モデル)だけ、および/または単独で、あるいは他の段階(例えば、3つの段階、4つの段階等)と組み合わせて、段階304および/または段階306の任意の組み合わせを含むことができる。
【0063】
ステップ302において、検出器30は、デジタル化分光プロファイルを含む背景測定(例えば、関心サンプルが導入される前に清潔な環境で測定される)を受信する。ステップ304および306において、背景モジュールは、(例えば、それぞれ、第1のモデル更新モジュール220Aおよび第2のモデル更新モジュール220Bを介して)例えば、分光学的プロセスに背景アルゴリズムを使用して、背景モデルを計算する。背景アルゴリズムは、第1の時間効果をモデル化するために、背景測定に基づく第1のモデルを計算することを含む(ステップ304、第1の段階)。例えば、背景アルゴリズムは、背景測定に基づいて進化型背景モデルを計算する。
【0064】
背景アルゴリズムは、第1の時間効果とは異なる時間効果をモデル化する第2のモデルを計算することをさらに含む(ステップ306、第2の段階)。背景アルゴリズムは、サンプル測定および/または第1のモデルに基づいて第2のモデルを計算することができる。例えば、背景アルゴリズムは、背景測定および第1のモデルに基づいて多変量雑音モデル(例えば、式3からのP’
sys)を計算することができる。ステップ308において、検出器30が、デジタル化サンプルスペクトルを含む、(例えば、サンプル測定が採取された後の環境の)サンプル測定を受信する。ステップ310において、プロセッサ34が、サンプル測定および背景モデルに基づいて背景補正サンプル測定を生成する。ステップ312において、背景モジュールは、サンプル測定が多変量多段階背景モデルへの更新として包含することに対して好適であるかどうかを決定する。背景モジュールが好適であると決定した場合、方法300はステップ312に進む。ステップ312において、背景モジュールは、サンプル測定に基づいて背景モデルを更新する。背景モデルが好適ではないと決定した場合、方法300はステップ308に戻り、プロセスは繰り返す。
【0065】
「時間効果」という用語は、第1のモデルおよび第2のモデルに関して、モデル間の差異を表すために使用される。例えば、第1の時間効果は、背景動向および雑音の平均(例えば、長期)モデル(例えば、サンプルの指数的に重み付けられる移動平均)である。第1のモデルの曲線が実際の背景の曲線に対して描画される場合に、第1のモデルが背景を密接に近似するが、完璧には背景に合致しないので、第1のモデルは、第1の時間効果(例えば、平均または長期効果)をモデル化する。第1のモデル曲線と背景曲線との間の差異は、残差と呼ばれる(例えば、第1のモデル曲線は、特定の期間における量「デルタ」だけサンプルを上回り得、または下回り得る)。第2のモデルは、短期の残差プロファイルである第2の時間効果をモデル化する(例えば、第1のモデルと実際の背景との間の短期間の差異)。
【0066】
概して、検出システム10は、1つのスペクトル(例えば、サンプル測定値)を測定するが、検出に背景補正サンプルスペクトルを使用する(例えば、
図8−9に関して説明されるように)。検出システム10はまた、(例えば、脅威化学物質を含まない場合)サンプル測定を既存の第1のモデル(例えば、進化型背景モデル)に平均化することもできる。例えば、進化型背景モデルは、スペクトルの平均容量のみを表し得るので、進化型背景モデルは、実際のシステムと現在の測定との間の差異を表し得ない。差異はさらに、第2のモデル(例えば、多変量雑音モデル)によってモデル化することができる。例えば、多変量雑音モデルは、進化型背景モデルの雑音残差をモデル化することができる。
【0067】
ステップ304−306を参照して、背景モデルは、周波数領域におけるデジタル化分光プロファイル(例えば、データ品質診断モジュール204によって生成されるスペクトル)を含むことができる。例えば、背景モデルは、式2にS
0を含むことができる。デジタル化分光プロファイルは、任意の種類のスペクトルとなり得る。例えば、スペクトルは、(例えば、FTIRを通して測定される)分光スペクトルおよび/または(例えば、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)、液体クロマトグラフィ(LC)、ガスクロマトグラフィ(GC)を通して測定される)質量スペクトル、および核磁気共鳴(NMR)となり得る。
【0068】
ステップ304を参照して、第1のモデルは、進化型背景モデルとなり得る。進化型背景モデルは、経時的に起こる計器および/または環境の任意の変化(例えば、有意な変化)を補正するために頻繁に更新することができる。有利なことに、進化型背景モデルは、(例えば、連続監視点センサ等の分析用途のために)赤外線測定が長期間にわたって計算されることを可能にする。「進化型」という用語は、進化型背景モデルに関して、背景モデルが経時的に何らかの方法で変化させられることを伝えるために使用される。例えば、デジタル化分光プロファイルの信号対雑音比を、長期間にわたって平均化することができる。いくつかの実施形態では、進化型背景モデル(例えば、移動平均背景モデルまたは重み付けされない平均背景)である。検出システム10は、スペクトルを平滑化するための低域フィルタを用いて背景測定をフィルタにかけること(例えば、時系列において、例えば、800から最大4000まで、1つのスペクトルにおいてフィルタにかけること等)によって、進化型背景モデルを生成することができる。進化型背景モデルは、時間領域または周波数領域のいずれか一方において計算および/または更新することができ、それは、
図4のステップ402−404に関してさらに説明される。
【0069】
ステップ306を参照して、背景をより正確にモデル化するために(例えば、長期間にわたって連続分析を促進するために)、第2のモデルは、第1のモデルからの残りの雑音をモデル化する。例えば、背景モジュールは、多変量雑音モデルを使用して、第1のモデルからの雑音をモデル化し、除去することができる。多変量雑音モデルは、例えば、平均多変量雑音モデルとなり得る。第1のモデルの残りの雑音を多変量モデルによって表すことができると仮定して、式2は、以下のように:
【0071】
【数3-2】
と書き換えることができる。
【0072】
式3を参照すると、m
sysは、整数定数である。m
sysの値は、(例えば、較正データセットによって)演繹的に決定することができる。値はまた、リアルタイムで得られたスペクトル行列に基づいて、相互検証アプローチによって動的に決定することもできる。P’
sys、多変量雑音モデルは、式3を使用するために解決することができる。多変量雑音モデルは、吸光度スペクトル、診断データ、第1のモデル、および他のデータに基づく多変量方法を使用して、定義することができる。多変量方法は、例えば、主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、多変量曲線分解(MCR)、部分最小二乗法(PLS)、全最小二乗法(TLS)、重み付け最小二乗法(WLS)、連続回帰(CR)、およびリッジ回帰(RR)を含むことができる。多変量回帰方法を実装するために、計器および環境診断データ(例えば、経過した時間、周囲温度、システム(例えば、検出システム10)に関係する温度、供給源(例えば、サンプル26)、検出器(例えば、検出器30)、関連電子回路等)は、第1のモデルの残りの雑音x変数に対して回帰するために、y変数として使用することができる。多変量雑音モデルは、
図4のステップ406−408に関して説明されるように更新することができる。
【0073】
図4は、背景モデルを更新するための例示的なコンピュータ実装方法400を図示する。ステップ402において、第1のモデル更新モジュール220Aが、第1のモデルおよびサンプル測定に基づいて、第1のモデル更新を計算し、第1のモデル更新は、雑音データ(例えば、最終的にモデル化され、第2のモデルを使用して相殺される雑音データ)を含む。ステップ404において、第1のモデル更新モジュール220Aが、第1のモデル更新に基づいて背景モデルを更新する。ステップ406において、第2のモデル更新モジュール220Bが、第1のモデル更新の中の雑音データを更新するために、第2のモデルを計算する。ステップ408において、検出システム10が、(例えば、第2のモデル更新モジュール220Bおよび/または第1のモデル更新モジュール220Aを介して)第2のモデル更新に基づいて背景モデルを更新し、第1のモデル更新からの雑音データは、第2のモデル更新を使用して低減される。
【0074】
ステップ402−404を参照すると、第1のモデル更新モジュール220Aは、第1のモデル更新を計算する。いくつかの実施形態では、第1のモデルは、経時的に更新される、指数的に重み付けられる移動平均(EWMA)モデルとなり得る。第1のモデルは、時間領域(例えば、第1のモデルがインターフェログラム背景である場合に時間領域更新に基づいて)または周波数領域(例えば、第1のモデルがスペクトル背景である場合に周波数領域更新に基づいて)のいずれか一方において更新することができる。例えば、第1のモデル更新モジュール220Aが時間領域において第1のモデルを維持する場合、更新プロセスは以下:
【0075】
【数4】
のように表すことができる。
【0076】
式4を参照して、第1のモデル更新モジュール220Aは、更新定数または更新定数配列に基づいて第1のモデルを計算することができる。いくつかの実施形態では、λ
0は、更新定数であり、λ
0の同じ値が、インターフェログラム全体にわたって使用される。例えば、インターフェログラムが第1のモデルに使用される場合、同じ定数(例えば、λ=0.9)がインターフェログラムにおける全ての点に使用される。λ
0のより大きい値は、最近の背景観察により多くの重み付けを与え、時間においてさらに除去される背景観察にはより少ない重み付けを与えることができる。λ
0のより小さい値は、最近の背景観察により少ない重み付けを与えることができる。いくつかの実施形態では、λ
0は、時間領域における背景の変数を更新するための種々の速度を提供する更新定数配列となり得る。例えば、λ=0.9の更新定数が、いくつかのインターフェログラム点に使用され、λ=0.8の更新定数が、いくつかのインターフェログラム点に使用され、λ=0.1の更新定数が、いくつかのインターフェログラム点に使用される等である。定数配列は、信号を雑音と区別するプロセスによって定義することができる。
【0077】
λ
0の値は、システムパラメータに基づいて(例えば、検出システム10に対する診断データおよび/またはデータ品質診断モジュール204によって収集される情報)に基づいて事前に定めることができる。λ
0の値は、例えば、関心スペクトル変動および/または環境動向の間の分離を最適化するために、動的に決定(または再計算)することができる。例えば、第1のモデル更新モジュール220Aは、計器の動向率、環境変動、または両方に基づいて、(例えば、データ品質診断モジュール204によって決定される)λ
0を変化させることができる。例えば、環境が安定している場合、λ=0.9の値を使用することができるが、環境が悪化する場合には、環境の変化を反映するためにλを0.9から0.8に変化させることができる。
【0078】
第1のモデル更新モジュール220Aは、周波数領域中で第1のモデルを維持することができる。例えば、第1のモデル(および更新プロセス)が上記で説明されるように時間領域において維持される場合、第1のモデル更新モジュール220Aは、周波数領域において第1のモデルを計算することができる。例えば、第1のモデル更新モジュール220Aは、高速フーリエ変換(FFT)を使用して、周波数領域における第1のモデルを計算することができる。データ品質診断モジュール204は、フィルタリング、線形化、アポディゼーション機能、位相補正等を含む、背景インターフェログラムのデータ処理を行った後に、FFTを適用することができる。変換は、以下のように:
【0080】
有利なことには、頻繁に更新することができる第1のモデル(例えば、進化型背景モデル)を使用することによって、単一の背景スペクトルだけを使用することと比較して、体系的変動およびスペクトル変動を有意に低減することができる。第1のモデル更新モジュール220Aは、(例えば、i
t,0に基づく)第1のモデルおよびサンプル測定に基づいて第1のモデル更新(例えば、時間領域におけるi
t+1,0、または周波数領域におけるs
t+1,0)を計算することができ、第1のモデル更新は、雑音データ(例えば、最終的にモデル化され、第2のモデルを使用して相殺される雑音データ)を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、第1のモデル単独のみ(例えば、背景モデルの第1の段階のみ)を使用することは、依然として全ての雑音を白色化しない場合がある。例えば、単一の背景スペクトルのみを使用する場合に、体系的な変化がわずかではない場合がある。
【0081】
ステップ406−408を参照すると、第2のモデル更新モジュール220Bは、第2のモデル更新を計算する。第2のモデル更新モジュール220Bは、第1のモデルに基づいて第2のモデルをフィルタにかけることができる。第2のモデル更新モジュール220Bは、多変量アプローチに基づいて多変量雑音モデルの残りのスペクトル変動を補正することができる。検出アプローチ10は、経時的な計器および環境の変化(例えば、微妙な変化および明白な変化の両方)を反映するために、第2のモデルを頻繁に更新することができる。例えば、検出装置10は、新しいスペクトルデータの変化に基づいて、第2のモデルの座標軸を回転させることができる。検出装置10はまた、経時的に第2のモデルを進化させることもできる(例えば、平均、EWMA等)。例えば、EWMAは、上記で説明される多変量方法と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、第2のモデル更新は、指数的に重み付けられる移動主成分分析(EWM−PCA)、指数的に重み付けられる移動独立成分分析(EWM−ICA)、指数的に重み付けられる移動多変量曲線分解(EWM−MCR)、指数的に重み付けられる移動部分最小二乗法(EWM−PLS)、指数的に重み付けられる移動全最小二乗法(EWM−TLS)、指数的に重み付けられる移動重み付け最小二乗法(EWM−WLS)、指数的に重み付けられる移動連続回帰(EWM−CR)、および指数的に重み付けられる移動リッジ回帰(EWM−RR)を使用して第2のモデルによって拡張される雑音部分空間でEWMAを使用して、計算される。EWM−PCAの例示的な説明は、式6?12を用いて以下で提供される。EWM−PCAについてのさらなる詳細は、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれるS.Wold,Exponentially weighted moving principal components analysis and projection to latent structures,EWMPCA and EWMPLS.Chemom.Intell.Lab.Syst.23,p.149−161(1994)で見出すことができる。EWM−PCAは、2つの計算成分を含むことができる。EWM−PCAアルゴリズムの第1の部分では、第2のモデル更新モジュール220Bは、(例えば、式6を使用して)デジタル化分光プロファイルに基づいて次の時点における更新されたプロセス値を計算することによって、第2のモデルを計算する。第2の部分では、動向プロセスのためのPCAモデルが開始されて更新される。
【0082】
EWM−PCAアルゴリズムの第1の部分を参照すると、プロセス値は、現在のプロセス値に基づいて更新され、以下:
【0084】
【数6-2】
に従って、次の時点t+1において予測される。
【0085】
残りの色雑音は、式6によって推定され、最終サンプルスペクトルは、以下:
【0087】
EWM−PCAアルゴリズムの第2の部分を参照して、第2のモデル更新モジュール220Bは、(a)初期の第2のモデルを開始(または計算)し、(b)(例えば、計器および環境変動を反映するために)第2のモデルを更新する。初期化に関して、第1のモデルが上記で説明されるように計算された後に、サンプルスペクトルA
tは、以下:
【0090】
【化1】
は、
図3のステップ306を参照して上記で説明されるように、PCA、ICA、MCR、PLS、TLS、WLS、CR、およびRRを使用して計算することができる。第2のモデル更新モジュール220Bは、サンプルスペクトルの新しい行列τ(cal+1)×nが使用の準備ができている(例えば、バッファ218の中で準備ができている)場合に、第2のモデルを更新することができる。第2のモデル更新モジュール220Bは、式12によって定義される残差プロファイルを最小化するために、以下の式9、10、および11:
【0095】
【数12】
に従って、開始ステップ(例えば、式8)において確立された
【0096】
【化2】
部分空間の軸を回転させることによって、第2のモデルを更新することができる。
【0098】
【化3】
(第2のモデル更新)は、第1のモデルと関連付けられる雑音データをモデル化する。
【化4】
は、多変量技法を使用して計算された。式11は、新しいデータが第2のモデルに組み込まれることを可能にする。
【0099】
【化5】
は、式12を使用して、および残差プロファイルを最小化するために初期の第2のモデル
【0100】
【化6】
の軸を回転させることによって、初期の第2のモデルに対する残差プロファイルに基づいて計算される。残差プロファイルは、式9−11を使用して計算される。式11を参照して、λ
sysの同じ値をEWM−PCAプロセス全体に使用することができ、またはλ
sysは、データ品質診断モジュール204によって計算されるシステム仕様(例えば、診断データ)および/または性能モニタデータに基づいて計算することができる。
【0101】
【化7】
部分空間の次元は、一定であるように構成することができ、またはオンザフライで決定することができる。有利なことには、背景モデル(例えば、第1のモデルおよび/または第2のモデル)を使用することは、スペクトル変動を有意に低減することができる。
【0102】
図5は、単一の背景スペクトル(またはインターフェログラム)を使用して測定されたサンプルスペクトルの例示的なグラフ500を図示する。時間軸502は、分(min)で表され、0から700分までに及ぶ。波数軸504は、センチメートルの逆数(cm
−1)で表され、500から4500cm
−1までに及ぶ。吸光度軸506は、ミリ吸光度単位(mA.U.)で表され、−2から5までに及ぶ。単一の背景スペクトルは、測定を行う前に計算され、経時的に更新されなかった。背景スペクトルを計算した後に、検出システムが10時間にわたって周囲空気を測定した。周囲空気について、唯一の化学的変化はH
2OおよびCO
2である。しかしながら、グラフ500は、10時間にわたって、2つの気体によるスペクトル変動に加えて、対称変動も観察されたことを示す(例えば、1000、1500、2000、および3500〜4000cm
−1における変動)。最初の数時間(例えば、0から120までの間)でさえも、変動は無視できなくなった。時間が進行するにつれて(例えば、400から700分までの間)、スペクトル変動は、4mA.U.以上であった。
【0103】
図6は、第1のモデルを使用して測定されたサンプルスペクトルの例示的なグラフ600を図示する。時間軸602は、分(min)で表され、0から700minに及ぶ。波数軸604は、センチメートルの逆数(cm
−1)で表され、500から4500cm
−1までに及ぶ。吸光度軸606は、ミリ吸光度単位(mA.U.)で表され、−2から5までに及ぶ。第1のモデル(例えば、EWMA背景モデル)は、(例えば、
図3のステップ304で説明されるように)測定を行う前に計算された。背景スペクトルを計算した後、検出システムが10時間にわたって周囲空気を測定した。(例えば、
図4のステップ402−404で説明されるように)検出システムが周囲空気を測定するにつれて、第1のモデルは経時的に更新された。
図5と同様に、唯一の化学的変化はH
2OおよびCO
2である。グラフ600は、全10時間の期間にわたって、スペクトル変動が1mA.U.を下回ったことを示す。有利なことに、単一の背景スペクトルの代わりに第1のモデルを使用することは、経時的にスペクトル変動を低減した。しかしながら、残りは以前として白色雑音ではない(例えば、0.1mA.U.未満のスペクトル変動)。
【0104】
図7は、背景モデルを使用して測定されたサンプルスペクトルの例示的なグラフ700を図示する。時間軸702は、分(min)で表され、0から700分までに及ぶ。波数軸704は、センチメートルの逆数(cm
−1)で表され、500から4500cm
−1までに及ぶ。吸光度軸706は、ミリ吸光度単位(mA.U.)で表され、−2から5までに及ぶ。背景モデル(例えば、EWMA背景モデルおよびEWM−PCA背景モデル等の第1のモデルおよび第2のモデルを含む)は、(例えば、
図3のステップ304および306で説明されるように)測定を行う前に計算された。背景スペクトルを計算した後、検出システムが10時間にわたって周囲空気を測定した。(例えば、
図4で説明されるように)検出システムが周囲空気を測定するにつれて、背景モデルは経時的に更新された。
図5および6と同様に、唯一の化学的変化はH
2OおよびCO
2である。グラフ700は、全10時間の期間にわたって、スペクトル変動が(
図6に示されるように)第1のモデルだけを使用するよりもさらに低減されたことを示す。全スペクトル変動の約70%が進化背景によって除去された一方で、(最終スペクトル変動が3%未満であるように)第2のモデルを使用することによって、スペクトル変動のさらに約27%が除去された。低減したスペクトル変動は、(検出システムの感度を増加させる)検出限度を減少させる。例えば、第1のモデルだけを使用する場合の平均検出限度が10〜15パーツバービリオン(ppb)に及ぶ一方で、背景モデルを使用する(例えば、第2のモデルも使用する)場合の平均検出限度は、1〜5ppbに及ぶ。
【0105】
図8は、検索、検出、および定量化アルゴリズムを使用して、サンプル中の化合物を監視および検出するための例示的なコンピュータ実装方法800を図示する。ステップ802において、プロセッサ34が、(例えば、検出器30から)デジタル化分光プロファイルを含むサンプル測定を受信する。検索、検出、および定量化アルゴリズムは、システムがサンプル測定を受信する度に繰り返し実行することができる。検索、検出、および定量化モジュール210は、リアルタイム分光測定を分析および解釈するために、検索、検出、および定量化アルゴリズムを使用して、サンプル測定について1つ以上の主要化学物質を計算する。具体的には、検索、検出、および定量化モジュール210は、スペクトル参照ライブラリに基づいて生成された複数の管理図に基づいて、多変量ライブラリ検索を使用して、サンプル測定から1つ以上の候補化学物質を計算する(ステップ804、
図2の最小二乗回帰モジュール212によって実行されるライブラリ検索段階)。検索、検出、および定量化モジュール210は、欠陥検出アルゴリズムを使用して、1つ以上の候補化学物質に基づく主要化学物質を計算する(ステップ806、
図2の欠陥検出モデルアプリケーション214によって実行される欠陥検出段階)。
図8は、検索、検出、および定量化アルゴリズムにおいて2つの段階を描写するが、検索、検出、および定量化アルゴリズムは、任意の数の段階(例えば、ステップ804だけ、ステップ806だけ、または1つ以上の付加的な段階と組み合わせたステップ804および806)を含むことができる。
【0106】
ステップ808において、検索、検出、および定量化モジュール210は、残りの候補化学物質の(例えば、主要化学物質であると決定された候補化学物質を除いた候補化学物質の)うちのいずれかが検索、検出、および定量化モジュール210によって再び評価されるべきかどうかを決定する。例えば、検出、および定量化モジュール210は、残りの候補化学物質のうちの1つ以上が所定の閾値を上回り、したがって、残りの主要化学物質があるかどうかを決定するためにさらに評価されるべきであると決定することができる。ステップ808が、残りの候補化学物質のうちの1つ以上が評価されるべきであると決定した場合、方法800はステップ804へ進む。そうでなければ、方法800は、次のサンプル測定を評価するためにステップ802へ戻る。
【0107】
ステップ802を参照して、サンプル測定は、背景モデルに基づいて計算される(例えば、
図3のステップ310において上記で説明されるように計算される)背景補正サンプル測定となり得る。ステップ804を参照して、このステップは、検索、検出、および定量化アルゴリズムの第1の段階、ライブラリ検索段階である。検索、検出、および定量化モジュール210は、回帰(例えば、PLS)を使用して、(例えば、既知の化学物質のスペクトルライブラリ228に対して)多変量ライブラリ検索を実行することができる。検索、検出、および定量化モジュール210は、回帰に基づいて、スペクトルライブラリの中の各化学物質に対する管理図を構築することができる(例えば、365の化学物質のライブラリがある場合、検索、検出、および定量化モジュール210は365の管理図を構築する)。有利なことには、欠陥検出段階は、第2の段階によるさらなる処理のために強く推奨される候補化学物質のリストを生成する。
【0108】
ステップ804をさらに参照して、1つ以上の候補化学物質は、最小二乗回帰を含む行列ベースの同時比較に基づいて同定することができる。最小二乗回帰は、例えば、部分最小二乗法または逆最小二乗法を含むことができる。
図9は、検索、検出、および定量化アルゴリズムのライブラリ検索段階中に、サンプル中の1つ以上の候補化学物質を同定するための例示的なコンピュータ実装方法900を図示する。ステップ902において、検索、検出、および定量化モジュール210が、スペクトル参照ライブラリ(例えば、式13のK
Library)を受信する。ステップ904において、検索、検出、および定量化モジュール210が、サンプル測定に対するサンプル吸収スペクトル(例えば、以下の式14のa
t+1)に基づいて、背景補正サンプルスペクトル(例えば、以下の式13の
【0109】
【化8】
)を計算する。ステップ906において、検索、検出、および定量化モジュール210が、1つ以上のライブラリ行列入力を計算する。検索、検出、および定量化モジュール210は、(例えば、式13および14を使用して)背景補正サンプルスペクトル、スペクトル参照ライブラリ、および回帰係数ベクトルに基づいて、ライブラリ行列入力を計算する。ステップ908において、検索、検出、および定量化モジュール210は、複数の正規化回帰係数を含む管理図を生成するために、回帰係数ベクトルを正規化する(例えば、以下の式15のb’
t+1)。ステップ910において、検索、検出、および定量化モジュール210が、回帰係数ベクトルに基づいて、1つ以上の候補化学物質を同定および定量化する。1つ以上の候補化学物質の各々は、(例えば、以下の式15および16を使用して決定される)所定の制御閾値よりも大きい対応する正規化回帰係数と関連付けられる。
【0110】
ステップ902を参照して、検索、検出、および定量化モジュール210は、サンプル化学吸光度を含むスペクトル参照ライブラリK
Library、k
Library×n行列を受信する。例えば、K
Libraryが366のライブラリ行列入力を含む場合、k
Library=365である。各ライブラリ行列入力は、サンプルに対するデータ(または化学物質に対するモデルスペクトル)を含む。例えば、各ライブラリ行列入力は、一連の波数にわたる化学物質の吸光度データ(例えば、波数800〜1200cm
−1に対する吸光度データ、したがってn=400)を含むことができる。スペクトル参照ライブラリは、一定となり得る。いくつかの実施例では、スペクトル参照ライブラリは、スペクトルを含む、または除外するために更新することができる。例えば、スペクトル参照ライブラリは、スペクトルを含むか、または除外するために動的に更新することができる。
【0111】
ステップ904を参照して、検索、検出、および定量化モジュール210は、サンプル吸収スペクトルに基づいて、背景補正サンプルスペクトルを計算する。多変量ライブラリ検索アルゴリズムは、時間t+1において背景補正サンプルスペクトルに以下:
【0113】
有利なことに、スペクトル参照ライブラリを使用することによって、システムは、候補化学物質を同定するために速い実装時間を達成することができる。ライブラリ検索の頑健性を増加させるために、式13において示される線形回帰は、吸光度スペクトルに以下:
【0114】
【数14】
のように直接適用することができる。
【0115】
式14を参照して、検索、検出、および定量化モジュール210は、増強されたスペクトル参照ライブラリを生成するために、第2のモデル
【0116】
【化9】
を用いてK
Libraryを増強する。例えば、スペクトル参照ライブラリの中に365の化学物質があり、各化学物質は、1,000の変数を伴う化学スペクトルを含む(よってK
Libraryはk
Library=365×n=1000である)と仮定されたい。検索、検出、および定量化モジュール210は、スペクトル参照ライブラリの中へ第2のモデルを増強(または追加)する。例えば、第2のモデルが3つのベクトルを比較する場合には、第2のモデルは、(k
Library+k
t,sys)=368×n=1000の次元を達成するために、K
Libraryに増強される。検索、検出、および定量化モジュール210は、増強されたスペクトル参照ライブラリに基づいて、サンプル吸収スペクトルa
t+1を線形に回帰する。線形回帰は、例えば、PLS、PCR、GLS、CLS、WLS、CR等の回帰方法を使用して実装することができる。
【0117】
ステップ908を参照すると、管理図が、各スペクトルライブラリ入力について構築される。検索、検出、および定量化モジュール210は、回帰係数ベクトルを以下:
【0119】
【数15-2】
のように正規化することができる。
【0121】
【数17】
式16を参照すると、更新定数λ
Libraryは、計器動向および/または環境動向に基づいて計算することができる。検索、検出、および定量化モジュール210が、正規化回路係数b’
t+1からの任意の値が所定の制御閾値よりも大きいことを決定した場合、検索、検出、および定量化モジュール210は、関連化学物質を候補化学物質として同定する(例えば、化学物質を急激な変化を有するものとして同定する)。候補化学物質は、急激な変化が計器および/または環境変動によるものであるか、あるいは他の理由による(例えば、化学物質放出による)ものであるかどうかを決定するために、第2の段階によって使用される。
【0122】
ステップ806を参照すると、このステップは、検索、検出、および定量化アルゴリズムの第2の段階、欠陥検出段階である。検索、検出、および定量化モジュール210は、第1の段階によって行われる計算を確認する。例えば、検索、検出、および定量化モジュール210は、1つ以上の候補化学物質からの1つの候補化学物質が主要化学物質として同定されるべきかどうかを決定する。いくつかの実施例では、検索、検出、および定量化モジュール210は、1つ以上の候補化学物質のうちのいずれも主要化学物質として同定されるべきではないことを決定してもよい。これは、例えば、サンプル測定への方法800の第1の実行で、または残りの候補化学物質が評価されるべきであることを検索、検出、および定量化モジュール210が決定する(ステップ808)場合に、方法800の後続の反復で起こり得る。
【0123】
ステップ808を参照すると、検索、検出、および定量化モジュール210は、データから除去された最近決定された主要化学物質を有する、ステップ804で使用される残差を計算することができる。例えば、検索、検出、および定量化モジュール210は、サンプル測定から同定された主要化学物質を差し引くことによって、残差プロファイルを計算することができる。ステップ804において、検索、検出、および定量化210が、スペクトル参照ライブラリとの残差プロファイルの比較に基づいて、残差プロファイルの中の第2の組の1つ以上の候補化学物質を同定する。ステップ806において、検索、検出、および定量化210が、第2の組の1つ以上の候補化学物質についての集中的化学評価に基づいて、第2の主要化学物質を同定する(または第2の組の中の候補化学物質のうちのいずれも主要化学物質ではないことを決定する)。方法800の完了時に、主要化学物質の一覧を(例えば、サンプルの中の関心化学物質を追跡するために、ユーザ、データベース等に)報告することができる。
【0124】
検索、検出、および定量化モジュール210は、各候補化学物質を計測するために種々の測定基準を使用することができる。例えば、検索、検出、および定量化モジュール210は、T
2残差低減、t統計値等のスコアを使用することができる(例えば、第1の段階もスコアを使用することができるが、第1の段階は、第1の段階を加速するために予備ライブラリ検索として構成することができる)。検索、検出、および定量化モジュール210は、ある数の主要化学物質を選択するように構成することができる。例えば、検索、検出、および定量化モジュール210は、候補化学物質から最高の5個の化学物質(例えば、最高回帰係数を伴う5個の化学物質)を同定するように構成することができる。例えば、第1の段階が10個の候補化学物質を提供する場合、第2の段階は、10個の候補化学物質から最大で5個の主要化学物質を同定することができる。別の実施例として、4個の候補化学物質が第1の段階で同定される場合、第2の段階は、最大4個の主要化学物質を返信することしかできない。
【0125】
式3を再び参照して、第1の段階によって同定される候補化学物質は、残差分析:
【0126】
【数18】
を使用してさらに分析される。
【0127】
式18を参照すると、式は、脅威化学物質項(
【0130】
【化12】
)、および白色雑音項(e
t+1)といった4つの項を含むようにフォーマットされる。数学的には、式18は、式1および2と同様に、式19に従って以下:
【0132】
【数19-2】
のように表すことができる。
【0133】
残差分析を計算するために、種々の回帰方法(例えば、PLSおよび前述の他の回帰方法)を使用することができる。式18および19は、数学計算を簡略化するために以下:
【0134】
【数20】
のように一般化することができる。
【0135】
式20を参照すると、式20において使用される因数の数は、(例えば、実行時間中に計算、またはシステムにおいて事前構成することができる)公差閾値よりも大きい、行列Kの中の特異値の数によって決定される。行列の中の浮動小数点に基づいて、行列の階数を決定する閾値についての公差は、以下:
【0140】
【数23】
のように計算することができる。
【0141】
検索、検出、および定量化モジュール210は、式23を使用して、二乗平均平方根値に基づく推定パラメータベクトルの精度行列を計算する。検索、検出、および定量化モジュール210は、候補化学物質の各々の各デジタル化スペクトルについて、二乗平均平方根を計算することができる。主要化学物質の推定濃度は、
【0143】
【化15】
の第1のm
Threat要素である。推定濃度の分散は、行列要素Σ
i,i(i=1、2、…、m
Threat)である。検索、検出、および定量化モジュール210は、(例えば、主要化学物質を計算するための)信頼測定基準としてアルゴリズムの全体を通して使用することができる、t統計値を計算することができる。t統計値は、関連候補化学物質の分散に基づいて、各候補化学物質について計算することができる。t統計値は、以下:
【0145】
【数24-2】
によって求められる。
【0146】
上記で説明されるように、式18?24を参照して、検索、検出、および定量化モジュール210は、推定パラメータベクトル(例えば、
【0147】
【化16】
)を生成するために、残差スペクトル(例えば、P
sys)に基づく1つ以上のライブラリ行列入力の残差分析を計算することによって、主要化学物質計算を精緻化する。検索、検出、および定量化モジュール210は、1つ以上の化学物質のうちのそれぞれのRMSを計算するために、式23を使用して各候補化学物質を繰り返し処理する。検索、検出、および定量化モジュール210は、式24を使用して、化学物質のうちのそれぞれのt統計値を計算する。t統計値は、1つ以上の化学物質のうちの関連化学物質の分散に基づく。
【0148】
ステップ910を参照して、検索、検出、および定量化モジュール210は、RMSおよびt統計値の全てを比較する。検索、検出、および定量化モジュール210は、最低RMSおよび最高t統計値を伴う化学物質(または検出システムがどのように構成されるかに応じて、複数の化学物質)を保持する。警告モジュール224は、t値に基づいて、検出および/または警告レベルを示すかどうかを決定することができる。
【0149】
ステップ910をさらに参照して、検索、検出、および定量化モジュール210は、式20を使用して最小二乗回帰から得られた濃度に基づいて、1つ以上の候補化学物質を定量化する。
【0150】
有利なことに、(例えば、
図8のステップ804を参照して説明される)検索、検出、および定量化の第1の段階は、1つ以上の候補化学物質を迅速に同定することができる。次いで、(例えば、
図8のステップ806を参照して説明される)検索、検出、および定量化の第2の段階は、候補化学物質の各々が主要化学物質として同定されるべきか否かを決定することができる。第2の段階によって生成されるデータは、警告をトリガするかどうかを決定するために(および警告のレベルを決定するために)使用することができる。
【0151】
検出システム10によって実装されるプロセス全体を明示するために、実施例が以下で提供される。実際の化学試験からのデータセット(2008年12月2日に国立実験試験センターで収集された)が挙げられる。実験では、塩化シアン(CK)が、生命または健康に直ちに危険な(IDLH)濃度(例えば、20ppm)で10回放出された。Windexの1%ヘッドスペースの干渉物(NH3およびイソプロピルアルコール(IPOH))を、第2の5回CK放出時に導入した。
【0152】
図10は、単一の背景スペクトルを使用して測定された試験スペクトルの例示的なグラフ1000を図示する。時間軸1002は、分(min)で表され、0から120分(2時間)に及ぶ。波数軸1004は、センチメートルの逆数(cm
−1)で表され、1000から4500cm
−1までに及ぶ。吸光度軸1006は、ミリ吸光度単位(mA.U.)で表され、−10から100までに及ぶ。グラフ1000で示されるように、CKピーク(1010A、1010B)は、第2の5回化学物質放出時のNH3およびIPOHの大きなピーク(1020A、1020Bによって示される第2の時間タイムフレーム)によって、著しく干渉されている。実験からの第1のスペクトルは、背景スペクトルとして採用された。
【0153】
図11は、試験スペクトルについて計算された第1のモデルの例示的なグラフ1100を図示する。時間軸1102は、分(min)で表され、0から120分(2時間)に及ぶ。波数軸1104は、センチメートルの逆数(cm
−1)で表され、1000から4500cm
−1までに及ぶ。吸光度軸1106は、ミリ吸光度単位(mA.U.)で表され、−10から100までに及ぶ。(インターフェログラムにおける)第1のモデルは、式4に従って推定された。次いで、第1のモデルは、式5によって周波数領域に移入された。グラフ1010は、第1のモデルの吸光度スペクトルを示す。図に示すように、約5mA.U.の背景が推定され、除去されている。
【0154】
図12は、背景モデルを使用して測定された試験スペクトルの例示的なグラフ1200を図示する。時間軸1202は、分(min)で表され、0から120分(2時間)までに及ぶ。波数軸1204は、センチメートルの逆数(cm
−1)で表され、1000から4500cm
−1までに及ぶ。吸光度軸1206は、ミリ吸光度単位(mA.U.)で表され、−10から100までに及ぶ。グラフ1200について、残りの背景変動を除去するために、第2のモデルが適用された。グラフ1200に図示される、得られた最終的なスペクトルは、適正に補正される(例えば、検索、検出、および定量化に入れることができる)。
【0155】
図13は、試験スペクトルの例示的な管理
図1300を図示する。管理
図1300は、多変量欠陥検出を適用することによって生成された(式11から15)。破線1302は、システム変化を検出する閾値である。閾値を上回って延在する線によって示されるように、変化は候補化学物質として同定された。次いで、候補化学物質は、残差分析を計算する(および主要化学物質を決定する)ように、欠陥検出およびライブラリ検索の第2の段階に伝えられた。残差分析は、放出された化学物質である、主要化学物質を同定するために適用された(式15〜20)。上記で説明されるように、これは反復プロセスである。1つの化学物質が同定され、毎回式の中へ追加される。プロセスは、いずれの急激な変化も検出されなくなる、または最大主要化学物質数に達するまで継続する。
【0156】
上記のシステムおよび方法は、デジタル電子回路で、コンピュータハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアで実装することができる。 実装は、コンピュータプログラム製品(すなわち、情報担体で明白に具現化されるコンピュータプログラム)として行うことができる。実装は、例えば、データ処理装置による実行のために、またはデータ処理装置の動作を制御するために、機械可読記憶デバイスの中で行うことができる。実装は、例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、および/または複数のコンピュータとなり得る。
【0157】
コンピュータプログラムは、コンパイラ型またはインタープリタ型言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で書くことができ、コンピュータプログラムは、独立型プログラムとして、あるいはサブルーチン、要素、および/またはコンピュータ環境で使用するために好適な他のユニットとしての形態を含む、任意の形態で展開することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または1つの場所にある複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0158】
方法のステップは、入力データに作用し、出力を生成することによって、本発明の機能を果たすようにコンピュータプログラムを実行する、1つ以上のプログラマブルプロセッサによって行うことができる。 方法ステップはまた、専用論理回路によって行うこともでき、装置を専用論理回路として実装することができる。回路は、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)および/またはASIC(特定用途向け集積回路)となり得る。モジュール、サブルーチン、およびソフトウェアエージェントとは、その機能性を実装するコンピュータプログラム、プロセッサ、特殊回路、ソフトウェア、および/またはハードウェアの複数部分を指すことができる。
【0159】
コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサは、一例として、汎用および専用マイクロプロセッサの両方、および任意の種類のデジタルコンピュータのいずれか1つ以上のプロセッサを含む。概して、プロセッサは、読取専用メモリまたはランダムアクセスメモリ、あるいは両方から、命令およびデータを受信する。コンピュータの必須要素は、命令を実行するためのプロセッサ、ならびに命令およびデータを記憶するための1つ以上のメモリデバイスである。概して、コンピュータは、データを記憶するための1つ以上の大容量記憶デバイス(例えば、磁気、光磁気ディスク、または光ディスク)を含むことができ、そこからデータを受信する、および/またはそこへデータを転送するように動作可能に連結することができる。
【0160】
データ伝送および命令はまた、通信ネットワーク上で発生することもできる。 コンピュータプログラム命令およびデータを具現化するために好適な情報担体は、一例として、半導体メモリデバイスを含む、全ての形態の不揮発性メモリを含む。情報担体は、例えば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリデバイス、磁気ディスク、内部ハードディスク、可撤性ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、および/またはDVD−ROMとなり得る。プロセッサおよびメモリは、特殊用途論理回路によって補完するか、またはそれに組み込むことができる。
【0161】
ユーザとの相互作用を提供するために、上記の技術は、表示デバイスを有するコンピュータ上で実装することができる。表示デバイスは、例えば、陰極線管(CRT)および/または液晶ディスプレイ(LCD)モニタとなり得る。ユーザとの相互作用は、例えば、ユーザへの情報の表示、ならびにそれによりユーザが入力をコンピュータに情報を提供することができる(例えば、ユーザインターフェース要素と相互作用する)キーボードおよびポインティングデバイス(例えば、マウスまたはトラックボール)となり得る。ユーザとの相互作用を提供するために、他の種類のデバイスを使用することができる。他のデバイスは、例えば、任意の形態の感覚フィードバック(例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または触覚フィードバック)でユーザに提供される、フィードバックとなり得る。ユーザからの入力は、例えば、音響、発話、および/または触覚入力を含む、任意の形態で受信することができる。
【0162】
上記の技法は、バックエンド構成要素を含む分散型コンピュータシステムで実装することができる。バックエンド構成要素は、例えば、データサーバ、ミドルウェア構成要素、および/またはアプリケーションサーバとなり得る。上記の技法は、フロントエンド構成要素を含む、分散型コンピュータシステムで実装することができる。フロントエンド構成要素は、例えば、グラフィカルユーザインターフェースを有するクライアントコンピュータ、それを通してユーザが実装例と相互作用することができるウェブブラウザ、および/または伝送デバイス用の他のグラフィカルユーザインターフェースとなり得る。システムの構成要素は、デジタルデータ通信の任意の形態または媒体(例えば、通信ネットワーク)によって相互接続することができる。通信ネットワークの実施例は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、インターネット、有線ネットワーク、および/または無線ネットワークを含む。
【0163】
システムは、クライアントおよびサーバを含むことができる。クライアントおよびサーバは、概して、相互から遠隔にあり、典型的には、通信ネットワークを通して相互作用する。クライアントおよびサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で作動し、相互に対するクライアント・サーバ関係を有する、コンピュータプログラムによって生じる。
【0164】
パケットベースのネットワークは、例えば、インターネット、キャリアインターネットプロトコル(IP)ネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、キャンパスエリアネットワーク(CAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、ホームエリアネットワーク(HAN))、プライベートIPネットワーク、IP構内電話交換(IPBX)、無線ネットワーク(例えば、無線アクセスネットワーク(RAN)、802.11ネットワーク、802.16ネットワーク、汎用パケット無線サービス(GPRS)ネットワーク、HiperLAN)、および/または他のパケットベースのネットワークを含むことができる。回路ベースのネットワークは、例えば、公衆交換電話ネットワーク(PSTN)、構内電話交換(PBX)、無線ネットワーク(例えば、RAN、bluetooth(登録商標)、符号分割多重アクセス(CDMA)ネットワーク、時分割多重アクセス(TDMA)ネットワーク、グローバルシステムフォーモバイルコミュニケーションズ(GSM(登録商標))ネットワーク)、および/または回路ベースのネットワークを含むことができる。
【0165】
伝送デバイスは、例えば、コンピュータ、ブラウザデバイスを伴うコンピュータ、電話、IP電話、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)デバイス、ラップトップコンピュータ、電子メールデバイス)、および/または他の通信デバイスを含むことができる。ブラウザデバイスは、例えば、ワールドワイドウェブブラウザ(例えば、Microsoft Corporationから入手可能なMicrosoft(登録商標) Internet Explorer(登録商標)、Mozilla Corporationから入手可能なMozilla(登録商標) Firefox)を伴うコンピュータ(例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ)を含む。モバイルコンピュータデバイスは、例えば、携帯情報端末(PDA)を含む。
【0166】
「備える」、「含む」、および/またはそれぞれの複数形は、制約がなく、記載された部品を含み、記載されていない付加的な部品を含むことができる。および/またはは、制約がなく、記載された部品のうちの1つ以上、および記載された部品の組み合わせを含む。
【0167】
当業者であれば、その精神または本質的な特性から逸脱することなく、他の具体的形態で本発明が具現化されてもよいことを認識するであろう。したがって、前述の実施形態は、全ての側面で、本明細書で説明される本発明を制限するよりもむしろ例証的であると見なされるものである。したがって、本発明の範囲は、前述の実施形態によって示されるよりもむしろ、添付の請求項によって示され、したがって、請求項の意味および同等の範囲内に入る、全ての変更は、その中に包含されることを目的としている。
【0169】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
連続的にサンプリングされる液体または気体サンプルストリームの中の化学物質を検出および定量化するためのコンピュータ化方法であって、
該方法は、
コンピュータデバイスによって、デジタル化分光プロファイルを備えるサンプル測定を受信することと、
該コンピュータデバイスによって、多変量多段階背景モデルを計算することであって、該多変量多段階背景モデルは、第1の時間効果をモデル化する第1のモデル、該第1の時間効果とは異なる第2の時間効果をモデル化する第2のモデル、または両方を備える、ことと、
該コンピュータデバイスによって、該サンプル測定および該多変量多段階背景モデルに基づいて、背景補正サンプル測定を生成することと、
該コンピュータデバイスによって、該背景補正サンプル測定の中の1つ以上の主要化学物質を同定するために、多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムを実行することと
を備え、該アルゴリズムは、
多変量統計プロセス制御に基づいて、該背景補正サンプル測定をスペクトル参照ライブラリと比較して、該背景補正サンプル測定の中の1つ以上の候補化学物質を同定することと、
(i)該1つ以上の候補化学物質についての集中的化学評価に基づいて、第1の主要化学物質を同定すること、または(ii)該1つ以上の候補化学物質についての該集中的化学評価に基づいて、該第1の主要化学物質を定量化することのうちの少なくとも1つを実行することと
を備える、方法。
(項目2)
前記第1の主要化学物質を同定することは、主要化学物質が存在しないことを決定することを備える、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記計算することは、前記多変量多段階背景モデルを更新することを備える、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムは、
前記背景補正サンプル測定から前記第1の主要化学物質を差し引くことによって、残差プロファイルを計算することと、
該背景補正サンプル測定から該第1の主要化学物質の濃度を推定することによって、内容物を定量化することと、
該残差プロファイルの前記スペクトル参照ライブラリとの比較に基づいて、該残差プロファイルの中の第2の組の1つ以上の候補化学物質を同定することと、
該第2の組の1つ以上の候補化学物質についての集中的化学評価に基づいて、第2の主要化学物質を同定するステップと
をさらに備える、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記サンプル測定が前記多変量多段階背景モデルの中に含むことに対して好適であることを決定することと、
該サンプル測定に基づいて、該多変量多段階背景モデルを更新することと
をさらに備える、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記サンプル測定をデータバッファを通してフィルタにかけることをさらに備え、該フィルタにかけることにより、前記サンプルストリームの中の低速化学データポイズニングに起因する汚染を防止する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記データバッファのサイズは、データポイズニング率値に基づいて決定される、項目6に記載の方法。
(項目8)
マスク関数に基づいて、前記サンプル測定の中の1つ以上の干渉化学物質の影響を低減することをさらに備え、項目5に記載の方法。
(項目9)
1つ以上の化学干渉物を同定することと、
1つ以上の同定された化学干渉物に基づいて、前記マスク関数を更新することと
をさらに備え、項目8に記載の方法。
(項目10)
1つ以上の更新条件を定義することをさらに備え、該1つ以上の更新条件は、
化合物が前記サンプル測定の中に検出されない場合に、(i)前記多変量多段階背景モデル、または(ii)前記多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化モデルのうちの少なくとも1つを更新すること、
関心化合物が該サンプル測定の中に検出されない場合に、(i)該多変量多段階背景モデル、または(ii)該多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化モデルのうちの少なくとも1つを更新すること、
該サンプル測定の中の関心化合物についての警告がない場合に、(i)該多変量多段階背景モデル、または(ii)該多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化モデルのうちの少なくとも1つを更新すること、または
(i)該多変量多段階モデル、または(ii)該多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化モデルのうちの少なくとも1つを更新しないこと
を備える、項目5に記載の方法。
(項目11)
連続的にサンプリングされる液体または気体サンプルストリームの中の化学物質を検出および定量化するシステムであって、
該システムは、
デジタル化分光プロファイルを備えるサンプル測定を受信するように構成されるデータ収集モジュールと、
該データ収集モジュールと通信する多変量多段階背景モジュールであって、該多変量多段階背景モジュールは、
多変量多段階背景モデルを計算することであって、該多変量多段階背景モデルは、第1の時間効果をモデル化する第1のモデル、該第1の時間効果とは異なる第2の時間効果をモデル化する第2のモデル、または両方を備える、ことと、
該サンプル測定および該多変量多段階背景モデルに基づいて、背景補正サンプル測定を生成することと
を行うように構成される、多変量多段階背景モジュールと、
該データ収集モジュールおよび該多変量多段階背景モジュールと通信する多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化モジュールであって、該多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化モジュールは、該背景補正サンプル測定の中の1つ以上の主要化学物質を同定するために、多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムを実行するように構成され、該多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化モジュールは、
該背景補正サンプル測定のスペクトル参照ライブラリとの比較に基づいて、該背景補正サンプル測定の中の1つ以上の候補化学物質を同定することと、
(i)該1つ以上の候補化学物質についての集中的化学評価に基づいて、第1の主要化学物質を同定すること、または(ii)該1つ以上の候補化学物質についての該集中的化学評価に基づいて、該第1の主要化学物質を定量化することのうちの少なくとも1つを実行することと
を行うように構成される、多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化モジュールと
を備える、システム。
(項目12)
連続的にサンプリングされる液体または気体サンプルストリームの中の化学物質を検出および定量化するためのコンピュータ化方法であって、
該方法は、
サンプル測定の中の候補化学物質が所定の閾値よりも大きい場合に、該サンプル測定の中の1つ以上の主要化学物質を同定するために、コンピュータデバイスによって、多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムを繰り返し実行することを備え、デジタル化分光プロファイルを備える該サンプル測定は、
サンプル測定のスペクトル参照ライブラリとの比較に基づいて、該サンプル測定の中の1つ以上の候補化学物質を同定することと、
該1つ以上の候補化学物質についての集中的化学評価に基づいて、該1つ以上の候補化学物質から該1つ以上の主要化学物質のうちの1つの主要化学物質を同定することと、
残りの1つ以上の候補化学物質のうちのいずれかが該所定の閾値よりも大きいかどうかを決定することと
を備える、方法。
(項目13)
前記主要化学物質を同定することは、主要化学物質が存在しないことを決定することを備える、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記サンプル測定は、多変量多段階背景モデルに基づいて計算される背景補正サンプル測定である、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記1つ以上の候補化学物質は、最小二乗回帰を含む行列ベースの同時比較に基づいて同定される、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記最小二乗回帰は、古典的最小二乗法、部分最小二乗法、逆最小二乗法、またはそれらの任意の組み合わせを備える、項目15に記載の方法。
(項目17)
多変量回帰に基づいて、前記1つ以上の候補化学物質を同定することと、
最小二乗回帰に基づいて、前記1つ以上の主要化学物質のうちの前記主要化学物質を同定することと
をさらに備える、項目12に記載の方法。
(項目18)
前記1つ以上の主要化学物質のうちの前記主要化学物質を同定することは、
前記1つ以上の候補化学物質の各々のデジタル化スペクトルの二乗平均平方根を計算することと、
該1つ以上の候補化学物質の各々の濃度を計算することと、
該1つ以上の候補化学物質の各々の該デジタル化スペクトルのt統計値を計算することであって、該t統計値は、該1つ以上の候補化学物質の関連候補化学物質の分散に基づく、ことと、
該1つ以上の候補化学物質から第1の主要化学物質を同定することであって、該第1の主要化学物質は、該1つ以上の候補化学物質の最低二乗平均平方根および最高t統計値を備える、ことと
を備える、項目12に記載の方法。
(項目19)
前記スペクトル参照ライブラリは、一定であり、該スペクトル参照ライブラリは、スペクトルを備えるか、もしくは除外するか、または両方を行うように動的に更新される、項目12に記載の方法。
(項目20)
前記スペクトル参照ライブラリは、多変量雑音モデルを用いて動的に増強される、項目12に記載の方法。
(項目21)
連続的にサンプリングされる液体または気体サンプルストリームの中の化学物質を検出および定量化するためのシステムであって、
該システムは、
データ収集モジュールおよび多変量多段階背景モジュールと通信する多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化モジュールを備え、該多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化モジュールは、サンプル測定の候補化学物質が所定の閾値よりも大きい場合に、該サンプル測定の中の1つ以上の主要化学物質を同定するために、多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムを繰り返し実行するように構成され、デジタル化分光プロファイルを備える該サンプル測定は、
該サンプル測定のスペクトル参照ライブラリとのに基づいて、該サンプル測定の中の1つ以上の候補化学物質を同定するように構成される欠陥検出モジュールと、
該欠陥検出モジュールと通信するライブラリ検索モジュールであって、該ライブラリ検索モジュールは、
該1つ以上の候補化学物質についての集中的化学評価に基づいて、該1つ以上の候補化学物質から第1の主要化学物質を同定することと、
残りの1つ以上の候補化学物質のうちのいずれかが該所定の閾値よりも大きいかどうかを決定することと
を行うように構成される、ライブラリ検索モジュールと
を備える、システム。
(項目22)
連続的にサンプリングされる液体または気体サンプルストリームの中の化学物質を検出および定量化するためのコンピュータ化方法であって、
該方法は、
コンピュータデバイスによって、デジタル化分光プロファイルを備えるサンプル測定を受信することと、
該コンピュータデバイスによって、多変量多段階背景モデルを計算することであって、該多変量多段階背景モデルは、少なくとも、第1の時間効果をモデル化する第1のモデルと、該第1の時間効果とは異なる第2の時間効果をモデル化する第2のモデルとを含む、ことと、
該コンピュータデバイスによって、該サンプル測定および該多変量多段階背景モデルに基づいて、背景補正サンプル測定を生成することと、
該コンピュータデバイスによって、該サンプル測定が該多変量多段階背景モデルへの更新として包含することに対して好適であることを決定することと、
該コンピュータデバイスによって、該サンプル測定に基づいて該多変量多段階背景モデルを更新することと
を備える、方法。
(項目23)
前記多変量多段階背景モデルの前記第1のモデルは、進化型背景モデルを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
指数的に重み付けられる移動平均に基づいて、時間領域、周波数領域、または両方において前記進化型背景モデルの背景スペクトルを開始することと、
該指数的に重み付けられる移動平均に基づいて、該背景スペクトルを更新することと
をさらに含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
多変量多段階背景アルゴリズムの前記第2のモデルは、多変量雑音モデルを含む、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記第1のモデルに基づいて、前記多変量雑音モデルをフィルタにかけることと、
多変量アプローチに基づいて、該多変量雑音モデルの残りのスペクトル変動を補正することであって、該多変量アプローチは、主成分分析、独立成分分析、多変量曲線分解、部分最小二乗法、重み付け最小二乗法、全最小二乗法、連続回帰、リッジ回帰、またはそれらの任意の組み合わせを備える、ことと
をさらに備える、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記補正された残りのスペクトル変動の残差プロファイルを最小化するために、指数的に重み付けられる多変量アプローチに基づいて、前記多変量雑音モデルを更新することをさらに備え、該指数的に重み付けられる多変量アプローチは、指数的に重み付けられる移動主成分分析、指数的に重み付けられる移動独立成分分析、指数的に重み付けられる移動多変量曲線分解、指数的に重み付けられる移動部分最小二乗法、指数的に重み付けられる移動全最小二乗法、指数的に重み付けられる移動連続回帰、指数的に重み付けられる移動リッジ回帰、またはそれらの任意の組み合わせを備える、項目26に記載の方法。
(項目28)
連続的にサンプリングされる液体または気体サンプルストリームの中の化学物質を検出および定量化するためのシステムであって、
該システムは、
デジタル化分光プロファイルを含むサンプル測定を受信するように構成されるデータ収集モジュールと、
該データ収集モジュールと通信する多変量多段階背景モジュールであって、該多変量多段階背景モジュールは、
多変量多段階背景モデルを計算することであって、該多変量多段階背景モデルは、少なくとも、第1の時間効果をモデル化する第1のモデルと、該第1の時間効果とは異なる第2の時間効果をモデル化する第2のモデルとを備える、ことと、
該サンプル測定および該多変量多段階背景モデルに基づいて、背景補正サンプル測定を生成することと、
該サンプル測定に基づいて、該多変量多段階背景モデルを更新することと
を行うように構成される、多変量多段階背景モジュールと、
該多変量多段階背景モジュールと通信するデータ品質診断モジュールであって、該データ品質診断モジュールは、該サンプル測定が該多変量多段階背景モデルへの更新として包含することに対して好適であることを決定するように構成される、データ品質診断モジュールと
を備える、システム。
(項目29)
コンピュータ可読記憶媒体に明白に具現化されるコンピュータプログラム製品であって、該コンピュータプログラム製品は、命令を含み、該命令は、
デジタル化分光プロファイルを含むサンプル測定を受信することと、
多変量多段階背景モデルを計算することであって、該多変量多段階背景モデルは、第1の時間効果をモデル化する第1のモデル、該第1の時間効果とは異なる第2の時間効果をモデル化する第2のモデル、または両方を含む、ことと、
該サンプル測定および該多変量多段階背景モデルに基づいて、背景補正サンプル測定を生成することと、
該背景補正サンプル測定の中の1つ以上の主要化学物質を同定するために、多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムを実行することと
をデータ処理装置に行わせるように動作可能であり、
該アルゴリズムは、
該背景補正サンプル測定のスペクトル参照ライブラリとの比較における多変量統計プロセス制御に基づいて、該背景補正サンプル測定の中の1つ以上の候補化学物質を同定することと、
該1つ以上の候補化学物質についての集中的化学評価に基づいて、第1の主要化学物質を同定することと
を行うように構成される、コンピュータプログラム製品。
(項目30)
コンピュータ可読記憶媒体に明白に具現化されるコンピュータプログラム製品であって、該コンピュータプログラム製品は、命令を含み、該命令は、データ処理装置に、
サンプル測定の候補化学物質が所定の閾値よりも大きい場合に、該サンプル測定における1つ以上の主要化学物質を同定するために、多変量多段階ライブラリ検索、欠陥検出、および定量化アルゴリズムを繰り返し実行するようにさせるように動作可能であり、該サンプル測定は、デジタル化分光プロファイルを含み、該アルゴリズムは、
該サンプル測定のスペクトル参照ライブラリとの比較に基づいて、該サンプル測定における1つ以上の候補化学物質を同定することと、
該1つ以上の候補化学物質についての集中的化学評価に基づいて、該1つ以上の候補化学物質から該1つ以上の主要化学物質のうちの1つの主要化学物質を同定することと、
残りの1つ以上の候補化学物質のうちのいずれかが該所定の閾値よりも大きいかどうかを決定することと
を行うように構成される、コンピュータプログラム製品。
(項目31)
コンピュータ可読記憶媒体に明白に具現化されるコンピュータプログラム製品であって、該コンピュータプログラム製品は、命令を含み、該命令は、データ処理装置に、
デジタル化分光プロファイルを備えるサンプル測定を受信することと、
多変量多段階背景モデルを計算することであって、該多変量多段階背景モデルは、少なくとも、第1の時間効果をモデル化する第1のモデルと、該第1の時間効果とは異なる第2の時間効果をモデル化する第2のモデルとを含む、ことと、
該サンプル測定および該多変量多段階背景モデルに基づいて、背景補正サンプル測定を生成することと、
該サンプル測定が更新として該多変量多段階背景モデルに包含することに対して好適であることを決定することと、
該サンプル測定に基づいて、該多変量多段階背景モデルを更新することと
を行わせるように動作可能である、コンピュータプログラム製品。