【文献】
BELLA, M. et al.,SYNERGIC ASYMMETRIC ORGANOCATALYSIS (SAOC) OF CINCHONA ALKALOIDS AND SECONDARY AMINES 以下備考,CHEMICAL COMMUNICATIONS,2009年 1月 1日,N5,P597-599,IN THE SYNTHESIS OF BICYCLO[2.2.2]OCTAN-2-ONES
【文献】
ABAD, A. et al.,Tetrahedron,2006年,62,p.3266-3283
【文献】
POLYSSENA RENZI,MULTICOMPONENT ASYMMETRIC REACTIONS MEDIATED BY PROLINE LITHIUM SALT,ORGANIC & BIOMOLECULAR CHEMISTRY,2010年 3月 7日,V8 N5,P980-983
【文献】
SRIKRISHNA, A. et al.,TETRAHEDRON LETTERS,2001年,42,p.3929-3931
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、Bellaらの教示にかかわらず、2−シクロヘキセン−1−オンと(置換)フェニルアセトアルデヒドの、ジアステレオ選択性の高いタンデム マイケル付加−アルドール環化が、高価なキラルキニン塩基を用いずに、プロリンによって触媒されることが見出された。この方法は、プロリンとアキラル塩基からなる、より容易に入手できる市販の触媒系を用いて、特に、小さく、高価ではないアキラルN−含有(窒素含有)塩基の存在下で、又はいかなる塩基も全く存在しない状況でプロリンを用いることによっても行われる。
【0008】
本発明の方法により所望のジアステレオマーが沈殿し、次いでそれを固液分離により単離することにより、式(II)の化合物の所望のジアステレオマーが、良好な収率及び高いジアステレオ選択性で、スケールアップ可能な方法で得られる。エナンチオマーを富化したプロリンを用いた場合、この方法によりエナンチオマーを富化した生成物が得られる。立体選択はプロリンの絶対配置のみによって操作され、すなわち、D−プロリンの使用が、L−プロリンを使用した場合と比べて反対の絶対配置を有する式(II)の化合物を生成する。キラル塩基の相乗的な寄与は不要である。エナンチオマーを富化した生成物の単なる再結晶により、鏡像体過剰率を顕著にさらに上昇させてもよい。
【0009】
本発明の方法はスケールアップ可能であり、そして驚くほど簡単な条件下で行うことができるため、単位操作を顕著に少なくすることができる。加えて、本発明の方法を、驚くほど温和でスケールアップ可能な脱離反応をキーとなる工程として含む2工程反応に拡張して、式(I)の有用な構成要素をエナンチオマーを富化した形態で得てもよい。このような方法は、上記で引用した文献には開示されていない。
【0010】
発明の記述
1) 第1の態様において、本発明は、(ラセミ体又はエナンチオマーを富化した形態にある)式(II)の化合物、(1R
*,4R
*,5S
*,6S
*)−6−ヒドロキシ−5−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン化合物の合成のためのジアステレオ選択的な方法に関し:
【化4】
当該方法は、
−(ラセミ体又はエナンチオマーを富化した形態にある)プロリン;及び
−芳香族溶媒、エーテル溶媒、塩素化有機溶媒及びエステル;又はこれらの混合物からなる群より選択される溶媒;
の存在下;
−及び任意にアキラル塩基の存在下;
における、
−2−シクロヘキセン−1−オンと
−式Ar−CH
2−CHOの化合物(式中、Arはアリール基を表す。)との環化を含み;
当該溶媒は、2−シクロヘキセン−1−オンに対して約1〜10vol(特に約3〜10vol)の量で存在し;
当該式(II)の化合物を反応混合物から固液分離により単離する。
【0011】
態様1)の方法はジアステレオ選択的な方法である。この方法により、通常、(1R
*,4R
*,5S
*,6S
*)−6−ヒドロキシ−5−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン化合物が、[さらなるジアステレオマー:(1R
*,4R
*,5R
*,6R
*)−6−ヒドロキシ−5−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン、(1R
*,4R
*,5R
*,6S
*)−6−ヒドロキシ−5−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン、(1R
*,4R
*,5S
*,6R
*)−6−ヒドロキシ−5−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オンの合計に対して]90:10より大きな、特に95:5より大きな、とりわけ99:1より大きなジアステレオマー比で単離される。特定の態様において、ジアステレオマー的に本質的に純粋な式(II)の化合物が単離される。
【0012】
態様1)の方法は、任意にアキラル塩基の存在下で行われる。好ましくは、本発明の方法は、(より高価であり、本発明の方法の高いジアステレオ選択性を達成するために必要ではない)キラル塩基の非存在下で行われる。本発明の方法は特に、アキラル塩基の存在下で又は塩基の完全な非存在下で行われる。たとえ好ましくなくても、例えばアキラル塩基との混合物中におけるキラル塩基の使用は、本発明の方法の範囲内にある。というのは、そのジアステレオ選択性は、そのようなキラル塩基の存在により悪影響を受けないからである。いかなるアキラル塩基もアキラル塩基として適切であるが、特に好ましいものは、市販の低価格の商品としてよく知られた塩基である。好ましくは、反応混合物に添加した場合、そのような塩基は、反応混合物のpHを約7〜10(特に8〜10)にする。そのような塩基の好ましい例は、アキラルN−含有塩基、塩基水溶液若しくは緩衝水溶液;又はそれらの混合物である。アキラルN−含有塩基は特に、NR
1R
2R
3(式中、R
1、R
2及びR
3は独立にアルキルを表す。)等の第三アミン塩基;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO);1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)又は1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ−5−エン(DBN)等のアミジン塩基及びピリジン(ピリジンは未置換であるか(好ましい)又は1,2又は3個のメチルにより置換される)からなる群より選択される。そのようなアキラ
ルN−含有塩基は通常、2−シクロヘキセン−1−オンに対して約0.1equ.〜0.5equ.の量で存在する。塩基水溶液は、当該アキラルN−含有塩基の水溶液であってもよく;又は特にaqu.NaOH又はaqu.KOH等のアルカリ金属水酸化物溶液である。そのような水性塩基は通常、2−シクロヘキセン−1−オンに対して約0.05equ.〜0.3equ.の量で存在する。緩衝水溶液は特に、リン酸ナトリウム緩衝液(例えば、20mM Na
3PO
4緩衝液、pH8)又は当業者に既知の他の緩衝系である。そのような水性緩衝液は通常、2−シクロヘキセン−1−オンに対し通常、約0.4〜1volの量で存在する。混合物を使用する場合は、そのような混合物は、好ましくは、アキラルN−含有塩基と緩衝水溶液の混合物である。そのような混合物において、2−シクロヘキセン−1−オンに対し、アキラルN−含有塩基は通常、約0.1equ.〜0.5equ.の量で存在し;水性緩衝液は通常、約0.4〜1vol.の量で存在する。本発明の態様1)の方法はまた、塩基の完全な非存在下で行ってもよい。
【0013】
(ラセミ体又はエナンチオマーを富化した形態の)市販のプロリンは通常、約0.1〜0.5equ.の量で使用される。それ自体は本発明の一部ではないが、本発明のよりよい理解のために、下記の事項に留意されたい:代替法として、プロリンをメチルプロリネート等のプロリンエステルで置き換えてもよいことが見出された。
【0014】
態様1)の方法に使用される溶媒は、トルエン及びアニソール等の有機溶媒;tert.ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン及び2−メチル−THF等のエーテル溶媒;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン及び1,2−ジクロロベンゼン等の塩素化有機溶媒;又は酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び酢酸n−ブチル等のエステル;又はそのような溶媒の混合物であり;好ましい溶媒は特に、トルエン等の有機溶媒;そしてとりわけtert.ブチルメチルエーテル(TBME)等のエーテル溶媒である。すべての溶媒は、乾燥手順を行わずに購入したままで使用できる。
【0015】
2) 第2の態様において、態様1)に従う方法は、
−アキラルN−含有塩基;
−水性塩基又は緩衝水溶液;及び
−アキラルN−含有塩基及び緩衝水溶液の混合物:
からなる群より選択されるアキラル塩基の存在下で行われる。
【0016】
3) 第3の態様において、態様1)又は2)に従う方法は、
−水性塩基又は緩衝水溶液;又は
−アキラルN−含有塩基と緩衝水溶液の混合物:
の存在下で行われる。
【0017】
このような態様3)に従う方法により、式(II)の化合物が高いジアステレオ異性体純度で得られるが、エナンチオマーを富化したプロリンを使用した場合でさえ、エナンチオマーの富化は観察されない。式(II)の化合物をラセミ体で得ることが必要な場合には、式(II)の化合物のラセミ体が得られるこのような方法は好ましい方法であるが、経済的な理由からは、エナンチオマーを富化したD−又はL−プロリンを使用することが好ましい。このような方法は、好ましくは、エーテル溶媒(特にTBME)若しくは芳香族溶媒(特にトルエン)又はそれらの混合物中で行われる。下記の態様7)〜36)は、このような態様3)の非−エナンチオ選択的方法に準用される。
【0018】
本発明のさらなる態様を以下に記述する:
4) 第4の態様において、態様1)に従う方法は、アキラルN−含有塩基の存在下で又は塩基の非存在下で行われる。
【0019】
このような態様4)に従う方法は、アキラルN−含有塩基の存在下、キラル塩基、添加の水性塩基又は緩衝水溶液の非存在下で;又はいかなる添加の塩基も存在することなく、特に、いかなるキラル塩基、添加の水性塩基又は緩衝水溶液も存在することなく;態様1)に従う溶媒又は溶媒混合物中で、水を添加することなく行われる。このような態様4)に従う方法により、上記したように、式(II)の化合物が高いジアステレオ異性体純度で得られる。
【0020】
加えて、エナンチオマーを富化したプロリンを使用する場合には、エナンチオマーを富化した式(II)の化合物が得られる。
【0021】
5) さらなる態様において、態様1)に従う方法は、アキラルN−含有塩基の存在下で行われる。
【0022】
このような態様5)に従う方法は、アキラルN−含有塩基の存在下、添加の水性塩基又は緩衝水溶液の非存在下で、特に、態様1)に従う溶媒中で、水を添加することなく行われる。このような態様5)に従う方法により、上記したように、式(II)の化合物が、高いジアステレオ異性体純度で得られる。
【0023】
加えて、エナンチオマーを富化したプロリンを使用する場合には、エナンチオマーを富化した式(II)の化合物が得られる。
【0024】
6) さらなる態様において、態様1)に従う方法は塩基の非存在下で行われる。
【0025】
このような態様6)に従う方法は、いかなる塩基も添加することなく、特に、いかなるキラル塩基も存在することなく行われるが、また、アキラルN−含有塩基及び添加の水性塩基又は緩衝水溶液の非存在下で、特に、態様1)に従う溶媒中で、特に水を添加することなく行われる。このような態様6)に従う方法により、上記したように、式(II)の化合物が、高いジアステレオ異性体純度で得られる。
【0026】
加えて、エナンチオマーを富化したプロリンを使用する場合には、エナンチオマーを富化した式(II)の化合物が得られる。
【0027】
7) 別の態様は、エナンチオマーを富化したD−又はL−プロリン(特に、本質的に純粋なD−プロリン又は特にL−プロリン)の存在下で行われる、態様4)〜6)に従う方法に関する。
【0028】
副態様において、当該方法がL−プロリンの存在下で行われる場合には、式(IIa)の化合物がエナンチオマーを富化した形態で得られ、又は、別の副態様において、当該方法がD−プロリンの存在下で行われる場合には、式(IIb)の化合物がエナンチオマーを富化した形態で得られる:
【化5】
【0029】
8) 別の態様は、エナンチオマー比が少なくとも約60:40(特に少なくとも約70:30)である、態様4)〜7)に従う方法に関する。
【0030】
いかなる疑義をも避けるために、当該方法がL−プロリンの存在下で行われる場合には、エナンチオマー比は、式(IIa)の化合物:式(IIb)の化合物の比を意味し;当該方法がD−プロリンの存在下で行われる場合には、エナンチオマー比は、式(IIb)の化合物:式(IIa)の化合物を意味し;双方の比は少なくとも約60:40(特に少なくとも約70:30)である。
【0031】
9) 別の態様は、当該方法がエナンチオマーを富化したプロリン(特に、L−プロリン)の存在下で行われる場合において、単離されたエナンチオマーを富化した式(II)の化合物を、後に続く工程において再結晶化する、態様4)〜8)のいずれか1つに従う方法に関する。好ましくは、そのような再結晶化のための溶媒は、エーテル(特にTHF)、アセトニトリル、ケトン(特にアセトン)及びアルコール(特にエタノール)からなる群より選択される。特に、溶媒はTHF又はアセトニトリルであり、とりわけTHFである。
【0032】
10) 別の態様は、当該再結晶化から得られた式(II)の化合物のエナンチオマー比が、少なくとも約90:10(特に少なくとも約95:5)である、態様9)に従う方法に関する。
【0033】
11) 別の態様は、芳香族溶媒(特にトルエン)又はエーテル溶媒(特にTBME)の存在下で行う、態様1)〜10)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0034】
12) 別の態様は、芳香族溶媒(特にトルエン)の存在下で行う、態様1)〜10)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0035】
13) 別の態様は、当該溶媒が本質的に水を含まない、態様4)〜12)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0036】
14) 別の態様は、約0℃〜55℃の温度にて(特に約30℃〜50℃にて、とりわけ約45℃にて)行う、態様1)〜13)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0037】
15) 別の態様は、当該アキラルN−含有塩基が存在する場合において、当該アキラルN−含有塩基が約200未満の分子量を有する、態様2)〜14)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0038】
16) 別の態様は、当該アキラルN−含有塩基が存在する場合において、当該アキラルN−含有塩基が、NR
1R
2R
3(式中、R
1、R
2及びR
3は独立にアルキルを表す。);1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO);1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ−5−エン(DBN);及びピリジン(ピリジンは未置換であるか(好ましい)又は1,2又は3個のメチルにより置換される)から成る群より選択される、態様2)〜14)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0039】
17) 別の態様は、当該アキラルN−含有塩基が存在する場合において、当該アキラルN−含有塩基が、トリエチルアミン、ジイソプロピル−エチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)及びピリジンからなる群より選択される、態様2)〜14)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0040】
18) 別の態様は、当該アキラルN−含有塩基が存在する場合において、当該アキラルN−含有塩基が、トリエチルアミン、ジイソプロピル−エチルアミン及びトリブチルアミン(特に、トリエチルアミン及びジイソプロピル−エチルアミン)からなる群より選択される、態様1)〜17)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0041】
19) 別の態様は、当該アキラルN−含有塩基が存在する場合において、当該アキラルN−含有塩基が、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、約0.1equ.〜0.5equ.(特に、約0.2equ.〜0.3equ.;とりわけ約0.25equ.)の量で存在する、態様1)〜18)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0042】
20) 別の態様は、プロリンが、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、約0.05equ.〜0.5equ.(特に、約0.2equ.〜0.3equ.;特に、約0.25equ.)の量で存在する、態様1)〜19)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0043】
21) 別の態様は、当該式Ar−CH
2−CHOの化合物が、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、約1equ.〜2equ.(特に、約1equ.〜1.3equ.;とりわけ、約1.1equ.)の量で存在する、態様1)〜20)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0044】
22) 別の態様は、当該溶媒が、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、約3〜10vol(特に、約5〜7vol)の量で存在する、態様1)〜21)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0045】
23) 別の態様は、少なくとも24h(特に、約24h〜10日間;とりわけ、約4日間)行う、態様1)〜22)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0046】
24) 別の態様は、アキラル塩基を用いる場合において、反応混合物のpHが約8〜10である、態様1)〜23)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0047】
副態様において;アキラル塩基が、水性塩基又は緩衝水溶液又はアキラルN−含有塩基と緩衝水溶液の混合物から成る場合において;反応混合物のpHは、特に、約9〜10である。
【0048】
別の副態様において;アキラル塩基がアキラルN−含有塩基から成る場合において;反応混合物のpHは、特に、約8〜9である。塩基を全く用いない場合には、反応混合物のpHは通常、約6〜8である。
【0049】
25) 別の態様は、当該式(II)の化合物が、約70:30より大きな(特に、約80:20より大きな、特に、90:10より大きな)ジアステレオマー比で反応混合物中に生成する、態様1)〜24)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0050】
いかなる疑義をも避けるために、態様25)において、「反応混合物中に生成する」式(II)の化合物のジアステレオマー比という用語は、反応混合物のプロセス制御測定(process control measurements)を用いて観察されるジアステレオマー比を意味する。式(II)の化合物に関するジアステレオマー比という用語は、(ラセミ体又はエナンチオマーを富化した形態の、従って、式(IIa)又は式(IIb)の化合物又はそれらの混合物に対応する)式(II)の化合物:(1R
*,4R
*,5S
*,6S
*)−6−ヒドロキシ−5−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オンの、さらなるジアステレオマー:(1R
*,4R
*,5R
*,6R
*)−6−ヒ
ドロキシ−5−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン、(1R
*,4R
*,5R
*,6S
*)−6−ヒドロキシ−5−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン、(1R
*,4R
*,5S
*,6R
*)−6−ヒドロキシ−5−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン((ラセミ体又はエナンチオマーを富化した形態の)構造(dia−II)の化合物:(1R
*,4R
*,5R
*,6R
*)−6−ヒドロキシ−5−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オンが一般に、最も重要な副次的ジアステレオマーである。)の合計に対する比を意味する。
【化6】
【0051】
26) 別の態様は、固液分離による反応混合物からの当該単離を、
−沈殿した生成物を反応温度にて固液分離(特に、ろ過)することにより行うか;又は
−1. 反応混合物を反応温度より低い温度に冷却し、そして
2. 沈殿した生成物を固液分離(特に、ろ過)することにより行う、
態様1)〜25)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0052】
27) 本発明のさらなる側面は、式(II)の化合物をさらに式(I)の化合物に変換する、態様1)〜26)のいずれか1つに従う方法に関する。
【化7】
【0053】
28) 別の態様は、式(II)の化合物の式(I)の化合物への当該変換を、脱離工程を介して行う、態様27)に従う方法に関する。
【0054】
29) 別の態様は、当該脱離工程が、式(II)の化合物のアルコール官能基の活性化を含む、態様28)に従う方法に関する。
【0055】
30) 別の態様は、式(V)の化合物[すなわち化合物、(1S
*,2R
*,3R
*,4S
*)−6−オキソ−3−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル メタンスルホネート]が:
【化8】
当該脱離工程の中間体である、態様28)又は29)に従う方法に関する。
【0056】
31) 別の態様は、式(I)の化合物を、式(I)の化合物のエナンチオマーを富化したそれぞれ(R,R)−、(S,S)−異性体の形態で得る、態様27)〜30)のいずれか1つの方法に関する。
【化9】
【0057】
いかなる疑義をも避けるために、態様29)は特に、態様8)〜26)の特定の条件を必要な変更を加えて適用する、態様7)と組み合わせた態様27)〜30)の方法に関する。
【0058】
32) 別の態様は、式(I)の化合物を、ラセミ体で又はいかなる比率であるかを問わないエナンチオマーの混合物として得;そして、分取キラルHPLCを用いたエナンチオマーのその後の分離により、エナンチオマーを富化した式(I)の(R,R)−及び(S,S)−異性体をそれぞれ得る、態様27)〜30)のいずれか1つの方法に関する。
【化10】
【0059】
いかなる疑義をも避けるために、態様32)は特に、プロリンをラセミ体で使用する、態様3)又は態様4)〜6)のいずれか1つと組み合わせた態様27)〜30)の方法に関する。
【0060】
33) 本発明のさらなる側面は、式(I)の化合物をさらに式(III)の化合物に変換する:態様27)〜32)のいずれか1つに従う方法に関する。
【化11】
(式中、R
4は、有機金属試薬(特に、有機リチウム、有機マグネシウム又は有機ホウ素試薬)により導入され得るいずれかの基を表し;特に、R
4はアルキル又はアリールを表す。)
【0061】
副態様において、当該変換は、直接的付加及び脱離のシークェンスにより;又は式(VI)のそれぞれのエノールトリフルオロメタンスルホネートを用いた当該有機金属試薬のカップリングにより行う。
【化12】
【0062】
34) 別の態様は、当該変換を付加−脱離シークェンスを介して行う、態様33)に従う方法に関する。
【0063】
35) 別の態様は、式(VII)の化合物が、当該付加−脱離シークェンスにおける中間体であり:
【化13】
当該式(VII)の化合物を、式(I)の化合物のケトンへの当該有機金属試薬の付加反応により得る、態様34)に従う方法に関する。
【0064】
36) 別の態様は、R
4がArとは異なる;すなわち、式(III)の化合物がC
2−対称ではない、態様33)〜35)のいずれか1つに従う方法に関する。
【0065】
37) 別の態様は、式(III)の化合物を、式(III)の化合物のエナンチオマーを富化した(R,R)−及び(S,S)−異性体の形態でそれぞれ得る、態様33)〜36)のいずれか1つの方法に関する:
【化14】
【0066】
いかなる疑義をも避けるために、態様37)は特に、態様31)の方法に関する。
【0067】
38) 本発明のさらなる側面は、相対配置(1R
*,2S
*,3S
*,4R
*)を有する式(V)の新規な化合物[すなわち、化合物は(1R
*,2S
*,3S
*,4R
*)−6−オキソ−3−アリールビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル メタンスルホネートである。]に関する:
【化15】
(式中、Arはアリール基を表す。)。
【0068】
副態様において、当該式(V)の化合物は特に、エナンチオマーが富化されており(好ましくは、鏡像体的に本質的に純粋であり);すなわち、当該化合物は、絶対配置(1R,2S,3S,4R)を有するエナンチオマーを富化した化合物であるか又は絶対配置(1S,2R,3R,4S)を有するエナンチオマーを富化した化合物である。
【0069】
これらの化合物は、態様30)の方法における中間体である。
【0070】
39) 別の態様は、
(1R,2S,3S,4R)−6−オキソ−3−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イルメタンスルホネート;及び
rac−(1R
*,2S
*,3S
*,4R
*)−6−オキソ−3−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イルメタンスルホネート、
からなる群より選択される、態様38)に従う式(V)の化合物に関する。
【0071】
40) 本発明のさらなる側面は、Arがフェニルを表すこの特定の場合において、式(I)の化合物を、さらに下記の化合物のいずれか1つに変換する、態様27)〜32)のいずれか1つに従う方法に関する:
rac−イソ酪酸 (1R
*,2R
*,4R
*)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−イルエステル、
イソ酪酸 (1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−イルエステル;又は、
特に、
イソ酪酸 (1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−イルエステル。
【0072】
態様40)に従うこのような多工程変換は、特にWO2009/130679(実施例1A、2A、3A)に記載されており、上記文献の全体を本出願に引用する:
第1の工程において、Arがフェニルを表すこの特定の場合における式(I)の化合物(当該式(I)の化合物を、ラセミ体又は適宜なエナンチオマーを富化した形態で用いてもよいことがよく理解されるべきである。)を、(1R
*,2R
*,4R
*)−2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステルに変換し;それをさらに脱保護して、化合物、(1R
*,2R
*,4R
*)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−イル)−酢酸とし;それをさらに3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミンとカップリングして、(1R
*,2R
*,4R
*)−N−[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−2−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−イル)−N−メチル−アセタミドを得;それをさらに(1R
*,2R
*,4R
*)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−オールに還元してもよく;それをさらにアシル化して、カルシウムチャンネルブロッカーである化合物、(1R
*,2R
*,4R
*)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−イルエステルとしてもよい。
【0073】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、フェニル又はナフチル基(好ましくは、フェニル基)を意味し、これらの基は、未置換であるか(好ましい)又は1、2若しくは3個の置換基により置換され、当該置換基は、(C
1−4)アルキル、(C
1−4)アルコキシ、ハロゲン、(C
1−3)フルオロアルキル及び(C
1−3)フルオロアルコキシからなる群より独立に選択される。
【0074】
「ヘテロアリール」という用語は、酸素、窒素及び硫黄から独立に選択される1から最大限4個のヘテロ原子を含む、5−〜10−員の、単環式又は二環式縮合芳香環を意味する。単環式ヘテロアリール基の例は、フラニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル及びテトラゾリル等の5−員単環式ヘテロアリール基;並びにピリジル、ピリミジル、ピリダジニル及びピラジニル等の6−員単環式ヘテロアリールである。二環式ヘテロアリール基の例は、4H−フロ[3,2−b]ピロリル、ピロロ[2,1−b]チアゾリル及びイミダゾ[2,1−b]チアゾリル等の8−員二環式ヘテロアリール基;インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジル、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、1H−ピロロ[3,2−b]ピリジル及び1H−ピロロ[2,3−b]ピリジル等の9−員二環式ヘテロアリール基;及びキノリニル、イソキノリニル、ナフチリジニル、シノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル及びフタラジニル等の10−員二環式ヘテロアリール基を含む。
【0075】
「アルキル」という用語は、単独で使用される場合も、又は組み合わせて使用される場
合も、1から8個の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖飽和アルキル基を意味する。「(C
x−C
y)アルキル」(x及びyは、それぞれ整数である。)という用語は、x〜y個の炭素原子を含む、前記部分で定義したアルキル基を意味する。例えば、(C
1−C
4)アルキル基は、1〜4個の炭素原子を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec.−ブチル及びtert.ブチルである。好ましくはメチル及びエチルである。最も好ましくはメチルである。
【0076】
「アルコキシ」という用語は、単独で使用する場合も、組み合わせて使用する場合も、アルキル基が前記部分で定義した通りである、アルキル−O−基を意味する。「(C
x−y)アルコキシ」(x及びyは、それぞれ整数である。)という用語は、x〜y個の炭素原子を含む、前記部分で定義したアルコキシ基を意味する。例えば、(C
1−4)アルコキシ基は、「(C
1−4)アルキル」という用語が前記の意味を有する、式(C
1−4)アルキル−O−の基を意味する。(C
1−4)アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec.−ブトキシ及びtert.−ブトキシである。好ましくはエトキシ及び特にメトキシである。
【0077】
「フルオロアルキル」という用語は、1又は2以上の(そして多分にすべての)水素原子がフッ素で置き換えられた、1〜3個の炭素原子を含む、前記部分で定義したアルキル基を意味する。「(C
x−y)フルオロアルキル」(x及びyは、それぞれ整数である。)という用語は、x〜y個の炭素原子を含む、前記部分で定義したフルオロアルキル基を意味する。例えば、(C
1−3)フルオロアルキル基は、1〜3個の炭素原子を含み、1〜7個の水素原子がフッ素で置き換えられている。フルオロアルキル基の代表的な例は、トリフルオロメチルと2,2,2−トリフルオロエチルを含む。好ましくは、トリフルオロメチル等の(C
1)フルオロアルキル基である。
【0078】
「フルオロアルコキシ」という用語は、1又は2以上の(そして多分にすべての)水素原子がフッ素で置き換えられた、1〜3個の炭素原子を含む、前記部分で定義したアルコキシ基を意味する。「(C
x−y)フルオロアルコキシ」(x及びyは、それぞれ整数である。)という用語は、x〜y個の炭素原子を含む、前記部分で定義したフルオロアルコキシ基を意味する。例えば、(C
1−3)フルオロアルコキシ基は、1〜3個の炭素原子を含み、1〜7個の水素原子がフッ素で置き換えられている。フルオロアルコキシ基の代表的な例は、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ及び2,2,2−トリフルオロエトキシを含む。好ましくは、トリフルオロメトキシ及びジフルオロメトキシ等の(C
1)フルオロアルコキシ基である。
【0079】
本明細書で使用する「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくは塩素を意味する。
【0080】
置換基R
4に対して使用される「有機金属試薬によって導入され得るいずれかの基」という用語は、ケトンカルボニル基に付加反応を行うことができる有機金属試薬を介して導入され得るあらゆる種類の残基を意味する。特に、この用語は、有機リチウム、有機マグネシウム、有機ホウ素、有機アルミニウム又は有機亜鉛試薬;特に有機リチウム、有機マグネシウム又は有機ホウ素試薬を用いて導入され得るいかなる残基をも表す。そのような残基の例は、アルキル;アリール;アルケニル;及び、フルオロ、アルコキシ、アリール及び−CO−R
5(式中、R
5はアルキル又はアルコキシである)から選択される1又は2以上の置換基で置換されるアルキルである。加えて、特に、5−又は6−員ヘテロアリール等のヘテロアリール基も有機金属試薬を介して導入され得る場合がある。このような残基の好ましい例は、アルキル及びアリールである。
【0081】
本明細書で使用する「アルケニル」という用語は、単独の場合も又は組み合わせの場合
も、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、2〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖炭化水素鎖を意味する。「(C
x−y)アルケニル」(x及びyは、それぞれ整数である。)という用語は、x〜y個の炭素原子を含む、前記部分で定義したアルケニル基を意味する。アルケニルの代表的な例は、エテニル(「ビニル」とも呼ばれる)、2−プロペニル(「アリル」とも呼ばれる)、2−メチル−2−プロペニル、3−ブテニル、4−ペンテニル及び5−ヘキセニル、特に、エテニル又は2−プロペニルを含むが、これらに限定されるものではない。
【0082】
「固液分離」という用語は、当業者に周知のルーティンの固液分離技術を意味する(例えば、Perry’s Chemical Engineers’ Handbook、7
th edition、Perry、R.H.;Green、D.W.McGraw−Hill 1997を見よ。)。特に、この用語は、ろ過、遠心分離及び重力沈降;特に、ろ過等の技術を含む。
【0083】
「液−液抽出」という用語は、当業者に周知のルーティンの液−液抽出又は洗浄技術を意味する(例えば、Perry’s Chemical Engineers’ Handbook、7
th edition、Perry、R.H.;Green、D.W.McGraw−Hill 1997を見よ。)。特に、この用語は、セトラー、サイクロン、遠心分離機、ミキサーセトラー、あらゆる種類の連続接触装置(continuous
contact equipment);蒸留:バッチ及び連続蒸留;並びに超臨界流体分離技術を用いた洗浄又は抽出技術含む。
【0084】
温度に関して使用されていない場合には、数値「X」の前に置かれる「約」という用語は、本出願において、X−10%XからX+10%Xの間、好ましくはX−5%XからX+5%Xの間を表す。約という用語を範囲の前に置く場合は、それぞれの間隔を、上記範囲の両数値に適用するものとする。温度の特定の場合には、温度「Y」の前に置かれる「約」という用語は、この出願において、Y−10℃からY+10℃の間、好ましくはY−5℃からY+5℃の間を表す。
【0085】
「の間」又は「から(〜)」の語が数値範囲を記載するために用いられる場合は常に、示される範囲の末端の値が、明示的にその範囲に含まれることが理解されるべきである。例えば、温度の範囲が40oCと80oCの間(又は40oCから(〜)80oC)であると記載されている場合には、末端の値である40oC及び80oCがその範囲に含まれることを意味し、又は、可変的数値が1と4の間(又は1から(〜)4)の整数と定義されている場合には、その可変的数値が1、2、3又は4の整数であることを意味する。
【0086】
%w/wという表現は、考慮している組成物の総重量に対する重量百分率を意味する。同様に、v/vという表現は、考慮している2つの成分の体積比を意味する。同様に、%a/aという表現は、好ましくはUV吸収を測定するクロマトグラムにおける、曲線下の面積(すなわち積分)に関連する純度を意味する。「vol」という表現は、(例えば反応物のkgで表した)重量当たりの(例えば溶媒のLで表した)体積を意味する。例えば、7volは、(反応物の)kg当たりの7リットル(の溶媒)を意味する。
【0087】
「enriched」という用語は、例えば、エナンチオマー又はジアステレオ異性体に関連して使用される場合、本発明に関しては特に、それぞれのエナンチオマー/ジアステレオ異性体が、それぞれ他のエナンチオマー/ジアステレオ異性体に対して、明示的に特定した比率(純度に準用)で;通常、少なくとも60:40、特に、少なくとも70:30、そして特に、少なくとも90:10の比率(60%/70%/90%の純度に準用)で存在することを意味するものと理解される。好ましくは、この用語は、本質的に純粋なエナンチオマー/ジアステレオ異性体をそれぞれ意味する。
【0088】
「本質的に」という用語は、例えば「本質的に純粋な」等の用語中で使用される場合、本発明に関しては特に、それぞれの立体異性体/組成物/化合物等の少なくとも90、特に、少なくとも95、そしてとりわけ少なくとも99重量パーセントの量が、それぞれ、純粋な立体異性体/組成物/化合物等であることを意味するものと理解される。
【0089】
立体異性体の相対配置は下記のように示される:例えば、(1R
*,2S
*,3S
*,4R
*)−6−オキソ−3−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル メタンスルホネートは、ラセミ体であることが明示されていない場合には、(1R,2S,3S,4R)−6−オキソ−3−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル メタンスルホネート又は(1S,2R,3R,4S)−6−オキソ−3−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル メタンスルホネート又はこれらの2つのエナンチオマーの混合物を表す。
【0090】
本発明によれば、式(I)〜(III)の化合物は、下記の方法により製造される。一般的に、それらは、下記の一般的反応スキーム1〜5に概説した一般的反応シークエンスに従って製造される。Arは、態様1)に記載された意味を有する。
【0092】
工程aの第一の変形において、任意にアキラルN−含有塩基の存在下で、2−シクロヘキセン−1−オンをフェニルアセトアルデヒドプロリンと反応させて、[ここでは、式(IIa)のエナンチオマーを富化したジアステレオマーに対応する]式(II)の化合物を得る。典型的な条件は下記の通りである:溶媒は、トルエン及びアニソール等の有機溶媒;tert.ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン及び2−メチル−THF等のエーテル溶媒;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン及び1,2−ジクロロベンゼン等の塩素化有機溶媒;又は酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び酢酸n−ブチル等のエステルである。好ましい溶媒は、トルエン等の有機溶媒;及びtert.ブチルメチルエーテル(TBME)等のエーテル溶媒である。溶媒は、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、3〜10vol.、通常5〜7vol.の量で使用する。プロリンは、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、約0.05equ.〜0.5equ.(通常、約0.25equ.)の量で存在する。フェニルアセトアルデヒド(Ar−CH
2−CHO)は、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、約1equ.〜2equ.(通常、約1.1equ.)の量で存在する。アキラルN−含有塩基が存在する場合には、好ましいアキラルN−含有塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又はトリブチルアミン等の第三アミン塩基である。そのようなアキラルN−含有塩基は、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、例えば、約0.1equ.〜0.5equ.、通常、0.25equ.の量で存在してもよい。反応温度は0−55℃であり、通常、45℃である。反応は少なくとも24h、通常、約4日間行う
。その後、混合物に水を添加する。水の量は、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、約1〜5vol.、通常、約2volである。次いで、混合物を固液分離により後処理する。例えば、反応温度にてろ過し、又は、まず20−25℃に冷却し、次いでろ過する。フィルターケークを、まず水で、次いで溶媒、例えばトルエンで洗浄する。水及びトルエン洗浄工程のための量は、2−シクロヘキセン−1−オンに対して3vol.、通常、約1vol.である。洗浄工程は5回まで、通常3回繰り返す。得られた式(II)の化合物を、減圧下で、高温にて、通常、45℃にて乾燥する。このプロトコルに従って合成した式(II)の化合物のジアステレオマー比は、一般に99:1より高く、エナンチオマー比(e.r.)は60:40より高い。
【0093】
上記の方法から得られた、エナンチオマーを富化した式(II)の化合物のその後の再結晶により、特にTHF(約10vol.)からの場合、通常、少なくとも90:10のエナンチオマー比が得られる。
【0094】
第2の変形において、当該アキラルN−含有塩基と共に、又は当該アキラルN−含有塩基なしで水性塩基を使用し、式(II)の化合物をラセミ体で製造する。典型的な条件は下記の通りである:水性塩基は、特に、aqu.NaOH又はaqu.KOH等のとりわけアルカリ金属水酸化物溶液である。そのような水性塩基は、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、約0.05equ.〜0.3equ.、通常、0.25equ.の量で存在する。緩衝水溶液は、特にリン酸ナトリウム緩衝液(例えば、20mM Na
3PO
4緩衝液、pH8)又は当業者に既知の他の水性緩衝液系である。そのような水性緩衝液は、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、約0.4〜1vol.、通常、0.7vol.の量で存在する。混合物を使用する場合、そのような混合物は、好ましくは、アキラルN−含有塩基と緩衝水溶液の混合物である。そのような混合物において、2−シクロヘキセン−1−オンに対して、アキラルN−含有塩基は、約0.1equ.〜0.5equ.、通常、0.25equ.の量で存在し;水性緩衝液は、約0.4〜1vol.、通常、0.7vol.の量で存在する。反応は、少なくとも24h、通常は、1−4日間行う。
【0095】
工程aの技術的利点は下記の通りである:
−化合物が高いジアステレオマー純度で得られる。
−市販の容易に入手でき安価な触媒系を使用する。
−合成が簡易、効率的かつ大スケールに適切である。
−適宜な反応条件を選択することにより、エナンチオマーを富化した又はラセミ体の式(II)の化合物を得ることができる。
−エナンチオマーを富化した式(II)の化合物を、その後の再結晶工程により、さらに富化することができる。
【0097】
工程bにおいて、[ここでは、エナンチオマーを富化した式(IIa)のジアステレオ
マーに対応する]式(II)の化合物を、塩基の存在下、対応する式(V)のメシレート誘導体に変換する。典型的な条件は下記の通りである:適宜な溶媒は、(トルエン又はベンゼン等の)有機溶媒、(THF、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン又はtert−ブチルメチルエーテル等の)エーテル、(DMSO、DMF、N−メチルピロリジノン又はジメチルアセタミド等の)極性非プロトン性溶媒又は(DCM等の)塩素化炭化水素である。最も好ましい溶媒はトルエンである。好ましい試薬はメタンスルフォニルクロリドであり、式(II)の化合物のequ.当たり約1−2equ.、通常、約1.3equ.で使用される。適宜な塩基は、式(II)の化合物のequ.当たり約1.5−3equ.、通常、約1.5equ.の量のトリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン又はピリジンである。反応は、通常、約10−25℃にて約10−60min行う。反応完了後、水を添加し、次いで相を分離し、そして溶媒を工程cの溶媒に換える。あるいは、トリエチルアミンの存在下、DCM中、r.t.にて、式(II)の化合物を塩化ベンゾイルと反応させることにより活性化を行う。あるいは、ヘプタン/EtOAc(1:1、v/v)又はトルエンからの結晶化により、式(V)の化合物が結晶形で得られる。
【0098】
工程cにおいて、メタンスルホン酸の脱離により、式(V)の化合物を[ここでは、エナンチオマーを富化した式(I)の化合物に対応する]式(I)の化合物に変換する。適宜な溶媒は、(トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン又はキシレン等の)有機溶媒、(DMSO、スルホラン、DMF、N−メチルピロリジノン又はジメチルアセタミド等の)極性非プロトン性溶媒、(アセトニトリル又はブチロニトリル等の)高沸点ニトリル、(ビス(2−メトキシエチル)エーテル等の)高沸点エーテル、(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン又は1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ−5−エン等の)高沸点窒素塩基又は(ピリジン、2,6−ルチジン又は2,4,6−コリジン等の)ピリジンである。反応は、約85−160℃にて、通常、約100−150℃にて行われる。反応時間は10minから16hまで様々で、通常は約0.5〜2hである。
【0099】
好ましい変形において、反応工程cは、上記の溶媒を用いて、塩基の存在下で行われる。この場合、上記の高沸点窒素塩基又はピリジン等の塩基性溶媒を使用すると、そのような溶媒は、同時に溶媒かつ塩基となる。一般に、適宜な塩基は、(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の)アミジン又はグアニジン塩基、(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン又はテトラメチルプロピレンジアミン等の)第三アミン、(炭酸カリウム、炭酸リチウム等の)無機塩基又は(メタノール、エタノール又はtert−ブチルアルコールのリチウム−、ナトリウム−又はカリウム塩等の)アルコレートである。塩基を、式(V)の化合物のequ.当たり、約1−10equ.、通常、約1−2equ.の量で使用する。同時に溶媒かつ塩基として使用する場合、そのような塩基は、式(V)の化合物に対して、約1−15vol、特に5−10volの量で使用する。可能な添加剤は、(NaI等の)ヨウ化物又は(LiBr等の)リチウム塩であり、式(V)の化合物のequ.当たり約0.1−1equ.の量で使用する。特定の変形において、脱離は、トルエン中、2equ.の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンの存在下、約140℃にて約1hで達成される。別の特定の変形において、脱離は、約1.5equ.のLi
2CO
3の存在下、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン中、約100℃にて約0.5hで達成される。
【0100】
第2の変形において、反応工程cは、DMSO中、二酸化ケイ素の存在下、塩基なしで行われる。
【0101】
第3の変形において、反応工程cは、式(V)の化合物を、o−キシレン、クロロベン
ゼン、3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、DMSO、スルホラン、DMF、N−メチルピロリジノン、ピリジン、2,6−ルチジン又は2,4,6−コリジン等の適宜な溶媒中、140−150℃にて1−2h加熱することにより、塩基なしで行われる。この態様の好ましい溶媒は、スルホラン、N−メチルピロリジノン、そして特に2,4,6−コリジンである。式(V)の化合物の濃度は、約0.5−10vol.(すなわち、式(V)の化合物のequ.当たり0.5〜10Lの溶媒)であり、通常、約1vol.である。反応完了後、1Nの水性HCl、次いで(iPrOAc、EtOAc、トルエン又はヘプタン等の)適宜な溶媒を添加する。好ましい溶媒は、iPrOAc、EtOAc又はヘプタンである。有機相を、希釈したaqu.HClで洗浄し、共沸蒸留により乾燥する。
【0102】
工程cの好ましい変形において、式(I)の化合物を、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、ヘプタンとtert−ブチルメチルエーテルの混合物等の適宜な溶媒から結晶化することにより単離する。結晶化のための好ましい溶媒はヘプタンである。
【0103】
さらなる変形において、工程b及びcを互いにはめ込むことにより圧縮する:すなわち、式(V)の化合物は、反応混合物の単なるろ過により得られ、ろ液を、約135℃にて約1−2h攪拌して、式(I)の化合物を得る。
【0104】
工程b及びcの技術的利点:
−工程cは高度に濃縮されているため、大量処理が可能である。
−好ましい方法を用いた場合は特に、工程b及びcにより、粗製の式(I)の化合物が高い化学純度で得られるため、結晶化により純度をさらに高くすることができる。特に、式(I)の化合物が低融点の固体である場合には、粗生成物が低純度の場合、結晶化が難しい。
−工程b及びcの2工程は圧縮してワンポットで行うことができるため、効率を上げることができる。
【0106】
あるいは、中間体である式(V)の化合物を形成することなく、式(II)の化合物を式(I)の化合物に変換することができる。工程dにおいて、式(II)の化合物を、溶媒中又はニートで、約50−150℃にて約1−16h、(酢酸ナトリウムと組み合わせた若しくは酢酸ナトリウムなしの酢酸、ポリリン酸、塩化チオニル、塩化ホスホリル又は塩化銅(I)存在下におけるジイソプロピルカルボジイミド等の)適宜なBronsted又はLewis酸で処理する。好ましい試薬は塩化チオニルである。この場合、反応は、約50℃にて約3h行う。
【0108】
あるいは、工程eにおいて、式(I)の化合物のラセミ体は、キラル相上のクロマトグラフィーにより、2つの各エナンチオマー:(R,R)−式(I)及び(S,S)−式(I)に分離することができる。適宜な溶媒は、好ましくは、75:25v/vのn−ヘプタンとEtOAc等の炭化水素とエステルの混合物であり;あるいは、0.01−0.3%のトリエチルアミンを含む。加えて、メタノールを溶出液として用いることができる(好ましくは、0.01−0.3%のトリエチルアミンを含む。)。適宜なカラムは、Chiralpak AS−V又はChiralpak IA(例えば、20μm)を含む。
【0109】
工程eの技術的利点は下記の通りである:
−特に式(III)の化合物の製造に使用する場合には、両エナンチオマーが使用できる。
−キラル固定相上の分離は高効率である。
【0111】
工程fにおいて、式(I)の化合物を式(III)の化合物に変換してもよい。これは、公表されている手順(それ対し、ジケトンを基質として用いて、まずエノールトリフラートを合成し、次いで、エノールトリフラートを、例えばPd触媒の存在下でGrignard試薬とカップリングする。Hayashiら、J.Am.Chem.Soc.2004、126、13584を見よ。)と類似の手順で行うか、又は、有機金属試薬による処理(第一の副工程)、次いで、脱水(第2の副工程)を連続的に行うことにより行われる。適宜な有機金属試薬は、有機リチウム、有機マグネシウム又は有機ホウ素化合物であり、好ましくは、有機マグネシウム試薬(Grignard試薬)である。三塩化セリウム又は三塩化ランタン、二塩化亜鉛、塩化銅、塩化リチウム、(トリメチルシリル)マグネシウムクロリド、塩化マグネシウム等の金属塩をさらに添加することができる。有機金属試薬を用いた反応は、−80℃と30℃の間、好ましくは−10℃と30℃の間で行う。第1の副工程のための適宜な溶媒は(THF又は2−メチルTHF、ジメトキシメタン等の)エーテル及び(トルエン等の)有機溶媒であり、好ましくはTHF又はトルエン及びそれらの混合物である。第2の副工程において、中間体を、酸、好ましくはaqu.無機酸、最も好ましくはaqu.HClで処理するか;又は塩化スルホニル、特にメタンス
ルホニルクロリドで処理する。第2の副工程は、20−100℃、通常は20−40℃にて行う。Aqu.後処理によりジエンが得られ、それをさらにクロマトグラフィー又は結晶化のいずれかにより精製することができる。変形において、式(I)の化合物を有機金属試薬に添加してもよい。一般的反応スキーム5に示した方法をエナンチオマーを富化した化合物に同様に使用して、エナンチオマーを富化した式(III)の化合物を得てもよい。
【0112】
工程fの技術的な利点は下記の通りである:
−これまで先例のない触媒作用に対する効果を用いて、C
1−又はC
2−対称キラルジエンのいずれかの合成を柔軟に行える。
【0113】
下記の実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0114】
実施例
すべての温度は外部温度で記載し、℃で記述する。化合物は下記の方法により定性化する:
1H−NMR(400MHz)又は
13C−NMR(100MHz)(Bruker;化学シフトは、使用する溶媒と関連して、ppmで示す;多重度:s=一重項、d=二重項、t=三重項、p=五重項、hex=六重項、hept=七重項、m=多重項、br=広域、結合定数はHzで示す。);定量的NMRの内部標準は、1,4−ジメトキシベンゼンである;LC−MS及びキラルHPLC(方法は以下に記載する。);t
Rは分で示す。融点はBuechi融点装置B540上で測定し、補正は行わない。別段の記載が無い限り、収率はそのまま記載する。補正収率は、出発物質及び生成物を内部標準としたNMRアッセイで補正したものである。
【0115】
LC−MS法1:
Agilent G1956B(MS、イオン化:ESI+、APCI)、Agilent G1312B Bin Pump、Agilent G1315C DAD、Agilent G1316B(温度制御カラムコンパートメント)、Agilent G1367C(オートサンプラー)
【0116】
【表1】
【0117】
LC−MS法2:
LC−方法1と同じハードウェア
【0118】
【表2】
【0119】
キラルHPLC法:
Dionex HPG−3400SD Bin pump、Dionex DAD−3000
【0120】
【表3】
【0121】
(この項において、及び明細書の上記の部分において使用される)略語:
aqu. 水性
DCM ジクロロメタン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルフォキシド
d.r. ジアステレオマー比
DSC 示差走査熱量測定
ee 鏡像体過剰率
equ. 当量
e.r. エナンチオマー比
EtOAc 酢酸エチル
h 時間
iPrOAc 酢酸イソプロピル
IPC インプロセス制御
LC−MS 液体クロマトグラフィー−質量分析
GC−MS ガスクロマトグラフィー−質量分光
min. 分
m.p. 融点
Ms メタンスルホニル(メシル、−SO
2−CH
3)
org. 有機
rac. rac.
r.t. 室温
soln. 溶液
TBME tert−ブチルメチルエーテル
temp. 温度
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
t
R 保持時間
%w/w 質量%(NMRアッセイ)
%a/a 面積%(面積%による純度)。
【0122】
実施例1:
(1R,4R,5S,6S)−6−ヒドロキシ−5−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン(化合物2)の製造
一般的方法1:
【化21】
【0123】
2−シクロヘキセン−1−オン(1wt.、1equ.)とフェニルアセトアルデヒド(1.1equ.)の、トルエン(7vol.)中の混合物に、窒素下、20−25℃にて、L−プロリン(0.25equ.)、次いで、塩基(0.25equ.)を添加した。混合物を、45℃にて4d攪拌した。懸濁液を20−25℃に冷却し、水(2vol.)を添加し、混合物を20−25℃にて15分攪拌した。懸濁液をろ過し、水(3×1vol.)、次いでトルエン(3×1vol.)で洗浄した。フィルターケークを、真空下、45℃にて乾燥し、化合物2を得た。
【0124】
一般的方法2:
2−シクロヘキセン−1−オン(1wt.、1equ.)とフェニルアセトアルデヒド(1.1equ.)の、後記する溶媒(6vol.)中の混合物に、窒素下、20−25℃にて、L−プロリン(0.25equ.)を添加した。混合物を45℃にて3d攪拌した。懸濁液を20−25℃に冷却し、水(2vol.)を添加し、混合物を20−25℃にて15分攪拌した。懸濁液をろ過し、水(3×1vol.)で洗浄し、次いで、後記する溶媒(3×1vol.)を用いた洗浄工程に付した。フィルターケークを、真空下、45℃にて乾燥し、化合物2を得た。
【0125】
1H−及び
13C−NMRによる分析、LC−MS法1及びキラルHPLC。ジアステレオマー比(2:dia−2の比率;キラルHPLC法によれば、他のジアステレオマー
は0.5%未満。)及びエナンチオマー比(2:ent−2の比率)は、キラルHPLC法で決定した。
【0126】
2:無色の固体;LC−MS法1:>99%a/a、t
R=1.23、[M−18+1]
+=199;
1H−NMR(CDCl
3):δ=7.34−7.42(m、4H)、7.27−7.32(m、1H)、4.48(t、J=3.7Hz、1H)、2.93−2.97(m、1H)、2.58(q、J=3.1Hz、1H)、2.49−2.56(m、1H)、2.35−2.44(m、2H)、1.87−1.95(m、3H)、1.72−1.83(m、1H)、1.42−1.53(m、1H);
13C−NMR(CDCl
3):δ=215.40、142.21、128.60、127.56、126.59、74.37、52.83、51.50、45.55、34.42、20.21、18.22。
【0127】
【表4】
1) 4d後の反応混合物の2:dia−2比
IPC:よく攪拌した混合物からサンプルを採取し、蒸発乾固した。LC−MS用に、2mgの残渣を水/アセトニトリル(1mL)に溶解した。
2) 単離した生成物の2:dia−2比
3) 単離した生成物の2:ent−2比
4) トルエン中の溶液(6vol.)
【0128】
【表5】
1) 3d後の反応混合物の2:dia−2比
IPC:よく攪拌した混合物からサンプルを採取し、蒸発乾固した。LC−MS用に、2mgの残渣を水/アセトニトリル(1mL)に溶解した。
2) 単離した生成物の2:dia−2比
3) 単離した生成物の2:ent−2比
【0129】
1L) (1S,4S,5R,6R)−6−ヒドロキシ−5−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン(化合物ent−2)の製造
【化22】
【0130】
D−プロリン(2.93g)、N−エチル−ジイソプロピルアミン(4.36mL)の、トルエン(70mL)中の混合物に、20−25℃にて、2−シクロヘキセン−1−オン(10mL)とフェニルアセトアルデヒド(14.6mL)を添加した。混合物を45℃にて3d攪拌した。LC−MS法1によるIPCが99%を超える変換を示した。懸濁液を20−25℃に冷却し、ろ過した。フィルターケークを水(3×10mL)、次いで、トルエン(3×10mL)で洗浄した。フィルター上で、フィルターを通して空気を吸引することにより、フィルターケークを乾燥した。収量:13.2g、60%。化合物ent−2の構造に対応する
1H−NMR(CDCl
3)。キラルHPLC法:エナンチオマー比=27:73(2:ent−2)、ジアステレオマー純度:100%;LC−MS法1:100%a/a、t
R=1.19。
【0131】
実施例2:
rac−(1R
*,4R
*,5S
*,6S
*)−6−ヒドロキシ−5−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン(化合物rac−2)の製造
実施例2A)
L−プロリン(5.87g)、2−シクロヘキセン−1−オン(20g)及びフェニルアセトアルデヒド(29.9g、1.1equ.)の、トルエン(140mL)中の混合物に、20−25℃にて、N−ジイソプロピルエチルアミン(6.6mL)と20mMリン
酸ナトリウム緩衝溶液(pH8、14mL)を添加した。混合物を45℃にて10d攪拌した。懸濁液(pH8−9)をろ過した。フィルターケークを水(3×10mL)、次いでトルエン(3×20mL)で洗浄した。フィルターケークを、減圧下、45℃にて乾燥し、rac−2を白色の固体として得た。収量:15.7g、36%。化合物rac−2の構造に対応する
1H−NMR(CDCl
3)。キラルHPLC法:エナンチオマー比=50:50、ジアステレオマー純度:100%;LC−MS法1:100%a/a、t
R=1.23。
【0132】
実施例2B)
L−プロリン(1.46g)の、TBME(34mL)中の混合物に、20−25℃にて、2−シクロヘキセン−1−オン(5g)とフェニルアセトアルデヒド(8.1g、1.2equ.)を添加した。1N NaOH(3.47mL)を添加した後、混合物を20−25℃にて1d攪拌した。懸濁液(pH8−9)をろ過した。フィルターケークを水(3×5mL)、次いでTBME(3×5mL)で洗浄した。フィルターケークを、減圧下、45℃にて乾燥し、rac−2を白色の固体として得た。収量:2.59g、24%。化合物rac−2の構造に対応する
1H−NMR(CDCl
3)。キラルHPLC法:エナンチオマー比=50:50、ジアステレオマー純度:100%。
【0133】
実施例2C)
L−プロリン(1.46g)のTBME(34mL)中の混合物に、20−25℃にて、2−シクロヘキセン−1−オン(5g)とフェニルアセトアルデヒド(13.5g、2equ.)を添加した。1N NaOH(3.47mL)を添加した後、混合物を20−25℃にて1d攪拌した。懸濁液(pH8−9)をろ過した。フィルターケークを水(3×5mL)、次いでTBME(2×4mL)で洗浄した。フィルターケークを、減圧下、45℃にて乾燥し、rac−2を明−黄色の固体として得た。収量:3.4g、32%。化合物rac−2の構造に対応する
1H−NMR(CDCl
3)。
【0134】
実施例3:
エナンチオマーを富化した(1R,4R,5S,6S)−6−ヒドロキシ−5−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オン(化合物2)の再結晶:
【表6】
1) 出発物質の2:ent−2比
2) 単離した生成物の2:ent−2比
【0135】
実施例4:
(1R,4R)−5−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−オン(化合物1)の製造
【化23】
【0136】
4.1 (1R,2S,3S,4R)−6−オキソ−3−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イルメタンスルホネート(化合物5)の製造
化合物2(25g)を、DCM(125mL)、次いで、トリエチルアミン(24mL)に溶解した。懸濁液を0℃に冷却し、メタンスルフォニルクロリド(11.6mL)を10−20℃にて添加した。1.5h後、混合物を洗浄し、ろ過し、ろ液を水(3×125mL)で洗浄した。有機相をNa
2SO
4上で乾燥し、減圧下で濃縮乾固して、化合物5を、r.t.にて固化する黄色のオイルとして得た。収量:32.5g、96%。
【0137】
その20gを、50℃にて、ヘプタン(350mL)とEtOAc(350mL)に溶解し、シリカゲル(15g)上でろ過した。ろ液を0℃に冷却し、ろ過し、フィルターケークをヘプタン(100mL)で洗浄し、化合物5の第1生成物を無色の固体として得た。第1生成物の収量:8.33g(回収率42%)。さらなる結晶を母液からろ過し、化合物5の第2の生成物を無色の固体として得た。第2の生成物の収量:2.75g。
【0138】
M.p.=87℃(DSCのピーク);LC−MS法1:100%a/a、t
R=1.4、[M−96+1]+=199;
1H−NMR(CDCl
3):δ=7.38−7.49(m、2H)、7.30−7.38(m、3H)、5.45(t、J=3.8Hz、1H)、3.22−3.30(m、1H)、2.88−3.00(m、4H)、2.54−2.63(m、1H)、2.44−2.53(m、1H)、2.35−2.42(m、1H)、1.96−2.08(m、2H)、1.71−1.88(m、1H)、1.43−1.60(m、1H);
13C−NMR(CDCl
3):δ=210.97、139.91、129.03、127.34、82.51、50.59、48.58、45.54、39.45、35.41、20.21、18.02。
【0139】
4.2 (1R,4R)−5−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−オン(化合物1)の製造
エナンチオマー比72:28の化合物2を出発物質とした工程bとcを共に
化合物2(100g、エナンチオマー比72:28)を、トルエン(500mL)、次いで、トリエチルアミン(97mL)に溶解した。懸濁液を0℃に冷却し、メタンスルフォニルクロリド(46.5mL)を10−20℃にて添加した。10min後、IPC(LC−MS法1)が99%を超える変換を示した。混合物を水(2×250mL)で洗浄し、減圧下で濃縮乾固して、化合物5を、r.t.にて固化する明−黄色のオイルとして得た。化合物5の収量:136g、100%。NMRアッセイ値:95%w/w。キラルHPLC法:エナンチオマー比=72:28;LC−MS法1:100%a/a、t
R=1.39、[M−96+1]
+=199。CDCl
3において、構造に対応する
1H−NMRデータ。
【0140】
化合物5(67.8g)を2,4,6−コリジン(65mL)に溶解し、140−145℃にて80min攪拌した。2N HCl(320mL)とヘプタン(800mL)を添加し、層を分離した。有機相を2N HCl(2×170mL)、次いで水(170mL)で洗浄し、MgSO
4上でろ過した。ろ液を、減圧下、50℃にて蒸発乾固して、粗製の化合物1をオイルとして得た。
【0141】
粗製の化合物1の収量:36g、79%。キラルHPLC法:エナンチオマー比=69:31。LC−MS法1:95。2%a/a、t
R=1.54;CDCl
3において、構造に対応する
1H−NMRデータ。
【0142】
この粗生成物(36g)を、50℃にて、TBME(30mL)に溶解した。0℃に冷却し、0℃にて0.5−1h攪拌した後、懸濁液をろ過し、フィルターケークをTBME(3×3mL)で洗浄した。生成物を、減圧下、50℃にて乾燥し、第1生成物の結晶1♯1を無色の固体として得た。
【0143】
結晶1♯1:11.95g、回収率33%、化合物5からの収率26%。キラルHPLC法:エナンチオマー比=98:2。CDCl
3において、構造に対応する
1H−NMRデータ。
【0144】
第1の結晶化の母液をヘプタン(30mL)で希釈し、0℃にて0.5h攪拌した。懸濁液をろ過し、フィルターケークをTBME(3×1mL)で洗浄した。生成物を、減圧下、50℃にて乾燥し、第2生成物の結晶1♯2を無色の固体として得た。
【0145】
結晶1♯2:1.63g、4%。キラルHPLC法:エナンチオマー比=98:2。CDCl
3において、構造に対応する
1H−NMRデータ。
【0146】
実施例5:
エナンチオマーを富化した(1R,4R)−5−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−オン(化合物1)の再結晶:
【表7】
フィルターケークを、結晶化に用いた溶媒2−3×0.1vol.で洗浄した。
1) 出発物質の1:ent−1比。
2) 単離した生成物の1:ent−1比。
【0147】
実施例6:
rac−(1R
*,4R
*)−5−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−オン(化合物rac−1)の製造
6.1 rac−(1R*,2S*,3S*,4R*)−6−オキソ−3−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル メタンスルホネート(化合物rac−5)の製造
化合物rac−2(171g)を、DCM(1200mL)、次いでトリエチルアミン(221mL)に溶解した。懸濁液を0℃に冷却し、メタンスルフォニルクロリド(11.6mL)を10−20℃にて添加した。1h後、混合物を濃縮乾固した。残渣を、iPrOAc(1L)と水(1L)中に取った。層を分離し、水相をiPrOAc(500mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を減圧下で濃縮して、化合物rac−5を茶色のオイルとして得、それをさらに精製することなく次の工程で使用した。収量:208g(粗収量)、89%。LC−MS法2:70%a/a、t
R=1.1。
1H−NMR(CDCl
3):化合物rac−5に対応。
【0148】
6.2 rac−(1R*,4R*)−5−フェニルビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2−オン(化合物rac−1)の製造
【化24】
化合物rac−5(190g)のDMF(380mL)中の溶液を、r.t.にて、LiBr(56g)とLi
2CO
3(48g)の、DMF(570mL)中の懸濁液に添加した。得られた混合物を150℃に1h加熱した。それをr.t.に冷却した。水(1300mL)とiPrOAc(1300mL)を添加し、層を分離した。有機層を塩水(Brine)(1300mL)、水(1300mL)で洗浄し、真空下、50℃にて濃縮乾固し、化合物rac−1を得た。収量:117g(粗収量)、91%。この粗生成物108gを、短工程蒸留(short−path distillation)により、120℃、0.001mbarにて精製し、47g(37%)の化合物rac−1を得た。LC−MS法2:97%a/a、t
R=1.26。
1H−NMR(CD
3OD):δ=化合物rac−1に対応。