【実施例】
【0061】
実施例1:
1233xfを製造するための液相プロセスの開発の一部として、触媒を用いないで実験を行った。この実験は、1ガロンのParr反応器内においてバッチモードで運転した。この実験に関しては、282.9gのHF、及び246.2gの240db(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)(12.4:1のHF:240dbのモル比)を、室温において反応器に充填した。次に、混合機を始動させて反応器の内容物がよく混合されることを確保した。次に、反応器を所望の温度に加熱した。加熱によって、HCl副生成物がフッ素化反応の結果として生成するにつれて圧力が上昇し始めた。
【0062】
反応器を数時間かけて約110℃に加熱した後に、温度を一定に維持した。反応中に生成するHClをドライアイスで冷却したドライアイストラップ(DIT)に排気することによって、圧力を250psig〜325psigの範囲に制御した。約9.5時間後の反応の完了時(HCl生成の欠如によって決定した)において、反応器からの圧力をDIT中に排気した。DITからの粗生成物を、約400gの水と共に1Lのモネル吸収シリンダー(ドライアイス中で冷凍)中に移した。吸収シリンダーを室温に加温し、シリンダー内で形成された有機層の試料(排出時に水性層及び有機層がシリンダー内に存在していた)を採取し、GCによって分析した。
【0063】
GCの結果は、0.42GC%の245cb、97.23GC%の1233xf、1.39GC%の244bb、残余量の過小フッ素化中間体(241db及び242db)を示した。その後に、回収された有機化合物の量を異なる相の更なる分析によって定量したところ、75.0gの量であった。
【0064】
反応器を約300g〜400gの水でクエンチしてHF及びHClを吸収し、次に約100gの四塩化炭素を加えることによって、排気後の反応器内に残留する有機化合物を回収した。次に、反応器を開放し、その内容物をプラスチックボトル中に排出した。分液漏斗を用いることによって、有機化合物を水性相から分離した。反応器に加えたCCl
4の重量を回収された有機相の全重量から減じることによって反応器から回収された重質分の量を計算したところ、96.9gの量であった。
【0065】
有機層のGC/MS及びGC分析を行ったところ、過小フッ素化種の241db(91.057GC%)、242dc(0.760GC%)、及び出発物質の240db(8.183GC%)に起因する3つの異なるピークが示された。240dbの全転化率は97%であると計算された。
【0066】
実施例2:
同じ装置及び手順を用いて、実施例1に記載した実験を繰り返した。反応器を110℃に加熱して維持した。しかしながら、この実験は完了まで進行させなかった。約6.5時間後に反応器圧力は320psigに達し、実験を停止した。始めに、382.7gのHF及び244.1gの240dbを反応器に充填した。下表Iに示すように、結果は実施例1のものと同様であったが、240dbの転化率はより低かった。
【0067】
【表1】
【0068】
比較例1:
本比較例は、240dbが、昇温温度でフッ化水素の存在下において、テトラクロロプロペンのようなその不飽和誘導体よりも安定であることを示す。
【0069】
1233xfを製造するための液相プロセスの開発の一部として、出発物質として1,1,2,3−テトラクロロプロペンを用いて実験を行った。この実験では、実施例1及び2において記載したものと同じ1ガロンのParr反応器を用い、バッチで運転した。まず、空の反応器に327gの1,1,2,3−テトラクロロプロペンを充填した。次に、557.5gのHFを室温において反応器中に充填した。次に、混合機を始動させて反応器の内容物がよく混合されることを確保した。次に、反応器を149℃に加熱した。
【0070】
加熱によって、HCl副生成物がフッ素化反応の結果として生成するにつれて圧力が上昇し始めた。反応中に生成するHClをドライアイスで冷却したDITに排気することによって、圧力を490psig〜497psigの範囲に制御した。反応器を149℃において約4時間保持した。DIT内に回収された揮発性の反応生成物、及び反応器残渣を、実施例1に記載したものと同じようにして精製及び分析した。反応生成物を分析したところ、1233xfへの選択率は約20%であったことが示された。1,1,2,3−テトラクロロプロペン出発物質の残りの80%は未知のタール状の化合物に転化した。実施例1において同様の条件で反応を行った場合にはタール状の副生成物は観察されなかったので、この比較例は飽和クロロアルカンのHCC−240dbを用いて出発することの利益を示す。
【0071】
比較例2:
本比較例は、240dbの1233xfへのフッ素化反応のためにフッ素化触媒を用いると、大量のオリゴマー、二量体、及びタールが形成されることを示す。
【0072】
1233xfを製造するための液相プロセスの開発の一部として、液相フッ素化触媒を用いて実験を行った。この実験では、1Lの撹拌オートクレーブを用い、バッチモードで運転し、これを実験#4と呼んだ。まず、空の反応器に84.3gのSbCl
5液体フッ素化触媒を充填した。次に、402.6gのHFを室温において反応器中に充填すると、直ちに触媒がフッ素化され始めるにつれてHClの生成のために反応器内の圧力が上昇した。
【0073】
HFと触媒との反応から生じる圧力(HCl)を排気した後、152.3gのHCC−240dbを反応器に充填した。次に、混合機を始動させて反応器の内容物がよく混合されることを確保した。次に、反応器を90℃に加熱した。加熱によって、HCl副生成物がフッ素化反応の結果として生成するにつれて圧力が上昇し始めた。反応中に生成するHClをドライアイスで冷却したトラップに排気することによって、圧力を325psig〜330psigの範囲に制御した。反応器を90℃において約1時間保持した。
【0074】
DIT内に回収された揮発性の反応生成物、及び反応器残渣を、実施例1に記載したものと同じようにして精製及び分析した。揮発性の反応生成物は実施例1及び2において記載した触媒を用いない実験運転からのものと同じであったが、排気後に反応器内に残留する有機化合物は異なっていた。今回は、有機層(溶解有機化合物を有するCCl
4)は暗褐色/黒色であり、非接触実験において回収された有機層よりも遙かに粘稠であり、GC分析によって複数のオリゴマー副生成物及びタールの存在が示された。HCC−240db、又は過小フッ素化種のHCFC−241db及びHCFC−242dbは存在していなかった。
【0075】
実験条件及び反応生成物のGC分析の結果を下表IIに示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例3:
付属のストリッピングカラムを有する直列の3つの連続撹拌反応器を用いて粗1233xf生成物を製造した。第1の反応器についての底部排液(これは第2の反応器に供給した)、及び第2の反応器についての排液(これは第3の反応器に供給した)が存在していた。3つのストリッピングカラムのそれぞれから排出される塔頂流を接続して、生成した全ての粗1233xf及びHClを混合して、個々の成分への分離に送った。
【0078】
先頭(第1)の反応器へは、15:1のモル比のHF:240dbを連続的に供給した。反応器温度は約140℃に保持した。反応圧力は約400psigに制御した。HF、HCl、及び粗1233xfを、付属のストリッピングカラムの頂部から連続的に排出した。反応器内のほぼ一定のレベルを維持する速度で、反応器を第2の反応器へ連続的に排液した。先頭の反応器は、70%の240dbの転化率、及び50%の粗1233xfの収率を達成した。第2の反応器へ排液された物質の有機組成は、約40%の240db、55%の241db、及び5%の242dbであった。この流れの中にはHFも存在していた。第2の反応器に新しいHFを加えて、精留カラム塔頂流の損失を補填した。
【0079】
第2の反応器は375psigで運転し、135℃に保持した。HF、HCl、及び粗1233xfを、付属のストリッピングカラムの頂部から連続的に排出した。反応器内のほぼ一定のレベルを維持する速度で、反応器を第3の反応器に連続的に排液した。第2の反応器は、90%の240dbの転化率、及び70%の粗1233xfの収率を達成した。第2の反応器へ排液された物質の有機組成は、約33%の240db、62%の241db、及び5%の242dbであった。この流れの中にはHFも存在していた。第3の反応器に新しいHFを加えて、精留カラム塔頂流の損失を補填した。
【0080】
第3の反応器は350psigで運転し、130℃に保持した。HF、HCl、及び粗1233xfを、付属のストリッピングカラムの頂部から連続的に排出した。反応器内のほぼ一定のレベルを維持する速度で、反応器を再循環カラムに連続的に排液した。第3の反応器は、100%の240dbの転化率、及び95%の粗1233xfの収率を達成した。再循環カラムへ排液された物質の有機組成は、約95%の241db、及び5%の242dbであった。この流れの中にはHFも存在していた。
【0081】
実施例4:
本実施例は、過剰のHF、未反応の240db、及び過小フッ素化中間体を反応器へ再循環して戻すために回収する再循環カラムの運転を示す。
【0082】
1233xfを製造するフッ素化反応器からの反応器流出流を、再循環蒸留カラムに直接、連続的に供給した。この流れは、HF、HCl、及び1233xf粗生成物を含んでいた。粗生成物は、幾つかの過フッ素化中間体、過小フッ素化中間体、及び未反応の有機供給材料を含んでいた。蒸留カラムは、10ガロンのリボイラー、プロパック蒸留充填材を充填したID=2インチ×10フィートのカラム、及びシェルアンドチューブ凝縮器から構成した。カラムは約30の理論段を有していた。蒸留カラムに、リボイラーレベル指示器、温度、圧力、及び差圧の送信機を取り付けた。
【0083】
蒸留カラムは、約60psigの圧力、及び約15インチ−H
2Oの差圧で連続的に運転した。カラムの頂部からの塔頂から排出された流れは、HCl、過フッ素化中間体、1233xf、及び若干のHFから構成されていた。流れの有機部分のGC分析によって、1233xfの純度は99%GC面積%よりも大きかったことが示された。
【0084】
リボイラーの底部から排出された流れは、HF、過小フッ素化中間体、及び未反応の有機供給材料から構成されており、これはフッ素化反応器に再循環して戻した。
実施例5:
本実施例は、本発明の幾つかの好ましい態様によるHF及び1233xfの混合物からの無水HFの回収を示す。
【0085】
約75重量%の1233xf、及び約25重量%のHFから構成される混合物を気化させ、充填カラムの底部に、約2.9ポンド/時の供給速度で約4時間供給した。その中に約2%のHFを溶解した約80重量%の硫酸(80/20のH
2SO
4/H
2O)の流れを、同じ充填カラムの頂部に、同じ時間中に約5.6ポンド/時の供給速度で連続的に供給した。カラムの頂部から排出される気体流は、その中に1.0重量%未満のHFを有する1233xfを含んでいた。カラム塔底物中の硫酸中のHFの濃度は、2.0重量%から約15重量%に増加した。
【0086】
硫酸及び約15重量%のHFを含むカラム塔底物を回収し、2ガロンのテフロン容器中に充填した。混合物を約140℃に加熱して気化させて、HF生成物をフラッシングしてこれを回収した。回収したHF生成物は、約6000ppmの水及び500ppmのイオウを含んでいた。
【0087】
フラッシュ蒸留から回収されたHFを蒸留カラム内で蒸留して、無水HFを回収した。回収された無水HFは、50ppm未満のイオウ不純物及び100ppm未満の水を含んでいた。
【0088】
実施例6:
本実施例は、不均一混合物を形成する1233xf及びHFの混合物の相分離を示す。
60.77gの粗1233xf及び34.91gのHFをテフロンセル内で一緒に混合すると、2つの液相が視認観察された。この混合物を、約24℃の雰囲気温度に達するまで静置した。上相及び下相をサンプリングし、イオンクロマトグラフィーによって分析してHF濃度を求めた。下側の有機化合物に富む層は2.2重量%のHFを有しており、上側のHFに富む層は62.96重量%のHFを有していた。
【0089】
実施例7:
本実施例は、酸を含まない1233xf粗生成物の精製を示す。
HCl及びHFの除去の後に回収された120ポンドの1233xf粗生成物をバッチ蒸留カラムに充填した。粗物質は、約96GC面積%の1233xf及び4GC面積%の不純物を含んでいた。蒸留カラムは、10ガロンのリボイラー、プロパック蒸留充填材を充填したID=2インチ×10フィートのカラム、及びシェルアンドチューブ凝縮器から構成した。カラムは約30の理論段を有していた。蒸留カラムに、リボイラーレベル指示器;温度、圧力、及び差圧の送信機;を取り付けた。バッチ蒸留は、約90psigの圧力、及び約17インチ−H
2Oの差圧で運転した。約7ポンドの軽質留分が回収され、これは、主として245cb、トリフルオロプロピン、244bb、及び1233xfから構成されていた。110ポンドの99.9+GC面積%の1233xfが回収された。約3ポンドの量のリボイラー残渣は、主として244bb、1233xf、1232xf、及びC
6化合物(二量体)であった。99.8+GC面積%の純度の1233zd(E)の回収率は94.8%であった。
【0090】
本明細書において用いる単数形の「a」、「an」、及び「the」は、記載によって他に明確に示されていない限りにおいて、複数のものを包含する。更に、量、濃度、又は他の値若しくはパラメーターを、範囲、好ましい範囲、又はより高い好ましい値とより低い好ましい値のリストのいずれかとして与える場合には、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、任意のより高い範囲限界又は好ましい値、及び任意のより低い範囲限界又は好ましい値の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示すると理解すべきである。本明細書において数値の範囲が示されている場合には、他に示されていない限りにおいて、この範囲はその端点及びこの範囲内の全ての整数及び小数を含むと意図される。本発明の範囲を、範囲を規定する際に示される具体的な値に限定することは意図しない。
【0091】
上記の記載は本発明の単なる例示であることを理解すべきである。種々の代替及び修正は、本発明から逸脱することなく当業者によって想到することができる。したがって、本発明は、特許請求の範囲内の全てのかかる代替、修正、及び変更を包含すると意図される。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
触媒を用いないで1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと無水HFを連続低温液相反応させることを含み、
反応を、それぞれが先頭の反応容器に供給される最初の反応物質の一部を次々に転化させる1以上の反応容器内で行い、反応を連続的に行う1233xfの製造方法。
[2]
反応が、
(a)フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含み、フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが約3:1より大きいモル比で存在する液体反応混合物を与え;そして
(b)フッ化水素と1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを、液相中、約65℃〜約175℃の反応温度において、直列の1以上の反応器を用いて反応させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、塩化水素、未反応のフッ化水素、及び場合によっては未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む反応生成物流を生成させる;
工程を含む、[1]に記載の方法。
[3]
液相反応の低温が85℃〜155℃の温度範囲である、[2]に記載の方法。
[4]
液相反応の低温が95℃〜150℃の温度範囲である、[2]に記載の方法。
[5]
(c)反応生成物流を合わせて熱交換器と接触させて、
(i)塩化水素の大部分、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの大部分、及び未反応のフッ化水素の少なくとも一部を含み、かかる一部は少なくとも2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの1以上と共沸混合物を形成するのに十分な量である第1の粗生成物流、及び、
(ii)未反応のフッ化水素の大部分及び過小フッ素化中間体を含む還流成分;
を生成させ;そして
(d)還流成分を反応混合物に戻す;
工程を更に含む、[2]に記載の方法。
[6]
(e)未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む未反応の反応物質及び/又は過小フッ素化中間体を蒸留によって分離し、これらの未反応の反応物質及び過小フッ素化中間体を反応器に再循環して戻し;
(f)塩酸副生成物の少なくとも一部、好ましくは大部分を取り出し;
(g)粗生成物流中の未反応のHFを、硫酸吸着又は相分離によって分離して再循環し;及び
(h)粗生成物流を蒸留して、反応副生成物から1233xfを分離する;
工程の1以上を更に含む、[5]に記載の方法。
[7]
(a)フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを累積的に含む1以上の供給流;
(b)それぞれに、それぞれが約65℃〜約175℃の第1の温度に維持される低温冷却が供給される付属のストリッピングカラムと組み合わされているその前段の反応器によって材料が供給される直列の2以上の反応器から構成され、液相反応器の列は1以上の供給流と流体接続されている液相反応器システム;
(c)ストリッピングカラム、ストリッピングカラムに流体接続されている還流流、及びストリッピングカラムに流体接続されている混合第1粗生成物流を含み、還流流は先頭の液相反応器に流体接続されているストリッピングシステム;
(d)第1の蒸留カラム、第1の蒸留カラムに流体接続されている塩化水素副生成物流、及び第1の蒸留カラムに流体接続されている第2の粗生成物流を含み、第1の蒸留カラムはストリッピングカラムに流体接続されている塩化水素除去システム;
(e)硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器、硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器に流体接続されているフッ化水素を含む第2の再循環流、硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器に流体接続されている2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む第3の生成物流を含み、硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器は第2の粗生成物流に流体接続されているフッ化水素回収システム;及び
(f)第3の生成物流に流体接続されている第2の蒸留カラム、第2の蒸留カラムに流体接続されている2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む最終生成物流、蒸留カラムに流体接続されている第2の副生成物流を含む2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン精製システム;
を含む1233xfを製造するための統合システム。
[8]
反応温度範囲が85℃〜155℃である、[7]に記載のシステム。
[9]
反応温度範囲が95℃〜150℃である、[7]に記載のシステム。