特許第5909244号(P5909244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッドの特許一覧

特許59092442−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの低温製造
<>
  • 特許5909244-2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの低温製造 図000006
  • 特許5909244-2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの低温製造 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909244
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの低温製造
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/20 20060101AFI20160412BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   C07C17/20
   C07C21/18
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-548533(P2013-548533)
(86)(22)【出願日】2012年1月5日
(65)【公表番号】特表2014-510027(P2014-510027A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】US2012020302
(87)【国際公開番号】WO2012094477
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年12月19日
(31)【優先権主張番号】61/430,630
(32)【優先日】2011年1月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/313,085
(32)【優先日】2011年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,ダニエル・シー
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
(72)【発明者】
【氏名】ポクロフスキー,コンスタンティン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】ベクテセヴィッチ,セルマ
【審査官】 吉田 直裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−180908(JP,A)
【文献】 特表2010−531895(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/131766(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/123148(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00−17/42
C07C 21/00−21/22
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を用いないで1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと無水HFを連続低温液相反応させることを含み、
反応を、それぞれが先頭の反応容器に供給される最初の反応物質の一部を次々に転化させる1以上の反応容器内で行い、反応を連続的に行う1233xfの製造方法であって、
反応が、
(a)フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含み、フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが3:1〜15:1のモル比で存在する液体反応混合物を与え;そして
(b)フッ化水素と1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを、液相中、65℃〜175℃の反応温度において、直列の1以上の反応器を用いて反応させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、塩化水素、未反応のフッ化水素、及び場合によっては未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む反応生成物流を生成させる;
工程を含む、方法
【請求項2】
液相反応の低温が85℃〜155℃の温度範囲である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
液相反応の低温が95℃〜150℃の温度範囲である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年1月7日出願の同じ譲渡人に所有され、共に係属中の米国仮特許出願61/430,630(その開示事項を参照として本明細書中に包含する)からの国内優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ヒドロクロロフルオロオレフィン、特に2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf又は1234yfとしても知られる)の製造における中間体として有用な2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf又は1233xfとしても知られる)を製造するための方法及びシステムに関する。1233xfはまた、クロロフルオロポリマーの製造におけるモノマーとして用いることもできる。
【背景技術】
【0003】
1233xfを合成する方法は公知である。例えば、米国特許7,795,480においては、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、2,3,3,3−テトラクロロプロペン、又は1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを、触媒及び安定剤の存在下においてフッ化水素(HF)と気相反応させることによって1233xfを製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法においては触媒の失活が起こり、その結果、低い収率及び触媒再生の必要性がもたらされる。
【0004】
1233xfを製造するための他の方法が存在する。例えば、300℃を超える高温においてテトラクロロプロペン又はペンタクロロプロパンを蒸気相非接触フッ素化することによる1233xfの製造方法を開示する米国特許出願61/202,966を参照。この方法では、HF(望ましくない側反応を促進して望ましくない副生成物の形成をもたらす)の存在下での高温における出発材料の不安定性に起因する低い収率が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許7,795,480
【特許文献2】米国特許出願61/202,966
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記で参照した文献において開示されている高い運転温度及び望ましくない副生成物の形成によって、高い運転及び製造コストがもたらされる。したがって、1233xfを高い収率で製造する方法に対する必要性が未だ存在する。本発明はこの必要性を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、触媒を用いないで、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db又は240dbとしても知られる)を無水HFと連続低温液相反応させることによって1233xfを製造することによってこれらの問題点を解決する。しかしながら、触媒を使用しないと、より遅い反応速度の問題点がもたらされる。本発明者らは、それぞれが先頭の反応器に供給される最初の反応物質の一部を次々に転化させ、連続的に運転される直列の反応容器を用いることによってこの問題点を解決した。特定の系列内の反応器の数は、それらの寸法(より大きな手段はより大きな資本金が必要であるが、より少ない数が求められる)、及び1233xfの所望の製造速度によって定まる。少なくとも1つの反応器を用いることができる。好ましくは、少なくとも2つの反応器を用いることができる。より好ましくは、少なくとも3つの反応器を用いることができる。最も好ましくは、3つより多い反応器を用いることができる。
【0008】
一例として、先頭の反応器は240db供給材料の70%を転化させ、その50%しか所望の生成物に転化せず、一方、残りは部分的にしかフッ素化されずに、とりわけ1,1,2,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(HCFC−241db又は241db)、1,2,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(HCFC−242db又は242db)、及び2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db又は243db)、2,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(HCFO−1231xf)、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)のような化合物などの中間体が生成する。未転化の240db及び過小フッ素化中間体は、1233xfと比べて高い沸点の化合物であり、付属のストリッピングカラムから排出されない。
【0009】
未転化の240db、過小フッ素化中間体、及び若干の未反応のHFの連続流を、反応器の底部から取り出して第2の反応器に供給する。ここで、最初の反応物質のより多く及び中間体が1233xfに転化し、付属のストリッピングカラムの頂部から排出される。新しいHFを加える必要はない可能性がある。上述のように、未転化の240db、過小フッ素化中間体、及び若干の未反応のHFの連続流を、第2の反応器の底部から取り出して第3の反応器に供給して、ここでより多くを転化させる。ここでも、新しいHFを加える必要はない可能性がある。1233xfの所望の製造速度が達成されるまで、この反応系列を連続して継続する。
【0010】
したがって、本発明の一形態は、
(a)フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含み、フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは約3:1より大きいモル比で存在する液体反応混合物を与え;そして
(b)フッ化水素と1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを、液相中、約65℃〜約175℃の反応温度において、直列の1以上、好ましくは2以上の撹拌反応器を用いて反応させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、塩化水素、未反応のフッ化水素、及び場合によっては未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む反応生成物流を生成させる;
ことを含む1233xfの製造方法を提供する。
【0011】
好ましくは、この方法は、
(c)反応生成物流を合わせて熱交換器と接触させて、
(i)塩化水素の大部分、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの大部分、及び未反応のフッ化水素の少なくとも一部を含み、かかる一部は2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの1以上と共沸混合物を形成するのに十分な量である第1の粗生成物流、及び
(ii)未反応のフッ化水素の大部分及び過小フッ素化中間体を含む還流成分;
を生成させ;そして
(d)還流成分を反応混合物に戻す;
工程を更に含む。
【0012】
幾つかの好ましい態様においては、この方法は、
(e)未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む未反応の反応物質、及び/又は過小フッ素化中間体(例えば、1,1,2,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン、1,2,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン、2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン、2,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(HCFO−1231xf)、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf))を蒸留によって分離し、これらの未反応の反応物質及び過小フッ素化中間体を反応器に再循環して戻し;
(f)塩酸副生成物の少なくとも一部、好ましくは大部分を取り出し;
(g)粗生成物流中の未反応のHFを、硫酸吸着又は相分離によって分離して再循環し;及び
(h)粗生成物流を蒸留して、反応副生成物から1233xfを分離する;
工程の1以上を更に含む。
【0013】
本発明の他の形態によれば、
(a)フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを累積的に含む1以上の供給流;
(b)それぞれに、それぞれが約65℃〜約175℃の第1の温度に維持される付属のストリッピングカラム(低温冷却が供給される)と組み合わされているその前段の反応器によって材料が供給される2以上の反応器の列(系列)から構成され、液相反応器の列は1以上の供給流と流体接続されている液相反応器システム;
(c)ストリッピングカラム、ストリッピングカラムに流体接続されている還流流、及びストリッピングカラムに流体接続されている混合第1粗生成物流を含み、還流流は先頭の液相反応器に流体接続されているストリッピングシステム;
(d)第1の蒸留カラム、第1の蒸留カラムに流体接続されている塩化水素副生成物流、及び第1の蒸留カラムに流体接続されている第2の粗生成物流を含み、第1の蒸留カラムはストリッピングカラムに流体接続されている塩化水素除去システム;
(e)硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器、硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器に流体接続されているフッ化水素を含む第2の再循環流、硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器に流体接続されている2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む第3の生成物流を含み、硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器は第2の粗生成物流に流体接続されているフッ化水素回収システム;及び
(f)第3の生成物流に流体接続されている第2の蒸留カラム、第2の蒸留カラムに流体接続されている2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む最終生成物流、蒸留カラムに流体接続されている第2の副生成物流を含む2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン精製システム;
を含む1233xfを製造するための統合システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の好ましい態様による1233xfの統合液相合成の概要図を示す。
図2図2は、本発明の他の好ましい態様による1233xfの統合液相合成の概要図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい態様においては、本発明は下記に記載する2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を製造するための完全統合製造プロセスを含む。
このプロセスに関する反応化学は、液相非接触反応器内において1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを無水HFと単一工程反応させて、主として2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、及び副生成物としてHClを生成させることを含む。
【0016】
好ましくは、反応は、1233xfの収率を増加させる条件(温度、圧力、滞留時間)下に維持する。したがって、所望の反応は、
【0017】
【化1】
【0018】
を含む。
好ましくは回避される望ましくない反応は、
【0019】
【化2】
【0020】
を含む。
幾つかの態様においては、製造プロセスは5つの主要単位操作:
(1)副生成物のHCl及び生成物の1233xfを同時に取り出しながらHFを用いてフッ素化反応(連続又は半バッチモード)を行う;
(2)未反応の240db及びHFを過小フッ素化副生成物と一緒に(1)に再循環して戻す;
(3)副生成物のHClを分離及び精製する;
(4)過剰のHFを分離して(1)に戻す;及び
(5)最終生成物の1233xfを精製する;
ことを含む。
【0021】
幾つかの好ましい態様におけるこれらの操作の相対位置を図1及び2に示す。
(1)反応器及びストリッピングカラム:
好ましくは、反応器は、ハステロイ−C、インコネル、モネル、インコロイ、又はフルオロポリマーライニング鋼製容器のようなHF及びHClの腐食作用に抵抗性の材料から構成する。反応器には撹拌器を取り付ける。かかる液相フッ素化反応器は当該技術において周知である。反応器には、所望の生成物を、副生成物のHCl、微量の軽質有機化合物(主として245cb及び244bb)、及び共沸混合物を形成するのに十分な無水フッ化水素(HF)と一緒に排出し、一方でHFのバルク及び過小フッ素化有機化合物を残留させるストリッピングカラムを取り付ける。
【0022】
好ましい態様においては、1つより多いフッ素化反応器を直列に接続して処理量を増加させる。好ましい態様においては、反応は、直列で接続され、液体反応物質を含む撹拌温度制御反応器の系列内で行う。フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む1以上の供給材料を第1の反応器に導入し、ここで液相中で互いに接触させる。
【0023】
得られる反応によって、1233xf、並びにHCl、幾つかの過小フッ素化中間体、及び少量の過フッ素化副生成物などの種々の他の副生成物を含む気相生成物が生成する。気相生成物を液相反応器から排出し、所望の生成物を(副生成物のHCl、過フッ素化副生成物、及び微量の過小フッ素化中間体、並びに少なくとも共沸混合物を形成するのに十分な無水フッ化水素(AHF)と一緒に)排出し、一方でHFのバルク及び過小フッ素化有機化合物を残留させる統合ストリッピングカラム(還流モードで運転)に導入する。
【0024】
ストリッピングカラムの頂部から排出される生成物は再循環カラム(2)中に供給する。過小フッ素化反応生成物並びに未反応の240db及びHFの流れを第1のフッ素化反応器の底部から取り出し、必要量の新しいHFと一緒に、第1のフッ素化反応器と同じように運転する第2のフッ素化反応器に供給する。幾つかの態様においては、2つより多い反応器を直列に接続する。最後のフッ素化反応器の底部からの流れは再循環カラム(2)に供給する。
【0025】
HF及び240dbをフッ素化反応器に充填することができ、所望の反応温度に加熱することによって直ちに反応を開始させることができる。第1のフッ素化反応器へのHFの流れを形成することができ、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの添加を直ちに開始して連続反応を引き起こすことができる。
【0026】
或いは、大量の同じ1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンをバッチ充填として一度に加えることができ、次にHFを反応器に徐々に加えることができる(半バッチ運転)。或いは、大量のHFをバッチ充填として一度に加えることができ、次に同じ1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを反応器に徐々に加えることができる(半バッチ運転)。
【0027】
直列に接続された複数のフッ素化反応器を用いる幾つかの態様においては、HFを全ての反応器に供給してHFと有機化合物との適当な比を保持することができる。ストリッピングカラムの最適な運転を有効にするためには、冷媒の適当な温度制御及び十分な還流作用が望ましい。
【0028】
反応及びストリッピングカラムに非常に有効であることが分かった一般的な運転条件は、ストリッピングカラムからの排出流に対する制御バルブによって維持される100psig〜500psigの運転圧力;主として反応器ジャケット中への水蒸気流によって供給される65℃〜175℃の反応器温度;還流を誘発させるためのストリッピングカラムの頂部上の熱交換器への−40℃〜−25℃のブライン冷却の適用;反応器内のものよりも約5℃〜60℃低いストリッパーの中央部分における温度;HF供給材料を高圧水蒸気によって70℃〜180℃に過熱することによる更なる入熱;である。
【0029】
反応をこの運転条件下、特に65℃〜175℃、より好ましくは85℃〜155℃、最も好ましくは95℃〜150℃の温度範囲に保持することによって、1233xfが高収率で生成することが分かった。
【0030】
(2)再循環カラム:
フッ素化反応器に取り付けられたストリッピングカラムの頂部から排出される、主として1233xf、HF、及びHClを(部分フッ素化中間体及び副生成物、過フッ素化副生成物などの幾つかの少量成分と共に)含む流れは、次に再循環カラムに導入する。最後のフッ素化反応器の底部からの未反応のHF及び240db、過小フッ素化副生成物の流れも、再循環カラムに供給する。
【0031】
主として未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、部分フッ素化中間体、及びHFの大部分を含む流れが再循環カラムの底部から排出され、これを第1の液相反応器に再循環して戻す。場合によっては、これは直列の反応器の任意のものに供給することができる。主として1233xf、HF、及びHClを含む流れが再循環カラムの頂部から排出され、これをHCl回収カラムに導入する。
【0032】
(3)HClの除去:
反応中に連続的に形成されるHClは、その揮発性のために反応器から取り出され、凝縮されることなく付属の蒸留カラムを通って流れる。この物質は、次に低温HCl蒸留カラムを用いることによって精製して販売のために回収する(又は更に精製する)ことができる。高純度のHClが単離され、これは販売のために濃HClとして脱イオン水中に吸収させることができる。
【0033】
(4)過剰のHFの分離及び(1)への再循環:
1233xf及びHFの粗生成物混合物(幾つかの態様においては約30重量%の1233xf)を含むHCl除去カラム(3)からの塔底流は、この混合物からHFを取り出すための硫酸抽出器又は相分離器に供給する。HFは、硫酸中に溶解させるか又は有機混合物から相分離する。硫酸吸着システムを用いる態様に関しては、HFを次にストリッピング蒸留によって硫酸/HF混合物から脱着させ、反応器に再循環して戻す。相分離器を用いる態様に関しては、HFを相分離して、反応器に再循環して戻す。硫酸抽出器の塔頂又は相分離器の底層のいずれかからの有機混合物は、それを次の単位操作(5)に供給する前に微量のHFを取り出すための処理(スクラビング又は吸着)が必要な可能性がある。
【0034】
(5)最終生成物−1233xfの精製:
最終生成物の精製は、好ましくは2つの連続運転蒸留カラムを含む。第1のカラムは1233xfから軽質留分を取り出すために用い、第2のカラムはより重質の成分、主として過小フッ素化中間体(これはフッ素化反応器(1)に再循環するか、或いは更なる使用又は廃棄のために回収する)を取り出すために用いる。幾つかの態様においては、この流れからの重質の副生成物のパージを有することが望ましい。
【0035】
図1を参照すると、硫酸HF回収、及び反応器の後の再循環カラムを有する、直列に接続された3つの反応器(R−1、R−2、及びR−3)を用いる液相反応統合プロセスによる1233xfの合成が示されている。ここでは、まず液相反応器R−1に必要量の無水フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを充填する。好ましくは、反応器は、ハステロイ−C、インコネル、モネル、インコロイ、又はフルオロポリマーライニング鋼製容器のようなHF及びHClの腐食作用に抵抗性である材料から構成する。かかる液相フッ素化反応器は当該技術において周知である。反応器にHF及び240dbを充填した後、撹拌器を始動させて良好な撹拌を達成する。
【0036】
次に、反応混合物を、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンとHFとの間のフッ素化反応が開始する約85℃〜150℃に加熱する。1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及びHF(化学量論的に過剰)の連続供給流を、同時にヒーターHX−1、次に液相反応器R−1中に供給する。場合によっては、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは反応器R−1中に直接供給し、ヒーターHX−1は通さない。
【0037】
ストリッピングカラムRC−1からの排出流に対する制御バルブによって75psig〜500psig(好ましくは185psig〜400psig)の範囲のR−1の運転圧力を維持し、反応器の温度は、主として反応器ジャケット中への水蒸気流によって供給して65℃〜175℃(好ましくは100℃〜140℃)の範囲に維持する。ストリッピングカラムRC−1は反応器R−1に接続されていて、若干のHF、部分フッ素化中間体、及び若干の未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを排出して、更なる反応のために反応器に戻す目的を果たす。
【0038】
ストリッピングRC−1の頂部から排出される、主として1233xf、HF、及びHClを(部分フッ素化中間体及び副生成物、並びに過フッ素化副生成物などの幾つかの少量の成分と共に)含む流れは、次に再循環カラムD−1に導入する。
【0039】
第1のフッ素化反応器内での所望のレベルが達成されたら、未反応のHF、未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、及び過小フッ素化中間体の流れを第2のフッ素化反応器R−2に供給する。また、新しいHFの供給材料もR−2に供給して、有機化合物に対するHFの適当な比を維持する。反応器R−2には、RC−1と同じように運転されるストリッピングカラムRC−2を取り付ける。反応器R−2は、115℃〜150℃の温度、及び約170psig〜425psigの圧力に維持する。
【0040】
ストリッピングRC−2の頂部から排出される、主としてHCFO−1233xf、HF、及びHClを(部分フッ素化中間体及び副生成物、並びに過フッ素化副生成物などの幾つかの少量成分と共に)含む流れは、次に再循環カラムD−1に導入する。
【0041】
第2のフッ素化反応器内での所望のレベルが達成されたら、未反応のHF、未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、及び過小フッ素化中間体の流れを、第3のフッ素化反応器R−3に供給する。また、新しいHFの供給材料もR−3に供給して、有機化合物に対するHFの適当な比を維持する。反応器R−3には、RC−1及びRC−2と同じように運転されるストリッピングカラムRC−3を取り付ける。反応器R−3は、125℃〜160℃の温度範囲、及び約160psig〜450psigの圧力範囲に維持する。
【0042】
ストリッピングR−3の頂部から排出される、主として1233xf、HF、及びHClを(部分フッ素化中間体及び副生成物、並びに過フッ素化副生成物などの幾つかの少量成分と共に)を含む流れは、次に再循環カラムD−1に導入する。
【0043】
第3のフッ素化反応器内での所望のレベルが達成されたら、未反応のHF、未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、及び過小フッ素化中間体の流れを、再循環カラムD−1に供給する。場合によっては、少量の重質分パージ連続又は断続側流を形成することによって、重質副生成物をこの流れから取り出す。
【0044】
再循環カラムD−1は、主として未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、部分フッ素化中間体、及びHFの大部分を含む流れを再循環カラムの底部から排出し、これを気化器HX−1を介して液相反応器R−1に再循環して戻すように運転する。主として1233xf、HF、及びHClを含む流れが再循環カラムの頂部から排出され、これをHClカラムD−2に導入する。主としてHCl副生成物を含む流れがHClカラムの頂部から排出され、これをHCl回収システムに供給する。回収されるHCl副生成物は、利益目的で販売することができる。
【0045】
主として1233xf及びHFから構成されるHClカラム塔底流は、次にHF回収システム中に供給する。HF回収システムは、粗1233xf/HF流を熱交換器HX−2内で気化して、HF吸収カラムA−1中に供給して開始される。ここでは、50%〜80%のHSOの液体流を気体状の1233xf/HF流と接触させて、HFの大部分を吸収させる。A−1の底部から排出される流れはHF/HSO/HOを含み、これは熱交換器HX−3に供給し、ここでHFの大部分を少量のHO及びHSOと一緒にフラッシングするのに十分な温度に加熱する。この流れをHF回収蒸留カラムD−2に供給する。HX−3内でHFをフラッシングした後に残留する、主としてHSO及びHO(並びに0%〜2%のHF)から構成される液体は、HX−4内で冷却して、HF吸収カラムA−1に再循環して戻す。
【0046】
主としてHSO及びHOを含むHF回収カラムD−3の塔底流は、熱交換器HX−3に再循環して戻す。HF回収カラムD−3の頂部から無水HFを回収し、気化器HX−1を介して反応器R−1に再循環して戻す。HF吸収カラムA−1の頂部から排出される、主として1233xf(微量のHF)を含む流れは、最終精製システムA−2に送って、そこで気体流を水又は苛性溶液と接触させて微量のHFを取り出し、次にデシカントを用いて乾燥する。
【0047】
吸収器A−2から排出される酸を含まない粗生成物は、2つの精製カラムの1番目:D−4に送る。カラムD−4の頂部から排出される流れは、主として、1233xfのものよりも低い沸点を有する反応副生成物から構成される。軽質分カラムD−4の底部から排出される、主として1233xf及びより重質の副生成物から構成される流れは、生成物回収蒸留カラムD−5に供給する。このカラムの頂部から、製品グレードの1233xfを生成物貯留槽に排出する。生成物カラムの塔底物は、主として1233xfのものよりも高い沸点を有する反応副生成物から構成され、これは、気化器HX−1、次にフッ素化反応器R−1に供給する。
【0048】
図2を参照すると、直列に接続されている3つの反応器(R−1、R−2、及びR−3)、相分離HF回収システム、並びに反応器の後の再循環カラムを用いる液相反応統合プロセスによる1233xfの合成が示されている。ここでは、まず液相反応器R−1に必要量の無水フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを充填する。好ましくは、反応器は、ハステロイ−C、インコネル、モネル、インコロイ、又はフルオロポリマーライニング鋼製容器のようなHF及びHClの腐食作用に抵抗性である材料から構成する。かかる液相フッ素化反応器は当該技術において周知である。反応器にHF及び240dbを充填した後、撹拌器を始動させて良好な撹拌を達成する。
【0049】
次に、反応混合物を、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンとHFとの間のフッ素化反応が開始する約85℃〜150℃に加熱する。1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及びHF(化学量論的に過剰)の連続供給流を、同時にヒーターHX−1、次に液相反応器R−1中に供給する。
【0050】
場合によっては、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは反応器R−1中に直接供給し、ヒーターHX−1は通さない。ストリッピングカラムRC−1からの排出流に対する制御バルブによって75psig〜500psig(好ましくは185psig〜400psig)の範囲のR−1の運転圧力を維持し、反応器の温度は、主として反応器ジャケット中への水蒸気流によって供給して65℃〜175℃(好ましくは100℃〜140℃)に維持する。ストリッピングカラムRC−1は反応器R−1に接続されていて、若干のHF、部分フッ素化中間体、及び若干の未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを排出して、更なる反応のために反応器に戻す目的を果たす。
【0051】
ストリッピングRC−1の頂部から排出される、主として1233xf、HF、及びHClを(部分フッ素化中間体及び副生成物、並びに過フッ素化副生成物などの幾つかの少量の成分と共に)含む流れは、次に再循環カラムD−1に導入する。
【0052】
第1のフッ素化反応器内での所望のレベルが達成されたら、未反応のHF、未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、及び過小フッ素化中間体の流れを第2のフッ素化反応器R−2に供給する。また、新しいHFの供給材料もR−2に供給して、有機化合物に対するHFの適当な比を維持する。反応器R−2には、RC−1と同じように運転されるストリッピングカラムRC−2を取り付ける。反応器R−2は、115℃〜150℃の温度範囲、及び約170psig〜425psigの圧力範囲に維持する。
【0053】
ストリッピングRC−2の頂部から排出される、主として1233xf、HF、及びHClを(部分フッ素化中間体及び副生成物、並びに過フッ素化副生成物などの幾つかの少量成分と共に)含む流れは、次に再循環カラムD−1に導入する。
【0054】
第2のフッ素化反応器内での所望のレベルが達成されたら、未反応のHF、未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、及び過小フッ素化中間体の流れを、第3のフッ素化反応器R−3に供給する。また、新しいHFの供給材料もR−3に供給して、有機化合物に対するHFの適当な比を維持する。反応器R−3には、RC−1及びRC−2と同じように運転されるストリッピングカラムRC−3を取り付ける。反応器R−3は、125℃〜160℃の温度範囲、及び約160psig〜450psigの圧力範囲に維持する。
【0055】
ストリッピングR−3の頂部から排出される、主として1233xf、HF、及びHClを(部分フッ素化中間体及び副生成物、並びに過フッ素化副生成物などの幾つかの少量成分と共に)を含む流れは、次に再循環カラムD−1に導入する。
【0056】
第3のフッ素化反応器内での所望のレベルが達成されたら、未反応のHF、未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、及び過小フッ素化中間体の流れを、再循環カラムD−1に供給する。場合によっては、少量の重質分パージ連続又は断続側流を形成することによって、重質副生成物をこの流れから取り出す。
【0057】
再循環カラムD−1は、主として未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、部分フッ素化中間体、及びHFの大部分を含む流れを再循環カラムの底部から排出し、これを気化器HX−1を介して液相反応器R−1に再循環して戻すように運転する。主として1233xf、HF、及びHClを含む流れが再循環カラムの頂部から排出され、これをHClカラムD−2に導入する。主としてHCl副生成物を含む流れがHClカラムの頂部から排出され、これをHCl回収システムに供給する。回収されるHCl副生成物は、利益目的で販売することができる。主として1233xf及びHFから構成されるHClカラム塔底流は、次にHF回収システム中に供給する。
【0058】
HF回収システムは、1233xf/HF流を熱交換器HX−2中に供給して、ここで0℃より低い温度に予備冷却し、次に相分離容器PS−1に導入して開始される。ここでは、流れの温度を維持するか、又は−40℃〜0℃に更に冷却する。HFに富む最上層(10%未満の1233xf)は液相反応器R−1に再循環して戻す。主として1233xf(4%未満のHF)を含む有機化合物に富む底層は、気化器HX−3に送り、次に最終精製システムA−1に送って、ここで気体流を水又は苛性溶液と接触させて微量のHFを取り出し、次にデシカントを用いて乾燥する。吸収器A−1から排出される酸を含まない粗生成物は、2つの精製カラムの1番目:D−3に送る。
【0059】
カラムD−3の頂部から排出される流れは、主として、1233xfのものよりも低い沸点を有する反応副生成物から構成される。軽質分カラムD−3の底部から排出される、主として1233xf及びより重質の副生成物から構成される流れは、生成物回収蒸留カラムD−4に供給する。このカラムの頂部から、製品グレードの1233xfを生成物貯留槽に排出する。生成物カラムの塔底物は、主として1233xfのものよりも高い沸点を有する反応副生成物から構成され、これは次に気化器HX−1、及び次にフッ素化反応器R−1に供給する。
【0060】
場合によっては、生成物回収蒸留カラムR−4の底部から排出される流れは、第1の液相反応器R−1に再循環して戻すことができる。これらのオプションのいずれにおいても、生成物回収蒸留カラムD−4の底部からの重質分パージ流は、精製システム内に高沸点の不純物が蓄積するのを阻止するために必要である。重質分パージ流は、その後の使用又は廃棄物処理のために回収する。
【実施例】
【0061】
実施例1:
1233xfを製造するための液相プロセスの開発の一部として、触媒を用いないで実験を行った。この実験は、1ガロンのParr反応器内においてバッチモードで運転した。この実験に関しては、282.9gのHF、及び246.2gの240db(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)(12.4:1のHF:240dbのモル比)を、室温において反応器に充填した。次に、混合機を始動させて反応器の内容物がよく混合されることを確保した。次に、反応器を所望の温度に加熱した。加熱によって、HCl副生成物がフッ素化反応の結果として生成するにつれて圧力が上昇し始めた。
【0062】
反応器を数時間かけて約110℃に加熱した後に、温度を一定に維持した。反応中に生成するHClをドライアイスで冷却したドライアイストラップ(DIT)に排気することによって、圧力を250psig〜325psigの範囲に制御した。約9.5時間後の反応の完了時(HCl生成の欠如によって決定した)において、反応器からの圧力をDIT中に排気した。DITからの粗生成物を、約400gの水と共に1Lのモネル吸収シリンダー(ドライアイス中で冷凍)中に移した。吸収シリンダーを室温に加温し、シリンダー内で形成された有機層の試料(排出時に水性層及び有機層がシリンダー内に存在していた)を採取し、GCによって分析した。
【0063】
GCの結果は、0.42GC%の245cb、97.23GC%の1233xf、1.39GC%の244bb、残余量の過小フッ素化中間体(241db及び242db)を示した。その後に、回収された有機化合物の量を異なる相の更なる分析によって定量したところ、75.0gの量であった。
【0064】
反応器を約300g〜400gの水でクエンチしてHF及びHClを吸収し、次に約100gの四塩化炭素を加えることによって、排気後の反応器内に残留する有機化合物を回収した。次に、反応器を開放し、その内容物をプラスチックボトル中に排出した。分液漏斗を用いることによって、有機化合物を水性相から分離した。反応器に加えたCClの重量を回収された有機相の全重量から減じることによって反応器から回収された重質分の量を計算したところ、96.9gの量であった。
【0065】
有機層のGC/MS及びGC分析を行ったところ、過小フッ素化種の241db(91.057GC%)、242dc(0.760GC%)、及び出発物質の240db(8.183GC%)に起因する3つの異なるピークが示された。240dbの全転化率は97%であると計算された。
【0066】
実施例2:
同じ装置及び手順を用いて、実施例1に記載した実験を繰り返した。反応器を110℃に加熱して維持した。しかしながら、この実験は完了まで進行させなかった。約6.5時間後に反応器圧力は320psigに達し、実験を停止した。始めに、382.7gのHF及び244.1gの240dbを反応器に充填した。下表Iに示すように、結果は実施例1のものと同様であったが、240dbの転化率はより低かった。
【0067】
【表1】
【0068】
比較例1:
本比較例は、240dbが、昇温温度でフッ化水素の存在下において、テトラクロロプロペンのようなその不飽和誘導体よりも安定であることを示す。
【0069】
1233xfを製造するための液相プロセスの開発の一部として、出発物質として1,1,2,3−テトラクロロプロペンを用いて実験を行った。この実験では、実施例1及び2において記載したものと同じ1ガロンのParr反応器を用い、バッチで運転した。まず、空の反応器に327gの1,1,2,3−テトラクロロプロペンを充填した。次に、557.5gのHFを室温において反応器中に充填した。次に、混合機を始動させて反応器の内容物がよく混合されることを確保した。次に、反応器を149℃に加熱した。
【0070】
加熱によって、HCl副生成物がフッ素化反応の結果として生成するにつれて圧力が上昇し始めた。反応中に生成するHClをドライアイスで冷却したDITに排気することによって、圧力を490psig〜497psigの範囲に制御した。反応器を149℃において約4時間保持した。DIT内に回収された揮発性の反応生成物、及び反応器残渣を、実施例1に記載したものと同じようにして精製及び分析した。反応生成物を分析したところ、1233xfへの選択率は約20%であったことが示された。1,1,2,3−テトラクロロプロペン出発物質の残りの80%は未知のタール状の化合物に転化した。実施例1において同様の条件で反応を行った場合にはタール状の副生成物は観察されなかったので、この比較例は飽和クロロアルカンのHCC−240dbを用いて出発することの利益を示す。
【0071】
比較例2:
本比較例は、240dbの1233xfへのフッ素化反応のためにフッ素化触媒を用いると、大量のオリゴマー、二量体、及びタールが形成されることを示す。
【0072】
1233xfを製造するための液相プロセスの開発の一部として、液相フッ素化触媒を用いて実験を行った。この実験では、1Lの撹拌オートクレーブを用い、バッチモードで運転し、これを実験#4と呼んだ。まず、空の反応器に84.3gのSbCl液体フッ素化触媒を充填した。次に、402.6gのHFを室温において反応器中に充填すると、直ちに触媒がフッ素化され始めるにつれてHClの生成のために反応器内の圧力が上昇した。
【0073】
HFと触媒との反応から生じる圧力(HCl)を排気した後、152.3gのHCC−240dbを反応器に充填した。次に、混合機を始動させて反応器の内容物がよく混合されることを確保した。次に、反応器を90℃に加熱した。加熱によって、HCl副生成物がフッ素化反応の結果として生成するにつれて圧力が上昇し始めた。反応中に生成するHClをドライアイスで冷却したトラップに排気することによって、圧力を325psig〜330psigの範囲に制御した。反応器を90℃において約1時間保持した。
【0074】
DIT内に回収された揮発性の反応生成物、及び反応器残渣を、実施例1に記載したものと同じようにして精製及び分析した。揮発性の反応生成物は実施例1及び2において記載した触媒を用いない実験運転からのものと同じであったが、排気後に反応器内に残留する有機化合物は異なっていた。今回は、有機層(溶解有機化合物を有するCCl)は暗褐色/黒色であり、非接触実験において回収された有機層よりも遙かに粘稠であり、GC分析によって複数のオリゴマー副生成物及びタールの存在が示された。HCC−240db、又は過小フッ素化種のHCFC−241db及びHCFC−242dbは存在していなかった。
【0075】
実験条件及び反応生成物のGC分析の結果を下表IIに示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例3:
付属のストリッピングカラムを有する直列の3つの連続撹拌反応器を用いて粗1233xf生成物を製造した。第1の反応器についての底部排液(これは第2の反応器に供給した)、及び第2の反応器についての排液(これは第3の反応器に供給した)が存在していた。3つのストリッピングカラムのそれぞれから排出される塔頂流を接続して、生成した全ての粗1233xf及びHClを混合して、個々の成分への分離に送った。
【0078】
先頭(第1)の反応器へは、15:1のモル比のHF:240dbを連続的に供給した。反応器温度は約140℃に保持した。反応圧力は約400psigに制御した。HF、HCl、及び粗1233xfを、付属のストリッピングカラムの頂部から連続的に排出した。反応器内のほぼ一定のレベルを維持する速度で、反応器を第2の反応器へ連続的に排液した。先頭の反応器は、70%の240dbの転化率、及び50%の粗1233xfの収率を達成した。第2の反応器へ排液された物質の有機組成は、約40%の240db、55%の241db、及び5%の242dbであった。この流れの中にはHFも存在していた。第2の反応器に新しいHFを加えて、精留カラム塔頂流の損失を補填した。
【0079】
第2の反応器は375psigで運転し、135℃に保持した。HF、HCl、及び粗1233xfを、付属のストリッピングカラムの頂部から連続的に排出した。反応器内のほぼ一定のレベルを維持する速度で、反応器を第3の反応器に連続的に排液した。第2の反応器は、90%の240dbの転化率、及び70%の粗1233xfの収率を達成した。第2の反応器へ排液された物質の有機組成は、約33%の240db、62%の241db、及び5%の242dbであった。この流れの中にはHFも存在していた。第3の反応器に新しいHFを加えて、精留カラム塔頂流の損失を補填した。
【0080】
第3の反応器は350psigで運転し、130℃に保持した。HF、HCl、及び粗1233xfを、付属のストリッピングカラムの頂部から連続的に排出した。反応器内のほぼ一定のレベルを維持する速度で、反応器を再循環カラムに連続的に排液した。第3の反応器は、100%の240dbの転化率、及び95%の粗1233xfの収率を達成した。再循環カラムへ排液された物質の有機組成は、約95%の241db、及び5%の242dbであった。この流れの中にはHFも存在していた。
【0081】
実施例4:
本実施例は、過剰のHF、未反応の240db、及び過小フッ素化中間体を反応器へ再循環して戻すために回収する再循環カラムの運転を示す。
【0082】
1233xfを製造するフッ素化反応器からの反応器流出流を、再循環蒸留カラムに直接、連続的に供給した。この流れは、HF、HCl、及び1233xf粗生成物を含んでいた。粗生成物は、幾つかの過フッ素化中間体、過小フッ素化中間体、及び未反応の有機供給材料を含んでいた。蒸留カラムは、10ガロンのリボイラー、プロパック蒸留充填材を充填したID=2インチ×10フィートのカラム、及びシェルアンドチューブ凝縮器から構成した。カラムは約30の理論段を有していた。蒸留カラムに、リボイラーレベル指示器、温度、圧力、及び差圧の送信機を取り付けた。
【0083】
蒸留カラムは、約60psigの圧力、及び約15インチ−HOの差圧で連続的に運転した。カラムの頂部からの塔頂から排出された流れは、HCl、過フッ素化中間体、1233xf、及び若干のHFから構成されていた。流れの有機部分のGC分析によって、1233xfの純度は99%GC面積%よりも大きかったことが示された。
【0084】
リボイラーの底部から排出された流れは、HF、過小フッ素化中間体、及び未反応の有機供給材料から構成されており、これはフッ素化反応器に再循環して戻した。
実施例5:
本実施例は、本発明の幾つかの好ましい態様によるHF及び1233xfの混合物からの無水HFの回収を示す。
【0085】
約75重量%の1233xf、及び約25重量%のHFから構成される混合物を気化させ、充填カラムの底部に、約2.9ポンド/時の供給速度で約4時間供給した。その中に約2%のHFを溶解した約80重量%の硫酸(80/20のHSO/HO)の流れを、同じ充填カラムの頂部に、同じ時間中に約5.6ポンド/時の供給速度で連続的に供給した。カラムの頂部から排出される気体流は、その中に1.0重量%未満のHFを有する1233xfを含んでいた。カラム塔底物中の硫酸中のHFの濃度は、2.0重量%から約15重量%に増加した。
【0086】
硫酸及び約15重量%のHFを含むカラム塔底物を回収し、2ガロンのテフロン容器中に充填した。混合物を約140℃に加熱して気化させて、HF生成物をフラッシングしてこれを回収した。回収したHF生成物は、約6000ppmの水及び500ppmのイオウを含んでいた。
【0087】
フラッシュ蒸留から回収されたHFを蒸留カラム内で蒸留して、無水HFを回収した。回収された無水HFは、50ppm未満のイオウ不純物及び100ppm未満の水を含んでいた。
【0088】
実施例6:
本実施例は、不均一混合物を形成する1233xf及びHFの混合物の相分離を示す。
60.77gの粗1233xf及び34.91gのHFをテフロンセル内で一緒に混合すると、2つの液相が視認観察された。この混合物を、約24℃の雰囲気温度に達するまで静置した。上相及び下相をサンプリングし、イオンクロマトグラフィーによって分析してHF濃度を求めた。下側の有機化合物に富む層は2.2重量%のHFを有しており、上側のHFに富む層は62.96重量%のHFを有していた。
【0089】
実施例7:
本実施例は、酸を含まない1233xf粗生成物の精製を示す。
HCl及びHFの除去の後に回収された120ポンドの1233xf粗生成物をバッチ蒸留カラムに充填した。粗物質は、約96GC面積%の1233xf及び4GC面積%の不純物を含んでいた。蒸留カラムは、10ガロンのリボイラー、プロパック蒸留充填材を充填したID=2インチ×10フィートのカラム、及びシェルアンドチューブ凝縮器から構成した。カラムは約30の理論段を有していた。蒸留カラムに、リボイラーレベル指示器;温度、圧力、及び差圧の送信機;を取り付けた。バッチ蒸留は、約90psigの圧力、及び約17インチ−HOの差圧で運転した。約7ポンドの軽質留分が回収され、これは、主として245cb、トリフルオロプロピン、244bb、及び1233xfから構成されていた。110ポンドの99.9+GC面積%の1233xfが回収された。約3ポンドの量のリボイラー残渣は、主として244bb、1233xf、1232xf、及びC化合物(二量体)であった。99.8+GC面積%の純度の1233zd(E)の回収率は94.8%であった。
【0090】
本明細書において用いる単数形の「a」、「an」、及び「the」は、記載によって他に明確に示されていない限りにおいて、複数のものを包含する。更に、量、濃度、又は他の値若しくはパラメーターを、範囲、好ましい範囲、又はより高い好ましい値とより低い好ましい値のリストのいずれかとして与える場合には、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、任意のより高い範囲限界又は好ましい値、及び任意のより低い範囲限界又は好ましい値の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示すると理解すべきである。本明細書において数値の範囲が示されている場合には、他に示されていない限りにおいて、この範囲はその端点及びこの範囲内の全ての整数及び小数を含むと意図される。本発明の範囲を、範囲を規定する際に示される具体的な値に限定することは意図しない。
【0091】
上記の記載は本発明の単なる例示であることを理解すべきである。種々の代替及び修正は、本発明から逸脱することなく当業者によって想到することができる。したがって、本発明は、特許請求の範囲内の全てのかかる代替、修正、及び変更を包含すると意図される。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
触媒を用いないで1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと無水HFを連続低温液相反応させることを含み、
反応を、それぞれが先頭の反応容器に供給される最初の反応物質の一部を次々に転化させる1以上の反応容器内で行い、反応を連続的に行う1233xfの製造方法。
[2]
反応が、
(a)フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含み、フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが約3:1より大きいモル比で存在する液体反応混合物を与え;そして
(b)フッ化水素と1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを、液相中、約65℃〜約175℃の反応温度において、直列の1以上の反応器を用いて反応させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、塩化水素、未反応のフッ化水素、及び場合によっては未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む反応生成物流を生成させる;
工程を含む、[1]に記載の方法。
[3]
液相反応の低温が85℃〜155℃の温度範囲である、[2]に記載の方法。
[4]
液相反応の低温が95℃〜150℃の温度範囲である、[2]に記載の方法。
[5]
(c)反応生成物流を合わせて熱交換器と接触させて、
(i)塩化水素の大部分、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの大部分、及び未反応のフッ化水素の少なくとも一部を含み、かかる一部は少なくとも2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの1以上と共沸混合物を形成するのに十分な量である第1の粗生成物流、及び、
(ii)未反応のフッ化水素の大部分及び過小フッ素化中間体を含む還流成分;
を生成させ;そして
(d)還流成分を反応混合物に戻す;
工程を更に含む、[2]に記載の方法。
[6]
(e)未反応の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む未反応の反応物質及び/又は過小フッ素化中間体を蒸留によって分離し、これらの未反応の反応物質及び過小フッ素化中間体を反応器に再循環して戻し;
(f)塩酸副生成物の少なくとも一部、好ましくは大部分を取り出し;
(g)粗生成物流中の未反応のHFを、硫酸吸着又は相分離によって分離して再循環し;及び
(h)粗生成物流を蒸留して、反応副生成物から1233xfを分離する;
工程の1以上を更に含む、[5]に記載の方法。
[7]
(a)フッ化水素及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを累積的に含む1以上の供給流;
(b)それぞれに、それぞれが約65℃〜約175℃の第1の温度に維持される低温冷却が供給される付属のストリッピングカラムと組み合わされているその前段の反応器によって材料が供給される直列の2以上の反応器から構成され、液相反応器の列は1以上の供給流と流体接続されている液相反応器システム;
(c)ストリッピングカラム、ストリッピングカラムに流体接続されている還流流、及びストリッピングカラムに流体接続されている混合第1粗生成物流を含み、還流流は先頭の液相反応器に流体接続されているストリッピングシステム;
(d)第1の蒸留カラム、第1の蒸留カラムに流体接続されている塩化水素副生成物流、及び第1の蒸留カラムに流体接続されている第2の粗生成物流を含み、第1の蒸留カラムはストリッピングカラムに流体接続されている塩化水素除去システム;
(e)硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器、硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器に流体接続されているフッ化水素を含む第2の再循環流、硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器に流体接続されている2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む第3の生成物流を含み、硫酸吸収及び再循環システム又は相分離容器は第2の粗生成物流に流体接続されているフッ化水素回収システム;及び
(f)第3の生成物流に流体接続されている第2の蒸留カラム、第2の蒸留カラムに流体接続されている2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む最終生成物流、蒸留カラムに流体接続されている第2の副生成物流を含む2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン精製システム;
を含む1233xfを製造するための統合システム。
[8]
反応温度範囲が85℃〜155℃である、[7]に記載のシステム。
[9]
反応温度範囲が95℃〜150℃である、[7]に記載のシステム。
図1
図2