(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909245
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】車両のブレーキシステムのための制御装置、ブレーキシステム、および車両のブレーキシステムを作動させる方法
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20160412BHJP
B60T 13/68 20060101ALI20160412BHJP
B60T 8/00 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T13/68
B60T8/00 Z
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-549735(P2013-549735)
(86)(22)【出願日】2011年11月29日
(65)【公表番号】特表2014-502937(P2014-502937A)
(43)【公表日】2014年2月6日
(86)【国際出願番号】EP2011071250
(87)【国際公開番号】WO2012100864
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2013年7月19日
(31)【優先権主張番号】102011003144.8
(32)【優先日】2011年1月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・シュトレンゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・ドゥロットレフ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・コティチュケ
【審査官】
谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−152028(JP,A)
【文献】
特開2005−254898(JP,A)
【文献】
特表2011−521842(JP,A)
【文献】
特表2005−505470(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/149977(WO,A1)
【文献】
特開2009−166693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/18
B60T 8/00
B60T 13/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタブレーキシリンダ(62)と、ブレーキ液が充填される備蓄容積部(92)と、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ(54a)を備える第1のブレーキ回路(50)と、少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダ(54b)及び容積送出装置(90)を備える第2のブレーキ回路(52)と、を有し、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにおいて、前記第2のブレーキ回路(52)の圧力(p2)が前記マスタブレーキシリンダ(62)により制御され、前記マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)の前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)に、前記容積送出装置(90)によって目標追加容積に対応するブレーキ液の実際追加容積が前記備蓄容積部(92)から注入される車両のブレーキシステムのための、制御装置(10)であり、
前記容積送出装置(90)の送出側は、前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)及び前記備蓄容積部(92)に切り替え可能に連通し、前記容積送出装置(90)は、前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)から前記備蓄容積部(92)にブレーキ液を送り出し可能であり、
前記制御装置(10)は、評価装置(24)と制御器(34)とを有しており、
前記評価装置(24)は、前記第1のブレーキ回路(50)および/または少なくとも1つの前記第1のホイールブレーキシリンダ(54a)で設定されるべき目標ブレーキ圧に関する少なくとも1つの目標量(s)の信号(26)を受信し、
前記評価装置(24)は、前記第1のブレーキ回路(50)および/または少なくとも1つの前記第1のホイールブレーキシリンダ(54a)に生じている実際ブレーキ圧(p1)に関する、および/または少なくとも1つの前記第1のホイールブレーキシリンダ(54a)により少なくとも1つのホイール(56)に及ぼされる実際ブレーキトルクに関する少なくとも1つの実際量(p1)の信号(28)を受信し、
前記評価装置(24)は、前記マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)のブレーキ液の目標追加容積に関する設定量を、少なくとも1つの前記実際量(p1)と少なくとも1つの前記目標量(s)との第1の誤差量を考慮したうえで決定し、
前記制御器(34)は、前記評価装置(24)で決定された設定量に対応する制御信号(36)を少なくとも1つの前記容積送出装置(90)に出力する、
制御装置。
【請求項2】
前記評価装置(24)は、前記第2のブレーキ回路(52)内の空気の存在によって変化する量である弾性量の信号(30)を受信し、
前記ブレーキ液の目標追加容積に関する設定量が、前記第1の誤差量、および前記弾性量と所定の目標弾性量との第2の誤差量が考慮されたうえで決定される、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
マスタブレーキシリンダ(62)と、ブレーキ液が充填される備蓄容積部(92)と、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ(54a)を備える第1のブレーキ回路(50)と、少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダ(54b)及び容積送出装置(90)を備える第2のブレーキ回路(52)と、を有し、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにおいて、前記第2のブレーキ回路(52)の圧力(p2)が前記マスタブレーキシリンダ(62)により制御され、前記マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)の前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)に、前記容積送出装置(90)によって目標追加容積に対応するブレーキ液の実際追加容積が前記備蓄容積部(92)から注入される車両のブレーキシステムのための、制御装置(10)であり、
前記容積送出装置(90)の送出側は、前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)及び前記備蓄容積部(92)に切り替え可能に連通し、前記容積送出装置(90)は、前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)から前記備蓄容積部(92)にブレーキ液を送り出し可能であり、
前記制御装置(10)は、評価装置(24)と制御器(34)とを有しており、
前記評価装置(24)は、前記第2のブレーキ回路(52)内の空気の存在によって変化する量である弾性量の信号(30)を受信し、
前記評価装置(24)は、前記マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)のブレーキ液の目標追加容積に関する設定量を、前記弾性量と所定の目標弾性量との第2の誤差量を考慮したうえで決定し、
前記制御器(34)は、前記評価装置(24)で決定された設定量に対応する制御信号(36)を少なくとも1つの前記容積送出装置(90)に出力する、
制御装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記目標量(s)として、ブレーキ操作部材(64)のブレーキストロークセンサ(66)および/またはブレーキ圧センサの少なくとも1つのセンサ信号(18)が考慮される、
請求項1または2に記載の制御装置(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記実際量(p1)として、前記第1のブレーキ回路(50)および/または少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ(54a)のブレーキ圧センサ(98)、ホイール回転速度センサ、および/または車両速度センサの少なくとも1つの出力信号(20)が考慮される、
請求項1、2、4のいずれか1項に記載の制御装置(10)。
【請求項6】
前記第2のブレーキ回路(52)内の空気の存在によって変化する量である弾性量として、前記第2のブレーキ回路(52)および/または前記第2のブレーキ回路(52)と接続されたマスタブレーキシリンダ室(104)の少なくとも1つの容積差と、前記第2のブレーキ回路(52)における圧力差との比率に関する量が考慮される、
請求項2または3に記載の制御装置(10)。
【請求項7】
車両のためのブレーキシステムであり、
前記マスタブレーキシリンダ(62)と、
前記備蓄容積部(92)と、
前記第1のブレーキ回路(50)および前記第2のブレーキ回路(52)と、
請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置(10)と、を有している、
ブレーキシステム。
【請求項8】
前記第2のブレーキ回路(52)は、前記マスタブレーキシリンダ(62)と並列に延びるリザーバ配管(89)を介して前記備蓄容積部(92)と接続されており、
前記ブレーキ液の実際追加容積は、少なくとも1つの前記容積送出装置(90)により前記備蓄容積部(92)から前記リザーバ配管(89)を介して前記マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)へ注入される、
請求項7に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記備蓄容積部(92)は、密閉装置を備える入替穴を介して前記マスタブレーキシリンダ(62)と接続されており、
前記ブレーキ液の実際追加容積は、少なくとも1つの前記容積送出装置(90)により前記備蓄容積部(92)から少なくとも部分開放状態になるように制御された前記密閉装置を介して前記マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)へ注入される、
請求項7に記載のブレーキシステム。
【請求項10】
前記マスタブレーキシリンダ(62)は、前記第1のブレーキ回路(50)に付属する第1の圧力室(102)と前記第2のブレーキ回路(52)に付属する第2の圧力室(104)とを含んでおり、
前記第1の圧力室(102)の第1の最大容積は、前記第2の圧力室(104)の第2の最大容積よりも大きい、
請求項7から9のいずれか1項に記載のブレーキシステム。
【請求項11】
マスタブレーキシリンダ(62)と、ブレーキ液が充填される備蓄容積部(92)と、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ(54a)を備える第1のブレーキ回路(50)と、少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダ(54b)及び容積送出装置(90)を備える第2のブレーキ回路(52)と、評価装置(24)と制御器(34)とを有する制御装置(10)と、を有し、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにおいて、前記第2のブレーキ回路(52)の圧力(p2)が前記マスタブレーキシリンダ(62)により制御され、前記マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)の前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)に、前記容積送出装置(90)によって目標追加容積に対応するブレーキ液の実際追加容積が前記備蓄容積部(92)から注入される車両のブレーキシステムを作動させる、方法であり、
前記容積送出装置(90)の送出側は、前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)及び前記備蓄容積部(92)に切り替え可能に連通し、前記容積送出装置(90)は、前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)から前記備蓄容積部(92)にブレーキ液を送り出し可能であり、
前記評価装置(24)が、前記第1のブレーキ回路(50)および/または少なくとも1つの前記第1のホイールブレーキシリンダ(54a)で設定されるべき目標ブレーキ圧に関する少なくとも1つの目標量(s)の信号(26)を受信し、前記第1のブレーキ回路(50)および/または少なくとも1つの前記第1のホイールブレーキシリンダ(54a)に生じている実際ブレーキ圧(p1)に関する、および/または少なくとも1つの前記第1のホイールブレーキシリンダ(54a)により少なくとも1つのホイール(56)に及ぼされる実際ブレーキトルクに関する、少なくとも1つの実際量(p1)の信号(28)を受信するステップと、
前記評価装置(24)が、少なくとも1つの前記実際量(p1)と少なくとも1つの前記目標量(s)との第1の誤差量を考慮したうえで、前記マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)のブレーキ液の目標追加容積に関する設定量を決定するステップと、
前記制御器(34)が、前記決定された設定量に対応する制御信号(36)を、少なくとも1つの前記容積送出装置(90)に出力するステップと、を有している、
方法。
【請求項12】
前記評価装置(24)が、前記第2のブレーキ回路(52)内の空気の存在によって変化する量である弾性量の信号(30)を受信するステップを有し、
前記ブレーキ液の目標追加容積に関する設定量は、前記第1の誤差量、および前記弾性量と設定された目標弾性量との第2の誤差量が考慮されたうえで決定される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
マスタブレーキシリンダ(62)と、ブレーキ液が充填される備蓄容積部(92)と、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ(54a)を備える第1のブレーキ回路(50)と、少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダ(54b)及び容積送出装置(90)を備える第2のブレーキ回路(52)と、評価装置(24)と制御器(34)とを有する制御装置(10)と、を有し、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにおいて、前記第2のブレーキ回路(52)の圧力(p2)が前記マスタブレーキシリンダ(62)により制御され、前記マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)の前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)に、前記容積送出装置(90)によって目標追加容積に対応するブレーキ液の実際追加容積が前記備蓄容積部(92)から注入される車両のブレーキシステムを作動させる、方法であり、
前記容積送出装置(90)の送出側は、前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)及び前記備蓄容積部(92)に切り替え可能に連通し、前記容積送出装置(90)は、前記第2のホイールブレーキシリンダ(54b)から前記備蓄容積部(92)にブレーキ液を送り出し可能であり、
前記評価装置(24)が、前記第2のブレーキ回路(52)内の空気の存在によって変化する量である弾性量の信号(30)を受信するステップと、
前記評価装置(24)が、前記弾性量と設定された目標弾性量との第2の誤差量を考慮したうえで、前記マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)のブレーキ液の目標追加容積に関する設定量を決定するステップと、
前記制御器(34)が、前記決定された設定量に対応する制御信号(36)を、少なくとも1つの前記容積送出装置(90)に出力するステップと、を有している、
方法。
【請求項14】
車両の運転者によるブレーキ操作部材(64)の操作の少なくとも1つのブレーキストローク(s)および/またはブレーキ圧が、少なくとも1つの前記目標量(s)として考慮される、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のブレーキ回路(50)および/または少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ(54a)における少なくとも1つの圧力(p1)、ホイール(56)の回転速度の時間的変化、および/または車両減速が、少なくとも1つの前記実際量(p1)として考慮される、
請求項11、12、14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のブレーキ回路(52)および/または前記第2のブレーキ回路(52)と接続された前記マスタブレーキシリンダ(62)の圧力室(104)の少なくとも1つの容積差と、前記第2のブレーキ回路における圧力差との比率に関する量が、前記第2のブレーキ回路(52)内の空気の存在によって変化する量である弾性量として考慮される、
請求項12または13に記載の方法。
【請求項17】
前記ブレーキ液の実際追加容積は、少なくとも1つの前記容積送出装置(90)によって前記備蓄容積部(92)から、前記第2のブレーキ回路(52)を前記マスタブレーキシリンダ(62)と並列に前記備蓄容積部(92)と接続するリザーバ配管(89)を介して、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)へ注入される、
請求項11から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記備蓄容積部(92)を前記マスタブレーキシリンダ(62)と接続する入替穴の密閉装置が少なくとも部分開放され、
前記ブレーキ液の実際追加容積は、少なくとも1つの前記容積送出装置(90)によって前記備蓄容積部(92)から、少なくとも部分開放された前記密閉装置を介して、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある前記第2のブレーキ回路(52)へ注入される、
請求項11から16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキシステムのための制御装置、および、そのような種類の制御装置を備えるブレーキシステムに関する。さらに本発明は、車両のブレーキシステムを作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、独立した(分断された)2つの油圧ブレーキ回路を備える、自動車のためのブレーキシステムが知られている。両方のブレーキ回路の独立した構成に基づき、ブレーキ回路の不具合に基づいて一方の回路が失陥したときに、それでもブレーキシステムの少なくとも最低機能を確保し、そのようにして、ブレーキシステムの全面失陥を回避することを可能にすることが意図されている。
【0003】
たとえば特許文献1には、2つのブレーキ回路を備える油圧式の車両ブレーキ設備の圧力センサやブレーキ回路の障害を判定する方法が記載されている。圧力センサにより判定されたマスタブレーキシリンダの圧力室の油圧(もしくはこれから導き出される量)と、真空ブレーキブースタに配置された少なくとも1つの真空センサの真空圧力(ないしこれから導き出される量)とを比較することによって、障害または失陥を認識可能にすることが意図される。障害や失陥が認識されると、マスタブレーキシリンダと、まだ機能性のあるブレーキ回路との間の油圧配管に配置された分離弁が閉じられ、次いで油圧ポンプにより、まだ機能性のあるブレーキ回路の少なくとも1つのホイールブレーキに圧力が供給される。このようにして、障害や失陥にもかかわらず、油圧式のブレーキ力増幅を生成可能にすることが意図される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10224590A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、請求項1の構成要件を備える車両のブレーキシステムのための制御装置、請求項5の構成要件を備える車両のブレーキシステム、および請求項9の構成要件を備える車両のブレーキシステムを作動させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特に不具合が発生したときにも法律で求められる減速を確保するために、追加のブレーキ力増幅のために第2のブレーキ回路へ追加容積を送出することを可能にする。たとえば第1のブレーキ回路の不具合が、目標追加容積を決めるときに、少なくとも1つの目標量と少なくとも1つの実際量との比較によって認識され、引き続いて、追加のブレーキ力増幅が第2のブレーキ回路で作動する。このようにして第1のブレーキ回路の機能障害を、特に回路の失陥を、補償することが可能である。
【0007】
これに加えて本発明により、第2のブレーキ回路に存在する空気を、弾性量を考慮したうえで目標追加容積を適切に決めることによって補償することも可能にすることが意図される。従来、標準的なブレーキ設備の容積収容量は、(少なくとも1つのブレーキ回路での)空気の存在によって明らかに多くなる。このことは、該当するブレーキ回路の機能障害につながる可能性がある。本発明により、このような機能障害を防止することが可能である。したがって本発明は、特に、バイワイヤブレーキシステムや経年劣化したブレーキ液を有するブレーキシステムで適用可能である。
【0008】
本発明による制御装置、これを装備したブレーキシステム、および相応の方法を適用した車両動作を有する車両では、立法者により自動車について要求される最低車両減速が、不具合のない通常動作のときにも不具合が生じた場合でも、特にフロントアクスル回路が失陥したときでも、簡単な仕方で確保される。たとえばこの自動車は回路失陥が生じたときに、少なくとも2.44m/s
2の車両減速を行うことができる。このように、運転者は車両の機能障害が生じた後でも、快適な仕方で確実に制動をすることができる。
【0009】
マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードとは、マスタブレーキシリンダでの圧力生成を通じて運転者がまだ少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダにブレーキ介入することができるように第2のブレーキ回路がマスタブレーキシリンダと接続される、第2のブレーキ回路のモード/状態を意味している。このように本発明の実施形態では、実際追加容積が送られる前に、マスタブレーキシリンダと第2のブレーキ回路との間の分離弁を閉じる必要がない。その代わりに本発明は、このような種類の分離弁が存在している場合でも、少なくとも部分開放された状態で、特に開いた状態で、実施することが可能である。それにより運転者は、本発明では、第2のブレーキ回路への直接的なアクセスを引き続き有している。したがって運転者は、実際追加容積が送られた後または途中でも、少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダに存在しているブレーキ圧を制御/能動的に調整することができる。このことは運転者が、印加されるペダルストローク/ペダル圧力および印加される反力を通じて、たとえばポンプおよび/またはプランジャのような少なくとも1つの容積送出装置により引き上げられる背圧に抗して、第2の(健全な)ブレーキ回路の圧力を調節することができると言い換えることもできる。
【0010】
ここで指摘しておくと、本発明は、マスタブレーキシリンダを通じてまだブレーキ介入することができる、マスタブレーキシリンダと油圧接続された第2のブレーキ回路への追加のブレーキ液容積の送出を提供するものであり、それに対して従来式の方法では、健全なブレーキ回路のブレーキ圧は、分離弁を閉じてのコントロールによって能動的に調整される。したがって運転者は、本発明では、分離弁を閉じてのコントロールとは異なり、少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダで生成されるブレーキ圧を迅速に変更することができ、そのために高いコストのかかる、もしくは高価なエレクトロニクスを必要とすることがない。
【0011】
さらに本発明は、従来式の方法と比べたときに、負圧センサを必要とすることがない。したがって本発明は、負圧増幅が行われないブレーキシステムでも好ましく実施可能である。このように、本発明を適用するために負圧センサの信号が必要ないので、ブースタ調整ポイントを下回る施工可能性も保証される。
【0012】
従来式の方法は、絶えず調節可能なバルブを通じてのコントロールによってのみ圧力生成が可能なバイワイヤブレーキ回路がもたらされるのに対して、本発明では、第2の(残っている健全な)ブレーキ回路の圧力を、運転者により生成される圧力レベルよりも上方で、見積もられた減速希望を参照しながら能動的にコントロールすることは必要ない。したがって本発明を実施可能にするには、少ない設計スペースしか要しないコスト面で有利なエレクトロニクスを採用することが可能である。
【0013】
次に、本発明のその他の構成要件や利点について、図面を参照しながら説明する。図面は次のものを示している:
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ブレーキシステムを作動させる方法の第1の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【
図2】ブレーキシステムを作動させる方法の第2の実施形態を図示するための座標系である。
【
図3】制御装置の1つの実施形態を示す模式図である。
【
図4】ブレーキシステムの1つの実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、ブレーキシステムを作動させる方法の第1の実施形態を説明するためのフローチャートを示している。
【0016】
以下に説明する方法は、マスタブレーキシリンダと、ブレーキ液で充填可能なブレーキ回路外部の備蓄容積部と、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダを備える第1のブレーキ回路と、少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダを備える第2のブレーキ回路と、少なくとも1つの容積送出装置とを含むブレーキシステムで実施可能である。少なくとも1つの容積送出装置は、たとえばポンプおよび/またはプランジャであってよい。
【0017】
少なくとも1つの第2のブレーキ回路は、少なくとも、第2のブレーキ回路の圧力をマスタブレーキシリンダによって制御可能であるマスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードで作動可能である。これは、マスタブレーキシリンダに配置されたブレーキ操作部材の操作を通じて、たとえばブレーキペダルの操作を通じて、マスタブレーキシリンダでの圧力生成により、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードになっている第2のブレーキ回路へブレーキ介入する可能性を運転者が有しているものと理解することができる。このような種類のブレーキ介入は、第2のブレーキ回路の少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダでのブレーキ圧の生成として理解することができる。第1のブレーキ回路も、このような種類のマスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードで作動可能であってよい。
【0018】
第2のブレーキ回路は、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードに加えて、外力ブレーキモードでも作動可能であってよく、このモードでは、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードのときに成立するマスタブレーキシリンダと第2のブレーキ回路との間の油圧接続が閉止/遮断され、第2のブレーキ回路の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダに生じるブレーキ圧が、マスタブレーキシリンダの内圧に左右されることがない。しかしながら以下に説明する方法の適用可能性は、このような種類の外力ブレーキモードでの第2のブレーキ回路の作動可能性に限定されるものではない。同様に第1のブレーキ回路も、第1のブレーキ回路に生じるブレーキ圧がマスタブレーキシリンダの内圧に左右されない外力ブレーキモードでのみ作動可能であってよく、または、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードと外力ブレーキモードとで選択的に作動可能であってよい。このように、以下に説明する方法は多くのさまざまな型式のブレーキシステムで実施可能である。
【0019】
この方法は、第1のブレーキ回路および/または少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダで設定されるべき目標ブレーキ圧に関して少なくとも1つの目標量が判定される方法ステップS1を含んでいる。少なくとも1つの第1の目標量として、たとえば車両の運転者によるブレーキ操作部材の操作の少なくとも1つのブレーキストロークおよび/またはブレーキ圧を判定することができる。これは、ブレーキストロークおよび/またはブレーキ圧に対応する量として理解することができ、たとえば、マスタブレーキシリンダとブレーキ操作部材との間に配置された接続コンポーネントの調節量(ロッドストローク)、および/または接続コンポーネントに印加される圧力として理解することができる。ロッドストローク速度も、実際量として判定可能である。第1のブレーキ回路および/または少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダで設定されるべき目標ブレーキ圧に関する目標量は、第2のブレーキ回路および/または少なくとも1つの第2のホイールブレーキシリンダで生じる圧力であってもよいが、これは、両方のブレーキ回路で等しい圧力比が成立すべき限りにおいてである。
【0020】
本方法は、方法ステップS1とともに、第1のブレーキ回路および/または少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダに生じている実際ブレーキ圧に関して、および/または少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダにより少なくとも1つのホイールに及ぼされる実際ブレーキトルクに関して、少なくとも1つの実際量が判定される方法ステップS2を含むことができる。たとえば第1のブレーキ回路および/または少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダで生じている圧力を、ないしはこれから導き出される量を、生じている実際ブレーキ圧に関する少なくとも1つの実際量として判定することができる。同様に、第2のホイールブレーキシリンダに付属するホイールの回転速度の時間的変化を、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダにより少なくとも1つのホイールに及ぼされる実際ブレーキトルクに関する少なくとも1つの実際量として判定することもできる。しかしながら、車両速度の時間的推移を参照して、最新の車両減速を少なくとも1つの実際量として判定することも可能である。
【0021】
このように、方法ステップS1およびS2を実施するには、目標量および実際量として判定可能なセンサ値について広い選択肢がある。このとき方法ステップS1およびS2を実施するために、すでに車両に通常設けられているセンサを利用することができる。このように、ここで説明している方法の実施は、車両に取り付けられるべきセンサを追加的に必要とすることがない。
【0022】
方法ステップS1およびS2という表記は、これらの方法ステップを実施する時間的順序を規定するものではない。たとえば方法ステップS2を方法ステップS1の前に実施することもでき、あるいは、これと同時に実施することもできる。
【0023】
方法ステップS1およびS2の代替または補足として、本方法は方法ステップS3を含むこともできる。方法ステップS3では、第2のブレーキ回路の弾性に関する弾性量を判定することができる。このような種類の弾性量は、たとえば、第2のブレーキ回路および/または第2のブレーキ回路と接続されたマスタブレーキシリンダの圧力室の少なくとも1つの容積差と、第2のブレーキ回路における圧力差との比率に関する量として理解することができる。弾性量は、第2のブレーキ回路および/または第2のブレーキ回路と接続されたマスタブレーキシリンダの圧力室の、さまざまに異なるシステム圧のときの容積差であってもよい。第2のブレーキ回路のこのような種類の弾性量/弾性を判定する方法は従来技術から周知であり、ここではこれ以上詳しくは立ち入らない。
【0024】
方法ステップS4では、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある第2のブレーキ回路のブレーキ液の目標追加容積に関する設定量が決定される。この設定量は、たとえば目標追加容積、ポンプ周波数、ポンプ作業量、ポンプ出力、プランジャ制御量、および/またはブレーキシステムの少なくとも1つの容積送出装置の目標通電量などを含むことができる。
【0025】
設定量の決定は、たとえば少なくとも1つの実際量と少なくとも1つの目標量との誤差量を考慮したうえで行うことができる。第1の誤差量は、たとえば少なくとも1つの実際量と少なくとも1つの目標量との差異であってよい。第1の誤差量を判定するこれ以外の手段も同じく可能である。さらに第1の誤差量に追加して、少なくとも1つの実際量と所定の最低量との間の差異を、設定量/目標追加容積の決定にあたって考慮することもできる。特に目標追加容積の決定は、差異がゼロに等しくなくなったときに初めて行うことができる。
【0026】
上記の代替または追加として、少なくとも1つの弾性量と設定された目標弾性量との第2の誤差量を考慮したうえで、設定量の決定を行うこともできる。目標弾性量は、ブレーキ回路弾性が高くなったときに、すなわち第2のブレーキ回路に存在する/必要とされるブレーキ液容積が上昇したときに、特に第2のブレーキ回路に空気があるときに、設定された目標弾性量と相違する弾性量が発生するように設定されていてよい。
【0027】
このように方法ステップS4により、たとえばブレーキ液が第1のブレーキ回路から外に出たことに基づく第1のブレーキ回路の機能障害だけでなく、特に第2のブレーキ回路の空気によって第2のブレーキ回路に存在するブレーキ液容積/ブレーキ液需要が上昇したときの第2のブレーキ回路の機能障害も、間接的に規定可能である。ただし指摘しておくと、第1のブレーキ回路の機能障害および/または第2のブレーキ回路の増大した弾性を(わざわざ)「認識」しなければならないのではなく、自動的に補償することができる。このことは本方法のさらに別の利点である。設定量/目標追加容積を適切に決定することで、回路の失陥などの第1のブレーキ回路の機能障害を、および/または第2のブレーキ回路に存在している空気を、後でまた詳しく説明するように補償することができる。
【0028】
任意選択で、方法ステップS4ではゼロに等しくない目標追加容積に加えて、第1のブレーキ回路の不具合状態および/または第2のブレーキ回路の過剰弾性も認識/規定することができる。このような種類の回路失陥認識のために、これ以外の方法ステップが実施されることはない。第1のブレーキ回路の認識/規定された不具合状態を、および/または第2のブレーキ回路の過剰弾性を、引き続き情報表示によって、音声出力によって、および/または無線信号によって、運転者および/または車両工場へ通知することができる。このように運転者は、車両の確実な制動に加えて、ブレーキシステムの状態を了解しておき、早めに是正してもらうという選択肢を有している。
【0029】
次の方法ステップS5では、決定された設定量/目標追加容積に対応するブレーキ液の実際追加容積が、第2のブレーキ回路の外部に配置された備蓄容積部から、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある第2のブレーキ回路へ、少なくとも1つの容積送出装置によって取り込まれる。1つの好ましい実施形態では、ブレーキ液の実際追加容積は少なくとも1つの容積送出装置によって備蓄容積部から、第2のブレーキ回路をマスタブレーキシリンダと並列に備蓄容積部とつなぐリザーバ配管を介して、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある第2のブレーキ回路へと送られる。
【0030】
上記の代替として、備蓄容積部をマスタブレーキシリンダとつなぐ入替穴の密閉装置を少なくとも部分開放することができ、好ましくは完全に開放することができる。このことは、たとえば密閉装置のオーバーフローによって簡単な仕方で実施することができる。引き続いてブレーキ液の実際追加容積を、少なくとも1つの容積送出装置により備蓄容積部から、少なくとも部分開放された密閉装置を介して(およびマスタブレーキシリンダの少なくとも1つの圧力室を介して)、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある第2のブレーキ回路へ送ることができる。
【0031】
指摘しておくと、方法ステップS5の実施可能性は、第2のブレーキ回路とマスタブレーキシリンダとの間に配置された分離弁の閉止による第2のブレーキ回路の分断を必要とするものではない。したがって運転者は方法ステップの実施中にも、および/または方法ステップS5の後にも、第2のブレーキ回路へ直接的にブレーキ介入することが可能である。同様に、運転者がブレーキペダルを離すことでブレーキ液が第2のブレーキ回路からマスタブレーキシリンダに簡単な仕方で移動することによって、第2のブレーキ回路での圧力削減を方法ステップS5の後でも実行可能である。
【0032】
それにより本方法は、第1のブレーキ回路の機能障害の補償、および/または目標弾性量と相違する第2のブレーキ回路のブレーキ回路弾性の補償を可能にする。それと同時に、第2のブレーキ回路が引き続きマスタブレーキシリンダと油圧接続されており、そのようにして、第2のブレーキ回路とマスタブレーキシリンダとの間の油圧接続を介して、第2のブレーキ回路での追加のブレーキ圧生成をマスタブレーキシリンダでの圧力生成によって迅速、確実、かつ簡単な仕方で運転者により実行可能であることが確保される。このことは、ここで説明している方法では第2のブレーキ回路について確保されるが、ただしバイワイヤブレーキ回路では成立しない主要な利点である。
【0033】
図2は、ブレーキシステムを作動させる方法の第2の実施形態を図示するための座標系を示している。
【0034】
座標系の横軸は時間tに対応している。座標系の縦軸は、車両速度v(単位m/s)、ブレーキペダルストロークs(単位mm)、車両のフロントアクスルにある第1のブレーキ回路の第1のブレーキ圧p1(単位バール)、車両のリヤアクスルにおける第2のブレーキ回路の第2のブレーキ圧p2(単位バール)、およびたとえばポンプのようなブレーキシステムの容積送出装置の送出作業量Wを表している。
【0035】
本方法を実施するために用いられるブレーキシステムでは、不具合のないブレーキシステムの状態のときにはフロントアクスルのホイールを制動可能である第1のブレーキ回路の機能障害が存在する。このような機能障害は、時点t0よりも前に、または時間t0とt1との間に、すでに上で説明した方法ステップによって、たとえば実際量と目標量の判定および判定値の相互の比較によって、認識することができる。実際量と目標量を判定し、第1のブレーキ回路の機能障害を認識し、すでに上に挙げたマスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある第2のブレーキ回路の相応の目標追加容積を決定する方法ステップについてはすでに説明したので、ここでは再度これに立ち入ることはしない。第2のブレーキ回路の決定された目標追加容積に対する以下に説明するブレーキシステムの応答が、各方法ステップがすでに時点t0よりも前に実行されるか、それとも時間t0とt1の間に行われるかによって悪影響を受けないように、もしくはほとんど受けないように、各方法ステップを迅速に実施可能であることだけを指摘しておく。
【0036】
時点t0以後、運転者はブレーキペダルを操作する。そのようにして時点t0以後、ゼロに等しくないブレーキペダルストロークsが存在する。
【0037】
時点t1以後、容積送出装置の制御が行われ、容積送出装置によって(間接的に)規定された目標追加容積に対応する実際追加容積が第2のブレーキ回路へ注入されるようにされる。そのために、目標追加容積を直接的に決定することは必要ない。その代わりにいっそう簡単な手法を実行することができ、それは、少なくとも1つの容積送出装置の作動信号および/または第2のブレーキ回路で設定されるべき目標圧力が設定量として決定されることによって行われる。すなわち送出作業量Wは時間t1以後、0に等しくない値を有している。これに応じて、第2のブレーキ回路の第2のブレーキ圧p2が、時間t1以後に明らかに上昇する。このように、車両速度vの低下を見ると明らかにわかるとおり、第1のブレーキ圧p1が低いにもかかわらず車両を確実に減速することが可能である。
【0038】
少なくとも1つの容積送出装置の作動停止は、設定量として規定された目標圧力が第2のブレーキ回路で判定されたときに初めて行うことができる。それに伴い、第2のブレーキ回路の第2のブレーキ圧p2を、容積送出装置の操作によって、ブレーキペダルストロークsを一定に保ったままで上昇させることもでき、それはたとえば、マスタブレーキシリンダから移動するべき容積が使い尽くされている場合である(ストッパ)。
【0039】
時間t2以後は、希望どおりの車両減速が実現されている。
【0040】
図3は、制御装置の1つの実施形態の模式図を示している。
【0041】
模式的に示した制御装置10は、車両の(図示しない)ブレーキシステムについて適用可能である。制御装置10は、第1の受信装置12および第2の受信装置14および/または第3の受信装置16を含んでいる。図示した実施形態では、制御装置10は3つの受信装置12から16を有している。ただし制御装置10は、3つすべての受信装置12から16を備える構成だけに限定されるものではない。すなわち制御装置10の構成にあたっては、少なくとも1つの受信装置12から16の装備に関して広い自由度がある。
【0042】
第1の受信装置12により、ブレーキシステムの第1のブレーキ回路および/または第1のブレーキ回路の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダで設定されるべき目標ブレーキ圧に関して提供される少なくとも1つの目標量を受信可能である。少なくとも1つの目標量として、たとえばブレーキストロークセンサおよび/またはブレーキ圧センサの少なくとも1つのセンサ信号18を受信可能であってよい。少なくとも1つのセンサ信号18は、ブレーキストローク/調節ストローク、ブレーキストローク/調節ストロークの時間微分、ブレーキ圧、および/またはブレーキ圧の時間微分を含むことができる。
【0043】
第2の受信装置14は、第1のブレーキ回路および/または少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダに生じている実際ブレーキ圧に関する、および/または少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダにより少なくとも1つのホイールに及ぼされる実際ブレーキトルクに関する、少なくとも1つの提供される実際量を第2の受信装置14により受信可能であるように構成されている。特に少なくとも1つの実際量として、ブレーキ圧センサ、ホイール回転速度センサ、および/または車両速度センサの少なくとも1つの出力信号20を受信可能であってよい。すなわち出力信号20は、ブレーキ圧、ブレーキ圧の時間微分、ホイール回転速度、ホイール回転速度の時間微分、車両速度、および/または車両速度の時間微分を含むことができる。
【0044】
第3の受信装置16により、ブレーキシステムの第2のブレーキ回路の弾性に関する弾性量を受信可能である。弾性量とは、第2のブレーキ回路および/または第2のブレーキ回路と接続されたマスタブレーキシリンダ室の少なくとも1つの容積差と、第2のブレーキ回路における圧力差との比率に関する、弾性信号22を通じて受信される量として理解することができる(1つの発展例では、第3の受信装置16により、またはその他の受信装置により、第2のブレーキ回路に生じている圧力も受信可能であってよい)。
【0045】
制御装置10は評価装置24を含んでおり、これによってマスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある第2のブレーキ回路のブレーキ液の目標追加容積に関する設定量を決定可能である。この設定量は、たとえば目標追加容積、ポンプ周波数、ポンプ作業量、ポンプ出力、プランジャ制御量、および/またはたとえばポンプおよび/またはプランジャのようなブレーキシステムの少なくとも1つの容積送出装置の目標通電であってよい。マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードとは、第2のブレーキ回路の圧力をブレーキシステムのマスタブレーキシリンダにより、たとえば第2のブレーキ回路と油圧接続されたマスタブレーキシリンダ室での圧力増加や圧力削減を通じて、運転者により制御可能である第2のブレーキ回路のモードとして理解することができる。
【0046】
設定量/目標追加容積の決定は、少なくとも1つの実際量と少なくとも1つの目標量との第1の誤差量を考慮したうえで、および/または弾性量と設定された目標弾性量との第2の誤差量を考慮したうえで、評価装置24により実行可能である。そのために評価装置24は、たとえば目標量信号26と実際量信号28とを受信し、引き続き、第1の誤差量を特に差異として決定する。同様に評価装置24は、弾性量信号30の受信後に、弾性量と設定された目標弾性量との差異として、第2の誤差量を決定することができる。
【0047】
引き続いて評価装置24は、決定された設定量/目標追加容積に対応する設定信号32を制御器34に出力する。制御器34により、決定された目標追加容積に対応する制御信号36をブレーキシステムの少なくとも1つの容積送出装置に出力可能であり、それにより少なくとも1つの容積送出装置によって、目標追加容積に対応するブレーキ液の追加容積を、ブレーキシステムのブレーキ回路外部の備蓄容積部から、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある第2のブレーキ回路へと注入可能である。このことは、すでに上で説明した利点を保証する。
【0048】
図4は、ブレーキシステムの1つの実施形態の模式図を示している。
【0049】
すでに上で説明した制御装置10を備える、
図4に模式的に図示するブレーキシステムは、それぞれ2つのホイールブレーキシリンダ54aおよび54bを備える、第1のブレーキ回路50と第2のブレーキ回路52とを有している。第1のブレーキ回路50の両方のホイールブレーキシリンダ54aには、フロントアクスルに配置された2つのホイール56が付属している。フロントアクスルには、(図示しない)発電機も配置されていてよい。第2のブレーキ回路52の両方のホイールブレーキシリンダ54bには、リヤアクスルのホイール60が付属している。ただしここで説明しているブレーキシステムは、軸ごとのブレーキ回路分割だけに限定されるものではない。その代わりに、共通のブレーキ回路50または52に付属するホイール56および60が車両の一方の側に配置された、または車両に対角線上で配置されたブレーキシステムも採用可能である。
【0050】
明文をもって指摘しておくと、以下に説明するブレーキシステムの各コンポーネントは、制御装置10を備える好ましいブレーキシステムの考えられる構成の一例であるにすぎない。このブレーキシステムの1つの利点は、特に、ブレーキ回路50および52が特定の構成または特定のコンポーネントの使用に規定されないという点にある。その代わりにブレーキ回路50および52は、ブレーキシステムが制御装置10を装備することの利点を損なうことなく、高い選択の自由度で改変することができる。
【0051】
このブレーキシステムは、マスタブレーキシリンダ62に配置されたブレーキ入力部材64、たとえばブレーキペダルを有している。目標量を提供するために、ブレーキストロークセンサ66がブレーキ入力部材64に配置されていてよい。ブレーキストロークセンサ66の別案として、ブレーキ力センサ/ブレーキ圧センサを利用することもできる。任意選択として、ブレーキシステムはブレーキブースタ68を含むことができ、たとえば油圧式のブレーキブースタや電気機械式のブレーキブースタを含むことができる。
【0052】
第1のブレーキ回路50は、マスタ切換弁70および切換弁72を備えるように構成されており、それにより、運転者がマスタブレーキシリンダ62を通じて、第1のブレーキ回路50のホイールブレーキシリンダ54aへ直接的にブレーキ介入することができるようになっている。第1のブレーキ回路50の両方のホイールブレーキシリンダ54aの各々には、ホイール取込弁74aおよびこれと並列に延びるバイパス配管76aと、各々のバイパス配管76aに配置された逆止め弁77aと、ホイール排出弁78aとが付属している。さらに第1のブレーキ回路50は、吸込側がホイール排出弁78aと接続されるとともに送出側が切換弁72へと通じている第1のポンプ80と、ホイール排出弁78aとポンプ80との間に連結された備蓄室82と、第1のポンプ80と備蓄室82との間に配置された過圧弁84とを含んでいる。
【0053】
第2のブレーキ回路52は、マスタブレーキシリンダ62から分断可能なブレーキ回路として構成されている。そのために第2のブレーキ回路52は分離弁86を有しており、これにより、第2のブレーキ回路52のホイールブレーキシリンダ54bと、ホイールブレーキシリンダ54bに付属するホイール取込弁74bおよびこれと並列に配置されたバイパス配管76bおよび逆止め弁77bと、ホイールブレーキシリンダ54bに付属するホイール排出弁78bとを、マスタブレーキシリンダ62から分断可能である。分離弁86を閉じることを通じて、ブレーキ入力部材64の操作が、第2のブレーキ回路52のホイールブレーキシリンダ54bのブレーキ圧の上昇を引き起こすのを防止することができる。このことが特に有利なのは、(図示しない)車両バッテリを充電するために発電機を減速プロセス中に利用しようとする場合である。発電機は追加の発電機ブレーキトルクを車両に及ぼすので、第2のブレーキ回路52のホイールブレーキシリンダ54bを分断することで、車両の全体的な減速が、運転者により設定された目標車両減速よりも大きくなることが防止される。
【0054】
さらに第2のブレーキ回路52は、連続的にコントロール可能/調節可能/制御可能な弁88と、第2のポンプ90とを有している。連続的にコントロール可能な弁88は、リザーバ配管89を介して、マスタブレーキシリンダ62にあるブレーキ媒体リザーバ92と油圧接続されている。ブレーキ媒体リザーバ92は、ブレーキシステムのブレーキ液で充填可能である、ブレーキシステムで適用可能な備蓄容積部の一例であるにすぎない。ブレーキ媒体リザーバ92の別案として、特に外部に配置された、および/または第2のブレーキ回路52のコンポーネントではない、別様に構成された備蓄容積部を制御装置10の利用のために用いることもできる。
【0055】
第2のポンプ90の吸込側は、連続的にコントロール可能な弁88および第2のポンプ90と並列に延びる配管91とリザーバ配管89とを介して、同じくブレーキ媒体リザーバ92と油圧接続されており、それにより、分離弁86が閉じられた後に、第2のポンプ90により(少なくとも部分開放された)ホイール取込弁74bを介して、第2のブレーキ回路52のホイールブレーキシリンダ54bへブレーキ媒体容積を放出可能であるようになっている。第2のポンプ90の送出側は、連続的にコントロール可能な弁88を介してブレーキ媒体リザーバ92と接続されており、それにより、分離弁86が閉じられた後に、第2のブレーキ回路52のホイールブレーキシリンダ54bから(少なくとも部分開放された)ホイール排出弁78bおよび(少なくとも部分開放された)連続的にコントロール可能な弁88を介して、ブレーキ媒体リザーバ92へブレーキ媒体容積を送り出し可能であるようになっている。このように、分離弁86が閉じられた後に、第2のブレーキ回路52のホイールブレーキシリンダ54bの油圧ブレーキトルクを、第2のポンプ90および連続的にコントロール可能な弁88によって能動的に調整することができる。特に、マスタブレーキシリンダ62から分断された第2のブレーキ回路52のホイールブレーキシリンダ54bの油圧ブレーキトルクを、運転者により設定される目標全体ブレーキトルクと、発電機の発電機ブレーキトルクおよび第1のブレーキ回路50のホイールブレーキシリンダ54aの油圧ブレーキトルクからなる実際全体ブレーキトルクとの間の差異に応じて調整することができる。
【0056】
ポンプ80および90はそれぞれ3ピストンポンプとして、モータ96の共通のシャフト94に配置されていてよい。3ピストンポンプに代えて、たとえばこれ以外のポンプ型式をポンプ80および90のために適用可能である。ポンプ90は、使用可能な容積送出装置の一例であるにすぎない。ポンプ90の代替または補足として、ブレーキシステムはたとえばプランジャのようなこれ以外の容積送出装置を含むこともできる。
【0057】
上の段落で説明したブレーキシステムのコンポーネント70から96は、以下に詳しく説明する制御装置10を備えるブレーキシステムの装備の例であるにすぎない。
【0058】
第2のブレーキ回路52は、第2のブレーキ回路52の圧力をマスタブレーキシリンダ62により制御可能であるマスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードで作動可能である。第2のブレーキ回路52のマスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードが成立するのは、分離弁86が少なくとも部分開放の状態になるように制御されているときである。特に、第2のブレーキ回路52がマスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードになるのは、分離弁86が開いているときである。
【0059】
分離弁86の閉止を通じて、第2のブレーキ回路52を追加的に外力ブレーキモードになるように制御可能であり、このモードでは、第2のブレーキ回路52に生じているブレーキ圧を、第2のポンプ90および連続的に調節可能な弁88によって能動的に調整可能である。第2のブレーキ回路52の外力ブレーキモードは、たとえば、第1のブレーキ回路のホイール56のアクスルに及ぼされる発電機の回生式のブレーキトルクを打ち消すために利用することができる。そのために第2のブレーキ回路52のブレーキ圧を、第2のポンプ90および連続的に調節可能な弁88により能動的に調整することができ、それにより当該ブレーキ圧が、好ましい全体ブレーキトルクと、第1のブレーキ回路50のホイール56に及ぼされる油圧ブレーキトルクおよび回生式ブレーキトルクの合計との差異に相当するようになっている。したがって、ここで説明しているブレーキシステムは、特に電動車両やハイブリッド車両でも好ましく適用可能である。
【0060】
両方のブレーキ回路50および52の各々は、回路圧力および/またはホイール圧力を判定するために構成された少なくとも1つの圧力センサ98から100を有している。このように、付属のブレーキ回路50または52ないし付属のホイールブレーキシリンダ56および60で生じている実際ブレーキ圧に関する情報/量を判定可能/測定可能である。第1のブレーキ回路50の圧力センサ98により判定される、第1のブレーキ回路50ないしホイールブレーキシリンダ54aで生じている実際ブレーキ圧に関する情報/量は、出力信号20/実際量として、制御装置10へと提供可能である。
【0061】
制御装置10により、センサ98から提供される実際量を受信可能である。センサ98の実際量の代替または追加として、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ54aにより少なくとも1つのホイール56に及ぼされる実際ブレーキトルクに関するこれ以外の実際量も、制御装置10により受信可能であってよい。これに加えて制御装置10は、センサ66からセンサ信号18を通じて提供される目標量を受信するように設計されている(これに加えて制御装置10は、任意選択で、第2のブレーキ回路52の弾性に関する弾性量を受信するように設計されるが、これについては以下において説明しない)。
【0062】
制御装置10は、マスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードにある第2のブレーキ回路52のブレーキ液の目標追加容積に関するすでに上で説明した設定量を、少なくとも1つも目標量および少なくとも1つの実際量を考慮したうえで決定するように設計されている(任意選択で、設定量/目標追加容積の決定にあたって、少なくとも1つの弾性量も考慮に入れることができる)。さらに制御装置10は、決定された目標追加容積に対応するブレーキ液の実際追加容積をブレーキ媒体リザーバ92から第2のブレーキ回路52へ送り出し可能であるように、ポンプ90を制御信号36により制御するように設計されている(そのためにポンプ90の代替または追加として、プランジャを用いることもできる)。このことは、ブレーキ媒体リザーバ92からの第2のブレーキ回路52の充填と言い換えることもできる。このことは、第2のブレーキ回路52が分離弁86の存在に基づき、少なくとも部分開放された状態でマスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードになっている間に実施可能である。このようにして制御装置10により、すでに上に挙げた利点を具体化可能である。実施可能性は図示した調整システムに限定されるものではなく、外部容積を少なくとも第2のブレーキ回路52へ送出することを可能にする調整システムにも転用可能である。
【0063】
図示した実施形態では、第2のブレーキ回路52は、マスタブレーキシリンダ62と並列に延びるリザーバ配管89を介して、ブレーキ媒体リザーバ92と接続されている。このケースでは実際追加容積は、ポンプ90によりブレーキ媒体リザーバ92からリザーバ配管89を介して、第2のブレーキ回路52がマスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードになっている間に、これへ送り出すことができる(実際追加容積の移動は、運転者によりマスタブレーキシリンダ62から第2のブレーキ回路52へ移動させられる容積に追加して行うことができる)。
【0064】
ただし、ここで説明しているブレーキシステムは、このような種類のリザーバ配管の装備だけに限定されるものではない。これに代えて、本例ではブレーキ媒体リザーバ92として一例として図示する備蓄容積部をマスタブレーキシリンダ62とつなぐ、密閉装置を備えた入替穴を通じて実際追加容積を送り出すこともできる。このような種類の入替穴は、たとえばセンタバルブを備える吸込穴であってよい。このように、ブレーキ液の実際追加容積による第2のブレーキ回路52の充填を、第2のブレーキ回路52がマスタブレーキシリンダ・ブレーキ介入モードになっている間に、少なくとも部分開放された状態になるように制御された密閉装置を通じて行うこともできる。
【0065】
1つの好ましい実施形態では、マスタブレーキシリンダ62は、第1のブレーキ回路50に付属する第1の圧力室102と、第2のブレーキ回路52に付属する第2の圧力室104とを含んでいる。これは、第1のブレーキ回路50の供給配管が第1の圧力室102へと通じており、それに対して第2のブレーキ回路52の供給配管が第2の圧力室104へ連通していると理解することができる。ブレーキ操作部材64が操作されていない限りにおいて成立する第1の圧力室102の第1の最大容積は、ブレーキ操作部材64の非操作時に占められる第2の圧力室104の第2の最大容積よりも大きいのが好ましい。
【0066】
このように制御装置10の採用は、第2のブレーキ回路52の室容積を明らかに小さく寸法決めするという可能性を開くものである。バイワイヤシステムで第2のブレーキ回路52が構成される場合、室容積を特に全面的に省略することができる。こうした第1の圧力室102の第1の最大容積に対する第2の圧力室104の第2の最大容積の縮小は、法律の要求を同時に満たしながら実行可能である。したがって、ブレーキシステムで適用可能なマスタブレーキシリンダ62を、その長さに関して短縮することができる。このようにして、マスタブレーキシリンダ62の所要設計スペースを削減可能である。マスタブレーキシリンダ62の(長手方向で)短縮された形態は、パッケージングのときの利点も提供する。
【0067】
制御装置10は、第1のブレーキ回路50の機能障害の補償を保証する。したがってブレーキシステムは、第1のブレーキ回路50での漏れ位置の確認のために、複雑な、または故障の生じやすいセンサを装備しなくてよい(任意選択で、制御装置10により、たとえば空気の封入などに基づく第2のブレーキ回路52の過剰弾性も補償することができ、したがって、第2のブレーキ回路52で空気を確認するためのセンサも省略することができる)。このように、ブレーキシステムのロバスト性を向上させることが可能である。
【0068】
第2のブレーキ回路52の目標追加容積を決定するときに、および制御信号36を出力するときに、特に最大値を設定する所定のターンオフ閾値を考慮し、および/またはポンプ速度の好ましい値範囲を規定するコントロール閾値を考慮することもできる。ポンプ90の作動は、車両が停止したときにはポンプ90を同時に不作動化/ターンオフしながら、騒音の最適化された動作領域で行うことができるのが好ましい。
【0069】
1つの好ましい実施形態では、ペダルストロークの閾値の超過を踏まえて運転者のブレーキ要求が認識され、第1のブレーキ回路50に生じているブレーキ圧が、法律で求められる減速またはこれよりも高い限界値に相当する閾値よりも低いときにポンプ90が制御される。このようにして、下側の減速領域での運転者の良好なサポートが、同時に、中程度の減速領域から高い減速領域での車両減速の最善の調整可能性で確保される。
【0070】
同様に、たとえばペダルストロークセンサが制動操作を認識しているが、第1のブレーキ回路50の圧力センサ98で圧力生成が測定されない場合に、ポンプの制御を行うこともできる(同様に、第2のブレーキ回路52の弾性が所定の閾値を上回っており、第2のブレーキ回路52における空気、またはブレーキ54bの容積収容量を高めるその他の現象を推測できる場合に、実際追加容積を第2のブレーキ回路52へ送り出すことができる。)。
【0071】
ここで説明したブレーキシステムは、アクスルごとにブレーキ回路が分割して存在しており、および場合によりフロントアクスル負荷のかかる車両重量の配分が存在しているときでさえ、第1のブレーキ回路50の特に失陥のような機能障害が発生したときにも、および/または通常値範囲から逸脱する第2のブレーキ回路52の弾性が生じたときにも、車両の確実な減速を保証する。
【符号の説明】
【0072】
10 制御装置
12 第1の受信装置
14 第2の受信装置
16 第3の受信装置
18 センサ信号
20 出力信号
24 評価装置
34 制御器
36 制御信号
50 第1のブレーキ回路
52 第2のブレーキ回路
54a 第1のホイールブレーキシリンダ
54b 第2のホイールブレーキシリンダ
56 ホイール
62 マスタブレーキシリンダ
64 ブレーキ操作部材
66 ブレーキストロークセンサ
89 リザーバ配管
90 容積送出装置
92 備蓄容積部
98 ブレーキ圧センサ
102 第1の圧力室
104 マスタブレーキシリンダ室/第2の圧力室