特許第5909254号(P5909254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5909254プラットホームドア装置およびそれに用いられるプラットホームドア用防護体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909254
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】プラットホームドア装置およびそれに用いられるプラットホームドア用防護体
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20160412BHJP
   E01F 1/00 20060101ALI20160412BHJP
   E05F 15/632 20150101ALI20160412BHJP
【FI】
   B61B1/02
   E01F1/00
   E05F15/632
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-115861(P2014-115861)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-229402(P2015-229402A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2015年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】395007277
【氏名又は名称】東京都
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】友野 利章
(72)【発明者】
【氏名】沓屋 篤
(72)【発明者】
【氏名】友永 浩
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 竜也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 誠司
(72)【発明者】
【氏名】目黒 孝一
(72)【発明者】
【氏名】小杉 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 隆之
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−241429(JP,A)
【文献】 特開2006−205864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの軌道側の端部に沿って立てられた柱状体に固定された複数の固定パネルと、
前記複数の固定パネルの間に形成された開口部を開閉するように、前記プラットホームの軌道側の端部に沿って移動自在に配置された引き戸式の扉体と、
前記扉体を開方向および閉方向へ移動させる駆動機構を収納し、前記扉体の上部に結合するとともに、隣接する前記柱状体の上部にそれぞれ連結されるヘッダボックスと、
前記扉体の軌道に面する側に取り付けられた防護体とを備え、
前記防護体は、
前記扉体の戸先から軌道側に突出しており、前記扉体が閉まるときに当該扉体の車両側に存在する乗客に接触することが可能な突出長さを有する検知部と、
前記検知部よりも前記扉体の戸尻側において、前記扉体から軌道側に離間して配置され、前記車両側を向く防護面と
を備えている、
プラットホームドア装置。
【請求項2】
前記防護面は、前記検知部から前記扉体の戸尻側の少なくとも前記車両の乗降口に対向する範囲を覆う、
請求項1に記載のプラットホームドア装置。
【請求項3】
前記防護面は、プラットホームの床面から100mm以上の高さの位置に設けられている、請求項1または2に記載のプラットホームドア装置。
【請求項4】
前記防護面は、前記プラットホームの床面から1500mm以下の高さの位置に設けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のプラットホームドア装置。
【請求項5】
前記防護面の戸尻側の端部は、前記扉体の戸尻よりも開方向の側に突出している、
請求項1から4のいずれか1項に記載のプラットホームドア装置。
【請求項6】
プラットホームの端部に沿って配置されたプラットホームドア装置の引き戸式の扉体における軌道に面する側に取り付けられるプラットホームドア用防護体であって、
前記扉体の戸先から前記軌道側に突出しており、前記扉体が閉まるときに当該扉体の車両側に存在する乗客に接触することが可能な突出長さを有する検知部と、
前記検知部よりも前記扉体の戸尻側において、前記扉体から前記軌道側に離間して配置され、前記検知部の先端部から前記扉体の戸尻側に連続して延び、前記車両側を向く防護面と
を備えている、
プラットホームドア用防護体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホームドア装置およびそれに用いられるプラットホームドア用防護体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道などの駅のプラットホームには、乗客がプラットホームから軌道上へ転落することを防止するために、プラットホームドア装置が用いられている。
【0003】
朝夕の通勤ラッシュ時などでは、乗客が車両に乗ることができずにプラットホーム側に押し戻される場合があり、そのようなときに、万が一プラットホームドア装置の扉体と車両のドア(以下、車両ドアという)が両方閉まれば、扉体と車両ドアとの隙間に取り残されるおそれがある。このような場合、扉体と車両ドアの両方が正常に閉まっているので、そのまま発車するおそれがある。
【0004】
このような不具合を解消するために、特許文献1記載のプラットホームドア装置101は、図6〜7に示されるように、一対の引き戸式扉体103のそれぞれの戸先103aに検知板104が設けられている。
【0005】
具体的には、プラットホームドア装置101は、プラットホームPの床面P1において、プラットホームPの軌道側の端部P2から乗降ステップP3の範囲だけ離間した位置に設置されている。このプラットホームドア装置101は、プラットホームPの端部P2に沿って延びる複数の固定パネル102と、固定パネル102の間の開口部106を開閉可能な引き戸式の一対の扉体103とを備えている。一対の扉体103の戸先103a(すなわち、一対の扉体103が閉まったときに互いに接する側)には、軌道側(車両Cの側)に突出するように、それぞれ、検知板104が設けられている。
【0006】
車両Cが駅のプラットホームPに対面する位置に到着したとき、車両ドアC2が開くとともに、プラットホームドア装置101側の扉体103が開くことにより、乗客は車両Cを乗り降りすることができる。
【0007】
ここで、車両Cの内部が非常に混雑している場合などでは、乗客がプラットホームPから車両Cへ乗ることができずにプラットホームPの乗降ステップP3側に押し戻されることがある。そのような場合、車両ドアC2が扉体103よりも先に閉じて、乗客A1が車両ドアC2の外側の乗降ステップP3側の空間105に取り残されることがある。このとき、一対の扉体103が閉動作をするときに、扉体103の検知板104が乗客A1に接触して扉体103に干渉するので、ドア103が正常に閉じることができない。そのため、車両制御用のコンピュータなどがドア103の動作異常を確実に検知し、車両Cの発進を禁止する制御をすることが可能である。これにより、乗客の安全を確保することが可能である。
【0008】
また、特許文献2には、扉体がプラットホームに取り残された乗客に接触できるように、扉体の下部、具体的には、乗降口の全高の中間部以下の部分がプラットホームの縁部の方向(すなわち車両側)に部分的に傾斜しているプラットホームドア装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−158340号公報
【特許文献2】特開平2−185853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1記載のプラットホームドア装置101では、扉体103が閉じるときに検知板104が乗客A1に接触したときには、乗客A1を検知できるが、検知板104の背面側(すなわち、扉体103の開方向側)に乗客A2が取り残された場合には、当該乗客A2を検知できないという問題がある。
【0011】
例えば、車両Cの内部が乗客で非常に混雑している場合において、扉体103が閉じた後に、乗客が車両ドアC2に挟まるなど車両ドアC2が何らかの要因で閉まりきらないうちに乗客が車外へ押し出された場合、乗客A2は、車両ドアC2の外側の乗降ステップP3上の空間105において検知板104の背面側(扉体103の開方向側)の領域に取り残される。このような場合、検知板104はこの乗客A2に接触できず、当該乗客A2を検知できない可能性がある。
【0012】
また、特許文献2に記載のプラットホームドア装置では、プラットホームに取り残された乗客に対して扉体が接触できるように、当該扉部は、その下部がプラットフォームの縁部の方向(車両側)に部分的に傾斜している特殊な形状を有する。そのため、既存のプラットホームドア装置で一般的に用いられる平板状の扉体を採用できないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、プラットホームドア装置の扉体が閉まった状態で乗客が車両からプラットホームへ押し出される問題を解決でき、しかも、既存の平板状の扉体を採用することが可能なプラットホームドア装置およびそれに用いられるプラットホームドア用防護体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためのものとして、本発明のプラットホームドア装置は、プラットホームの軌道側の端部に沿って立てられた柱状体に固定された複数の固定パネルと、前記複数の固定パネルの間に形成された開口部を開閉するように、前記プラットホームの軌道側の端部に沿って移動自在に配置された引き戸式の扉体と、前記扉体を開方向および閉方向へ移動させる駆動機構を収納し、前記扉体の上部に結合するとともに、隣接する前記柱状体の上部にそれぞれ連結されるヘッダボックスと、前記引き戸式の扉体の軌道に面する側に取り付けられた防護体とを備え、前記防護体は、前記扉体の戸先から前記軌道側に突出しており、前記扉体が閉まるときに当該扉体の車両側に存在する乗客に接触することが可能な突出長さを有する検知部と、前記検知部よりも前記扉体の戸尻側において、前記扉体から軌道側に離間して配置され、前記車両側を向く防護面とを備えていることを特徴としている。
【0015】
かかる構成によれば、プラットホームの軌道側の端部に沿って立てられた柱状体に固定された複数の固定パネルと、前記複数の固定パネルの間に形成された開口部を開閉するように、前記プラットホームの軌道側の端部に沿って移動自在に配置された引き戸式の扉体と、前記扉体を開方向および閉方向へ移動させる駆動機構を収納し、前記扉体の上部に結合するとともに、隣接する前記柱状体の上部にそれぞれ連結されるヘッダボックスとを備えたプラットドアホーム装置において、扉体の軌道に面する側には、防護体が取り付けられ、その防護体は、検知部と防護面とを有する。防護面は、扉体の戸先から軌道側に突出している検知部よりも扉体の戸尻側において、扉体から軌道側に離間して配置されている。そのため、扉体が閉まっているときに車両の内部から検知部の背面側、すなわち、検知部から扉体の戸尻までの範囲に侵入しようとする乗客がいても、防護面が当該乗客に接触することにより、この範囲への侵入を防ぐことが可能である。しかも、防護体がこの範囲への侵入を防ぐことによって、扉体を車両側へ張り出した形状に変更する必要がなくなるので、既存の平板状の扉体を採用することが可能である。
【0016】
また、扉体が閉じるときには、検知部が車両に乗ることができずにプラットホーム上に取り残された乗客に接触することにより、当該乗客を検知することが可能である。
【0017】
また、前記防護面は、前記検知部から前記扉体の戸尻側の少なくとも前記車両の乗降口に対向する範囲を覆うのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、防護面は、検知部から扉体の戸尻側の少なくとも車両の乗降口に対向する範囲に侵入しようとする乗客と確実に接触することが可能である。しかも、防護面は乗客に対して広い範囲で面接触することが可能になり、乗客に対する衝撃などが小さく、安全性が向上する。
【0019】
また、前記防護面は、プラットホームの床面から100mm以上の高さの位置に設けられているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、防護面とプラットホーム床面との間に乗客の足先を入れる隙間を確保することが可能になる。そのため、車内の乗客の足先がプラットホーム側にはみ出した場合に、当該隙間に足先を入れることができるため、乗客の安全性が向上する。
【0021】
また、前記防護面は、前記プラットホームの床面から1500mm以下の高さの位置に設けられているのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、防護面が扉体を覆うことによる圧迫感を低減することが可能である。
【0023】
また、前記防護面の戸尻側の端部は、前記扉体の戸尻よりも開方向の側に突出しているのが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、車両がプラットホームの正規の位置からはずれて停車して、車両の乗降口がプラットホームドア装置における扉体で開閉される開口部の範囲からはみ出ている場合でも、扉体が閉まっているときに車両の内部から扉体の戸尻よりも開方向の側の範囲に侵入しようとする乗客が防護面の戸尻側の端部に接触することにより、当該範囲への侵入を防ぐことが可能である。
【0025】
また、本発明のプラットホームドア用防護体は、プラットホームの端部に沿って配置されたプラットホームドア装置の引き戸式の扉体における軌道に面する側に取り付けられる防護体であって、前記扉体の戸先から前記軌道側に突出しており、前記扉体が閉まるときに当該扉体の車両側に存在する乗客に接触することが可能な突出長さを有する検知部と、 前記検知部よりも前記扉体の戸尻側において、前記扉体から前記軌道側に離間して配置され、前記検知部の先端部から前記扉体の戸尻側に連続して延び、前記車両側を向く防護面とを備えていることを特徴とする。
【0026】
本発明のプラットホームドア用防護体は、検知部の先端部から扉体の戸尻側に連続して延びる防護面を備えている。このプラットホームドア用防護体がプラットホームドア装置の扉体に取り付けられることによって、扉体が閉まっているときに車両の内部から検知部の背面側に乗客が取り残される問題を解決できるので、扉体を車両側へ張り出した形状に変更する必要がなくなる。そのため、既存の平板状の扉体を採用することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明のプラットホームドア装置によれば、扉体が閉まった状態で乗客が車両からプラットホームへ押し出される問題を解決することができる。しかも、既存の平板状の扉体を採用することができる。
【0028】
また、本発明のプラットホームドア用防護体を用いることによって、既存の平板状の扉体をプラットホームドア装置の扉体に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係るプラットホームドア装置の正面図である。
図2図1のプラットホームドア装置の平面図である。
図3図1のプラットホームドア装置を扉体の戸先部から戸尻部の方へ見た側面図である。
図4図1のプラットホームドア装置において扉体が閉まっているが、車両ドアが開いている状態を示す平面説明図である。
図5図1のプラットホームドア装置において、車両が正規の位置からずれて停車し、かつ、扉体が閉まっているが、車両ドアが開いている状態を示す平面説明図である。
図6】従来のプラットホームドア装置の正面図である。
図7図6のプラットホームドア装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明のプラットホームドア装置およびそれに用いられるプラットホームドア用防護体の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0031】
図1〜3に示されるプラットホームドア装置1は、プラットホームPをホーム側と軌道側とを仕切るように当該プラットホームPの端部P2に沿って配置されている。プラットホームドア装置1は、固定パネル2と、扉体3と、ヘッダボックス4と、プラットホームドア用防護体21(以下、防護体21という)とを備えている。
【0032】
固定パネル2は、プラットホームPの端部P2に沿って、当該プラットホームPの床面P1に垂直に立てられた状態で配置されている。固定パネル2は、プラットホームPの床面P1に立てられた柱状体6によって支持されている。隣接する2枚の固定パネル2は、開口部5が形成されるように離間している。開口部5の幅は、車両Cの側壁C1の間に形成された乗降口C3(図4参照)の幅よりも広くなるように設定されている。
【0033】
固定パネル2は、枠体2aと、枠体2aにはめ込まれた透明パネル2bと、水平に延びる手すり2cとを備えている。透明パネル2bは、強化ガラスなどからなる。
【0034】
扉体3は、引き戸式のドアであり、プラットホームPの端部P2に沿って、上記の開口部5に開閉自在に配置されている。本実施形態の扉体3は、両開きのドアであるが、片開きのドアでもよい。
【0035】
扉体3は、矩形の平板形状を有している。扉体3としては、例えば、既存のプラットホームドア装置で一般的に用いられる平板状の扉体が採用される。
【0036】
扉体3は、枠体3aと、枠体3aにはめ込まれた透明パネル3bとを備えている。
【0037】
枠体3aは、扉体3の戸先側(閉方向側)において垂直方向に延びる戸先部3a1と、戸尻側(開方向側)において垂直方向に延びる戸尻部3a2を有する。透明パネル3bは、強化ガラスなどからなる。両開きの扉体3の戸先部3a1のそれぞれ対向する側には、緩衝材3cが設けられている。
【0038】
扉体3は、その上部に位置するヘッダボックス4に結合されている。扉体3は、ヘッダボックス4内部の駆動機構によって、開方向および閉方向へ移動される。ヘッダボックス4の両端部は、隣接する2本の柱状体6の上部にそれぞれ連結されている。
【0039】
防護体21は、プラットホームPの端部P2に沿って配置されたプラットホームドア装置1の扉体3における軌道に面する側(図2〜3に示される軌道側)にねじ止めなどによって取り付けられる。すなわち、防護体21は、既設の扉体3にも後付けで取り付けることが可能である。
【0040】
図2および図4に示されるように、防護体21は、防護板24と、一対の支持部、すなわち、戸先側支持部22および戸尻側支持部25と、上板26とを備えている。防護板24は、戸先側支持部22および戸尻側支持部25によって支持される。防護板24、戸先側支持部22、戸尻側支持部25、および上板26は、硬質の樹脂材料またはステンレスの薄板などの材料によって一体形成される。防護体21の色については本発明ではとくに限定されないが、防護体21は、全体的に視認しやすい色(茶色など)を有しているのが好ましい。また、防護体21は、透明または半透明であってもよい。
【0041】
戸先側支持部22は、板状の部分であり、扉体3の戸先部3a1から軌道側に突出するように当該戸先部3a1に沿って配置されている。戸先側支持部22は、扉体3の戸先部3a1に沿うように、ねじ止めなどによって当該戸先部3a1に固定される。
【0042】
戸先側支持部22は、扉体3が閉まるときに当該扉体3と車両Cとの間に乗客が存在するときに当該乗客に接触することが可能な突出長さX2(図4参照)を有する。具体的には、戸先側支持部22の突出長さX2は、車両Cの乗降口C3が車両ドアC2(図4の2点鎖線で示される車両ドアC2参照)によって閉じられたときに、扉体3と車両ドアC2との間の距離X1の範囲に乗客が取り残された場合に、扉体3が閉まるときに戸先側支持部22が乗客(とくに幼児などの小柄な乗客)に接触することが可能な長さに設定される。これにより、戸先側支持部22は、本発明の検知部として機能する。
【0043】
また、両開きの扉体3の戸先部3a1に配置された戸先側支持部22の間隔gは、各扉体3が閉まるときに一対の戸先側支持部22によって乗客(とくに幼児などの小柄な乗客)に接触することが可能な距離に設定される。
【0044】
戸尻側支持部25は、板状の部分であり、扉体3の戸尻部3a2から軌道側に突出するように戸尻部3a2に沿って配置されている。戸尻側支持部25は、扉体3の戸尻部3a2に沿うように、ねじ止めなどによって当該戸尻部3a2に固定される。
【0045】
防護板24は、矩形の平板状の板状体である。防護板24は、戸先側支持部22および戸尻側支持部25のそれぞれの先端部に連結されることによって、扉体3から軌道側に離間した位置で支持されている。この状態では、防護板24は、一方の面24bが軌道側を向き、他方の面24cがホーム側を向くように配置される。防護板24の軌道側を向く面24bは、本発明の防護面として機能する。以下、この面24bを防護面と呼ぶ。
【0046】
防護面24bが扉体3から離間する距離X3は、扉体3が閉まっている状態において、車両ドアC2が何らかの理由で開いたときでも、当該防護面24bが乗客に接触してプラットホームPの乗降ステップP3に降りて立つことを防ぐことが可能な距離に設定される。
【0047】
防護面24bは、プラットホームPの床面から100〜1500mmの高さの位置に設けられている。防護面24bは、プラットホームPの床面P1からの距離H2が100mm未満の高さの位置にあれば、防護面24bとプラットホームPの床面P1との間に乗客の足先を入れる隙間30を確保することが困難であるので、この隙間30を確保するために100mm以上の高さの位置に設けられているのが好ましい。具体的には、防護面24bの下端の位置は、足先を入れる隙間30を確保でき、かつ防護板24の強度確保などのために、床面P1から100〜150mm程度の高さの位置に設定されるのが好ましい。
また、防護面24bがプラットホームPの床面P1からの距離H1が1500mmよりも大きい高さの位置にある場合には、防護面24b(およびそれを含む防護板24)が扉体3を覆うことによる圧迫感を乗客が強く感じるので、このような圧迫感を低減するために、1500mm以下の高さの位置に設けられているのが好ましい。具体的には、防護面24bの上端の位置は、防護面24bによって乗客に与える圧迫感を低減し、かつ乗客が防護板24を乗り越えることを防止するために、床面P1から1200〜1500mm程度の高さの位置に設定されるのが好ましい。
【0048】
また、本実施形態では、防護面24bの戸尻部3a2側の端部29は、扉体3の戸尻部3a2よりも開方向の側に突出している。この戸尻部3a2側の端部29は、扉体3が閉まっているときに扉体3の戸尻部3a2よりも開方向側の範囲(例えば、図5の空間部34)に侵入しようとする乗客に接触して当該範囲への侵入を防ぐことが可能な長さY2(図5参照)だけ当該戸尻部3a2よりも開方向側へ突出する。長さY2は、当該範囲への乗客の侵入を防止し、かつ、端部29の強度を確保するために、例えば、150〜200mmの範囲、好ましくは175〜185mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0049】
上板26は、戸先側支持部22、防護板24、および戸尻側支持部25によって囲まれた空間の上部を塞ぎ、当該空間への異物の侵入を防ぐ。
【0050】
上記のように構成されたプラットホームドア装置1では、図4に示されるように、車両Cが駅のプラットホームPに対面する位置に到着したとき、車両Cの車両ドアC2が開くとともに、プラットホームドア装置1の扉体3が開くことにより、車両Cの乗降口C3とプラットホームドア装置1の開口部5とが連通し、乗客は車両Cを乗り降りすることができる。
【0051】
車両Cの内部が非常に混雑している場合などでは、乗客がプラットホームPから車両Cへ乗ることができずにプラットホームPの乗降ステップP3側に押し戻された場合、車両Cの車両ドアC2が扉体3よりも先に閉じて、乗客が車両ドアC2の外側の乗降ステップP3側の空間33に取り残されることがある。このとき、一対の扉体3が閉方向に移動するときに、扉体3のそれぞれの戸先部3a1に配置された防護体21の戸先側支持部22が乗客に接触して扉体3の閉動作に干渉することにより、当該戸先側支持部22は検知部としての機能を発揮する。これにより、車両制御用のコンピュータなどが扉体3の動作異常を確実に検知することが可能である。
【0052】
また、車両Cの内部が乗客で非常に混雑している場合において、扉体3が完全に閉じた後に、車両ドアC2に乗客が挟まっているなどの車両ドアC2が何らかの要因で閉まりきらないうちに乗客が車外へ押し出されて車両Cの内部から戸先側支持部22の背面側、すなわち、戸先側支持部22から扉体3の戸尻部3a2までの範囲に侵入するおそれがある。そのような場合でも、戸先側支持部22から扉体3の戸尻部3a2までの範囲には、防護板24の防護面24bが扉体3から軌道側に離間して配置されているため、防護面24bが当該乗客に接触して車両Cの内部へ押し戻すことにより、この範囲への侵入を防ぐことが可能である。
【0053】
また、図5に示されるように、車両CがプラットホームPの正規の位置(図4参照)から距離Sだけ当該図5の右方向へずれた位置に停車して、車両Cの乗降口C3がプラットホームドア装置1の開口部5の範囲からはみ出る場合がある。そのような場合、扉体3が閉まっているときに乗客が車両Cの内部から扉体3の戸尻部3a2よりも開方向側の範囲(例えば、図5の空間部34)に侵入しようとするおそれがある。そのような場合でも、防護面24bの戸尻部3a2側の端部29が扉体3の戸尻部3a2よりも開方向の側に突出しているため、当該端部29が乗客に接触して扉体3の戸尻部3a2よりも開方向側の範囲への侵入を防ぐことが可能である。
【0054】
(特徴)
(1)
本実施形態のプラットホームドア装置1では、扉体3の戸先部3a1から軌道側に突出している戸先側支持部22よりも扉体3の戸尻部3a2の側において、防護板24の軌道に面する側の面である防護面24bが扉体3から軌道側に離間して配置されている。そのため、扉体3が閉まっているときに車両Cの内部から戸先側支持部22の背面側、すなわち、戸先側支持部22から扉体3の戸尻部3a2までの範囲に侵入しようとする乗客がいても、防護面24bが当該乗客に接触することにより、この範囲への侵入を防ぐことが可能である。しかも、防護体21がこの範囲への侵入を防ぐことによって、扉体3を車両C側へ張り出した形状に変更する必要がなくなるので、既存の平板状の扉体を採用することが可能である。そのため、プラットホームドア装置1の扉体3の構造が複雑になることを回避し、プラットホームドア装置1の製造コストの増大を抑えることが可能になる。
【0055】
また、扉体3が閉じるときには、戸先側支持部22は、車両Cに乗ることができずにプラットホームP上に取り残された乗客に接触して、検知部としての機能を発揮するので、当該乗客を検知することが可能である。
【0056】
さらに、車両Cの車両ドアC2に挟まっている乗客が、扉体3が閉まるときに戸先側支持部22をまたいで戸先側支持部22の背面側(すなわち、戸先側支持部22から扉体3の戸尻部3a2までの範囲)に乗り越えようとしても、戸先側支持部22の背面側に位置する防護板24が乗客に干渉することにより、戸先側支持部22を乗り越えることを防止できる。
【0057】
しかも、車両ドアC2に挟まっている小柄な乗客(幼児など)が、扉体3が閉まるときに戸先側支持部22と車両Cとの隙間をすり抜けて戸先側支持部22の背面側へ移動しようとしても、戸先側支持部22の背面側に位置する防護板24が乗客に干渉することにより、戸先側支持部22の背面側への移動を防止できる。
【0058】
(2)
本実施形態のプラットホームドア装置1では、防護面24bは、戸先側支持部22から扉体3の戸尻部3a2側の少なくとも車両Cの乗降口C3に対向する範囲を覆う。そのため、防護板24の防護面24bは、戸先側支持部22から扉体3の戸尻部3a2側の少なくとも車両Cの乗降口C3に対向する範囲Y1に侵入しようとする乗客と確実に接触することが可能である。しかも、防護板24の防護面24bは乗客に対して広い範囲で面接触することが可能であり、乗客に対する衝撃などが小さく、安全性が向上する。
【0059】
(3)
本実施形態のプラットホームドア装置1では、防護面24bは、プラットホームPの床面P1から100mm以上の高さの位置に設けられている。防護面24bとプラットホームPの床面P1との間に乗客の足先を入れる隙間30を確保することが可能になる。そのため、車両C内部の乗客の足先がプラットホームP側にはみ出した場合に、当該隙間30に足先を入れることができるため、乗客の安全性が向上する。
【0060】
(4)
本実施形態のプラットホームドア装置1では、防護面24bは、プラットホームPの床面P1から1500mm以下の高さの位置に設けられている。そのため、防護面24bが扉体3を覆うことによる圧迫感を低減することが可能である。とくに、防護面24bが乗客の目の高さ近くまで扉体3を覆えば圧迫感が大きくなりやすいので、上記のような高さの位置に防護板24を設けることにより圧迫感の低減効果が高くなる。
【0061】
(5)
本実施形態のプラットホームドア装置1では、防護面24bの戸尻部3a2側の端部29は、扉体3の戸尻部3a2よりも開方向の側に突出している。そのため、車両CがプラットホームPの正規の位置からずれた位置に停車して、車両Cの乗降口C3がプラットホームドア装置1の開口部5の範囲からはみ出ている場合でも、車両Cが扉体3が閉まっているときに車両Cの内部から扉体3の戸尻部3a2よりも開方向の側の範囲に侵入しようとする乗客が防護面24bの戸尻部3a2側の端部29に接触することにより、当該範囲への侵入を防ぐことが可能である。
【0062】
(6)
本実施形態の防護体21は、プラットホームドア装置1の扉体3に取り付けられることによって、扉体3が閉まっているときに車両Cの内部から戸先側支持部22の背面側に乗客が取り残される問題を解決できるので、扉体3を車両C側へ張り出した形状に変更する必要がなくなる。そのため、既存の平板状の扉体3を採用することができる。したがって、扉体3を特殊な形状のドアに変更する必要がないので、既存の扉体と上記の防護体21とを組み合わせることにより、プラットホームドア装置を安価に製造することが可能である。
【0063】
(変形例)
上記実施形態では、防護板24の防護面24bが戸先側支持部22から扉体3の戸尻部3a2までの範囲を覆っているが、本発明はこれに限定されるものではない。防護面24bは、戸先側支持部22から扉体3の戸尻部3a2の側において少なくとも車両Cの乗降口C3に対向する範囲を覆うように配置されていればよい。その場合であっても、戸先側支持部22の背面側(開方向側)の領域への乗客の侵入を防ぐことが可能である。
【0064】
また、上記実施形態では、本発明の防護面の一例として、防護面24bが防護板24の軌道側を向く面によって構成されている例が説明されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、検知部より前記扉体の戸尻側において扉体から軌道側に離間して配置する防護面を有していれば、種々の形状の態様の防護面を採用することが可能である。例えば、扉体から軌道側に離間する位置で水平方向に延びる複数本の棒状の部材によって本発明の防護面を構成してもよい。その場合、複数本の棒状の部材のそれぞれの軌道側を向く部分において1つの共通する面に同時に接触可能な部分によって、防護面が構成される。
【0065】
また、本発明の防護面が形成された部材は、上記のような板状体である防護板だけでなく、防護面から扉体までの領域が樹脂などで詰まっている形状のブロック状の部材を採用することも可能である。
【0066】
また、本実施形態では、防護面24bの戸尻側の端部29は、扉体3の戸尻部3a2よりも開方向の側に突出しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、開方向の側に突出していなくてもよい。また、上記実施形態では、防護面24bは、防護板24の軌道側を向く面のみによって構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、防護板と他の部材とが連結された場合には、防護板および他の部材のそれぞれ軌道側を向く面によって、防護面が構成されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 プラットホームドア装置
2 固定パネル
3 扉体
3a1 戸先部
3a2 戸尻部
21 プラットホームドア用防護体
22 戸先側支持部(検知部)
24 防護板
24b 防護面
29 端部
C 車両
C3 乗降口
P プラットホーム
P1 床面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7