(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載のトロッコには、制動装置が装備されていなかった。従って、走行時も駐車時もトロッコにブレーキをかけることができないという欠点があった。
【0005】
一般的に、軌道走行用モーターカーには、減圧弁ブレーキが装備されており、モーターカーに連結するためのトロッコには、入れ替えブレーキ弁の操作によってエアーブレーキをかけることが可能である。軌道走行用モータカーとの連結が切り離された場合には、減圧弁が働き、非常停止ブレーキがかかる。しかし、軌陸車には、軌道走行用モーターカーのようなエアーブレーキを装備していない。この為、軌陸車にモータカー連結用のトロッコを連結したとしても、トロッコのエアーブレーキを操作することはできなかった。従って、走行時に軌陸車と連動してトロッコにブレーキをかけることも、駐車ブレーキをかけることもできなかった。軌陸車の中には、エアーコンプレッサを搭載している車両もあるが、エアーの吐出量が少ない為、トロッコのエアーブレーキを制御するには不十分であった。また、軌陸車には、スリップリングに空き端子が無い為、トロッコのブレーキ制御用に新たな電気配線を追加することは不可能であった。
【0006】
そこで、本発明は、軌陸車との連結を切り離した際に自動的にブレーキをかけて逸走を防止する軌陸車連結用トロッコを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る軌陸車連結用トロッコは、軌道走行用車輪と道路走行用車輪を有する軌陸車に連結される軌陸車連結用トロッコに於て、
揺動アームを揺動させることで4つの車輪を制動するブレーキリンク機構と、該ブレーキリンク機構を作動させるように常時弾発付勢力を付与する弾発部材と、上記軌陸車からエアーが供給されるエアー配管と、上記揺動アームにロッドが連結され上記エアー配管からエアーの供給を受けて作動するブレーキ解除用シリンダと、上記エアー配管に介装され上記軌陸車からの電気信号により上記シリンダを作動状態と非作動状態に切換える電磁弁と、を備える制動装置が設けられ、走行状態で、上記シリンダに上記エアーを供給してブレーキを解除し、かつ、上記軌陸車にブレーキをかけることで上記電磁弁に電気信号を伝達し上記シリンダを非作動状態に切換えて上記弾発付勢力によるブレーキを作動させ、さらに、上記軌陸車との連結が切り離された切離状態で
は、上記シリンダを非作動状態として、上記弾発付勢力によって自動的にブレーキをかけるように構成されたものである。
【0008】
また、上記弾発部材は、上記揺動アームに枢結された弾発力伝達用レバーに連結されているものである。
また、上記電磁弁は、上記軌陸車のブレーキランプを点灯させるための電気配線に接続され、上記軌陸車からのブレーキランプ点灯用電気信号を受けて上記シリンダへのエアーの供給を閉止して非作動状態に切換えるように構成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の軌陸車連結用トロッコによれば、軌陸車との連結を切り離した際に、弾発部材の弾発付勢力により確実にブレーキをかけて、逸走を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1に示すように、本発明の軌陸車連結用トロッコTは、荷受台枠1に4つの車輪2,2が取着され、軌陸車Zに牽引されて、車輪2,2をレールR上で転動させて走行する。軌陸車Zには、複数台のトロッコT,Tが連結杆20,20を介して連結され、電柱やレール等の長尺運搬対象物Xを積載して運搬するのに好適である。
軌陸車Zは、軌道走行用車輪4,4と道路走行用車輪5,5を有し、軌道走行時は油圧シリンダ等の昇降手段Y,YによりレールR上に軌道走行用車輪4,4を降ろして走行する。なお、図示省略するが、軌陸車Zの進行方向前方にトロッコTを連結して推進しても良い。
【0012】
図2と
図3に示すように、本発明の軌陸車連結用トロッコは、弾発部材8の弾発付勢力Fによりブレーキを作動させる制動装置9を備えている。
制動装置9は、(第1)揺動アーム10を揺動させることで4つの車輪2,2,2,2を制動するブレーキリンク機構15を備えている。
ブレーキリンク機構15は、第1揺動アーム10と、第2揺動アーム12とを有し、第1揺動アーム10と第2揺動アーム12の長手方向中間位置にターンバックル14が枢着され、第1揺動アーム10と第2揺動アーム12は互いに力を伝え合いながら揺動するように連結されている。第1揺動アーム10と第2揺動アーム12は、その一端に棒状部材40,40が連結されている。
【0013】
図6に示すように、棒状部材40,40は、揺動レバー41,41に連結されており、揺動レバー41,41の固定端は荷受台枠1の固定部に枢着され、かつ、自由端は制輪子圧棒42,42に連結されている。
図2に示すように、各制輪子圧棒42の左右両端部には、左右の車輪2,2に摺接して回転を拘束する制輪子(ブレーキシュー)43,43が取着されている。即ち、ブレーキリンク機構15は、第1揺動アーム10・第2揺動アーム12から制輪子圧棒42,42までの連結部品が連動して共働し、4つの車輪2,2,2,2に対し同時に制輪子43,43を押し付けてブレーキをかける。ブレーキリンク機構15は、第1揺動アーム10だけを揺動させても、制輪子43,43を4つの車輪2,2,2,2に均等な押圧力をもって押し付けるように構成されている。
【0014】
図3に示すように、第1揺動アーム10は、シリンダ3のロッド13に連結され、第2揺動アーム12は、シリンダ3の底壁部又は荷受台枠1の固定部に枢着されている。第1揺動アーム10と第2揺動アーム12は、ターンバックル14とシリンダ3の間に配設された引っ張りばね44によって常時内向きに(比較的弱い)弾発力をもって常時弾発付勢されている。シリンダ3は、エアーが供給されるとロッド13を引き込んで、ブレーキを解除する方向に第1揺動アーム10を揺動させる。即ち、シリンダ3は、ブレーキを解除するために設けられている。
第1揺動アーム10には、その外側を囲むように弾発力伝達用レバー11が取付けられ、弾発力伝達用レバー11の長手方向中間位置と第1揺動アーム10のロッド13の連結部が枢結されている。弾発力伝達用レバー11は、荷受台枠1の枢支部25に連結板24を介して一端部が枢着され、かつ、他端部近傍に弾発部材8と後述の手動制動解除手段30が連結されている。弾発力伝達用レバー11には、弾発部材8により弾発付勢力Fが付与され、シリンダ3が非作動状態である時は、第1揺動アーム10を揺動させて、ブレーキリンク機構15を作動させる。弾発部材8が第1揺動アーム10に直接に弾発付勢力Fを付与することなく、弾発力伝達用レバー11を介して第1揺動アーム10を揺動させるように構成されており、ブレーキ作動時以外は、第1揺動アーム10に弾発付勢力Fの荷重が掛からない。この構成により、前後の車輪2,2,2,2でのブレーキ力の不均衡や制輪子43,43の開きの不均衡を抑制している。また、ブレーキの調整も容易となる。
【0015】
図4に示すように、弾発部材8は、上下一対のガススプリング8A,8Aから成る。ガススプリング8A,8Aは、ロッドの先端部が、ダンパーサポート29を介して弾発力伝達用レバー11の他端部近傍に連結され、シリンダの底壁部が、プッシュレバー27に枢着されている。プッシュレバー27は、レバー枢支軸26に枢着されると共にプッシュボルト28によってその揺動が係止されている。ガススプリング8A,8Aは、弾発力伝達用レバー11に常時弾発付勢力Fを付与しており、プッシュボルト28によってプッシュレバー27の位置を変更することで、弾発付勢力Fの大きさを容易に調整できる。また、プッシュボルト28を緩めることで、ガススプリング8A,8Aを容易に着脱でき、簡単に交換できるように取付けられている。
【0016】
さらに、本発明の軌陸車連結用トロッコは、荷受台枠1の前後に取付けたカプラ22,22と連結杆20,20のエアーホースを介して、軌陸車Zのエアー配管に連結され、軌陸車Zから低圧(0.5MPa程度)のエアー(圧縮空気)が供給されている。なお、軌陸車Zのエアー供給口に圧力調整用レギュレータを設けるも好ましい。また、荷受台枠1の前後にコネクタを有し、軌陸車Zの電気配線に接続することにより、軌陸車Zから電気信号を受けるよう構成されている。
図2に示すように、本発明の軌陸車連結用トロッコには、軌陸車Zからのエアーをシリンダ3に供給するように配設されるエアー配管6と、エアー配管6に介装され軌陸車Zからの電気信号によりシリンダ3を作動状態と非作動状態に切換える電磁弁7と、を備えている。
図2、及び、
図7〜
図10に示すように、エアー配管6は、シリンダ3と電磁弁7の間に切換弁16を有し、電磁弁7を迂回してシリンダ3にエアーを供給できるように構成されている。また、エアー配管6は、塵濾装置17と開閉弁18を有し、前後のカプラ22,22の近傍にも開閉弁19,19を配設している。
【0017】
図2と
図3に示すように、荷受台枠1の側面には、ブレーキ開放表示灯21,21が設けられている。電磁弁7及びブレーキ開放表示灯21,21は、軌陸車Zのブレーキランプを点灯させるための既設の電気配線に接続されている。
電磁弁7は、
図8に示すように、軌陸車Zからのブレーキランプ点灯用電気信号を受けることで、シリンダ3へのエアーの供給を閉止して非作動状態に切換えるように構成されている。ブレーキ開放表示灯21,21は、
図7に示すように、シリンダ3が作動状態であって、弾発付勢力Fによるブレーキが解除(開放)されている時には緑色に点灯し、
図8のように、シリンダ3が非作動状態となり、弾発付勢力Fによるブレーキがかかっている時には消灯するように構成されている。
【0018】
図3と
図5に示すように、本発明の軌陸車連結用トロッコは、手動制動解除手段30を備えている。
手動制動解除手段30は、荷受台枠1の一側端縁部に設けられた固定部35に揺動自在に枢着された揺動部材32と、弾発力伝達用レバー11にユニバーサルジョイント(自在継手)34を介して連結されると共に揺動部材32に枢着されるターンバックル33とを、有し、揺動部材32の差込軸32aに差込んで着脱自在の手動レバー31を備えている。手動レバー31は、非使用時は、荷受台枠1の側面に設けられた係止部36に係止して収納されている。揺動部材32は、弾発力伝達用レバー11に連動して揺動し、ブレーキが解除(開放)されている時は、
図5のように後方に傾倒している。また、揺動部材32の揺動を規制するためのロックピン37が備え付けられており、揺動部材32にはロックピン37を差込可能な孔部38が設けられている。
【0019】
上述した本発明の軌陸車連結用トロッコの使用方法(作用)について説明する。
図7に示すように、軌陸車Zと連結されて走行する走行状態に於て、軌陸車Zからエアー配管6にエアーが供給され、かつ、軌陸車Zの電源から電磁弁7に電力が供給されてシリンダ3へのエアー供給を開放する(電磁弁7がONとなる)。シリンダ3にエアーを供給して作動状態とすることで、揺動アーム10にブレーキ開放力Pを付与しつつロッド13を引き込んで、弾発付勢力Fに抗してブレーキを解除する。なお、電磁弁7がONとなって、ブレーキが解除(開放)されている際には、ブレーキ開放表示灯21,21は緑色に点灯する。
【0020】
図8に示すように、軌陸車Zにブレーキ(フットブレーキ)をかけると、軌陸車Zがブレーキランプを点灯させ、このブレーキランプ点灯用電気信号が電磁弁7及びブレーキ開放表示灯21,21に伝達される。電磁弁7は、当該電気信号を受けてシリンダ3へのエアー供給を閉止する(電磁弁7がOFFとなる)。この際、弾発付勢力Fによってシリンダ3のロッド13が引き出されてエアーが抜けると共に、揺動アーム10が揺動し、ブレーキリンク機構15の作用により4つの車輪2,2,2,2を制動し、ブレーキをかける。この際、ブレーキ開放表示灯21,21は消灯する。なお、軌陸車Zに駐車ブレーキをかけた場合にも、軌陸車Zから電磁弁7に同様の電気信号が伝達されるため、駐車時にも弾発付勢力Fによるブレーキをかけることが可能となる。
軌陸車Zのブレーキを解除すると、
図8から
図7のように、軌陸車Zのブレーキランプが消灯し、電磁弁7がONとなる。電磁弁7がONとなると、エアー配管6からシリンダ3にエアーが供給され、ブレーキを解除する。
【0021】
次に、
図9に示すように、軌陸車Zとの連結を切り離した切離状態に於て、軌陸車Zとの電気的接続が切断されて電気信号が得られなくなり、軌陸車Zからのエアー供給を受けられなくなることから、電磁弁7はOFFで、シリンダ3は非作動状態となり、弾発付勢力Fによるブレーキを自動的に作動させて逸走を防止する。
【0022】
例えば、軌陸車Zから電気信号が得られない場合や、故障により電磁弁7をONにできないような状況では、
図10のように、軌陸車Zからエアー配管6にエアーを供給し、かつ、切換弁16により電磁弁7を迂回してシリンダ3にエアーを供給して、シリンダ3を作動状態とする。このようにして、電磁弁7はOFFのままで走行時のブレーキ操作が不可能となるが、弾発付勢力Fによるブレーキを解除しての走行が可能となり、軌陸車Zとの連結が切り離されてシリンダ3のエアーが開放された際は、自動的にブレーキが作動し、逸走を防止することができる。
【0023】
さらに、軌陸車Zからエアーの供給が受けられない時には、
図11に示すように、手動レバー31を揺動部材32の差込軸32aに差し込んで、矢印N方向に揺動させる。揺動部材32を後方傾倒状とすることで、揺動部材32に連動して弾発力伝達用レバー11が弾発付勢力Fに抗して揺動し、ブレーキが解除される。そして、ロックピン37を揺動部材32の孔部38に差し込んで係止し、制動解除状態で揺動部材32をロックする。このようにして、手動制動解除手段30によってブレーキを解除しておけば、軌陸車Zからエアーの供給が受けられない時でも走行が可能となる。
【0024】
なお、本発明は、上述した実施形態に於て、
図1に例示したように、軌道走行用車輪4,4と道路走行用車輪5,5を有する軌陸車Zに連結される軌陸車連結用トロッコとして説明したが、これ以外にも、例えば、減圧弁ブレーキを有していない牽引車に連結する場合に非常に有効である。即ち、減圧弁ブレーキを装備する軌道走行用モーターカー以外の牽引車に連結して使用するトロッコとしての転用が可能である。
また、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲での設計変更が可能である。
【0025】
以上のように、本発明に係る軌陸車連結用トロッコは、軌道走行用車輪4,4と道路走行用車輪5,5を有する軌陸車Zに連結される軌陸車連結用トロッコに於て、弾発部材8の弾発付勢力Fによりブレーキを作動させる制動装置9を備え、軌陸車Zとの連結が切り離された切離状態で、弾発付勢力Fによって自動的にブレーキをかけるように構成されたので、軌陸車Zとの連結を切り離した際に、弾発部材8の弾発付勢力Fにより確実にブレーキをかけて、逸走を防止できる。
【0026】
また、軌道走行用車輪4,4と道路走行用車輪5,5を有する軌陸車Zに連結される軌陸車連結用トロッコに於て、揺動アーム10を揺動させることで4つの車輪2,2,2,2を制動するブレーキリンク機構15と、ブレーキリンク機構15を作動させるように常時弾発付勢力Fを付与する弾発部材8と、軌陸車Zからエアーが供給されるエアー配管6と、揺動アーム10にロッド13が連結されエアー配管6からエアーの供給を受けて作動するブレーキ解除用シリンダ3と、エアー配管6に介装され軌陸車Zからの電気信号によりシリンダ3を作動状態と非作動状態に切換える電磁弁7と、を備える制動装置9が設けられ、走行状態で、シリンダ3にエアーを供給してブレーキを解除し、かつ、軌陸車Zにブレーキをかけることで電磁弁7に電気信号を伝達しシリンダ3を非作動状態に切換えて弾発付勢力Fによるブレーキを作動させ、さらに、軌陸車Zとの連結が切り離された切離状態では、シリンダ3を非作動状態として、弾発付勢力Fによって自動的にブレーキをかけるように構成されたので、走行中に軌陸車Zがブレーキをかけると同時に弾発付勢力Fによるブレーキが作動し、制動停止距離を短縮できる。構造がシンプルで軽量であるにもかかわらず、重量の大きい電柱等を積載した場合であっても、信頼性の高いブレーキをかけることができ、安全性を向上できる。また、軌陸車Zとの連結を切り離した際に、弾発部材8の弾発付勢力Fにより確実にブレーキをかけて、逸走を防止できる。
【0027】
また、弾発部材8は、揺動アーム10に枢結された弾発力伝達用レバー11に連結されているので、弾発部材8が揺動アーム10に直接に弾発付勢力Fを付与することなく、弾発力伝達用レバー11を介して揺動アーム10を揺動させることができる。この為、ブレーキ作動時以外は、揺動アーム10に弾発付勢力Fの荷重が掛かることなく、前後の車輪2,2,2,2でのブレーキ力の不均衡や制輪子43,43の開きの不均衡を抑制できる。
【0028】
また、電磁弁7は、軌陸車Zのブレーキランプを点灯させるための電気配線に接続され、軌陸車Zからのブレーキランプ点灯用電気信号を受けてシリンダ3へのエアーの供給を閉止して非作動状態に切換えるように構成されているので、軌陸車Zのブレーキと連動して弾発付勢力Fによるブレーキを作動させることができる。軌陸車Zの運転席にブレーキ制御用の電気配線を増設することは不可能であるが、軌陸車Zがブレーキをかけた時にブレーキランプを点灯させる既設の電気配線を利用して、ブレーキランプ点灯用電気信号を取り出すことで、軌陸車Zのブレーキと連動して電磁弁7を作動させることが可能となる。また、軌陸車Zの駐車ブレーキからも同様の信号が得られることから、駐車時にも弾発付勢力Fによるブレーキをかけることができる。