特許第5909281号(P5909281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909281
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/48 20060101AFI20160412BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20160412BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20160412BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20160412BHJP
   C02F 9/00 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   C02F1/48 B
   C02F1/28 D
   C02F3/12 S
   C02F1/72 Z
   C02F9/00 501B
   C02F9/00 501C
   C02F9/00 502H
   C02F9/00 502M
   C02F9/00 502R
   C02F9/00 503C
   C02F9/00 504A
   C02F9/00 504D
   C02F9/00 502P
   C02F9/00 502Z
   C02F9/00 503A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-527928(P2014-527928)
(86)(22)【出願日】2012年8月3日
(86)【国際出願番号】JP2012069880
(87)【国際公開番号】WO2014020762
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】上村 一秀
(72)【発明者】
【氏名】音在 歩積
(72)【発明者】
【氏名】鴫石 康亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英夫
(72)【発明者】
【氏名】中小路 裕
【審査官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−319838(JP,A)
【文献】 特開2001−087767(JP,A)
【文献】 特開平09−174048(JP,A)
【文献】 特開2004−033835(JP,A)
【文献】 特開2011−083666(JP,A)
【文献】 特開2003−088726(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/091500(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44− 1/48
C02F 1/70− 1/78
C02F 1/28
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全有機炭素濃度が100mg/l以下の水が流入して、前記水中に含まれる非電解質の有機物を吸着して除去する活性炭処理部と、
前記活性炭処理部の下流側に、互いに逆極性の電圧が印加される一対の電極、該電極の間に位置し前記水が流通可能とされる流通路、及び、各々の前記電極の前記流通路側に設置されるイオン交換膜を備え、電圧が印加された前記電極の間を前記水が流通する際に前記水中に含まれるイオンが前記電極に吸着されて前記水から前記イオンが除去されるとともに、前記イオンが吸着されるときと逆電圧が前記電極に印加されて、前記電極から前記イオンが脱離されて前記電極が再生される静電脱塩処理部とを含む水処理装置。
【請求項2】
前記活性炭処理部から、全有機炭素濃度が20mg/l以下の水が排出される請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記活性炭処理部の上流側に、微生物により前記水中の前記有機物を分解除去する生物処理部、及び、前記水中の前記有機物を酸化処理する酸化処理部のうち少なくとも1つを備える請求項1または請求項2に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業排水や河川等から取水した水を浄化処理するための水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントからの工業排水や生活排水中には、油滴状態やエマルジョン状態の油分や、水中にイオンや分子状態として存在する有機物など、多くの有機物が含まれる。有機物を含有する工業排水は、油分の分離や微生物による有機物の分解除去などの浄化処理が施される。浄化処理された処理水は、排水中に含まれるイオン分を除去する脱塩処理が施され、処理水が工業用水として再利用される。また、河川や湖沼等の自然界の水にも有機物が含まれる。自然界から取水した水に対しても、浄化処理が実施される。
【0003】
脱塩処理装置としては、逆浸透膜式脱塩装置や静電脱塩処理装置(例えば特許文献1)などが知られている。
【0004】
逆浸透膜式脱塩装置は、内部に逆浸透膜(RO膜)を有する。逆浸透膜式脱塩装置にイオンを含む水が流入すると、逆浸透膜(RO膜)は水のみを透過させる。逆浸透膜を透過した水(処理水)は、工業用水等として再利用される。逆浸透膜の上流側は逆浸透膜を通過できなかったイオンが蓄積されるので、イオンが濃縮された濃縮水となっている。濃縮水は、逆浸透膜式脱塩装置から排出されることにより、水処理装置1の系外に排出される。
【0005】
逆浸透膜式脱塩装置の場合、流入水に対する処理水の割合を高くすると、濃縮水のスケール成分濃度が飽和溶解度以上になり、結晶性の固形分(スケール)が析出する。スケールとして析出する物質としては、炭酸カルシウム(CaCO3)、石膏(CaSO)やフッ化カルシウム(CaF)などが知られている。例えば、pH7.3で水中の炭酸カルシウム濃度が275mg/lであると、飽和溶解度を超えているためスケールが析出する。しかし、飽和溶解度を超過してから10分など短時間であればスケールは析出せず、1日後など長時間放置するとスケールが析出する。逆浸透膜式脱塩装置では、膜によりイオン成分を連続的に除去するため、高い水回収率の運転では濃縮水側のイオン濃度は常に高く、飽和溶解度以上で長時間(1日以上)保たれる。このため、逆浸透膜式脱塩装置の濃縮水側でスケールが析出する。
【0006】
図4は静電脱塩処理装置の概略図である。静電脱塩処理装置100は、一対の対向する多孔質電極とされる正極101及び負極102と、電極の間を水が流通可能な流通路103とを備える構成とされる。正極101の流通路側面には陰イオン交換膜104が設置され、負極102の流通路側面には陽イオン交換膜105が設置される。
【0007】
静電脱塩処理装置100による脱塩処理は、以下の工程で実施される。
(脱塩工程)
まず、正極101がプラスに、負極102がマイナスになるように通電される。すなわち、正極101と負極102とは、互いに逆極性の電圧が印加される。通電された電極間の流通路103に水が流通すると、水中のマイナスイオンが陰イオン交換膜104を透過して正極101の多孔部分101aに吸着する。プラスイオンが陽イオン交換膜105を透過して負極102の多孔部分102aに吸着する(図4(a))。イオンが除去された水は、処理水として再利用等に供される。
【0008】
(再生工程)
所定時間経過後、正極101がマイナスに、負極102がプラスになるように通電される。すなわち、電極にイオンが吸着するときと逆の電圧が正極101及び負極102に印加される。こうすることにより、吸着されたイオンが正極101及び負極102から放出され、流通路103に戻る(図4(b))。
【0009】
放出されたイオンが流通路103に十分蓄積された後、あるいはイオンが放出されると同時に、流通路103に水が供給される。こうすることにより、イオンを含む水が流通路103から排出され、正極101及び負極102は、イオンが吸着されていない状態に再生される(図4(c))。排出された水は、濃縮水として回収される。
【0010】
上記再生工程で飽和溶解度を超過しても、例えば再生工程が10分以内と短時間であれば、スケール析出前に脱塩工程が始まり、飽和溶解度未満となってスケール析出が防止される。この特性により、静電脱塩処理装置は、逆浸透膜式脱塩装置に比べて高い水回収率(再利用可能な水の回収率)が得られる点で有利である。
【0011】
静電脱塩処理装置においてより多くのイオンを電極に吸着させるためには、電極表面積が大きいことが望ましい。従って、活性炭のように容積当たりの表面積が大きい炭素を主成分とする多孔性材料が電極として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−70947号公報(段落[0002]、[0011]、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のように油分分離や微生物による処理が行われた水を静電脱塩処理装置で処理した場合、脱塩性能が急激に経時劣化することが判明した。このような劣化は、逆浸透膜式脱塩装置ではほとんど見られない。
【0014】
本発明は、静電脱塩処理装置の電極劣化を抑制し、高い水処理能力を継続させることができる水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、脱塩性能劣化の原因は、一般的な油分分離及び微生物処理により達成できる水質であっても、静電脱塩処理に適用するには有機物の除去が十分ではないことであると考えた。
水中に残留した有機物にはイオン状態で存在する物と分子として存在する物とがある。例えば、酢酸、ギ酸などの電解質の有機物や、フェノール、ベンゼン等の非電解質の有機物等が水に含まれる。また、自然界の水にはフミン酸などが含まれる。有機物イオンは、図4(a)のように通電された電極間を通過する際にイオン交換膜を透過して電極表面に吸着する。また、分子状の有機物は拡散によりイオン交換膜を透過し、分子間力によって電極表面に付着する。上述した炭素を主成分とする電極は水処理用活性炭と似た特性を持ち、有機物を不可逆的に吸着する。すなわち、これらの有機物は図4(b)の工程で逆電圧をかけても電極から脱離しにくく、大部分が電極に残留する。有機物が付着した部分は静電脱塩時にイオンを吸着することができないため、電極の有効面積が低下することに繋がる。
【0016】
上記に鑑み、本発明の一態様に係る水処理装置は、全有機炭素濃度が100mg/l以下の水が流入して、前記水中に含まれる非電解質の有機物を吸着して除去する活性炭処理部と、前記活性炭処理部の下流側に、互いに逆極性の電圧が印加される一対の電極、該電極の間に位置し前記水が流通可能とされる流通路、及び、各々の前記電極の前記流通路側に設置されるイオン交換膜を備え、電圧が印加された前記電極の間を前記水が流通する際に前記水中に含まれるイオンが前記電極に吸着されて前記水から前記イオンが除去されるとともに、前記イオンが吸着されるときと逆電圧が前記電極に印加されて、前記電極から前記イオンが脱離されて前記電極が再生される静電脱塩処理部とを含む。
【0017】
水質は、生物化学的酸素要求量(BOD)や化学的酸素要求量(COD)で管理されるのが一般的である。しかし、BODやCODは、有機物の種類により感度が異なるので、水中の有機物の絶対値と必ずしも比例しない。一方、本発明では全有機炭素濃度(TOC)で管理を行う。全有機炭素濃度は、水中の酸化されうる有機物の全量を炭素の量で示した指標であり、水中に含まれる有機物量と良好な相関関係を示す。TOCを指標として用いることにより、処理すべき水の中の有機物量に応じた処理が実施できる。
【0018】
実際の工業排水では、原水の水質によって、生物処理等の処理後の有機物濃度が変動する。工業排水の場合は、TOC1500mg/l程度まで水質が悪化する可能性があると予想される。このように有機物濃度が高い水を通常の生物処理で処理した後の水質は、TOC50〜100mg/lが限度である。
本発明の水処理装置は、静電脱塩処理部の前段に活性炭処理部を設置する。活性炭処理部には、全有機炭素濃度が100mg/l以下に有機物含有量が管理された水が流入する。活性炭処理部において水中に含まれる有機物が活性炭に吸着され、水中から除去される。活性炭処理部による処理では、活性炭処理部に挿入される水の水質に依らずに、処理後の水中に含まれる有機物含有量を、極めて低い値に安定して低減することができる。このため、活性炭処理部で処理された水を静電脱塩処理部で処理すると、電極に付着する有機物量を大幅に低減することができ、電極のイオン吸着面積の低下を抑制することができる。この結果、静電脱塩処理部の電極寿命を延ばすことができ、長期間良好な脱塩処理性能を維持することができる。
【0019】
自然界から取水した水は工業排水に比べて有機物量は少ないが、長期的には静電脱塩処理部の性能を低下させることが懸念される。上述のように、本発明の水処理装置は水中に有機物量を極めて低い値に安定して低減することができるので、自然界から取水した水を処理する場合でも長期間高い処理性能を維持することが可能となる。
【0020】
上記発明において、前記活性炭処理部から、全有機炭素濃度が20mg/l以下の水が排出されると、静電脱塩処理部に送給される有機物量が非常に低くなるので、より脱塩処理性能の低下を抑制することができるため好ましい。
【0021】
上記発明において、前記活性炭処理部の上流側に、微生物により前記水中の前記有機物を分解除去する生物処理部、及び、前記水中の前記有機物を酸化処理する酸化処理部のうち少なくとも1つを備えることが好ましい。
【0022】
特にプラントからの排水や生活排水を処理する場合、原水には多量の有機物が含まれる。このため、生物処理部及び酸化処理部を活性炭処理部の上流に設置し、全有機炭素濃度100mg/l以下を達成する前処理を実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の水処理装置は、静電脱塩処理部の前段に活性炭処理部を配置して、全有機炭素濃度を低減させた水を静電脱塩処理部に供給することにより、脱塩処理部の電極への有機物付着量を大幅に低減させることができる。この結果、電極のイオン吸着面積の低下を抑制して脱塩性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】水処理装置の一例のブロック図である。
図2】水処理装置の脱塩部の一例を説明する概略図である。
図3】有機物含有量が異なる水を静電脱塩処理した場合の電極の有効容量の経時変化を表すグラフである。
図4】静電脱塩処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、水処理装置の一例のブロック図である。水処理装置1は、上流側から前処理部2、及び、脱塩部3を備える。前処理部2は、生物処理により有機物を分解する生物処理部、酸化処理により有機物を分解する酸化処理部、及び、これらの組み合わせのいずれかとされる。
プラントからの排水や生活排水を処理する場合、前処理部2は、排水中の油分を分離するオイルセパレータ、重金属や浮遊粒子を凝集沈殿させる分離部を備える。オイルセパレータ及び分離部は、生物処理部の上流側に設置される。河川等の自然界から取水した水を処理する場合は、オイルセパレータや分離部は省略しても良い。
【0026】
生物処理部は、水中の有機物を微生物により分解処理する。生物処理部は、膜分離活性汚泥法を用いた処理装置(MBR:Membrane Bio−Reactor)、生物膜法を用いた処理装置(BFR:Bio−Film Reactor)、曝気槽と沈殿槽とを組み合わせた構成などとされる。生物処理部は、MBRとBFRとを組み合わせた構成とされても良い。曝気槽と沈殿槽とを組み合わせた構成の場合は、脱塩部3の脱塩装置での閉塞を防止するために、沈殿槽の後にフィルタ等のろ過装置が設けられる。
【0027】
MBRは、0.1μm程度の孔を有する膜が生物反応槽中の水に浸漬される。生物反応槽中の水に微生物が存在し、微生物が水中の有機物を分解する。生物反応槽中の汚泥処理に役立つ微生物は、最小で0.25μm程度である。従って、生物反応槽中の水は、上記膜により水と微生物とに固液分離され、水のみがMBRから排出される。
【0028】
BFRでは、表面に微生物の膜が形成された支持体が内部に設置される。支持体表面の微生物が有機物を含む水と接触した時に、微生物が水中の有機物を分解処理する。
【0029】
MBRとBFRとを組み合わせた構成の場合には、水中の有機物量(COD)に応じて、MBR及びBFRの運転が制御される。例えば、水中のCODが低い場合にはMBRのみを運転する。CODの変動が大きくなった場合には、MBRと並行してBFRを稼働させる。
【0030】
酸化処理部は、有機物を酸化し分解することによって水中から除去する。本実施形態の水処理装置では、酸化処理方法としてオゾン処理、紫外線処理、次亜塩素酸ソーダ処理、過酸化水素処理が採用される。上記処理は単独で実施されても良いし、複数組み合わせて処理が行われても良い。
【0031】
酸化処理部は、活性炭処理部10の上流側に設置される。
オゾン処理の場合、オゾン発生器により生成されたオゾンは酸化処理部に供給される。酸化処理部を通過する水中の有機物がオゾンにより酸化分解される。
【0032】
紫外線処理の場合、紫外線ランプが酸化処理部に設置される。酸化処理部を通過する水に紫外線が照射され、紫外線により有機物が酸化分解される。
【0033】
次亜塩素酸ソーダ処理の場合、次亜塩素酸ソーダが酸化処理部に供給される。酸化処理部を通過する水中の有機物が次亜塩素酸ソーダにより酸化分解される。
【0034】
過酸化水素処理の場合、過酸化水素が酸化処理部に供給される。酸化処理部を通過する有機物が過酸化水素により酸化分解される。
【0035】
図2は、水処理装置の脱塩部3の一実施形態を説明する概略図である。
脱塩部3は、活性炭処理部10と静電脱塩処理部100とを備える。脱塩部3は、逆浸透膜式脱塩装置を更に有しても良い。
【0036】
活性炭処理部10は、内部に活性炭が充填された充填槽11を収容する。本実施形態で使用される活性炭は、水処理用活性炭とされる。生物処理部から送給される水は、活性炭処理部10の上部から内部に供給され、充填槽11を透過して活性炭処理部10の下部から排出される。
【0037】
本実施形態において、静電脱塩処理部100は図4の静電脱塩処理装置と同じ構成とされる。静電脱塩処理部100は、活性炭処理部10の下流に1つまたは複数設置される。図2に示すように、多くの場合は複数の静電脱塩処理部100は水の流通に対して並列となるように配置されるが、複数の静電脱塩処理部100を直列に配置、または、直列と並列とを組み合わせた配置としても良い。
【0038】
脱塩部3は、活性炭処理部10の上流側に、生物処理部からの水を一時的に貯留し、所定量の水を静電脱塩処理部100に送給するタンク(不図示)を備えていても良い。
【0039】
脱塩部3の活性炭処理部10の上流側、及び、活性炭処理部10と静電脱塩処理部100との間に、水中の全有機炭素濃度(TOC)を計測する有機物量計測部12,13がそれぞれ設置される。
【0040】
上記の水処理装置を用いて水処理を行う工程を以下で説明する。以下では、水処理装置にオイルセパレータ及び分離部が設置されて工業排水を処理する場合を例に挙げて説明する。
前処理部2は、原水(排水)を受け入れる。プラントからの排水や生活排水の場合、有機成分として油滴やエマルジョン状態の油分の他、水中に分子状態やイオンとして存在する有機物(酢酸、ギ酸、フェノールなど)が含まれる。
【0041】
オイルセパレータは原水中の油分を除去する。分離部は、排水中にキレート化剤を投入して重金属類をキレート化して不溶化させる。分離部は、排水中に凝集剤を投入して、重金属類キレートや浮遊粒子などを凝集させた後、沈殿させることにより、重金属類及び浮遊粒子を排水から除去する。
【0042】
生物処理部を設ける構成とした場合、油分、重金属類及び浮遊粒子が除去された排水が生物処理部に送給される。生物処理部において、上述した酢酸、ギ酸、フミン酸、フェノール等の有機物が分解される。
【0043】
酸化処理部を設ける構成とした場合、排水に紫外線照射が実施される。あるいは、オゾンを含む水、次亜塩素酸ソーダ水、及び過酸化水素水が排水中に供給される。これにより、上述した酢酸、ギ酸、フミン酸、フェノール等の有機物が酸化されて分解される。
【0044】
有機物量計測部12は、活性炭処理部10での処理前の排水中のTOCを計測する。TOCはオンライン計器で計測する方法と、採水して分析する方法とがある。本実施形態において、生物処理等の前処理の結果、活性炭処理部10に流入する前の水中のTOCが100mg/l以下となっている。
【0045】
TOC100mg/l以下の排水は、脱塩部3の活性炭処理部10に流入する。活性炭処理部10の充填槽11を排水が通過する間に、排水に残留していた上述した酢酸、ギ酸、フミン酸、フェノール等の有機物が活性炭表面に吸着されて除去される。活性炭処理部10での処理後の水のTOCは、処理前のTOCに対して1/3〜1/5程度に低減される。
有機物量計測部13は、活性炭処理部10での処理後の排水中の全有機炭素濃度を計測する。本実施形態において、活性炭処理部10での処理後の水中のTOCは、20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下とされる。
【0046】
活性炭処理部10から排出された排水は、静電脱塩処理部100に送給される。静電脱塩処理部100において、図4で説明される脱塩処理が実施される。脱塩処理により、流通路103に貯留された水が高濃度のイオンを含む濃縮水として静電脱塩処理部100から排出されて回収される。正極101及び負極102はイオンが吸着していない状態に再生される。
【0047】
図3は、有機物含有量が異なる水を同じ条件で静電脱塩処理した場合の電極の有効容量の経時変化を表すグラフである。同図において、横軸は経過日数、縦軸は有効容量である。有効容量とは、使用前の電極の有効容量を100%としたときの電極に吸着できるイオンの割合で定義される。
図3において、有機物量Aは、静電脱塩処理部に流入する水中のTOCが10mg/l、有機物量BはTOCが20mg/lの場合である。有機物量C,Dは、TOCが20mg/lを超える場合であり、有機物量Dの方が有機物量CよりもTOCが高い。
【0048】
図3に示すように、有機物量C,Dの場合は有効容量の低下が急激であり、短時間で脱塩処理能力が低下することが理解できる。すなわち、静電脱塩処理部に流入する水中の有機物量が多い場合には、高い処理性能を維持するためには短いサイクルでの電極メンテナンス等が必要になり、処理効率が低下する。
一方、有機物量A,Bの場合は有効容量の低下が緩やかである。この結果から、静電脱塩処理部の上流側に活性炭処理部を設け、活性炭処理部での処理により水中のTOCを20mg/l以下に低減させてから静電脱塩処理を行えば、静電脱塩処理部の電極の有効なイオン吸着面積の低下が抑制され、高い水処理能力を長期間継続可能であることが理解できる。
【符号の説明】
【0049】
1 水処理装置
2 前処理部
3 脱塩部
10 活性炭処理部
11 充填
12,13 有機物量計測部
100 静電脱塩処理部
101 正極
102 負極
103 流通路
104 陰イオン交換膜
105 陽イオン交換膜
図1
図2
図3
図4