(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909287
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】チューブ充填装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A24C 5/02 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
A24C5/02
【請求項の数】32
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-542855(P2014-542855)
(86)(22)【出願日】2012年11月23日
(65)【公表番号】特表2014-533515(P2014-533515A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2012073484
(87)【国際公開番号】WO2013076254
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】11190629.3
(32)【優先日】2011年11月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510014582
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】JT International S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】キスリング,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】プライジック,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ステファン
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許出願公開第00384663(FR,A1)
【文献】
米国特許第03822710(US,A)
【文献】
米国特許第06739343(US,B1)
【文献】
米国特許第05749378(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00387040(EP,A1)
【文献】
米国特許第03721247(US,A)
【文献】
米国特許第04534367(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02113177(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24C 5/00 − 5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙材のポーションをケーシングから喫煙チューブへ詰め替える方法であって、
該ケーシングと該ポーションとを前記喫煙チューブ内へ、前記喫煙チューブ内空間の長さよりも短い第1の距離分だけ前進させる工程と、
前記第1の距離分だけ前進した前記ポーションを前記ケーシングに対して相対的に前進させることにより前記ポーションを前記ケーシングから前記喫煙チューブ内へ少なくとも部分的に排出する工程と、
以下の(1)または(2)の工程;
(1)前記少なくとも部分的に排出された前記ポーションを前記喫煙チューブ内に保持させた状態で前記ケーシングを前記喫煙チューブから少なくとも部分的に引き抜き、前記ケーシングが少なくとも部分的に引き抜かれた後で、前記喫煙チューブ内に前記ポーションをさらに押し込む工程、
(2)前記少なくとも部分的に排出された前記ポーションを前記喫煙チューブ内に保持させた状態で前記ケーシングを前記喫煙チューブから少なくとも部分的に引き抜く間に、前記喫煙チューブ内に前記ポーションをさらに押し込む工程、
と、を有する方法。
【請求項2】
喫煙材のポーションをケーシングから喫煙チューブへ詰め替えることにより喫煙品を生産する方法であって、
該ケーシングと該ポーションとを前記喫煙チューブ内へ前進させ、さらに前記ポーションを前記ケーシングに対して相対的に前進させることにより該ポーションの遠端を該喫煙チューブの閉鎖端へ押しやる工程と、
以下の(1)または(2)の工程;
(1)前記遠端が前記閉鎖端へ押しやられた前記ポーションを前記喫煙チューブ内に保持させた状態で前記ケーシングを前記喫煙チューブから少なくとも部分的に引き抜き、前記ケーシングが少なくとも部分的に引き抜かれた後で、前記喫煙チューブに向けて前記ポーションをさらに押し込むことにより前記喫煙チューブを前記ケーシングから離脱させる工程、
(2)前記遠端が前記閉鎖端へ押しやられた前記ポーションを前記喫煙チューブ内に保持させた状態で前記ケーシングを前記喫煙チューブから少なくとも部分的に引き抜く間に、前記喫煙チューブに向けて前記ポーションをさらに押し込むことにより前記喫煙チューブを前記ケーシングから離脱させる工程、
と、を有する方法。
【請求項3】
前記ケーシングは、喫煙材の前記ポーションと該ケーシングとを有する消耗品の分割体である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ケーシングと喫煙材の前記ポーションとを喫煙チューブ内へ第1の距離分だけ変位させる工程では、該ポーションと該喫煙チューブの閉鎖端との間に隙間を残す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の距離は、挿入前の前記ポーションの縦方向長さよりも短い、請求項1または4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の距離が、
前記ポーションの長さの約10分の9、又は
前記ポーションの長さの約5分の4、又は
前記ポーションの長さの約4分の3、又は
前記ポーションの長さの約半分、又は
前記ポーションの長さの約4分の1、又は
前記ポーションの長さの約10%
よりも短い、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ケーシング内の前記ポーションの変位は、チューブ充填装置のポーション押込具を用いて行われる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ケーシングはチューブ充填装置に係合されて該ケーシングを変位させるように成された、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ケーシングが、前記チューブ充填装置に係合されるように配設されたアダプタを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記チューブ充填装置は、該チューブ充填装置が前記ケーシングを長手方向に変位させ得るように、該ケーシングを係合する可動式ケーシング係合手段を有する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記喫煙チューブの開放端にチューブ端アダプタ手段が設けられている、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記チューブ端アダプタが複数の可撓性部材を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記チューブ端アダプタが実質的に円錐台状の部材である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記チューブ端アダプタが複数の先細りの部材からなり、各部材は上記喫煙チューブの外側に位置し該喫煙チューブよりも大きな直径を有する第1の端部と、該喫煙チューブの端部又はその内側に位置する第2の端部とを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ポーションと前記喫煙チューブとを、該ポーションの一端を押すことにより変位させる工程をさらに有する、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポーションと前記喫煙チューブとを、該喫煙チューブが停止端に突き当たるまで変位させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記喫煙チューブが前記ケーシングの外側から離脱するまで前記ポーションの一端側を押すことにより、前記ポーションと前記喫煙チューブとを変位させる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記ケーシングを引き抜く間、前記チューブ充填装置のチューブ保持部により前記喫煙チューブを定位置に保持する、請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ポーションを前記喫煙チューブ内に一旦移した後、前記ケーシングを部分的に引き抜くことにより該喫煙チューブ内の該ポーションの第1の部分が前記ケーシングの内部になく、該喫煙チューブ内の該ポーションの第2の部分が該ケーシングの内部に残り、該喫煙チューブの一部が該ケーシングの一端部を被覆するようになされる、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ポーションを前記喫煙チューブの閉鎖端まで押しやることにより該喫煙チューブを該ケーシングから離脱させる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記喫煙チューブ内へ詰め替えられる前の前記ポーションの長さが該喫煙チューブ内の空洞の長さよりも長い、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記喫煙チューブの長さを測定する工程と、
前記ポーションの端部を押しやるべき最適終端位置を算出する工程と、
を有する、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記(1)および前記(2)の工程で前記ケーシングを前記喫煙チューブから少なくとも部分的に引き抜く際に、前記ケーシングを部分的に引き抜いて前記ケーシングの一部分を前記喫煙チューブの内部に残す、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ケーシングを引き抜いている間、前記ポーションを前記喫煙チューブに対して実質的に定位置に保持する、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成されたチューブ充填装置。
【請求項26】
喫煙材のポーションをケーシングから喫煙チューブへ詰め替えるチューブ充填装置であって、
充填すべき喫煙チューブを受け入れるチューブ受入エリアと、
前記ポーションを前記ケーシングに対して変位させるポーション変位手段と、
前記ケーシングを係合し変位させるためのケーシング変位手段と、
を有し、
前記ポーション変位手段が前記ケーシング変位手段のケーシング係合手段を作動させるように成されたチューブ充填装置。
【請求項27】
前記ケーシング変位手段と前記ポーション変位手段とは互いに相対的に運動可能である、請求項26に記載のチューブ充填装置。
【請求項28】
前記ケーシング変位手段は前記チューブ受入エリアに対して相対的に運動可能である、請求項26又は27に記載のチューブ充填装置。
【請求項29】
前記ケーシング変位手段と前記ポーション変位手段とは互いに、且つ前記チューブ受入エリアに対して相対的に運動可能である、請求項26から28のいずれか1項に記載のチューブ充填装置。
【請求項30】
前記ケーシング変位手段はケーシング係合手段を有する、請求項26から29のいずれか1項に記載のチューブ充填装置。
【請求項31】
前記ケーシング係合手段が締結手段を有する、請求項30に記載のチューブ充填装置。
【請求項32】
前記ケーシング変位手段は第1の駆動機構により、前記ポーション変位手段は第2の駆動機構により、互いに独立に駆動されるように成された、請求項26から31のいずれか1項に記載のチューブ充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め小分けされポーションケーシングに収められた喫煙材をシガレットチューブに充填する充填装置及び方法に関する。特に、本発明は、ポーションケーシングからタバコポーションを詰め替えることにより製造されるシガレットの品質を向上させる為の方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シガレットは既製品を購入することもできるが、それ以外にも、ユーザーが手巻き用の刻みタバコ(loose tobacco)と巻紙を購入し、自分だけのシガレットを手巻きすることができる。また、通常一端側にフィルタを備え他端側が開放された既製品のシガレットチューブと刻みタバコとを購入し、該シガレットチューブに刻みタバコを詰める、所謂メイク・ユア・オウン(MYO) シガレットが知られている。或いは、MYOシガレット作成用の葉タバコではなく、予め小分けされてチューブ又はケーシングに納められた葉タバコ、その他の喫煙材を用いる方法もあるが、これはこのままの状態で喫煙されることを意図したものではなく、またこのままの状態での喫煙には不向きな場合もある。ケーシングには通常、シガレット1本分のポーションが1個収められており、その寸法は該ポーションの直径は紙製のシガレットチューブにフィットさせるに十分なほど小さい。このタバコポーションは、ユーザーの手でポーションケーシングからシガレットチューブに詰め替えられる。
【発明の概要】
【0003】
従来公知の棒状タバコ詰替え装置には、ポーションとそのケーシングとの間の摩擦力、或いはポーションとそれを詰め替える先の紙チューブの紙との間の摩擦力により、シガレットの完成品中で葉タバコの分布が偏る問題がある。この摩擦力により、シガレットチューブ内で最も遠くへ押しやられる葉タバコ、即ちタバコポーションの遠端側或いはフィルタ端における葉タバコは、シガレットチューブ内での移動距離が少ない葉タバコに比べて密度が低くなる。さらに、タバコポーションをチューブ内で変位させるために該ポーションが押圧される端部では、該タバコポーションの全長からの摩擦力による抵抗が働くために、過度に圧縮される可能性がある。このため、作製されるシガレットの内部で葉タバコの密度が不均一となり、ユーザーエクスペリエンスを損なう虞がある。なぜなら、シガレットの品質がそれ自体の長さ方向でばらつき、また連続して作製されるシガレット間でもばらつく虞があるからである。
【0004】
従来の方式と装置のこれら欠点を解決すべく、本発明は喫煙材
のポーションをケーシングから喫煙チューブへ詰め替える方法を提供するものであり、該方法は、
該ケーシングと該ポーションとを前記
喫煙チューブ内へ、
前記喫煙チューブ内空間の長さよりも短い第1の距離分だけ前進させる工程と、
前記第1の距離分だけ前進した前記ポーションを前記ケーシングに対して相対的に前進させることにより前記ポーションを前記ケーシングから前記喫煙チューブ内へ少なくとも部分的に排出する工程と、
以下の(1)または(2)の工程;
(1)前記少なくとも部分的に排出された前記ポーションを前記喫煙チューブ内に保持させた状態で前記ケーシングを
前記喫煙チューブから少なくとも部分的に引き抜
き、前記ケーシングが少なくとも部分的に引き抜かれた後で、前記
喫煙チューブ内に
前記ポーションをさらに押し込む工程、
(2)前記少なくとも部分的に排出された前記ポーションを前記喫煙チューブ内に保持させた状態で前記ケーシングを前記喫煙チューブから少なくとも部分的に引き抜く間に、前記喫煙チューブ内に前記ポーションをさらに押し込む工程、
と、を有する。
【0005】
本発明の方法は、完成した喫煙品の内部で喫煙材をより均等に分布させることにより品質に対する印象を改善し、ユーザーエクスペリエンスを高めるものである。ポーションとチューブの少なくとも一方を他方に向けて前進させるには、いずれか一方を定位置に保ち他方を動かすか、或いは双方を互いに同時に動かす方法がある。
【0006】
上記方法の別構成としては、
該ケーシングと該ポーションとを前記
喫煙チューブ内へ前進させ
、さらに前記ポーションを前記ケーシングに対して相対的に前進させることにより該ポーションの遠端を該
喫煙チューブの閉鎖端へ押しやる工程と、
以下の(1)または(2)の工程;
(1)前記遠端が前記閉鎖端へ押しやられた前記ポーションを前記喫煙チューブ内に保持させた状態で前記ケーシングを
前記喫煙チューブから少なくとも部分的に引き抜
き、前記ケーシングが少なくとも部分的に引き抜かれた後で、前記
喫煙チューブに向けて
前記ポーションをさらに押し込むことにより
前記喫煙チューブを
前記ケーシングから離脱させる工程、
(2)前記遠端が前記閉鎖端へ押しやられた前記ポーションを前記喫煙チューブ内に保持させた状態で前記ケーシングを前記喫煙チューブから少なくとも部分的に引き抜く間に、前記喫煙チューブに向けて前記ポーションをさらに押し込むことにより前記喫煙チューブを前記ケーシングから離脱させる工程、
と、を有する。
【0007】
上記ケーシングを部分的に引き抜くことにより、上記チューブの開放端と上記ポーションとが支持されると共に、シガレットの完成品が離脱してユーザーに使用されるまでの間に行われるあらゆる後続の工程からこれらが保護される。これにより、より一貫性のある高品質な最終生産品が得られる。
【0008】
上記ケーシングと上記喫煙材ポーションとを喫煙チューブ内へ第1の距離分だけ変位させる工程では、該ポーションと該チューブの閉鎖端との間に隙間を残してもよい。これにより、上記ポーションのチューブへの詰め替えを複数回に分けて行うことができ、該チューブ内での喫煙材の分布をより均一にすることができる。
【0009】
上記第1の距離は、装填前の前記ポーションの縦方向長さよりも短くてよい。
前記第1の距離は、
前記ポーションの長さの約10分の9、又は
前記ポーションの長さの約5分の4、又は
前記ポーションの長さの約4分の3、又は
前記ポーションの長さの約半分、又は
前記ポーションの長さの約4分の1、又は
前記ポーションの長さの約10%、又はいずれかの上記範囲内とすることができる。上記チューブやケーシングや喫煙材の密度、摩擦力その他の性質に応じ、初期工程における上記ポーションの挿入深さや後工程における該ケーシングの引抜き距離を変化させることにより、該チューブ内における喫煙材の最終的な分布を首尾良く最適化することができる。
【0010】
上記ケーシング内の上記ポーションの変位はシガレットチューブ充填装置のポーション押込具を用いて実現することができる。上記ケーシングはシガレットチューブ充填装置に係合されて該ケーシングを変位させるように成されていてよい。このような装置を用いて上記工程を実施することにより、完全手作業であっても品質一貫性を向上させることができる。
【0011】
上記ケーシングは、シガレットチューブ充填装置に係合されるように配設されたアダプタを有していてよい。或いは、シガレットチューブ充填装置が上記ケーシングを直接把持するように構成されていてもよい。これにより、上記装置を本発明の方法に適用して喫煙材の分布と最終生産品の品質一貫性を改善することが可能となる。
【0012】
上記シガレットチューブ充填装置は、該装置が上記ケーシングを長手方向に変位させ得るように、該ケーシングを係合する可動式ケーシング係合手段を有していてよい。上記ケーシング係合手段は、締結手段を有していてよい。
【0013】
上記喫煙チューブの開放端にはチューブ端アダプタ手段が設けられていてよい。この手段は上記ポーションが上記チューブ内に案内されるように補助し、またポーションやそのケーシングが該チューブ内へ入る際に、該チューブの端部をこれらから保護する役目を果たすことができる。
【0014】
上記チューブ端アダプタは、可撓性部材を有してよく、また実質的に円錐台状の部材であってよく、また複数の先細りの部材からなり、該部材の各々は上記チューブの外側に位置し該チューブよりも大きな直径を有する第1の端部と、該チューブの端部又はその内側に位置する第2の端部とを有するものであってよい。
【0015】
上記方法は、上記ポーションの一端を押すことにより該ポーションと上記喫煙チューブとを変位させる工程をさらに有してもよい。これにより、生産品を構成するこれら両者を単一部材の動作で変位させることができる。
【0016】
上記ポーションと上記喫煙チューブとは、該チューブが停止端に突き当たるまで変位させることができる。これにより、最終生産品の内部でチューブ全長にわたり上記喫煙材をより均一に圧縮することができる。
【0017】
前記ポーションと前記喫煙チューブとは、前記喫煙チューブが前記ケーシングの外側から離脱するまで前記ポーションの一端側を押すことにより、変位させることができる。これにより、上記ケーシングから上記チューブを離脱させると共に、喫煙材の分布をより均一化することができ、チューブ内の喫煙材分布が改良された最終生産品を効率的に提供することができる。
【0018】
前記ケーシングを引き抜く間、上記装置のチューブ保持部により前記喫煙チューブを定位置に保持することができる。このチューブ保持部は、上記チューブを締結するように構成されたチューブ保持機構を有していてよい。
【0019】
上記ポーションを上記チューブ内に一旦移した後、上記ケーシングを部分的に引き抜くことにより該チューブ内のポーションの第1の部分が上記ケーシングの内部になく、該チューブ内のポーションの第2の部分がケーシングの内部に残り、該チューブの一部が該ケーシングの一端部を被覆するようになされてもよい。これにより、上記ケーシングは詰め替えプロセス中、少なくとも上記チューブ、場合によっては上記ポーションの端部をも支持し、最終生産品の品質を向上させることができる。
【0020】
上記ポーションは上記チューブの閉鎖端まで押しやってもよく、これにより、該チューブを該ケーシングから離脱させることができる。これにより、上記チューブ内での喫煙材の分布を均一化することができる。
【0021】
上記シガレットチューブ内へ詰め替えられる前の前記ポーションの長さは、該シガレットチューブ内の空洞の長さよりも長くてよい。これにより、プロセス期間内に上記ポーションが上記チューブ内で圧縮され、上記喫煙材が所望の長さに圧縮され、その結果、品質一貫性と該喫煙材の分布の均一性が改善される。或いは、上記ポーションの長さは上記チューブ内の空洞の長さと同じか、又はそれより短くてもよく、これにより詰め替えプロセスの終了後に上記喫煙材が上記チューブの端部よりはみ出すことを防ぐことができる。
【0022】
上記方法はさらに、上記喫煙チューブの長さを測定する工程と、
上記ポーションの端部を押しやるべき最適終端位置を算出する工程と、
を有してもよい。
【0023】
上記方法はさらに、上記ポーションを上記チューブ内に保持した状態で上記ケーシングを上記喫煙チューブから少なくとも部分的に引き抜いた後、該ケーシングと該ポーションとの双方を上記シガレットチューブに向けてさらに押し込む工程、を有してもよい。これにより、上記チューブ内における喫煙材の分布を改善しやすくなる。
【0024】
上記方法はさらに、上記ケーシングと上記ポーションとを上記シガレットチューブに向けてさらに押し込む工程の後に、該シガレットチューブから該ケーシングを引き抜く工程を有してもよい。
【0025】
上記ケーシングを引き抜いている間、上記ポーションを上記チューブに対して実質的に定位置に保持してもよい。
【0026】
上記ケーシングを上記チューブに対して少なくとも一部引き抜く工程は、
上記チューブの長さの約30%までの距離だけ上記ケーシングを引き抜く工程、又は
上記チューブの長さの約3%から約30%の距離だけ上記ケーシングを引き抜く工程、又は
上記チューブの長さの約10%から30%の距離だけ上記ケーシングを引き抜く工程、又は
上記チューブの長さの約10%から25%の距離だけ上記ケーシングを引き抜く工程、又は
上記チューブの長さの約3%から10%又は25%の距離だけ上記ケーシングを引き抜く工程、
を有してもよい。これらの範囲を採用することにより、様々な種類や密度の喫煙材について、チューブ内における分布を均一化することができる。
【0027】
上記方法はさらに、充填済みの前記シガレットチューブ内の前記タバコポーションの端部に第2の移送部材を押し当てることによりシガレット端部を仕上げる工程を有してもよい。
【0028】
上記ケーシングは、上記喫煙材ポーションと該ケーシングとを有する消耗品の分割体であってよい。これにより、上記ケーシングを上記装置で再利用可能な形でユーザーに提供することができる。
【0029】
シガレットチューブ充填装置は、上述した方法を実施するように構成されてよい。
【0030】
本発明によれば、喫煙材
のポーションをケーシングから喫煙チューブへ詰め替えるチューブ充填装置がさらに提供され、該チューブ充填装置は、
充填すべき喫煙チューブを受け入れるチューブ受入エリアと、
前記ポーションを前記ケーシングに対して変位させるポーション変位手段と、
前記ケーシングを係合し変位させるためのケーシング変位手段と、
を有
し、
前記ポーション変位手段が前記ケーシング変位手段のケーシング係合手段を作動させるように成されている。
これにより、ケーシング係合手段は追加の駆動機構やアクチュエータを何ら要することなく作動できる。
【0031】
上記ケーシング変位手段と上記ポーション変位手段とは互いに相対的に運動可能とすることができる。これにより、上記装置は上記ケーシングとポーションとの相対運動を少なくとも或る程度まで制御し、プロセスにより一貫性を持たせることができる。
【0032】
上記ケーシング変位手段は上記チューブ受入エリアに対して相対的に運動可能とすることができ、これにより上記ケーシングを上記チューブ内に制御しながら挿入することができる。
【0033】
上記ケーシング変位手段と上記ポーション変位手段とは互いに、且つ上記チューブ受入エリアに対して相対的に運動可能とすることができ、結果、これら両変位手段を独立に及び/又は連動させて、上記チューブに対して相対的に動かすことができる。
【0034】
上記ケーシング変位手段はケーシングを係合するためのケーシング係合手段を有してもよい。
【0035】
上記ケーシング係合手段は締結手段を有してもよい。
【0036】
上記チューブ受入エリアは上記チューブを係合する係合手段を有し、前記ポーションの詰め替えプロセス中に該チューブを定位置に保持するようにしてもよい。
【0037】
上記チューブ係合手段は締結手段及び/又は停止端を有してもよい。
【0038】
上記ケーシング変位手段は第1の駆動機構により、上記ポーション変位手段は第2の駆動機構により、互いに独立に駆動されるように成されていてもよい。これにより、これら両変位手段を本発明の方法にしたがって駆動することができ、最終生産品を上述のように改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の装置と方法とに好適に用いられるケース入りタバコポーションを示す図である。
【
図2】
図2Aから2Cは、タバコポーションをケーシングからシガレットチューブに詰め替える第1の方法を示す模式図である。
【
図3-1】
図3A及び3Bは、タバコポーションをケーシングからシガレットチューブに詰め替える追加的な方法を示す模式図である。
【
図3-2】
図3Cから3Eは、タバコポーションをケーシングからシガレットチューブに詰め替える追加的な方法を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の方法を実施するに適した装置を示す図である。
【
図5】
図5A及び5Bは、本発明の方法を実施するための装置をさらに示す図である。
【
図6】
図6A及び6Bは、本発明の方法を実施するための操作の或る段階における装置の状態を示す図である。
【
図7】
図7A及び7Bは、本発明の方法を実施するための他の段階における装置の状態を示す図である。
【
図8】
図8A及び8Bは、本発明の方法における他の段階における装置の状態を示す図である。
【
図9】
図9A及び9Bは、本発明の方法を実施するための操作の他の段階における装置の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1に、以下に述べる方法に用いるに好適なケース入りタバコポーション10を示す。この図に示す本製品は喫煙材ポーション12を有し、ここで喫煙材は葉タバコ又は他の喫煙品とすることができる。上記喫煙材ポーション12はケーシング11に収容されている。本例の上記ケーシングは実質的に円筒形であり、中空のチューブを成し、その内部には喫煙材12が充填され、該喫煙材12の長さと直径は、該喫煙材ポーション12を収容しようとするシガレットチューブの内部空間のそれら寸法にほぼ対応している。これは一見、紙巻きタバコの製造分野ではよく知られた標準的な紙製のシガレットチューブにも見えるが、一般的なシガレットの大量生産はタバコポーションに紙を高速に巻き付けるプロセスであり、予め成形されたチューブにタバコポーションを挿入する様な本発明の方法とは異なる。上記ケーシング11の一端にはアダプタ13が装着され、該アダプタ13は円筒形で、上記ケーシング11から延在する様に設けられ、その内部は中空である。ここで図示及び説明する実施態様では上記アダプタは実質的に筒状であるが、該アダプタは上記ケーシングを取り扱うユーザーが支えたり把持したりできる様に設けられたケーシング11の如何なる一部であってもよく、或いはアダプタは充填装置の適当な部位で支えたり把持したりできる様に設けられていてもよい。したがって、円筒形状が必須でないことは自明である。アダプタ13にとって重要な要件とは、ケーシング11の把持を可能とし、且つこのケーシング11を操作して動かすこと、特にチューブ型の該ケーシングの縦軸方向に動かせる様に構成することである。
【0042】
この様なアダプタを定位置に置き、該アダプタを用いて喫煙材のポーション12を成形済みのシガレットチューブ内に、ケーシング11と共に置くことができる。
図1の矢印14の方向にケーシング11を引き抜く際にポーション押出具を該アダプタ13内部に挿入することにより、該ケーシング11を引き抜いている間も喫煙材ポーション12をシガレットチューブ内に保持することができる。このポーション押出具は実質的に円筒状且つ実質的に円形の端部を有していてよく、該円形の端部は上記ポーション12の端部の形状にほぼ倣っているが、ポーションと押出具との互いに対応する形状はどのようなものであってもよい。この工程により、ユーザーの手元に喫煙材ポーション12の入った紙製のシガレットケーシングが残り、空のケーシング11は廃棄されるか又は新しい喫煙材のポーション12を詰めて再利用される。
【0043】
タバコポーション12をシガレットチューブに挿入する上述のプロセスを実施するための従来公知の方法は、該ポーションを該シガレットチューブの遠端側一杯まで挿入し、また該ケーシング11を1段階工程で引き抜くという、比較的単純なものである。しかし、この単純プロセスには多くの欠点がある。特に、ポーション12とそのケーシング11との間に働く摩擦力、或いはポーション12とそれが詰め替えられている最中の紙製チューブの紙との間に働く摩擦力に起因して、シガレット完成品中のタバコ又はその他の喫煙材の分布が不均一になり得る。上記シガレットの完成品又はその他の喫煙品の密度が長さ方向でバラつくと、完成した喫煙品を喫煙した場合にユーザーエクスペリエンスが最適とは言えず、バラついたものとなる。上記喫煙材は第1の端部では過度に圧縮される可能性がある。ここで、第1の端部とは、押出具が上記喫煙材を押すことによるか、若しくは、単にケーシング11を引抜く際の摩擦力に抗してそれを定位置に保持することにより、圧力が加わる側の端部である。その結果、喫煙材の密度はポーションの遠端側、即ちシガレットチューブにフィルタがある場合にはそのフィルタに隣接する側において、圧力が加わる側の端部に比べて相対的に低下する場合がある。但し、ユーザーが入手できる工場製のシガレットにおいては、該シガレットの一端側でより密にタバコが充填されている様な、ある種の分布が好まれる場合がある。それは、シガレットの端部を強化して、輸送中や喫煙中における該シガレットからの葉タバコの脱落を防ぐためである。
【0044】
以下に述べる方法は、上述の方法における欠点の克服を目指したものである。
【0045】
図2Aは本発明の方法の予備的な工程を示す模式図である。フィルタ201と筒状部202とを備えた空のシガレットチューブ20がチューブ充填位置に固定されている。ケース入りのタバコポーション10が、上記チューブ20と縦方向に並び、且つその開放端に隣接して配置されている。ケーシング係合手段220がケーシング11のアダプタ13の近傍に配されており、ポーション押込具230がケース入りポーション10及びチューブ20と縦方向に同軸的に配されている。帯状又は翼片状の一連の可撓性部材241が設けられていてもよい。これらは、ケーシング11とポーション12とがチューブ202内に挿入される際に該チューブ内に押し込まれ、該チューブ202のほぼ外縁に対応する基部、或いは該チューブ202の範囲内の半径方向位置に対応する基部の周囲に回転する。これには2つの機能があり、ひとつは上記ケーシング11とポーション12とが挿入される際に上記チューブ202の開放端をダメージから保護すること、そして、該チューブ202をチューブ保持手段240に把持させ易くすることである。このようにして、ポーション12とそのケーシング11とをチューブ内へ挿入させ易くするチューブ端アダプタが構成される。チューブ端アダプタの別の構成としては、シガレットチューブの直径と同じかそれより小さな直径を有する第1の端部と、それより直径の大きな第2の端部とを有し、チューブ開放端へのポーションの挿入を容易とする様に構成されてよい。さらに別のチューブ端アダプタ手段の構成としては、一対若しくは複数の先細りの部材からなり、各部材は該チューブの外側に位置し、直径が該チューブよりも大きな第1の端部と、該チューブの端部又はその内側に位置し、直径が該チューブ端と同じかそれより小さい第2の端部とを有し、上記ポーション12を上記チューブ内で案内するものであってよい。これらのチューブ端アダプタ手段はいずれも必要に応じて設けられればよく、また組み合わせてもよい。
【0046】
図2Bは、ケーシング11の端部とポーション12とがシガレットチューブ202内へ進入した状態を示す。この進入は、ケーシング係合手段220とポーション押込手段230とのいずれか一方、又は両方により行われる。ポーションのチューブ202内への最初の進入は部分的であってよく、この場合の該ポーションはフィルタ端201においてシガレットチューブの閉鎖端に達しない。或いは、
図2Bに示すように、挿入は全域に亘って行ってもよく、この場合のポーション12はケーシング11と共に、実質的に全域的にチューブ202のフィルタ端まで挿入される。
図2Bに示す工程では、充填されたチューブはチューブ保持手段240から離脱されてよく、これにより該チューブ202は上記可撓性部材241とチューブ保持手段240とから全域的に又は部分的に開放される。開放が部分的である場合には、上記チューブ202はその後、
図2Cに示す段階で該チューブが停止端241まで押し込まれた時に全域的に開放される。
【0047】
図2Cは、ケーシング係合手段220がアダプタ13と係合され、ケーシング11がシガレットチューブ202から引き抜かれた状態を示す。この時、ポーション12は定位置にとどまっているが、これは該ポーション12がポーション押込手段230に維持されており、ケーシング11が矢印25の方向に引き抜かれる時に該ケーシング11とポーション12との間に働く摩擦力に打ち勝っているからである。
【0048】
図2A、2B及び2Cに示されるように、上記各工程の一部又は全てに亘り、シガレットチューブ20はチューブ保持手段240によって定位置に保たれてよく、該チューブ保持手段は付着、把持、摩擦その他適当な手段により該チューブ202を定位置に維持してよい。これにより、上記チューブは、ポーション12が該チューブ202に挿入されている間もケーシング11が引き抜かれている間も定位置に保持される。ケーシングが引き抜かれている間も上記チューブを保持するために、チューブ保持手段は上記に加えて、又は上記に替えて、チューブ202の遠端側に隣接して配されてもよく、またフィルタ201がある場合にはこれに隣接して配されてもよい。
【0049】
この後の工程では、図示は省略するが、ポーション押込具230を矢印26の方向に前進させることができる。この工程には2つの役割がある。ひとつは、この工程によりシガレットチューブ202をチューブ保持手段240から引き離し、該充填されたシガレットの遠端201を、隣接してフィルタ201がある場合にはそのフィルタ201を、さらに停止端241に向けて押し込むことである。この様に停止端241に向けたさらなる押込みを行うことにより、シガレット内における喫煙材料12の分布がより均一化される。これは、停止端241において矢印27方向に反力が発生し、この反力がポーション押込具230によって加わる力と実質的に等しいために、フィルタ201に隣接する喫煙材の圧縮がその端部に隣接するポーション押込具における圧縮、及びポーション12全域に亘る圧縮と実質的に等しくなり、最終的に得られるシガレット内における喫煙材料12の分布がより均一となるからである。これにより、生産品の品質が向上し、連続生産における一貫性が増し、ユーザーエクスペリエンスが向上する。
【0050】
図3Aは、別の方法による最初の挿入工程を示す模式図である。
図3Aから3Eでは同様の構成要素に同様の符号を用い、以下詳細な説明は省略する。以下に述べる各方法におけるこれらの形状や機能は、上述の通りである。
図3Aに示す最初の挿入工程では、ケーシング11とポーション12とを部分的にシガレットチューブ202に挿入する。これにより、ポーション12の遠端とチューブ202の遠端との間に隙間203が残るが、これはフィルタ201で塞がれる場合もある。
図2Aでは、ケーシング11とポーション12とはケーシング係合手段220により前進させられていたが、本例の方法ではこの最初の工程はケーシング係合手段220とポーション押込手段230とのいずれか一方又は両方により実施することができる。
【0051】
図3Bにおいて、ポーション押込手段230はポーション12をシガレットチューブ202内へさらに押し込み、その間、ケーシング係合手段220はケーシング11がそれ以上シガレットチューブ202内に侵入しない様にこれを保持する。ケーシング11とポーション12とのこの様な相対的な動きにより、ポーション12はケーシング11からチューブ202内へ排出される。この工程では、ケーシング11は
図3Aに示す初期の位置からわずかに前進してもよいが、ポーションを少なくとも部分的にケーシングから排出するために、該ポーション12は該ケーシング11よりも余分にチューブ202内へ移動する。
【0052】
図3Cに示す工程では、ケーシング11がシガレットチューブ202より引き抜かれ、一方ポーション12はポーション押込手段230により上記シガレットチューブ内に保持される。ケーシング11を引き抜く間、ポーション押込手段230はポーション12をチューブ202内へさらに押し込み続けていてもよいが、必須ではない。
図3Cでは、ポーション12がポーション押込手段230によりシガレットチューブ202内にまだ全域的には押し込まれていないため、隙間203は減少しているもののまだ残っている。或いは、上記プロセスのこの段階で隙間230を無くすべく、チューブ内にポーションを全域的に押し込んでもよい。
【0053】
上記の様に、ポーション12をシガレットチューブ202内にさらに押し込む前に部分的に挿入する工程を設けると、ケーシング係合手段220が必要とする移動量を低減することができる。これと同時に、上記最初の挿入段階でポーション12とチューブ202との間に生じ得るあらゆる摩擦力が低減され、またプロセス全体がスピードアップされ、且つ従来法に比べて分布の均一なシガレットを提供することができる。ケーシングをシガレットチューブ内に部分的に挿入するだけでも、該ケーシング11のアダプタ13と紙チューブとの衝突により該紙チューブに生じ得るあらゆる損傷を避けることができる。さらに、ケーシングの部分的挿入により、該ケーシングはその端部から延在するアダプタではなく自身の長さに沿って把持されるので、アダプタ13を省略することすら可能である。したがって、アダプタに付随するコストを削減することができ、また装置も全長の短いケーシングが取り扱えるだけの寸法に小型化することができる。
図3Cにおいて、ケーシング11は全域的には引き抜かれず、部分的に引き抜かれるだけなので、該ケーシング11の短い一部分がシガレットチューブ202の端部内に残る。このため、この段階でケーシング11を全域的に引き抜いてしまう場合と比べて、作業の最終段階で上記チューブとポーション12とを安定化することができる。また、ケーシング11をこの様に部分的に引き抜くことで、
図3D及び3Eに示す後工程において可撓性部材241及びチューブ保持手段240によるチューブ202の保持状態が改善される。
【0054】
図3Dにおいて、ポーション押込手段230はシガレットチューブ202 内にさらに進入し、これにより該チューブ202は上記ケーシング11の遠端側に押しやられると共にチューブ保持手段240から離れ、該シガレットチューブを開放する。ポーション12をさらに停止端241まで押し込んでもよく、これによっても、
図2Cを参照して上述したように、シガレット完成品内での喫煙材ポーション12の圧縮状態を均一化することができる。上述のケーシング11の一部引き抜きは、上記プロセスの最終段階におけるチューブの開放端とポーション12との支持状態を改善し、シガレット完成品のチューブ202の開放端の品質目標を上げることにつながる。
【0055】
図3Eに示す最終段階では、上記ポーション押込手段とケーシング係合手段220とを上記シガレットチューブ202から全域的に引き抜き、シガレット完成品を得る。
【0056】
図3Eに示す停止端241への最終的な圧縮を行った後、ポーション12はシガレットチューブ内で弛緩され、
図3Dに示す最終圧縮段階の直後における長さをわずかに超える長さに戻る。ここで、
図3Aから
図3Eに至るプロセスには2通りが考えられる。最初の方法では、
図3Dに示す段階で、ポーション12をシガレット完成品に求められる長さよりも短く圧縮し、
図3Dの工程後、該ポーションを弛緩させて上記シガレット完成品内での所望の長さに戻す。二番目の方法では、
図3Dに示す工程において、ちょうど所望のシガレット完成品の長さが得られる地点までポーション12を前進させる。この二番目の方法では、ポーション12の弛緩が生じないので、
図3Dの工程が終了した時点でシガレットは完成し、所望の長さに製造される。この二番目の方法は、ポーション12の長さ方向の寸法安定性が高く、シガレット完成品の最終長と外観のばらつきや不正確さを避けたい場合に適用できる。
【0057】
上記喫煙材のポーション12としては、シガレット完成品に所望される最終長さよりも長い物が選択されるので、ポーション押込具230によるポーション12のある程度の圧縮は常に可能であり、したがってシガレット完成品が上記所望の長さより短くなることはない。上記ポーション12が所望の長さよりも長い場合は、停止端241とポーション押込具230との間でポーション12を圧縮して、その長さを最終的な所望の長さに修正する。
【0058】
また、上述のいずれかの挿入工程前に、シガレットチューブ202の長さを計測しておくことが考えられる。その後、
図3Aに示すように、ケーシング11とポーション12とをシガレットチューブ202に部分的に挿入する。ポーション12を、ポーション押込手段230を使ってチューブ202内に押し込む。この押込み工程では、ポーションを端部に達するまで押し込んで、
図3Aに示すような隙間203の無い状態としてもよいし、或いはチューブ202内へのポーション12の押し込みを部分的に行って隙間203を残すようにしてもよい。次の工程では、ケーシング11を引き抜く。この引き抜きは、
図3Cに示すように部分的でよい。対応する
図3Dの工程では、ポーション押込手段230の最適最終位置をシガレットチューブ202の長さの測定値に基づいて算出する。この測定値は、上記充填プロセスの前に取得しておいてもよいし、あるいはプロセス中に取得してもよい。充填されるチューブの長さの測定値に基づいてポーション押込手段230の最適最終位置を算出することにより、チューブ202内でポーショ12が存在する部分の長さと比較した該ポーション12の最終的な端部長さ(final end dimension)との最適な対応関係を求めることができる。この別方法は、ポーション12が
図3Dの工程後に軸方向に弛緩してその圧縮長よりも長くなる可能性が低い場合に特に有効である。さらにケーシング11内におけるポーション12の元の長さは、その充填長さ、即ち充填されたチューブ202の長さよりも長く設定しておくことが好ましく、これによりチューブ202でのポーションの最終長さが正確となる。
【0059】
図4は、本発明の方法を実施する上で好適な装置40を示す図である。この装置は、充填用のチューブ20を受け取る
チューブ受入エリア41と、ケース入りのタバコポーション10、即ちケーシング11とシガレットチューブ20に詰め替えるための喫煙材のポーション12とを含むタバコポーション10を受け取る
ポーション受入エリア42とを有する。この装置はまた、該装置の各種の駆動機構や素子を搭載したシャーシ43を有する。シガレットチューブ20は
シガレットチューブ受入エリアにストックされ、ケース入りのタバコポーション10と縦方向を揃えて配置されている。上記装置はまたポーション押込手段230を備える。これは、棒または柄の形状を有し、その遠端は上記ポーション12の一端面を実質的にその面積全体に亘って押圧してチューブ20側へ押し出せるように構成されている。上記ポーション押込手段230は、ポーション押込具移送手段231に接続されている。この接続にはクランプ又はブラケット、或いは他の適当な手段が用いられており、ポーション押込手段230の一端に装着されている。上記移送手段231は様々な方法で変位させることができ、たとえばこれをネジ切り棒に搭載し、この棒を回転させることにより該移送手段を前後に動かすことができる。或いは、移送手段は可撓性の駆動バンド、たとえばベルトやチェーン233を有してもよい。このベルトやチェーンはモータ234等の手段で駆動されてよく、これにより移送手段231に往復運動を与え、この動きが上記押込手段230に伝達される。移送手段231に往復運動を与えるための適当な駆動手段としては、この他にラック・ピニオン機構やカムフォロワ機構が考えられる。
図5Bに詳しく示すように、ケーシング係合手段50が設けられている。このケーシング係合手段50は、上記ポーション押込具移送手段231と同様、リニアドライブ55で駆動可能に配置されており、ケーシング11と係合されると、チューブ受入エリア41において、ケーシング11はシガレットチューブ20に対して実質的に直線的に前進又は後退する。これらの機構の各部品は、上記ケーシング係合手段50及び上記ポーション押込具230の各駆動手段(55、56;233、234)と共に、本装置の上記シャーシ43に搭載されている。
【0060】
チューブ20とポーション10とは、各受入エリア41,42の長手方向チャネルに支持させることができる。このチューブ受入エリア41の遠端側には停止端を設け、ポーション移送中にチューブが長手方向に動いてケーシングから離れてしまい、該停止端の位置となる地点を越えることを防止するようにしてもよい。上記チューブ20とポーション10とは、ユーザーが手作業により各受入エリアに装填してもよいし、または図示しない何らかの適当な機械仕掛けにより移送してもよい。
【0061】
図5Aは、
図4に示す上記装置の上から見た断面図であり、上述の方法による挿入工程前の初期状態を示す。移送前のシガレットチューブ20は、
シガレットチューブ受入エリア41に収容され、ユーザーの手で、又はチューブやポーションの列44、45を適切にずらすことにより、ケース入りタバコポーション10と縦方向に並んで配置されており、この様にして適切に準備されたチューブとポーションとが、上記ポーション押込手段230及びケーシング係合手段50とに対して位置合わせされる。
【0062】
図5Bは、上記ケース入りタバコポーションのケーシング11とポーション12とに対して係合する装置の拡大図である。上記ポーション押込具230は上記アダプタ13と係合することなくこの中を通り抜ける様に構成されており、実質的に平坦な端部235がケーシング11内のタバコポーション12の一端に突き当たる。上記ポーション押込手段230のケーシング変位手段50に対する動きを案内する支持部材501が設けられている。
【0063】
このケーシング係合手段50は、ケーシング11のアダプタの第1の側へ送られる様に配置された第1の部材51を備える。このアダプタがチューブである場合、上記第1の部材51は上記アダプタチューブ13内へ送られる。図面で解る様に、上記第1の部材51はポーション押込具230の動きを案内する支持部材501に接続されている。一方、第2の部材52が、上記アダプタ13の上記第1の部材51とは反対側に設けられている。したがって、アダプタ13が第1及び第2の部材51,52の間にある時、該アダプタは互いの方向に向けて作動するこれら両部材に締結される。これら第1の部材51と第2の部材52とが互いに接近又は離間する動作は、ソレノイド、ピエゾ素子、スクリューねじ等の各種のアクチュエータ手段により行われてよい。上記の図示例では、第2の部材52は付勢手段53によって上記第1の部材51に向けて付勢されている。この付勢手段は如何なる弾性部材であってもよく、図示例ではコイルばねである。この図示例において、上記第1の部材に対して接近・離間する第2の部材の動きは、段差部(profiled section) 232に支配される。この段差部232は、上記ケーシング係合手段50の第1の部材51に対して、ポーション押込具230の側面が第1の位置と第2の位置との間で遷移する部分を有している。従動部材54は上記ポーション押込具230に対して付勢されており、例えば該ポーション押込具がその長手方向の前後に駆動されると、該従動部材54が該ポーション押込具230の外郭をなぞる。第2の部材52はこの従動部材54と接続されているので、該従動部材54が第1の部材51に向かって前進し、上記ポーション押込具230の該段差部232の適当な位置に到達すると、上記第2の部材52は第1の部材51に向かって前進し、上記アダプタ13を締結する。
【0064】
ケーシング係合手段のさらに他の構成としては、複数の部分を含む拡張式のリング部材を含む構成が考えられる。この複数の部分は互いに半径方向に変位可能で、半径方向に外向きの力をケーシングアダプタ13の内側に与える。さらに別の係合方法としては、アダプタ或いはケーシングそのものの外側から半径方向に内向きの力を生ずる複数の部材によって締結力を与えることによりケーシングを係合してもよい。これらの構成によれば、アダプタの半径方向の内側と外側の両方に締結部材を配置する必要が無くなる。
【0065】
上記ポーション押込具230は、第1の幅(横)寸法を有し上記ケーシング係合手段を開放位置に移動させるための第1の部分と、第2の幅寸法を有し該上記ケーシング係合手段を上記アダプタ13上の締結位置まで移動させるための第2の部分とを有する。ポーション押込具230のこれら第1の部分と第2の部分との間に遷移部が設けられていてもよい。したがって、本発明の装置は、ポーション押込具230とケーシング係合手段50との相対的な動きによりケーシング係合手段のケーシング係合機構(51、52、53、54)が駆動される様に構成することができる。
【0066】
図6Aは本発明の方法の第1工程を示す図であり、ポーション押込具230とケーシング係合手段50とがポーション12とシガレットチューブ20とに向かって前進し、該ケーシング係合手段50の第1の部材51がアダプタ13に隣接した状態を示す。本実施形態では、第1の部材51はチューブアダプタ13の内側に位置している。
図6Bはかかる構成の拡大図である。上記ポーション押込具230とケーシング係合手段50とは同じ距離だけ前進しているので、両者の相対位置は保たれており、該ケーシング係合手段50は開放位置にある。第1の部材51と第2の部材52とはまだ互いに歩み寄ってはいない。
【0067】
図7A,7Bは上記の動作の次の段階を示す図である。この段階では、ケーシング係合手段50とポーション押込手段230とが共にチューブ20に向かって前進し、ポーション12とそのケーシング11とをチューブ20に押し込んでいる。この押込み動作は、
図2Aから3Eを参照して上述した様に、全域的に行っても部分的に行ってもよい。
【0068】
図7Bから解る様に、ポーション押込具230はケーシング係合手段50に対して前進しているので、該ポーション押込具230の端部はポーション12に近接或いは接触している。さらに、上記ケーシング係合手段50の従動部材54は、ポーション押込具230のうち幅狭の部分と縦方向に整列している。これにより従動部材54は第1の部材51の方向に前進しており、したがって第2の部材52も第1の部材51に向かって前進しており、且つ上記アダプタ13は付勢手段53の動作によって部材51,52の間に締結されている。
【0069】
図8A,8Bは本発明の方法のさらに先の段階における装置を示す。ここでは、シガレットチューブ20から離間するケーシング係合手段50の動作により、ケーシング11がチューブ20から引き抜かれている。この間、ポーション押込手段230はチューブに対して定位置に保たれ、ポーション12をチューブ20内に保っている。
【0070】
図8Bから解る様に、上記ケーシング係合手段50は、ポーション押込具230のうち幅狭の部分と整列した状態に保たれるので、第1及び第2の部材51,52はケーシング11のアダプタ13上に締結された状態に保たれる。
【0071】
図9A,9Bは、ポーション押込具230がチューブ20からケーシング11を通り、該ポーション押込具230の幅広の部分236が従動部材54と係合するまで引き抜かれた状態を示す。これにより、第2の部材52はケーシング係合手段50の第1の部材51から離間し、ケーシング11のアダプタ13が開放され、ケーシング係合手段がアダプタ13から離間する。ケーシング11とアダプタ13とは装置から取り出し、廃棄または再利用することができる。
【0072】
以上より明らかな様に、上述の装置は、喫煙材ポーション12をケーシング11からシガレットチューブ20に詰め替える上述のあらゆるチューブ充填方法に適用できる。ポーション12とケーシング11との挿入深さは、上記ケーシング係合手段50とポーション押込具移送手段231との動きにより、そして適切な駆動機構とそれに付随する制御システムにより調節することができる。この動作は、ケーシング係合手段50とポーション押込具230の各々の移送手段を手動制御することにより、全域的或いは部分的に行うことができる。