特許第5909291号(P5909291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909291
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】被覆ベルトまたはロープの摩耗検出
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20160412BHJP
   B66B 7/06 20060101ALI20160412BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   D07B1/06 Z
   B66B7/06 A
   B66B5/00 G
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-556519(P2014-556519)
(86)(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公表番号】特表2015-513618(P2015-513618A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(86)【国際出願番号】US2012024043
(87)【国際公開番号】WO2013119203
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ギラーニ,ブラッド
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ホン
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−268685(JP,A)
【文献】 特開平09−076709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/06
B66B 5/00
B66B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆ベルトまたはロープであって、
複数のストランドおよび/またはコードを構成する複数のワイヤを備え、前記複数のストランドおよび/またはコードは、
前記ベルトまたはロープの曲げサイクルの関数として第1の電気抵抗の変化を呈する、1つまたは複数の基準ストランドおよび/またはコードと、
前記第1の電気抵抗の変化よりも大きい、前記ベルトまたはロープの曲げサイクルの関数として第2の電気抵抗の変化を呈する、1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードと、を含み、
前記複数のストランドおよび/またはコードを実質的に保持するジャケットをさらに備え、
前記1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードは、前記1つまたは複数の基準ストランドおよび/またはコードを構成するワイヤよりも直径が小さいワイヤから構成されており
前記1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードのうちの1つの監視ストランドおよび/またはコードは、前記1つまたは複数の基準ストランドおよび/またはコードのうちの1つの基準ストランドおよび/またはコードと実質的に同じワイヤ断面積を有する、被覆ベルトまたはロープ。
【請求項2】
前記1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードのうちの1つの監視ストランドおよび/またはコードは、外側位置に配置される、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項3】
前記ベルトまたはロープは、ベルトであり、前記1つまたは複数の監視コードのうちの1つの監視コードは、前記ベルトの断面の長手方向外側位置に配置される、請求項2に記載のベルトまたはロープ。
【請求項4】
前記1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードのうちの1つの監視ストランドまたはコードは、中央位置に配置される、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項5】
前記ベルトまたはロープは、ベルトであり、前記1つまたは複数の監視コードのうちの1つの監視コードは、前記ベルトの断面の長手方向中央位置に配置される、請求項4に記載のベルトまたはロープ。
【請求項6】
前記1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードは、少なくとも2つの監視ストランドまたはコードである、請求項1に記載のベルトまたはロープ。
【請求項7】
前記少なくとも2つの監視ストランドおよび/またはコードのうちの2つの監視ストランドおよび/またはコードは、隣接して配置される、請求項6に記載のベルトまたはロープ。
【請求項8】
前記ベルトまたはロープは、ベルトであり、前記少なくとも2つの監視コードのうちの2つの監視コードは、前記ベルトの断面の長手方向に隣接して配置される、請求項7に記載のベルトまたはロープ。
【請求項9】
エレベータシステムであって、
エレベータかごと
1つまたは複数のシーブと、
摩耗検出ユニットと、
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載のベルトまたはロープであって、前記摩耗検出ユニットに動作可能に接続される、ベルトまたはロープと、を備える、エレベータシステム。
【請求項10】
前記摩耗検出ユニットは、前記1つまたは複数の監視コードの電気抵抗を測定する、請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項11】
前記摩耗検出ユニットは、エレベータ昇降路の上端部に配置される、請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項12】
被覆ベルトまたはロープの摩耗検出の方法であって、
摩耗検出ユニットを被覆ベルトまたはロープの1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードに接続し、前記ベルトまたはロープは、
前記ベルトまたはロープの曲げサイクルの関数として第1の電気抵抗の変化を呈する、1つまたは複数の基準ストランドおよび/またはコードと、
前記第1の電気抵抗の変化よりも大きい、前記ベルトまたはロープの曲げサイクルの関数として第2の電気抵抗の変化を呈する、前記1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードと、を含み、
前記1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードは、前記1つまたは複数の基準ストランドおよび/またはコードを構成するワイヤよりも直径が小さいワイヤから構成されており、
前記摩耗検出ユニットを介して、前記1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードの電気抵抗を測定し、
前記1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードの少なくとも前記測定した電気抵抗を使用して、前記ベルトまたはロープの摩耗状態を判定することを含む、方法。
【請求項13】
前記判定ステップは、前記1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードの前記電気抵抗の変化を判定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記判定ステップは、電気抵抗の増加を判定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
電気抵抗の変化と閾値とを比較し、前記閾値を超えた場合に処置をとることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
処置をとることは、警報を発すること、および前記エレベータシステムの動作を停止させること、のうちの1つまたは両方を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記基準ストランドの少なくとも1つの連続性を監視するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、例えばエレベータシステムで使用される、被覆ベルトまたはロープに関する。より具体的には、主題の開示は、エレベータの吊り下げおよび/または駆動に使用される、被覆ベルトまたはロープの摩耗検出(例えば、腐食、フレッチング等)に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは、エレベータかごに動作可能に接続され、プーリーとしても知られる1つまたは複数のシーブを通じて経路選定して送られる、ロープまたはベルトを利用して、エレベータかごを昇降路に沿って推進する。具体的には、被覆鋼製ベルトが、ジャケット材料内に少なくとも部分的に位置する複数のワイヤを含む。複数のワイヤは、しばしば、1つまたは複数のストランドを構成し、次いで、該ストランドが1つまたは複数のコードを構成する。例示的なベルト構造では、複数のコードが、一般的に、ジャケット内で長手方向に等間隔に配設される。
【0003】
通常のエレベータ動作中に、被覆鋼製ベルトは、ベルトがエレベータシステムの駆動シーブおよびデフレクタシーブを通じて進行するにつれて、多数の曲げサイクルを受ける。これらの曲げサイクルは、ワイヤのフレッチングまたは疲労といったメカニズムによって、被覆鋼製ベルト内のワイヤまたはコードの破壊強度の低下を生じさせる。そのような疲労は、被覆鋼製ベルトの寿命の減少に対する主要な要因である。被覆鋼製ベルトの寿命は、計算を通して推定することができるが、被覆鋼製ベルトの残りの寿命のより正確な推定は、しばしば、寿命監視システムを利用することによって得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つのそのようなシステムは、抵抗に基づく検査(RBI)と呼ばれる。RBIシステムは、エレベータシステムの固定点でベルトに固設され、ベルトの中の各コードの電気抵抗を監視する。各コードの電気抵抗は、その断面積に比例するので、電気抵抗の変化は、コードのフレッチングの量を示すコードの断面積の減少、および対応する残りの寿命に相関させることができる。しかしながら、いくつかのコード構成は、いくつかの曲げサイクルまたはコードの劣化と相関させることができる、抵抗の顕著で測定可能な変化を呈さない。そのような場合、コードが摩耗するにつれてのコードの電気抵抗の変化の量が小さいため、コードの電気抵抗の変化に基づくベルトの状態の評価は困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、被覆ベルトまたはロープは、複数のストランドおよび/またはコードを構成する、複数のワイヤを含む。複数のストランドまたはコードは、ベルトまたはロープの曲げサイクルの関数として第1の電気抵抗の変化を呈する、1つまたは複数の基準ストランドおよび/またはコード、ならびに、第1の電気抵抗の変化よりも大きい、ベルトの曲げサイクルの関数として第2の電気抵抗の変化を呈する、1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードを含む。ジャケットは、実質的に複数のストランドおよび/またはコードを保持する。
【0006】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードの1つの監視ストランドまたはコードは、外側位置に位置する。
【0007】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、ベルトまたはロープは、ベルトであり、1つまたは複数の監視コードのうちの1つの監視コードは、ベルトの長手方向外側位置に位置する。
【0008】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードのうちの1つの監視ストランドおよび/またはコードは、中央位置に位置する。
【0009】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、ベルトまたはロープは、ベルトであり、1つまたは複数の監視コードのうちの1つの監視コードは、ベルトの長手方向中央位置に位置する。
【0010】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードは、少なくとも2つの監視ストランドおよび/またはコードである。
【0011】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、少なくとも2つの監視ストランドおよび/またはコードのうちの2つの監視ストランドおよび/またはコードは、隣接して位置する。
【0012】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、ベルトまたはロープは、ベルトであり、少なくとも2つの監視コードのうちの2つの監視コードは、ベルトの中で長手方向に隣接して位置する。
【0013】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードのうちの1つの監視ストランドおよび/またはコードは、1つまたは複数の基準ストランドおよび/またはコードのうちの1つの基準ストランドおよび/またはコードと実質的に同じワイヤ断面積を有する。
【0014】
本発明の別の態様によれば、エレベータシステムは、エレベータかごと、1つまたは複数のシーブと、摩耗検出ユニットと、複数のストランドおよび/またはコードを構成する複数のワイヤを含む被覆ベルトまたはロープとを含む。複数のストランドおよび/またはコードは、ベルトまたはロープの曲げサイクルの関数として第1の電気抵抗の変化を呈する、1つまたは複数の基準ストランドおよび/またはコード、ならびに、第1の電気抵抗の変化よりも大きい、前記ベルトの曲げサイクルの関数として第2の電気抵抗の変化を呈する、1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードを含む。ジャケットは、複数のストランドおよび/またはコードを実質的に保持する。ベルトまたはロープは、摩耗検出ユニットに動作可能に接続される。
【0015】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、摩耗検出ユニットは、1つまたは複数の監視コードの電気抵抗を測定する。
【0016】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、摩耗検出ユニットは、エレベータ昇降路の上端部に配置される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、被覆ベルトまたはロープの摩耗検出の方法は、摩耗検出ユニットを被覆ベルトまたはロープの1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードに接続することを含む。被覆ベルトまたはロープは、ベルトまたはロープの曲げサイクルの関数として第1の電気抵抗の変化を呈する、1つまたは複数の基準ストランドおよび/またはコード、ならびに、第1の電気抵抗の変化よりも大きい、ベルトまたはロープの曲げサイクルの関数として第2の電気抵抗の変化を呈する、1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードを含む。1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードの電気抵抗は、摩耗検出ユニットを介して測定される。1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードの少なくとも測定した電気抵抗を使用して、ベルトまたはロープの摩耗状態が判定される。
【0018】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、判定ステップは、1つまたは複数の監視ストランドおよび/またはコードの電気抵抗の変化を判定することを含む。
【0019】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、判定ステップは、電気抵抗の増加を判定することを含む。
【0020】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、電気抵抗の変化は、閾値と比較され、閾値を超えた場合に処置をとる。
【0021】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、処置をとることは、警報を発すること、およびエレベータシステムの動作を停止させること、のうちの1つまたは両方を含む。
【0022】
あるいは、本発明のこのまたは他の態様において、基準ストランドの少なくとも1つの連続性が監視される。詳細な説明は、図面を参照しながら例として、利点および特徴とともに、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】1:1のローピング配設を有する例示的なエレベータシステムの概略図である。
図1B】異なるローピング配設を有する別の例示的なエレベータシステムの概略図である。
図1C】片持ち配設を有する別の例示的なエレベータシステムの概略図である。
図2A】従来技術のエレベータベルトの断面図である。
図2B】従来技術のエレベータロープの断面図である。
図3】エレベータベルト摩耗検出ユニットの概略図である。
図4】エレベータベルトの実施形態の断面図である。
図5】エレベータベルトの別の実施形態の断面図である。
図6】エレベータベルトの別の実施形態の断面図である。
図7】エレベータベルトの別の実施形態の断面図である。
図8】基準コードで使用される基準ストランド、およびエレベータベルトのための監視コードで使用される監視ストランドの実施形態の断面図である。
図9】エレベータベルトのための監視コードで使用される監視ストランド、および図8の基準ストランドの別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1A、1B、および1Cでは、例示的なトラクションエレベータシステム10の概略図が示される。本発明の理解に必要でないエレベータシステム10の特徴(ガイドレール、安全装置、その他等)は、本明細書では論じられない。エレベータシステム10は、1つまたは複数のベルト16によって昇降路14の中で動作可能に吊り下げられるかまたは支持される、エレベータかご12を含む。1つまたは複数のベルト16は、エレベータシステム10の種々の構成要素の周囲で経路選定して送られるように、1つまたは複数のシーブ18と相互作用する。1つまたは複数のベルト16はまた、釣合錘22にも接続することができ、該釣合錘は、動作中に、エレベータシステム10のバランス取りを補助し、トラクションシーブの両側のベルト張力の差を低減させるために使用される。
【0025】
シーブ18は、それぞれ直径20を有し、該直径は、エレベータシステム10の中の他のシーブ18の直径と同一であり得るかまたは異なり得る。シーブ18のうちの少なくとも1つは、駆動シーブであり得る。駆動シーブは、機械50によって駆動される。機械50による駆動シーブの運動は、駆動シーブの周囲で経路選定して送られる1つまたは複数のベルト16を(トラクションを通して)駆動し、運動させ、および/または推進する。
【0026】
シーブ18の少なくとも1つは、ダイバータ、デフレクタ、またはアイドラシーブであり得る。ダイバータ、デフレクタ、またはアイドラシーブは、機械50によって駆動されないが、エレベータシステム10の種々の構成要素の周囲で1つまたは複数のベルト16を誘導するのを補助する。さらに、ダイバータ、デフレクタ、またはアイドラシーブ等の1つまたは複数のシーブ18は、1つまたは複数のベルト16を中央に保つこと、またはシーブ18に沿って所望の位置に保つことを援助するために、その回転軸に沿って凸形状または冠部を有し得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、エレベータシステム10は、エレベータかご12を吊り下げるおよび/または駆動するために、2つ以上のベルト16を使用することができる。加えて、エレベータシステム10は、(図1A、1B、または1Cの例示的なエレベータシステムで示されるように)1つまたは複数のベルト16の両面が1つまたは複数のシーブ18に係合するように、または1つまたは複数のベルト16の片面だけが1つまたは複数のシーブ18に係合するように、種々の構成を有することができる。
【0028】
図1Aは、1つまたは複数のベルト16が、かご12および釣合錘22で終端する、1:1のローピング配設を提供する。図1Bおよび1Cは、異なるローピング配設を提供する。具体的には、図1Bおよび1Cは、かご12および/または釣合錘22が、1つまたは複数のベルト16に係合する1つまたは複数のシーブ18をその上に有することができること、および1つまたは複数のベルト16を、どこかで、一般的には昇降路14内(マシンルームレスエレベータシステム等の場合)またはマシンルーム内(マシンルームを利用するエレベータシステムの場合)の構造で終端させることができることを示す。配設の中で使用されるシーブ18の数は、特定のローピング比率(例えば、図1Bおよび1Cで示される2:1のローピング比率、または異なる比率)を決定する。図1Cはまた、片持ちタイプのエレベータも提供する。本発明は、図1A、1B、および1Cで示される例示的なタイプ以外のエレベータシステムに使用することができる。
【0029】
図2Aは、従来技術のベルト構造または設計の概略図を提供する。各ベルト16は、ジャケット26の中に設けられた(例えば、1つまたは複数のストランドおよび/またはコード24に撚られた)複数のワイヤで構築される。図2で示されるように、ベルト16は、1よりも大きいアスペクト比を有する(すなわち、ベルト幅は、ベルト厚さよりも大きい)。ベルト16は、低い曲げ応力を提供し、ベルトの寿命要件を満たし、また、滑らかな動作を有するために、1つまたは複数のシーブ18を通過するときに十分な柔軟性を有する一方で、エレベータかご12を吊り下げるおよび/または駆動するための強度要件を満たすことができるように十分に強固であるように構築される。ジャケット26は、単一の材料、複数の材料、同じまたは異なる材料を使用した2つ以上の層、および/または膜を含む、任意の好適な材料であり得る。1つの構成において、ジャケット26は、例えば押出または金型ホイールプロセスを使用して、コード24に塗布されるエラストマー等のポリマーであり得る。別の構成において、ジャケット26は、コード24に係合および/または一体化する、編組織物であり得る。追加的な構成として、ジャケット26は、上で言及される変形例の1つまたは複数の組み合わせであり得る。
【0030】
ジャケット26は、コード24をその中で実質的に保持することができる。「実質的に保持する」という句は、機械50からジャケット26を通してコード24にトルクを伝達して、エレベータかご12の運動を駆動するために、ジャケット26が、コード24との十分な係合を有することを意味する。ジャケット26は、(図2Aに示されるように)コード24を完全に包み込むか、コード24を実質的に包み込むか、またはコード24を少なくとも部分的に包み込むことができる。
【0031】
図3を参照すると、摩耗検出ユニット52は、ベルト16の1つまたは複数のコード24に電気的に接続される。摩耗検出ユニット52は、ベルト16の終端部分、例えば昇降路14の上端部に位置するベルト16の端部に接続される。しかしながら、この場所は、例示的なものに過ぎず、摩耗検出ユニット52をベルト16に接続するための他の場所が本範囲内で企図されることを認識されたい。動作中に、電流は、コード24を通して印加される。結果として生じる電圧は、コード24の電気抵抗の決定を可能にする。この測定抵抗は、コードの初期抵抗と比較される。コード24の電気抵抗の変化、一般的に、抵抗の増加は、コード24の摩耗を示す。抵抗の変化は、閾値変化値と比較され、閾値変化値を超えたときに、エレベータシステム10によって処置がとられ得、該処置としては、警報を発する、またはエレベータシステム10の動作を停止させることが挙げられるが、それらに限定されない。
【0032】
上述したように、いくつかのベルト16において、コード24の抵抗の変化の大きさは、ベルト16の曲げサイクルの関数として有意ではない。摩耗検出ユニット52を介して、これらのベルト16の評価をより効果的に行うために、ベルト16は、基準コード24bとは異なる構造を有する1本以上のコード24aで構成される。以下「監視コード」24aと称される、コード24aは、監視コード24aの電気抵抗の変化が、ベルト16の曲げサイクルの関数として、基準コード24bの抵抗の変化よりも大幅に大きくなるように構築される。監視コード24aおよび基準コード24bはどちらも、荷重担持コードであり得る。換言すれば、監視コード24aも基準コード24bも、犠牲コードであることを意図しない。
【0033】
摩耗の検出および評価は、監視コード24aに対して行われ、総じて、監視コード24aとベルト16との間の抵抗の変化で決定される相関を伴う。任意の数の監視コード24aがベルト16に含まれ得、例示的なベルト16の構成を図4図7で示す。図4図7において、ベルト16は、ベルト16の中の様々な場所に可変数の監視コード24aを有する、10本コードのベルト16である。10本コードのベルト16が示されるが、例えば6本、8本、12本コード等の他の数のコードを有するベルト16が、本明細書で開示される主題の実現例で利用され得ることを認識されたい。図4において、ベルト16は、ベルト16の中の長手方向外側場所60に位置する2本の監視コード24aを含み、残りのコードは、基準コード24bで構成される。図5を参照すると、監視コード24aは、長手方向外側位置の内側に位置し得るが、図6において、監視コード24aは、ベルト16の1つの長手方向端部60で隣接位置に位置し得る。以下、図7を参照すると、監視コード24aは、ベルトの中で長手方向中央位置62に位置し得る。本明細書で図示および説明される構成は、例示的なものに過ぎないこと、および本開示によって他のベルト16の構成が企図されることを認識されたい。
【0034】
監視コード24aは、様々な方法で基準コード24bに比べて抵抗のより大きな変化を達成し得る。図8を参照すると、例えば、基準コード24bは、7×7コードであり得、7本のストランド54bがそれぞれ7本のワイヤ55bを含む。一例として、直径0.30mmおよび0.34mmのワイヤ55bは、直径2.95mmのコード24bを形成する、0.94mmのストランド54bを形成する。同じベルト16の監視コード24aは、より小さい直径のワイヤ55aから形成され得、ベルト16の曲げサイクル1つあたり、より高い抵抗の変化を呈する。基準コード24bの破壊強度に等しい破壊強度(例えば、破壊強度の約−25%〜+10%)を達成するために、監視コード24aは、7×19コードであり得、(例えば、1+6+12本の構成で)7本のストランド54aがそれぞれ19本のワイヤ55aを含む。一例として、0.20mmのワイヤ55aは、直径3.0mmのコード24aを形成する、1.0mmのストランド54aを形成する。別の可能な変形例として、図9で示されるように、監視コード24aは、7×12コードであり得、(例えば、3+9本の構成で)7本のストランド54aがそれぞれ12本のワイヤ55aを含む。一例として、0.245mmのワイヤ55aは、直径2.94mmのコード24aを形成する、0.98mmのストランド54aを形成する。そのような構成において、監視コード24aは、基準コード24bと実質的に同じワイヤ55aの断面積を含み得る。他の実施形態において、監視コード24aの断面積は、基準コード24bの断面積の約±10%の範囲内であり得る。監視コード24aがコード1本あたり基準コード24bよりも多いワイヤ、例えばコード1本あたり50%以上多いワイヤを有する場合等の他の構成が、本開示の範囲内で企図される。したがって、監視コード24aの破壊強度は、基準コード24bの破壊強度に実質的に同等である一方で、ベルト16の曲げサイクル1つ当たり、より大きい抵抗の変化を有する。
【0035】
上の説明は、基準コード24bではなく、摩耗について監視コード24aの抵抗の監視を論じているが、それでも、基準コード24bの何らかの監視も起こり得ることが、本発明の範囲内である。例えば、基準コード24bは、(例えば、コードの破損が起こったかどうかを判定するために)連続性を監視することができる。
【0036】
あるいは、ここで図2Bを参照すると、エレベータかご12は、複数のストランド54および/またはコード24に形成される複数のワイヤ55から形成される1つまたは複数の被覆ロープ42によって昇降路14の中で、吊り下げられ得るか、または支持され得る。ワイヤ55、ストランド54、またはコード24は、小さく撚られ、安定しており、そしていくつかの実施形態では、実質的に円形状で、ジャケット26で被覆される。いくつかの実施形態において、ロープ42を形成する前に、個々のストランド54および/またはコード24は、それぞれ、ストランドジャケット60および/またはコードジャケット62で被覆され得る。上で説明されるベルト16に類似して、ロープ42は、監視ストランド54aおよび基準ストランド54bをコード24の1つまたは複数の中に含み、監視は、上で説明される監視と実質的に同じような様式で行われ得る。
【0037】
動作中に、電流は、ロープ42内の監視ストランド54aを通して印加される。結果として生じる電圧は、監視ストランド54aの電気抵抗の決定を可能にする。この測定抵抗は、監視ストランド54aの初期抵抗と比較される。監視ストランド54aの電気抵抗の変化、一般的に、抵抗の増加は、監視ストランド54a内のワイヤ55aの摩耗を示す。抵抗の変化は、閾値変化値と比較され、閾値変化値を超えたときに、エレベータシステム10によって処置がとられ得、該処置としては、警報を発する、またはエレベータシステム10の動作を停止させることが挙げられるが、それらに限定されない。
【0038】
本発明を限られた数の実施形態に関連して詳細に説明してきたが、本発明がそのような開示される実施形態に限定されないことは、容易に理解されるであろう。むしろ、本発明は、これまで説明していないが、本発明の趣旨および範囲に相応する、任意の数の変形物、変更物、置換物、または等価な構成を組み込むように修正することができる。加えて、本発明の種々の実施形態を説明してきたが、本発明の態様は、説明される実施形態の一部だけしか含まない場合があることを理解されたい。故に、本発明は、上の説明によって限定されるものとしてみなされるべきでなく、添付の特許請求の範囲によってだけ限定される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9