(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の目盛り上の数値を指し示す指針を有するアナログ表示部と、様々な表示要素のそれぞれについて少なくとも表示/非表示の状態を個別に制御可能なデジタル表示部とを備えた車両用表示装置であって、
前記アナログ表示部を照明する第1の照明部と、
前記デジタル表示部を照明する第2の照明部と、
前記アナログ表示部およびデジタル表示部の表示動作を開始する時に、前記第1の照明部の明るさを時間の経過に伴って徐々に増大させるとともに、前記第1の照明部の明るさの変化と同期して、予め定めた表示変更パターンに従って前記デジタル表示部の表示色を自動的に調節する表示開始制御部と
を備え、
前記表示開始制御部は、前記第1の照明部の明るさの変化に相当する複数の照明情報と、前記表示変更パターンに相当する複数の表示色情報とを保持する情報記憶部を備え、
前記情報記憶部は、前記第1の照明部の明るさの変化が視認状態に与える影響と、前記デジタル表示部の表示色の変化が視認状態に与える影響とがほぼ一致するように、前記複数の照明情報と、前記複数の表示色情報とを互いに関連付けて保持する
ことを特徴とする車両用表示装置。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、一般的にスピードメータ、タコメータ、燃料計、水温計など様々な計器が運転席前方の計器板上に搭載されている。また、車両各部の状態を表す様々な警告灯、インジケータなども計器板上に搭載されている。
【0003】
また、近年では、計器板用の車両用表示装置は視認性の良いアナログ表示部と、様々な情報を表示可能なデジタル表示部とを備える場合が多い。例えば、スピードメータやタコメータについては、指針を物理的に駆動して、所定の目盛り上の数値を指針で指し示すアナログ表示部として構成される場合が多い。また、スピードメータ、タコメータ以外の構成要素、例えば燃料計、警告灯、インジケータ、オドメータ、トリップメータなどについては、液晶表示パネルなどの表示デバイスを利用してデジタル表示部として構成される場合が多い。
【0004】
また、上記のような車両用表示装置は、計器板上の各部の表示を照明するために、計器板の内側に照明装置を備えている場合が多い。すなわち、昼夜の区別を問わず照明装置を用いて計器板上の各部を照明し、照明光量を調節することにより、常時良好な視認性を確保できるように構成してある。
【0005】
このような車両用表示装置における表示の明るさに関する従来技術が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の車両用表示装置においては、アナログ表示部であるメータと、デジタル表示部である液晶パネルとを備え、更に照明装置として、指針光源、パネル光源および液晶光源を有している。
【0006】
また、特許文献1では、イグニッションスイッチがオンになって表示を開始する時には、パネル光源の明るさが、時間の経過に伴って最小値から最大値まで徐々に上昇した後、予め設定されている設定値に自動的に調整される。また、パネル光源が点灯してその明るさの調整が終了した後で、指針光源及び液晶光源が点灯し、指針光源及び液晶光源は予め設定されている設定値の明るさに直ちに調整される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されているように、動作開始時に表示の明るさを徐々に増大させることにより、この表示を見るユーザ(運転者)に対して好ましい印象を与えることが可能であり、計器板の商品価値を高めることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された制御では、明るさが徐々に増大するのはアナログ表示部だけであり、デジタル表示部の明るさは消灯状態から予め設定した点灯状態まで一気に変化する。そのため、ユーザが計器板全体の表示形態について違和感を感じる可能性が高い。
【0010】
もちろん、ユーザの違和感をなくすために、デジタル表示部についても、アナログ表示部と同じように明るさを徐々に増大するように制御することが容易に考えられる。しかし、アナログ表示部とデジタル表示部とでは視認性に大きな違いがあるため、これらの明るさを同じように制御しても望ましい結果が得られない。
【0011】
すなわち、アナログ表示部については、ユーザは比較的大きい指針の向きの違いや指針と目盛りとの位置関係を容易に読み取ることができるので、表示が比較的暗い状態であっても表示内容の視認性が良い。一方、デジタル表示部については、液晶パネル等の表示画面中に現れる各表示要素が小さく、各々の要素の形状も一定ではないので、表示が比較的暗い状態ではユーザの読み取りが困難になりやすい。従って、もしもデジタル表示部の明るさを暗い状態から徐々に明るくなるように調整する場合には、明るい状態に変化するまでの間は、デジタル表示部がユーザから見て非常に見にくい状態になる。そのため必ずしも計器板としての商品価値が高いとは言えない。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、表示開始時に明るさの調整による演出を行う際に、ユーザが感じる違和感を低減すると共に、全体の表示について良好な視認性を確保することが可能な車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用表示装置は、下記(1)〜(
3)を特徴としている。
(1) 所定の目盛り上の数値を指し示す指針を有するアナログ表示部と、様々な表示要素のそれぞれについて少なくとも表示/非表示の状態を個別に制御可能なデジタル表示部とを備えた車両用表示装置であって、
前記アナログ表示部を照明する第1の照明部と、
前記デジタル表示部を照明する第2の照明部と、
前記アナログ表示部およびデジタル表示部の表示動作を開始する時に、前記第1の照明部の明るさを時間の経過に伴って徐々に増大させるとともに、前記第1の照明部の明るさの変化と同期して、予め定めた表示変更パターンに従って前記デジタル表示部の表示色を自動的に調節する表示開始制御部と
を備え
、
前記表示開始制御部は、前記第1の照明部の明るさの変化に相当する複数の照明情報と、前記表示変更パターンに相当する複数の表示色情報とを保持する情報記憶部を備え、
前記情報記憶部は、前記第1の照明部の明るさの変化が視認状態に与える影響と、前記デジタル表示部の表示色の変化が視認状態に与える影響とがほぼ一致するように、前記複数の照明情報と、前記複数の表示色情報とを互いに関連付けて保持する
こと。
(2) 上記(1)に記載の車両用表示装置において、
前記表示開始制御部は、前記第1の照明部の明るさを調整する時に、前記第2の照明部の照明光量は一定値に固定する。
(
3) 上記(1)に記載の車両用表示装置において、
前記表示開始制御部は、所定の制御終了条件が満たされるまで、前記第1の照明部の明るさ及び前記デジタル表示部の表示色を、一定時間が経過する毎に自動的に更新すること。
【0014】
上記(1)の構成の車両用表示装置によれば、前記デジタル表示部の表示については、表示色を変更するので、明るさを変更しなくても、明るさを変更する場合と同様の表示演出効果を得ることができる。また、前記デジタル表示部の明るさを変更する必要がないので、良好な視認性を確保できる。更に、前記アナログ表示部の明るさ調整と、デジタル表示部の表示色調整とを同期させるので違和感が生じにくい。
また、前記情報記憶部に保持されている情報を順番に読み出して明るさの調整および表示色の調整ができるので制御が容易になる。また、ユーザから見て違和感が生じないように、前記アナログ表示部の明るさと前記デジタル表示部の表示色とを調整することができる。
上記(2)の構成の車両用表示装置によれば、前記デジタル表示部の照明の明るさが低下しないので、常時良好な視認性を確保できる。
上記(
3)の構成の車両用表示装置によれば、簡単な制御だけで前記アナログ表示部の明るさ及び前記デジタル表示部の表示色を徐々に変更することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用表示装置によれば、表示開始時に明るさ等の調整を行って表示の演出効果を得ることができる。しかも、ユーザが感じる違和感を低減することができ、全体の表示について良好な視認性を確保することができる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の車両用表示装置に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0019】
<装置の外観の説明>
本実施形態の車両用表示装置100の外観の具体例が
図1に示されている。
図1に示した車両用表示装置100は、自動車の運転席の前方に配置される計器板の各種表示要素を一体化して構成したものである。
【0020】
図1に示す車両用表示装置100においては、中央部に矩形のマルチ表示部30が配置され、その左側に円形の速度計(スピードメータ)10が配置され、右側に円形の回転計(タコメータ)20が配置されている。また、ターンL表示部41、ターンR表示部42、及びトリップノブ43も備わっている。速度計10および回転計20がアナログ表示部であり、マルチ表示部30がデジタル表示部である。
【0021】
速度計10は、指針11および目盛り12を有している。指針11は、円形の領域のほぼ中央に配置された回転軸に固定されており、後述する速度計駆動機構121によって駆動される。目盛り12は、円形の領域の周辺部に近い位置に、円弧状の可視パターン及び文字を含む意匠として印刷等により形成されている。すなわち、その時の車速(km/h)に応じた方向を向くように指針11が駆動されるので、運転者は指針11の先端が指し示す目盛り12上の位置から車速の値を読み取ることができる。
【0022】
同様に、回転計20も指針21および目盛り22を有している。回転計20の指針21は、エンジンの回転速度(×1000rpm)に応じた方向を向くように駆動されるので、運転者は指針21の先端が指し示す目盛り22上の位置から回転速度の値を読み取ることができる。
【0023】
速度計10および回転計20の各部は、この表示面の背面側に配置される照明用の光源から出射される照明光によって常時照明される。この照明光により、環境の明暗の影響をほとんど受けることなく、運転者は指針11、21の位置や指針11、21の先端と目盛り12、22との位置関係を目視で容易に認識することができる。
【0024】
マルチ表示部30は、カラーの液晶表示パネル(LCD)を用いて構成してあり、様々な表示要素のそれぞれについて表示/非表示の状態や表示色(色相および明度)を個別に制御することができる。
【0025】
図1に示す例では、マルチ表示部30の内部に燃料計31、ウォーニング表示部32、シフトインジケータ33、瞬間燃費計34、オドメータ35、トリップメータ36等の各種表示要素が組み込まれている。
【0026】
マルチ表示部30の液晶表示パネルは、その背面側に配置される照明用の光源から出射される照明光によって常時照明される。すなわち、運転者は背面側から出射され液晶表示パネルを透過した光によって形成される可視像を表示内容として見ることができる。
【0027】
<装置の電気回路の構成の説明>
図1に示した車両用表示装置100の電気回路の構成が
図3に示されている。
図3に示すように、この車両用表示装置100の電気回路には、マイクロコンピュータ110、速度計駆動機構121、回転計駆動機構122、モータドライバ123、液晶表示パネル130、液晶ドライバ131、液晶照明用発光部140、照明用発光部141、ウォーニング用発光部142、読み出し専用メモリ150、電源回路160、インタフェース171、172および操作スイッチ180が備わっている。
【0028】
マイクロコンピュータ110は、CAN(Controller Area Network)規格に対応した通信機能、読み出し専用メモリ(ROM)、読み書き自在なメモリ(RAM)などを内蔵している。マイクロコンピュータ110は内部のメモリ(ROM)上に予め保持されているプログラムを実行することにより、車両用表示装置100の動作に必要とされる様々な機能を実現する。
【0029】
速度計駆動機構121は、速度計10の指針11を駆動するための電気モータを備えている。また、回転計駆動機構122は回転計20の指針21を駆動するための電気モータを備えている。
【0030】
速度計駆動機構121および回転計駆動機構122は、モータドライバ123を介してマイクロコンピュータ110と接続されている。従って、マイクロコンピュータ110は速度計10の指針11の位置および回転計20の指針21の位置をそれぞれ制御することができる。
【0031】
液晶表示パネル(LCD)130は、表示状態(点灯/消灯、色相、明度)を個別に制御可能な二次元配置された多数の微小表示セル(ドット)を有している。多数のドットの表示の組み合わせによって、例えば
図1に示したマルチ表示部30のような様々な表示要素をグラフィック表示することができる。
【0032】
液晶表示パネル130は、液晶ドライバ131を介してマイクロコンピュータ110と接続されている。従って、マイクロコンピュータ110は液晶表示パネル130の表示状態を制御することができる。
【0033】
液晶照明用発光部140は、液晶表示パネル130の表示面の背面側に配置された複数の発光ダイオード(LED)により構成されている。液晶照明用発光部140から出射される照明光は白色に近いスペクトルを有している。また、液晶照明用発光部140の発光ダイオードは、マイクロコンピュータ110の出力および電源ライン(VH)と接続されている。従って、マイクロコンピュータ110は液晶照明用発光部140の照明のオンオフを行うことができる。また、パルス状に照明のオンオフを繰り返し、オンオフのデューティを調整することにより、照明光の明るさを変化させることができる。
【0034】
照明用発光部141は、速度計10、回転計20等の表示面の背面側に配置された複数の発光ダイオードにより構成されている。照明用発光部141の発光ダイオードは、マイクロコンピュータ110の出力および電源ライン(VH)と接続されている。従って、マイクロコンピュータ110は照明用発光部141の照明のオンオフを行うことができる。また、パルス状に照明のオンオフを繰り返し、オンオフのデューティを調整することにより、速度計10および回転計20の照明光の明るさを変化させることができる。
【0035】
ウォーニング用発光部142は、それぞれ個別にマイクロコンピュータ110の出力と接続された複数の発光ダイオードにより構成されている。複数の発光ダイオードのそれぞれは、該当するウォーニング表示要素の背面側に配置されている。例えば、
図1に示したウォーニング表示部32の箇所の背面側に1つの発光ダイオードが配置されている。マイクロコンピュータ110は、ウォーニング用発光部142の各発光ダイオードの点灯/消灯を制御し、複数のウォーニング表示部の表示/非表示を個別に制御できる。
【0036】
読み出し専用メモリ(EEPROM)150は、事前に決定された各種の制御用パラメータを表す定数データを保持している。読み出し専用メモリ150が保持する定数データの中には、表示開始時の調光制御に利用される調光テーブルも含まれている。この調光テーブルの構成例が
図4に示されている。
【0037】
図4に示す調光テーブルにおいては、メモリのアドレスA01〜A16に16個のデータD01〜D16が保持されている。これらのデータD01〜D16のうち前半の8個のデータD01〜D08は、液晶表示パネル130に表示する情報の表示色を決定するためのLED表示色データである。また、後半の8個のデータD09〜D16は照明用発光部141の発光量を決定するためのLEDデューティ(duty)データである。
【0038】
図3に示す電源回路160は、車載バッテリーから供給される電力(+B)に基づき、マイクロコンピュータ110の動作に必要な電圧(Vcc:例えば5V)を生成する。また、マイクロコンピュータ110を初期化するためのリセット信号を生成する。
【0039】
車両のイグニッションオンオフを表すイグニッション信号IGNは、インタフェース171を介してマイクロコンピュータ110に入力される。また、車両上のCAN規格の通信ネットワークの信号ラインCAは、インタフェース172を介してマイクロコンピュータ110と接続されている。
【0040】
マイクロコンピュータ110の入力ポートと接続された操作スイッチ180は、
図1に示したトリップノブ43の操作によりオンオフする。この操作スイッチ180は、オドメータ35およびトリップメータ36の表示切替やリセット操作のために利用される。
【0041】
<装置の動作の説明>
図1に示した車両用表示装置100の主要な動作が
図2に示されている。この動作は、マイクロコンピュータ110によって実行される。
図2に示す動作について以下に説明する。
【0042】
マイクロコンピュータ110に電力が供給されると、マイクロコンピュータ110は所定の初期化を実行した後、
図2のステップS10の処理に進む。ステップS10では、マイクロコンピュータ110はインタフェース171から入力されるイグニッション信号IGNの状態を監視し、イグニッションオンになるまで待機する。イグニッションオンになると次のステップS11に進む。
【0043】
ステップS11及びS12では、マイクロコンピュータ110は車両用表示装置100の初期状態における表示に必要な全てのデータを読み出し専用メモリ150から取得できるように、これらが存在する領域を表すアドレス情報を特定する。
【0044】
ステップS11では、表示開始時の初期データとして、液晶表示パネル130の画面に最初に表示する意匠を表すデータの所在と、液晶表示パネル130の表示色の初期値データの所在と、アナログ表示部の意匠の明るさを表す初期データの所在とを特定する。
【0045】
例えば、
図4に示す構成の調光テーブルが読み出し専用メモリ150に存在する場合には、液晶表示パネル130の表示色の初期データとして、
図4中のデータD01〜D08の最初のアドレスA01を特定する。また、アナログ表示部の意匠の明るさを表す初期データとして、
図4中のデータD09〜D16の最初のアドレスA09を特定する。
【0046】
ステップS12では、表示開始時の最終データとして、液晶表示パネル130の表示色の最終値データの所在と、アナログ表示部の意匠の明るさを表す最終値データの所在とを特定する。
【0047】
例えば、
図4に示す構成の調光テーブルが読み出し専用メモリ150に存在する場合には、液晶表示パネル130の表示色の最終値データとして、
図4中のデータD01〜D08の最後のアドレスA08を特定する。また、アナログ表示部の明るさを表す最終値データとして、
図4中のデータD09〜D16の最後のアドレスA16を特定する。
【0048】
ステップS13では、マイクロコンピュータ110はアナログ表示部およびデジタル表示部が初期状態で表示されるように各部にデータを出力する。すなわち、ステップS11で特定した領域の初期データを利用して、液晶表示パネル130に表示する意匠の内容および表示色と、アナログ表示部を照明する照明用発光部141を制御するLEDデューティ値を出力する。
【0049】
従って、
図4に示す構成の調光テーブルを利用する場合には、ステップS13でデータD01に相当する表示色が液晶表示パネル130に出力され、データD09に相当するデューティにより照明用発光部141の発光量が制御される。
【0050】
ステップS14では、一定時間(例えば1秒間)が経過するまで待機する。一定時間が経過するとマイクロコンピュータ110の処理は次のステップS15に進む。
【0051】
ステップS15では、アナログ表示部およびデジタル表示部の表示状態を変化させるために、マイクロコンピュータ110は次のデータを読み出し専用メモリ150から読み込んで液晶表示パネル130の意匠の表示色および照明用発光部141の制御デューティとして取得する。
【0052】
例えば、ステップS13で初期状態の表示を行ってから一定時間が経過した時には、2番目のアドレスA02のデータD02を液晶表示パネル130の意匠の表示色とし、2番目のアドレスA10のデータD10を照明用発光部141の制御デューティ(明るさ)とする。
【0053】
なお、
図4に示す調光テーブルに保持する2番目以降のデータ(D02〜D08、D10〜D16)については、絶対値であっても良いし、前のデータとの差分(Δ)を表すものであっても良い。差分のデータが調光テーブルに保持されている場合には、ステップS15では、(前回値+今回の差分Δ)の値を出力する。
【0054】
ステップS16では、マイクロコンピュータ110はステップS15で取得した新たなデータを利用して液晶表示パネル130の表示状態(意匠の表示色)および照明用発光部141の制御デューティを更新する。
【0055】
ステップS17では、マイクロコンピュータ110は表示開始時の特別な処理が終了したか否かを識別する。具体的には、ステップS15で読み込んだデータがステップS12で特定した調光テーブルの最後のアドレス(A08又はA16)に到達したか否かを識別する。処理が終了していなければステップS14以降の処理を繰り返し、処理が終了した場合は次のステップS18に進む。
【0056】
なお、
図2に示す処理において、ステップS13〜S17を実行する時には、液晶表示パネル130を照明する液晶照明用発光部140の発光輝度(制御デューティ)は一定に維持される。つまり、この時には液晶表示パネル130の表示の明るさは固定される。
【0057】
ステップS18では、マイクロコンピュータ110は通常の表示処理を実行する。すなわち、CAN規格の通信ネットワークを経由して図示しない他の車載電子制御装置(ECU)との間で情報の交換を行い、必要な情報を取得してアナログ表示部およびデジタル表示部の表示に反映する。例えば、最新の車速、エンジン回転速度、燃料残量、変速機シフト状態、各部の異常の有無等の情報を取得してその結果を表示する。
【0058】
<動作の具体例の説明>
図1に示した車両用表示装置が使用する表示用パラメータの経時変化の具体例が
図5に示されている。また、この車両用表示装置100の速度計10およびマルチ表示部30の表示に関する状態遷移例が
図6に示されている。
【0059】
イグニッションオンになって車両用表示装置100が表示を開始する時には、
図5に示す各曲線のように、表示色のパラメータ(LCD表示色)および速度計10の照明輝度のパラメータ(LED duty)が自動的に変更される。つまり、
図5に示す各時刻t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7、t8でそれぞれ液晶表示パネル130の表示色が、CL01、CL02、CL03、CL04、CL05、CL06、CL07、CL08に切り替わる。同時に、各時刻t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7、t8でそれぞれ速度計10の照明輝度を表す制御デューティがDU09、DU10、DU11、DU12、DU13、DU14、DU15、DU16に切り替わる。
【0060】
ここで、各時刻の表示色CL01〜CL08は
図4に示した各アドレス(A01〜A08)のデータD01〜D08に相当し、各時刻の制御デューティDU09〜DU16は、
図4に示した各アドレス(A09〜A16)のデータD09〜D16に相当する。
【0061】
つまり、
図2に示したステップS12又はS15でセットされるデータにより、
図5に示す各時刻t1〜t8における表示色CL01〜CL08及び制御デューティDU09〜DU16が決定される。
【0062】
図5に示す例では、照明用発光部141の発光量を決定する制御デューティを0%から100%の範囲内で時間の経過に伴って徐々に大きくなるように所定のカーブに従って一定時間毎に切り替えている。従って、速度計10等のアナログ表示部の明るさが徐々に増大する。また、これと同期するように液晶表示パネル130の表示色(色相)を、黒・グレー・白の範囲内で時間の経過に伴って徐々に変化するように所定のカーブに従って一定時間毎に切り替えている。
【0063】
従って、例えば
図5に示す時刻t1においては、照明用発光部141の制御デューティが比較的小さくなり(DU09)、速度計10及び回転計20が非常に暗い状態になる。この時、液晶表示パネル130の意匠を表す表示色(CL01)は黒に近い色相の表示色になるので、照明の明るさが一定であってもユーザの視覚に対しては比較的暗い印象を与えることになる。つまり、照明が暗い速度計10及び回転計20の表示と、色相により暗い印象を与える液晶表示パネル130の表示内容とが整合し、違和感が生じにくい。また、背景等の意匠が黒に近い色相の表示は視認性が高いので、ユーザから暗く見える時であっても高い視認性を確保できる。つまり、暗く見える時であっても、液晶表示パネル130の画面中に何が表示されているのかをユーザは視覚的に確実に読み取ることができる。
【0064】
また、
図5に示す時刻t8においては、照明用発光部141の制御デューティが予め定めた設定値に近い値(DU15:100%以下)まで増大し、速度計10及び回転計20が非常に明るい状態になる。この時、液晶表示パネル130の意匠を表す表示色(CL08)は白に近い色相の表示色になるので、照明の明るさが一定であってもユーザの視覚に対しては比較的明るい印象を与えることになる。つまり、照明が明るい速度計10及び回転計20の表示と、色相により明るい印象を与える液晶表示パネル130の表示内容とが整合し、違和感が生じにくい。また、背景等の意匠が白に近い色相の表示は黒よりも視認性が低いので、ユーザから明るく見える時に液晶表示パネル130の表示内容だけが目立ちすぎるのを防止することができる。
【0065】
従って、車両用表示装置100が表示を開始する時には、時間の経過に伴って、例えば
図6に示すように表示状態が遷移する。すなわち、
図6において時刻t1では速度計10(t1)の表示の照明が制御デューティDU09に決定され、マルチ表示部30(t1)の意匠表示に関する色相が表示色CL01に決定される。また、時刻t4では速度計10(t4)の表示の照明が制御デューティDU12に決定され、マルチ表示部30(t4)の意匠表示に関する色相が表示色CL04に決定される。また、時刻t7では速度計10(t7)の表示の照明が制御デューティDU15に決定され、マルチ表示部30(t7)の意匠表示に関する色相が表示色CL07に決定される。
【0066】
図6に示す例では、マルチ表示部30の画面中に表示された「START」の文字の意匠、ならびにオドメータ及びトリップメータの初期状態を表す意匠の色相が、表示色CL01、CL04、CL07により決定されている。
【0067】
なお、
図4に示した調光テーブルに登録するデータD01〜D08の表示色については、事前に決定した色データの一覧の中で特定色を表す番号であっても良い。また、表示を開始する動作において使用するデータ(D01〜D16)の数や、各データのビット数や、表示を更新する間隔(S14の一定時間)等については、必要に応じて適宜変更することができる。
【0068】
また、
図5に示した例では、表示色CL01〜CL08を「黒・グレー・白」の範囲内で変化するように定めているが、違う色相の範囲内で変化させても良い。例えば、文字板の色に合わせて、「黒・青・淡い青」のような色系統の範囲内で選定しても良い。また、文字板の色とは別系統の色相を用いても良い。
【0069】
いずれにしても、
図5、
図6に示すようにアナログ表示部の照明の明るさを徐々に増大させることにより表示の演出の効果を得ることができ、車両用表示装置100の商品価値を高めることができる。しかも、アナログ表示部の明るさの調整と同期してデジタル表示部の表示色を変更するので、計器板全体の表示について違和感が生じるのを防止することができ、デジタル表示部の視認性の低下も防止できる。