特許第5909336号(P5909336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909336
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】コネクタ端子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-181776(P2011-181776)
(22)【出願日】2011年8月23日
(65)【公開番号】特開2013-45575(P2013-45575A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03831254(US,A)
【文献】 特開2010−055901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、相手端子と導通されるタブ端子部とを備え、前記バレル部の先端が連結部を介して帯状のキャリアに連結された状態から、前記連結部を切断することで前記キャリアから切り離されて使用されるコネクタ端子の製造方法であって、
前記連結部には、前記バレル部が形成された側とは反対側の下面に幅方向へわたって切断溝が形成され、
前記連結部は、前記バレル部が形成された側の上面から前記下面の前記切断溝の方向にカッターで切断され、
前記キャリアから切り離された前記コネクタ端子の前記バレル部に前記電線の導体が接続され、次いで、前記バレル部及び前記電線の端部が樹脂モールドによって覆われて防水される、
ことを特徴とするコネクタ端子の製造方法
【請求項2】
銅または銅合金から形成されてなり、前記導体がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる前記電線が接続されることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ端子の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの端部に接続されるコネクタ端子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ケーブルの端部に接続されるコネクタ端子に防水性を持たせるために、上下型からなる成形金型の内部に、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着した端末接続部を収容してセットする成型空洞のモールド部が設けられ、モールド部に溶融状態のモールド樹脂を射出注入して端末接続部を被覆成形することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の端子金具は、連結部を介してキャリアに連結されており、連結部の切断によりキャリアから切り離されて用いられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−162647号公報
【特許文献2】特開2009−99277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図9に示すように、連結部をカッターで切断してキャリアから端子金具1を切り離すと、その切断箇所にバリAが発生することがある。そして、このようにバリAを有した端子金具1では、図10に示すように、電線2の接続箇所を樹脂モールド3で覆っても、樹脂モールド3からバリAが突出し、樹脂モールド3による防水効果が不十分となり、電線2の芯線4と端子金具1との接続箇所が被水するおそれがあった。
【0006】
特に、アルミニウム電線と銅端子とを圧着して接続するような場合、異種金属からなる接続箇所が被水することにより、異種金属接触腐食などの電食が生じてしまう。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、導体との接続箇所における良好な防水性及び耐食性を得ることが可能なコネクタ端子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ端子の製造方法は、下記(1)または(2)を特徴としている。
(1) 電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、相手端子と導通されるタブ端子部とを備え、前記バレル部の先端が連結部を介して帯状のキャリアに連結された状態から、前記連結部を切断することで前記キャリアから切り離されて使用されるコネクタ端子の製造方法であって、
前記連結部には、前記バレル部が形成された側とは反対側の下面に幅方向へわたって切断溝が形成され、
前記連結部は、前記バレル部が形成された側の上面から前記下面の前記切断溝の方向にカッターで切断され、
前記キャリアから切り離された前記コネクタ端子の前記バレル部に前記電線の導体が接続され、次いで、前記バレル部及び前記電線の端部が樹脂モールドによって覆われて防水される、
こと。
(2) 上記(1)の構成のコネクタ端子の製造方法において、銅または銅合金から形成されてなり、前記導体がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる前記電線が接続されること。
【0009】
上記(1)の構成のコネクタ端子の製造方法では、キャリアから切り離すために切断される連結部における切断方向前方側に切断溝が形成されているので、カッターで連結部を切断しても、バリの発生を抑えることができる。
したがって、バリが樹脂モールドから突出して防水性を低下させるような不具合をなくすことができ、樹脂モールドによる電線との接続箇所の防水性を長期にわたって良好に維持することができ、高い接続信頼性を得ることができる。
上記(2)の構成のコネクタ端子の製造方法では、アルミニウムまたはアルミニウム合金ならなる導体を有する電線を接続することにより、異種金属接触による電食が大きな銅−アルミニウム接触となるような場合でも、この異種金属接触箇所を樹脂モールドによって確実に防水することができ、良好な耐食性を確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導体との接続箇所における良好な防水性及び耐食性を得ることが可能なコネクタ端子の製造方法を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】キャリアに連結された本実施形態に係るコネクタ端子の斜視図である。
図2】キャリアに連結された本実施形態に係るコネクタ端子の裏面側から視た斜視図である。
図3】コネクタ端子に接続される電線の端部の側面図である。
図4】コネクタ端子とキャリアとを連結する連結部における側面図である。
図5】コネクタ端子への電線の接続の仕方を説明する側面図である。
図6】樹脂モールドが設けられたコネクタ端子のバレル部の側面図である。
図7】コネクタ端子の変形例を説明する連結部における側面図である。
図8】コネクタ端子の変形例を説明する連結部における側面図である。
図9】バリが発生したコネクタ端子の側面図である。
図10】樹脂モールドが設けられたコネクタ端子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、キャリアに連結された本実施形態に係るコネクタ端子の斜視図、図2は、キャリアに連結された本実施形態に係るコネクタ端子の裏面側から視た斜視図、図3は、コネクタ端子に接続される電線の端部の側面図、図4は、コネクタ端子とキャリアとを連結する連結部における側面図、図5は、コネクタ端子への電線の接続の仕方を説明する側面図、図6は、樹脂モールドが設けられたコネクタ端子のバレル部の側面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、コネクタ端子10は、銅または銅合金等の導電性金属材料を、例えば、プレス加工することにより形成されたもので、バレル部21及びタブ端子部31を有している。
【0016】
図3に示すように、このコネクタ端子10が接続される電線11は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯線(導体)12と、この芯線12の周囲に押出し被覆された外被13とを有している。
【0017】
バレル部21は、芯線圧着部22と、外被圧着部23とを有している。芯線圧着部22は、電線11の端部で露出された芯線12を圧着する。これにより、電線11の芯線12とコネクタ端子10とが導通接続される。また、外被圧着部23は、電線11の端部における外被13部分を圧着する。これにより、電線11の外被13部分がコネクタ端子10に固定される。
【0018】
上記のコネクタ端子10は、バレル部21側の端部に、連結部41が形成されており、この連結部41を介して帯状のキャリア42に連結されている。キャリア42には、コネクタ組立時に使用されるロボットアーム等の運搬機器の凸部(図示しない)を嵌め込むための嵌合孔43が長手方向に並設されている。このように、コネクタ端子10は、キャリア42に連結された連鎖端子の状態とされ、部品供給装置(図示略)によって供給される。
【0019】
このコネクタ端子10は、バレル部21の形成側である上面側から連結部41を切断することにより、キャリア42から切り離して用いられる。
【0020】
図4に示すように、コネクタ端子10とキャリア42とを連結する連結部41には、コネクタ端子10の近傍部分に、幅方向へわたって切断溝44が形成されている。この切断溝44は、切断方向前方側であるバレル部21の形成側と反対側の下面側に形成されたもので、断面視V字状に形成されている。
【0021】
次に、コネクタ端子10に電線11を接続する場合について説明する。
【0022】
図5に示すように、部品供給装置から送り出されるキャリア42に連結されたコネクタ端子10を型51の所定位置に配置させた状態でカッター52を下降させる。これにより、このカッター52によって連結部41のコネクタ端子10の近傍部分を切断する。
【0023】
このとき、連結部41には、コネクタ端子10の近傍部分における切断方向前方側に、幅方向へわたって切断溝44が形成されているので、切断のためのカッター52の外力が切断溝44の底部に集中する。この結果、切断溝44が連結部41に設けられておらず切断のためのカッター52の外力が連結部41において分散する従来の場合と比べて、カッター52による切断時のバリの発生が抑えられる。
【0024】
次に、このコネクタ端子10のバレル部21に、芯線12を露出させた電線11の端部を配置させ、図示略のクリンパによってバレル部21の芯線圧着部22及び外被圧着部23を加締め、電線11をコネクタ端子10に圧着させる。
【0025】
次に、コネクタ端子10のバレル部21を成形型で覆い、成形型内に溶融樹脂を注入し、図6に示すように、バレル部21及び電線11の端部の周囲を樹脂モールド55で覆う。このようにすると、コネクタ端子10における電線11の接続箇所が樹脂モールド55で覆われるので、電線11の接続箇所が確実に防水される。
【0026】
ここで、コネクタ端子10にバリが形成されていると、このバリが樹脂モールド55から突出し、樹脂モールド55による防水効果が不十分となり、電線11のコネクタ端子10との接続箇所が被水するおそれがある。特に、本例のように、銅または銅合金からなるコネクタ端子10に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯線12を有する電線11を接続した場合、異種金属からなる接続箇所が被水することにより、異種金属接触腐食などの電食が生じてしまう。
【0027】
しかし、本実施形態では、キャリア42から切り離すために切断される連結部41における切断方向前方側に切断溝44が形成されているので、カッター52で連結部41を切断しても、コネクタ端子10におけるバリの発生を抑えることができる。
【0028】
つまり、本実施形態に係るコネクタ端子10によれば、バリが樹脂モールド55から突出して防水性を低下させるような不具合をなくすことができる。
【0029】
よって、樹脂モールド55による電線11との接続箇所の防水性を長期にわたって良好に維持することができ、高い接続信頼性を得ることができる。特に、アルミニウムまたはアルミニウム合金ならなる芯線12を銅または銅合金からなるコネクタ端子10に接続することにより、異種金属接触による電食が大きな銅−アルミニウム接触となるような場合でも、この異種金属接触箇所を樹脂モールド55によって確実に防水することができ、良好な耐食性を確保することができる。
【0030】
また、連結部41に切断溝44を形成したことにより、連結部41における切断に要するせん断力等を少なくすることができ、よって、連結部41の切断を手作業で行ってキャリア42から容易に切り離すこともできる。
【0031】
なお、上記の実施形態では、V字状の切断溝44を連結部41に形成した場合を例示したが、この切断溝44の形状は、V字状に限らない。
【0032】
この切断溝44の形状としては、例えば、図7に示すように、円弧状に凹んだ形状でも良く、また、図8に示すように、矩形状に凹んだ形状でも良い。
【0033】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0034】
10 コネクタ端子
11 電線
12 芯線(導体)
13 外被
21 バレル部
31 タブ端子部
41 連結部
42 キャリア
44 切断溝
55 樹脂モールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10