【文献】
増田和明,外1名,多目的Particle Swarm Optimizationに基づく制約条件付き大域的最適化手法,電気学会論文誌C,日本,(社)電気学会,2011年 5月 1日,第131巻,第5号,pp.990-999
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
MOPSOアルゴリズムを用いて多目的最適化問題を解くことにより、設計対象物の最適な設計値を計算する機能をコンピュータに実現させる設計支援プログラムであって、
前記MOPSOアルゴリズムで用いる制約関数に、設計変数、信頼性指標、標準偏差及び単位勾配ベクトルからなるSLSVの値を変数として代入し、目的関数空間上に配置されたパーティクルの各々について前記制約関数を満足するか否かを判定する機能をコンピュータに実現させる
ことを特徴とする設計支援プログラム。
前記制約関数を満足しないパーティクルが存在する場合には、当該パーティクルを違反度が小さくなる方向へ移動させる機能をコンピュータに実現させることを特徴とする請求項1に記載の設計支援プログラム。
シグマ法を用いて前記MOPSOアルゴリズムによるパーティクルの位置更新を行う機能をコンピュータに実現させることを特徴とする請求項1または2に記載の設計支援プログラム。
前記制約関数を満足しないパーティクルが存在する場合には、当該パーティクルを違反度が小さくなる方向へ移動させる手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の設計支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る設計支援装置1の構成概略図である。この
図1に示すように、本実施形態に係る設計支援装置1は、信頼性評価を含む最適化設計手法に基づいて設計対象物の最適な設計値を計算する例えばパーソナルコンピュータであり、入力装置2、表示装置3、記憶装置4及び処理装置5から構成されている。
【0016】
入力装置2は、例えばキーボードやマウス等であり、ユーザによる入力操作に応じた信号(操作信号)を処理装置5に出力する。表示装置3は、例えば液晶ディスプレイであり、処理装置5から入力される画像信号に応じた画像を表示する。これら入力装置2及び表示装置3は、設計支援装置1のユーザインターフェイスとして機能するものである。
【0017】
記憶装置4は、OS(Operating System)プログラムやアプリケーションプログラム、各種設定データ等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)と、処理装置5が各種処理を実行する際にデータの一時保存先として使用されるRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリから構成されている。この記憶装置4(特にHDD)には、設計支援装置1、つまりパーソナルコンピュータに信頼性評価を含む最適化設計手法に基づいて設計対象物の最適な設計値を計算させるための設計支援プログラム4aが記憶されている。
【0018】
処理装置5は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶装置4(特にHDD)に記憶されている各種プログラムと入力装置2から入力される操作信号とに基づいて各種処理を実行する。この処理装置5が、記憶装置4に記憶されている設計支援プログラム4aに従い、信頼性評価を含む最適化設計手法に基づいて設計対象物の最適な設計値を計算する。
【0019】
次に、上記のように構成された本設計支援装置1の動作、つまり処理装置5が、記憶装置4に記憶されている設計支援プログラム4aに従って、信頼性評価を含む最適化設計手法に基づいて設計対象物の最適な設計値を計算する手順について説明する。
なお、以下では、本実施形態において採用する信頼性評価を含む最適化設計手法の理解を容易とするために、始めに本実施形態での最適化設計手法の実現に必要な各種手法について説明する。
【0020】
1.多目的最適化手法
1−1.多目的最適化問題の定式化
まず、多目的最適化手法について説明する。n個の目的関数を最小化する多目的最適化問題は下記(1)式で定式化される。なお、下記(1)式において、f
i(x)はi番目の目的関数、xは設計変数ベクトル、zは設計変数の数を表す。また、x
Liとx
Uiはi番目の設計変数に直接的に課される側面制約条件であり、g
j(x)は制約関数、mはその数である。
【0022】
多目的最適化問題では、目的関数間にトレードオフの関係が存在する時、複数の目的関数を同時に最小化する解は一般的に存在しないため、パレート最適解の概念が導入される。また、多点同時探索型の多目的最適化問題では、探索点間に優越関係が存在する。パレート最適解及び探索点間の優越関係については以下で説明する。
【0023】
1−2.パレート最適解
多目的最適化問題では、上記のように複数の目的関数が存在し、それぞれの目的関数が最小値をとる点は異なるので、全ての目的関数を同時に最小化することは困難である。よって、以下のようなパレート最適解の概念を導入する。
例えば、
図2(a)に示すように、2つの目的関数f
1、f
2を最小化する問題を解いた時、f
1を横軸、f
2を縦軸とする解空間上に4つの解a、b、c、dが得られた場合を考える。解aと解bを比べた場合、f
1を基準に考えると、解aは解bより優れているが、f
2を基準に考えると、解bが解aより優れている。よって、総合的にどちらの解が優れているか決定できない。解cと解dを比べた場合も同様である。
【0024】
一方、解bと解dを比べた場合、f
1、f
2のどちらを基準にしても解bは解dより優れている。よって、総合的にも解bは解dより優れているといえる。以上のように、多目的最適化問題においては、複数の解から最適解を一つに絞ることが困難であり、
図2(a)では解a、b、cの3つの最適解が得られることになる。これらの解はパレート最適解と呼ばれ、以下のように考えられる。
・実行可能集合の中に、他の目的関数の値を増加させることなく、ある目的関数の値を減少させる点xを持たないとき、x
*はパレート最適解である。
・実行可能集合の中に、全ての目的関数を同時に改善する点xを持たないとき、x
*は弱パレート最適解である。
なお、
図2(b)に示すように、目的関数空間内でパレート最適解を結んで形成される曲線をパレート曲線という。
【0025】
1−3.探索点間の優越関係
多点同時探索型の多目的最適化問題における探索点間の優越関係は下記(2)式によって定式化される。
【0027】
i番目の探索点の設計変数ベクトルをx
iとし、j(≠i)番目の探索点の設計変数ベクトルをx
jとして上記(2)式が成立する場合、x
iはx
jに対して優越するといい、x
iを非劣解、x
jを劣解と呼ぶ。探索点間を優越関係を用いて探索を進める手法は、MOGAやNPGA、NSGA等の多くのEMOで採用されている。
【0028】
2.PSO(Particle Swarm Optimization)
2−1.PSOの概念
本実施形態では、多目的最適化手法の内、MOPSO(Multiobjective-PSO)と呼ばれる手法を採用する。MOPSOは多目的であるが、先に基本となる単一目的の通常のPSOについて説明する。PSOとは、パーティクルと呼ばれるランダムに配置された探索点で群れ(swarm)を構成し、過去の行動履歴に従って動的に調整される速度に基づいて、解空間を目的関数値が改善される方向にパーティクルが飛び回ろうとする探索アルゴリズムである。
【0029】
基本原理は、群れを構成する個体であるパーティクルが自由に行動するわけではなく、パーティクルの独自情報と群れ全体の共通情報を組み合わせ、一定の規則に従って行動するというものである。一般的なPSOは、目的関数に関する微分情報を必要としないため、様々な問題に適用が可能であり、且つ基本的な計算を使用する簡単なアルゴリズムであるにも関わらず、非線形最適化問題を高速に解くことができるという特徴を有している。
【0030】
2−2.PSOの基本アルゴリズム
PSOでは、パーティクルが解空間内を移動し続ける。下記(3)式によりパーティクルごとに速度vが更新され、下記(4)式によりパーティクルごとに位置xが更新されることにより、次世代のパーティクルの速度vと位置xが決定される。
【0032】
ここで、i(=1、2、…、N)はパーティクル番号であり、j(=1、2、…、z)は次元の成分番号、kは探索更新回数、r
1ij、r
2ijは区間(0、1)上の一様乱数、ω、C
1、C
2はそれぞれの項に対する重み係数である。一般的には、C
1+C
2≦4となるようにC
1、C
2を決定する必要があるが、C
1=C
2=2がよく用いられる。
【0033】
制約関数を持たない一般的なPSOの探索アルゴリズムは以下の通りである。
第1ステップ:パーティクルの数N、重み係数ω、C
1、C
2及び最大繰り返し回数k
maxを決定する。
第2ステップ:各パーティクルの初期位置x
0iと初期速度v
0iを実行可能領域内にランダムに設定する。
第3ステップ:上記(3)式及び(4)式を用いて、各パーティクルの速度v及び位置xを更新する。
第4ステップ:過去の探索における探索点(パーティクル)iの最良値である自己ベストpbestと、探索点全体における過去の最良値である集団ベストgbestを更新する。具体的には、更新された位置x
k+1iが、f(x
k+1i)≦f(pbest
ki)を満たす場合にpbest
k+1i=x
k+1iとし、満たさない場合にpbest
k+1i=pbest
kiとする。また、グループ内での最小のpbest
k+1をpbest
minとするとき、gbest
k+1=pbest
minとする。
第5ステップ:k=k
maxならば、最終解をgbest
k+1とし、最終値をf(gbest
k+1)として探索アルゴリズムを終了する。k≠k
maxならば、k=k+1として第3ステップへ戻る。
【0034】
3.MOPSO(Multiobjective-PSO)
3−1.MOPSOの基本アルゴリズム
上記のように、PSO等の単一目的最適化問題では、最終的に全てのパーティクルが設計変数空間内で特定の箇所に収束することを目的としたが(
図3(a)参照)、多目的最適化問題では、各パーティクルが目的関数空間内に良好なパレート曲線を描くことを目的とする(
図3(b)参照)。パレート曲線上の1つのパーティクルが1つのパレート最適解を表しているため、パレート曲線上の広い部分に均一で多数のパーティクルが集まれば、様々な状況における最適解が得られることになる。つまり、多目的最適化問題では、パーティクルがパレート曲線上に集まる収束性と、パーティクルがパレート曲線の広い範囲に広がる広域性が求められる。
【0035】
本実施形態で採用するMOPSOの基本的なアルゴリズムは以下の通りである。
第1ステップ:パーティクルの数N、重み係数ω、C
1、C
2及び最大繰り返し回数k
maxを決定する。
第2ステップ:第1世代のパーティクルを実行可能領域にランダムに配置し、その中でのパレート最適解をアーカイブに保存する。
第3ステップ:シグマ法を用いたMOPSOによって各パーティクルを移動させる。この時、PSOと同様に、自己ベストpbest及び集団ベストgbestを更新する。
第4ステップ:各パーティクルについて制約関数を満足するか否かを判別し、制約関数を満足するパーティクルの中でのパレート最適解を集めてアーカイブに保存し、制約関数を満足しないパーティクルについては違反度が小さくなる方向へ移動させる。
第5ステップ:k=k
maxならば、その時のアーカイブ内のパレート最適解を最終結果としてアルゴリズムを終了し、k≠k
maxならば、k=k+1として第3ステップへ戻る。
以下、上記MOPSOの基本アルゴリズムについての補足説明を行う。
【0036】
3−2.アーカイブによるパレート最適解の保存
滑らかなパレート曲線を得るには多数のパレート最適解が必要となるので、計算過程で得られた優良な解をエリート個体として保存するためのエリート保存戦略が重要となる。アーカイブとは、そのようなエリート保存戦略を実現する機能である。アーカイブの中には、まず、第1世代のパレート最適解を保存し、第2世代以降については移動後のパーティクルのパレート最適解を一旦全て保存する。その後、増えたアーカイブの中でのパレート最適解だけをアーカイブ内に残し、残りは消去する。
【0037】
図4を参照しながら説明すると、k+1代目のパレート解A、B、C、Dにおいて、A、B、Cはk代目のアーカイブを含めてもパレート解なので、k+1代目のアーカイブに含まれる。一方、Dはk代目のアーカイブを含めた時はパレート解ではないので、k+1代目のアーカイブには含まれない。また、k代目のアーカイブであるaは、k+1代目のパレート解を含めたときにはパレート解でないので、k+1代目のアーカイブには含まれない。以上のように、第1世代から最終世代までの全ての解の中から、パレート解を抽出できるようになる。
【0038】
3−3.シグマ法によるパーティクルの移動
パレート曲線の広域性を確保するためにシグマ法を採用する。シグマ法とは、グループベスト(集団ベストgbest)の代わりに局所的なローカルベストを用いる方法である。このシグマ法では、例えば目的関数空間が2次元の場合(2つの目的関数f
1、f
2が存在する場合)、下記(5)式を用いてシグマ値σを算出する。
【0040】
図5(a)に示すように、シグマ値σは、目的関数空間内で原点から放射線状に伸びる直線上で同じ値をとる。f
1=f
2でσ=0、f
1=0でσ=−1、f
2=0でσ=1であり、連続的に変化する。また、目的関数空間が3次元の場合(3つの目的関数f
1、f
2、f3が存在する場合)には、下記(6)式を用いてシグマ値σをベクトルとして算出することができる。
【0042】
シグマ法では、このシグマ値を基準にしてローカルベストを決定する。具体的には、各パーティクルのシグマ値と、現在の全てのパレート解のシグマ値を比較し、各パーティクルと一番近い大きさのシグマ値を持ったパレート解をローカルベストにする。これにより、
図5(b)に示すように、パーティクル群が広域性を保ったままパレート集合を形成でき、結果として広い範囲でのパレート曲線が得られる。
【0043】
3−4.制約関数を満足しないパーティクルの処置
PSOの性質として、制約関数を持つ最適化問題では収束結果が悪化するという問題がある。従来は、制約関数を満足しないパーティクルは移動前の位置に戻すという方法が用いられていたが、この方法では計算効率が悪化する問題に加えて、制約関数の境界周辺を十分に探索できないという問題がある。
【0044】
この問題を解決するために、制約関数を満足しないパーティクルは、その位置から実行可能領域まで移動させる、つまり違反度を小さくする方向へ移動させるという手法を採用する。さらに、一般的に最適解(パレート解)は制約条件が活性化するところに存在するので、パーティクルを実行可能領域に移動させた後、そのパーティクルを実行可能領域の境界近傍まで移動させる。この手法は計算効率が悪化する可能性はあるが、パレート解の収束性と広域性の改善を期待できる。
【0045】
また、一度制約違反をしたパーティクル、つまり制約関数を満足しなかったパーティクルは、次の世代でも制約を違反する方向に移動しやすいので、これを防ぐために、制約を違反したパーティクルの速度をゼロにして、次の世代での移動を自己ベストpbestと集団ベストgbestだけに依存させることが有効である。
【0046】
制約違反をしたパーティクルを実行可能領域に移動させる手順は以下の通りである。
第1ステップ:制約を違反したパーティクルを動かすステップ幅sを決定する。
第2ステップ:パーティクルが違反している制約関数の勾配を基に、違反したパーティクルを移動させる方向(単位方向ベクトルh)を決定し、違反したパーティクルの速度をゼロに設定する。
第3ステップ:違反したパーティクルを現在位置からh方向にステップ幅s分だけ移動させ、その位置での違反度を計算する。
第4ステップ:移動後の位置でパーティクルが制約関数を満足していなければ、第3ステップに戻り、同一方向にさらに移動させ、満足していれば、次のステップへ進む。なお、移動後の位置で制約関数が悪化していれば第2ステップに戻り、移動方向を変更する。
第5ステップ:制約関数を満足した位置と以前の位置とを利用して、制約関数が活性となる位置(実行可能領域の境界)、すなわちg
j(x)=0となる位置を求め、その位置へパーティクルを移動させる。
なお、
図6は、制約違反したパーティクルが上記アルゴリズムにより実行可能領域内に戻るまでの過程を示す概念図である。
【0047】
4.信頼性解析
4−1.一次信頼性解析法
信頼性は、構造が破損しない確率で定義される。確率変数をZとし、強度をR(Z)、負荷荷重をS(Z)とすると、信頼性は下記(7)式に示すような限界状態関数g(Z)で表される。
【0049】
構造設計においては、材料特性や負荷荷重を確率変数Zとしてモデル化し、負荷荷重S(Z)が強度R(Z)を越える場合を破損基準として信頼性を評価する。その他に、変位がその上限値を越える場合や固有振動数がその下限値を下回る場合などの構造応答に関する設計基準を破損基準とみなして信頼性を評価する場合もある。構造破損確率は、Zの結合確率密度関数f
Z(Z)を用いた下記(8)式によって評価する。
【0051】
一般的に、結合確率密度関数f
Z(Z)の複雑さや限界状態曲面の形状などのために、上記(8)式を解析的に解くことは困難である。そこで、限界状態関数を線形近似して破壊確率を評価する一次信頼性解析法(FORM:First Order Reliability Method)が広く用いられている。
【0052】
このFORMのアルゴリズムは以下の通りである。
第1ステップ:
図7(a)に示すように、Z空間の確率変数ZをU空間の標準正規確率変数Uに変換する。破損確率は、
図7(b)に示すような破損領域Dfの確率として与えられる。ここで、
図7(b)に示す標準正規確率密度関数Φを下記(9)式で表すと、U空間内において、標準正規確率変数Uは下記(10)式で求められる。つまり、下記(10)式によりZ空間の確率変数ZをU空間の標準正規確率変数Uに変換できる。
【0054】
第2ステップ:
図7(b)に示すように、U空間における原点Oから、限界状態曲線までの最短距離βを与える点u
*を探索し、その点で限界状態曲線を線形近似する。ここで、βを信頼性指標と呼び、u
*を設計点と呼ぶ。
第3ステップ:標準正規確率密度関数Φと信頼性指標βからなる下記(11)式を用いて破壊確率P
fを評価する。
【0056】
4−2.ラクビッツ・フィースラー法
上述した信頼性指標βを求める手法として、ラクビッツ・フィースラー法が広く使用されている。このラクビッツ・フィースラー法は、設計点u
*において限界状態関数の勾配の逆方向が、U空間の原点Oから設計点u
*への方向と一致するという、下記(12)式で表される性質を利用したものである。なお、h(u)は、U空間に変換された限界状態関数である。
【0058】
以下、ラクビッツ・フィースラー法によって信頼性指標βを求めるアルゴリズムについて、
図8(a)を参照しながら説明する。
第1ステップ:m=1とし、初期点u
(m)を仮定する。
第2ステップ:下記(13)式及び(14)式を用いて、初期点u
(m)における限界状態関数の勾配∇h(u
(m))と、その単位勾配ベクトルα
(m)を算出する。
【0060】
第3ステップ:原点を通る−α
(m)方向で、u
(m)で線形化した限界状態関数の値がゼロとなる点を求める。h(u)をu
(m)でテーラー展開して、h(u)=0を代入すると、下記(15)式が得られる。
【0062】
ここで、u=u
(m+1)とすると、下記(16)式が得られる。また、原点からの距離、つまり信頼性指標βは下記(17)式を用いて求めることができる。
【0064】
第4ステップ:近似する前の限界状態関数に対して、h(u
(m+1))=0であれば終了し、そうでなければ、m=m+1として第2ステップに戻る。
【0065】
4−3.SLSV法
SLSV(Single Loop Single Variable)法は、信頼性最適化問題において必要になる二重ループのアルゴリズムを単一ループにする手法である。
図8(b)は、SLSV法の概念図である。正規化されたU空間上で、半径β
tと制約関数h(u)≧0が存在し、h(u)<0の場合に破損する。原点から限界状態曲面(h(u)=0)までの距離が信頼性指標βとなる。
【0066】
具体的には、信頼性指標βを、目標にする信頼性指標β
Tで置き換え、β
Tを使用した場合の限界状態曲面を求める。ここで、βとβ
Tとの比較結果を以下のようにまとめる。
A:β<β
T、 B:β=β
T、 C:β>β
T
Aの時、求められた信頼性指標が近似した信頼性指標より小さいので、β
Tを大きくする必要がある。逆に、Cの時には、求められた信頼性指標が近似した信頼性指標より大きいので、β
Tを小さくすることができる。このような繰り返し計算を行うことで、Bの状態へと近づけていく。実際の近似手法は下記(18)式で表される。
【0068】
ただし、∇hは正規化された変数Uでhを微分した勾配ベクトルである。また、正規化の式から設計点u
*は下記(19)式で表される。
【0070】
よって、上記(18)式及び(19)式から下記(20)式が導かれる。しかしながら、設計点u
*を求めなければ、単位勾配ベクトルα
*の値を求めることができない。そこで、上記(20)式を下記(21)式のように近似する。このように近似し、繰り返し計算を行うことにより、設計変数を最適点へと近づける。
ここで、下記(21)式によって表されるx(k)が、SLSVの値である。すなわち、SLSVの値は、設計変数d、信頼性指標β、標準偏差σ及び単位勾配ベクトルαからなる値である。
【0072】
5.本実施形態における最適化設計手法
本実施形態では、上述した制約関数の感度解析を利用した多目的最適化アルゴリズムであるMOPSOと、信頼性評価アルゴリズムであるSLSV法を組み合わせてなる、信頼性評価を含む最適化設計手法を採用する。
図9に、本実施形態における最適化設計アルゴリズムを示す。つまり、本設計支援装置1の処理装置5は、
図9に示す最適化設計アルゴリズム(設計支援プログラム4aに記述されたアルゴリズム)に従って、設計対象物の最適な設計値を計算する。
【0073】
以下、本実施形態における最適化設計アルゴリズムの各ステップについて説明する。
まず、第1世代のパーティクルを目的関数空間(解空間)上における実行可能領域にランダムに配置する(ステップS1)。なお、上記(3)式及び(4)式の計算に必要なパーティクルの数N、重み係数ω、C
1、C
2及び最大繰り返し回数k
maxは、ユーザによる入力装置2の操作によって事前に入力されている。
【0074】
続いて、上述したシグマ法を用いたMOPSOによって各パーティクルの位置を更新する(ステップS2)。なお、シグマ法を用いたMOPSOによって各パーティクルの位置を更新する手順(パーティクルを移動させる手順)については、前述の2−2項、3−1項、3−3項を参照されたい。
続いて、各パーティクルについて、制約関数g
i(x
(k))を算出すると共に、単位勾配ベクトルαを下記(22)式を用いて算出する(ステップS3)。
【0076】
続いて、各パーティクルについて、MOPSOの制約関数g
i(x
(k))に代入する変数の値を、設計変数d、信頼性指標β、標準偏差σ及び単位勾配ベクトルαからなるSLSVの値(上記(21)式参照)に置き換え、その制約関数を満足するか否かを判定する(ステップS4)。なお、判定式は下記(23)式で表わされる。
【0078】
上記ステップS4にて「No」の場合、つまり制約関数を満足しないパーティクル(制約違反したパーティクル)が存在する場合、制約違反したパーティクルを違反度が小さくなる方向へ移動させた後、上記ステップS4に戻る(ステップS5)。なお、制約違反をしたパーティクルを実行可能領域に移動させる手順は前述の3−4項の通りである。
一方、上記ステップS4にて「Yes」の場合、つまり全てのパーティクルが制約関数を満足する場合、現在のパーティクルの中からパレート解を集め(ステップS6)、集めたパレート解をアーカイブに保存する(ステップS7)。なお、アーカイブによるパレート最適解の保存の手順については、前述の3−2項を参照されたい。
【0079】
続いて、繰り返し回数kがk
maxに等しいか否かを判定し(ステップS8)、「No」の場合(k≠k
maxの場合)には、k=k+1として上記ステップS2へ戻る一方、「Yes」の場合(k=k
maxの場合)には、その時のアーカイブ内のパレート最適解を最終結果、つまり最適な設計値として本アルゴリズムを終了する(ステップS9)。
【0080】
以上のように、本実施形態によれば、MOPSOアルゴリズムで用いる制約関数に、SLSV法で用いる設計変数、信頼性指標、標準偏差及び単位勾配ベクトルからなる変数を代入し、目的関数空間上に配置されたパーティクルの各々について制約関数を満足するか否かを判定することにより、信頼性評価を含む多目的最適化問題を解くためのループが単一ループ構造となるため、設計対象物の最適な設計値を計算するに当たって、最終的な結果を得るまでの計算時間を短縮することが可能となる。
【0081】
図10に、本実施形態における最適化設計アルゴリズムの妥当性を検証した結果を示す。ここでは、信頼性指標βの違いが、最終的に得られるパレート解に与える影響を調べるために、信頼性制約が線形関数で表わされる次の二目的問題(下記(24)式参照)に対するパレート解の探索性能を検証した。確率変数は独立した正規分布に従う関数とし、その平均を設計変数(d
1、d
2)、標準偏差σを0.3とし、信頼性指標βを0、1.28、2.0、3.0と変えた場合のパレート解を求めた。
【0082】
図10(a)から、パレート曲線はg
1に接して形成されることがわかる。しかしながら、パレート曲線はf
1が最も小さくなるところではg
2にも接している。また、信頼性指標βが増加するにつれて、パレート曲線は実行可能領域の内側に形成されることがわかる。同様に傾向は、
図10(b)に示した設計変数空間におけるパレート解分布からもわかる。それぞれの信頼性指標βの値における破損確率P
fは、β=0のときP
f=50%、β=1.28のときP
f=10%、β=2.0のときP
f=2.275%、β=3.0のときP
f=0.125%である。
【0084】
よって、破損確率を小さく設計する場合、パレート集合は目的関数空間で原点から遠い位置に形成されることがわかる。つまり、安全性を確保する場合は、得られるf
1、f
2の値は悪化することが確認できる。目的関数別に注目すると、信頼性指標βが増加したときにf
1の値が増加しているが、f
2の値はほとんど変化していない。従って、f
1の最適解は信頼性指標βの影響を受けやすく、f
2の最適解は信頼性指標βの影響を受けにくいことがわかる。
【0085】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
(1)例えば、3−4項で説明した制約関数を満足しないパーティクルの処置について以下のようにしても良い。
【0086】
制約関数を満足しないパーティクルを実行可能領域境界に移動するための手法の特徴は二つある。一つは制約条件を逸脱した個体に対して、制約条件の感度解析を利用して実行可能領域に移動させることである。もう一つは、実行可能領域に入った点と入る前の点で二分法を利用して、実行可能領域の境界上の点に移動させることである。感度解析は、パーティクルが初期設定において実行可能領域を逸脱している場合に、実行可能領域に移動させるために感度解析が不可欠である。
【0087】
その一方で、世代が進んでから制約を逸脱した場合を考えてみる。この場合、その直前の世代の個体は実行可能領域内に存在し、現在と直前の世代の2点間に実行可能領域の境界があるはずである。従って、その2点で二分法を利用するだけで、実行可能領域境界に移動させるようなアルゴリズムにより同様な成果が期待できる。この場合、最初の世代には感度解析が必要だが、その後は感度解析を必要としない。例えば、感度解析の代わりに差分近似を利用しなければならない場合、この拡張手法が有効に機能すると考えられる。
【0088】
(2)上記実施形態では、目的関数空間上にランダムに配置した各パーティクルの位置を更新する手法として、パレート曲線の広域性を確保するためにシグマ法を利用する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、シグマ法以外にもcrowding distance法など、その他の手法を用いても良い。