(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来からシールリングに用いられているNiは、3.3Vで充放電のサイクルが繰り返し行われた場合等に劣化が起きることがあった。これにより、電気化学セルの容量が低下するという課題があった。この問題を解決するため、蓋体にSUS等の耐食性材料を用いる方法が用いられていた。また更に蓋体のSUSに金などの貴金属のメッキを施すことにより耐食性を高めていた。
【0007】
しかし、蓋体にSUS等を用いる場合、封口時の電流電圧の条件が厳しく制約されているため、封口が困難だった。また、蓋体のSUSに貴金属のメッキを施す場合には、貴金属が非常に高価であるため、コストがかかった。コスト低減のために貴金属のメッキを薄くした場合には、貴金属がやわらかいため、傷がつくこともあった。このように、電気化学セルの容量の低下を促進してしまうという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、充放電サイクルに伴う容量低下を防ぐことにより、信頼性の優れた電気化学セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
請求項1に記載の発明は、
容器本体と金属層が表面に形成された蓋体
とがシールリングを介して
封止されていることにより密閉容器が構成されている電気化学セルであって、前記金属層は
、NiまたはNi基合金からなるNi層と、
前記Ni層の表面に形成され、Sn、Cu、Zn、Agから選択される少なくとも1つの金属
、または、Sn合金、Cu合金、Zn合金、Ag合金から選択される少なくとも1つの合金
、からなる
一層の合金層
と、を有し、前記シールリングは
、Sn、Cu、Zn、Agから選択される少なくとも1つの金属
、または、Sn合金、Cu合金、Zn合金、Ag合金から選択される少なくとも1つの合金
、からなる
融着部が周囲に形成されていることを特徴とする電気化学セルである。
請求項1に記載の発明によれば、充放電のサイクルが繰り返し行われた場合においても、貴金属等の高価な材料を用いなくとも、容量の低下を抑えることができる。
【0010】
また、従来、蓋体の表面には、Auなどの比較的柔らかい金属を用いていたため、セルを組み立てる際に、部品供給機構内(例えば、ボールフィーダー等)で、部品同士がぶつかり合うことで傷がつきやすくなる。そのため、メッキ部の傷から腐食が起こる懸念があった。そのため、従来の蓋体では、ロボットのアーム等を用いて、部品同士が重なることなく、部品を個々に供給する部品供給機構を用いる必要があった。そのため、製造装置が高価となり、また、供給機構のサイクルタイムが嵩み、生産性を低減していた。本発明では、金属層に用いる材料には、概してAuなどより硬い材料を選択するために傷がつきにくく、蓋体の取り扱い性を容易にして電気化学セルの組み立て作業性の向上化に繋げることができる。
【0011】
さらにまた、蓋体の溶接時に、金属層とシールリングとを互いに溶かし合いながら溶着させることができ、これら金属層及びシールリングを介してベース部材と蓋体とをより強固に溶接することができる。そのため、電気化学素子が収納されている収納空間の密閉性を高めることができ、さらに品質の安定した電気化学セルとすることができる。よって、充放電のサイクルが繰り返し行われた場合においても、容量の低下を抑えることができる。
【0012】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の電気化学セルであって、前記Ni層および前記合金層は、メッキにより形成されることを特徴とする。
請求項
2に記載の発明によれば、緻密で欠陥のない層を形成することができるため、電解液への金属の溶出を抑えることができる。よって、充放電のサイクルが繰り返し行われた場合においても、容量の低下を抑えることができる。
【0013】
請求項
3に記載の発明は、請求項1または
2に記載の電気化学セルであって、前記合金層がCu‐Snであり、その厚みが0.4〜2.5μmであることを特徴とする。
請求項
3に記載の発明によれば、緻密で欠陥のない層を形成することができるため、電解液への金属の溶出を抑えることができる。よって、充放電のサイクルが繰り返し行われた場合においても、容量の低下を抑えることができる。
【0014】
請求項
4に記載の発明は、請求項1
から3のいずれか一項に記載の電気化学セルであって、前記合金層がCu‐Snであり、その厚みが0.6〜2μmであることを特徴とする。
請求項
4に記載の発明によれば、より緻密で欠陥のない層を形成することができるため、電解液への金属の溶出を抑えることができる。よって、充放電のサイクルが繰り返し行われた場合においても、容量の低下を抑えることができる。
【0015】
請求項
5に記載の発明は、請求項1
から4のいずれか一項に記載の電気化学セルであって、前記合金層の上にもう一層の合金層を有していることを特徴とする。
請求項
5に記載の発明によれば、溶接後の表面が見やすく、溶接性の判断がしやすい。そのため溶接性の良い電気化学セルのみを正確に提供することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、蓋体の基材にNiまたはNi基合金からなるNi層を形成するNi層形成工程と、前記Ni層の
表面に
、Sn、Cu、Zn、Agから選択される少なくとも1つの金属
、または、Sn合金、Cu合金、Zn合金、Ag合金から選択される少なくとも1つの合金
、からなる合金層を形成する合金層形成工程と、
容器本体と前記蓋体とを、Sn、Cu、Zn、Agから選択される少なくとも1つの金属
、または、Sn合金、Cu合金、Zn合金、Ag合金から選択される少なくとも1つの合金
、からなる
融着部が周囲に形成されたシールリングを介し
て溶接にて封
止する溶接工程と、を有する電気化学セルの製造方法である。
請求項6に記載の発明によれば、充放電のサイクルが繰り返し行われた場合においても、容量の低下を抑えた電気化学セルを製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電気化学セルによれば、充放電サイクルに伴う容量低下を防ぐことにより、信頼性の優れた電気化学セルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態)
本実施の形態の電気化学セルについて図面を参照して説明する。なお、以下では、実施の形態として電気二重層キャパシタを例として説明する。
図1は、実施形態の形態に係る電気二重層キャパシタ100の断面図である。この電気二重層キャパシタ100は、チップ型であり、直方体形状をしている。
【0021】
電気二重層キャパシタ100は、容器本体Pと蓋体Fとを封止部Kを介して封止して構成される。容器本体Pは、底壁部101と周壁部102から構成される。蓋体Fは、蓋体の基材3の表面に金属層4が形成されている。封止部Kは融着部104とシールリング108を用いて溶接されている。
【0022】
蓋体F、封止部Kおよび容器本体Pにより構成される密閉容器Mには第一電極105、第二電極106、セパレータ107から構成される電気化学素子G及び電解液が収容されている。
【0023】
容器本体Pの内側底面には集電体115が形成されている。集電体115は、側面配線111と電気的に導通し、さらに周壁部102を貫通し、容器本体Pの外側底部に形成された外部接続端子112と電気的に導通している。側面配線109は、容器本体Pの側壁上端部に形成され、容器本体Pの外側底部に形成された外部接続端子110と電気的に導通している。
【0024】
第一電極105と第二電極106の間には短絡防止のためのセパレータ107が配置されている。また、第一電極105、第二電極106およびセパレータ107には電解液が含浸されている。また、図示していないが、収納空間113にも電解液が収納されている。
【0025】
図2は、蓋体の詳細を示す断面図である。蓋体の基材3の表面に金属層4が形成されている。更に金属層4は、Ni層4aと合金層4bからなっている。
図3は、
図2に示す蓋体の変形例を示す断面図である。
図2と同様に蓋体の基材3の表面に金属層41が形成されている。だが、金属層41は、Ni層41aと合金層41b、更に合金層41cからなっている。
【0026】
図4は、蓋体の金属層の形成の例を示す断面図である。
図4の(a)は、蓋体の基材3の一面にだけ金属層4が形成されている。
図4の(b)は、蓋体の基材3の対向する二面に金属層4が形成されている。
図4の(c)は、蓋体の基材3の全面に金属層4が形成されている。蓋体Fの母材に含まれるNiが溶出し電気化学セルの充放電の効率を下げることを防止することが目的であるため、少なくとも蓋体Fの表面のうち第2電極106と対向する部分に形成されていれば良い。しかしながら、溶接時におけるシールリング108との親和性を高めてなじみを良くするために、金属層4をシールリング108と接する部分、つまり融着部104と接する部分にも形成することが望ましい。金属層4はNi層‐合金層の二層でも、Ni層‐合金層‐合金層の三層でもかまわない。このように、金属層4の形成の方法は適宜決定することができる。
【0027】
図5は、
図2に示す蓋体の変形例を示す断面図である。蓋体の基材23の全面に、内側からNi層24a、合金層24b、合金層24cを形成している。
図3の改良として、製造上の容易性の観点から、
図5に示すとおり、蓋体Fの基材23の上下面に金属層を形成することも可能である。
【0028】
図6は、
図1に示す電気二重層キャパシタの変形例を示す断面図である。
図6では、容器本体Pの周壁部102を貫通する貫通配線109bと底壁部101を貫通する貫通配線111bが形成されるが、集電体115及び蓋体Fとの接続ルートが異なるだけでその他の部分は
図1と同様である。よって、
図1と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
図7は、実施形態に係る電気二重層キャパシタの別の変形例を示す断面図である。
図7では、底壁部201を平板状とし、蓋体F2を凹状とした。また、底壁部201には、貫通電極209及び貫通電極211がそれぞれ形成されている。その他の部分は
図1と同様である。蓋体F2と容器本体P2の形状が変わっても、集電体215及び蓋体F2との接続ルートが異なるだけで
図1同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
本実施の形態のシールリング108は、Niメッキを施したNi基合金を用いることができる。例えばコバール(Co:17重量%、Ni:29重量%、Fe:残部からなる合金)、エリンバー(Co:12重量%、Ni:36重量%、Fe:残部からなる合金)、インバー(Ni:36重量%、Fe:残部からなる合金)、42‐アロイ(Ni:42重量%、Fe:残部からなる合金)の中から選ばれる一つを用いることができる。
【0031】
融着部104は、シールリング108とのなじみの良いNiや金、もしくは金属層4に用いられる金属やその合金から形成することが望ましい。具体的には、Sn、Cu、Ag、Znの中から選ばれる金属の単体又は、それらを含む合金を用いることができる。特にNi‐Cu、Cu、Cu‐Sn、Sn、Sn‐Ni、Ni‐Zn、Znがより望ましい。
【0032】
外部接続端子110、112及び側面電極109、111は、単一金属による単層膜、もしくは異なる金属が積層された積層膜からなる。積層膜としては、何層でも構わないが、例えば基板との良好なリフローを行うために、下地層がNi、中間層が金、表面層が半田の3層が望ましい。また、外部接続端子110、112及び側面電極109、111は、メッキ法やスパッタ法等により形成される。
【0033】
集電体115は、耐食性に優れ且つ膜厚法での形成が可能なタングステン、銀や金を用いることが望ましい。また、バルブメタルや炭素を用いても良い。バルブメタルとしては、アルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム等が挙げられるが、特にアルミニウム又はチタンを用いることが望ましい。これらの金属を集電体に用いることにより、貴な電位を印加した際にも電解液中に集電体の金属が溶解するのを防止することができる。
【0034】
更に、集電体115はクロム層を下地層として、前記下地層上に形成することが望ましい。下地層を形成することで、容器本体Pに対する集電体115の密着性を向上させることが可能である。なお、下地層としては、クロム層以外にチタン層も好適である。このチタン層は、下地層としてではなく集電体として利用することも可能である。
【0035】
蓋体Fの基材3は、コバール製の基板であり、上述したようにシールリング108を利用した溶接によって容器本体Pに固定されている。なお、このときの溶接としては、ローラ電極を接触させることによるシーム溶接、レーザー溶接や超音波溶接等が挙げられる。
【0036】
また、本実施形態の蓋体Fには、容器本体P側に向いた下面の全体に複数層の金属層4で構成されている。
図2に示す様に、蓋体Fは基材3に近い側から、Ni層4a、合金層4bが成形されている。そのため合金層4bは、
図1に示すように、後述する第2電極106と接しているだけでなくシールリング108とも、融着部104を介して接している。合金層4bの一部は、溶接によって溶け、融着部104と融合することができる。
【0037】
ここで、基材3に、金属層4を成形する方法として、電解メッキや無電解メッキ等のメッキ法を用いることができる。その他の方法として、スパッタ、真空蒸着、レーザーアブレーション法等の気相法等を用いても良い。また、金属溶射等の手法や、複数種の金属を積層し圧延した手法(クラッド)を用いることもできる。特に、ピンホール等の欠陥の無い緻密な膜を作製するために、電気めっきを用いることが望ましい。予め作製した金属層をクラッド材として形成し、使用することもできる。
【0038】
また、Ni層4aにNiを用いた場合、合金層4bは、Sn(融点232℃)、Cu、Ag、Zn(融点420℃)の中から選ばれる金属の単体又は、それから、Ni又はCuの合金を用いることができる。特に、合金層4bは、Cu‐Ni、Cu、Cu‐Sn、Sn、Sn‐Ni、Ni‐Zn、Znが望ましい。
【0039】
なお、Ni層4aと、合金層4bの形成方法としては、特に限定されるものではないが、電解メッキを採用することが望ましい。また、膜厚としては、例えばNi層4aに電解のNiを用いたときは0.01μm以上が望ましく、より望ましくは、0.1μm〜5μmが良い。メッキの厚みが厚い場合、シーム溶接が出来ない場合があり、5μm以下が望ましい。
【0040】
合金層4bには、Sn、Cu、Zn、Agから選択される少なくとも1つの金属または、Sn合金、Cu合金、Zn合金、Ag合金から選択される少なくとも1つの合金を用いることができる。Sn合金としてはSn‐Ni、Cu合金としてはCu‐Sn、Zn合金としてはZn‐Niを用いることが望ましい。また、Ag合金としてはAg‐Pd、Ag‐Sn、Ag‐Au、Ag‐Cu‐Sn、Ag‐In‐Cuが挙げられるが、特にAg‐Pd合金を用いることが望ましい。
【0041】
Sn‐Niの合金を用いる場合、SnとNiの配合比は、1:99〜90:1が望ましい。さらに、10:90〜80:20がより望ましい。Sn‐Niの合金の厚みは0.01μm以上が望ましく、より望ましくは、0.2〜2μmが良い。より望ましくは、0.2〜0.6μmである。この、SnとNiの合金の融点が低いため、Snの配合比が90%以上でメッキの厚さが0.2μm以上の場合にリフロー時の不具合を生じることが多い。また、10μmよりもメッキ厚が厚い場合は、メッキ後のメッキの内部応力によって、クラックを生じる可能性がある。さらに、クラック部から腐食を生じる可能性もある。
【0042】
Cu‐Sn合金を用いる場合、CuとSnの配合比は、20:80〜80:20が望ましい。Cu‐Snの合金の厚みは0.4〜2.5μmが望ましい。より望ましくは、0.6〜2μmが良い。Cu‐Sn合金の合金層が0.4μm以下の場合、ピンホール等の欠陥ができてしまう場合があり、容量が低下する恐れがある。また、2.5μm以上の場合は、厚みが厚すぎるため溶接時に蓋体Fのずれが生じてしまう恐れがあるため望ましくない。
【0043】
また、Ni層4aを形成する方法として、メッキ法を用いる場合は、B(ホウ素系化合物)やP(リン系化合物)を添加した無電解メッキよりも、PやBの添加のない電解メッキが望ましい。これは、B(ホウ素系化合物)を添加した場合は、純Niでメッキした材料よりも融点が高いために、シーム溶接やレーザー等の溶接が困難となる。また、P(リン系化合物)を添加した無電解メッキでは、純Niでメッキした材料よりも融点が低くシーム溶接やレーザー等の溶接がし易いが、その反面、純Niと比較して酸化電位が低いために局所電池を発現し易く、腐食しやすい。電解メッキの場合、バレルメッキよりもメッキの品質が一定となりやすい連続メッキを用いる方が望ましい。電解メッキは、メッキにおけるNiの析出形態にばらつきを生じ易く、このばらつきが蓋体Fの腐食を引き起こし易いためである。そのため連続メッキがより望ましい。
【0044】
また、合金層4bはメッキ以外の製造方法として、クラッド材を用いることができる。この場合、ピンポール等の発生の頻度は低くなる。だが、金属箔を作製することが難しいため、0.1mm以上で作製することが望ましい。
【0045】
電気化学素子Gは、正極としての第1電極105と、負極としての第2電極106と、前記第1電極105と第2電極106に挟んで重ねられたセパレータ107と、電解液とを、収納空間113内に備えている。
第1電極105及び第2電極106は、それぞれ電気化学反応に関与する電極活物質(正極活物質、負極活物質)を有している。また、電極活物質同士の電子伝導性を高めるための目的で導電助剤を添加し、さらに電極の形状を保つために結着剤を添加して、第1電極105及び第2電極106を構成しても構わない。
【0046】
第1電極105は、図示しない導電性接着剤等を利用して集電体115上に固定されて導通している。これにより第1電極105は、集電体115及び側面電極111を介して一方の外部接続端子112に導通している。
なお、第1電極105及び第2電極106は予め真空、又は有酸素雰囲気(大気中)、又は窒素雰囲気(還元雰囲気)で、200℃以上で500℃以下の温度で加熱乾燥することが必要である。
【0047】
蓋体Fと第2電極106を接合する際、導電性接着剤を用いる場合は、第2電極106の乾燥と同時に、導電性接着剤の固化反応を併せて実施することが出来る。さらに、製品としてリフロー処理を行う場合はリフロー処理と同等以上の温度で予め熱処理することが望ましい。これによって、第1電極105及び第2電極106に吸着した余分な物質を取り除き、安定した品質を確保できる。さらに、メッキを施した場合に有酸素雰囲気で500℃より高い温度で加熱する場合は、集電体115の表面のメッキの酸化が進むため、望ましくない。特に、メッキの材質としてCuやその合金を用いた蓋体Fにおいては、真空や窒素雰囲気で加熱する必要が有る。その場合、製品の取り出し温度は、50℃未満にしなければならない。50℃を越える温度で、有酸素雰囲気に暴露すると表面の酸化がおこり、製品の品質が安定しない。又は、蓋体Fに用いる金属層4の融点以下の温度に抑えて、加熱する必要がある。融点以上の温度で加熱する場合、表面の酸化を促進してしまう。これにより、次工程以降の溶接時に不良が発生し、封止時の密閉性が低下するため、品質の低下を招く。
【0048】
セパレータ107は、第1電極105と第2電極106とを隔離して、直接的な接触を規制する部材である。仮に衝撃等を受けたとしても、第1電極105と第2電極106が接触して電気的にショートしないように設計されている。
【0049】
電解液は、例えば予め水分を100ppm以下に除去した非プロトン性の有機溶媒に、同様に水分を除去した4級のアンモニウム塩を溶解させた非水電解液を用いることができる。特に、有機溶媒としては、プロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の環状カーボネートや、スルホランやその誘導体類を含む電解液が用いることができる。スルホランやその誘導体類としては、チオフェン、テトラヒドロチオフェンが挙げられる。
【0050】
また、2.6V程度の電圧を印加する場合には、電解液の溶媒としてプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の環状カーボネートを用いることが望ましい。3.0V以上の高電圧で充電し、且つ、高電圧を維持する時間が長い場合においては、スルホランやその誘導体類を含む電解液を用いることが望ましい。
支持塩としては、TEMABF4(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボーレート)やTEMABF4(トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート)等を用いることができる。
【0051】
(電気二重層キャパシタの作用)
上記のように構成された電気化学セル100としての電気二重層キャパシタによれば、一対の外部接続端子112、110を介して第1電極105と第2電極106との間に電圧が印加されると、電解液中の支持塩が第1電極105と第2電極106との間に、アニオンとカチオンに分かれて移動すると共に、正極活物質及び負極活物質の表面に吸着されることで、電荷をためる。これにより、電気化学反応により電荷の授受が行われ、充放電が行われる。
【0052】
本実施形態の電気化学セル100は、例えば、ノート型パソコン、携帯電話、コードレス電話、ヘッドフォンステレオ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電子辞書、電卓、メモリーカード、PDA、携帯用ゲーム機器、自動車等の輸送機器等のメモリや時計機能の電源バックアップとして好適に用いることが可能である。
【0053】
また、基材3の表面に成形する合金層4は、機械的な強度も強く、傷がつきにくい。そのため、充電と放電を繰り返した場合においても、局所腐食を起しにくく、セルの劣化が発生する頻度を低下できる。このことから、蓋体Fの取り扱い性を容易にして電気化学セル100の組み立て作業性が向上する。
特に、プロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の環状カーボネートを含有しない電解液以外にも、スルホランやその誘導体類を含む電解液を用いて、3V以上の高電圧を用いた充電と放電の繰り返し場合においても、劣化が少ない電気化学セルを提供できる。
【0054】
容器本体Pと蓋体Fは、シールリング108、融着部104及び金属層114を介して強固に溶接することができる。そのため、電気化学素子Gが収納されている収納空間113の密閉性を高めることができ、漏液のない安定した品質を確保することができる。
特に、金属層4はNiを含むことから、シールリング108にメッキされたNiとなじみ易い。このように、Niと制限なく不定比で合金化することができることから、高い親和性でシールリング108と蓋体Fの金属層4とを確実に溶着できる。そのため、容器本体Pと蓋体Fとの強固な溶接が可能となる。
その際、合金層4は、それぞれ、次の金属から選ばれた金属の単体又は、同様に上述の金属の選ばれた金属を組み合わせた合金であっても良い。
【0055】
Ni層4aの素材の一例としてNi、合金層4bの素材の一例としてSnを挙げたが、それらに、限定するものではなく、Pt、Ir、Pd、Rh、Bi、Geのうちから選択される金属材料を含む材料で形成されても構わない。
また、蓋体Fに形成する金属層4は、
図2に示す通り、少なくとも2層になっており、蓋体Fの基材3の電気化学素子Gに接する側に、基材3に接する側からNi層4aと合金層4bを形成させることが望ましい。
さらに、蓋体Fに形成する金属層41は、
図3に示す通り、Ni層41a、合金層41b、合金層41cの3層以上を形成することも可能である。
【0056】
シールリング108としてはコバールや42‐アロイに限られるものではなく、例えば金ロウ、銀ロウ、銀銅ロウ(Ag‐Cu)等のロウ材や半田材等でも構わない。この場合、蓋体Fに対するなじみやリフロー温度等を考慮して、シールリング108の材質を決定すれば良い。例えば、260℃前後の温度でリフローを行う場合には、260℃よりも高い温度で融解するシールリング108を用いれば良く、500℃前後のシールリング108を用いることができる。但し、蓋体Fを容器本体Pへ溶接する際の伝熱とそれに伴い熱膨張によって容器が損壊する影響(リスク)を考慮すれば、コバールや42‐アロイを用いることが望ましい。
【0057】
また、上記実施形態において、容器本体Pの材料の一例としてセラミックスやガラス等を挙げたが、より具体的には例えばセラミックス材料としては、アルミナ製のHTCC(High Temperature Co‐fired Ceramic)や、ガラスセラミックス製のLTCC(Low Temperature Co‐fired Ceramic)等を用いることができる。また、ガラス材料としては、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラスや硼珪酸ガラス等を用いることができるが、加工性を考慮すると硼珪酸ガラスが望ましい。
【0058】
また、上記実施形態では、
図1に基づき、側面電極111を介して集電体115と一方の外部接続端子112とを導通させると共に、側面電極109を介して接合層114と他方の外部接続端子110とを導通させたが、この場合に限定されるものではない。例えば、
図6に示すように、第1貫通電極111bを介して集電体115と一方の外部接続端子112とを導通させると共に、第2貫通電極109bを介して接合層114と他方の外部接続端子110とを導通させても構わない。図示しないが、貫通電極と側面電極とを組み合わせることも可能である。例えば、片方は、収納空間113内部の集電体と一方の外部接続端子を導通させ、もう片方は、接合層と他方の外部接続端子とを導通させても構わない。
【0059】
ベース部材と蓋体との間に密閉した収納空間を画成できれば、ベース部材及び蓋体をどのような形状に形成しても構わない。例えば、
図7に示すように、ベース部材を平板状のベース基板201とし、蓋体を凹状の蓋体F2とした密封容器M2としても構わない。
【0060】
ベース基板201には、例えば第1貫通電極211及び第2貫通電極209がそれぞれ形成されている。第1貫通電極211は、集電体215と一方の外部接続端子212とを導通させている。第2貫通電極209は、接合層214と他方の外部接続端子210とを導通させている。
【0061】
蓋体F2は、シールリング208の周囲に配置した融着部204を利用した溶接によってベース基板201上に固定されている。また、蓋体F2の内面には金属層204が形成されている。尚、図示しないが、電気化学素子G2と蓋体F2の間に、電気化学素子G2の周囲を覆う様に絶縁性の材質で、ショートを防止するリングを配置しても良い。
【0062】
このように構成された電気二重層キャパシタ200であっても、密封容器M2の形状が異なるだけで同様の作用効果を奏効することができ、表面実装型の二次電池として利用することが可能である。
【0063】
(実施例)
以下に本発明の有効性を確認するために実施した例について説明する。
具体的には、Niメッキを施したシールリングを介して蓋体Fを容器本体Pに溶接し、内部の収納空間113内に電気化学素子Gを密封した電気化学セル100を作製した。
【0064】
この時、出来上がった電気化学セル100の溶接時に形成される融着部104の形状を倍率20倍の光学顕微鏡で確認して、溶接の仕上がりを観察して、溶接性を判断する。溶接によって、蓋体Fとシールリング108のそれぞれの金属の界面部に、金属の溶融した層を形成し、その金属の溶融した層が蓋体Fの全周囲に渡って、形成されている状態のときを良好と判断する。一方で、一部でも金属の溶融した層が行き渡らない部分がある際は、不良と判断する。また、溶接によって蓋体Fとシールリング108が接続されているが、その溶け方の不連続性が顕著である場合には、やや良と判断する。
【0065】
また、評価用のガラス繊維入りのエポキシ製の基板に、電気化学セル100を半田付けする際に、基板と電気化学セルの外部接続端子の間にクリーム状の半田を塗って、リフロー炉で、約260℃の加熱を行う。この時、溶接性の判断と同様に顕微鏡で蓋体Fとシールリングの間の仕上がりを観察して、リフロー耐熱性を判断する。蓋体Fの外れ等の致命的な欠陥がないか、また、蓋体Fとシールリングの間に漏液等の異常がないかを観察する。このとき、リフロー時の加熱によって、蓋体Fの外れや蓋体Fとシールリングの間に漏液等の異常がない場合は、良好と判断する。また、蓋体Fの外れがあった場合や、蓋体Fとシールリングの間に隙間が生じ、明らかな漏液を生じる場合は、不良とする。ただし、不良と良品の判断が明瞭出ない場合に、やや良と判断する。
さらに、電気化学セルについて充放電を繰り返し行い、その間での電気化学セルの充放電性能の安定性を評価する評価試験を行った。
【0066】
次に容量の維持率の評価方法について説明する。まず、25±3℃の条件下で容量の測定を行った。次に、定電流で充電を開始し、最大電圧(3.3V)に達した時点で該電圧を一定時間保持した。この際、充電時間と保持時間との合計時間を2時間に設定した。次に、この2時間が経過した後、定電流で放電を開始し、最低電圧(0V)に達した時点で該電圧を一定時間保持した。この際も、放電時間と保持時間との合計時間を2時間に設定した。上記した1回の充電及び1回の放電を合わせて1サイクルとし、これを80サイクル繰り返し行った。充放電を行う際の電気化学セルの温度条件として、電解液の分解が生じない程度の温度である70±3℃に設定した。そして、充放電を80サイクル繰り返し行い、充電および放電に使用した電気容量の変化をモニタリングした。80サイクルの繰り返しが終了した後、25±3℃の条件下で容量の測定を行った。このようにして、充放電のサイクル特性の安定性について評価した。また、容量の維持率は、80サイクルの繰り返しが終了した後の容量を、はじめに測定した容量で割ったものである。
【0067】
(第1評価試験)
まず、コバール製の基材に、予めNiを用いて電解メッキ(以下、メッキとは電解メッキを指す)によりNi層を形成し、さらに、Sn、Cu、Zn、Agの各金属種を主成分とするメッキ処理を施すことで合金層を形成した場合と、コバール製の基材にNiのみで、金属層を形成した場合で電気化学セルを試作し、評価試験を行った。これらの結果を表1に示す。なお、実施例2と実施例3は、合金層の形成に、同じく主にCuを用いたが、合金層の厚さを変えて組立てと評価を行った。これらの結果を表に示す。
【0069】
比較例1に示すように、Ni層の材質にNiを用い、Ni層の厚さを5μmとした。パッケージの本体に、蓋体Fを溶接した際に、光学顕微鏡を用いて仕上がりを観察した。このとき、溶接時にできる金属の溶け具合が連続的で、十分に金属が溶け、シールリングと蓋体Fが十分に固着していることがわかる。これは従来品と同等な溶接性であり、“良好”と判断した。また、容量の維持率は80%だった。
【0070】
実施例1に示すように、Ni層の材質にNiを用い、Ni層の厚さを4μmとした。また、合金層の材質にSnを用い、合金層の厚さを0.1μmとした。実施例1で作製した蓋体を光学顕微鏡を用いて観察した場合、溶接時にできる金属の溶け具合が連続的ではなかった。その外観が従来品に比較して悪いので溶接性を“やや良”と判断した。また、容量の維持率は85%だった。
【0071】
実施例2に示すように、Ni層の材質にNiを用い、Ni層の厚さを4μmとした。合金層の材質にCuを用い、合金層の厚さを2μmとした。実施例2で作製した蓋体を光学顕微鏡を用いて観察した結果、その外観が従来品と比較して同等であるため、溶接性を“良好”と判断した。また、容量の維持率は100%だった。
【0072】
実施例3に示すように、Ni層の材質にNiを用い、Ni層の厚さを4μmとした。合金層の材質にCuを用い、合金層の厚さを5μmとした。実施例3で作製した蓋体を光学顕微鏡を用いて観察した結果、その外観が従来品と比較して同等であるため、溶接性を“良好”と判断した。また、容量の維持率は100%だった。
【0073】
実施例4に示すように、Ni層の材質にNiを用い、Ni層の厚さを4μmとした。合金層の材質にZnを用い、合金層の厚さを2μmとした。実施例4で作製した蓋体を光学顕微鏡を用いて観察した結果、その外観が従来品と比較して同等であるため、溶接性を“良好”と判断した。また、容量の維持率は95%だった。
【0074】
実施例5に示すように、Ni層の材質にNiを用い、Ni層の厚さを4μmとした。合金層の材質にAgを用い、合金層の厚さを2μmとした。実施例5で作製した蓋体を光学顕微鏡を用いて観察した結果、その外観が従来品と比較して同等であるため、溶接性を“良好”と判断した。また、容量の維持率は100%だった。
【0075】
このように、Niのみで金属層を形成した蓋体を用いた比較例1の場合、80サイクルまでに容量の低下が見られることがあった。これに対して、NiのNi層の上に別の材質を用いて合金層を形成した実施例1から5の場合には、80サイクル経過した時点では、Niのみを用いて金属層を形成した比較例1と比べて、放電時の容量の低下を抑えることが出来た。
これらの結果から、基材の表面に形成するNi層とは、異なる金属種を用いて合金層を形成することで、充放電のサイクルに伴う容量の低下を抑制できることが確認された。
【0076】
(第2評価試験)
次いで、コバール製の基材に、Niを用いてNi層を形成し、さらに、Snを用いて合金を形成した場合で、それぞれ合金層の厚さをのみを変化させながら、電気化学セルを試作し、評価試験を行った。これらの結果を表2に示す。
【0078】
表2から明らかなように、Snを用いて合金層を形成する際の厚さを変化させた場合、Sn製の合金層の厚さが5μmの場合にリフロー耐熱性に不良が見られた。また、厚さが20μmの場合に溶接性に不良が見られた。つまり、Sn製の合金層の厚さが厚い場合に、リフロー耐熱性の不良が見られる。さらに、厚みが増すと、溶接性の不良が見られる。
これらの結果から、Snの様に、低融点の金属種を用いる場合は、膜厚を薄くすることで、利用可能であることが確認された。
【0079】
加えて、表1における実施例2、3の結果と、表2における比較例2、3の結果と、を考慮すると、望ましい合金層の厚みは、合金層を形成する金属種によっても異なり、融点がリフロー温度よりも低い材料では薄くする必要があり、融点がリフロー温度よりも高い材料では厚くする必要がある。
【0080】
Snを用いて合金層を形成した電気化学セルの評価をおこなった結果、実施例6は比較例1と比較して、充放電のサイクルに伴う容量の低下を抑制できることが確認された。このような最適な厚みにすることで、信頼性の高い、電気化学セルを提供することができた。
【0081】
(第3評価試験)
次いで、コバール製の基材に、Niを用いてNi層を形成し、さらに、Niを含む合金を用いて合金層を形成した。合金層としては、Cu‐Ni系合金又は、Ni‐Zn系合金を用いた。この蓋体を用いて電気化学セルを試作し、評価試験を行った。このとき、合金層の厚さは、0.6μmと7μmとした。これらの結果を表3に示す。
【0083】
表3から明らかなように、合金層にCu‐Ni系合金又は、Ni‐Zn系合金を用いた場合、表2中のSnを主成分とする合金層を形成された蓋体を用いた場合の実施例と比較して、溶接性やリフロー耐熱性に優れた電気化学セルが得られる。さらに、合金層にNi‐Zn系合金を用いた場合、合金層の厚みが7μmの場合であってもリフロー耐熱性は良好であった。
また、合金層にCu‐Ni系合金、又は、Ni‐Zn系合金を用いた場合、充放電のサイクルに伴う容量の低下を抑制できることが確認された。
【0084】
(第4評価試験)
次いで、コバール製の基材に、Niを用いてNi層を形成し、さらに、Niを含む合金を用いて合金層を形成した。合金層として、Sn‐Ni系合金を形成した。このとき、SnとNiの配合比を20:80〜90:10の範囲の異なる組成で合金層を形成した。また、メッキの厚さは、0.01μm〜20μmの範囲の異なる厚みで合金層を形成した。これらの蓋体を用いて、電気化学セルを作製し、評価試験を行った。これらの結果を表4に示す。
【0086】
表4より、合金層にSn‐Ni系合金を用いた実施例10〜14では、溶接性やリフロー耐熱性に優れた電気化学セルが得られる。ただし、合金層にSn‐Ni系合金を用いた場合、合金層の厚みが2μm以上の場合は、溶接性が不良となる。
さらに、SnとNiの配合比が、90:10の場合は、溶接性が不良となった。
【0087】
(第5評価試験)
次いで、コバール製の基材に、Niを用いてNi層を形成し、さらに、Cuを含む合金を用いて合金層を形成した。合金層としてはCu‐Sn系合金を形成した。このとき、CuとSnの配合比を80:20から10:90となる組成で合金層を形成した。また、メッキの厚さは、0.01μm〜20μmの範囲の異なる厚みで合金層を形成した。これらの蓋体を用いて、電気化学セルを作製し、評価試験を行った。これらの結果を表5に示す。
【0089】
表5から明らかなように、合金層にCu‐Sn系合金を用いた実施例15〜22では、表1の比較例1と比較して、溶接性やリフロー耐熱性に優れた電気化学セルが得られる。
ここで、合金層にCu‐Sn系合金を用いる際に、比較例8に示す様に、Ni層を成形しない場合、合金層を安定的に形成することができないため、溶接性を正しく評価することができない。そのため、合金層を得るためには、Ni層があることが望ましい。
【0090】
ここで、実施例17に示すように、合金層にCu‐Sn系合金を用いる場合、Ni層の厚みが、2μm以上の場合に、溶接性がやや良となる。比較例7に示すように、10μmの場合、溶接性が不良となる。そのため、合金層の厚みは10μm未満が望ましい。
さらに、実施例15及び16に示すように、合金層にCu‐Sn系合金を用いる場合は、金属層の厚みが0.6μm以下であることが望ましい。金属層の厚みが0.6μm以下である場合には、溶接性及びリフロー耐熱性に優れ、充放電のサイクルに伴う容量の低下を抑制できる。
【0091】
また、実施例16、実施例19、および、実施例20に示すように、Ni層の厚みが0.2μm〜4μmの場合であっても、容量の維持率とリフローの耐熱性に優れている。
また、実施例18は、NiからなるNi層の上にCu‐Sn系合金からなる合金層を成形し、更にその上にSnからなる合金層を有している。この場合においても、溶接性、容量の維持率、充放電のサイクルに伴う容量の低下を抑制できる。
【0092】
しかしながら、比較例9に示すように、合金層にCu‐Sn系合金を用いる場合、合金層のCu:Snの配合比率が10:90の場合は、溶接性が不良となった。また、実施例21に示すように、合金層にCu‐Sn系合金を用いる場合、合金層のCu:Snの配合比率が、20:80の場合は、溶接性がやや良となる。だが、実施例22に示すように、合金層にCu‐Sn系合金を用いる場合、合金層のCu:Snの配合比率が80:20の場合は、溶接性が良となり、望ましい。
少なくとも、合金層のCu‐Sn系合金のCuの配合比率が、50%より多いことが望ましい。
【0093】
(第6評価試験)
次いで、コバール製の基材に、Niを用いてNi層を形成し、さらに、Cuを含む合金を用いて合金層を形成した。合金層として、Cu‐Sn系合金を形成した。このとき、CuとSnの配合比を50:50とし、合金層の厚さを10μmとなる様に形成した。また、融着部を形成するために、予めシールリングに、Cu‐Sn、Sn‐Ni、Ni‐Zn、Sn、Cu、Zn、Agを用いてメッキを施した。シールリングにこれらのメッキを施して融着部が得られた電気化学セルをそれぞれ実施例の23〜29とした。これらの結果を表6に示す。
【0095】
表6から明らかなように、実施例23〜29に示す合金層にCu‐Sn系合金を用いた場合、溶接性やリフロー耐熱性に優れた電気化学セルが得られる。また、シールリングに用いるメッキとして、Cu‐Sn、Sn‐Ni、Ni‐Zn、Sn、Cu、Zn、Agを用いることにより、溶接性及びリフロー耐熱性に優れ、容量の維持率の低下を抑制した電気化学セルを得ることができる。