(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909346
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】排水ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/22 20060101AFI20160412BHJP
F04D 1/14 20060101ALI20160412BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
F04D29/22 B
F04D1/14
F04D29/42 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-248621(P2011-248621)
(22)【出願日】2011年11月14日
(65)【公開番号】特開2013-104350(P2013-104350A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2014年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友也
【審査官】
後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−144996(JP,A)
【文献】
特開2010−275972(JP,A)
【文献】
特開平11−236893(JP,A)
【文献】
特開昭55−017621(JP,A)
【文献】
特開2007−146658(JP,A)
【文献】
特開2001−342984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00−13/16,17/00−19/02,
21/00−25/16,29/00−35/00
B29B 11/16,70/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に設けられる吸込口及び側部に設けられる吐出口、並びに前記吸込口と前記吐出口の間に形成されるポンプ室を有するポンプ本体と、前記ポンプ室内に配設される回転羽根と、前記回転羽根を駆動するモータと、を備えた排水ポンプであって、
前記ポンプ本体と前記回転羽根とを透視可能な樹脂材料で形成し、前記回転羽根の皿状部の底面に外部から視認可能な指標が設けられている排水ポンプ。
【請求項2】
前記指標は、凸部又は凹部として形成されている請求項1に記載の排水ポンプ。
【請求項3】
前記指標は、着色されている請求項1又は2に記載の排水ポンプ。
【請求項4】
前記指標を前記皿状部の半径方向に複数設けるとともに、これら複数の指標が互いに異なる色で形成される請求項3に記載の排水ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調機に装備される排水ポン
プに関する。
【背景技術】
【0002】
空調機の室内ユニットは、冷房運転時に熱交換器に空気中の水分が凝縮して付着し、熱交換器の下方に設けられるドレンパン内に滴下する。このドレンパン内に溜ったドレン水を排水するために排水ポンプが装備される。この排水ポンプに関しては、従来より各種のものが提案されており、下記の特許文献等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−144996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の排水ポンプにあっては、ポンプ室内で回転する回転羽根の周囲に空気層と液層が存在し、空気層と液層の境界部に気液境界面が形成される。
この気液境界面には気泡が多数存在し、気液境界面が回転羽根の外周部の近辺に形成されると、気泡が攪拌されて破裂するため運転時の騒音が大きくなる。そして、この気液境界面が回転羽根の所定の範囲内に生成されるように制御することにより騒音が低減することが実験により確認されている。
また、この種の排水ポンプにあっては、使用年数の経過により内部に異物が堆積したり、組立不良で動作不良等が生じることがあり、そのような内部の不具合を容易に確認可能な排水ポンプが望まれている。
そこで、本発明の目的は、排水ポンプ内部の状態を容易に確認可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係
る排水ポンプは、下部に設けられる吸込口
及び側部に設けられる吐出口
、並びに前記吸込口と
前記吐出口の間に形成されるポンプ室を有するポンプ本体と、
前記ポンプ室内に配設される回転羽根と、
前記回転羽根を駆動するモータと
、を備え、
前記ポンプ本体と
前記回転羽根とを透視可能な樹脂材料で形成し
、前記回転羽根の皿状部の底面に外部から視認可能な指標が設けられているものである。
【0006】
また、本発明に係る
排水ポンプにおいて、前記指標は凸部又は凹部として形成されている。
さらに、本発明に係る排水ポンプにおいて、前記指標は、着色されている。
このとき、前記指標を前記皿状部の半径方向に複数設けるとともに、これら複数の指標が互いに異なる色で形成されてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポンプ内部の状態を外部から視認することができるので、組立不良や異物の堆積状態を確認することができるため、不良率の低減やメンテナンス性の向上の点で有効である。
また、ポンプ運転時に形成される気液境界面を視認することができるので、回転数を制御して気液境界面が騒音の低い位置に形成されるように調整して騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】気液境界面の位置と騒音の大きさの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の排水装置の一実施例を示しており、排水ポンプ1とドレンパン100とを備えている。排水ポンプ1はドレンパン100の上方に配置され、空調機の室内熱交換器(図示せず)で発生してドレンパン100に貯留されるドレン水Wを吸い上げて室外へ向けて排水する。
【0010】
図1、2に示すように、排水ポンプ1は、透明の樹脂で形成されるポンプ本体10を備え、ポンプ本体10は、下部に設けられる吸込口12及び側部に設けられる吐出口14と、吸込口12と吐出口14の間に形成されるとともに上面が開口したポンプ室20を有する。ポンプ室20内には回転羽根30が配設され、ポンプ室20の上面の開口はポンプ本体10に装着される蓋部材50で覆われる。ポンプ本体10は弾性を有する係止フック11を有しており、この係止フック11は蓋部材50の所定の箇所に着脱可能に係合して蓋部材50をポンプ本体10に固定する。蓋部材50もポンプ本体10と同様の透明の樹脂で形成され、また、回転羽根30も透明の樹脂で形成される。なお、ポンプ本体10と回転羽根30のみを透視可能な材料で形成するようにしてもよい。
【0011】
図3に示すように、回転羽根30は、モータ出力70の軸72が挿入されるシャフト部38と、シャフト部38の中心から放射方向に延びる小径羽根32と大径羽根34を有し、小径羽根32と大径羽根34の間はテーパー状の皿状部36で連結され、大径羽根34の外周部にはリング部40が形成される。皿状部36の中心部には開口部33が設けられて、吸込口12からの水が大径羽根34側に供給される。4枚の大径羽根34の間には、リング部40から開口部33の近傍まで延びる4枚の補助羽根35が設けられる。
【0012】
蓋部材50の上部には支柱60が立設され、支柱60はモータ70を支持する。モータ70の出力軸72は回転羽根30のシャフト部38に挿入され、回転羽根30を回転駆動する。80は出力軸72に取り付けられる水切円盤で、蓋部材50の出力軸72が貫通する穴から噴出する水がモータ70側に達するのを防止する。
【0013】
ドレンパン100は、上面が開口した箱型のドレンパン本体110と、このドレンパン本体110の底壁に形成された開口部120に着脱可能に装着される蓋体130とを備えている。開口部120は、ドレンパン本体の底壁における排水ポンプ1に対向する部位に設けられており、ドレンパン本体110の下方から、この開口部120を介して排水ポンプ1のポンプ本体10の底部全体を視認可能となっている。蓋体130は透明な樹脂で形成され、内面側に円筒状の取付部140を備えている。取付部140の外周部に形成されたネジ山を開口部120の内周面に形成されたネジ溝に螺合させることにより、開口部に着脱可能に装着することができる。
【0014】
本発明の排水ポンプ1は、ポンプ本体10、回転羽根30、蓋部材50がいずれも透明の樹脂材料でつくられているので、完成した排水ポンプ1の内部を外側から視認することができる。また、室内熱交換器に設置した後においても、ドレンパン100の下方から排水ポンプ1の内部を視認することができる。そこで、組立後の組立不良や運転後の内部の汚れ等を目視で確認することができ、分解することなく、保守や修理の必要性を判断することができる。
【0015】
この排水ポンプ1を運転すると、
図2に示すように、排水ポンプ1内に気液境界面GLが形成される。回転羽根30の回転数を変えると、この気液境界面GLの形成位置も変化する。なお、R
1は回転羽根30の回転方向を示している。
【0016】
図3の(a)は回転羽根30の回転数の変化により、気液境界面GLが位置AからFに変化する状態を示す。
図5は、リング部40の内側に形成される気液境界面GLのA〜Fまでの位置とその騒音の大きさの関係を示すグラフである。
気液境界面GLがB〜Eの範囲に形成されることで、騒音が低くなることが実験により確認されている。
【0017】
そこで、
図3の(a)に示すように、運転中の排水ポンプ1を下方から観察して気液境界面GLがBからEの範囲に形成されるように運転条件を調節することにより低騒音の排水ポンプ1を得ることができる。
本発明の排水ポンプ1にあっては、この気液境界面GLの形成位置が上記範囲内であるかを容易に確認する手段を備えている。
【0018】
図3の(b)に示すように、皿状部36の底面に2個の指標を設けてある。第1、第2の指標P
1、P
2は皿状部36の底面に形成される凸部又は凹部で構成され、互いに異なる色に着色してある。
外側の第1の指標P
1はリング部40の近傍に、内側の第2の指標P
2は開口部33に近い位置に設けてある。
【0019】
図4に示すように、この回転羽根30が矢印R
1方向に回転すると、第1の指標P
1による第1の回転軌跡線K
1と第2の指標P
2による第2の回転軌跡線K
2を環状に視認することができる。この第1の軌跡線K
1と第2の軌跡線K
2は第1の指標P
1と第2の指標P
2の色に応じた環として視認される。そこで、液層と空気層の間に形成される気液境界面GLがこの第1の軌跡線K
1と第2の軌跡線K
2の間に位置するように回転羽根30の回転数を制御することによって、低騒音の排水ポンプ1を得ることができる。
【0020】
なお、指標の個数や形成位置等は、回転羽根30の回転バランス等を考慮して適宜に選択することが当然に可能である。また、指標に隣接する部位を指標と異なる色に着色し、気液境界面GLの位置を容易に視認できるようにしてもよい。
【0021】
本発明の排水ポンプ1は以上のように、組立て後の排水ポンプ1の内部を外部から視認でき、組立不良等の不具合を防止することができる。
また、運転中の回転羽根30の回転状態や運転後の汚れや異物等の付着を容易に発見することができるので、メンテナンス性が向上する。
更に、運転中の気液境界面GLの位置を所定の範囲内となるように制御して低騒音域で運転することで、低騒音の排水ポンプを得ることができるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 排水ポンプ
10 ポンプ本体
12 吸込口
14 吐出口
20 ポンプ室
30 回転羽根
32 小径羽根
33 開口部
34 大径羽根
35 大径羽根
36 皿状部
38 シャフト部
40 リング部
50 蓋部材
70 モータ
80 水切円盤
100 ドレンパン
110 蓋体
GL 気液境界面
P
1 第1の指標
P
2 第2の指標
K
1 第1の軌跡線
K
2 第2の軌跡線