(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成形アパーチャが第1アパーチャと前記第1アパーチャに対して独立に駆動する第2アパーチャで構成され、前記第1アパーチャと前記第2アパーチャの重なり程度により前記パルスレーザビームの形状を可変とすることを特徴とする請求項1記載のパルスレーザ加工装置。
前記成形アパーチャが第1アパーチャと前記第1アパーチャに対して独立に駆動する第2アパーチャで構成され、前記第1アパーチャと前記第2アパーチャの重なり程度により前記パルスレーザビームの形状を可変とすることを特徴とする請求項3記載のパルスレーザ加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態のパルスレーザ加工装置およびパルスレーザ加工方法について説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
本実施の形態のパルスレーザ加工装置は、クロック信号を発生する基準クロック発振回路と、クロック信号に同期したパルスレーザビームを出射するレーザ発振器と、クロック信号に同期してパルスレーザビームを1次元方向のみに走査するレーザビームスキャナと、被加工物を載置可能で1次元方向に直交する方向に移動するステージと、レーザ発振器とレーザビームスキャナとの間の光路に設けられ、クロック信号に同期してパルスレーザビームの通過と遮断を切り替えるパルスピッカーと、パルスレーザビームの光パルス数に基づき、パルスピッカーを制御するパルスピッカー制御部と、パルスピッカーとレーザビームスキャナとの間の光路に設けられ、パルスレーザビームの形状を可変とする成形アパーチャと、を備える。
【0016】
本実施の形態のパルスレーザ加工装置は、パルスレーザビームの形状を、成型アパーチャを用いて可変とする。これにより、被加工物表面に形成するパターンの形状を設計上の形状に忠実に形成することが可能になる。あるいは、被加工物表面に形成するパターンの形状の自由度を増大させることが可能となる。
【0017】
また、本実施の形態のパルスレーザ加工装置は、レーザ発振器のパルス、レーザビームスキャナの走査、およびパルスレーザビームの通過と遮断を、同一のクロック信号に直接または間接的に同期させる。このように、レーザ系とビーム走査系の同期を維持することで、パルスレーザビームの照射スポットの位置決め精度を向上させる。
【0018】
そして、さらに、パルスレーザビームの光パルス数に基づき、パルスレーザビームの通過と遮断を制御することを可能にする。これにより、レーザ発振器のパルス、レーザビームスキャナの走査、およびパルスレーザビームの通過と遮断の同期維持が容易になる。また、制御回路の構成が簡略化できる。本実施の形態のパルスレーザ加工装置は、パルスレーザビームの照射スポットの位置決め精度を一層向上させるとともに、大型の被加工物表面の安定した微細加工とその高速化を容易に実現する。
【0019】
図1は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置の構成図である。パルスレーザ加工装置10は、その主要な構成として、レーザ発振器12、パルスピッカー14、ビーム整形器16、成形アパーチャ17、レーザビームスキャナ18、XYステージ部20、パルスピッカー制御部22および加工制御部24を備えている。加工制御部24には所望のクロック信号S1を発生する基準クロック発振回路26が備えられている。
【0020】
レーザ発振器12は、基準クロック発振回路26で発生するクロック信号S1に同期したパルスレーザビームPL1を出射するよう構成されている。このレーザ発振器12は、超短パルスであるps(ピコ秒)レーザビームあるいはfs(フェムト秒)レーザビームを発振するものが望ましい。
【0021】
ここでレーザ発振器12から射出されるレーザ波長は被加工物の光吸収率、光反射率等を考慮して選択される。例えば、Cu、Ni、難削材であるSKD11等を含む金属材料あるいはダイヤモンドライク・カーボン(DLC)からなる被加工物の場合、Nd:YAGレーザの第2高調波(波長:532nm)を用いることが望ましい。
【0022】
パルスピッカー14は、レーザ発振器12とレーザビームスキャナ18との間の光路に設けられる。そして、クロック信号S1に同期してパルスレーザビームPL1の通過と遮断(オン/オフ)を切り替えることで被加工物(ワークW)の加工と非加工を切り替えるよう構成されている。このように、パルスピッカー14の動作によりパルスレーザビームPL1は、被加工物の加工のためにオン/オフが制御され変調された変調パルスレーザビームPL2となる。
【0023】
パルスピッカー14は、例えば音響光学素子(AOM)で構成されていることが望ましい。また、例えばラマン回折型の電気光学素子(EOM)を用いても構わない。
【0024】
パルスピッカー制御部22は、パルスレーザビームの光パルス数に基づき、パルスピッカーを制御する機能を備える。パルスピッカー制御部22は、加工制御部24で生成され、被加工物に形成する加工パターンの情報を備える加工パターン信号S7にて制御される。
【0025】
ビーム整形器16は、入射したパルスレーザビームPL2を所望の形状に整形されたパルスレーザビームPL3とする。例えば、ビーム径を一定の倍率で拡大するビームエクスパンダである。また、例えば、ビーム断面の光強度分布を均一にするホモジナイザのような光学素子が備えられていてもよい。また、例えばビーム断面を円形にする素子や、ビームを円偏光にする光学素子が備えられていても構わない。
【0026】
成形アパーチャ17は、入射したパルスレーザビームPL3の形状を可変とする。
図2は、成形アパーチャの具体的形状を示す模式図である。
図2に示すように、例えば、金属等のプレートにパルスレーザビームの形状を変更するための所望の形状を備えた開口部が設けられている。形状を変更されたパルスレーザビームPL3はパルスレーザビームPL4となる。
【0027】
図2(a)は開口部が大サイズの正方形、
図2(b)は開口部が小サイズの正方形、
図2(c)は開口部が大サイズの円形、
図2(d)は開口部が小サイズの円形である。なお、成形アパーチャ17の形状は正方形、円形に限らず、正方形以外の矩形、正多角形、その他の多角形であってもかまわない。
【0028】
成形アパーチャ17は、成形アパーチャ制御部(図示せず)で制御される。成形アパーチャ制御部は成形アパーチャ17を動かし、パルスレーザビームPL3の光路への挿入と抜去を行う。これにより、入射したパルスレーザビームPL3の形状を可変とする。
【0029】
成形アパーチャ駆動部は、例えば、エアシリンダ等を用いることが可能である。成形アパーチャ制御部は、例えば、被加工物に形成する加工パターンの情報を備える加工パターン信号S7にて制御される。
【0030】
例えば、
図2(a)の正方形の成形アパーチャを備える場合であり、成形アパーチャ入射前のパルスレーザビームPL3の形状が円形である場合を考える。例えば、加工パターンのうち曲線部では、成形アパーチャを挿入せず円形のビームで加工する。一方、例えば、加工パターンのうち直線部または直線的な角部では成形アパーチャを挿入し正方形のビームで加工する。これにより、設計上所望される曲線および直線を忠実に再現することが可能となる。
【0031】
なお、成形アパーチャ17は、1個に限られず複数個備えられ、形状に応じて使い分けてもかまわない。例えば、
図2に示す4個の成形アパーチャをすべて備えもかまわない。これにより、さらに、被加工物表面に形成するパターンの形状を設計上の形状に忠実に形成することが可能となる。また、被加工物表面に形成するパターンの形状の自由度をさらに増大させることが可能となる。
【0032】
レーザビームスキャナ18は、クロック信号S1に同期してパルスレーザビームPL5を、1次元方向のみに走査するよう構成されている。このように、クロック信号S1に同期してパルスレーザビームPL5を走査することにより、パルスレーザビームの照射スポットの位置決め精度が向上する。
【0033】
また、1次元方向のみの走査とすることによっても、パルスレーザビームの照射スポットの位置決め精度の向上を図ることができる。なぜなら、2次元方向の走査を行うレーザビームスキャナは、構造上1次元方向のみ走査するレーザビームスキャナに対してビームの位置精度が劣化するためである。
【0034】
レーザビームスキャナ18としては、例えば1軸スキャンミラーを備えたガルバノメータ・スキャナが挙げられる。
図3は、ガルバノメータ・スキャナを用いたレーザビームスキャナの説明図である。
【0035】
ガルバノメータ・スキャナは、1軸スキャンミラー28、ガルバノメータ30、レーザビームスキャナ制御部32を有している。ここで、ガルバノメータ30は、例えば走査角センサ36からのフィードバックによるサーボ制御のようなスキャンミラー回転の駆動機構を備えている。
【0036】
加工制御部24からは、クロック信号S1に同期した走査指令信号S2が送られる。そして、ガルバノメータ30は、走査指令信号S2に基づくレーザビームスキャナ制御部32からの駆動信号S3により駆動制御されるよう構成されている。ガルバノメータ・スキャナは、1軸スキャンミラー28により全反射するパルスレーザビームPL5を、
図3の矢印に示すようにスキャンミラーの回転運動(首振り)に従い走査する。
【0037】
レーザビームスキャナ18には、走査角センサ36が備えられている。ガルバノメータ・スキャナの場合には、その1軸スキャンミラー28の回転位置をロータリエンコーダ等によって検出する構造になっている。そして、走査角センサ36は検出した走査角検出信号S4をレーザビームスキャナ制御部32に送り、ガルバノメータ30の駆動制御用として使用する。また、レーザビームスキャナ制御部32は、走査角検出信号S4に基づき走査角信号S5を加工制御部24に送信する。
【0038】
そして、上記1軸スキャンミラー28で反射したパルスレーザビームPL4は、fθレンズ34を通り、1次元方向に、例えば一定の速度Vで並行して走査される像高H=fθのパルスレーザビームPL5となる。そして、このパルスレーザビームPL5が、XYステージ部20上に保持される被加工物Wの表面を微細加工する照射パルス光として、被加工物W上に投射される。
【0039】
レーザビームスキャナ18には、ガルバノメータ・スキャナの他に、例えば、ポリゴン・スキャナ、ピエゾ・スキャナ、またはレゾナント・スキャナ等を適用することも可能である。
【0040】
上記いずれのレーザビームスキャナであっても、加工を行う範囲で一定の走査速度Vが確保できるように制御するよう構成されることが、加工精度を上げる観点から重要である。
図4は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置のレーザビームスキャナの走査を説明する図である。
図4に示すように、スキャンミラーの走査角範囲の走査開始位置から走査終了位置に対応する位置範囲には、加速期間、安定域、減速期間がある。加工精度をあげるためには、実際の加工範囲が含まれる安定域内で走査速度Vが一定となるよう制御するよう装置が構成されることが重要である。
【0041】
XYステージ部20は、被加工物Wを載置可能で、パルスレーザビームが走査される1次元方向に直交する方向を含むXY方向に自在に移動できるXYステージ、その駆動機構部、XYステージの位置を計測する例えばレーザ干渉計を有した位置センサ等を備えている。ここで、XYステージは、2次元の広範囲、例えば1m程度のX方向およびY方向の距離範囲で、連続移動あるいはステップ移動できるようになっている。そして、その位置決め精度および移動誤差がサブミクロンの範囲の高精度になるよう構成されている。
【0042】
加工制御部24は、半導体集積回路からなるマイクロコンピュータ(MCU)、マイクロプロセッサ(MPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、半導体メモリ、回路基板等のハードウェアまたはこれらのハードウェアとソウトウェアとの組み合わせにより構成されている。パルスレーザ加工装置による加工を統合して制御する。
【0043】
次に、上記パルスレーザ加工装置10を用いたパルスレーザ加工方法について説明する。このパルスレーザ加工方法は、ステージに被加工物(ワーク)を載置し、クロック信号を発生し、クロック信号に同期したパルスレーザビームを出射し、パルスレーザビームの光パルス数に基づき、クロック信号に同期してパルスレーザビームの照射と非照射を切り替え、被加工物表面に、パルスレーザビームをクロック信号に同期してレーザビームスキャナにより1次元方向に走査し、パルスレーザビームを1次元方向に走査した後に、上記1次元方向に直交する方向にステージを移動して、更にクロック信号に同期してパルスレーザビームを1次元方向に走査するパルスレーザ加工方法である。そして、パルスレーザビームの形状を、成形アパーチャを用いて被加工物の加工中に変化させる。
【0044】
図5は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置のタイミング制御を説明する信号波形図である。ステージに載置されるワークWを加工する際、レーザ発振器12は内蔵する制御部によりレーザ発振の大半が制御され自律して動作する。もっとも、
図5(a)に示すように基準クロック発振回路により生成される周期Tpのクロック信号S1により、パルス発振のタイミングの制御が行われ、クロック信号S1に同期した周期TpのパルスレーザビームPL1を出射する。
【0045】
レーザビームスキャナ18は、走査起動信号S11に基づき
図4に示す走査開始位置(走査原点)で走査起動する。この時、レーザビームスキャナ18は
図5(a)に示すように、クロック信号S1の立ち上がり(立下りでもよい)に同期した、加工制御部24で生成される周期Tsの走査指令信号S2により指示を受ける。そして、この走査指令信号S2に基づき、レーザビームスキャナ制御部32がガルバノメータ30の駆動制御を行う。
【0046】
このように、レーザビームスキャナ18により、クロック信号S1に同期してパルスレーザビームを1次元方向に走査する。この時、パルスレーザビームの照射と非照射を切り替えることで、ワークW表面にパターンを加工する。なお、走査指令信号S2は、XY2−100プロトコルに対応することで、例えば、100kHz(Ts=10μsec)での、ガルバノメータ30の走査角「0度」位置を基準とする絶対走査角指令に従う。
【0047】
なお、
図5(a)は、例えば、パルスレーザビームの発振周波数を500kHz(Tp=2μsec)、パルスレーザビームのビーム径を16μm、走査速度Vを4000mm/secとした場合の、走査起動時のクロック信号S1の立ち上がりに同期した走査指令信号S2の例を示している。
【0048】
1次元方向にパルスレーザビームを走査した後に、上記1次元方向に直交する方向にステージを移動して、更に上記クロック信号に同期してパルスレーザビームを上記1次元方向に走査する。このように、パルスレーザビームの1次元方向の走査と、上記1次元方向に直交する方向にステージの移動が交互に行われる。
【0049】
ここで、レーザビームスキャナ18からの走査角信号S5が、XYステージ部の移動タイミングを指示する。レーザビームスキャナ18の1次元走査方向をX軸方向とすると、上記移動タイミングにより、Y軸方向の所定幅のステップ移動あるいは連続移動がなされる。その後、パルスレーザビームをX方向に走査する。
【0050】
ここで、
図3の加速期間では、走査速度が早期に安定した走査速度Vになるように、走査指令信号S2によるレーザビームスキャナ18の制御を行う。最適条件での1軸スキャンミラー28の走査角繰り返し再現性は、安定域では10μrad/p−p程度が得られることが経験的に明らかである。この値は、焦点距離が100mmのfθレンズとした場合、1μm/p−pの走査位置再現性になる。
【0051】
もっとも、加速期間における走査速度Vの繰り返し安定性は、長期の走査において10倍程度まで悪化する。このため、
図3における加工原点の位置が走査ごとに変動する恐れがある。そこで、加速期間終了後、充分に安定した領域で、パルスレーザビームPL1の発振と、ビーム走査との同期をとるための同期角(θsy)を設定する。充分に安定した領域に達するまでの走査角範囲は、例えば、加速期間が1msec〜1.5msecで、焦点距離が100mmのfθレンズとした場合、約2.3度〜3.4度である。
【0052】
そして、
図5(b)に示すように、この同期角を走査角センサ36が検出する。そして、同期角を検出する時に走査開始位置からの走査角θ
0に対応する走査指令信号S2との位相差θiを求める。そして、この位相差θ
iに基づき、走査指令信号S2に対する加工原点までの距離を補正する。
【0053】
上記加工原点までの距離の補正値は、加工時の第1回目の走査(i=1)を基準補正値として記憶させる。そして、以後のi=nとなる第n回目の走査開始位置からの走査の都度、位相差θ
nと位相差θ
1の差分を第n回目走査の第1回目走査に対する走査指令信号S2に対する加工原点までの距離補正値とする。求められた距離補正値は、走査開始位置からの走査角θ
0に対する走査指令信号(S2:絶対走査角指令)以降の走査指令信号(S2)に与えることで、加工原点位置が補正される。このようにして、レーザビームスキャナ18の加速期間における走査速度がばらついたとしても、第1回目走査時と第n回目走査時の加工原点位置を一致させることが可能となる。
【0054】
以上のように、1次元方向にパルスレーザビームを走査した後に、上記1次元方向に直交する方向にステージを移動して、更に上記クロック信号S1に同期してパルスレーザビームを上記1次元方向に走査する場合において、走査ごとの加工原点位置が一致し、加工精度が向上する。
【0055】
上記、1次元方向にパルスレーザビームを走査する際に、パルスレーザビームの光パルス数に基づき、上記クロック信号S1に同期してパルスレーザビームの照射と非照射を切り替える。パルスレーザビームの照射と非照射は、パルスピッカーを用いて行われる。
【0056】
図3に示すように、
S
L:同期角検出位置からワークまでの距離
W
L:ワーク長
W
1:ワーク端から加工原点まで距離
W
2:加工範囲
W
3:加工終端からワーク端までの距離
とする。
【0057】
ここで、
加工原点=同期角検出位置+S
L+W
1
となり、ワークはステージ上に固定位置で設置されるため、S
Lも固定距離となる。更に、同期角検出位置を基準とするワーク上の加工原点(以下、加工原点(SYNC)とも表記)は、
加工原点(SYNC)=S
L+W
1
となる。この加工原点(SYNC)は、上述のような補正を行うことで管理され、走査ごとに常に安定した位置から加工が開始される。なお、
図3に示すように、実加工は加工範囲(W
2)に収まる範囲で行われる。
【0058】
例えば、ビームスポット径D(μm)、ビーム周波数F(kHz)の加工条件で走査を行う場合、加工速度:V(m/sec)は、スポット径の1/nずつ、ビームの照射位置をずらす場合、
V=D×10
−6×F×10
3/n
となる。
【0059】
パルスピッカーにより光パルスを制御して加工を行う場合、パルスピッカーで作成するパルスピッカー駆動信号S6は、実際に加工を行う領域を加工長により定義し、繰り返し加工ピッチを非加工長により定義することが可能である。ここで、加工長をL
1とし、非加工長をL
2とすると、パルスレーザビームの光パルス数に基づき、加工長レジスタ設定は、
加工パルス数=(L
1/(D/n))−1
非加工長レジスタ設定は、
非加工パルス数=(L
2/(D/n))+1
とすることができる。
【0060】
また、加工原点(SYNC)から実際に加工を開始する位置を待機長として定義することで、加工形状ごとの開始位置を設定する。ここで、待機長をL
Wとすると、加工原点(SYNC)レジスタ設定は、
加工原点(SYNC)光パルス数=(S
L+W
1)/(D/n)
待機長レジスタ設定は、
待機長光パルス数=L
W/(D/n)
とすることができる。
【0061】
なお、加工長、非加工長、待機長、加工原点(SYNC)に対する各レジスタへの設定値は、それぞれに対応する光パルス数である。そして、この光パルス数は、使用されるビームプロファイルに基づいて予め決定される補正のための光パルス数を加味した値となる。
【0062】
上記のレジスタ設定値は、照射する光パルス数で管理される。また、同期角検出後の加工待機区間についても光パルス数で管理される。このようにパルスピッカーの管理を光パルス数で行うことにより、基準となるクロック信号S1とパルスピッカーとの同期を容易に維持でき、安定した繰り返し性が維持される。そして、クロック信号S1とパルスピッカー14との同期を維持することで、高精度なレーザ加工が簡易に実現される。
【0063】
図6は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置のパルスピッカー動作のタイミング制御を説明する信号波形図である。加工データから生成され、光パルス数で管理される加工パターン信号S7は、加工制御部24から出力される。
【0064】
図6に示すように、周期Tpのクロック信号S1からt
1遅延したパルスレーザビーム(PL1)は、パルスピッカー駆動信号S6に基づき遮断/通過が制御される。なお、レーザビームスキャナ18の走査と、パルスレーザビームの遮断/通過との同期は、走査角指令信号(S2)生成タイミングをクロック信号(S1)に同期させることで行っている。
【0065】
例えば、パルスピッカー駆動信号S6は、加工パターン信号S7をクロック信号S1の立ち上がりによりサンプリングする。そして、クロック信号S1の一クロックの立ち上がりからt
2時間遅延して立ち上がる。そして、所要のパルス数に相当するクロック数後、加工パターン信号S7がインアクティブとなった状態をクロック信号S1の立ち上がりでサンプリングし、t
3時間遅延して立ち下がる。
【0066】
そして、このパルスピッカー駆動信号S6により、パルスピッカー14の動作が遅延時間t
4およびt
5経過後に生ずる。このパルスピッカー14の動作により、パルスレーザビーム(PL1)が、変調パルスレーザビーム(PL2)として抽出される。
【0067】
ここで、加工データは、例えば、3次元形状の指定、寸法、形状の数、配置位置、ワークの材料名、ワークの寸法等で構成されている。加工データは加工制御部24で解析される。そして、加工に使用されるレーザの発振器動作、ビーム走査条件である照射パルスエネルギー、ビームスポット径、ビーム形状、繰り返し周波数、走査速度、ステージ送り量等の条件から単位光パルスの加工量が経験的に得られる。
【0068】
上記条件を基に、更に3次元形状から2次元レイヤに分解し、各レイヤ毎のビットマップデータ等による2次元データに変換する。この2次元データからパルスピッカー14の動作データ(加工パルス数、非加工パルス数、待機長パルス数)に変換する。また、成形アパーチャ17の動作データ(ビーム形状)に変換する。
【0069】
例えば、Cu材に加工を行う場合、ビームスポット径D=15μm、繰り返し周波数F=500kHz、ビーム照射移動比n=2の加工条件で操作を行うとすると、加工速度Vは、V=3.75m/secとなる。また、照射パルスエネルギーを1μJ/パルスとすると、加工深さが0.1μmとなる。したがって、加工形状のレイヤ分解幅を0.1μmとすればよい。なお、このようにして分解されたレイヤの数をレイヤ数Rnと称する。
【0070】
次に、レイヤ毎のパルスピッカー動作データ、すなわち、加工パルス数、非加工パルス数、待機長パルス数について説明する。
図7は実施の形態のパルスレーザ加工装置による一加工例を示す図である。
図8は
図7の加工における特定の1次元方向の走査を示す図である。
図9は
図7の加工における特定のレイヤについての2次元加工を示す図である。
【0071】
図7に示すように、例えば、LX
1(横)×LY
1(縦)×Dp(深さ)、具体的には、例えば、52.5μm×37.5μm×0.1RnμmのポケットをワークW上の9箇所に形成する。この加工例では、ビーム走査方向であるX方向については、LX
1の加工長とLX
2の非加工長の加工を行い、ステージ移動方向であるY方向については、LY
1の加工長で、LY
2、LY
3の非加工長の加工を行う。
【0072】
図8には、Y方向で、LY
1に相当する領域内の1本のラインの1次元方向の走査を示す。同期角検出位置からS
L+W
1、光パルス数にして(S
L+W
1)/(D/n)離れた加工原点(SYNC)を基準にLw、光パルス数にしてL
W/(D/n)の待機長をおいて、ワークへのパルスレーザビーム照射が行われる。この照射は光パルス数にして(LX
1/(D/n))−1である。その後、光パルス数にして(LX
2/(D/n))+1の間、非照射とし、更に、光パルス数で管理された照射と非照射を同一走査内で繰り返す。
【0073】
1次元方向のみに走査されるレーザビームスキャナ18により、特定のX方向のライン走査が終了すると、ステージをX方向に直交するY方向に移動させて、更にレーザビームスキャナ18により、X方向の走査を行う。すなわち、レーザビームスキャナ18によるパルスレーザビームの1次元方向の走査と、この走査に続く1次元方向に直交する方向のステージの移動を交互に繰り返すことで、被加工物を加工する。
【0074】
このようにして、
図9に示すような特定のレイヤについての2次元加工が行われる。さらに、レイヤ分解により生成された別のレイヤについて、
図9に占めすと同様な手法で2次元加工を行う。このようなレイヤ毎の加工を繰り返して、最終的に
図7に示すような3次元のポケット加工が完了する。
【0075】
なお、本実施の形態では、パルスレーザビームの形状を、成形アパーチャを用いて被加工物の加工中に変化させる。例えば、
図9に示すように、設計上丸みを帯びた角部は円形のビームを照射し加工する。一方、設計上直線のポケット外周部は正方形のビームを照射して加工する。このビームの形状の切り替えは成形アパーチャ17の挿入と抜去を制御することにより行う。
【0076】
具体的には、角部の照射の際には、例えば、成形アパーチャを挿入せず、円形のビームを照射する。または、例えば、
図2(c)、(d)のような円形の成形アパーチャを挿入する。一方、外周部の照射の際には、例えば、
図2(a)、(b)のような正方形のアパーチャを挿入する。
【0077】
ビーム形状の変更は、まず円形のビームで走査し、その後、同一走査線上を正方形のビームで走査してもかまわない。
【0078】
以上、本実施の形態によれば、パルスレーザビームの形状を、成型アパーチャを用いて可変とする。これにより、被加工物表面に形成するパターンの形状を設計上の形状に忠実に形成することが可能になる。あるいは、被加工物表面に形成するパターンの形状の自由度が増大する。
【0079】
(第2の実施の形態)
本実施の形態のパルスレーザ加工装置は、成形アパーチャが第1アパーチャとこの第1アパーチャに対して独立に駆動する第2アパーチャで構成され、第1アパーチャと第2アパーチャの重なり程度によりパルスレーザビームの形状を可変とする点以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0080】
図10は、本実施の形態の成形アパーチャの説明図である。
図10(a)が第1のアパーチャ27a、
図10(b)が第2のアパーチャ27bである。第1のアパーチャ27aは三角形と四角形を合わせた形状を呈している。一方、第2のアパーチャ27bは正方形である。
【0081】
第1のアパーチャ27aと第2のアパーチャ27bとは、独立に駆動する。いずれか一方がパルスレーザビームの光軸に対して固定式であってもかまわない。
【0082】
第1のアパーチャ27aと第2のアパーチャ27bとが独立に駆動してその重なり程度が変化することにより、異なる形状のビームを形成することが可能となる。例えば、
図10(c)のように重ねることで、長方形のビームを形成することが可能である。また、
図10(d)のように重ねることで、三角形のビームを形成することが可能となる。
【0083】
本実施の形態によれば、ビームの形状の選択肢が広がることにより、さらに、被加工物表面に形成するパターンの形状を設計上の形状に忠実に形成することが可能になる。あるいは、さらに、被加工物表面に形成するパターンの形状の自由度を増大させることが可能となる。
【0084】
(第3の実施の形態)
本実施の形態のパルスレーザ加工装置は、クロック信号を発生する基準クロック発振回路と、クロック信号に同期した第1のパルスレーザビームを出射する第1のレーザ発振器と、クロック信号に同期した第2のパルスレーザビームを出射する第2のレーザ発振器と、クロック信号に同期して第1のパルスレーザビームの通過と遮断を切り替える第1のパルスピッカーと、クロック信号に同期して第2のパルスレーザビームの通過と遮断を切り替える第2のパルスピッカーと、第1のパルスレーザビームの光パルス数に基づき、第1のパルスピッカーを制御する第1のパルスピッカー制御部と、第2のパルスレーザビームの光パルス数に基づき、第2のパルスピッカーを制御する第2のパルスピッカー制御部と、第1のパルスピッカーとレーザビームスキャナとの間の光路、または、第2のパルスピッカーとレーザビームスキャナとの間の光路の少なくともいずれか一方に設けられ、第1または第2のパルスレーザビームの形状を可変とする成形アパーチャと、クロック信号に同期して第1および第2のパルスレーザビームを1次元方向のみに走査するレーザビームスキャナと、被加工物を載置可能で1次元方向に直交する方向に移動するステージと、を備える。
【0085】
本実施の形態のパルスレーザ加工装置は、レーザ発振器からパルスピッカーに至るレーザ系統を2系統備える点以外は、基本的に第1または第2の実施の形態と同様である。したがって、第1または第2の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0086】
図11は、本実施の形態のパルスレーザ加工装置の構成図である。パルスレーザ加工装置10は、その主要な構成として、加工データ入力部11、第1のレーザ発振器12a、第2のレーザ発振器12b、第1のパルスピッカー14a、第2のパルスピッカー14b、第1のビーム整形器16a、第2のビーム整形器16b、第1の成形アパーチャ17a、第2の成形アパーチャ17b、合波器40、レーザビームスキャナ18、XYステージ部20、第1のパルスピッカー制御部22a、第2のパルスピッカー制御部22b、加工パターン分割部50および加工制御部24を備えている。加工制御部24には所望のクロック信号S1を発生する基準クロック発振回路26、加工パターン生成部54が備えられている。
【0087】
基準クロック発振回路26ではクロック信号S1が生成される。第1および第2のレーザ発振器12a、12bは、クロック信号S1に同期したパルスレーザビームPL1aを出射するよう構成されている。
【0088】
第1のパルスピッカー14aは、第1のレーザ発振器12aの後段、レーザビームスキャナ18の前段の光路に設けられる。そして、クロック信号S1に同期して第1のパルスレーザビームPL1aの通過と遮断(オン/オフ)を切り替えることで被加工物(ワークW)の加工と非加工を切り替えるよう構成されている。このように、第1のパルスピッカー14aの動作により第1のパルスレーザビームPL1aは、被加工物の加工のためにオン/オフが制御され変調された第1の変調パルスレーザビームPL2aとなる。
【0089】
第1のビーム整形器16aは、入射した第1のパルスレーザビームPL2aを所望の形状に整形された第1のパルスレーザビームPL3aとする。例えば、ビーム径を一定の倍率で拡大するビームエクスパンダである。また、例えば、ビーム断面の光強度分布を均一にするホモジナイザのような光学素子が備えられていてもよい。また、例えばビーム断面を円形にする素子や、ビームを円偏光にする光学素子が備えられていても構わない。
【0090】
第1の成形アパーチャ17aは、入射した第1のパルスレーザビームPL3aの形状を可変とする。形状を変更された第1のパルスレーザビームPL3aは第1のパルスレーザビームPL4aとなる。
【0091】
成形アパーチャ17は、例えば、第1の成形アパーチャ制御部(図示せず)で制御される。第1の成形アパーチャ制御部は第1の成形アパーチャ17aを動かし、第1のパルスレーザビームPL3aの光路への挿入と抜去を行う。これにより、入射した第1のパルスレーザビームPL3aの形状を可変とする。
【0092】
第1の成形アパーチャ制御部は、例えば、加工パターン分割部50で生成され、被加工物に形成する加工パターンの情報を備える第1の加工パターン信号S7aにて制御される。
【0093】
第2のパルスピッカー14bは、第2のレーザ発振器12bの後段、レーザビームスキャナ18の前段の光路に設けられる。そして、クロック信号S1に同期して第2のパルスレーザビームPL1bの通過と遮断(オン/オフ)を切り替えることで被加工物(ワークW)の加工と非加工を切り替えるよう構成されている。このように、第2のパルスピッカー14bの動作により第2のパルスレーザビームPL1bは、被加工物の加工のためにオン/オフが制御され変調された第2の変調パルスレーザビームPL2bとなる。
【0094】
第2のビーム整形器16bは、入射した第2のパルスレーザビームPL2bを所望の形状に整形された第2のパルスレーザビームPL3bとする。例えば、ビーム径を一定の倍率で拡大するビームエクスパンダである。また、例えば、ビーム断面の光強度分布を均一にするホモジナイザのような光学素子が備えられていてもよい。また、例えばビーム断面を円形にする素子や、ビームを円偏光にする光学素子が備えられていても構わない。
【0095】
なお、第2のビーム整形器16bは、第1のビーム整形器16aと異なる形状に整形する光学素子を備えていてもかまわない。
【0096】
第2の成形アパーチャ17bは、入射した第2のパルスレーザビームPL3bの形状を可変とする。形状を変更された第2のパルスレーザビームPL3bは第2のパルスレーザビームPL4bとなる。
【0097】
第2の成形アパーチャ17bは、例えば、第2の成形アパーチャ制御部(図示せず)で制御される。第2の成形アパーチャ制御部は第2の成形アパーチャ17abを動かし、第2のパルスレーザビームPL3bの光路への挿入と抜去を行う。これにより、入射した第2のパルスレーザビームPL3bの形状を可変とする。
【0098】
第2の成形アパーチャ制御部は、例えば、加工パターン分割部50で生成され、被加工物に形成する加工パターンの情報を備える第2の加工パターン信号S7bにて制御される。
【0099】
第2の成形アパーチャ17bは、第1の成形アパーチャ17aと独立して駆動するため、第2のパルスレーザビームPL3bの形状を第1のパルスレーザビームPL3aと異なる形状に制御することが可能である。
【0100】
合波器40は、例えば、第1のミラー40aと第2のミラー40bとで構成される。第1のミラー40aは例えば折り返しミラーであり、第2のミラー40bは例えばハーフミラーである。第1のミラー40aは、例えば、ピエゾ素子を利用した駆動系を備えたホルダーで保持され、微細な位置調整を可能としている。
【0101】
合波器40は、第1のパルスレーザビームPL4aと第2のパルスレーザビームPL4bの光軸をそろえる機能を備える。2つのパルスレーザビームを合波して同時に被加工物に照射することも可能である。
【0102】
このように、別個のレーザ発振器で生成された2系列のパルスレーザビームのビーム形状を、成形アパーチャを用いて独立に制御する。これにより、被加工物表面に形成するパターンの形状を設計上の形状に忠実に形成することが可能になる。あるいは、被加工物表面に形成するパターンの形状の自由度を増大させることが可能となる。
【0103】
レーザビームスキャナ18は、クロック信号S1に同期してパルスレーザビームPL5を、1次元方向のみに走査するよう構成されている。
【0104】
加工データ入力部11では、被加工物の加工データが入力される。加工データは、例えば、例えば、3次元形状の指定、寸法、形状の数、配置、ワークの材料名、ワークの寸法等で構成されている。3次元形状の指定は、例えば、被加工物の加工後の形状がカラーデータとして含まれるビットマップ形式のデータにより行われる。加工データ入力部11は、例えば、加工データが記憶される記憶媒体、例えば半導体メモリやDVD(Degital Video Disk)等の記憶媒体読み取り装置である。
【0105】
加工制御部24は、加工データ入力部11から入力される加工データに基づき、パルスレーザ加工装置による加工を統合して制御する。加工制御部24は、クロック信号S1を発生する基準クロック発振回路26を備えている。
【0106】
さらに、加工制御部24は、加工データ入力部11から入力される加工データから、実際の加工に即したパラメータのデータの加工パターンに変換する。加工データは加工制御部24で解析される。そして、加工に使用されるレーザの発振器動作、ビーム走査条件である照射パルスエネルギー、ビームスポット径、ビーム形状、繰り返し周波数、走査速度、ステージ送り量等の条件から単位光パルスの加工量が経験的に得られる。
【0107】
上記条件を基に、更に3次元形状から2次元レイヤに分解し、レイヤ毎のビットマップデータ等による2次元データに変換する。この2次元データからパルスピッカーの動作データ(加工パルス数、非加工パルス数、待機長パルス数)に変換する。
【0108】
加工パターン生成部54で生成される加工パターンは、例えば、レーザビームの走査毎の待機長、加工長、非加工長がパルス数を単位として記述された加工テーブルである。加工データ生成部では、例えば、合波された後の合波パルスレーザビームのパルス数を単位として記述された加工テーブルを生成する。
【0109】
加工テーブルは、例えば、加工パターンについて、待機長、加工長、非加工長、パルスレーザビームの形状をパルスレーザビームの光パルス数に基づき記載する。
【0110】
加工パターン分割部50では、加工パターン生成部54で生成された加工パターンを、第1の副加工パターンと第2の副加工パターンに分割する機能を備える。第1の副加工パターンは第1のパルスレーザビームPL1aから第1のパルスレーザビームPL2aを生成するために用いられる。また、第2の副加工パターンは第2のパルスレーザビームPL1bから第2のパルスレーザビームPL2bを生成するために用いられる。
【0111】
第1の副加工パターンは、例えば、レーザビームの走査毎の待機長、加工長、非加工長、パルスレーザビームの形状が第1のパルスレーザビームPL1aのパルス数を単位として記述された加工テーブルである。また、第2の副加工パターンは、例えば、レーザビームの走査毎の待機長、加工長、非加工長、パルスレーザビームの形状が第2のパルスレーザビームPL1bのパルス数を単位として記述された加工テーブルである。
【0112】
第1の副加工パターンは、第1のパルスピッカー制御部22aに転送され、第1のパルスピッカー14aの制御に用いられる。また、第2の副加工パターンは、第2のパルスピッカー制御部22bに転送され、第2のパルスピッカー14bの制御に用いられる。
【0113】
第1の副加工パターンは、第1の成形アパーチャ制御部22aに転送され、第1の成形アパーチャ17aの制御に用いられる。また、第2の副加工パターンは、第1の成形アパーチャ制御部に転送され、第2の成形アパーチャ17bの制御に用いられる。
【0114】
加工制御部24、加工パターン分割部50は、半導体集積回路からなるマイクロコンピュータ(MCU)、マイクロプロセッサ(MPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、半導体メモリ、回路基板等のハードウェアまたはこれらのハードウェアとソウトウェアとの組み合わせにより構成されている。
【0115】
本実施の形態では、2系列のレーザビームを用いる。そして、それぞれ独立にビーム形状を成形アパーチャを用いて可変に制御する。例えば、
図9のような二次元レイヤを加工する場合、円形のビームは第1のパルスレーザビームを用いて被加工物に照射し、正方形のビームは第2のパルスレーザビームを用いて照射する。これにより、例えば、一走査の間に成形アパーチャを動作させてビーム形状を変更することが不要となり、被加工物の加工の高速化を実現することが可能となる。
【0116】
以上、本実施の形態によれば、さらに、被加工物表面に形成するパターンの形状を設計上の形状に忠実に形成することが可能になる。あるいは、さらに、被加工物表面に形成するパターンの形状の自由度を増大させることが可能となる。そして、被加工物の加工の高速化も実現することが可能となる。
【0117】
なお、ここでは2つのレーザビーム系列の双方に成形アパーチャを設ける場合を例に説明したが、いずれか一方の系列に成形アパーチャを設ける構成とすることも可能である。
【0118】
また、第1の成形アパーチャ17aと第2の成形アパーチャ17bは同種のものであっても異種のものであってもかまわない。
【0119】
また、第1の成形アパーチャ17aと第2の成形アパーチャ17bのいずれか一方、または、双方を、第2の実施の形態で示したような、第1アパーチャと第2アパーチャの重なり程度によりパルスレーザビームの形状を可変とする構成としてもかまわない。
【0120】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。パルスレーザ加工装置、パルスレーザ加工方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分については記載を省略したが、必要とされるパルスレーザ加工装置、パルスレーザ加工方法を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパルスレーザ加工装置、パルスレーザ加工方法は、本発明の範囲に包含される。
【0121】
例えば、実施の形態では、ポケットを加工する場合を例に説明したが、これらの形状に限られることなく、例えば、マイクロレンズ用金型のディンプル形状、電子ペーパ用のリブを製造するための円錐形状、あるいは三角錐、四角錘、V溝、凹溝、R溝等の任意形状の加工、その組み合わせの形状の加工を行うパルスレーザ加工装置またはパルスレーザ加工方法であっても構わない。
【0122】
また、被加工物として、主にCu材を例に説明したが、例えば、Ni材、SKD11等の金属材、DLC材、高分子材料、半導体材、ガラス材等のその他の材料であっても構わない。
【0123】
また、レーザ発振器としては、YAGレーザに限ることなく、被加工物の加工に適したその他の、例えば、Nd:YVO
4レーザの第2高調波(波長:532nm)のような単一波長帯レーザあるいは複数波長帯レーザを出力するものであっても構わない。