特許第5909378号(P5909378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909378
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】電池補強方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20160412BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   H01M2/06 K
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-28515(P2012-28515)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-165038(P2013-165038A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】オートモーティブエナジーサプライ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】八十岡 武志
(72)【発明者】
【氏名】手塚 道幸
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−347123(JP,A)
【文献】 特開2010−198988(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/98242(WO,A1)
【文献】 特開2012−204002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/00−2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の外装材内に電池要素が配置された矩形電池セルを補強するための電池補強方法であって、
前記外装材を、2枚の矩形の外装材シートの間に前記電池要素を内包して、矩形の各辺に沿う封止部により封止することによって形成し、
前記外装材において前記封止部よりも外側に補強部を形成する工程を含み、
前記外装材シートは、金属シートを樹脂により被覆したものであり、
前記封止部および前記補強部の形成は、それぞれ別個に、2枚の前記外装材シートを被覆する樹脂を熱圧着することによって達成される電池補強方法。
【請求項2】
前記補強部を、前記外装材シートの気体を排出するために使用される矩形の1辺とは異なる他の辺の少なくとも一部に形成する請求項1に記載の電池補強方法。
【請求項3】
前記電池セルの辺の少なくとも一部に前記補強部を形成する工程の前に、前記辺の補強部を形成する部分の変形を矯正する工程をさらに含む請求項1または請求項2に記載の電池補強方法。
【請求項4】
前記電池セルの辺の少なくとも一部に前記補強部を形成する工程の前に、前記辺の補強部を形成する部分の変形を検出する工程をさらに含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池補強方法。
【請求項5】
前記補強部は、前記電池セルを他の装置に受け渡しまたは他の装置から受け取る際に、当該他の装置と接触する前記電池セルの辺に形成される請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池補強方法。
【請求項6】
前記補強部により補強した辺の角を面取りする工程をさらに含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池補強方法。
【請求項7】
前記電池セルの辺の前記補強部が形成された部分を切断する工程をさらに含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の電池補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のワークをラック内に収納し、ワークの処理工程に応じて、ラック内に配列されている複数のワークのピッチを調整する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1記載の発明では、ワークが基板であり、基板保持部材に形成された溝に、基板の端部を嵌め合せた状態で、ワークが保持される。
【0003】
一方、電池セルを加工する工程においても、複数の電池セルをラックに収納し、必要に応じてピッチを調整して、取り出したり搬送したりすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−183357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池セルの場合、たとえばアルミシートを樹脂でコーティングしたラミネートシートにより外装が形成されているので、外装の端部が基板ほど硬くない。したがって、特許文献1記載の方法を採用すると、電池セルを保持部材の溝に嵌め合せる際に、外装を破損する虞がある。
【0006】
特許文献1のように保持部材の溝にワークを嵌め合せる形態でなくても、電池セルを所定のラック等の収納に出し入れする場合でも、電池セルの外装を破損する虞がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電池セルの端部が破損しないように補強する電池補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
電池補強方法は、矩形の外装材内に電池要素が配置された矩形電池セルを補強するための電池補強方法である。外装材は、2枚の矩形の外装材シートの間に前記電池要素を内包して、矩形の各辺に沿う封止部により封止することによって形成される。電池補強方法は、外装材において封止部よりも外側に補強部を形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0009】
電池補強方法は、封止部とは別に補強部を外側に形成する。したがって、電池セルの搬送時等に封止部を補強部により保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電池セルの外観を表した斜視図である。
図2】電池セルの平面および側面を示す図である。
図3】電池セルの分解斜視図である。
図4】電池セル内の封止部を示す図である。
図5】電池セルが搬送および載置される様子を示す図である。
図6】電池補強方法の手順を示すフローチャートである。
図7】電池セルの変形を確認する様子を示す図である。
図8】補強部を形成する様子を示す図である。
図9】電池セルに形成された補強部を示す図である。
図10】補強部の面取りの様子を示す図である。
図11】さらに補強部を形成した電池セルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本発明は、電池セルを補強する電池セル補強方法に関する。電池セル補強方法を説明する前に、補強対象である電池の構造について説明する。
【0013】
(電池)
図1は電池セルの外観を表した斜視図、図2は電池セルの平面および側面を示す図、図3は電池セルの分解斜視図である。
【0014】
図1および図2に示すとおり、電池セル10は、扁平な矩形形状を有しており、正極リード11および負極リード12が外装材13の同一端部から導出されている。外装材13は、たとえば、アルミシートの表面を樹脂コーティングしたものである。
【0015】
外装材13の内部には、図3に示すように、充放電反応が進行する発電要素(電池要素)15および電解液が収容されている。発電要素15は、間にシート状のセパレータ20を挟みつつ、正極30と、負極40とが交互に積層されて形成される。発電要素15を外装材13内部に配置し電解液を加えた状態や初回充電を行った状態では、電池要素15内部(セパレータ20)に空気やガスなどが溜まることがある。
【0016】
正極30は、シート状の正極集電体の両面に正極活物質層32が形成されてなる。正極活物質層32は、正極30のタブ部分34には形成されていない。正極30の各タブ部分34は、発電要素15の積層方向から見て、重なる位置に設けられている。タブ部分34は、正極リード11と接続される。
【0017】
負極40は、シート状の負極集電体の両面に負極活物質層42が形成されてなる。負極活物質層42は、負極40のタブ部分44には形成されていない。負極40の各タブ部分44は、発電要素15の積層方向から見て、重なる位置であって、正極30のタブ部分34とは重ならない位置に設けられている。タブ部分44は、負極リード12と接続される。
【0018】
図4は、電池セル内の封止部を示す図である。なお、図中斜線で示す封止部16は、電池セル10の外部からは実際は目視できないものであるが、位置の説明のため明示している。
【0019】
電池セル10の外装材13は、2枚の矩形のラミネートシート(外装材シート)間に電池要素15を内包して、矩形の各辺に沿う封止部16により封止することで形成されている。たとえば、図4に斜線で示す範囲で、外装材13同士が接着され、封止部16が形成される。外装材13同士の接着は、たとえば、外装材13をコーティングする樹脂同士を熱融着させたり、接着剤により接着させたりすることで達成できる。封止部16は、電池セル10の各辺から所定の距離離れた位置、すなわち、電池セル10の外形から一回り小さく形成される。ただし、封止部16は、電池セル10の1辺17側においては、一部で辺17に接近するようにコの字に形成されている。辺17は、電池セル10の1辺は外装材13内の空気やガスを排出するためのガス抜き口18として使用される。図中点線Aで示される位置で、電池セル10の1辺17が切り落とされると、ガス抜き口18は、外装材13内部と外部を連通する。ガス抜き口18を通じて、外装材13内部のガス等が排出される。その後、ガス抜き口18の部分で、外装材13が接着されることで、電池セル10が再封止される。
【0020】
電池セル10が搬送、収納される様子を説明する。
【0021】
図5は、電池セルが搬送および載置される様子を示す図である。図5(A)は電池セル10の平面方向から見た様子を示し、図5(B)は図5(A)の矢印5B方向から見た様子を示す。
【0022】
図5に示すように、電池セル10は、搬送装置50により搬送される。本実施形態の搬送装置50は、電池セル10の矩形の短辺を垂直に立てた状態で、電池セル10を吊り下げて空中搬送する。搬送装置50は、たとえば、電池セル10の平面の上部を両側から把持部52により挟んで搬送する搬送ロボットである。
【0023】
搬送装置50は、加工や処理のための種々の工程まで電池セル10を搬送し、他の装置に電池セル10を受け渡したり、他の装置から受け取ったりする。ここで、他の装置には、たとえば、一時的に電池セル10を載置する受け台、電池セル10を収納する収納装置、搬送装置50とは別の方法で電池セル10を搬送する搬送装置などがある。あるいは、電池セル10に所定の加工を施すための加工装置や加工台であってもよい。以下では、図中下側に示す受け台60に電池セル10が受け渡し等される場合について例示する。
【0024】
受け台60は、電池セル10を両面から支持する支持部62を有する。電池セル10が搬送装置50により受け台60の上方まで搬送され、搬送装置50が受け台60に接近することよって、電池セル10が受け台60の支持部62間に挿入される。搬送装置50が把持部52により把持を開放すると、受け台60に電池セル10が収納される。電池セル10が受け台60から取り出される際には、受け台60に搬送装置50が接近し、電池セル10を把持部52により把持する。搬送装置50が上昇することで、受け台60から電池セル10が取り出される。
【0025】
上記のように、本実施形態では、電池セル10は、ガス抜き口18を上方に位置させた状態で搬送され、ガス抜き口18とは反対の辺から受け台60に収納される。したがって、電池セル10は、ガス抜き口18とは反対の辺で受け台60等の他の装置と接触することが多い。
【0026】
(電池補強方法)
以下、ガス抜き口18が開口される前の状態、すなわち、図4に示す状態で、電池セル10が補強される方法について、詳細に説明する。
【0027】
図6は電池補強方法の手順を示すフローチャート、図7は電池セルの変形を確認する様子を示す図、図8は補強部を形成する様子を示す図、図9は電池セルに形成された補強部を示す図、図10は補強部の面取りの様子を示す図である。
【0028】
まず、搬送装置50により電池セル10が所定位置に搬送され、電池セル10の補強する箇所に折れ曲がり等の変形がないか確認される(ステップS1)。ここで、変形を検査するのは、図7に示すセンサ70である。センサ70は、たとえば、一対の光電センサであり、一方から照射した光の光量を他方で検出することによって、電池セル10の外装材13の変形を確認する。外装材13は、図5で説明したように、図中下側に位置する辺が他の装置と接触することが多く、特に角で変形することが多い。したがって、たとえば、図7中点線で示す外装材13の角の部分について、曲がりを検出することが好ましい。
【0029】
外装材13の曲がりがセンサ70により検出された場合(ステップS1:YES)、当該変形は矯正される(ステップS2)。曲がりの矯正は、たとえば、外装材13を押圧しながら真っ直ぐに伸ばす押圧ローラである。ただし、外装材13の変形は、いかなる方法により矯正されてもよい。
【0030】
続けて、曲がりがないことが確認された場合(ステップS1:NO)、または、曲がりが矯正された場合(ステップS2)、電池セル10は、補強部が形成される(ステップS3)。補強部を形成する際には、図8に示すように、電池セル10の外装材13の下部を、熱融着装置72により熱融着する。熱融着装置72は、対となるブロックが外装材13の補強部を形成する部分に当接し、両側から加熱しつつ押圧することで、外装材13の樹脂を融着する。図9に示すように、電池セル10の封止部16よりも外側であって、ガス抜き口18が形成された辺17とは異なる辺19に補強部80が形成される。なお、外装材13を封止する封止部16も熱融着により形成されうるが、補強部80は、封止部16とは異なる精度の熱融着により形成できる。たとえば、封止部16は高精度な熱融着により形成され、補強部80は比較的低精度な熱融着により形成される。
【0031】
続けて、電池セル10は、形成された補強部80の角が面取りされる(丸められる)(ステップS4)。補強部80は、図10に示すように、鋏74により面取りされる。鋏74は、受け台60等に載置された電池セル10の角に接近して、角を切り落とす。図9および図10の黒く塗られた部分が切り落とされる。
【0032】
ステップS4後には、電池セル10は加工等の各装置に搬送され、その度に、電池セル10を支持する受け台60や収納に出し入れされる。電池セル10の主な加工等が終了した後で、製品として電池セル10が出荷される前には、補強部80は電池セル10から切除される(ステップS5)。補強部80は、図9の点線Bで示される位置で、切り落とされる。
【0033】
以上のように、上記実施形態では、気体排出に使用されるガス抜き口18が設けられた辺17とは異なる他の辺19に補強部80を形成している。辺17以外の辺19は、上述のように、電池セル10を搬送する際や加工のために支持する際に、搬送装置50や受け台60などの他の装置と接触することが多い。したがって、辺19を補強することによって、他の装置との接触により電池セル10の外装材13の変形を防止できる。また、補強部80は、別部材を付加することなく形成できるので、補強部80のために別途のコストが必要なく、低コストに変形の防止を実現できる。
【0034】
また、外装材13のラミネートシートの封止部16とは別に、補強部80を外側に形成している。したがって、封止部16とは異なる基準ないし精度で補強部80を形成できる。封止部16とは別に補強部80を外側に形成するので、電池セル10の搬送時等に封止部16を補強部80により保護できる。
【0035】
封止部16および補強部80の形成は、それぞれ別個にラミネートシートの樹脂を熱融着することにより達成できるので、同じ構成のラミネートシートを使用しつつ、別個に封止部16および補強部80を形成できる。
【0036】
また、補強部80を形成する前に、外装材13の変形を矯正するので、外装材13の辺が変形したまま補強部80を形成することにより辺に不要な癖や折目がつくのを防止できる。
【0037】
補強部80を形成する前に、外装材13の変形をセンサ70により検出するので、確実に辺の変形を検出できる。
【0038】
補強部80は、受け台60等の他の装置と接触する電池セル10の辺19に形成されるので、他の装置との接触による電池セル10の外装材13の変形を防止できる。
【0039】
補強部80により補強した辺19の角を面取りするので、電池セル10を補強した辺19から受け台60等の他の装置に挿入する場合に、角への負荷を分散し、辺19の変形を防止できる。
【0040】
電池セル10の加工等の工程においては補強部80を設けておき、電池セル10の外装材13の変形を防止する一方で、最終的には補強部80を切除する。したがって、加工等の工程により補強されつつも多少の傷がついた補強部80は、最終製品としての電池セル10には残らない。したがって、全く傷のない電池セル10を得られる。
【0041】
以上、本実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されない。種々の改良が可能である。
【0042】
図11は、さらに補強部を形成した電池セルを示す図である。
【0043】
上記実施形態では、電池セル10の辺19に沿った補強部80を形成していた。しかし、これに限定されない。図11に示すように、垂直に立つ辺にも補強部81、82を形成してもよい。補強部81、82の形成の仕方は、上記と同様であり、たとえば、ラミネートシートの樹脂を熱融着して形成する。なお、電池セル10の出荷前には、点線Cで示す位置で補強部81を切除できる。なお、図11では、正極リード11および負極リード12が引き出されている辺にも補強部82が形成されているが、補強部82は切除できないので、そのまま残す。補強部82側は、正極リード11等があるので、破損することは余りないので、補強部82を残しても問題はない。
【0044】
また上記実施形態では、受け台60に電池セル10を載置したり、受け台60から電池セル10を取り出したりする例について説明したがこれに限定されない。複数の電池セル10を収納する収納ラックに電池セル10を受け渡したり、収納ラックから電池セルを取り出すような場合にも、上記電池セル10の補強は有効である。
【符号の説明】
【0045】
10 電池セル、
11 正極リード、
12 負極リード、
13 外装材、
15 電池要素、
16 封止部、
17、19 辺、
18 ガス抜き口、
20 セパレータ、
30 正極、
40 負極、
50 搬送装置、
52 把持部、
60 受け台、
62 支持部、
70 センサ、
72 熱融着装置、
74 鋏、
80、81、82 補強部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11