特許第5909381号(P5909381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909381
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】携帯型超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   A61B8/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-36363(P2012-36363)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-169407(P2013-169407A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029791
【氏名又は名称】日立アロカメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 泰介
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06540685(US,B1)
【文献】 実開昭53−108502(JP,U)
【文献】 実公昭47−037865(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と運搬用ベルトとを備えた携帯型超音波診断装置であって、
前記本体の端部に、前記運搬用ベルトを着脱可能に取り付ける取付構造を有し、
前記取付構造は、前記運搬用ベルトの端部を着脱時の第一の位置から着脱時とは異なる第二の位置にスライド可能に保持するスライド機構と、前記第二の位置において前記運搬用ベルトの端部の脱落を防止する脱落防止機構とを有する携帯型超音波診断装置であって、
前記取付構造は、前記運搬用ベルトの端部に固定されたフックと、前記本体に設けられ、前記フックが挿入される開口を有するとともに前記フックがスライドする空間を有し、前記フックの第二の位置において前記フックを回転自在に保持するフック受け部とを有し、
前記脱落防止機構は、前記フックと前記フック受け部との各当接面に備えられ、前記フックの挿入位置で互いに係合する凹部及び凸部であることを特徴とする携帯型超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯型超音波診断装置において、
前記脱落防止機構は、前記第一の位置のみで前記運搬用ベルトの端部と前記筐体側の取付構造とが係合する形状を有することを特徴とする携帯型超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯型超音波診断装置において、
前記脱落防止機構の凹部は幅に対し長さが長い溝であり、前記凸部は前記溝に嵌合する形状を有し、前記凹部及び凸部のうち前記フック受け部に形成された一方は、その長手方向が前記フック受け部における前記フックのスライド方向に沿って形成されていることを特徴とする携帯型超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の携帯型超音波診断装置において、
前記脱落防止機構は、前記スライド機構における前記運搬用ベルト端部のスライドを制限する抵抗機構を備えることを特徴とする携帯型超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯型超音波診断装置において、
前記スライド機構は、前記運搬用ベルトの端部を第一の位置から第二の位置にスライドさせる空間を有し、前記抵抗機構は、前記空間の第一の位置と第二の位置との間に形成された狭窄部であることを特徴とする携帯型超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の携帯型超音波診断装置において、
前記装置本体は、操作パネルを備えた操作筐体と、表示パネルを備え、当該表示パネルと前記操作パネルが対向するように前記操作筐体に対し折り畳み可能に連結された表示筐体とを備え、
前記操作パネル又は及び操作パネルのパネル面を主平面とする時、前記取付構造は、前記操作筐体及び前記表示筐体のうち、前記主平面と直交する方向の厚みが厚い方の筐体の側面に設けられていることを特徴とする携帯型超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の携帯型超音波診断装置において、
前記装置本体は、探触子が接続される本体部と、当該本体部に対し、それぞれ折り畳み可能に連結された操作筐体及び表示筐体とを備え、
前記取付構造は、前記操作筐体の操作パネル面を主平面とする時、その側面に設けられていることを特徴とする携帯型超音波診断装置。
【請求項8】
請求項7に記載の携帯型超音波診断装置であって、
前記操作筐体と前記表示筐体は、それぞれ前記本体部の同じ一端部に連結されており、前記取付構造は、前記運搬用ベルトにより前記筐体を持ち上げたときに、前記本体部が下側となる位置に設けられていることを特徴とする携帯型超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型超音波診断装置に係り、特に運搬用のベルトを備えた携帯型超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療画像診断に用いられる超音波診断装置は、生体の軟部組織の断層像や生体内を流れる血流像等をほぼリアルタイムでモニタに表示して観察できるため、医療の分野で広く用いられている。また超音波診断装置は、他の医療用検査装置に比べ、小型化、軽量化が容易であるため、検査室に据え置くタイプのもの以外に、病室や病院以外の場所に持ち運び可能な携帯型のものがあり(例えば、特許文献1)、これら携帯型の装置は運搬用のベルトが備えられ、ベルトを肩にかけた状態で検査者が持ち運びできるように構成されている。
【0003】
一般に超音波診断装置は、検査者が検査条件等を入力したり装置の操作を行うための操作パネルと測定した画像を表示するための表示部を備えている。携帯型のものでは、これら操作パネルや表示部を本体に対し着脱可能にし、運搬時には全体をコンパクトに一体化できるようにしたもの(上述の特許文献1)や、操作パネルと表示部とを折りたたみ可能にしたノートパソコン型のもの、さらに本体に対し操作パネルと表示部とを折りたたみ可能に連結したもの(特許文献2)などが提案されている。
【0004】
これら携帯型の超音波診断装置に運搬用ベルトを設ける場合、本体と操作パネルや表示部を切り離しできる装置では、本体に固定した運用ベルトを取り外さなくても操作に支障はないが、ノートパソコン型のものや本体に操作パネル等が連結されているものでは、操作性を良くするために検査時には運搬用ベルトは取り外すことが望まれる。運搬用ベルトを着脱可能にする機構としては、例えば、ベルト側にフックを取り付けると共に、装置側にベルト取付用の穴を形成し、この穴にフックを掛けて固定する機構など公知の機構が採用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−313489号公報
【特許文献2】国際公開2011−122099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えばベルトに固定されたフックを装置側の穴に掛けて固定する機構を採用した場合、ベルトを持って装置を運搬する際の振動や人や物との接触等により、意図せずベルトが装置から外れてしまうおそれがある。超音波診断装置は、携帯用とは言え、10kg近い重量があるため、このような意図しないベルト外れは装置の落下や破損につながる。
【0007】
そこで、本発明は、運搬用ベルトの容易な着脱を阻害することなく、運搬用ベルトが使用中に意図せず容易に外れてしまうことを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は着脱可能な運搬用ベルトを備えた携帯型超音波診断装置の、ベルト端部を装置に取り付けるための取付構造において、ベルト端部の位置が着脱時と異なる位置にスライド可能な構成するとともに、着脱時の位置においてベルト端部が装置から脱落するのを防止する脱落防止機構を採用する。
【0009】
即ち、本発明の携帯型超音波診断装置は、装置本体と運搬用ベルトとを備え、前記本体及び前記運搬用ベルトの少なくとも一方の端部に、互いに係合することにより前記運搬用ベルトを着脱可能に取り付ける取付構造を有し、前記取付構造は、前記運搬用ベルトの端部を着脱時の第一の位置から着脱時とは異なる第二の位置にスライド可能に保持するスライド機構と、前記第二の位置において前記運搬用ベルト端部の脱落を防止する脱落防止機構とを有することを特徴とする。脱落防止機構は、例えば、着脱時の位置のみで運搬用ベルトの端部と前記筐体側の取付構造とが係合する機構を備え、当該機構が第二の位置では係合しないことにより、ベルト端部の着脱位置への移動を制限し、着脱位置からベルト端部が脱落するのを防止する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベルトを持って携帯型超音波診断装置を運搬する際、ベルトが装置から容易に外れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した携帯型超音波診断装置の全体構成を示す斜視図
図2】運搬用ベルトの端部(フック固定具)を示す図で、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図3】装置側のベルト取付構造を示す斜視図。
図4】装置側のベルト取付構造と着脱防止機構(フック受け部材)の第一実施形態を示す図。
図5図4の着脱防止機構が装置に固定された状態を示す部分側面図
図6】(a)、(b)はそれぞれ図2のフック固定具の変更例を示す図
図7】第一実施形態におけるベルト着脱動作を説明する図で、着脱位置を示す断面図。
図8】第一実施形態におけるベルト着脱動作を説明する図で、係止位置を示す断面図。
図9】着脱防止機構(フック受け部材)の第二実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した携帯型超音波診断装置の実施形態を、図を参照して詳細に説明する。
【0013】
<第一実施形態>
図1は、本発明を適用した携帯型超音波診断装置の全体を示す図である。この超音波診断装置は、超音波検査に必要な電子回路が収納された本体部1と、本体部1に連結され、本体部1で処理された画像等を表示するディスプレイを備えた表示筐体2と、本体部1の動作に必要な情報を入力するための操作卓を備えた操作筐体3と、運搬用のベルト(以下、単にベルトとも言う)4とを備えている。超音波検査に必要な探触子等の部品は、別途、可搬可能な状態で持ち運びされる。なお以下の説明において、必要に応じて、ベルト4とそれ以外の構成要素とを分けて、本体部1、表示筐体2及び操作筐体3をまとめて装置本体或いは装置側と呼ぶ。
【0014】
本体部1は、一般的な超音波診断装置と同様であり、超音波の送受信回路、信号処理回路、演算回路、制御回路等が内部に収められており、電源(図示せず)等に接続するための端子部が側面に設けられている。
【0015】
表示筐体2と操作筐体3とは、それぞれ、本体部1の一端に独立して回転可能に軸支され、各軸を中心にして本体部に対し回動させることができる。図示する実施形態では、表示筐体2を本体部1の側面の中央で軸支し、その両側の2か所で操作筐体3を軸支する構造にしている。また表示筐体2は、その軸受が本体部1に対し旋回可能に固定されており、これによって本体部1に対する回動と旋回の両方の動きが可能である。
【0016】
また、表示筐体2と操作筐体3は、いずれも厚みの薄い直方体形状であり、主平面(最も面積の大きい面)の大きさがほぼ等しく、図示するように両者を重ねた状態で、持ち運びや収納を行うことができ、この重ねた状態をロックするための機構(図示せず)が設けられている。さらに厚みが厚い方の筐体、本実施形態では操作筐体3の側面には、後述するベルト4を固定するための取付構造が設けられている。
【0017】
ベルト4は、人が肩に掛けたり、腕にかかえたりしやすいように、長手方向のほぼ中央に持ち手部41が備えられており、長さを調節するための一対の金具42が取り付けられている。ベルト4の両端部には、ベルト4を装置に取り付けるためのフック固定具51、52が固定されている。フック固定具51、52の構造は同一であるので、以下、特に区別しないときは両者を総括したフック固定具5として説明する。
【0018】
次に、ベルト4の端部と操作筐体3の側面とに形成された取付構造について、図2及び図3を参照して説明する。
【0019】
図2はベルト4側の取付構造であるフック固定具5の詳細を示す図で、(a)は斜視図、(b)は側面図である。フック固定具5は、図2(a)に示すように、ベルト4を通すための穴50が形成された部材で、装置側の取付構造に係合するフック7が一体的に形成されている。フック7は、フック固定具5に連続する径の小さい小径円筒部72とそれに連続する径の大きい大径円筒部71とを有している。大径円筒部71の端面は略円形であり、その端面に、一端が円周側で開放された長溝(凹部)73が形成されている。長溝73は、後述の脱落防止機構のフック側(ベルト側)の要素を構成するものであり、その機能は後に詳述する。
【0020】
一方、操作筐体3の側面(両側)には、図3に示すように、径の異なる穴61、62を連続した穴6が形成されている。穴6の位置は、装置全体の重心よりも上にあることが好ましく、図1に示す実施形態では操作筐体3の側面の中央よりも、本体部1との接続部から遠い側に設けられている。これによりベルト4で装置を吊り下げたときに安定した構造を取ることができる。また本体部1が下側になるので、検査等のために装置を台に設置する際に、まず本体部1を台上に置くことができ設置しやすい。
【0021】
径が大きい方の大径部61は、フック7を穴6に着脱する際の着脱位置(第一の位置)となるものであり、径がフック7の大径円筒部71の径より若干大きく形成されている。小径部62は、フック7の係止位置(第二の位置)となるものであり、径がフック7の大径円筒部71の径より小さく且つ小径円筒部72の径より若干大きい。これによりフック7の大径円筒部71を挿入した状態で、穴6の側面に位置する小径円筒部72が穴6の大径部61から小径部62側に移動させることができ、また、小径部62側の位置ではフック7(大径円筒部71)を穴6から外すことはできない構造になっている。フック7が小径部62側に移動した位置では、フック7及びそれが固定されたフック固定具5は回転自在であり、従って任意のベルト4の角度で本体の上げ下ろしや持ち運び動作を行うことができる。
【0022】
通常の持ち運び時では、本体の自重によりフック7は小径部62側の係止位置に留められるためフック7が外れることはないが、何らかの外的な力によってフック7の位置が穴6の大径部61に移動したときには、フック7は簡単に穴6から外れることになる。このため、本実施形態では、フック7が穴6の大径部61の位置、即ちフック7の着脱位置にあるときだけ、フック7と装置側とが係合することによって、フック7の脱落を防止する機構を備える。
【0023】
以下、脱落防止機構について、図4及び図5を参照して、詳述する。図4は、装置側の脱落防止機構であるフック受け部材8を示す斜視図、図5はフック受け部材8を装置(ここでは操作筐体3の側面)に取り付けた状態を示す図である。
【0024】
このフック受け部材8は、図4に示すように、内部にフック7の大径円筒部71がスライドする空間80を持ち、一面が開放された略直方体形状の部材で、開放された面が前述した操作筐体3の側面31に形成された穴6に対向するように、操作筐体3の側面31の内側に固定される。操作筐体3への固定のために、フック受け部材8には、開放された面の反対側(裏面8aという)に板状部材83が形成されている。フック受け部材8は、例えばプラスチック等の成型可能な材料で形成し、板状部材83と直方体形状の部分を一体的に形成することができる。また板状部材83が形成されていない方の側面8bと裏面8aと間には、部材8の剛性を調整するための切欠け8cが設けられている。但し本実施形態ではこの切欠け8cは必須ではない。
【0025】
フック受け部材8の内側の空間80は、フック7の大径円筒部71を太矢印で示す方向にスライド可能にする細長い空間で、その空間に面する裏面8aの部分に細長い凸部81が形成されている。凸部81は、前述したフック7の大径円筒部71に形成された長溝73に係合する形状を有し、空間80の端部すなわち穴6の大径部61に対向する位置に、凸部81の長手方向が空間80の長手方向と一致するように形成されている。穴6の大径部61からフック7の大径円筒部71を長溝73の開放端が下側となるように(つまり図2に示す状態で)挿入したときに、その長溝73は凸部81に係合し、大径円筒部71が凸部81の長手方向に沿って凸部81から外れる方向(図中、上方向)に移動することが許容される。一方、穴6にフック7を掛けた後、フック7の小径円筒部72が空間80をスライドすると、フック7は使用状態に応じて適宜回転した状態にあるので、長溝73の長手方向と凸部81の長手方向が一致する位置以外は、フック7は着脱位置に戻ることができない。
【0026】
なお図2に示すフック固定具5のフック7では、フック7の長溝73を、長手方向がベルト4で装置を吊るしたときの垂直方向(ベルト4を操作筐体3の側面に平行にした場合の側面に平行な方向)であり且つフック7の下端で開放する形状に形成した場合を示しているが、長溝73の長手方向は上述したベルトの長手方向と平行である必要はなく、例えば、図6(a)、(b)に示すように、適宜傾いていたり、逆方向に開放する形状であってもよい。この場合には、フック7を穴6に挿入してベルト4を装置に装着する際に、フック固定具5を所定の角度傾けて或いは反転させて、長溝73とフック受け部材8の凸部81が係合する状態にしてフック7を穴6の大径部61から挿入し、小径部62側にスライドさせて任意の角度に回転させればよい。
【0027】
次に上記のベルトの着脱の動作を、図7図8を参照して説明する。
まずベルト4を装置側に取り付けるときには、ベルト4端部に固定されたフック固定具5を持ち、フック7の長溝73の向きがフック受け部材8の凸部81の向きと一致するようにして、フック7の大径円筒部71を穴6の大径部61に入れる。このとき、長溝73と凸部81が係合する(図7の状態)。次いでフック固定具5を穴6に沿って移動し、大径円筒部71を穴6の小径部62側にスライドさせる(図8の状態)。この位置では、フック固定具5を穴6から離す方向の力が働いても、小径部62より径が大きい大径円筒部71は穴6から外れない。即ちフック7は穴6から外れることはない。またベルト4を持ち上げて、装置を吊るした状態でも装置の自重で大径円筒部71は小径部62側に位置し続けるので、ベルト4が脱落する問題は生じない。この位置では、フック7はベルト4と装置との位置関係に応じて適宜回転した状態にある。
【0028】
ここで、ベルト4と装置との連結部分に外力がかかったり、装置の下から圧力がかかったりすることにより、フック固定具5が下がる方向の力がかかる場合がある。しかし、フック7の回転位置が長溝73とフック受け部材8の凸部81とが同一直線上にあるとき以外は、大径円筒部71の長溝73はフック受け部材8の凸部81と係合しないので、大径円筒部71(長溝73以外の部分)は凸部81によって穴6の大径部61側への移動が制限される。従って、フック7は小径部62側の位置に留められ、穴6から外れることはない。
【0029】
ベルト4を操作筐体3から外すときには、フック固定具5を持って、フック7の長溝73の向きがフック受け部材8の凸部81の向きと一致するようにして、フック固定具5を穴6に沿ってスライドさせることにより、長溝73が凸部81と嵌合し、フック固定具5は穴6の大径部61の位置即ち着脱位置に移動できるので、穴6から外すことができる。
【0030】
なおフック7の長溝73の向きが図2に示すように操作筐体3の側面に沿っている場合には、ベルト4が操作筐体3の側面に沿った状態で動作させれば簡単に着脱動作を行うことができる。また長溝73の向きが図6に示すようにベルト4の方向と角度を持っている場合や反転している場合には、着脱動作を行う際には、フック固定具5の先端を操作筐体3の側面の長手方向に対し、所定の角度回転させる必要があるが、図1に示すような使用状態では確実に長溝73が凸部81に対し回転した位置にあるため、より確実に脱落を防止することができる。
【0031】
また緊急時や装置の設置場所がない状況等で、携帯型超音波診断装置をベルト4で肩から吊るしたまま使用したり画像を確認する必要が生じた場合には、操作筐体3を体側にしておくことにより、操作筐体3と表示筐体2とのロックを解除して表示筐体2のみを回転させて、操作パネルの操作や表示パネルの確認を行うことができる。このような動作中においても、ベルト4は操作筐体3から外れることがないので安心して動作を行うことができる。
【0032】
以上、説明したように本実施形態の携帯型超音波診断装置によれば、フック7側とそれが係合する装置の穴側に、フック7の着脱位置では互いに係合し、着脱位置以外の位置では係合しない構造(長溝73と凸部81)を形成したことにより、取付後のフック7の脱落を防止することができる。
【0033】
なお、図面に示す実施形態では、フック7側に長溝を形成し、フック受け部材側に凸部を形成した場合を示したが、逆にフック7側に凸部を形成し、フック受け部材側に凸部がスライドする溝を形成することも可能であり、この構造によってもフックの脱落防止効果を得ることができる。
【0034】
また以上の実施形態では、本体部と表示筐体と操作筐体を備えた携帯型超音波診断装置の、操作筐体にベルトの取付構造を設けた場合を説明したが、取付構造を設けるのに十分な厚み及び構造的強度がある筐体であれば、操作筐体に限らず表示筐体や本体部に設けることも可能である。
【0035】
さらに本発明は、操作筐体内に本体部の機能を収納したノート型の超音波診断装置や、表示部や操作部を本体部から着脱自在にした超音波診断装置であっても同様に適用することができる。その場合にも、装置を構成する各筐体の支持構造や形態、操作性等を考慮して適宜、取付構造の設置位置を決めることができる。
【0036】
本実施形態の主な特徴をまとめると以下のとおりである。
ベルトを装置側に取り付けるための取付構造が、運搬用ベルトの端部に固定されたフック(7)と、本体に設けられ、フックが挿入される開口(6)を有するとともにフックがスライドする空間(80)を有し、フックの着脱位置とは異なる係止位置においてフックを回転自在に保持するフック受け部(8)とからなり、フック(7)とフック受け部(7)との各当接面に備えられ、フックの着脱位置で互いに係合する凹部(73)及び凸部(81)からなる脱落防止機構を備えること。
【0037】
特に、脱落防止機構の凹部(73)は幅に対し長さが長い溝であり、凸部(81)は長溝に嵌合する形状を有し、凹部及び凸部のうちフック受け部(8)に形成された形状は、その長手方向がフック受け部におけるフック(7)のスライド方向に沿って形成されていること。
【0038】
また装置本体が、操作パネルを備えた操作筐体(3)と、表示パネルを備え、当該表示パネルと前記操作パネルが対向するように操作筐体に対し折り畳み可能に連結された表示筐体(2)とを備え、操作パネル又は及び操作パネルのパネル面を主平面とする時、取付構造が、操作筐体(3)及び表示筐体(2)のうち、主平面と直交する方向の厚みが厚い方の側面に設けられていること。
【0039】
装置本体は、探触子が接続される本体部(1)と、当該本体部に対し、それぞれ折り畳み可能に連結された操作筐体(3)及び表示筐体(2)とを備え、取付構造は、操作筐体の操作パネル面を主平面とする時、その側面に設けられていること。
【0040】
操作筐体(3)と表示筐体(2)は、それぞれ本体部(1)の同じ一端部に連結されており、取付構造は、運搬用ベルトにより筐体を持ち上げたときに、本体部(1)が下側となる位置に設けられていること。
さらに取付構造が、ベルトの両端部と、操作筐体(3)の両側面に設けられていること。
【0041】
<第二実施形態>
本実施形態は、第一実施形態のベルト取付構造に対し、さらにベルト端部(フック)がスライドする空間に、移動に対し抵抗を与える構造を設けたことが特徴である。その他の構成は第一実施形態と同様であるので、主として異なる構造について説明する。また本実施形態を説明する図面において、第一実施形態と同じ要素は同じ符号で示し、説明を省略する。
【0042】
本実施形態においても、図2に示したように、ベルト4の端部にフック固定具5が固定され、このフック固定具5が端面に長溝73を持つフック7を備えること、及び、図3に示したように、操作筐体3の側面31に穴6が形成され、この穴6の内側にフック7がスライドする空間を持つフック受け部材が固定されていることは第一実施形態と同様である。ただし、本実施形態のフック受け部材は、フック7(の大径円筒部71)がスライドする空間に狭窄部が形成されている。
【0043】
図9に、本実施形態のフック受け部材800を示す。図示するように、フック受け部材800は、図4に示すフック受け部材8と同様に、装置筐体に固定するための板状部材83が一体に形成され、一つの面が開放された略直方体形状の部材で、空間80に面した裏面8aに、フック7の長溝73と係合する凸部81が形成されている。フック受け部材800は、例えばプラスチック、ゴム等の可撓性のある材料で形成されている。
【0044】
空間80の幅Wは、フック7の大径円筒部71のスライドを許容するため、大径円筒部71の径より広く形成されているが、長手方向の中央部にフック7の大径円筒部71の径よりわずかに幅の狭い狭窄部82が形成されている。狭窄部82は、フック受け部材800の側面8bを内側に向かって肉厚にした肉厚部とすることにより形成されている。この狭窄部82が存在することにより、空間80におけるフック7の移動が規制されるが、ある程度力を加えると狭窄部82が形成されたフック受け部材8の側面8bが撓み、フック7の移動が可能になる。フック受け部材800の側面8bの撓みやすさを調整するために、側面8bと裏面8aとの間に切り込み部8cが設けられている。切り込み部8cの長さを適切にすることにより、フック7を空間80でスライドするときに、狭窄部82を通過する際に抵抗があるものの、抵抗に抗してスライドさせることができ、且つ振動などではフック7が狭窄部82を通過できないようにすることができる。
【0045】
なおフック受け部材800はセラミックス等の可撓性を持たない材料で形成してもよく、その場合には、フック受け部材の側面に板ばね等を固定し、狭窄部82とすることが可能であり、狭窄部82を通過させる際の力は板ばねの強さで調整することができる。
【0046】
本実施形態におけるベルト4の着脱時の機能を簡単に説明する。
まずフック固定具5を操作し、フック7の大径円筒部71を穴6の大径部61に挿入し、長溝73とフック受け部材800に形成された凸部81とを係合させた状態で、フック7を空間80に沿ってスライドさせる。この際、大径円筒部71が狭窄部82を通過するときに抵抗があるが、抵抗に抗してフック固定具5を移動させことにより、穴6の小径部62側、すなわち係止位置に移動する。この状態では、フック7は穴6から外れず、またフック7が着脱時の長溝73の向きに対し回転した状態であれば、大径円筒部71は空間80に形成された凸部81によって着脱位置への移動が防止されているので、フック7が穴6から外れることはない。
【0047】
また仮にフック7の長溝73とフック受け部材800の凸部81とが同一直線上に位置した場合でも、大径円筒部71の大径部61への移動は、狭窄部82によって抑制されるので、やはりフック7が穴6から外れることはない。
【0048】
ベルト4を外すときには、フック固定具5の向きを、長溝73の向きが凸部81の長手方向の向きと一致するようにして、フック固定具5を着脱位置側に移動させる。このときにも大径円筒部71が狭窄部82を通過するときに抵抗があるが、抵抗に抗してフック固定具5を動かすことにより、狭窄部82が形成されたフック受け部材800の側面が撓み、大径円筒部71を穴6の大径部62側、すなわち着脱位置に移動することができる。
【0049】
本実施形態によれば、フック7がスライドする空間にフック7の移動に抵抗する狭窄部を設けたことにより、さらに効果的に脱落を防止することができる。
【0050】
本実施形態の携帯型超音波診断装置についても、第一実施形態と同様の変更、即ち、フック及びフック受け部材について、長溝と凸部を形成する側を異ならせること、超音波診断装置が複数の筐体で構成される場合に、取付構造を取り付ける位置を異ならせること、また図1に示すタイプ以外の超音波診断装置に適用すること、が可能である。
【0051】
さらに上記第一及び第二の実施形態では、ベルトを装置に対し着脱する構造を、ベルトの両端部とそれに対応する装置の両側面に備える実施形態を説明したが、本発明は、ベルトの一方の端部が装置に固定され、他方の端部のみが着脱可能に構成された装置についても適用可能であり、そのような超音波診断装置も本発明に含まれる。
【0052】
第一実施形態の特徴に追加される本実施形態の主な特徴は次のとおりである。
脱落防止機構が、さらに、スライド機構における運搬用ベルト端部(フック7)のスライドを制限する抵抗機構を備えること。特に、スライド機構が、運搬用ベルトの端部(フック7)を第一の位置(着脱位置)から第二の位置(係止位置)にスライドさせる空間(80)を有し、抵抗機構は、空間の第一の位置と第二の位置との間に形成された狭窄部(82)であること。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば操作性が良く且つ持ち運び時の安全性の高い携帯型超音波診断装置が提供される。
【符号の説明】
【0054】
1・・・本体部、2・・・表示筐体、3・・・操作筐体、4・・・運搬用ベルト、5、51、52・・・フック固定具、50・・・、6・・・穴、61・・・大径部、62・・・小径部、7・・・フック、71・・・大径円筒部、72・・・小径円筒部、73・・・長溝(凹部)、8、800・・・フック受け部材、80・・・空間(スライド機構)、81・・・凸部、82・・・狭窄部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9