(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いながら本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1を用いて実施例1の電力変換装置を説明する。本実施例の電力変換装置は、加熱コイル14に高周波電流を流し、金属性の被加熱物を誘導加熱するものであり、
図1において、1は商用電源、2は整流回路、20は昇降圧コンバータ、30、40はインバータの上下アームである。
【0012】
商用電源1から供給される交流電圧は、整流回路2で整流され、昇降圧コンバータ20に供給される。昇降圧コンバータ20は、入力電圧を昇圧または降圧して出力するものであり、入力側に配置されるIGBT3とダイオード4の直列回路と、出力側に配置されるダイオード6とIGBT7の直列回路と、IGBT3のエミッタ端子とダイオード4のカソード端子の接続点(a点)とダイオード6のアノード端子とIGBT7のコレクタ端子の接続点(b点)の間に配置されるチョークコイル5から構成される。なお、昇降圧コンバータ20の出力点のうち、ダイオード6のカソード端子側の出力点をp点とし、IGBT7のエミッタ端子側の出力点をn点とする。
【0013】
昇降圧コンバータ20の出力点(p点、n点)間には、インバータ30、40、および、平滑コンデンサ15が並列に接続されている。
【0014】
インバータ30は、主スイッチング素子であるIGBT8aとIGBT8bの直列接続を含み、IGBT8aにはダイオード9aが逆並列に接続され、IGBT8bにはダイオード9bが逆並列に接続される。
【0015】
インバータ40は、主スイッチング素子であるIGBT8cとIGBT8dの直列接続を含み、IGBT8cにはダイオード9cが逆並列に接続され、IGBT8dにはダイオード9dが逆並列に接続されている。また、IGBT8cにはスナバコンデンサ10cが並列に接続され、IGBT8dにはスナバコンデンサ10dが並列に接続される。スナバコンデンサ10c、10dは、IGBT8cまたはIGBT8dのターンオフ時の遮断電流によって充電あるいは放電され、両IGBTに印加される電圧の変化が低減することによりターンオフ損失を抑制する。
【0016】
そして、IGBT8aとIGBT8bの接続点(o点)とIGBT8cとIGBT8dの接続点(q点)の間には、リレー11、共振コンデンサ12、加熱コイル14の直列回路が接続されており、q点とn点の間には、加熱コイル14と共振コンデンサ13の直列回路が接続されている。また、昇降圧コンバータ20のb点とインバータ30のo点間にはリレー16が接続されている。このように配置したリレー11、16を切り替えることで、被加熱物に応じて、共振周波数やインバータ回路方式を変更できる。
【0017】
次に、被加熱物の材質に応じた駆動方法について説明する。加熱コイル14と被加熱物は磁気的に結合するため、被加熱物を加熱コイル14側からみた等価回路に変換すると、被加熱物の等価抵抗と等価インダクタンスが直列に接続された構成になる。被加熱物の等価抵抗および等価インダクタンスは材質によって異なり、鉄等の磁性体の場合はどちらも大きくなり、銅やアルミ等の非磁性体の場合はどちらも小さくなる。従って、被加熱物が鉄等の磁性体の場合は、リレー16をオフ、リレー11をオンにして、インバータ30、40の両方を用いるフルブリッジ回路で加熱する。
【0018】
一方、被加熱物が銅やアルミ等の非磁性体の場合は、リレー16をオン、リレー11をオフし、インバータ40、加熱コイル14、共振コンデンサ13から構成されるSEPP(Single Ended Push Pull)方式のインバータで加熱を行う。また、このとき、IGBT7とIGBT8bが並列に接続され、ダイオード6とダイオード9aも並列に接続される。そして、IGBT7と8bを同期して駆動すると、IGBT7、8b、ダイオード6、9aに流れる電流が1/2になるため、導通損失およびスイッチング損失を低減できる。一方、IGBT7および8bを相補に駆動すると、各IGBTの駆動周波数を1/2にできるため、スイッチング損失を半減できる。このようにして、各素子の発熱量を低減でき、放熱フィンの小型化が可能になる。
【0019】
図18に実施例1の変形例を示す。
図1と異なる点は、
図1の昇降圧コンバータ20に代え、昇圧コンバータ100を用いた点である。昇圧コンバータ100は、昇降圧コンバータ20からIGBT3、ダイオード4を省略し、チョークコイル5の一端を整流回路2の出力端子に接続したものである。なお、動作および効果については実施例1と同様であるため説明は割愛する。
【0020】
なお、以上では、電圧駆動型半導体素子として、IGBTを用いた例を説明したが、IGBTに代えて、高周波駆動に適したパワーMOSFETを用いても良いし、超高周波・高温動作が可能なワイドバンドギャップ素子のSiCやGaNのMOSFETやJFETを用いても良い。
【0021】
なお、以上で説明した本実施例の電力変換装置を用いて誘導加熱装置を構成しても良い。誘導加熱装置の一例としては、加熱コイル14の上方にガラスプレートを設け、そのガラスプレートに載置した金属性鍋を誘導加熱する誘導加熱装置が挙げられる。
【実施例2】
【0022】
図2を用いて実施例2の電力変換装置を説明する。実施例1と同一の構成要素には同一符号を付し、重複説明は避ける。実施例1と異なる点は、実施例1で昇降圧コンバータ20に接続されていたインバータ30を整流回路2に接続した点と、実施例1でb点に接続されていたリレー16をa点に接続した点である。
【0023】
まず、被加熱物が非磁性の場合について説明する。この場合、リレー16をオン、リレー11をオフし、インバータ40、加熱コイル14、共振コンデンサ13から構成されるSEPP方式のインバータで加熱を行う。このとき、IGBT3とIGBT8aが並列に接続され、ダイオード4とダイオード9bが並列に接続される。そして、IGBT3と8aを同期して駆動すると、IGBT3、8a、ダイオード4、9bに流れる電流が1/2になるため、導通損失およびスイッチング損失を低減できる。一方、IGBT3および8aを相補に駆動することで、各IGBTの駆動周波数を1/2にできるため、スイッチング損失を半減できる。これにより各素子の発熱量を低減することが可能となり、放熱フィンの小型化が可能になる。
【0024】
次に、調理器具が磁性の場合について説明する。この場合、リレー16をオフ、リレー11をオンし、インバータ30、40の両方を用いるフルブリッジ回路で加熱を行う。本実施例ではインバータ30は整流回路2の出力部に接続され、インバータ40は昇降圧コンバータ20の出力部に接続されている。従って、インバータ30には整流回路2の出力電圧がそのまま印加され、インバータ40には昇降圧コンバータ20で昇圧または降圧された電圧が入力される。インバータ30への入力電圧は整流回路2の出力電圧であるため、商用電圧が整流された脈動した電圧になる。一方、インバータ40への入力電圧は昇降圧コンバータ20の出力電圧であるため、平滑された電圧が印加される。
【0025】
図3に昇降圧コンバータ20の出力電圧と変換効率、
図4にコンバータ出力電圧とインバータ出力電力の関係を示す。
図4に示すように、昇降圧コンバータ20の出力電圧を低くすることでインバータ出力電力を小さくできる。しかし、
図3に示すように、昇降圧コンバータ20の出力電圧を150V以下にすると、出力電圧300V時の昇降圧コンバータ20の変換効率よりも低下してしまう。そこで、昇降圧コンバータ20の出力電圧が150Vを超えるときは昇降圧コンバータ20の出力電圧により電力を制御し、昇降圧コンバータ20の出力電圧150V以下では、インバータ30もしくは40をDuty制御することで電力を制御する。
【0026】
次に、コンバータ出力電圧150V以下におけるインバータの出力電力の制御方法について説明する。
図5にIGBT8a、8dのDuty(駆動周期の導通時間の比率)とインバータ出力電力の関係を示す。このときのインバータの印加されるコンバータ電圧は150V一定である。ここに示すように、IGBT8aおよび8bのDutyを変化させることで、インバータ出力電力を制御できる。これによりコンバータ電圧を150V一定で動作できるため、効率を低下させることなくインバータ出力電力を制御できる。
【0027】
また、
図6〜
図8を用いて各IGBTの動作波形を説明する。
図6、
図7では、IGBT8aと8b、IGBT8cと8dの各々が相補に動作するとともに、IGBT8aと8dが同期し、IGBT8bと8cが同期している。
【0028】
図6はインバータ出力最大時に用いられる各IGBTの動作波形であり、DutyがPW(PW≦T/2)のIGBT8aと8dが同期してオンになった後、DutyがPWのIGBT8bと8cが同期してオンになる。
【0029】
一方、
図7はインバータ出力を小さくする時に用いられる各IGBTの動作波形であり、DutyがPW1のIGBT8aと8dが同期してオンになった後、DutyがPW2(PW1<PW2)のIGBT8bと8cが同期してオンになる。これらの動作波形を用いることでIGBT8a、8dに流れる電流を抑制し、インバータ出力電力を低減できる。以上はIGBT8a、8bを基準に説明してきたが、IGBT8b、8cを基準にしても同様の効果がある。
【0030】
また、別手法として位相シフト制御がある。位相シフト制御は、IGBTのDutyを固定し、インバータ30とインバータ40の位相をずらして電力を制御する方法であり、
図8に示すように、IGBT8aオンから遅れ時間(シフト)を設けてIGBT8dをオンにするとともに、IGBT8bオンから遅れ時間(シフト)を設けてIGBT8cをオンにする。シフト量を大きくするほど、IGBT8aと8dの同時オン期間、IGBT8bと8cの同時オン期間が短くなるため、
図2のoq点間の通電期間が短くなり、インバータの出力電圧(oq間電圧)が低くなり加熱コイル14が調理器具に与える電力を低減できる。なお、位相シフト制御では、シフト量がゼロのときに最大電力を得ることができ、そのときの各IGBTの動作波形は
図6で示したものと同様になる。
【0031】
図19に実施例2の変形例を示す。
図2と異なる点は、
図2の昇降圧コンバータ20に代え、降圧コンバータ110を用いた点である。降圧コンバータ110は、昇降圧コンバータ20からダイオード6、IGBT7を省略し、チョークコイル5の一端をインバータ40に接続したものである。なお、動作および効果については実施例2と同様であるため説明は割愛する。
【実施例3】
【0032】
図9を用いて実施例3の電力変換装置を説明する。実施例1と同一の構成要素には同一符号を付し、重複説明は避ける。実施例1と異なる点は、b点とリレー16の間にチョークコイル5と磁気結合した補助インダクタ62を接続した点と、IGBT8aに並列なスナバコンデンサ10a、IGBT8bに並列なスナバコンデンサ10bを設けた点である。インバータ動作については実施例1と同様のため説明を割愛する。
【0033】
図10を用いてアルミ加熱時のコンバータ動作について説明する。アルミ加熱時にはリレー16をオン、リレー11をオフ状態とする。ここで、IGBT8bに流れる電流をIm、電圧をVm、IGBT7に流れる電流をIs、コレクタ・エミッタ間電圧をVs、ダイオード9aに流れる電流をId1、ダイオード6に流れる電流をId2、チョークコイル5に流れる電流をILとする。実施例3では、昇圧動作時にソフトスイッチングとなるため昇圧動作のみ説明する。
【0034】
時刻t0以前においては、IGBT8bおよびIGBT7のゲートに駆動信号が印加されておらず、両IGBTはオフ状態である。時刻t0で、IGBT7の駆動信号をオンすると、ダイオード6に流れていた電流がIGBT7に流れる。その後、スナバコンデンサ10bに充電されていた電荷は、スナバコンデンサ10b、リレー16、補助インダクタ62、IGBT7の経路で放電され、電荷が引き抜かれる。スナバコンデンサ10bの電荷が引き抜かれると、補助インダクタ62に蓄えられたエネルギーが、補助インダクタ62、IGBT7、ダイオード9bの経路で電流Isを流す。このため、その直後の時刻t1で、IGBT8bに駆動信号を印加すれば、ダイオード9bが通電している期間にIGBT8bをオンすることとなる。すなわち、IGBT8bは、ゼロ電圧スイッチング(以下、ZVSと呼ぶ)、ゼロ電流スイッチング(以下、ZCSと呼ぶ)が可能となる。従って、IGBT8bのオンに伴うスイッチング損失が発生しなくなる。
【0035】
次に、時刻t2で、IGBT8bに電流が流れ初め、時刻t3では、補助インダクタ62、IGBT7、ダイオード9b、リレー16の経路の電流は流れなくなり、商用電源1から整流回路2を介し、IGBT3、チョークコイル5、補助インダクタ62、IGBT8bの経路に電流が流れる。
【0036】
時刻t4で、IGBT8bおよびIGBT7のゲート駆動信号をオフする。IGBT8bの電流が遮断されると、時刻t4からt5にかけて、商用電源1から整流回路2を介して、IGBT3、チョークコイル5、補助インダクタ62、スナバコンデンサ10bの経路に電流が流れ、IGBT8bのコレクタ−エミッタ間電圧は、スナバコンデンサ10bの容量と遮断電流値で決まるdv/dtにより上昇する。つまり、スナバコンデンサ10bにより、IGBT8bのコレクタ−エミッタ間電圧のdv/dtを緩やかにすることで、ZVSを可能にし、ターンオフ損失を低減することができる。一方、IGBT7には、時刻t3以降、電流が流れていないため、時刻t4でのターンオフに際してターンオフ損失は発生しない。
【0037】
次に、時刻t5で、補助インダクタ62に蓄えられたエネルギーによりダイオード9aが導通し、補助インダクタ62、ダイオード9a、平滑コンデンサ15、商用電源1、整流回路2、IGBT3、チョークコイル5の経路にエネルギーが流れる。また、チョークコイル5に蓄えられたエネルギーは、チョークコイル5、ダイオード6、平滑コンデンサ15、商用電源1、整流回路2、IGBT3の経路に流れ、平滑コンデンサ15を充電する。時刻t6で補助インダクタ62のエネルギーがなくなると、補助インダクタ62、ダイオード9a、平滑コンデンサ15、商用電源1、整流回路2、IGBT3、チョークコイル5の経路の電流は流れなくなる。
【0038】
以上のように補助インダクタ62を設け、IGBT7をオンした後にIGBT8bをオンさせることで、ソフトスイッチング動作が可能となりIGBT8bのスイッチング損失を低減できる。このIGBT7とIGBT8bのオンするタイミングは駆動周期の1/10程度以内であれば良い。
【0039】
図20に実施例3の変形例を示す。
図9と異なる点は、
図9の昇降圧コンバータ20に代え、昇圧コンバータ120を用いた点である。昇圧コンバータ120は、昇降圧コンバータ20からIGBT3、ダイオード4を省略し、インダクタ
62の一端を整流回路2の出力端子に接続したものである。なお、動作および効果については実施例3と同様であるため説明は割愛する。
【実施例4】
【0040】
図11を用いて実施例4の電力変換装置を説明する。実施例2と同一の構成要素には同一符号を付し、重複説明は避ける。実施例2と異なる点は、a点とリレー16の間にチョークコイル5と磁気結合した補助インダクタ62を接続した点と、IGBT8aに並列なスナバコンデンサ10aと、IGBT8bに並列なスナバコンデンサ10bを設けた点である。インバータ動作については実施例2と同様のため説明を割愛する。
【0041】
図12を用いてアルミ加熱時のコンバータ動作について説明する。アルミ加熱時にはリレー16をオン、リレー11をオフ状態とする。ここで、IGBT8aに流れる電流をIm、電圧をVm、IGBT3に流れる電流をIs、電圧をVs、ダイオード9bに流れる電流をId1、ダイオード4に流れる電流をId2、チョークコイル5に流れる電流をILとする。実施例4では、降圧動作時にソフトスイッチングとなるため降圧動作のみ説明する。
【0042】
時刻t0以前においては、IGBT8aおよびIGBT3のゲートに駆動信号が印加されておらず、両IGBTはオフ状態である。時刻t0において、IGBT3の駆動信号をオンすると、スナバコンデンサ10aに充電されていた電荷は、スナバコンデンサ10a、IGBT3、補助インダクタ62、リレー16の経路で電流が流れ電荷が引き抜かれる。このとき流れる電流は、チョークコイル5と補助インダクタ62の漏れインダクタンスにより、di/dtが緩やかなZCSとなり、IGBT8aのターンオン損失を低減できる。スナバコンデンサ10aの電荷が引き抜かれると、補助インダクタ62に蓄えられたエネルギーにより、補助インダクタ62、リレー16、ダイオード9a、IGBT3の経路で電流Isが流れる。このため、その直後の時刻t1でIGBT8aに駆動信号を印加すれば、ダイオード9aが通電している期間にIGBT8aをオンすることとなる。すなわち、IGBT8aは、ZVS、ZCSが可能となる。従って、IGBT8aのオンに伴うスイッチング損失が発生しなくなる。
【0043】
次に、時刻t2で、IGBT8aに電流が流れ初め、時刻t3では、補助インダクタ62、リレー16、ダイオード9a、IGBT3の経路の電流は流れなくなり、商用電源1から整流回路2を介し、IGBT3、チョークコイル5、ダイオード6、平滑コンデンサ15の経路とIGBT8a、リレー16、補助インダクタ62、チョークコイル5、ダイオード6、平滑コンデンサ15の経路に電流が流れる。
【0044】
時刻t4で、IGBT8aおよびIGBT3のゲート駆動信号をオフする。まず、IGBT8aの電流が遮断されると、時刻t4からt5にかけて、商用電源1から整流回路2を介して、スナバコンデンサ10a、リレー16、補助インダクタ62、チョークコイル5、ダイオード6、平滑コンデンサ15の経路に電流が流れ、IGBT8aのコレクタ−エミッタ間電圧は、スナバコンデンサ10aの容量と遮断電流値で決まるdv/dtにより上昇する。つまり、スナバコンデンサ10aにより、IGBT8aのコレクタ−エミッタ間電圧のdv/dtを緩やかにすることで、ZVSを可能にし、ターンオフ損失を低減することができる。一方、IGBT3には、時点t3以降、電流が流れていないため、時点t4でのターンオフに際してターンオフ損失は発生しない。
【0045】
次に、時刻t5で、Vmが上昇するとIGBT8bのon間の電圧が減少し、ダイオード9bがオンし、補助インダクタ62に蓄えられたエネルギーにより補助インダクタ62、チョークコイル5、ダイオード6、平滑コンデンサ15、ダイオード9b、リレー16の経路に電流が流れる。時刻t6になると補助インダクタ62のエネルギーがなくなり、チョークコイル5に蓄えられたエネルギーにより、チョークコイル5、ダイオード6、平滑コンデンサ15、ダイオード4の経路と、チョークコイル5、ダイオード6、平滑コンデンサ15、ダイオード9b、リレー16、補助インダクタ62の経路に電流が流れ、平滑コンデンサ15を充電する。
【0046】
以上のように補助インダクタ62を設け、IGBT3をオンした後にIGBT8aをオンさせることでソフトスイッチング動作が可能となりIGBT8aのスイッチング損失を低減できる。このIGBT3とIGBT8aのオンするタイミングは駆動周期の1/10程度以内であれば良い。
【0047】
図21に実施例4の変形例を示す。
図11と異なる点は、
図11の昇降圧コンバータ20に代え、降圧コンバータ130を用いた点である。降圧コンバータ130は、昇降圧コンバータ20からダイオード6、IGBT7を省略し、チョークコイル5の一端をインバータ40に接続したものである。なお、動作および効果については実施例2と同様であるため説明は割愛する。
【実施例5】
【0048】
図13を用いて、力率改善制御(PFC制御)を実現する実施例5の電力変換装置を説明する。なお、
図1と同一の構成要素には同一符号が付してあり説明は省略する。
【0049】
まず、本実施例における各IGBTを制御するために必要となる電圧電流検出箇所について説明する。
【0050】
交流電源ACから入力される電力や被加熱物の材質を検知するには、交流電源ACから流れるAC電流を検出する必要がある。本実施例では、交流電源ACから流れるAC電流を電流センサ70により電圧に変換した後、AC電流検出回路71により検出される。
【0051】
また、交流電源ACの電圧に応じてAC電流の波形生成を行うことにより力率を改善するには、電流波形の基準となる信号が必要となる。本実施例では、整流回路2の出力電圧、すなわち整流された直流電圧を入力電圧検出回路72で検出する。なお、部品削減を図るために、入力電圧を検出せずに制御回路内部で基準波形を求め、AC電流の波形生成を行うことも可能であり、その場合には入力電圧検出回路72を削除できる。
【0052】
また、AC電流の波形生成を行うには、コンバータ用のチョークコイル5に流れる電流波形を制御することにより実現できる。本実施例では、コンバータに流れる電流を電流センサ73により電圧に変換した後、入力電流検出回路74により検出する。チョークコイル5の電流を検出せず、IGBT3および7の電流を検出してAC電流の波形生成を行うことも可能であり、その場合には、電流センサ73の位置を変更すれば問題ない。
【0053】
入力電力の制御や被加熱物の材質、状態を検知するには、加熱コイル14に流れる電流を検出する必要がある。本実施例では、加熱コイル14に流れる電流を電流センサ75で電圧に変換した後、コイル電流検出回路76により検出する。
【0054】
また、負荷の出力電力を制御するためには、コンバータの出力電圧すなわちインバータの電源電圧を検出しフィードバック制御を行う必要がある。本実施例では、平滑コンデンサ15の電圧をインバータ電圧検出回路77により検出する。制御回路80は、各検出回路の検出値と入力電力設定部90からの電力指令値に基づいて各スイッチング素子の駆動信号を生成する。
【0055】
本実施例の電力変換装置を誘導加熱装置に用いた場合、インバータ回路によって電力を制御するためには、共振負荷回路のインピーダンスが周波数によって変わることを利用し、周波数を可変するPFM(パルス周波数制御)制御が最も容易である。本実施例では、IGBT8c、8dの上下アームをPFM制御することにより電力を制御できる。しかしながら、周波数に対する電力の変化が大きい、即ち共振の鋭さを表すQの高い負荷条件においては、インバータの電源電圧振幅を可変するPAM(パルス振幅制御)制御が望ましい。本実施例ではIGBT3、7、8bで構成されるコンバータをPWM制御することによりインバータの電源電圧を制御することによって電力制御を行うことができる。IGBT3、7、8bは、制御回路80からの制御信号に基づいてドライブ回路78により駆動され、IGBT8c、8dは、制御回路80からの制御信号に基づいてドライブ回路79により駆動される。
【0056】
次に、本実施例の誘導加熱装置において、被加熱物が銅やアルミの場合のコンバータの制御方法について説明する。実施例1でも説明したように、被加熱物がアルミの場合にはリレー16をオン、リレー11をオフ状態とし、SEPPインバータで駆動する。IGBT3、7、8bは降圧、昇圧、昇降圧チョッパ用のIGBTとして動作し、交流電源ACの電圧に応じて入力電流の波形を生成する力率改善制御と出力電圧制御を行う。
【0057】
図14から
図17を用いて、本実施例のIGBT3、7、8bの制御方法を示す。
図14、
図15において、交流電源ACの電圧をVac、平滑コンデンサ15の電圧をV15で示す。説明を分かりやすくするために交流電源Vacが正電圧期間とする。先ず、
図14において、V15よりVacが高い時は、IGBT7、8bをオフ状態とし、IGBT3をオンオフ制御することにより降圧モードのチョッパ動作が可能となる。逆に、V15よりVacが低い時は、IGBT3をオン状態とし、IGBT7、8bをオンオフ制御することにより昇圧モードのチョッパ動作が可能となる。このように交流電源電圧Vacの変化、即ち商用周期内での電圧変化に応じてチョッパ動作を切り替えることにより各スイッチング素子のスイッチング回数を低減し、スイッチング損失を減らすことができると共に、IGBT7、8bが並列動作になるため各IGBTに流れる電流が半減し、損失を低減することが可能となる。Vacが負電圧の期間は整流回路2を介して正電圧に変換されるため、先に説明した正電圧期間の動作と同様となる。
【0058】
また、
図15に示すように、VacがV15より小さいとき(昇圧モード時)に、IGBT7と8bを相補に駆動することで、IGBT7、8bの駆動周波数を1/2の周波数にできるためスイッチング損失を半減することができる。これにより各素子の発熱量を低減することが可能となり、放熱フィンの小型化が可能になる。
【0059】
さらに、
図16に示すように、商用周期内での電圧変化に関わらずIGBT3、7、8bを同時にオンオフ制御することにより昇降圧モードのチョッパ動作が可能となる。
【0060】
また、
図17に示すように、商用周期内での電圧変化に関わらずIGBT3、7、8bをオンオフ制御し、かつ、IGBT7と8bを相補に駆動することで、昇降圧モードのチョッパ動作が可能となり、かつ、IGBT7、8bの駆動周波数を1/2の周波数にできるためスイッチング損失を半減することができる。これにより各素子の発熱量を低減することが可能となり、放熱フィンの小型化が可能になる。