(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記することがある。)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜(以下、単に「PO微多孔膜」と略記することがある。)は、幅方向(長さ方向と直交する方向。以下、「TD」と略記することがある。)の150℃での熱収縮率が30%未満であり、かつ、長さ方向(原料樹脂吐出方向及び機械方向と同義。以下、「MD」と略記することがある。)及びTDの引張り強度が30MPa以上であって、ポリオレフィンを90質量%以上含む樹脂組成物からなる。
本実施形態におけるPO微多孔膜は上記構成を有することで、特に高容量のリチウムイオン二次電池に求められる、高温での優れた熱収縮率と、衝突安全性に対する耐性を備え、高温での安全性に優れたリチウムイオン二次電池を実現し得る。
【0012】
本実施形態におけるポリオレフィン製微多孔膜は、ポリオレフィンを90質量%以上含む樹脂組成物から構成される。当該微多孔膜は、膜厚方向に連通孔を有し、例えば三次元網状骨格構造を有する。ポリオレフィンの含有量が90質量%未満であると、フィラーによって膜自身が傷つけられ、放電しやすくなるため、自己放電特性が悪化する。
【0013】
PO微多孔膜の高温時の収縮による内部短絡を良好に抑制する観点から、PO微多孔膜の150℃におけるTD熱収縮率は30%未満であり、好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満である。150℃におけるTD熱収縮率が30%未満であると、PO微多孔膜が電極に挟まれるような実際の電池内部環境において、PO微多孔膜の収縮率は数%程度となるため、電極間の短絡を防ぐことができる。さらに、電池として捲回した状態を模擬した150℃ガラス圧着熱収縮率については、TD熱収縮率が20%未満であることが好ましく、15%未満であることがより好ましく、10%未満であることが更に好ましい。
【0014】
PO微多孔膜の引張強度が大きいと、電池捲回性が良好になり、電池に用いた場合の外部からの衝撃試験や、電池内の異物などにより短絡を生じ難くなる。上記観点から、本実施形態におけるPO微多孔膜のMD及びTDの引張り強度は30MPa以上であり、好ましくは40MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上である。PO微多孔膜の引張強度の上限値としては特に制限はないが、収縮率との兼ね合いから、MD及びTD共に500MPa以下であることが好ましく、300MPa以下であることがより好ましく、250MPa以下であることが更に好ましい。
【0015】
本実施形態におけるPO微多孔膜は、高温での優れた低熱収縮率を有し、かつ、引張強度にも優れるため、電池内部においてMDに張力が印加された状態で捲回されていても、高温環境下での変形が良好に抑制される。その結果として、150℃オーブン試験のような高温下にあっても、セパレータの収縮による短絡が発生しないため、発熱することなく安全を保つことができる。また、収縮による膜の気孔率低下も抑制されるため、それに伴ってサイクル特性の低下が抑制される。更に、異物による微小な内部短絡が発生した際、穴の広がりを最小限に抑えることもでき、発熱の速度を遅延させて、結果として、短絡による発火の抑制に必要な外部圧力を高めるという効果も発現されるものと考えられる。
【0016】
本実施形態におけるPO微多孔膜のMD及びTD引張伸度は、10〜500%であることが好ましく、10〜450%であることがより好ましく、10〜400%であることが更に好ましい。MD及びTD引張伸度が上記範囲にあるPO微多孔膜は、電池捲回性が良好であるばかりでなく、電池衝撃試験などにおいて変形を受けにくくなる。
【0017】
本実施形態におけるPO微多孔膜の厚みは、膜強度の観点から、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、透過性の観点から、80μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。
【0018】
本実施形態におけるPO微多孔膜の気孔率は、透過性の観点から、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。また、膜強度及び耐電圧の観点から、80%以下であることが好ましく、70%以下であることが好ましい。
【0019】
本実施形態におけるPO微多孔膜の透気度は低いほど好ましいが、厚み、気孔率とのバランスの観点から、1秒/20μm以上であることが好ましく、50秒/20μm以上であることがより好ましい。また、透過性の観点から、1000秒/20μm以下であることが好ましく、400秒/20μm以下であることがより好ましい。特に、PO微多孔膜の透気度が400秒/20μm以下であると、電池のサイクル特性が良好となる傾向にある。
【0020】
本実施形態におけるPO微多孔膜の突刺強度は、2N/20μm以上であることが好ましく、3N/20μm以上であることがより好ましい。突刺強度が3N/20μm以上である場合、PO微多孔膜を電池用セパレータとして用いた際に、電極材等の鋭利部がPO微多孔膜に突き刺さった場合にも、ピンホールや亀裂の発生を低減し得る。突刺強度の上限は、好ましくは10N/20μm以下であり、より好ましくは8N/20μm以下である。
【0021】
本実施形態におけるPO微多孔膜は、ポリオレフィンからなる微多孔膜の2枚以上の積層体であることが好ましい。このようなPO微多孔膜は、例えば、異なる2種以上の一次膜を、少なくとも2枚以上重ねて延伸して一体化することで得ることができ、2枚以上の一次膜を積層一体化することで良好な物性バランスを付与することができる。ここでいう一次膜とは、ポリマー材料と可塑剤、或いはポリマー材料と可塑剤と無機材とを溶融混練し押出した後に、可塑剤を抽出、或いは可塑剤及び無機材を抽出した膜のことを指す。一次膜は、可塑剤及び/無機材の抽出前に、延伸(一次延伸)されていてもよい。
【0022】
特に、少なくとも一枚は押出工程の後、少なくとも一回延伸が施された後、抽出工程を行なった一次膜と、少なくとも一枚は押出工程の後、実質的に寸法を維持した状態で抽出を行なった一次膜とを積層一体化した積層体であることが好ましい。ここで言う「実質的に寸法を維持した状態」とは、±20%以内に寸法変化を留めることを言う。通常、高強度化と低熱収縮性は相反する関係にあるが、低い熱収縮率の一次膜と、強度に優れる一次膜を貼り合わせることで、各一次膜の物性を損なうことなく、良好な物性バランスのPO微多孔膜を得ることができる。更に、延伸しながら一体化することで、密着性が良好となるため、PO微多孔膜の界面が剥離しにくくなり、結果として電池のサイクル特性を高めることができる傾向にある。また、異なる2種以上の一次膜を張り合わせることにより、理由は明らかではないが、電池の衝突特性も高めることができる傾向にある。これは、2種以上の一次膜を密着させることで、強度に優れた膜が低熱収縮性を併せ持つため、衝突試験を行なった際の温度上昇への耐性が強化されるためと考えられる。ここでいう「一体化」とは、剥離強度が好ましくは5g以上であることを言い、この剥離強度以上であれば、2種の一次膜それぞれの特性を十分に活かすことができる傾向にある。
【0023】
ポリオレフィンからなる微多孔膜の2枚以上の積層体としては、例えば、幅方向の150℃での熱収縮率が30%未満であるポリオレフィン微多孔膜と、長さ方向及び幅方向の引張り強度が30MPa以上であるポリオレフィン微多孔膜と、を含む積層体が挙げられる。
【0024】
次に、本実施形態におけるPO微多孔膜の製造方法の一例について説明する。以下の製造方法においては、得られるPO微多孔膜が、本実施形態において規定する特性を満たしていれば、ポリマー種、溶媒種、押出方法、延伸方法、抽出方法、開孔方法、熱固定及び熱処理方法などにおいて、何ら限定されることはない。PO微多孔膜の製造方法として、例えば、下記(A)〜(G)の各工程を含む方法が挙げられる。
(A)ポリオレフィンと、可塑剤と、必要に応じて無機材とを混練する混練工程。
(B)混練工程を経て得られた混練物を押し出す押出工程(単層、積層であることは問わない)。
(C)押出工程を経て得られた押出物を、シート状に成形して冷却固化させるシート成形工程。
(D)必要に応じて、シート成形工程を経て得られたシート状成形物を一軸以上の方向へ延伸する延伸工程(一次延伸工程)。
(E)(C)工程で得られたシート状成形物又は(D)工程で得られた延伸フィルムから可塑剤と、必要に応じて無機材とを抽出する抽出工程。
(F)(E)工程を経た一次膜を2枚以上同時に繰出して積層一体化しながら一軸以上の方向に延伸する工程(二次延伸工程)。
(G)(F)で延伸した積層フィルムを加熱して熱固定する後加工工程。
【0025】
以下、各工程について説明する。
(A)工程は、ポリオレフィンと、可塑剤と、必要に応じて無機材とを混練する混練工程である。
(A)工程において用いられるポリオレフィンとしては、特に限定されず、例えば、エチレン又はプロピレンのホモ重合体、エチレン、プロピレン、1−ブテン
、1−ヘキセン、1−オクテン及びノルボルネンよりなる群から選ばれる少なくとも2種以上のモノマーを重合して得られる共重合体が挙げられる。これらのポリオレフィンは1種を単独で又は2種以上を混合した混合物として用いられる。2種以上の混合物を用いる場合、PO微多孔膜のヒューズ温度や短絡温度の制御が容易となる傾向にあるため好ましい。特に、例えば、粘度平均分子量(以下「Mv」と略記することがある。)50万以上の超高分子量ポリオレフィンとMv50万未満のポリオレフィンとを混合した混合物は、その適度な分子量分布により、微多孔膜の強度に等方性を付与しやすくなる傾向にあるため好ましい。なお、本明細書において、Mvとは、後述する実施例に記載されているように、ASTM−D4020に準拠して測定される値をいう。
【0026】
ポリオレフィンとしてポリエチレンを用いる場合、PO微多孔膜の孔の閉塞を抑制しつつ、より高温で熱固定を行うことができ、熱収縮率が低減するという観点から、ポリエチレンは高密度のホモポリマーであることが好ましい。
【0027】
PO微多孔膜全体のMvは10万〜120万であることが好ましく、30万〜80万であることがより好ましい。Mvが10万以上であると、異物などに起因した短絡による発熱時に耐破膜性を発現しやすくなる傾向にあり、120万以下であると、押出工程でのMDへの配向が抑制され、等方性を発現しやすくなる傾向にある。
【0028】
ポリオレフィンには、ポリプロピレン、特に、異なるMvを有する複数種のポリプロピレンが含まれていることが好ましい。これにより、電池内部で短絡によって局所的に発熱が生じた際、ポリプロピレンの融点である160℃付近において、ポリプロピレンの融解による電池内部の吸熱作用が起こり、安全性が高まる傾向にある。
【0029】
(A)工程において用いられるポリオレフィン全体に対する、ポリプロピレンの含有量は、1〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜50質量%、更に好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは5〜10質量%である。ポリプロピレンの含有量が1質量%以上であると、上記ポロプロピレン含有に伴う効果が発現しやすくなる傾向にあり、80質量%以下であると、透過性を確保しやすくなる傾向にある。
【0030】
なお、ポリオレフィンの配合割合は、ポリオレフィンと可塑剤と必要に応じて配合される無機材との合計質量に対して、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
【0031】
(A)工程において用いられるポリオレフィンには、さらに、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料などの公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0032】
可塑剤としては、特に限定されず、沸点以下の温度でポリオレフィンと均一な溶液を形成し得る有機化合物が挙げられる。具体的には、例えば、デカリン、キシレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n−デカン、n−ドデカン、パラフィン油(流動パラフィン)が挙げられる。これらのうち、パラフィン油、ジオクチルフタレートが好ましい。
【0033】
可塑剤の配合割合は特に限定されないが、PO微多孔膜の気孔率の観点から、ポリオレフィンと、可塑剤と、必要に応じて配合される無機材との合計質量に対して20質量%以上であることが好ましく、粘度の観点から、90質量%以下であることが好ましい。
【0034】
無機材としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、電気化学的安定性の観点から、シリカ、アルミナ、チタニアが好ましい。
【0035】
無機材の配合割合は、ポリオレフィンと無機材との合計質量に対して、良好な隔離性を得る観点から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、高い強度を確保する観点から、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
(A)工程における混練の方法としては、例えば、まず、原材料の一部又は全部を必要に応じてヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等を用いて事前混合し、次いで、全ての原材料を、一軸押出機、二軸押出機等のスクリュー押出機、ニーダー、ミキサー等により溶融混練する方法が挙げられる。
【0037】
なお、混練時において、原料のポリオレフィンに酸化防止剤を所定の濃度で混合した後、それらの混合物の周囲を窒素雰囲気に置換し、窒素雰囲気を維持した状態で溶融混練を行うことが好ましい。溶融混練時の温度は、原料の組成やポリオレフィン濃度によって好適な温度範囲が異なるが、PO微多孔膜のMD配向が軽減するような温度範囲であることが好ましい。上記観点から、溶融混練時の温度は、160℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。また、上限としては、300℃未満であることが好ましい。
【0038】
(B)工程は、混練工程を経て得られた混練物を押し出す押出工程(単層、積層であることは問わない)である。
(B)工程においては、上記混練工程を経て得られた混練物を、T型ダイや環状ダイ等の押出機により押し出す。このとき、単層押し出しであってもよく積層押し出しであってもよい。押し出しの際の諸条件は、従来と同様の条件を採用することができる。
【0039】
(C)工程は、押出工程を経て得られた押出物を、シート状に成形して冷却固化させるシート成形工程である。
(C)工程においては、上記(A)及び(B)の各工程を経て得られた押出物をシート状に成形して冷却固化させる。シート成形の方法としては、例えば、押出物を圧縮冷却により固化させる方法が挙げられる。冷却方法として、例えば、冷風や冷却水等の冷却媒体に押出物を直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールやプレス機に押出物を接触させる方法が挙げられる。中でも、冷媒で冷却したロールやプレス機に押出物を接触させる方法が、膜厚制御が優れる点で好ましい。
【0040】
(D)工程は、必要に応じて、シート成形工程を経て得られたシート状成形物を一軸以上の方向へ延伸する延伸工程である(一次延伸工程)。
シート状成形物の延伸方法としては、ロール延伸機によるMD一軸延伸、テンターによるTD一軸延伸、ロール延伸機及びテンター、又は複数のテンターの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターやインフレーション成形による同時二軸延伸が挙げられる。また、本実施形態におけるPO微多孔膜が積層構造を有する場合、PO微多孔膜の膜厚の均一性、引張り強度、気孔率及び熱収縮率のバランスの観点から、少なくとも1種のシート状成形物の一次延伸の延伸倍率は、少なくとも一軸方向に3倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。シート状成形物を一次延伸することにより、得られる一次膜の機械的強度が向上する傾向にある。一方で、押出工程の後、実質的に寸法を維持した状態で抽出工程を行なった一次膜は熱収縮率に優れるため、その一次膜を少なくとも一枚含むことは、高温における電池安全性を高める上で好ましい。
【0041】
(E)工程は、(C)工程で得られたシート状成形物又は(D)工程で得られた延伸フィルムから可塑剤と、必要に応じて無機材とを抽出する抽出工程である。
抽出方法としては、抽出溶媒にシート状成形物又は延伸フィルムを浸漬する方法や、それらに対して抽出溶媒をシャワー等の噴霧により接触させる方法が挙げられる。抽出溶媒としては、ポリオレフィンに対して貧溶媒であり、且つ可塑剤や無機材に対しては良溶媒であり、沸点がポリオレフィンの融点よりも低いものが好ましい。このような抽出溶媒としては、例えば、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレンや1,1,1−トリクロロエタン、フルオロカーボン系化合物等のハロゲン化炭化水素類;エタノールやイソプロパノール等のアルコール類;アセトンや2−ブタノン等のケトン類;及びアルカリ水が挙げられる。抽出溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0042】
(E)工程における抽出の順序、方法及び回数については特に制限はない。抽出の際には、脱溶媒によってTDへの膜収縮が生じ、MD及びTDへの配向性が変化する場合があるため、テンションコントロールによって配向性を制御することが好ましい。
【0043】
(F)工程は、(E)工程を経た一次膜を2枚以上同時に繰出して積層一体化しながら一軸以上の方向に延伸する工程である。
(F)工程では、(E)工程を経た一次膜を2枚以上用意し、同時に繰出して重ね合わせ、少なくとも一軸以上の方向に延伸しながら積層一体化する。これにより、層間が密着性よく接合され、各種の一次膜のそれぞれの特性を十分に活かすことができる。また、各層が界面剥離しにくくなるため、結果として、電池のサイクル特性を高めることができる。
【0044】
(F)工程における延伸の方法としては、層間が接合できれば特に限定されず、例えば、ロール延伸やテンターを用いた延伸が挙げられるが、均一に延伸しながら貼り合わせられるという観点から、ロール延伸が好ましい。延伸は何枚重ねても構わないが、対照性の観点から、一次膜Aと一次膜Bを、A−B−Aの順に三枚重ねて延伸することが好ましく、こうすることでカールが生じ難くなり、ハンドリングが良好となる。
【0045】
(F)工程における延伸時の温度は、110℃以上であることが好ましく、延伸倍率としては、膜の均一性や強度の観点から、2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。
【0046】
(G)工程は、(F)で延伸した積層フィルムを加熱して熱固定する後加工工程である。
(G)工程においては、(F)工程を経た積層フィルムを所定の温度で加熱して熱固定する。熱固定の方法としては、テンターやロール延伸機を利用して、延伸及び緩和操作を行う方法が挙げられる。緩和操作とは、膜のMD及び/又はTDへ、所定の緩和率で行う縮小操作のことを示す。緩和率とは、緩和操作後の膜のMD寸法を操作前の膜のMD寸法で除した値、又は、緩和操作後の膜のTD寸法を操作前の膜のTD寸法で除した値、或いは、MD、TDの両方向で緩和した場合、MDの膜の緩和率とTDの膜の緩和率とを乗じた値のことを示す。
【0047】
熱固定を実施する際の温度は、熱収縮率の観点から、100℃以上であることが好ましく、気孔率及び透過性の観点から、140℃未満であることが好ましい。緩和率は、熱収縮率の観点から、0.9倍以下であることが好ましく、0.8倍以下であることがより好ましい。また、しわの発生を防止する観点、並びに気孔率及び透過性の観点から、緩和率が0.6倍以上であることが好ましい。緩和操作は、MD及びTDの両方向で行っても、MD又はTDのいずれか一方の方向にのみ緩和操作を行ってもよく、これによって、操作方向のみでなく操作と直交する方向にも、熱収縮率を低減することが可能である。
【0048】
本実施形態におけるPO微多孔膜の製造方法は、得られたPO微多孔膜の表面に対して、電子線照射、プラズマ照射、界面活性剤の塗布、化学的改質などの表面処理を施す表面処理工程を含んでいてもよい。
【0049】
更に、上記加工工程の後に、PO微多孔膜を巻回したマスターロールに対して、所定の温度の下でエージング処理を施し、その後、マスターロールの巻き返し操作を行うこともできる。これにより、通常MDに強く配向しているマスターロール内の微多孔膜の配向が緩和されやすくなる。
【0050】
マスターロールをエージング処理する際の温度は35℃以上であることが好ましく、45℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが更に好ましい。また、PO微多孔膜の透過性を保持する観点から、その温度は、融点以下であることが好ましく、ポリオレフィンとしてポリエチレンを用いる場合は、120℃以下であることが好ましい。エージング処理に要する時間は特に限定されないが、24時間以上であると、上記効果が発現しやすくなる傾向にあるため好ましい。
【0051】
また、本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、以下の各態様も含まれる。
(a)ポリオレフィン樹脂及び孔形成材料を含む樹脂組成物を溶融混練し押出す押出工程、前記孔形成材料を抽出する抽出工程、を経て一次膜を得る工程、
(b)前記一次膜を少なくとも2種用意し、それらを積層一体化して少なくとも一軸方向に延伸する工程、及び
(c)熱固定する工程、
を有する、製造方法。
ここで、孔形成材料とは、上述した可塑剤、無機材のことを示す。
【0052】
前記(a)工程が、
前記押出工程の後に少なくとも一軸方向に延伸を行う一次延伸工程を経た後、前記抽出工程を経て一次膜(1)を得る工程、及び、
前記押出工程の後、実質的に寸法を維持した状態で前記抽出工程を経て一次膜(2)を得る工程
を含み、
前記(b)工程が、
前記一次膜(1)及び一次膜(2)を少なくとも1枚ずつ用意し、それらを積層一体化して少なくとも一軸方向に延伸する二次延伸工程を含む、上記記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【0053】
前記一次膜(1)は、前記一次延伸工程において少なくとも幅方向に延伸することを含む、上記記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【0054】
前記(a)工程が、
前記孔形成材料として可塑剤を用いて一次膜(3)を得る工程、及び、
前記孔形成材料として可塑剤及び無機材を用いて一次膜(4)を得る工程、
を含み、
前記(b)工程が、前記一次膜(3)及び一次膜(4)を少なくとも1枚ずつ用意し、それらを積層一体化して少なくとも一軸方向に延伸する工程を含む、上記記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【0055】
前記(a)工程において、少なくとも長さ方向に延伸することを含む、上記記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【0056】
上述のようにして得られたPO微多孔膜は、例えば、所望の形状に加工された後、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いられる。本実施形態におけるPO微多孔膜からなるセパレータは、従来のセパレータと比較して、特に高容量電池のセパレータとして用いる場合に、高温時における高い安全性を有し、かつ、異物などに対する良好な耐性を有し、さらには高温サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現し得る。
【0057】
リチウムイオン二次電池は、本実施形態のおけるPO微多孔膜からなるセパレータと、正極と、負極と、電解液とを備えるものである。このリチウムイオン二次電池は、セパレータとして本実施形態におけるPO微多孔膜を備えていること以外は、公知のリチウムイオン二次電池と同様の各部材を備えていればよい。また、リチウムイオン二次電池は、高知のリチウムイオン二次電池の同様の構造を有することができ、公知の方法により製造することができる。
【0058】
本実施形態におけるPO微多孔膜からなるセパレータは、リチウムイオン二次電池の中でも特に、ノート型パソコン、電動工具、電気自動車、ハイブリッド自動車用といった高容量であることが必要なアプリケーションに好適である。上記用途に用いることにより、本願の効果がより顕著となる。また、本実施形態におけるPO微多孔膜からなるセパレータは、高熱に対する安全性を有しているため、ジュール熱の発生しやすい高容量型、かつ、セパレータの熱収縮率の影響を受けやすい角型及びラミネート型のリチウムイオン二次電池用セパレータとして好適である。
【0059】
なお、本実施形態における各種特性(パラメータ)は、特に断りのない限り、後述の実施例における測定方法に準じて測定される。
【実施例】
【0060】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各種特性は下記の方法により測定した。
【0061】
(1)粘度平均分子量(Mv)
ASTM−D4020に基づき、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η]を求めた。その極限粘度[η]からポリエチレンのMvを次式により算出した。
[η]=6.77×10
−4Mv
0.67
同様に極限粘度[η]からポリプロピレンのMvを次式により算出した。
[η]=1.10×10
−4Mv
0.80
【0062】
(2)膜厚(μm)
東洋精機(株)社製の微小測厚器、KBM(商標)を用いて、室温23±2℃でPO微多孔膜の膜厚を測定した。
【0063】
(3)気孔率(%)
10cm×10cm角の試料をPO微多孔膜から切り取ってサンプルを得、その体積(cm
3)と質量(g)とを求めた。それらと膜密度(g/cm
3)とから、PO微多孔膜の気孔率を次式により算出した。
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
なお、膜密度は0.95g/cm
3と一定にして計算した。
【0064】
(4)透気度(秒)
JIS P−8117に準拠した透気抵抗度を透気度とした。PO微多孔膜の透気度の測定は、ガーレー式透気度計(東洋精器(株)社製、G−B2(商標))を用いて行った。
【0065】
(5)突刺強度(N)
カトーテック社製のハンディ圧縮試験器であるKES−G5(商標)を用いて、下記条件によりPO微多孔膜の突刺試験を行った。そのときの最大突刺荷重(N)を測定し、突刺強度とした。
試料ホルダーの開口部の直径:11.3mm
針先端の曲率半径:0.5mm
突刺速度:2mm/sec
雰囲気温度:23±2℃
【0066】
(6)引張強度(MPa)及び引張伸度(%)
JIS K7127に準拠し、島津製作所社製の引張試験機、オートグラフAG−A型(商標)を用いて、MD及びTDサンプル(形状;幅10mm×長さ100mm)について測定した。また、サンプルはチャック間距離を50mmとし、サンプルの両端部(各25mm)の片面にセロハンテープ(日東電工包装システム(株)製、商品名:N.29)を貼ったものを用いた。さらに、試験中のサンプル滑りを防止するために、引張試験機のチャック内側に厚み1mmのフッ素ゴムを貼り付けた。
引張伸度(%)は、破断に至るまでの伸び量(mm)をチャック間距離(50mm)で除して100を乗じることにより求めた。引張破断強度(MPa)は、破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除すことで求めた。なお、測定は、温度23±2℃、チャック圧0.30MPa、引張速度200mm/分の条件でで行った。
【0067】
(7)150℃におけるTDの熱収縮率(%)
PO微多孔膜をMDに100mm、TDに100mm切り取ることにより得られたサンプルを、150℃のオーブン中に1時間静置した。このとき、温風が直接サンプルに当たらないよう、サンプルを2枚の紙に挟んだ。オーブンからサンプルを取り出して冷却した後、そのTDの長さ(mm)を測定し、以下の式にて算出した熱収縮率を150℃におけるTDの熱収縮率(150℃TD熱収縮率)とした。なお、サンプル長が確保できないものに関しては、100mm×100mmに入る範囲で、可能な限り長いサンプルを用いた。
熱収縮率(%)=(100(mm)−加熱後のTDの長さ(mm))/100(mm)×100
【0068】
(8)150℃ガラス圧着熱収縮率
MD60mm×TD40mmのサンプルをPO微多孔膜から切り取り、これを、長さ80mm×幅50mm×厚み5mm、重さ44gのガラス板2枚で挟み、軽く上から押さえて空気を抜いた。150℃下のオーブン中に水平に置き1時間放置し、その後、空冷してガラス板に挟んだまま、TD幅(mm)の最も短い長さを測定し、以下の式によりTDのガラス圧着熱収縮率(150℃TDガラス圧着熱収縮率)を算出した。
収縮率(%)=(1−最短TD幅(mm)/40(mm))×100
【0069】
(9)剥離強度
島津製作所社製の引っ張り試験機(商品名:AG−100A)にて測定した。PO微多孔膜をMD200mm、TD10mmの短冊状にサンプリングし、その一端Aをテープ等で剥離した。剥離した2枚の端を引っ張り試験機のチャックに固定し(つかみ具間距離50mm)、2枚の端を180度方向に速度200mm/minで剥離させた時の平均荷重を読み取った。このとき、剥離強度の測定を始めてから5mmまでの荷重は平均荷重に含めず、測定を始めてから5mmから200mmまでの荷重の平均を剥離強度として読み取った。
【0070】
(10)オーブン試験、衝突試験、自己放電特性
a.正極の作製
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物LiCoO
2、導電材としてグラファイト及びアセチレンブラックを、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びN−メチルピロリドン(NMP)に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。得られた成形体を57.0mm幅にスリットして正極を得た。
【0071】
b.負極の作製
負極活物質として人造グラファイト、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとを精製水に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる銅箔にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。得られた成形体を58.5mm幅にスリットして負極を得た。
【0072】
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート:=1:1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF
6を濃度1mol/リットルとなるように溶解させて、非水電解液を調製した。
【0073】
d.電池組立
正極、後述のPO微多孔膜及び負極を積層した後、常法により巻回電極体を作製した。なお、PO微多孔膜の厚みによって巻回数を調整した。得られた巻回電極体の最外周端部を絶縁テープの貼付により固定した。負極リードを電池缶に、正極リードを安全弁にそれぞれ溶接して、巻回電極体を電池缶の内部に挿入した。その後、非水電解液を電池缶内に5g注入し、ガスケットを介して蓋を電池缶にかしめることにより、外径18mm、高さ65mmの円筒型二次電池を得た。この円筒型二次電池を25℃雰囲気下、0.2C(定格電気容量の1時間率(1C)の0.2倍の電流)の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行った。続いて0.2Cの電流値で電池電圧3.0Vまで放電し、そのときの電池容量をXmAhとした。
【0074】
e.自己放電特性
dで組み立てた電池を、0.2Cの電流値で電池電圧4.2Vまで充電し24時間放置した。この操作を合計50セルの電池で行った。その後、50セルのうち、Xの90%以上の容量を維持していたセルの割合(%)を、自己放電特性として算出した。
【0075】
f.サイクル試験
dで組み立てた電池を用いて、(i)電流量0.5C、上限電圧4.2V、合計8時間の定電流定電圧充電、(ii)10分間の休止、(iii)電流量0.5C、終止電圧2.5Vの定電流放電、(iv)10分間の休止、のサイクル条件で都合50回の充放電を行った。上記充放電処理は全て25℃の雰囲気下にてそれぞれ実施した。その後、上記電池容量XmAhに対する上記50サイクル目の放電容量の比を100倍することで、容量維持率(%)を求めた。
【0076】
g.オーブン試験
dで組み立てた電池を用いて、充電後の電池を室温から150℃まで5℃/分で昇温し、150℃で放置した。1時間以上発火しなかったものを◎、30分〜1時間発火しなかったものを○、10分〜30分発火しなかったものを△、10分未満で発火したものを×とした。
【0077】
h.衝突試験
dで組み立てた電池を用いて、直径15.8mmφのSUS棒を電池の長さ方向に垂直に配備させた後、高さ61cmの位置から、重さ9.1kgの重りを自由落下させて衝突させ、電池の温度上昇や、発火状況の確認を5セルで実施した。衝突後、電池の表面温度上昇が5セル全てで30℃以下のものを◎、1セルで80℃以下の温度上昇が見られたものを○、3セル以上で80℃以下の温度上昇が見られたものを△、1セルでも80℃以上の発熱を有したもの×とした。
【0078】
[実施例1]
Mvが70万のホモポリマーのポリエチレンを47質量%、Mv30万のホモポリマーのポリエチレンを46質量%、Mv40万のポリプロピレンを7質量%(PPブレンド量 7質量%)を、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99質量部に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10
−5m
2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
得られた混合物を溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が68質量%となるように(即ち、ポリマー濃度(「PC」と略記することがある。)が32質量%となるように)、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃、吐出量12kg/hで行った。
続いて、溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度60℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み100μmのゲルシートを得た。
次に、TDテンター延伸機に導き、TD延伸(一次延伸)を行った。延伸条件は、TD倍率4.0倍、設定温度120℃とした。
次に、TD延伸された延伸フィルムを、塩化メチレン槽に導き、塩化メチレン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後塩化メチレンを乾燥除去することにより一次膜を得て、これを膜Aとした。
【0079】
別途、Mv70万のホモポリマーのポリエチレン47質量%、Mv30万のホモポリマーのポリエチレン46質量%、Mv40万のポリプロピレンを7質量%からなるポリマー34質量部に対し、流動パラフィン45質量部、微粉シリカ(東ソーシリカ社製)21質量部、酸化防止剤としてBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)0.3質量部、及びDLTP(ジラウリルチオジプロピオネート)0.3質量部を、ヘンシェルミキサーで混合して造粒した。その後、Tダイスを装着した二軸押出機にて200℃で混練し、150℃に冷却されたカレンダーロールにて厚さ30μmのゲルシートを成形した。該成形物を塩化メチレンに浸漬することによりDOPを抽出し、次いで、水酸化ナトリウムに浸漬することにより微粉シリカを抽出した後、溶媒を乾燥除去することにより一次膜を得て、これを膜Bとした。
【0080】
上記で得られた膜A及び膜Bを、膜B−膜A−膜Bの順に重ね、120℃に加熱された延伸ロールでMDに3.0倍延伸した後(二次延伸)、130℃のテンター内でTD方向に1.2倍延伸することによりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表1に示した。
電池評価の結果、いずれも良好な結果を示した。
【0081】
[実施例2]
膜Aを製膜する際、吐出量20Kg/hとして、厚み170μmのゲルシートを作製した。また、膜Bを製膜する際、厚み50μmのゲルシートを作製した。さらに、MD延伸(二次延伸)倍率を5.0倍に設定した。上記以外は実施例1と同様の方法によりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表1に示した。
電池評価の結果、いずれも良好な結果を示した。
【0082】
[実施例3]
膜Aを製膜する際、吐出量28Kg/hとして、厚み230μmのゲルシートを作製した。また、膜Bを製膜する際、厚み70μmのゲルシートを作製した。さらに、MD延伸(二次延伸)倍率を7.0倍に設定した。上記以外は実施例1と同様の方法によりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表1に示した。
電池評価の結果、いずれも良好な結果を示した。
【0083】
[実施例4]
膜Aを製膜する際、吐出量30Kg/hとして、厚み250μmのゲルシートを作製し、TD延伸(一次延伸)倍率を6倍に設定して延伸を行った。また、膜Bを製膜する際、厚み50μmのゲルシートを作製した。さらに、MD延伸(二次延伸)倍率を5.0倍に設定した。上記以外は実施例1と同様の方法によりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表1に示した。
電池評価の結果、いずれも良好な結果を示した。
【0084】
[実施例5]
膜Aを製膜する際、吐出量40Kg/hとして、厚み330μmのゲルシートを作製し、TD延伸(一次延伸)倍率を8倍に設定して延伸を行った。また、膜Bを製膜する際、厚み50μmのゲルシートを作製した。さらに、MD延伸(二次延伸)倍率を5.0倍に設定した。上記以外は実施例1と同様の方法によりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表1に示した。この微多孔膜の剥離強度は70g、サイクル試験での容量維持率は95%以上であった。
電池評価の結果、いずれも良好な結果を示した。
【0085】
[実施例6]
膜Aを製膜する際、吐出量30Kg/hとして、厚み240μmのゲルシートを作製し、TD延伸(一次延伸)倍率を4倍に設定して延伸を行ったこと以外は実施例1と同様の方法により膜Cを得た。また、膜Bを製膜する際、厚み70μmのゲルシートを作製したこと以外は実施例1と同様の方法により膜Dを得た。さらに、膜C−膜Dとの2層にしてMD延伸倍率を5.0倍に設定して二次延伸を行った。上記以外は、実施例1と同様の方法によりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表1に示した。
電池評価の結果、いずれも良好な結果を示した。
【0086】
[実施例7]
Mvが70万のホモポリマーのポリエチレンを47質量%、Mv30万のホモポリマーのポリエチレンを46質量%、Mv40万のポリプロピレンを7質量%(PPブレンド量 7質量%)を、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99質量部に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10
−5m
2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
得られた混合物を溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が68質量%となるように(即ち、PCが32質量%となるように)、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃、吐出量20kg/hで行った。
続いて、溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度60℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み170μmのゲルシートを得た。
次に、MDテンター延伸機に導き、MD延伸を行った(一次延伸)。設定延伸条件は、MD倍率5.0倍、設定温度120℃であった。その後、塩化メチレン槽に導き、塩化メチレン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後塩化メチレンを乾燥除去することにより一次膜を得て、これを膜Eとした。
【0087】
膜Bを製膜する際、厚み50μmのゲルシートを作製したこと以外は実施例1と同様の方法により膜Fを得た。
【0088】
上記で得られた膜E及び膜Fを、膜F−膜E−膜Fの順に重ね、115℃に加熱された熱ロールで貼り合わせ、TDテンター延伸機に導きTD延伸を行った(二次延伸)。設定延伸条件は、TD倍率4.0倍、設定温度120℃とした。その後、130℃のテンター内でTD方向に1.2倍延伸することによりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表1に示した。
電池評価の結果、いずれも良好な結果を示した。
【0089】
[実施例8]
膜Aを製膜する際、吐出量20Kg/hとして、厚み170μmのゲルシートを作製したこと以外は実施例1と同様の方法により膜Gを得た。また、膜Aを製膜する際、吐出量10g/hとして、厚み65μmのゲルシートを作製し、TD延伸(一次延伸)倍率を2倍に設定して延伸したこと以外は、実施例1と同様の方法により膜Hを得た。膜H−膜G−膜Hの順に重ね、120℃に加熱された延伸ロールでMDに5.0倍延伸した後(二次延伸)、130℃のテンター内でTD方向に1.2倍延伸することによりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表1に示した。
電池評価の結果、150℃オーブン試験で、150℃に至ってから20分後に発火した。
【0090】
[比較例1]
実施例6で得られた膜Cを2枚用意し、膜C−膜Cの2層に重ねたこと以外は、実施例4と同様の方法によりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表2に示した。
電池評価の結果、150℃オーブン試験で150℃に至ってから8分後に発火した。
【0091】
[比較例2]
実施例6で得られた膜Cと膜Dを1枚ずつ用意し、それぞれの膜を、120℃に加熱された延伸ロールでMD延伸倍率5.0倍に設定して二次延伸した後、130℃のテンター内でTD方向に1.2倍延伸した。次いで、これら2枚を重ね合わせ、110℃のカレンダーロールにより熱接合することによりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表2に示した。この微多孔膜の剥離強度は2g、サイクル試験での容量維持率は95%未満であった。
電池評価の結果、150℃オーブン試験で、150℃に至ってから5分後に発火した。また、衝突試験の結果、1つのセルで80℃以上の発熱反応があった。電池を解体したところ、微多孔膜に裂けがあることを確認し、積層したセパレータの剥離も見つかった。
【0092】
[比較例3]
Mvが70万のホモポリマーのポリエチレンを47質量%、Mv30万のホモポリマーのポリエチレンを46質量%、Mv40万のポリプロピレンを7質量%(PPブレンド量 7質量%)を、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた純ポリマー混合物99質量部に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10
−5m
2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が68質量%となるように(即ち、PC32質量%となるように)、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃、吐出量110kg/hで行った。
続いて、得られた溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度60℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1000μmのゲルシートを得た。次に、得られたゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸により延伸シートを得た。延伸条件は、MD倍率を7.0倍、TD倍率を7.0倍とし、延伸温度を120℃とした(一次延伸)。
次に、塩化メチレン槽に導き、塩化メチレン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後塩化メチレンを乾燥除去することにより一次膜を得た。
その後、最大加熱温度130℃のテンター内でTD方向に1.2倍延伸することによりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表2に示した。
電池評価の結果、150℃オーブン試験で、150℃に至ってから4分後に発火した。
【0093】
[比較例4]
Mv70万のホモポリマーのポリエチレン47質量%、Mv30万のホモポリマーのポリエチレン46質量%、Mv40万のポリプロピレンを7質量%からなるポリマー34質量部に対し、流動パラフィン45質量部、微粉シリカ(東ソーシリカ社製)21質量部、酸化防止剤としてBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)0.3質量部、及びDLTP(ジラウリルチオジプロピオネート)0.3質量部を、ヘンシェルミキサーで混合して造粒した。その後、Tダイスを装着した二軸押出機にて200℃で混練及び押出し、150℃に冷却されたカレンダーロールにて厚さ130μmのシート状に成形した。該成形物を塩化メチレンに浸漬することにより流動パラフィンを抽出し、次いで、水酸化ナトリウムに浸漬することにより微粉シリカを抽出した後、溶媒を乾燥除去することにより一次膜を得た。
得られた一次膜を2枚重ねて、120℃に加熱された延伸ロールでMDに5.0倍延伸(二次延伸)した後(二次延伸)、最大加熱温度130℃のテンター内でTD方向に1.2倍延伸することによりPO微多孔膜を得た。得られたPO微多孔膜の物性を表2に示した。衝突試験の結果、2つのセルで80℃以上の発熱反応があった。電池を解体したところ、微多孔膜に裂けがあることを確認した。
【0094】
[比較例5]
比較例2で得られたPO微多孔膜の表面にコロナ放電処理(放電量50W)を実施した後、当該処理面側に、アルミナ粒子96質量部、SBラテックス8質量部、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ製SNディスパーサント5468)1質量部、ポリオキシアルキレン系界面活性剤(サンノプコ製SNウェット980)1質量部を150質量部の水にそれぞれ均一に分散させた水溶液を、バーコーターを用いて塗布した。次いで、60℃にて乾燥して水を除去することにより、微多孔膜上に厚さ4μmの多孔層が形成された総膜厚20μmの多層多孔膜を得た。得られた多層多孔膜の物性を表2に示した。
電池評価の結果、自己放電特性が80%であり、局所的に膜が薄くなり、放電し易くなっていることが示唆された。
【0095】
[比較例6]
PO微多孔膜1の作製:吐出量140kg/hとして、厚み1250μmのゲルシートを作製したこと以外は比較例2と同様の方法によりPO微多孔膜1を得た。
PO微多孔膜2の作製:150℃に冷却されたカレンダーロールにて厚さ150μmのゲルシートを成形したこと以外は比較例3と同様の方法によりPO微多孔膜2を得た。
得られた各PO微多孔膜の物性を表2に示した。
電池を組み立てる際、正極、PO微多孔膜1、負極、PO微多孔膜2と、をこの順に積層し、負極の内周側にPO微多孔膜2が位置するように捲回した。
電池評価の結果、150℃オーブン試験で、150℃に至ってから5分で発火し、また、衝突試験では、3つのセルで80℃以上の発熱反応があった。試験後の電池を解体して微多孔膜を確認したところ、PO微多孔膜1に破けがあることが確認された。
【0096】
[比較例7]
PO微多孔膜3の作製:実施例6で得られた膜Cを1枚でMD延伸倍率5.0倍にて二次延伸し、130℃のテンター内でTD方向に1.2倍延伸することによりPO微多孔膜3を得た。
PO微多孔膜4の作製:実施例6で得られた膜Dを一枚でMD延伸倍率5.0倍に設定して二次延伸し、130℃のテンター内でTD方向に1.2倍延伸することによりPO微多孔膜4を得た。
得られた各PO微多孔膜の物性を表2に示した。
電池を組み立てる際、PO微多孔膜3とPO微多孔膜4とを重ねて使用した。衝突試験の結果、2つのセルで80℃以上の発熱反応があった。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
表1に示す結果から、本実施形態のポリオレフィン微多孔膜(実施例1〜8)は、高温での安全性(低熱収縮率性)及び機械的強度に優れ、更に、自己放電特性にも優れたリチウムイオン二次電池を実現可能であることが分かる。