(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909414
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】加工機におけるピンチング位置検出装置およびピンチング位置検出方法
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
B21D5/02 S
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-140758(P2012-140758)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-4601(P2014-4601A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】安部 賢治
【審査官】
福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
実開平3−106210(JP,U)
【文献】
特開2007−69261(JP,A)
【文献】
特開2006−88183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の曲げ工具によりワークを挟んで前記ワークの曲げ加工を行う加工機において、前記ワークが前記第1および第2の曲げ工具によって挟み込まれるピンチング位置を検出するピンチング位置検出装置であって、
前記第2の曲げ工具の位置を検出する位置検出手段と、
前記ワークと前記ワークを位置決めするための突き当てとの接触および不接触を検知するためのワーク接触検知手段と、
前記第2の曲げ工具に対してかかる圧力を検出するための圧力検出手段と、
以下の(A)〜(D)の工程処理を制御する制御手段と、を有するピンチング位置検出装置。
(A)前記第2の曲げ工具を下降させる工程と、
(B)前記ワークと前記突き当てとの接触および不接触を検知する工程と、
(C)前記工程(B)において、前記ワークと前記突き当てとの接触の解除が検知された場合、前記第2の曲げ工具を一時停止させる工程と、
(D)前記工程(C)において、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態におけるピンチング位置を認識する工程。
【請求項2】
前記ピンチング位置認識工程(D)が、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態における前記ワークの上面に接触している前記第2の曲げ工具の位置を前記位置検出手段で検出することにより前記ピンチング位置を認識することを特徴とする請求項1に記載のピンチング位置検出装置。
【請求項3】
前記ピンチング位置が、前記第1の曲げ工具上に載置された前記ワークの上面に前記第2の曲げ工具の下端が接触した状態において、前記第1の曲げ工具と前記第2の曲げ工具とが接触した状態での前記第2の曲げ工具の下端位置である金型原点位置と前記第2の曲げ工具の下端との間の距離であることを特徴とする請求項2に記載のピンチング位置検出装置。
【請求項4】
前記加工機がベンディングマシンからなり、前記第1の工具がダイからなり、前記第2の工具がパンチからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のピンチング位置検出装置。
【請求項5】
第1および第2の曲げ工具によりワークを挟んで前記ワークの曲げ加工を行う加工機において、前記ワークが前記第1および第2の曲げ工具によって挟み込まれるピンチング位置を検出するピンチング位置検出装置であって、
前記第2の曲げ工具の位置を検出する位置検出手段と、
前記ワークと前記ワークを位置決めするための突き当てとの接触および不接触を検知するためのワーク接触検知手段と、
前記第2の曲げ工具に対してかかる圧力を検出するための圧力検出手段と、
少なくとも前記ワークの情報を記憶する記憶手段と、
以下の(A)〜(E)の工程処理を制御する制御手段と、を有するピンチング位置検出装置。
(A)前記ワークの板厚が前もって決められた所定値以下か否かを判定する工程と、
(B)前記ワークの板厚が前もって決められた所定値以下の場合、前記第2の曲げ工具を下降させる工程と、
(C)前記ワークと前記突き当てとの接触および不接触を検知する工程と、
(D)前記工程(C)において、前記ワークと前記突き当てとの接触の解除が検知された場合、前記第2の曲げ工具を一時停止させる工程と、
(E)前記工程(D)において、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態におけるピンチング位置を認識する工程。
【請求項6】
前記ピンチング位置認識工程(E)が、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態における前記ワークの上面に接触している前記第2の曲げ工具の位置を前記位置検出手段で検出することにより前記ピンチング位置を認識することを特徴とする請求項5に記載のピンチング位置検出装置。
【請求項7】
第2の曲げ工具の位置を検出する位置検出手段と、ワークと前記ワークを位置決めするための突き当てとの接触および不接触を検知するためのワーク接触検知手段と、前記第2の曲げ工具に対してかかる圧力を検出するための圧力検出手段と、制御装置と、を有し、前記制御装置の制御の基で、前記第1および第2の曲げ工具によりワークを挟んで前記ワークの曲げ加工を行う加工機において、前記制御装置の制御の基で、前記ワークが前記第1および第2の曲げ工具によって挟み込まれるピンチング位置を検出するピンチング位置検出方法であって、
(A)前記第2の曲げ工具を下降させる工程と、
(B)前記ワークと前記突き当てとの接触および不接触を検知する工程と、
(C)前記工程(B)において、前記ワークと前記突き当てとの接触の解除が検知された場合、前記第2の曲げ工具を一時停止させる工程と、
(D)前記工程(C)において、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態におけるピンチング位置を認識する工程と、を有することを特徴とするピンチング位置検出方法。
【請求項8】
前記ピンチング位置認識工程(D)が、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態における前記ワークの上面に接触している前記第2の曲げ工具の位置を前記位置検出手段で検出することにより前記ピンチング位置を認識することを特徴とする請求項7に記載のピンチング位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンディングマシン等の板状のワークを曲げ加工する加工機におけるピンチング位置検出装置およびピンチング位置検出方法に関し、特に、ワークの板厚が薄い場合でも、より正確にワークのピンチング位置を検出することができ、正確なベンディング加工を行いうるピンチング位置検出装置およびピンチング位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、従来のベンディングマシン等の板状のワークを曲げ加工する加工機においては、ワークがダイとパンチとによって挟み込まれるピンチング位置を検出し、その検出されたピンチング位置に基づいてパンチの押し込み量(ストローク量)を計算し、そのストローク量だけを押し込んでベンディング加工を行うようになっていた。
【0003】
なお、パンチのストローク量とワークの曲げ角度とは、密接に関係しており、正確な角度のベンディング加工を行うためには、正確なストローク量を求めなければならず、そのためには、正確なピンチング位置を求めることが重要であった。
【0004】
従来、ピンチング位置検出の一方法としては、以下のような方法があった。
【0005】
すなわち、パンチが下降してワークに接触すると、パンチに対する圧力が若干上昇し、その直後にパンチに対する圧力が下降する(抜ける)圧力変化現象が生じる。
【0006】
その現象を利用し、パンチにかかる圧力を測定し、パンチに対する圧力が上昇した直後のパンチに対する圧力の下降を検知し、その圧力の下降(抜け)を検知した時に、ピンチング位置検出とするようにしていた。
【0007】
そして、その検出されたピンチング位置に基づいてパンチの押し込み量(ストローク量)を計算し、そのストローク量だけを押し込んでベンディング加工を行っていた。
【0008】
なお、先行技術文献はありませんでした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のピンチング位置検出方法では、比較的に板厚が厚いワークにおいては、上記パンチに対する圧力が一旦上昇し、その後圧力の下降する現象が明確に現れるので、正確なピンチング位置検出を行うことができるが、板厚が薄いワークにおいては、ワークの抵抗が少ないので、すぐにワークが曲がってしまい、上記パンチに対する圧力が一旦上昇し、その後圧力の下降する圧力変化現象が現れにくい問題があり、正確なピンチング位置検出を行うことができない結果となっていた。
【0010】
従って、板厚が薄いワークにおいては、正確なピンチング位置の検出ができず、それにより、不明確に検出されたピンチング位置に基づいて計算されたパンチの押し込み量(ストローク量)だけを押し込んでベンディング加工を行うと、所望の曲げ角度を得られない問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の問題を解決するためのものであり、請求項1に係る発明は、第1および第2の曲げ工具によりワークを挟んで前記ワークの曲げ加工を行う加工機において、前記ワークが前記第1および第2の曲げ工具によって挟み込まれるピンチング位置を検出するピンチング位置検出装置であって、
前記第2の曲げ工具の位置を検出する位置検出手段と、
前記ワークと前記ワークを位置決めするための突き当てとの接触および不接触を検知するためのワーク接触検知手段と、
前記第2の曲げ工具に対してかかる圧力を検出するための圧力検出手段と、
以下の(A)〜(D)の工程処理を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
(A)前記第2の曲げ工具を下降させる工程と、
(B)前記ワークと前記突き当てとの接触および不接触を検知する工程と、
(C)前記工程(B)において、前記ワークと前記突き当てとの接触の解除が検知された場合、前記第2の曲げ工具を一時停止させる工程と、
(D)前記工程(C)において、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態におけるピンチング位置を認識する工程。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記ピンチング位置認識工程(D)が、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態における前記ワークの上面に接触している前記第2の曲げ工具の位置を前記位置検出手段で検出することにより前記ピンチング位置を認識することを特徴とする請求項1に記載のピンチング位置検出装置である。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記ピンチング位置が、前記第1の曲げ工具上に載置された前記ワークの上面に前記第2の曲げ工具の下端が接触した状態において、前記第1の曲げ工具と前記第2の曲げ工具とが接触した状態での前記第2の曲げ工具の下端位置である金型原点位置と前記第2の曲げ工具の下端との間の距離であることを特徴とする請求項2に記載のピンチング位置検出装置である。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記加工機がベンディングマシンからなり、前記第1の工具がダイからなり、前記第2の工具がパンチからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のピンチング位置検出装置である。
【0016】
請求項5に係る発明は、第1および第2の曲げ工具によりワークを挟んで前記ワークの曲げ加工を行う加工機において、前記ワークが前記第1および第2の曲げ工具によって挟み込まれるピンチング位置を検出するピンチング位置検出装置であって、
前記第2の曲げ工具の位置を検出する位置検出手段と、
前記ワークと前記ワークを位置決めするための突き当てとの接触および不接触を検知するためのワーク接触検知手段と、
前記第2の曲げ工具に対してかかる圧力を検出するための圧力検出手段と、
少なくとも前記ワークの情報を記憶する記憶手段と、
以下の(A)〜(E)の工程処理を制御する制御手段と、を有するピンチング位置検出装置である。
【0017】
(A)前記ワークの板厚が前もって決められた所定値以下か否かを判定する工程と、
(B)前記ワークの板厚が前もって決められた所定値以下の場合、前記第2の曲げ工具を下降させる工程と、
(C)前記ワークと前記突き当てとの接触および不接触を検知する工程と、
(D)前記工程(C)において、前記ワークと前記突き当てとの接触の解除が検知された場合、前記第2の曲げ工具を一時停止させる工程と、
(E)前記工程(D)において、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態におけるピンチング位置を認識する工程。
【0018】
請求項6に係る発明は、前記ピンチング位置認識工程(E)が、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態における前記ワークの上面に接触している前記第2の曲げ工具の位置を前記位置検出手段で検出することにより前記ピンチング位置を認識することを特徴とする請求項5に記載のピンチング位置検出装置である。
【0019】
請求項7に係る発明は、第2の曲げ工具の位置を検出する位置検出手段と、ワークと前記ワークを位置決めするための突き当てとの接触および不接触を検知するためのワーク接触検知手段と、前記第2の曲げ工具に対してかかる圧力を検出するための圧力検出手段と、制御装置と、を有し、前記制御装置の制御の基で、前記第1および第2の曲げ工具によりワークを挟んで前記ワークの曲げ加工を行う加工機において、前記制御装置の制御の基で、前記ワークが前記第1および第2の曲げ工具によって挟み込まれるピンチング位置を検出するピンチング位置検出方法であって、
(A)前記第2の曲げ工具を下降させる工程と、
(B)前記ワークと前記突き当てとの接触および不接触を検知する工程と、
(C)前記工程(B)において、前記ワークと前記突き当てとの接触の解除が検知された場合、前記第2の曲げ工具を一時停止させる工程と、
(D)前記工程(C)において、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態におけるピンチング位置を認識する工程と、を有することを特徴とするピンチング位置検出方法である。
【0020】
請求項8に係る発明は、前記ピンチング位置認識工程(D)が、前記第2の曲げ工具の一時停止の状態における前記ワークの上面に接触している前記第2の曲げ工具の位置を前記位置検出手段で検出することにより前記ピンチング位置を認識することを特徴とする請求項7に記載のピンチング位置検出方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ワークの板厚に応じて、より正確にワークのピンチング位置を検出することができ、正確なベンディング加工を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明を実施した加工機(ベンディングマシン)の概略を示す説明図である。
【
図2】
図1に示したダイとパンチ回りの概略図である。
【
図3】
図1に示したベンディングマシン7の制御装置9に関する概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3に示したピンチング位置検出装置によるピンチング位置検出動作のフローチャートである。
【
図5】
図3に示したピンチング位置検出装置によるピンチング位置検出動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明を実施した加工機の概略を示す全体斜視図であり、
図2は、
図1に示したダイとパンチ回りの概略図である。
【0024】
図1に示すように、この加工機(ベンディングマシン)7は、下部に設けられた第1の曲げ工具としてのダイ7aに対して、上部に設けられた第2の曲げ工具としてのパンチ7bをD軸(
図2参照)に沿ってスライド動作させることにより、ダイ7aとパンチ7bとの間に搬入されたワークを、ダイ7aとパンチ7bとによって曲げ加工するように構成されている。
【0025】
そして、
図2および
図3に示すように、このベンディングマシン7には、ワークがダイとパンチとによって挟み込まれるピンチング位置の検出装置として、ワークWを位置決めするための突き当て14のワーク接触面14aに設けられたワーク接触検知センサー10と、パンチ7bの上部に設けられてパンチ7bに加わった圧力を検出するための圧力センサー12(
図3に示す)と、パンチ7bの上部に設けられてパンチ7bのD軸上の位置を検出するためのD軸エンコーダ16(
図3に示す)とが設けられている。
【0026】
ここで、ワーク接触検知センサー10は、突き当て14にワークWが接触しているか否かを検出する。
【0027】
また、ベンディングマシン7は、この加工機全体の制御をつかさどる制御装置9を有しており、その制御装置9には、所定画像の表示を行うと共に、オペレータからの指示を入力する入力表示部11が設けられている。
【0028】
そして、制御装置9の制御の基に、入力表示部11により入力設定された曲げ加工動作に従い、上述した曲げ加工が行われるようになっている。
【0029】
図3は、
図1に示したベンディングマシン7の制御装置9の概略構成を示すブロック図である。
【0030】
この制御装置9は、前述したワーク接触検知センサー10あるいは圧力センサー12よりの検知結果に基づいて、ワークがダイとパンチとによって挟み込まれるピンチング位置の検出を行うピンチング位置検出装置としても機能するようになっている。
【0031】
図3に示すように、ベンディングマシン7の制御装置9は、ROM13およびRAM15がバスを介して接続されたCPU17を有しており、CPU17には、さらに、バスを介して、上述したワーク接触検知センサー10および圧力センサー12、入力部と表示部とを兼ねる上記入力表示部11、D軸エンコーダ16、データベース19が接続されている。
【0032】
また、上記CPU17には、バスを介して、パンチ7bの装着された上部テーブルを上下に駆動するためのシリンダ27を駆動するためのドライバ25も接続されるようになっている。
【0033】
ここでは、CPU17が、入力表示部11よりのオペレータからの設定や指示に従い、データベース19内のパンチやダイのデータおよび製品形状データや被加工部材(ワークW)のデータを用いると共に、ROM13よりのコンピュータプログラムに従ってRAM15を用いて、後述するようにピンチング位置の検出を行うと共に、入力設定された曲げ加工動作を行うようになっている。
【0034】
次に、
図4および
図5を参照してピンチング位置検出装置の動作について説明する。
【0035】
図4は、
図3に示したピンチング位置検出装置によるピンチング位置検出動作のフローチャートであり、
図5は、
図3に示したピンチング位置検出装置によるピンチング位置検出動作の説明図である。
【0036】
なお、このピンチング位置検出動作は、上述したように、CPU17が、ROM13よりのコンピュータプログラムに従ってRAM15を用いて行うようになっている。
【0037】
ここで、ピンチング位置とは、ワークWがダイ7aとパンチ7bとによって挟み込まれる位置のことであり、より詳しく説明すると、ピンチング位置とは、ダイ7a上に載置された板厚tのワークWの上面にパンチ7bの下端が接触した状態で、金型原点位置とパンチ7bの下端との間の距離である。ここで、金型原点位置とは、ダイ7aとパンチ7bとが接触した状態でのパンチ7bの下端位置である。
【0038】
従って、ダイ7aとパンチ7bとが接触した状態でのパンチ7bの下端位置をD軸エンコーダ16で前もって検出して金型原点位置を得ておき、ワークWの上面にパンチ7bの下端が接触したとされる位置をD軸エンコーダ16で検出することによってピンチング位置が得られる。
【0039】
なお、パンチ7bの移動距離ストロークSTは、ピンチング位置から、パンチ7bが下降して曲げ加工が終了する位置までとなる。
【0040】
まず、動作モードがピンチング位置検出モードとなると、
図4のステップ101において、ワークWの板厚tが前もって決められた所定値X以下か否かが判定される。
【0041】
ここで、所定値Xは、パンチが下降してワークWに接触した時にパンチに対する圧力が若干上昇し、その直後にパンチに対する圧力が下降する圧力変化現象を検出可能な板厚となっており、ワークWの材質等により前もって決められる。
【0042】
そして、ステップ101においてワークWの板厚tが前もって決められた所定値X以下である場合(前述した圧力変化現象が検出不可能な薄いワーク板厚の場合)、ステップ103において、パンチ7bを下降させて行き、ステップ105において、ワークWを位置決めするための突き当て14のワーク接触面14aに設けられたワーク接触検知センサー10よりの検出信号に基づいて、突き当て14にワークWが接触している状態から、突き当て14からワークWが離れた状態(ワークWと突き当て14との接触の解除)となったか否かが判定される。
【0043】
ここで、ワークWの板厚tが前もって決められた所定値X以下である場合、
図5(a)に示すように、薄い板厚のワークWにパンチ7bが接触する前には、ワークWと、突き当て14のワーク接触面14aとが接触している状態となっているが、
図5(b)に示すように、薄い板厚のワークWにパンチ7bが接触してワークWが曲がる初期において、ワークWが、突き当て14のワーク接触面14aからずれると共に離れて隙間Yが生じる。
【0044】
従って、このワークWが突き当て14のワーク接触面14aからずれて離れた時点での、パンチ7bの位置をD軸エンコーダ16で検出することによって、前もって検出した金型原点位置からピンチング位置が得られる。
【0045】
そこで、ステップ107において、このワークWが突き当て14のワーク接触面14aからずれて離れた時点で、パンチ7bの下降を一時停止させ、ステップ109において、圧力センサー12により、パンチ7bに加わった圧力を検出し、パンチ7bがワークWに接触してパンチ7bに加わった圧力が上がっていたか否かが判定される。
【0046】
ステップ109においてパンチ7bに加わった圧力が上がっていたと判定された場合、ステップ111において、上記パンチ7bの一時停止の状態におけるピンチング位置が認識される。
【0047】
すなわち、上記パンチ7bの一時停止の状態におけるワークWの上面にパンチ7bが接触しているパンチ7bの位置をD軸エンコーダ16で検出し、前もって得た金型原点位置に基づいて、そのパンチ7bの下端と金型原点位置との間の距離であるピンチング位置が求められる。
【0048】
従って、ワークWの板厚が薄く、前述した圧力変化現象が検出不可能である場合でも、正確なピンチング位置を求めることができる。それにより、その正確なピンチング位置に基づいてパンチ7bの移動距離ストロークST(ピンチング位置からパンチ7bが下降して曲げ加工が終了する位置)を求めれば、より正確なベンディング加工を行うことができるようになる。
【0049】
なお、ステップ109においてパンチ7bに加わった圧力が上がっていないと判定された場合、突き当て14が外れてワーク接触面14aから離れたことが想定されるので、異常事態と判定し、ステップ113において、パンチ7bの下降を異常停止させる。
【0050】
次に、ステップ101においてワークWの板厚tが前もって決められた所定値X以下でない場合(ワークWの板厚が厚い場合)、ステップ117〜125において、前述した圧力変化現象によるピンチング位置の検出が行われる。
【0051】
すなわち、ステップ101においてワークWの板厚tが前もって決められた所定値X以下でない場合(ワークWの板厚tが厚い場合)、ステップ117において、パンチ7bを下降させて行き、ステップ119において、パンチ7bが下降してワークWに接触してパンチ7bに対する圧力が若干上昇し、その直後にパンチ7bに対する圧力が下降する圧力変化現象が生じたか否かが判定され、ステップ121において、上記圧力変化現象が生じた時点で、パンチ7bの下降を一時停止させ、ステップ123において、上記パンチ7bの一時停止の状態におけるピンチング位置が認識される。すなわち、上記パンチ7bの一時停止の状態におけるワークWの上面にパンチ7bが接触している位置をD軸エンコーダ16で検出し、前もって得た金型原点位置に基づいて、そのパンチ7bの下端と金型原点位置との間の距離であるピンチング位置が求められる。
【0052】
このように、この実施形態では、まず、ワークWの板厚tが前もって決められた所定値X以下か否かが判定され、ワークWの板厚tが前もって決められた所定値X以下である場合、その薄い板厚のワークWにパンチ7bが接触してワークWが曲がる初期において、ワークWが、突き当て14のワーク接触面14aからずれて離れる現象を利用し、ワークWが突き当て14のワーク接触面14aからずれて離れた時点での、パンチ7bの位置をD軸エンコーダ16で検出することによって、前もって検出した金型原点位置からピンチング位置を得るようにしている。
【0053】
従って、ワークWの板厚が薄く、前述した圧力変化現象が検出不可能である場合でも、正確なピンチング位置を求めることができ、それにより、その正確なピンチング位置に基づいてパンチ7bの移動距離ストロークST(ピンチング位置からパンチ7bが下降して曲げ加工が終了する位置)を求めれば、より正確なベンディング加工を行うことができるようになる。
【0054】
この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、以下のように適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【0055】
上述した実施形態では、まず、ワークWの板厚tが前もって決められた所定値X以下か否を判定して、ワークWが突き当て14のワーク接触面14aからずれて離れる現象を利用してピンチング位置を求めるか、前述した圧力変化現象を利用してピンチング位置を求めるかを選択していたが、すべてのケースで、ワークWが突き当て14のワーク接触面14aからずれて離れる現象を利用してピンチング位置を求めるようにしても良い。
【符号の説明】
【0056】
7 加工機(ベンディングマシン)
7a ダイ
7b パンチ
9 制御装置
10 ワーク接触検知センサー
11 入力表示部
12 圧力センサー
13 ROM
14 突き当て
14a ワーク接触面
15 RAM
16 軸エンコーダ
19 データベース
25 ドライバ
27 シリンダ