特許第5909415号(P5909415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5909415マーキングペン用油性銅光沢インキ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909415
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】マーキングペン用油性銅光沢インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20160412BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   C09D11/16
   C09C3/08
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-145561(P2012-145561)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-9263(P2014-9263A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100079120
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 真理
(72)【発明者】
【氏名】福尾 英敏
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−132747(JP,A)
【文献】 特開平06−299114(JP,A)
【文献】 特開平04−126782(JP,A)
【文献】 特開昭57−028176(JP,A)
【文献】 特開昭60−229970(JP,A)
【文献】 特開平01−301772(JP,A)
【文献】 特開平09−040900(JP,A)
【文献】 特開平09−048940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/16
C09C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ脂肪酸又は脂肪酸塩で表面処理した銅粉と真鍮粉からなる金属粉顔料18〜38重量%、樹脂及びこの樹脂を溶解させる有機溶剤を含み、上記樹脂が水添脂環族炭化水素樹脂であり、上記有機溶剤が脂環式炭化水素であり、上記金属粉顔料における真鍮粉の割合が0.5〜20.0重量%の範囲にあり、上記金属粉顔料1重量部に対して樹脂を0.6〜1.2重量部の範囲で含み、温度20℃でNo.1ローターを用いるBL型粘度計による粘度測定において、回転数60rpmのときの粘度が10.0〜55.0mPa・sの範囲であり、回転数6rpmのときの粘度を上記回転数60rpmのときの粘度で除した値として定義されるチキソトロピー性が2.5〜5.5の範囲にあることを特徴とする銅光沢マーキングペン用油性インキ組成物。
【請求項2】
有機溶剤がメチルシクロヘキサンとエチルシクロヘキサンから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の銅光沢マーキングペン用油性インキ組成物。
【請求項3】
金属粉顔料を20〜36重量%の範囲で含むと共に、金属粉顔料における真鍮粉の割合が0.8〜15.0重量%の範囲にある請求項1に記載の銅光沢マーキングペン用油性インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマーキングペン用油性銅光沢インキ組成物に関し、詳しくは、銅粉を含む金属粉顔料の再分散性にすぐれた銅光沢を有する筆跡を与えるマーキングペン用油性インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真鍮粉を金属粉顔料として用いて金色の金属光沢を有する筆跡を与えるマーキングペン用インキ組成物や、また、アルミニウム粉を金属粉顔料として用いて銀色の金属光沢を有する筆跡を与えるマーキングペン用油性インキ組成物は、これまでに種々のものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
しかし、銅光沢を有する筆跡を与えるマーキングペン用インキ組成物はこれまで知られていない。その理由の1つは、銅粉を金属粉顔料として単独で用いた場合、銅粉がインキ組成物における分散性に劣り、経時的に沈降し、凝集し、固化して、塊状物を形成し、このように、銅粉が塊状物を形成した後は、これをインキ組成物中で再分散させることが困難であるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平01−56109号公報
【特許文献2】特開平09−132747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、銅光沢を有する筆跡を与えるマーキングペン用インキ組成物における上述した従来の問題を解決するためになされたものであって、銅粉を含む金属粉顔料のインキ組成物における再分散性にすぐれた銅光沢を有する筆跡を与えるマーキングペン用油性インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、それぞれ脂肪酸又は脂肪酸塩で表面処理した銅粉と真鍮粉からなる金属粉顔料18〜38重量%、樹脂及びこの樹脂を溶解させる有機溶剤を含み、上記樹脂が水添脂環族炭化水素樹脂であり、上記有機溶剤が脂環式炭化水素であり、上記金属粉顔料における真鍮粉の割合が0.5〜20.0重量%の範囲にあり、上記金属粉顔料1重量部に対して樹脂を0.6〜1.2重量部の範囲で含み、温度20℃でNo.1ローターを用いるBL型粘度計による粘度測定において、回転数60rpmのときの粘度が10.0〜55.0mPa・sの範囲であり、回転数6rpmのときの粘度を上記回転数60rpmのときの粘度で除した値として定義されるチキソトロピー性が2.5〜5.5の範囲にあることを特徴とする銅光沢マーキングペン用油性インキ組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明による銅光沢マーキングペン用油性インキ組成物は、上述したように、金属粉顔料としてそれぞれ脂肪酸又は脂肪酸塩で表面処理した銅粉と真鍮粉の所定の割合の混合物を所定の割合で含むと共に、このような金属粉顔料に対して所定の割合で水添脂環族炭化水素樹脂を含み、溶媒が脂環式炭化水素からなり、更に、所定の粘度とチキソトロピー性を有するので、銅粉を含む金属粉顔料の再分散性にすぐれた銅光沢を有する筆跡を与えるマーキングペン用油性インキ組成物を得ることができる。筆跡の有する銅光沢は、用いる金属粉顔料が脂肪酸又は脂肪酸塩で表面処理されていると共に、インキ組成物における有機溶剤が脂環式炭化水素であり、樹脂が水添脂環族炭化水素樹脂であることから、鮮明であり、しかも、耐候性にすぐれている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明による銅光沢マーキングペン用油性インキ組成物は、脂肪酸又は脂肪酸塩で表面処理した銅粉と真鍮粉からなる金属粉顔料18〜38重量%、樹脂及びこの樹脂を溶解させる有機溶剤を含み、上記樹脂が水添脂環族炭化水素樹脂であり、上記有機溶剤が脂環式炭化水素であり、上記金属粉顔料における真鍮粉の割合が0.5〜20.0重量%の範囲にあり、上記金属粉顔料1重量部に対して樹脂を0.6〜1.2重量部の範囲で含み、温度20℃でNo.1ローターを用いるBL型粘度計による粘度測定において、回転数60rpmのときの粘度が10.0〜55.0mPa・sの範囲であり、回転数6rpmのときの粘度を上記回転数60rpmのときの粘度で除した値として定義されるチキソトロピー性が2.5〜5.5の範囲にある。
【0009】
(金属粉顔料)
本発明による銅光沢マーキングペン用油性インキ組成物においては、着色剤として銅粉と真鍮粉の組み合わせからなる金属粉顔料が用いられ、金属粉顔料はまた、後述する樹脂と共にインキ組成物にチキソトロピー性を与える。ここに、銅粉と真鍮粉のいずれも、形状を鱗片状とし、炭素原子数14〜22の高級脂肪酸又はそのアルカリ金属塩にて表面処理して、金属光沢の発現を高めた微細金属粉、所謂リーフィングタイプであって、平均粒子径が2〜11μm、好ましくは、3〜8μmの範囲のものが好ましい。上記炭素原子数16〜22の高級脂肪酸としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等を挙げることができ、また、そのアルカリ金属塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩を挙げることができる。
【0010】
一般に金属粉顔料を含むインキ組成物を充填したマーキングペンは、ホルダー内部に金属粉顔料と共に鋼球が充填されていて、不使用時は金属粉顔料が沈降しているので、マーキングペンを使用するに際しては、通常、マーキングペンを例えば軸方向に振って、鋼球を動揺させ、金属粉顔料を攪拌して、再度、インキ組成物中に均一に分散させることが必要である。そこで、インキ組成物において金属粉顔料が再分散性にすぐれるとは、マーキングペンを使用するに際して、これを例えば軸方向に振って、鋼球を動揺させ、インキ組成物を攪拌することによって、金属粉顔料がインキ組成物中にて再度、均一に分散されやすいことをいう。
【0011】
銅粉を金属粉顔料として単独で用いるときは、インキ組成物中において、容易に凝集し、塊状物に固化するので、再分散性に劣り、実用的なインキ組成物とし難い。本発明によれば、銅粉に対して限られた割合で真鍮粉を組み合わせることによって、筆跡が銅光沢を有すると共に、インキ組成物中において再分散性にすぐれる実用的なインキ組成物を得ることができる。
【0012】
本発明によるインキ組成物は、金属粉顔料として、このように、銅粉と真鍮粉からなる組み合わせを含み、金属粉顔料、即ち、銅粉と真鍮粉の混合物を18〜38重量%の範囲、好ましくは、20〜36重量%の範囲で含み、金属粉顔料における真鍮粉の割合は、0.5〜20.0重量%の範囲であり、好ましくは、0.8〜15.0重量%の範囲であり、最も好ましくは、1.0〜10.0重量%の範囲である。
【0013】
本発明によれば、金属粉顔料として、このように、銅粉と真鍮粉からなる組み合わせを上記割合にて上記範囲にて含むことによって、インキ組成物において、金属粉顔料は容易に凝集し、固化して塊状物を形成することはなく、攪拌することによって、インキ組成物中で均一に再分散する。
【0014】
即ち、本発明によれば、インキ組成物における金属粉顔料の割合が少なすぎるときは、得られるインキ組成物の筆跡が隠蔽性と銅光沢に乏しいうえに、インキ組成物の有するチキソトロピー性が十分でなく、筆記時の金属粉顔料の再分散性に劣る。一方、インキ組成物における金属粉顔料の割合が多すぎるときは、得られるインキ組成物の粘度が過度に高くなって、インキ組成物の流出性が阻害され、筆記性に劣ることとなる。また、筆記時の金属粉顔料の再分散性にも劣る。
【0015】
更に、本発明によれば、金属粉顔料において、真鍮粉の割合が少なすぎるときは、得られるインキ組成物の金属粉顔料の再分散性に劣る。しかし、真鍮粉の割合が多すぎるときは、得られるインキ組成物の筆跡の黄色(金色)味が強くなって、銅光沢をもたなくなる。
【0016】
(樹脂)
本発明によるインキ組成物は、樹脂として、水添脂環族炭化水素樹脂を含む。炭化水素樹脂とは、石油分解留分から得られる低分子量の熱可塑性樹脂をいい、代表例として、C5脂肪族オレフィン−ジオレフィン樹脂、高沸点芳香族石油樹脂、環状ジオレフィン(ジシクロペンタジエン)樹脂等を挙げることができる。本発明においては、このような炭化水素樹脂の水素添加物、即ち、水添脂環族炭化水素樹脂を樹脂成分として有し、なかでも、環状ジオレフィン(ジシクロペンタジエン)樹脂の水添物である水添脂環族炭化水素樹脂が好ましく用いられる。そのような水添脂環族系石油樹脂は、例えば、エクソンモービル社製「エスコレッツ(ESCOREZ)」(登録商標)5000シリーズとして市販品を入手することができる。
【0017】
本発明によれば、樹脂成分は、インキ組成物に適度の粘性を与えて、筆記性をよくすると共に、筆跡を筆記面に付着させる働きを有し、更に、前記金属粉顔料と共同して、インキ組成物にチキソトロピー性を付与する。本発明によれば、インキ組成物は樹脂成分としてこのような水添炭化水素樹脂を前述した金属粉顔料1重量部に対して0.60〜1.20重量部の範囲で含む。
【0018】
インキ組成物において、水添炭化水素樹脂の割合が金属粉顔料1重量部に対して0.60重量部よりも少ないときは、得られるインキ組成物の粘度が低すぎて、インキ組成物が筆記に際して、ペン先からインキ組成物が過度に流出し、筆記性に劣り、また、筆跡も筆記面への接着性に劣る。一方、水添炭化水素樹脂の割合が金属粉顔料1重量部に対して1.20重量部よりも多いときは、得られるインキ組成物の粘度が高すぎて、筆記に際して、インキ組成物が流出し難く、筆記性に劣ることとなる。
【0019】
本発明によるインキ組成物における水添炭化水素樹脂の割合は、好ましくは、15〜30重量%の範囲である。
【0020】
(その他の成分)
本発明によるインキ組成物は、金属粉顔料を着色剤として有する金属粉顔料インキ組成物に通常、含まれる成分を含んでいてもよい。そのような成分として、例えば、消泡剤、レベリング剤、揺変性(チキソトロピー性)付与剤、防錆剤等を適宜量含むことができる。
【0021】
(有機溶剤)
本発明によるインキ組成物において、残部は有機溶剤であり、特に限定されるものではないが、本発明によるインキ組成物は、有機溶剤を、通常、35〜65重量%の範囲で含み、好ましくは、45〜60重量%の範囲で含む。
【0022】
本発明によるインキ組成物においては、有機溶剤として、脂環式炭化水素が好ましく用いられ、特に、メチルシクロヘキサンとエチルシクロヘキサンから選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。インキ組成物における有機溶剤の量が余りに少ないときは、得られるインキ組成物の粘度が過度に高くなり、ペン先からの流出が阻害されて、筆記性が悪くなる。しかし、反対に、インキ組成物における有機溶剤の量が余りに多いときは、得られるインキ組成物の粘度が低すぎて、筆記に際して、ペン先からの流出量が過多になる。
【0023】
(粘度及びT.I.性)
本発明によるインキ組成物度は、温度20℃でNo.1ローターを用いるBL型粘度計にて回転数6rpmのときに得られる粘度を回転数60rpmのときに得られる粘度で除した値、即ち、T.I.性(チキソトロピー性)が2.5〜5.5の範囲にある。本発明によるインキ組成物が金属粉顔料の再分散性にすぐれるには、インキ組成物が上記範囲のT.I.性を有することが必要である。
【0024】
(製造)
本発明によるインキ組成物は、その製造方法において特に限定されるものではなく、上述した成分を均一に溶解させ、又は分散させることができれば、どのような方法によってもよい。例えば、有機溶剤に水添炭化水素樹脂を加え、必要に応じて加熱して、溶解させた後、これに金属粉顔料を加えて、均一に攪拌、混合すればよい。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。インキ組成物の物性、即ち、金属粉顔料の平均粒子径、粘度及び再分散性は下記のようにして求めた。
【0026】
金属粉顔料の平均粒子径
レーザ回折・散乱式粒度分析計マイクロトラックMT3000II(日機装(株)製)を用いて平均粒子径を求めた。測定時間は30秒、測定回数は3回、透過性は反射、溶媒はメチルシクロヘキサン。
【0027】
粘度
温度20℃でNo.1ローターを用いるBL型粘度計((株)トキメック製)にて回転数6rpmと60rpmのときについて測定した。
【0028】
T.I.値
上記6rpmにおける粘度を60rpmにおける粘度で除してT.I.値とした。
【0029】
また、表1に記載した各成分の詳細は以下のとおりである。
【0030】
エスコレッツ5320:トーネックス(株)製水添脂環族炭化水素樹脂
銅粉:エカルト・ヴェルケ製 STANDART Copper Powder Offset 3000 Super (ステアリン酸にて表面処理、銅100重量%、平均粒子径4.3μm)
真鍮粉:エカルト・ヴェルケ製 STANDART Bronze Powder Offset 3000 Super Rich Gold (ステアリン酸にて表面処理、銅70重量%及び亜鉛30重量%、平均粒子径3.9μm)
【0031】
実施例1
表1に示す成分を表1に示す量で用いて、前述したようにして、インキ組成物を調製した。
【0032】
実施例2〜5
表1に示す成分を表1に示す量で用いて、前述したようにして、インキ組成物を調製した。
【0033】
比較例1〜6
表1に示す成分を表1に示す量で用いて、前述したようにして、インキ組成物を調製した。
【0034】
上記実施例及び比較例によるインキ組成物について、粘度、T.I.値及び再分散性を評価した。インキ組成物の再分散性は、インキ組成物をマーキングペンに充填し、このマーキングペンにおける「プッシュ回数」とこのマーキングペンを用いる「筆記距離」によって評価した。「プッシュ回数」と「筆記距離」は、マーキングペンの作製直後の初期と50℃で1か月保存後について評価した。
【0035】
上記インキ組成物の評価において、(株)サクラクレパス製ペイントマーカー(中字)にインキ組成物7gを充填して試験用マーキングペンとした。このマーキングペンは、内側がインキ収容管をなす有底円筒状のアルミニウム製ホルダーとこのホルダーの先端に弁体を介して嵌め込まれたペン体を備えている。上記インキ収容管にはインキと共に鋼球が封入されており、使用に際しては、マーキングペンを通常、軸方向に振ることによって、インキ収容管内の鋼球を動揺させてインキを攪拌し、沈殿している金属粉顔料を再分散させる。また、弁体は、通常、閉じていて、インキ収容管からペン体へのインキの流出を防止しているが、使用に際して、ペン体を筆記面に押圧することによって、即ち、ペン体をホルダー方向に押し込むことによって、弁体が開いて、インキが前記インキ収容管からペン体に流出する。このように、上記ペン体を筆記面に押圧することによって弁体を開かせて、インキをペン体に供給する操作を「プッシュ」するという。
【0036】
プッシュ回数
インキを充填したマーキングペンを正立で軸方向に20回振って、インキ収容管内のインキをよく攪拌した後、ペン体を上向きにしてペン体を押圧してペン体から空気抜きした後、ペン体を下向きにして、2回/秒の割合でプッシュし、インキがペン体の先端まで到達するときのプッシュ回数を調べた。
【0037】
筆記距離
インキを充填したマーキングペンを筆記面に対する荷重100g(980mN)、筆記面に対する角度85°、筆記速度7cm/秒にて筆記試験機を用いて上質紙に連続筆記し、その際に、筆記距離3mごとにペン体を2〜5回プッシュし、25m筆記するごとにペン体を上向きにしてマーキングペンを軸方向に20回振り、このようにして、筆跡に掠れが生じるまでの筆記距離を求めた。
【0038】
結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すように、実施例によるインキ組成物は、プッシュ回数と筆記距離のいずれにおいても、再分散性にすぐれている。
【0041】
これに対して、比較例1〜4によるインキ組成物は、金属粉顔料が銅粉のみからなるので、50℃で1か月保存後の筆記距離からみた金属粉顔料の再分散性が悪く、比較例3と4によるインキ組成物は、プッシュ回数からみた再分散性も悪い。比較例5によるインキ組成物は、金属粉顔料の割合が少なすぎて、チキソトロピー性が十分でなく、同様に、筆記距離からみた金属粉顔料の再分散性が悪い。比較例6によるインキ組成物は、金属粉顔料の割合が多すぎて、粘度が高すぎる結果、プッシュ回数からみた再分散性に劣っている。