(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発音データを記憶するデータ記憶部と、テンポを制御するテンポ信号を発生するテンポ発生部と、前記データ記憶部から出力された前記発音データを電気信号に変換し、前記テンポ発生部から出力された前記テンポ信号の前記テンポごとに前記電気信号を出力する矩形パルス出力部と、前記矩形パルス出力部から出力された前記電気信号を前記テンポごとに音を発音するテンポ音に変換するテンポ音変換部と、を備えるテンポ音発生装置であって、
前記発音データは、複数のパルス幅及び複数のパルス間隔が配列される矩形波のデータを少なくとも1つ以上有し、
前記パルス幅は、前記テンポ音の発音時間内の前記矩形パルス出力部から出力されるHIGHレベルの前記電気信号の継続時間であり、
前記パルス間隔は、前記テンポ音の発音時間内の前記矩形パルス出力部から出力されるLOWレベルの前記電気信号の継続時間であり、
前記矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上の前記パルス幅が前又は後ろに配列された前記パルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上の前記パルス幅が他の前記パルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上の前記パルス間隔が他の前記パルス間隔と異なる時間で構成され、
前記矩形パルス出力部は、前記発音データの少なくとも一部を前記電気信号に変換し、
前記電気信号に変換される前記発音データの少なくとも一部は、少なくとも1つ以上の前記パルス幅が前又は後ろに配列された前記パルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上の前記パルス幅が他の前記パルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上の前記パルス間隔が他の前記パルス間隔と異なる時間で構成される矩形波のデータを有することを特徴とするテンポ音発生装置。
前記矩形パルス出力部は、前記発音データの少なくとも一部を抽出し、前記テンポ音の発音時間を制御する発音時間制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載のテンポ音発生装置。
発音データを記憶するデータ記憶部と、テンポを制御するテンポ信号を発生するテンポ発生部と、前記データ記憶部から出力された前記発音データを、前記テンポごとに音を発音するテンポ音に変換される電気信号に変換し、前記テンポ発生部から出力された前記テンポ信号の前記テンポごとに前記電気信号を矩形パルス出力部と、を備えるテンポ音発生器であって、
前記発音データは、複数のパルス幅及び複数のパルス間隔が配列される矩形波のデータを少なくとも1つ以上有し、
前記パルス幅は、前記テンポ音の発音時間内の前記矩形パルス出力部から出力されるHIGHレベルの前記電気信号の継続時間であり、
前記パルス間隔は、前記テンポ音の発音時間内の前記矩形パルス出力部から出力されるLOWレベルの前記電気信号の継続時間であり、
前記矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上の前記パルス幅が前又は後ろに配列された前記パルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上の前記パルス幅が他の前記パルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上の前記パルス間隔が他の前記パルス間隔と異なる時間で構成され、
前記矩形パルス出力部は、前記発音データの少なくとも一部を前記電気信号に変換し、
前記電気信号に変換される前記発音データの少なくとも一部は、少なくとも1つ以上の前記パルス幅が前又は後ろに配列された前記パルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上の前記パルス幅が他の前記パルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上の前記パルス間隔が他の前記パルス間隔と異なる時間で構成される矩形波のデータを有することを特徴とするテンポ音発生器。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から
図5を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態によるテンポ音発生装置のブロック図である。
図1において、テンポ音発生装置11は、データ記憶部12とテンポ発生15と矩形パルス出力部13とテンポ音変換部14とを備える。また、データ記憶部12とテンポ発生部15と矩形パルス出力部13とは、テンポ音発生器16を構成する。
【0017】
データ記憶部12は、発音データを記憶する。また、発音データは、複数のパルス幅及び複数のパルス間隔が配列される矩形波のデータを少なくとも有する。なお、パルス幅は、テンポ音の発音時間内の矩形パルス出力部から出力されるHIGHレベルの電気信号の継続時間(HIGHレベルの始端から終端までの時間)である。また、パルス間隔は、テンポ音の矩形波パルス出力部から出力されるLOWレベルの電気信号の継続時間(LOWレベルの始端から終端までの時間)である。すなわち、パルス間隔は、1つのパルス幅と次に配列されたパルス幅との間のLOWレベルの電気信号の時間である。また、パルス周期は、1つのパルス幅とそのパルス幅の前又は後ろに配列されたパルス間隔とを合わせた時間である。
【0018】
また、矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上のパルス幅が前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成される。さらに、矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上のパルス幅が他のパルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上のパルス間隔が他のパルス間隔と異なる時間で構成される。なお、パルス幅が他のパルス幅と異なる時間で構成される場合、前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成されるパルス幅と、他のパルス幅と異なる時間で構成されるパルス幅とは、テンポ音の発音時間内で同一経過時間であってもよいし、異なる経過時間であってもよい。
【0019】
テンポ発生部15は、テンポを制御するテンポ信号を発生させる。また、テンポ発生部15は、例えば、図示しないスイッチ等で構成されるテンポ設定部を有してもよい。これにより、テンポ設定部により所望のテンポに設定することができる。
【0020】
矩形パルス出力部13は、データ記憶部12から出力された発音データを電気信号に変換し、電気信号を出力されたテンポ信号のテンポごとに出力する。また、矩形パルス出力部13は、発音データの少なくとも一部を電気信号に変換して出力する。また、電気信号に変換される発音データの少なくとも一部は、少なくとも1つ以上のパルス幅が前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上のパルス幅が他のパルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上のパルス間隔が他のパルス間隔と異なる時間で構成される矩形波のデータを有する。また、変換された電気信号は、テンポ信号のテンポごとに出力される。
【0021】
テンポ音変換部14は、矩形パルス出力部13から出力された電気信号をテンポごとに音を発音するテンポ音に変換する。また、テンポ音変換部14は、例えばスピーカ、イヤフォン等で構成され、テンポ音を発生させる。
【0022】
図2において、矩形波と周波数スペクトルとの関係について説明する。
図2の矩形波は、従来の電子メトロノームのように、全てのパルス幅が同一であり、全てのパルス間隔が同一である。また、
図2は、矩形波の電気信号の波形を示す図(左図)と、その電気信号を離散フーリエ変換した周波数スペクトルを示す図(右図)である。また、矩形波の電気信号の波形を示す図は、縦軸が電圧(V)、横軸が経過時間(s)を示す。また、電気信号を変換した周波数スペクトルを示す図は、縦軸が振幅(V)、横軸が周波数(Hz)を示す。なお、
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)は、それぞれ別のパターンを表し、1つのパターンは、原理を示すために全てのパルス幅を同じ時間で配列し、全てのパルス間隔を同じ時間で配列しているため、全てのパルス周期は同一である。
【0023】
図2(a)は、全てのパルス幅wが各パルス周期Tの半分の時間の場合の矩形波の電気信号の波形を示す図(左図)と、その電気信号を離散フーリエ変換した周波数スペクトルを示す図(右図)である。このとき、1つのパルス幅wと1つのパルス間隔dは、同じ時間である。
【0024】
図2(b)は、
図2(a)と異なる電気信号の波形を示す図(左図)とその電気信号を離散フーリエ変換した周波数スペクトルを示す図(右図)である。
図2(b)において、電気信号の波形は、
図2(a)の電気信号の波形に比べ、パルス周期Tが同一であり、パルス幅w’及びパルス間隔d’が異なる。この場合、
図2(a)と
図2(b)の全てのパルス周期Tは同一であるため、基本周波数は同一である。また、
図2(a)のパルス幅wとパルス間隔dと
図2(b)のパルス幅w’及びパルス間隔d’は異なるため、周波数スペクトルが異なる。
【0025】
図2(c)は、
図2(a)、
図2(b)と異なる電気信号の波形を示す図(左図)とその電気信号を離散フーリエ変換した周波数スペクトルを示す図(右図)である。
図2(c)において、電気信号の波形は、
図2(a)に比べ、パルス幅wが同一であり、パルス間隔d’’及びパルス周期T’が異なる。この場合、
図2(a)のパルス周期Tと
図2(c)のパルス周期T’が異なるため、基本周波数は異なる。さらに、
図2(a)のパルス間隔dと
図2(c)のパルス間隔d’’が異なるため、周波数スペクトルも異なる。従って矩形波を変化させることにより、周波数スペクトルを変化させることができる。
【0026】
次に、本発明に係るデータ記憶部に記憶されている発音データについて説明する。
図3は、本発明の矩形パルス出力部13からテンポ音変換部14に出力される電気信号の一部の模式図である。すなわち、この電気信号は、データ記憶部12に記憶される発音データを変換したものである。また、
図3は、縦軸が振幅(V)、横軸が経過時間(s)を示す。
図3(a)は、パルス周期が一定に配列された矩形波の電気信号を示す図であり、
図3(b)は、パルス幅が一定に配列された矩形波の電気信号を示す図であり、
図3(c)は、パルス間隔が一定に配列された矩形波の電気信号を示す図であり、
図3(d)は、パルス幅、パルス間隔、パルス周期がランダムに配列された矩形波の電気信号を示す図である。
【0027】
図3(a)において、電気信号は、全てのパルス周期が同一(T1=T2=T3=T4)であり、各パルス幅と各パルス間隔が変化している。
図3(a)において、例えば、パルス幅w1が後ろに配列されたパルス間隔d1と異なる時間で構成されている。さらに、例えば、パルス幅w1又はw2がパルス幅w3と異なる時間で構成されている。また、例えば、パルス間隔d1がパルス間隔d2と異なる時間で構成されている。
【0028】
この電気信号をテンポ音変換部でテンポ音に変換した場合、大小様々な振幅を持ち、基本周波数の異なる基音と倍音が、短時間で次々に発生する。これにより、従来の音響発生装置に比べ、簡単な手段で、単一周波数が強調されて、音高をもたない音として認識される音を発生させることができる。
【0029】
また、テンポ音において、1つの音の発音時間は、矩形波のデータの時間に影響される。例えば、
図3(a)において、1つの音の発音時間は、パルス幅w1からパルス間隔d5までの時間に影響される。
また、本発明において、発生される音が可聴領域となるように、一般的な可聴周波数20Hzから20kHz(周期:50μsから50ms)に合わせ、パルス周期を50μsから50msの間で設定することが望ましい。
【0030】
また、パルス幅の変化が小さいと、単一周波数が強調されるため、パルス幅の変化量はパルス幅平均値の±5%以上であることが望ましい。なお、パルス幅平均値は、テンポ音の発音時間内のパルス幅の平均値である。
また、矩形波のデータにおいて、パルス幅とパルス間隔の少なくとも一方または両方は、ランダムに変化させてもよい。この場合、矩形波のデータの1/3以上をランダムに変化させることが望ましい。これにより、より機械式メトロノームの弱拍音に近づけることができる。
【0031】
また、発音時間が長いと、テンポを刻む音と音の間の無音時間が短くなり、テンポが取りにくくなるため、発音時間はテンポの3分の1以下に設定することが望ましい。例えば、テンポが100拍/分(周期600ms)の場合、発音時間は200ms以下に設定することができる。また、発音時間を短くすることで、より機械式メトロノームの弱拍の打撃音に近づける効果がある。
【0032】
図3(b)において、電気信号は、全てのパルス幅が同一(w1=w2=w3=w4)、各パルス間隔がランダムに変化している。
図3(b)において、例えば、パルス幅w1が後ろに配列されたパルス間隔d1と異なる時間で構成されている。さらに、例えば、パルス間隔d1が他のパルス間隔d2と異なる時間で構成されている。
【0033】
この場合、
図3(a)の電気信号がテンポ音変換部でテンポ音に変換されたときと同様に、大小様々な振幅を持ち、基本周波数の異なる基音と倍音が、短時間で次々に発生する。そのため、従来の音響発生装置に比べ、簡単な手段で、単一周波数が強調されて、音高をもたない音として認識される音を発生させることができる。
【0034】
図3(c)において、電気信号は、全てのパルス間隔が同一(d1=d2=d3=d4)であり、各パルス幅が変化している。
図3(c)において、例えば、パルス幅w1が後ろ配列されたパルス間隔d1と異なる時間で構成されている。さらに、例えば、パルス幅w1又はw2がパルス幅w3と異なる時間で構成されている。この場合も
図3(a)、
図3(b)と同様の効果を得ることができる。
【0035】
図3(d)において、電気信号は、パルス周期、パルス幅、パルス間隔が変化している。
図3(d)において、例えば、パルス幅w1が後ろに配列されたパルス間隔d1と異なる時間で構成されている。また、例えば、パルス幅w1が他のパルス幅w2と異なる時間で構成されている。さらに、例えば、パルス間隔d1が他のパルス間隔d2と異なる時間で構成されている。
【0036】
各パルス周期、各パルス幅、各パルス間隔が
図3(a)乃至
図3(c)に比べ、矩形波のデータが自由な範囲で設定される。そのため、この電気信号をテンポ音変換部で変換した音は、広い周波数帯域にわたって、より周波数規則をもたない音が合成された、音高を感じにくい音として認識される。従って、音高のない音、すなわちフラットな周波数スペクトルをもつ音が瞬間的に発生する音に近づけることができる。よって、より機械式メトロノームの弱拍音に近づけることができる。
【0037】
図4、
図5を用いて、本発明に係る発音データから変換される電気信号とその電気信号の周波数スペクトルを説明する。
図4は、本発明に係る発音データから変換される電気信号の一例を示す図である。縦軸は、電圧(V)、横軸は、経過時間(ms)を示す。
【0038】
図4の電気信号において、複数のパルス幅及び複数のパルス間隔をランダムに変化させている。各パルス幅及び各パルス間隔を0.1ms〜0.4msの範囲でランダムに変化させている。なお、各パルス幅及び各パルス間隔をランダムに変化させる方法として、例えば、乱数列を用いる方法がある。この乱数列は、等確立性、統計的独立性を有するものである。また、
図4の電気信号は、30個の矩形パルスを配列した矩形波のデータで構成される発音データを変換したものである。
【0039】
この電気信号はテンポ音変換部でテンポ音の1つの音に変換される。この電気信号の場合、1つの音は、機械式メトロノームの弱拍音に近づけるため、約8msの発音時間である。
【0040】
図5は、
図4の電気信号をテンポ音変換部により変換し、出力される音及び比較例の音の周波数スペクトルの模式図である。
図5において、縦軸は振幅(dB)、横軸は周波数(Hz)を示す。
図5(a)は、
図4の電気信号をテンポ音変換部により変換し、出力された音の周波数スペクトルを示す。
図5(b)は、実際の機械式メトロノームの弱拍音の周波数スペクトルを示す。
図5(c)は、従来の電子式のメトロノームの周波数スペクトルを示す。なお、従来のメトロノームは、一般的に
図2(a)乃至
図2(c)に示すような全てのパルス周期が一定の矩形波の電気信号を音に変換したものである。
【0041】
図5(b)の周波数スペクトルは、大きなピークを持たず、広い周波数帯域にわたって、より周波数規則をもたない音が合成されているため、音高を感じにくい音として認識される。
【0042】
図5(a)の周波数スペクトルは、
図5(b)の周波数スペクトルと似ているパターンを持つ。さらに、
図5(a)の周波数スペクトルは、大きなピークを持たず、広い周波数帯域にわたって、周波数規則をもたない音が合成されている。以上により、本発明に係る発音データから変換された電気信号を変換し、出力された音は、機械式メトロノームの弱拍音と近い音になり、音高を感じにくい音として認識される。
【0043】
それに対し、
図5(c)の周波数スペクトルは、
図5(b)の周波数スペクトルに似ているパターンを持たない。さらに、
図5(c)は、1kHzから10kHzの間に大きなピークを持つ(
図5(c)の矢印部分)。そのため、単一周波数が強調され、本発明に係る音より音高を持つ音として認識される。
よって、各パルス幅及び各パルス間隔をランダムに変化させた場合、広い周波数帯域にわたって周波数スペクトルのピークを持たない音が発生するため、機械式メトロノームの弱拍音に近い音を発生させることができる。
【0044】
また、本発明において、
図5(a)の音をテンポに合わせて発音する。具体的には、矩形パルス出力部13にデータ記憶部12から出力される発音データを、電気信号を出力されたテンポ信号のテンポごとに出力する。この電気信号は、
図4に示すような矩形パルスが配列された矩形波の電気信号(テンポ音発音時間)と、一定時間継続するLOWの電気信号(テンポ音を発音しない時間)を繰り返す。これにより、テンポ音変換部は、テンポごとに発音するテンポ音を発音する。
【0045】
なお、テンポ音変換部から出力される音は、テンポ音変換部を構成するスピーカ等の特性に影響される。ただし、テンポ音変換部から出力される音は、矩形波の電気信号における矩形パルスのパターン、各パルス幅及び各パルス間隔が変化するパターンとおよそ相関関係を有する。そのため、この音は、スピーカの特性の影響を受けても、従来の電子式メトロノームに比べ、広い周波数帯域を有し、音高のない音として認識される。
【0046】
また、発音データは、
図3、
図4の電気信号に変換される発音データに限らない。発音データは、複数のパルス幅及び複数のパルス間隔が配列される矩形波のデータを少なくとも1つ以上有し、矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上のパルス幅が前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上のパルス幅が他のパルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上のパルス間隔が他のパルス間隔と異なる時間で構成されていればよい。
【0047】
また、矩形パルス出力部13は、発音データの一部を電気信号に変換するものでもよい。この際、この発音データの少なくとも一部は、少なくとも1つ以上のパルス幅が前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上のパルス幅が他のパルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上のパルス間隔が他のパルス間隔と異なる時間で構成される矩形波のデータを有するものとする。発音データの使用範囲を変化させることで、テンポ音の1つの音の発音時間を変化させることができる。
【0048】
また、例えば、矩形波のデータにおいて、各パルス幅および各パルス間隔の少なくとも一方が任意の数列に基づいて規則的に変化してもよい。また、この規則的に変化する部分が一部であり、その他の部分の各パルス幅及び各パルス間隔が同一に構成されていてもよい。この場合においても、矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上のパルス幅が前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上のパルス幅が他のパルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上のパルス間隔が他のパルス間隔と異なる時間で構成されている。
【0049】
また、例えば、矩形波のデータの一部において、各パルス周期が同一で構成され、各パルス幅が同一で構成され、および各パルス間隔が同一で構成されるとともに、各パルス周期におけるパルス幅とパルス間隔が異なる時間で構成されていてもよい。この場合、矩形波のデータの他の部分の各パルス幅及び各パルス間隔が同一に構成されていてもよい。また、この場合、全てのパルス周期が同一に構成されてもよい。どの場合においても、矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上のパルス幅が前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上のパルス幅が他のパルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上のパルス間隔が他のパルス間隔と異なる時間で構成されている。
【0050】
また、
図3の電気信号が発音データの一部を変換したものであり、その他の発音データにおいて全てのパルス幅及びパルス間隔を同一にしてもよい。この場合においても、矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上のパルス幅が前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上のパルス幅が他のパルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上のパルス間隔が他のパルス間隔と異なる時間で構成されている。
【0051】
なお、
図4の電気信号に変換される発音データは、上記に挙げたテンポ音変換部から出力される音の例に比べ、より機械式メトロノームの音に近づく。しかし、上記に挙げた音の例でも、
図5(c)に示すような従来の音響発生装置に比べ、簡単な手段で、単一周波数が強調されて、音高をもたない音として認識される音を発生させることができる。
【0052】
また、
図4においては、複数のパルス幅及び複数のパルス間隔の両方をランダムに変化させているが、いずれか一方をランダムに変化させてもよい。この場合においても、矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上のパルス幅が前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上のパルス幅が他のパルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上のパルス間隔が他のパルス間隔と異なる時間で構成されている。また、複数のパルス幅及び複数のパルス間隔のいずれか一方がランダムに変化しているため、広い周波数帯域にわたって周波数スペクトルのピークを持たない音が発生するため、機械式メトロノームの弱拍音に近い音を発生させることができる。このとき、ランダムに変化するパルス幅及びパルス間隔は、矩形波のデータの一部でもよい。
【0053】
また、矩形パルス出力部は、発音データの少なくとも一部を抽出し、前記テンポ音の発音時間を制御する発音時間制御部を備えてもよい。この際、この発音データの少なくとも一部は、少なくとも1つ以上のパルス幅が前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成されるとともに、少なくとも1つ以上のパルス幅が他のパルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上のパルス間隔が他のパルス間隔と異なる時間で構成される矩形波のデータを有するものとする。
【0054】
発音データの一部を任意に抽出することにより、テンポ音の1つの音の発音時間が変化する。例えば、発音データが、1つの矩形波のデータで構成され、発音時間制御部が、その矩形波のデータのうちの一部を任意に抽出する。これにより、テンポ音の1つの音の発音時間は、所定の期間内の最初のパルス幅から最後のパルス幅までの時間になる。この発音データの一部を電気信号に変換した場合、発音データの全部を電気信号に変換した場合に比べ、1つの音の発音時間は短縮することができる。
【0055】
また、発音時間制御部は、例えば発音データのうち任意の一部または全部を選択する発音時間制御スイッチを備えてもよい。このスイッチにより、発音時間を任意に設定することができる。
【0056】
また、本発明において、テンポ音変換部を必ずしも備える必要はなく、別体として構成することができる。すなわち、本発明は、発音データを記憶するデータ記憶部と、テンポを制御するテンポ信号を発生するテンポ発生部と、データ記憶部から出力された発音データを、テンポごとに音を発音するテンポ音に変換される電気信号に変換し、電気信号を出力されたテンポ信号のテンポごとに出力する矩形パルス出力部と、を備えるテンポ音発生器であってもよい。この場合、別体のテンポ変換部に相当するもの、例えば別体のスピーカ等をテンポ音発生器に接続するものであってもよい。なお、この場合においても、発音データは、複数のパルス幅及び複数のパルス間隔が配列される矩形波のデータを少なくとも有する。さらに、パルス幅は、テンポ音の発音時間内の矩形パルス出力部から出力されるHIGHレベルの電気信号の継続時間(HIGHレベルの始端から終端までの時間)である。また、パルス間隔は、テンポ音の矩形波パルス出力部から出力されるLOWレベルの電気信号の継続時間(LOWレベルの始端から終端までの時間)である。すなわち、パルス間隔は、1つのパルス幅と次に配列されたパルス幅との間のLOWレベルの電気信号の時間である。また、パルス周期は、1つのパルス幅とそのパルス幅の前又は後ろに配列されたパルス間隔とを合わせた時間である。
【0057】
また、矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上のパルス幅が前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成される。さらに、矩形波のデータにおいて、少なくとも1つ以上のパルス幅が他のパルス幅と異なる時間又は少なくとも1つ以上のパルス間隔が他のパルス間隔と異なる時間で構成される。なお、パルス幅が他のパルス幅と異なる時間で構成される場合、前又は後ろに配列されたパルス間隔と異なる時間で構成されるパルス幅と、他のパルス幅と異なる時間で構成されるパルス幅とは、テンポ音の発音時間内で同一経過時間であってもよいし、異なる経過時間であってもよい。
【0058】
また、発音データは、複数の矩形波のデータを有し、複数の矩形波のデータのうち少なくとも1つ以上の矩形波のデータにおいて配列されるパルス幅及びパルス間隔の範囲は、他の矩形波のデータにおいて配列されるパルス幅及びパルス間隔の範囲と異なり、矩形パルス出力部は、発音データの複数の矩形波のデータをそれぞれ電気信号に変換してもよい。例えば、矩形パルス出力部は、矩形波のデータ1と矩形波のデータ2を電気信号に変換し、2つの矩形波のデータを交互にテンポ音発生部に出力する。このとき、テンポ音は、2つの異なる音を交互に発音することになる。こすなわち、この構成により、テンポ音のうち少なくとも1つ以上の音は、他の音と異なる音に変換することができる。これにより、各音の音程等を変化させながらテンポ音を発生することができる。
【0059】
なお、矩形波のデータにおいて、パルス幅及びパルス間隔は、時間で設定されているが、クロックのカウント数で設定されるものでもよい。このカウント数によって、時間を管理することができる。
【0060】
図6、
図7を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態によるテンポ音発生装置の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態と同様の構成には、同一の符号を付す。以下、第2の実施形態において第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0061】
第2の実施形態に係るテンポ音発生装置11は、第1の実施形態に係るテンポ音発生装置に加え、さらに、データ選択部51を備えている。
【0062】
また、データ記憶部12は、複数の矩形波のデータを記憶している。この複数の矩形波のデータにおいて、1つの矩形波のデータにおいて配列される複数のパルス幅及び複数のパルス間隔の範囲の少なくとも一部は、他の矩形波のデータにおいて配列される複数のパルス幅及び複数のパルス間隔の範囲と異なる。
【0063】
図7は、データ選択部51について説明する図である。
図7においては、ティンパニ及びフルートの出力テンポ音を示す。
図7のテーブルにおいて、左から各楽器名(楽器)、各楽器を演奏した場合に発生する周波数スペクトルの帯域(周波数帯域(Hz))、各楽器を演奏した場合に選択され、出力されるテンポ音(出力テンポ音)を示している。出力テンポ音において、選択される周波数スペクトルの帯域(選択周波数帯域(Hz))と、選択周波数帯域を出力するために設定されるパルス幅及びパルス間隔の範囲(パルス幅とパルス間隔の範囲(ms))を示す。すなわち、出力テンポ音におけるそれぞれのパルス幅とパルス間隔の範囲は、各楽器に対応して設定されている。
【0064】
図7において、ティンパニを演奏した場合に発生する周波数帯域は、100〜350Hzである。また、ティンパニに対応する選択周波数帯域は、350Hz〜1kHzである。この選択周波数帯域は、周波数帯域と重ならないように設定されている。
【0065】
また、選択周波数帯域を設定するためには、対応する複数のパルス幅と複数のパルス間隔の範囲を設定する。すなわち、選択周波数帯域のテンポ音を発音するために、所定のパルス幅及びパルス間隔の範囲内の複数のパルス幅及び複数のパルス間隔を配列する矩形波のデータで構成される発音データを電気信号に変換する。
【0066】
図7において、ティンパニに対応するパルス幅とパルス間隔の範囲は0.5〜1.4msである。この範囲内の複数のパルス幅及び複数のパルス間隔を配列する矩形波のデータで構成される発音データを電気信号に変換する。この電気信号をテンポ音に変換した場合、テンポ音は、350Hz〜1kHzの周波数帯域の周波数スペクトルで構成される。
【0067】
これにより、発音するテンポ音の周波数帯域を選択周波数帯域に設定した場合、テンポ音の周波数帯域とティンパニの周波数帯域が異なる。この場合、テンポ音は、ティンパニの音に紛れにくい音となる。すなわち、第1の実施例の効果に加え、テンポ音を任意の音に設定することができ、楽器ごとに認識しやすい音を選択することができる。
【0068】
本実施形態において、データ記憶部12は、ティンパニ、フルートなどの各楽器に対応するパルス幅とパルス間隔の範囲内の複数のパルス幅及び複数のパルス間隔を配列する複数の矩形波のデータで構成される発音データを記憶する。なお、楽器は
図7に示すものに限定されない。
【0069】
データ選択部51は、例えば、図示しない楽器選択スイッチを備える。この楽器選択スイッチにより、演奏する楽器を選択する。この楽器を選択することにより、対応する矩形波のデータがデータ記憶部から選択される。選択された矩形波のデータを発音データとして矩形パルス出力部に出力する。
【0070】
その後、矩形パルス出力部13及びテンポ音変換部14で第1の実施形態と同様の処理を行う。これにより、テンポ音は、ティンパニの音に紛れにくい音を発音することができる。
【0071】
なお、発音データが、少なくとも1つ以上の矩形波のデータで構成され、期間ごとに周波数帯域が異なるデータであってもよい。この場合、データ選択部51は、発音データを構成する矩形波のデータのうち、所定の周波数帯域を構成する期間のデータを抽出する。これにより、複数の矩形波のデータから選択する場合と同様の効果が得られる。
【0072】
また、データ選択部が所定の周波数を選択するスイッチで構成されてもよい。この場合、楽器で選択せず、テンポ音を任意の音に設定することができ、演奏中に認識しやすい音を選択することができる。
また、1つの矩形波のデータにおいて配列される複数のパルス幅及び複数のパルス間隔の範囲の少なくとも一部は、他の矩形波のデータにおいて配列される複数のパルス幅及び複数のパルス間隔の範囲と異なっていればよい。そのため、複数の矩形波のデータにおいて、複数のパルス幅及び複数のパルス間隔の範囲に重複する範囲があってもよい。
【0073】
また、テンポ音変換部14が外付けのテンポ音発生器16の場合、データ選択部51でユーザーが認識しやすい音を選択する。テンポ音発生器を構成する例えばスピーカなどの特性によって出力されるテンポ音が変化するためである。
また、第1の実施形態の様々な構成を備えていてもよい。例えば、矩形パルス出力部が発音時間制御部を備えてもよい。
【0074】
図8、
図9を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。
図8は、本発明の第3の実施形態によるテンポ音発生装置の構成例を示す概略ブロック図である。第2の実施形態と同様の構成には同一の符号を付す。以下、第3の実施形態が第2の実施形態と異なる点を説明する。
【0075】
第3の実施形態に係るテンポ音発生装置11は、楽器の楽音を入力する音入力部61を備えている。また、データ選択部51は、図示しない周波数解析部を備えている。
データ記憶部12は、第2の実施形態と同様の構成である。
【0076】
周波数解析部は、音入力部61から入力された楽音の基本周波数を決定する。また、周波数解析部は、基本周波数と重ならない周波数帯域を選択する。なお、周波数帯域の選択は、周波数解析部で行う必要はなく、データ選択部51で行ってもよい。
【0077】
データ選択部51は、データ記憶部12に記憶される複数の矩形波のデータのうち、選択周波数帯域の周波数スペクトルで構成されるテンポ音を出力する矩形波のデータを選択する。また、データ選択部51は、第2の実施形態と同様に、その矩形波のデータを発音データの一部として矩形パルス出力部13に出力する。
【0078】
図9は、第3の実施形態に係るデータ選択部について説明する図である。
図9のテーブルにおいて、左から、音入力部に入力される音(入力音)、入力音に対応して出力されるテンポ音(出力テンポ音)を示す。また、入力音は、入力される音の基本周波数(Hz)で示す。テンポ音において、選択される周波数スペクトルの帯域(選択周波数帯域(Hz))と、選択周波数帯域を出力するために設定されるパルス幅及びパルス間隔の範囲(パルス幅とパルス間隔の範囲(ms))を示す。
【0079】
図9において、例えば200〜500Hzの周波数帯域に含まれる基本周波数の入力音が入力されたとする。
この場合、選択周波数帯域は、200Hz〜1kHzが選択される。この選択周波数帯域は、周波数帯域と重ならないように設定されている。
【0080】
また、選択周波数帯域を設定するためには、対応する複数のパルス幅と複数のパルス間隔の範囲を設定する。すなわち、選択周波数帯域のテンポ音を発音するために、所定のパルス幅及びパルス間隔の範囲内の複数のパルス幅及び複数のパルス間隔を配列する矩形波のデータで構成される発音データを電気信号に変換する。
【0081】
図9において、対応するパルス幅とパルス間隔の範囲は0.5〜2.5msである。この範囲内の複数のパルス幅及び複数のパルス間隔を配列する矩形波のデータで構成される発音データを電気信号に変換する。この電気信号をテンポ音に変換した場合、テンポ音は、200Hz〜1kHzの周波数帯域の周波数スペクトルで構成される。
【0082】
この場合、テンポ音は、入力音に紛れにくい音となる。すなわち、第1の実施例の効果に加え、テンポ音を任意の音に設定することができ、楽器ごとに認識しやすい音を選択することができる。
【0083】
また、周波数解析部は、音入力部61から入力された楽音の基本周波数を決定するのではなく、入力された楽音の周波数帯域を決定するものであってもよい。周波数帯域は、例えば入力音を複数入力し、そのうち最も高い音高の音の基本周波数から最も低い音高の基本周波数までの範囲を含む周波数帯域を決定する。
【0084】
この場合、周波数解析部は、楽音の周波数帯域と重ならない周波数帯域を選択する。なお、周波数帯域の選択は、周波数解析部で行う必要はなく、データ選択部51で行ってもよい。
【0085】
なお、パルス幅とパルス間隔の範囲は、
図9に限定されず、様々な範囲が設定されていてもよい。この場合、データ記憶部12は、対応する複数の矩形波のデータで構成される発音データを備える必要がある。
【0086】
また、本実施形態により、ユーザーの手間をかけずに、入力音に応じた聞き取りやすいテンポ音を発生させることができる。演奏中に使用すれば、メトロノームの音が自動的に聞き取りやすい音に変更されるため、一曲を通してメトロノームの音が楽器の基音や倍音に紛れにくくなる。演奏中のメトロノームの音の変化が気になる場合は、あらかじめ楽器の音を入力して入力音に応じたテンポ音を自動で設定し、テンポ音を固定することもできる。
【0087】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
また、本発明は、電子式メトロノームであって、本発明に係るテンポ音発生装置と、テンポの情報を表示する表示部を備えるものであってもよい。