特許第5909419号(P5909419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909419
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】プロジェクタ型前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20160412BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20160412BHJP
   F21S 8/10 20060101ALI20160412BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20160412BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160412BHJP
【FI】
   F21S8/12 141
   F21V5/04 650
   F21S8/10 170
   F21W101:10
   F21Y101:02
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-163970(P2012-163970)
(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-26741(P2014-26741A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597073645
【氏名又は名称】ナルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】安在 俊達
(72)【発明者】
【氏名】中矢 喜昭
(72)【発明者】
【氏名】坂上 典久
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−54484(JP,A)
【文献】 特開2009−199938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
F21S 8/10
F21V 5/04
F21W 101/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、前記投影レンズの後側焦点面よりも後方側に配置された光源ユニットと、を備えたプロジェクタ型前照灯において、
前記投影レンズは、前記光軸上に配置された二枚の樹脂レンズで構成されており、
前記光源ユニットは、前記二枚の樹脂レンズを介して前方に照射されて明暗境界線を含む配光パターンを形成するための光源像を、前記投影レンズの後側焦点面又はその近傍に形成するように構成されており、
前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面には、回折格子が設けられており、
前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの光源側のレンズ面は、正のパワーを持ち、
前記回折格子は、前記二枚の樹脂レンズを介して前方へ照射される前記光源ユニットからの光の色収差を打ち消すように設計されていることを特徴とするプロジェクタ型前照灯。
【請求項2】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、前記投影レンズの後側焦点面よりも後方側に配置された光源ユニットと、を備えたプロジェクタ型前照灯において、
前記投影レンズは、前記光軸上に配置された三枚の樹脂レンズで構成されており、
前記光源ユニットは、前記三枚の樹脂レンズを介して前方に照射されて明暗境界線を含む配光パターンを形成するための光源像を、前記投影レンズの後側焦点面又はその近傍に形成するように構成されており、
前記三枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニットから最も遠くに配置された第1樹脂レンズと最も前記光源ユニット寄りに配置された第3樹脂レンズとがそれぞれ正のパワーを有し、
前記三枚の樹脂レンズのうち前記第1樹脂レンズと前記第3樹脂レンズとの間に配置された第2樹脂レンズの反光源側のレンズ面には、回折格子が設けられており、
前記回折格子は、前記三枚の樹脂レンズを介して前方へ照射される前記光源ユニットからの光の色収差を打ち消すように設計されていることを特徴とするプロジェクタ型前照灯。
【請求項3】
前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズは、前記光源ユニットから遠くに配置された樹脂レンズよりも、肉厚が薄く成形されていることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ型前照灯。
【請求項4】
前記第2樹脂レンズは、前記第1樹脂レンズ及び前記第3樹脂レンズよりも、肉厚が薄く成形されていることを特徴とする請求項2に記載のプロジェクタ型前照灯。
【請求項5】
前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面は、前記光源ユニットから遠くに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面よりも形状変化が小さい面とされており、
前記回折格子は、前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面に設けられていることを特徴とする請求項1又は3に記載のプロジェクタ型前照灯。
【請求項6】
前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面は、前記光軸に対して垂直な平面形状のレンズ面とされていることを特徴とする請求項5に記載のプロジェクタ型前照灯。
【請求項7】
前記第2樹脂レンズの反光源側のレンズ面は、前記光軸に対して垂直な平面形状のレンズ面とされており、
前記回折格子は、前記平面形状のレンズ面に設けられていることを特徴とする請求項2又は4に記載のプロジェクタ型前照灯。
【請求項8】
前記配光パターンは、水平方向に1列又はマトリックス状に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターンを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のプロジェクタ型前照灯。
【請求項9】
前記個別配光パターンは、各辺が明暗境界線である矩形配光パターンであることを特徴とする請求項8に記載のプロジェクタ型前照灯。
【請求項10】
前記回折格子は、前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面のうち、色にじみの原因となる光が透過する外周寄りの環状領域に設けられており、当該環状領域よりも内側の領域には設けられていないことを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ型前照灯。
【請求項11】
前記回折格子は、前記第2樹脂レンズの反光源側のレンズ面のうち、色にじみの原因となる光が透過する外周寄りの環状領域に設けられており、当該環状領域よりも内側の領域には設けられていないことを特徴とする請求項2に記載のプロジェクタ型前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ型前照灯に係り、特に、大径化(例えば、φ60mm以上)しても、格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線近傍の色にじみを改善することができる樹脂レンズを用いたプロジェクタ型前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタ型前照灯やダイレクトプロジェクション型(直射型)前照灯のように、投影レンズを介して前方に照射される光により明暗境界線(カットオフラインとも称される)を含む所定配光パターンを形成するように構成された車両用前照灯(いわゆるヘッドランプ)においては、投影レンズの色収差に起因して、明暗境界線近傍に色にじみ(色割れとも称される)が発生することが知られている。特に、樹脂製の投影レンズの場合、ガラス製の投影レンズと比べ、分散が大きいため、色収差に起因する色にじみが顕著に発生する。
【0003】
この色にじみを改善するため、従来、投影レンズに、色収差を打ち消すように設計された回折格子(ブレーズ型の回折格子)を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
屈折光学素子(例えば、プロジェクタ型前照灯に用いられる一般的な投影レンズ)と回折光学素子(例えば、回折格子)とは分散特性が逆である。すなわち、屈折光学素子では短波長の光(青系の波長の光)が良く曲がり、長波長の光(赤系の波長の光)は曲がりにくいが、回折光学素子では逆に長波長の光(赤系の波長の光)が良く曲がり、短波長(青系の波長の光)は曲がりにくいという特性がある。また、回折光学素子には、格子周期を変えると回折する方向が変わり、格子周期が小さい方が回折する量(回折角)が大きいという特性もある。
【0005】
以上の特性に基づき、回折格子の格子形状を、位相差関数等の公知の手法を用いて適切に設計することで、投影レンズを介して前方へ照射される光の色収差を打ち消すことができ、所定配光パターン中の明暗境界線近傍に発生する色にじみを抑制できる。
【0006】
ところで、プロジェクタ型前照灯やダイレクトプロジェクション型前照灯の場合、明るさ(最高光度値)を向上するためには、投影レンズを大径化することが有効である。従来、プロジェクタ型前照灯やダイレクトプロジェクション型前照灯に用いられる投影レンズはガラス材料で製造されていたが、この場合、投影レンズの大径化に伴い重量が増大する。
【0007】
近年、光源として半導体発光素子を用いる車両用前照灯においては、光源としてハロゲン電球やHID電球を用いる場合と比べ、光源の温度が下がることから、軽量化を目的として、投影レンズの樹脂成形化が進んでおり、上記特許文献1に記載の投影レンズも樹脂成形することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2009/028686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の投影レンズは一枚のレンズで構成されているため、これを樹脂成形すると、次の課題を生ずる。
【0010】
すなわち、特許文献1に記載の投影レンズは一枚のレンズで構成されているため、これを大径(例えば、φ60mm以上)の一枚の樹脂レンズとして射出成形すると、肉厚差(レンズ中央部とレンズ周辺部との間の光軸方向の肉厚差)が大きくなり、これ起因して成形時のヒケ、変形が問題となり、成形精度が悪化する。その結果、回折格子の格子形状を維持するのが難しく、所定配光パターン中の明暗境界線近傍の色にじみを改善するのが難しくなる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、大径化(例えば、φ60mm以上)しても、格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線近傍の色にじみを改善することができる樹脂レンズを用いたプロジェクタ型前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、前記投影レンズの後側焦点面よりも後方側に配置された光源ユニットと、を備えたプロジェクタ型前照灯において、前記投影レンズは、前記光軸上に配置された二枚の樹脂レンズで構成されており、前記光源ユニットは、前記二枚の樹脂レンズを介して前方に照射されて明暗境界線を含む配光パターンを形成するための光源像を、前記投影レンズの後側焦点面又はその近傍に形成するように構成されており、前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面には、回折格子が設けられており、前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの光源側のレンズ面は、正のパワーを持ち、前記回折格子は、前記二枚の樹脂レンズを介して前方へ照射される前記光源ユニットからの光の色収差を打ち消すように設計されていることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、投影レンズは二枚の樹脂レンズで構成されている。これにより、次の利点を生ずる。第1に、投影レンズを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズの肉厚差(レンズ中央部とレンズ周辺部との間の光軸方向の肉厚差)を小さくできる。このため、投影レンズを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズの成形時のヒケ、変形に起因する成形精度の悪化を抑制することができる。その結果、投影レンズを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、投影レンズ(二枚の樹脂レンズ)を大径化(例えば、¢60mm以上)しても、回折格子の格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線近傍の色にじみを改善することが可能となる。第2に、投影レンズを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズの肉厚を薄くできるため、成形時間を短くできる。第3に、投影レンズを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、投影レンズを大径化できるため、光度、光量を向上できる。さらに、個々の樹脂レンズを透明樹脂で成形するため、個々のレンズをガラス材料で成形する場合と比べ、プロジェクタ型前照灯の軽量化を実現できるという利点もある。
【0014】
また、請求項1に記載の発明によれば、回折格子は二枚の樹脂レンズのうち光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面に設けられている。回折格子を光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズに設ける利点は、次の通りである。すなわち、回折格子を光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズに設けると、回折格子を光源側のレンズ面に設ける場合と比べ、回折格子のエッジ部に入射する光が少なくなるため、回折格子に入射する光線の方向を回折ロスの少ない(迷光の少ない)方向にすることができ、回折ロス(迷光)の発生を低減できる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、前記投影レンズの後側焦点面よりも後方側に配置された光源ユニットと、を備えたプロジェクタ型前照灯において、前記投影レンズは、前記光軸上に配置された三枚の樹脂レンズで構成されており、前記光源ユニットは、前記三枚の樹脂レンズを介して前方に照射されて明暗境界線を含む配光パターンを形成するための光源像を、前記投影レンズの後側焦点面又はその近傍に形成するように構成されており、前記三枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニットから最も遠くに配置された第1樹脂レンズと最も前記光源ユニット寄りに配置された第3樹脂レンズとがそれぞれ正のパワーを有し、前記三枚の樹脂レンズのうち前記第1樹脂レンズと前記第3樹脂レンズとの間に配置された第2樹脂レンズの反光源側のレンズ面には、回折格子が設けられており、前記回折格子は、前記三枚の樹脂レンズを介して前方へ照射される前記光源ユニットからの光の色収差を打ち消すように設計されていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、投影レンズは三枚の樹脂レンズで構成されている。これにより、次の利点を生ずる。第1に、投影レンズを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズの肉厚差(レンズ中央部とレンズ周辺部との間の光軸方向の肉厚差)を小さくできる。このため、投影レンズを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズの成形時のヒケ、変形に起因する成形精度の悪化を抑制することができる。その結果、投影レンズを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、投影レンズ(三枚の樹脂レンズ)を大径化(例えば、φ60mm以上)しても、回折格子の格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線近傍の色にじみを改善することが可能となる。第2に、投影レンズを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズの肉厚を薄くできるため、成形時間を短くできる。第3に、投影レンズを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、投影レンズを大径化できるため、光度、光量を向上できる。さらに、個々の樹脂レンズを透明樹脂で成形するため、個々のレンズをガラス材料で成形する場合と比べ、プロジェクタ型前照灯の軽量化を実現できるという利点もある。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、回折格子は三枚の樹脂レンズのうち第1樹脂レンズと第3樹脂レンズとの間に配置された第2樹脂レンズの反光源側のレンズ面に設けられている。回折格子を第2樹脂レンズの反光源側のレンズ面に設ける利点は、次の通りである。すなわち、回折格子を第2樹脂レンズの反光源側のレンズ面に設けると、回折格子を光源側のレンズ面に設ける場合と比べ、回折格子のエッジ部に入射する光が少なくなるため、回折格子に入射する光線の方向を回折ロスの少ない(迷光の少ない)方向にすることができ、回折ロス(迷光)の発生を低減できる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズは、前記光源ユニットから遠くに配置された樹脂レンズよりも、肉厚が薄く成形されていることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、回折格子は二枚の樹脂レンズのうち肉厚が薄い方の樹脂レンズに設けられている。回折格子を肉厚が薄い方の樹脂レンズに設ける利点は、次の通りである。すなわち、肉厚が厚い方の樹脂レンズと比べ、肉厚が薄い方の樹脂レンズの方が、成形時のヒケ、変形に起因する成形精度の悪化を抑制することができる。したがって、回折格子を肉厚が薄い方の樹脂レンズに設けることで、投影レンズ(二枚の樹脂レンズ)を大径化(例えば、¢60mm以上)しても、回折格子の格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第2樹脂レンズは、前記第1樹脂レンズ及び前記第3樹脂レンズよりも、肉厚が薄く成形されていることを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、回折格子は三枚の樹脂レンズのうち第1樹脂レンズ及び第3樹脂レンズよりも肉厚が薄い方の第2樹脂レンズに設けられている。回折格子を肉厚が薄い方の第2樹脂レンズに設ける利点は、次の通りである。すなわち、肉厚が厚い方の第1樹脂レンズ、第3樹脂レンズと比べ、肉厚が薄い方の第2樹脂レンズの方が、成形時のヒケ、変形に起因する成形精度の悪化を抑制することができる。したがって、回折格子を肉厚が薄い方の第2樹脂レンズに設けることで、投影レンズ(三枚の樹脂レンズ)を大径化(例えば、φ60mm以上)しても、回折格子の格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は3に記載の発明において、前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面は、前記光源ユニットから遠くに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面よりも形状変化が小さい面とされており、前記回折格子は、前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面に設けられていることを特徴とする。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、回折格子は、光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面(光源ユニットから遠くに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面よりも形状変化が小さい面)に設けられている。回折格子が設けられるレンズ面を形状変化が小さい面とする利点は、次の通りである。すなわち、回折格子を用いた樹脂レンズでは、回折形状(ブレーズ)を加工するときに出来る加工R、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による加工ロスに起因する加工精度の劣化、成形における転写精度の劣化により、効率ロス(回折ロス)や設計回折次数以外の他の回折次数の回折光が発生し、迷光(フレア、グレア)量が増大する。この間題は、回折格子が設けられるレンズ面を、光源ユニットから遠くに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面よりも形状変化が小さい面とすることで、抑制される。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面は、前記光軸に対して垂直な平面形状のレンズ面とされていることを特徴とする。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、回折格子は光軸に対して垂直な平面形状(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)のレンズ面に設けられている。回折格子が設けられるレンズ面を平面形状の面とする利点は、次の通りである。すなわち、回折格子を用いた樹脂レンズでは、回折形状(ブレーズ)を加工するときに出来る加工R、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による加工ロスに起因する加工精度の劣化、成形における転写精度の劣化により、効率ロス(回折ロス)や設計回折次数以外の他の回折次数の回折光が発生し、迷光(フレア、グレア)量が増大する。この間題は、回折格子が設けられるレンズ面を、光軸に対して垂直な平面形状(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)とすることで、抑制される。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項2又は4に記載の発明において、前記第2樹脂レンズの反光源側のレンズ面は、前記光軸に対して垂直な平面形状のレンズ面とされており、前記回折格子は、前記平面形状のレンズ面に設けられていることを特徴とする。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、回折格子は光軸に対して垂直な平面形状(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)のレンズ面に設けられている。回折格子が設けられるレンズ面を平面形状の面とする利点は、次の通りである。すなわち、回折格子を用いた樹脂レンズでは、回折形状(ブレーズ)を加工するときに出来る加工R、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による加工ロスに起因する加工精度の劣化、成形における転写精度の劣化により、効率ロス(回折ロス)や設計回折次数以外の他の回折次数の回折光が発生し、迷光(フレア、グレア)量が増大する。この問題は、回折格子が設けられるレンズ面を、光軸に対して垂直な平面形状(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)とすることで、抑制される。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の発明において、前記配光パターンは、水平方向に1列又はマトリックス状に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターンを含むことを特徴とする。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、水平方向に1列又はマトリックス状に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターンそれぞれの結像性を維持しながら、複数の個別配光パターンそれぞれの明暗境界線近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記個別配光パターンは、各辺が明暗境界線である矩形配光パターンであることを特徴とする。
【0031】
請求項9に記載の発明によれば、水平方向に1列又はマトリックス状に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の矩形配光パターンそれぞれの結像性を維持しながら、複数の矩形配光パターンそれぞれの各辺を構成する明暗境界線近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記回折格子は、前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面のうち、色にじみの原因となる光が透過する外周寄りの環状領域に設けられており、当該環状領域よりも内側の領域には設けられていないことを特徴とする。
【0033】
請求項10に記載の発明のように、回折格子を設ける範囲を制限することの利点は、次の通りである。すなわち、回折格子を設ける範囲を外周寄りの環状領域に制限することで、回折ロスの発生範囲を最小限にし、効率を向上するとともに迷光を低減できるとともに、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による回折格子加工精度の劣化を緩和できる。
【0034】
請求項11に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記回折格子は、前記二枚の樹脂レンズのうち前記光源ユニット寄りに配置された樹脂レンズの反光源側のレンズ面のうち、色にじみの原因となる光が透過する外周寄りの環状領域に設けられており、当該環状領域よりも内側の領域には設けられていないことを特徴とする。
【0035】
請求項11に記載の発明のように、回折格子を設ける範囲を制限することの利点は、次の通りである。すなわち、回折格子を設ける範囲を外周寄りの環状領域に制限することで、回折ロスの発生範囲を最小限にし、効率を向上するとともに迷光を低減できるとともに、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による回折格子加工精度の劣化を緩和できる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、大径化(例えば、φ60mm以上)しても、格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線近傍の色にじみを改善することができる樹脂レンズを用いたプロジェクタ型前照灯を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】車両用灯具ユニット10の斜視図である。
図2】(a)車両用灯具ユニット10の正面図、(b)図2(a)に示した車両用灯具ユニット10のA−A断面図、(c)図2(a)に示した車両用灯具ユニット10のB−B断面図である。
図3】(a)特開2011-249080号公報に記載の光源ユニットにより形成される配光パターン例、(b)特開2009-70679号公報に記載の光源ユニットにより形成される配光パターン例である。
図4】投影レンズ20の分解斜視図である。
図5図2(a)に示した車両用灯具ユニット10中の投影レンズ20のA−A断面図である。
図6】(a)回折格子24cを反光源側のレンズ面S3に設けた場合の、回折格子24cのエッジ部24d(段差部)に、光源ユニット30からの光が入射する様子を表す図、(b)回折格子24cを光源側のレンズ面S4に設けた場合の、回折格子24cのエッジ部24d(段差部)に、光源ユニット30からの光が入射する様子を表す図である。
図7】(a)回折格子24cが設けられるレンズ面S3を平面(接線角度の小さい面0deg)とした場合の加工ロス(図7(a)中ハッチング領域参照)を表す図、(b)回折格子24cが設けられるレンズ面S3を接線角度の大きい面30degとした場合の加工ロス(図7(b)中ハッチング領域参照)を表す図である。
図8】投影レンズ20Aを構成する三枚の樹脂レンズ(第1樹脂レンズ22A、第2樹脂レンズ24A、第3樹脂レンズ26A)と光源ユニット30との配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態である車両用灯具ユニット10(本発明のプロジェクタ型前照灯に相当)について、図面を参照しながら説明する。
【0039】
図1は車両用灯具ユニット10の斜視図、図2(a)は車両用灯具ユニット10の正面図、図2(b)は図2(a)に示した車両用灯具ユニット10のA−A断面図、図2(c)は図2(a)に示した車両用灯具ユニット10のB−B断面図である。
【0040】
図1図2に示すように、車両用灯具ユニット10は、プロジェクタ型前照灯(いわゆるヘッドランプ)に用いられるいわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の灯具ユニットで、車両前後方向に延びる光軸AX上に配置された投影レンズ20、投影レンズ20の後側焦点面よりも後方側に配置された光源ユニット30等を備えている。
【0041】
投影レンズ20は、光軸AX上に一定間隔をおいて配置された二枚の樹脂レンズ(第1樹脂レンズ22、第2樹脂レンズ24)で構成されている。投影レンズ20(二枚の樹脂レンズ22、24)は、支持部材40に固定された鏡筒42に保持されて、光軸AX上に配置されている。鏡筒42の先端側内周面には、周方向に延びる段差部42aが形成されている。この段差部42aは、投影レンズ20を収容、保持するために用いられる。
【0042】
投影レンズ20は、第2樹脂レンズ24が段差部42aに当接するまで、鏡筒42内に挿入されて、当該鏡筒42に、ネジ、接着剤、スナップフィット構造等の公知の手段で固定されている。
【0043】
光源ユニット30は、投影レンズ20(二枚の樹脂レンズ22、24)を介して前方に照射されて明暗境界線を含む配光パターンを形成するための光源像を、投影レンズ20の後側焦点面(又はその近傍)に形成するように構成された光源ユニットで、支持部材40(放熱部材兼支持部材)に固定されている。この光源ユニット30としては、例えば、特開2011-249080号公報、特開2009-70679号公報に記載のものを用いることが可能である。
【0044】
投影レンズ20は、その後側焦点面上に光源ユニット30が形成する光源像を、反転像として車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前方約25mに配置されている)上に投影する。これにより、図3(a)、図3(b)に示すような、配光パターンが形成される。
【0045】
図3(a)は光源ユニット30として特開2011-249080号公報に記載の光源ユニットを用いた場合に形成される配光パターン例で、この配光パターンは、水平方向に1列に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターンA〜Aにより構成されている。個々の個別配光パターンA〜Aは、各辺が明暗境界線E1〜E4である矩形配光パターンとされている。
【0046】
図3(b)は光源ユニット30として特開2009-70679号公報に記載の光源ユニットを用いた場合に形成される配光パターン例で、この配光パターンは、水平方向に1列に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターンR1〜R4(又はL1〜L4)により構成されている。個々の個別配光パターンR1〜R4(又はL1〜L4)は、各辺が明暗境界線E1〜E4である矩形配光パターンとされている。
【0047】
なお、水平方向に1列に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターン(例えば、各辺が明暗境界線である矩形配光パターン)に限られず、例えば、マトリックス状に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターン(例えば、各辺が明暗境界線である矩形配光パターン)であってもよい。
【0048】
なお、光源ユニット30の光源は、LED(発光ダイオード)やLD(レーザーダイオード)等の半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせた白色光源であってもよいし、ハロゲン電球、HID電球等のバルブ光源であってもよい。
【0049】
第1樹脂レンズ22は、大径(φ60mm以上。例えば、φ70mm)かつ正のパワーの樹脂レンズで、図1図2に示すように、反光源側のレンズ面S1、光源側のレンズ面S2を含んでおり、光源ユニット30から遠くに配置されている。なお、正のパワーのレンズとは、焦点距離が正である(集光に作用する)レンズを意味する。本実施形態では、反光源側のレンズ面S1及び光源側のレンズ面S2が共に、正のパワーのレンズ面として形成されている。
【0050】
第2樹脂レンズ24は、大径(φ60mm以上。例えば、φ70mm)かつ正のパワーの樹脂レンズで、図1図2に示すように、反光源側のレンズ面S3、光源側のレンズ面S4を含んでおり、光源ユニット30寄りに配置されている(肉厚:例えば、最大23mm)。なお、本実施形態では、反光源側のレンズ面S3は略平面、光源側のレンズ面S4は、正のパワーのレンズ面として形成されている。
【0051】
各樹脂レンズ22、24の焦点距離(単位mm)の例を、次の表に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
各レンズ面の曲率(単位1/mm)の例を、次の表に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
図4は投影レンズ20の分解斜視図、図5図2(a)に示した車両用灯具ユニット10中の投影レンズ20のA−A断面図である。
【0056】
図4図5に示すように、第2樹脂レンズ24は、その周囲から第1樹脂レンズ22側に延びる筒部24aを含んでいる。筒部24aの先端側内周面には、周方向に延びる段差部24bが形成されている。この段差部24bは、第1樹脂レンズ22を収容、保持するために用いられる。第1樹脂レンズ22は、光源側のレンズ面S2のうち外周領域(リング状の領域)が、段差部24bに当接するまで筒部24a内に挿入されて、当該筒部24aに、ネジ、接着剤、スナップフィット構造等の公知の手段で固定されている。
【0057】
第1樹脂レンズ22及び第2樹脂レンズ24はそれぞれ、金型に、アクリル樹脂(PMMA)等の透明樹脂を注入し、冷却、固化させることで成形されている。
【0058】
第1樹脂レンズ22の反光源側のレンズ面S1は、光学系の開口を大きくするために(照明効率を大きくするために)、レンズ面S1〜S4の中で一番大きな正パワーのレンズ面とされている(上記表2参照)。なお、レンズ面の正のパワーとは、反光源側のレンズ面の場合、レンズ面の曲率の符号が正であることを意味し、光源側のレンズ面の場合、レンズ面の曲率の符号が負であることを意味する。
【0059】
投影レンズ20には、回折格子24c(DOE:Diffractive Optical Element)が設けられている(図4中ハッチング領域参照)。
【0060】
投影レンズを介して前方に照射される光により明暗境界線(カットオフラインとも称される)を含む所定配光パターンを形成するように構成されたプロジェクタ型前照灯においては、投影レンズの色収差に起因して、明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍に色にじみ(色割れとも称される)が発生することが知られている。特に、投影レンズが樹脂製の場合、ガラス製の場合と比べ、分散が大きいため、色収差に起因する色にじみが顕著に発生する。回折格子24cは、この色収差を打ち消すために用いられる。
【0061】
回折格子24cは、例えば、同心円状のブレーズ型の回折格子(断面が鋸歯状)である。図6(a)は、ブレーズ型の回折格子24cの断面図で、説明の便宜上、実際の回折格子よりも大きく描いてある。このブレーズ型の回折格子は、例えば、位相差関数等の公知の手法(例えば、国際公開第2009/028686号参照)を用いて設計できる。
【0062】
屈折光学素子(例えば、第1樹脂レンズ22)と回折光学素子(例えば、回折格子24c)とは分散特性が逆である。すなわち、屈折光学素子では短波長の光(青系の波長の光)が良く曲がり、長波長の光(赤系の波長の光)は曲がりにくいが、回折光学素子では逆に長波長の光(赤系の波長の光)が良く曲がり、短波長(青系の波長の光)は曲がりにくいという特性がある。また、回折光学素子には、格子周期を変えると回折する方向が変わり、格子周期が小さい方が回折する量(回折角)が大きいという特性もある。
【0063】
以上の特性に基づき、回折格子24cの格子形状を適切に設計することで、二枚の樹脂レンズ22、24を介して前方へ照射される光源ユニット30からの光の色収差を打ち消すことができ、明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0064】
なお、回折格子24cは、二枚の樹脂レンズ22、24を介して前方へ照射される光源ユニット30からの光の色収差を打ち消すように設計されていればよく、ブレーズ型の回折格子に限られず、その他構造の回折格子であってもよい。
【0065】
回折格子24cは二枚の樹脂レンズ22、24のうち肉厚が薄い方の第2樹脂レンズ24に設けられている。回折格子24cを肉厚が薄い方の第2樹脂レンズ24に設ける利点は、次の通りである。
【0066】
すなわち、肉厚が厚い方の第1樹脂レンズ22と比べ、肉厚が薄い方の第2樹脂レンズ24の方が、成形時のヒケ、変形に起因する成形精度の悪化を抑制することができる。したがって、回折格子24cを肉厚が薄い方の第2樹脂レンズ24に設けることで、投影レンズ20(二枚の樹脂レンズ22、24)を大径化(例えば、φ60mm以上)しても、回折格子24cの格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0067】
回折格子24cは、第2樹脂レンズ24の反光源側のレンズ面S3に設けられている。回折格子24cを第2樹脂レンズ24の反光源側のレンズ面S3に設ける利点は、次の通りである。すなわち、回折格子24cを第2樹脂レンズ24の反光源側のレンズ面S3に設けると、回折格子24cを第2樹脂レンズ24の光源側のレンズ面S4に設ける場合と比べ、回折格子24cのエッジ部24d(段差部)に入射する光が少なくなるため、回折格子24cに入射する光線の方向を回折ロスの少ない(迷光の少ない)方向にすることができ、回折ロス(迷光)の発生を低減できる。
【0068】
この利点について、図6(a)、図6(b)を参照しながら説明する。図6(a)は回折格子24cを反光源側のレンズ面S3に設けた場合の、回折格子24cのエッジ部24d(段差部)に、光源ユニット30からの光が入射する様子を表す図、図6(b)は回折格子24cを光源側のレンズ面S4に設けた場合の、回折格子24cのエッジ部24d(段差部)に、光源ユニット30からの光が入射する様子を表す図である。図6(a)と図6(b)とを対比すると、回折格子24cを、反光源側のレンズ面S3に設ける方が(図6(a)参照)、回折格子24cのエッジ部24d(段差部)に入射する光源ユニット30からの光が少なくなることが分かる。
【0069】
図2(b)、図2(c)に示すように、光源ユニット30寄りに配置された第2樹脂レンズ24の反光源側のレンズ面S3は、光源ユニット30から遠くに配置された第1樹脂レンズ22の反光源側のレンズ面S1よりも形状変化が小さい面とされている。なお、形状変化が小さいとは、接線角度の変化が小さいことを意味する。具体的には、図5等に示すように、光源ユニット30寄りに配置された第2樹脂レンズ24の反光源側のレンズ面S3(回折格子24cが設けられるレンズ面S3)は、光軸AXに対して垂直な平面形状の面(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)とされている。回折格子24cが設けられるレンズ面S3を平面形状の面とする利点は、次の通りである。
【0070】
すなわち、回折格子24cは、超硬合金等の母材を、ダイヤモンドバイト等の加工工具を用いて切削加工して金型を作り、この金型に、アクリル樹脂(PMMA)等の透明樹脂を注入し、冷却、固化させることで成形される。
【0071】
回折格子を用いた樹脂レンズ(例えば、第2樹脂レンズ24)では、設計回折次数(通常、1次回折光)の光量が多くなり、迷光となる他の回折次数の回折光の光量が少なくなるように回折格子24cの格子形状が定められる。
【0072】
しかしながら、回折格子を用いた樹脂レンズ(例えば、第2樹脂レンズ24)では、回折形状(ブレーズ)を加工するときに出来る加工R、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による加工ロスに起因する加工精度の劣化、成形における転写精度の劣化により、効率ロス(回折ロス)や設計回折次数以外の他の回折次数の回折光が発生し、迷光(フレア、グレア)量が増大する。この問題は、回折格子24cが設けられるレンズ面S3を、光軸AXに対して垂直な平面形状(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)とすることで、抑制される。
【0073】
この利点について、図7(a)、図7(b)を参照しながら説明する。図7(a)は回折格子24cが設けられるレンズ面S3を平面(接線角度の小さい面0deg)とした場合の加工ロス(図7(a)中ハッチング領域参照)を表し、図7(b)は回折格子24cが設けられるレンズ面S3を接線角度の大きい面30degとした場合の加工ロス(図7(b)中ハッチング領域参照)を表している。図7(a)と図7(b)とを対比すると、回折格子24cを、平面(接線角度の小さい面0deg)に施す方が(図7(a)参照)、加工ロスが少なくなり、当該加工ロスに起因する回折ロスや迷光を抑制できることが分かる。
【0074】
回折格子24cは、第2樹脂レンズ24の反光源側のレンズ面S3のうち、色にじみの原因となる光が透過する外周寄りの環状領域(図4中、ハッチング領域参照)に設けられており、当該環状領域よりも内側の領域には設けられていない。このように、回折格子24cを設ける範囲を制限することの利点は、次の通りである。すなわち、回折格子24cを設ける範囲を第2樹脂レンズ24の反光源側のレンズ面S3のうち外周寄りの環状領域に制限することで、回折ロスの発生範囲を最小限にし、効率を向上するとともに迷光を低減できるとともに、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による回折格子加工精度の劣化を緩和できる。
【0075】
第2樹脂レンズ24の光源側のレンズ面S4は、光源ユニット30から回折格子24cへ入射する光の入射角度を小さくするため、正のパワーのレンズ面とされている。
【0076】
上記構成の投影レンズ20は、その後側焦点面上に光源ユニット30が形成する光源像を、反転像として車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前方約25mに配置されている)上に投影する。これにより、仮想鉛直スクリーン上に、水平方向に1列(又はマトリックス状)に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターン(例えば、図3(a)中の矩形配光パターンA〜A図3(b)中の矩形配光パターンR1〜R4(又はL1〜L4)参照)を含む配光パターンが形成される。
【0077】
この配光パターンは、上記構成の投影レンズ20の作用により、個々の矩形配光パターンそれぞれの結像性を維持しながら、個々の矩形配光パターンそれぞれの各辺を構成する明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみが改善されたものとなる。
【0078】
なお、透過率を上げるために、各レンズ面S1〜S4にARコート等の反射防止膜を施してもよい。また、配光パターンをぼかすために、各レンズ面S1〜S4のうち少なくとも1つのレンズ面(好ましくは第2樹脂レンズ24の表面側であるレンズ面S3等)にシボ加工やマイクロテクスチャー(微細な凹凸)等の加工を施してもよい。また、配光パターンを意図的に変形させる目的で、各レンズ面S1〜S4のうち少なくとも1つのレンズ面の一部を自由曲面にしてもよい。また、投影する配光パターンはすれ違いビームでもよいし、走行ビームでもよいし、その中間的なビームパターンでもよい。
【0079】
なお、本実施形態では、本発明のプロジェクタ型前照灯がいわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の車両用灯具ユニット10である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明のプロジェクタ型前照灯は、リフレクターとシェードとを有する一般的なプロジェクタ型の車両用灯具ユニットであってもよい。
【0080】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、投影レンズ20は二枚の樹脂レンズ22、24で構成されている。これにより、次の利点を生ずる。
【0081】
第1に、投影レンズ20を一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズ22、24の肉厚差(レンズ中央部とレンズ周辺部との間の光軸AX方向の肉厚差)を小さくできる。このため、投影レンズ20を一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズ22、24の成形時のヒケ、変形に起因する成形精度の悪化を抑制することができる。その結果、投影レンズ20を一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、投影レンズ20(二枚の樹脂レンズ22、24)を大径化(例えば、φ60mm以上)しても、回折格子24cの格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみを改善することが可能となる。第2に、投影レンズ20を一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズ22、24の肉厚を薄くできるため、成形時間を短くできる。第3に、投影レンズ20を一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、投影レンズ20を大径化できるため、光度、光量を向上できる。さらに、個々の樹脂レンズ22、24を透明樹脂で成形するため、個々のレンズ22、24をガラス材料で成形する場合と比べ、車両用灯具ユニット10の軽量化を実現できるという利点もある。
【0082】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、回折格子24cは二枚の樹脂レンズ22、24のうち光源ユニット30寄りに配置された第2樹脂レンズ24の反光源側のレンズ面S3に設けられている。これにより、回折格子24cのエッジ部24d(段差部)に入射する光が少なくなるため、回折格子24cに入射する光線の方向を回折ロスの少ない(迷光の少ない)方向にすることができ、回折ロス(迷光)の発生を低減できる。
【0083】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、回折格子24cは二枚の樹脂レンズ22、24のうち肉厚が薄い方の第2樹脂レンズ24に設けられている。これにより、次の利点を生ずる。すなわち、肉厚が厚い方の第1樹脂レンズ22と比べ、肉厚が薄い方の第2樹脂レンズ24の方が、成形時のヒケ、変形に起因する成形精度の悪化を抑制することができる。したがって、回折格子24cを肉厚が薄い方の第2樹脂レンズ24に設けることで、投影レンズ20(二枚の樹脂レンズ22、24)を大径化(例えば、φ60mm以上)しても、回折格子24cの格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0084】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、回折格子24cは光軸AXに対して垂直な平面形状(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)のレンズ面S3に設けられている。これにより、回折格子24cを平面形状以外のレンズ面に設ける場合と比べ、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による加工ロスを抑えることができる。その結果、加工ロスに起因する回折ロスや迷光を抑制することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、水平方向に1列又はマトリックス状に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターン(例えば、図3(a)中の矩形配光パターンA〜A図3(b)中の矩形配光パターンR1〜R4(又はL1〜L4)参照)それぞれの結像性を維持しながら、複数の個別配光パターンそれぞれの明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、回折格子24cを設ける範囲を第2樹脂レンズ24の反光源側のレンズ面S3のうち外周寄りの環状領域に制限することで、回折ロスの発生範囲を最小限にし、効率を向上するとともに迷光を低減できるとともに、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による回折格子加工精度の劣化を緩和できる。
【0087】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態として、三枚の樹脂レンズ(第1樹脂レンズ22A、第2樹脂レンズ24A、第3樹脂レンズ26A)で構成される投影レンズ20Aを用いた車両用灯具ユニット10A(本発明のプロジェクタ型前照灯に相当)について、図面を参照しながら説明する。
【0088】
図8は、投影レンズ20Aを構成する三枚の樹脂レンズ(第1樹脂レンズ22A、第2樹脂レンズ24A、第3樹脂レンズ26A)と光源ユニット30との配置を説明するための図である。
【0089】
車両用灯具ユニット10Aは、第1実施形態の車両用灯具ユニット10と比べ、三枚の樹脂レンズ(第1樹脂レンズ22A、第2樹脂レンズ24A、第3樹脂レンズ26A)で構成される投影レンズ20Aを用いている点が相違する。それ以外、第1実施形態の車両用灯具ユニット10と同様の構成である。以下、第1実施形態の車両用灯具ユニット10との相違点を中心に説明し、第1実施形態の車両用灯具ユニット10と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0090】
投影レンズ20Aは、光軸AX上に一定間隔をおいて配置された三枚の樹脂レンズ(第1樹脂レンズ22A、第2樹脂レンズ24A、第3樹脂レンズ26A)で構成されている。投影レンズ20A(三枚の樹脂レンズ22A、24A、26A)は、第1実施形態と同様、支持部材に固定された鏡筒(いずれも図示せず)に保持されて、光軸AX上に配置されている。
【0091】
光源ユニット30は、投影レンズ20A(三枚の樹脂レンズ22A、24A、26A)を介して前方に照射されて明暗境界線を含む配光パターンを形成するための光源像を、投影レンズ20Aの後側焦点面(又はその近傍)に形成するように構成された光源ユニットで、第1実施形態と同様、支持部材に固定されている。この光源ユニット30としては、例えば、特開2011-249080号公報、特開2009-70679号公報に記載のものを用いることが可能である。
【0092】
投影レンズ20Aは、その後側焦点面上に光源ユニット30が形成する光源像を、反転像として車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前方約25mに配置されている)上に投影する。これにより、図3(a)、図3(b)に示すような、配光パターンが形成される。
【0093】
第1樹脂レンズ22Aは、大径(φ60mm以上。例えば、φ70mm)かつ正のパワーの樹脂レンズで、図8に示すように、反光源側のレンズ面S1、光源側のレンズ面S2を含んでおり、光源ユニット30から最も遠くに配置されている。なお、正のパワーのレンズとは、焦点距離が正である(集光に作用する)レンズを意味する。本実施形態では、反光源側のレンズ面S1は正のパワーのレンズ面、光源側のレンズ面S2は負のパワーのレンズ面として形成されている。
【0094】
第2樹脂レンズ24Aは、大径(φ60mm以上。例えば、φ70mm)かつ正のパワーの樹脂レンズで、図8に示すように、反光源側のレンズ面S3、光源側のレンズ面S4を含んでおり、第1樹脂レンズ22Aと第3樹脂レンズ26Aとの間に配置されている。本実施形態では、反光源側のレンズ面S3は略平面、光源側のレンズ面S4は正のパワーのレンズ面として形成されている。
【0095】
第3樹脂レンズ26Aは、大径(φ60mm以上。例えば、φ70mm)かつ正のパワーの樹脂レンズで、図8に示すように、反光源側のレンズ面S5、光源側のレンズ面S6を含んでおり、最も光源ユニット30寄りに配置されている。第3樹脂レンズ26Aは、正のパワーにすることで、光源ユニット30から回折格子24cへ入射する光の入射角度を低減してある(肉厚:例えば、最大15mm)。本実施形態では、反光源側のレンズ面S5及び光源側のレンズ面S6が共に、正パワーのレンズ面として形成されている。
【0096】
各樹脂レンズ22A、24A、26Aの焦点距離(単位mm)の例を、次の表に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
各レンズ面の曲率(単位1/mm)の例を、次の表に示す。
【0099】
【表4】
【0100】
第1樹脂レンズ22A、第2樹脂レンズ24A及び第3樹脂レンズ26Aはそれぞれ、金型に、アクリル樹脂(PMMA)等の透明樹脂を注入し、冷却、固化させることで成形されている。
【0101】
第1樹脂レンズ22Aの反光源側のレンズ面S1は、光学系の開口を大きくするために(照明効率を大きくするために)、レンズ面S1〜S6の中で一番大きな正パワーのレンズ面とされている(上記表4参照)。なお、レンズ面の正のパワーとは、反光源側のレンズ面の場合、レンズ面の曲率の符号が正であることを意味し、光源側のレンズ面の場合、レンズ面の曲率の符号が負であることを意味する。
【0102】
投影レンズ20Aには、回折格子24c(DOE:Diffractive Optical Element)が設けられている。
【0103】
投影レンズを介して前方に照射される光により明暗境界線(カットオフラインとも称される)を含む所定配光パターンを形成するように構成されたプロジェクタ型前照灯においては、投影レンズの色収差に起因して、明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍に色にじみ(色割れとも称される)が発生することが知られている。特に、投影レンズが樹脂製の場合、ガラス製の場合と比べ、分散が大きいため、色収差に起因する色にじみが顕著に発生する。回折格子24cは、この色収差を打ち消すために用いられる。
【0104】
なお、回折格子24cは、三枚の樹脂レンズ22A、24A、26Aを介して前方へ照射される光源ユニット30からの光の色収差を打ち消すように設計されていればよく、ブレーズ型の回折格子に限られず、その他構造の回折格子であってもよい。
【0105】
回折格子24cは三枚の樹脂レンズ22A、24A、26Aのうち肉厚が最も薄い方の第2樹脂レンズ24Aに設けられている。回折格子24cを肉厚が最も薄い方の第2樹脂レンズ24Aに設ける利点は、次の通りである。
【0106】
すなわち、肉厚が厚い方の第1樹脂レンズ22A、第3樹脂レンズ26Aと比べ、肉厚が薄い方の第2樹脂レンズ24Aの方が、成形時のヒケ、変形に起因する成形精度の悪化を抑制することができる。したがって、回折格子24cを肉厚が最も薄い方の第2樹脂レンズ24Aに設けることで、投影レンズ20A(三枚の樹脂レンズ22A、24A、26A)を大径化(例えば、φ60mm以上)しても、回折格子24cの格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0107】
回折格子24cは、第2樹脂レンズ24Aの反光源側のレンズ面S3に設けられている。回折格子24cを第2樹脂レンズ24Aの反光源側のレンズ面S3に設ける利点は、次の通りである。すなわち、回折格子24cを第2樹脂レンズ24Aの反光源側のレンズ面S3に設けると、回折格子24cを第2樹脂レンズ24Aの光源側のレンズ面S4に設ける場合と比べ、回折格子24cのエッジ部24d(段差部)に入射する光が少なくなるため、回折格子24cに入射する光線の方向を回折ロスの少ない(迷光の少ない)方向にすることができ、回折ロス(迷光)の発生を低減できる。
【0108】
この利点について、図6(a)、図6(b)を参照しながら説明する。図6(a)と図6(b)とを対比すると、回折格子24cを、反光源側のレンズ面S3に設ける方が(図6(a)参照)、回折格子24cのエッジ部24d(段差部)に入射する光源ユニット30からの光が少なくなることが分かる。
【0109】
図8に示すように、光源ユニット30寄りに配置された第2樹脂レンズ24Aの反光源側のレンズ面S3は、光源ユニット30から遠くに配置された第1樹脂レンズ22Aの反光源側のレンズ面S1よりも形状変化が小さい面とされている。なお、形状変化が小さいとは、接線角度の変化が小さいことを意味する。具体的には、図8に示すように、光源ユニット30寄りに配置された第2樹脂レンズ24Aの反光源側のレンズ面S3(回折格子24cが設けられるレンズ面S3)は、光軸AXに対して垂直な平面形状の面(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)とされている。回折格子24cが設けられるレンズ面S3を平面形状の面とする利点は、次の通りである。
【0110】
すなわち、回折格子24cは、超硬合金等の母材を、ダイヤモンドバイト等の加工工具を用いて切削加工して金型を作り、この金型に、アクリル樹脂(PMMA)等の透明樹脂を注入し、冷却、固化させることで成形される。
【0111】
回折格子を用いた樹脂レンズ(例えば、第2樹脂レンズ24A)では、設計回折次数(通常、1次回折光)の光量が多くなり、迷光となる他の回折次数の回折光の光量が少なくなるように回折格子24cの格子形状が定められる。
【0112】
しかしながら、回折格子を用いた樹脂レンズ(例えば、第2樹脂レンズ24A)では、回折形状(ブレーズ)を加工するときに出来る加工R、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による加工ロスに起因する加工精度の劣化、成形における転写精度の劣化により、効率ロス(回折ロス)や設計回折次数以外の他の回折次数の回折光が発生し、迷光(フレア、グレア)量が増大する。この問題は、回折格子24cが設けられるレンズ面S3を、光軸AXに対して垂直な平面形状(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)とすることで、抑制される。
【0113】
この利点について、図7(a)、図7(b)を参照しながら説明する。図7(a)と図7(b)とを対比すると、回折格子24cを、平面(接線角度の小さい面0deg)に施す方が(図7(a)参照)、加工ロスが少なくなり、当該加工ロスに起因する回折ロスや迷光を抑制できることが分かる。
【0114】
回折格子24cは、第2樹脂レンズ24Aの反光源側のレンズ面S3のうち、色にじみの原因となる光が透過する外周寄りの環状領域に設けられており、当該環状領域よりも内側の領域には設けられていない。このように、回折格子24cを設ける範囲を制限することの利点は、次の通りである。すなわち、回折格子24cを設ける範囲を第2樹脂レンズ24Aの反光源側のレンズ面S3のうち外周寄りの環状領域に制限することで、回折ロスの発生範囲を最小限にし、効率を向上するとともに迷光を低減できるとともに、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による回折格子加工精度の劣化を緩和できる。
【0115】
第2樹脂レンズ24Aの光源側のレンズ面S4は、光軸AXに対して垂直な平面形状の面(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)とされている。
【0116】
上記構成の投影レンズ20Aは、その後側焦点面上に光源ユニット30が形成する光源像を、反転像として車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前方約25mに配置されている)上に投影する。これにより、仮想鉛直スクリーン上に、水平方向に1列(又はマトリックス状)に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターン(例えば、図3(a)中の矩形配光パターンA〜A図3(b)中の矩形配光パターンR1〜R4(又はL1〜L4)参照)を含む配光パターンが形成される。
【0117】
この配光パターンは、上記構成の投影レンズ20Aの作用により、個々の矩形配光パターンそれぞれの結像性を維持しながら、個々の矩形配光パターンそれぞれの各辺を構成する明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみが改善されたものとなる。
【0118】
なお、透過率を上げるために、各レンズ面S1〜S6にARコート等の反射防止膜を施してもよい。また、配光パターンをぼかすために、各レンズ面S1〜S6のうち少なくとも1つのレンズ面(好ましくは第2樹脂レンズ24Aの表面側であるレンズ面S3等)にシボ加工やマイクロテクスチャー(微細な凹凸)等の加工を施してもよい。また、配光パターンを意図的に変形させる目的で、各レンズ面S1〜S6のうち少なくとも1つのレンズ面の一部を自由曲面にしてもよい。また、投影する配光パターンはすれ違いビームでもよいし、走行ビームでもよいし、その中間的なビームパターンでもよい。
【0119】
なお、本実施形態では、本発明のプロジェクタ型前照灯がいわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の車両用灯具ユニット10Aである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明のプロジェクタ型前照灯は、リフレクターとシェードとを有する一般的なプロジェクタ型の車両用灯具ユニットであってもよい。
【0120】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニット10Aによれば、投影レンズ20Aは三枚の樹脂レンズ22A、24A、26Aで構成されている。これにより、次の利点を生ずる。
【0121】
第1に、投影レンズ20Aを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズ22A、24A、26Aの肉厚差(レンズ中央部とレンズ周辺部との間の光軸AX方向の肉厚差)を小さくできる。このため、投影レンズ20を一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズ22A、24A、26Aの成形時のヒケ、変形に起因する成形精度の悪化を抑制することができる。その結果、投影レンズ20Aを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、投影レンズ20A(三枚の樹脂レンズ22A、24A、26A)を大径化(例えば、φ60mm以上)しても、回折格子24cの格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみを改善することが可能となる。第2に、投影レンズ20を一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、個々の樹脂レンズ22A、24A、26Aの肉厚を薄くできるため、成形時間を短くできる。第3に、投影レンズ20Aを一枚の樹脂レンズで構成する場合と比べ、投影レンズ20Aを大径化できるため、光度、光量を向上できる。第4に、第2樹脂レンズ24Aをさらに薄くできるので、当該第2樹脂レンズ24Aの成形サイクルを短縮できる。さらに、個々の樹脂レンズ22A、24A、26Aを透明樹脂で成形するため、個々のレンズ22A、24A、26Aをガラス材料で成形する場合と比べ、車両用灯具ユニット10Aの軽量化を実現できるという利点もある。
【0122】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10Aによれば、回折格子24cは三枚の樹脂レンズ22A、24A、26Aのうち第1樹脂レンズ22Aと第3樹脂レンズ26Aとの間に配置された第2樹脂レンズ24Aの反光源側のレンズ面S3に設けられている。回折格子24cを第2樹脂レンズ24Aの反光源側のレンズ面S3に設ける利点は、次の通りである。すなわち、回折格子24cを第2樹脂レンズ24Aの反光源側のレンズ面S3に設けると、回折格子24cを光源側のレンズ面S4に設ける場合と比べ、回折格子24cのエッジ部24d(段差部)に入射する光が少なくなるため、回折格子24cに入射する光線の方向を回折ロスの少ない(迷光の少ない)方向にすることができ、回折ロス(迷光)の発生を低減できる。
【0123】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10Aによれば、回折格子24cは三枚の樹脂レンズ22A、24A、26Aのうち肉厚が最も薄い方の第2樹脂レンズ24Aに設けられている。これにより、次の利点を生ずる。すなわち、肉厚が厚い方の第1樹脂レンズ22A、第3樹脂レンズ26Aと比べ、肉厚が最も薄い方の第2樹脂レンズ24Aの方が、成形時のヒケ、変形に起因する成形精度の悪化を抑制することができる。したがって、回折格子24cを肉厚が最も薄い方の第2樹脂レンズ24Aに設けることで、投影レンズ20A(三枚の樹脂レンズ22A、24A、26A)を大径化(例えば、φ60mm以上)しても、回折格子24cの格子形状を維持することができ、所定配光パターン中の明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0124】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10Aによれば、回折格子24cは光軸AXに対して垂直な平面形状(平面又は形状変化が少なく接線角度が小さい平面に近い面)のレンズ面S3に設けられている。これにより、回折格子24cを平面形状以外のレンズ面に設ける場合と比べ、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による加工ロスを抑えることができる。その結果、加工ロスに起因する回折ロスや迷光を抑制することが可能となる。
【0125】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10Aによれば、水平方向に1列又はマトリックス状に配置され、かつ、個別に点消灯制御される複数の個別配光パターン(例えば、図3(a)中の矩形配光パターンA〜A図3(b)中の矩形配光パターンR1〜R4(又はL1〜L4)参照)それぞれの結像性を維持しながら、複数の個別配光パターンそれぞれの明暗境界線(例えば、図3(a)、図3(b)中の明暗境界線E1〜E4参照)近傍の色にじみを改善することが可能となる。
【0126】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10Aによれば、回折格子24cを設ける範囲を第2樹脂レンズ24の反光源側のレンズ面S3のうち外周寄りの環状領域に制限することで、回折ロスの発生範囲を最小限にし、効率を向上するとともに迷光を低減できるとともに、ダイヤモンドバイト等の加工工具の損耗による回折格子加工精度の劣化を緩和できる。
【0127】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0128】
10…車両用灯具ユニット、20…投影レンズ、22…第1樹脂レンズ、24…第2樹脂レンズ、24a…筒部、24b…段差部、24c…回折格子、24d…エッジ部(段差部)、30…光源ユニット、A〜A…個別配光パターン(矩形配光パターン)、R1〜R4(又はL1〜L4)…個別配光パターン(矩形配光パターン)、E1〜E4…明暗境界線
図1
図2
図3
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図6
図7
図8