【実施例1】
【0011】
本発明に係る冷蔵庫の第一実施形態を、
図1〜
図12を参照しながら説明する。
【0012】
図1は本実施形態の冷蔵庫の正面外形図である。
図2は本実施形態の冷蔵庫の庫内の構成を表す縦断面図である。
図3は本実施形態の冷蔵庫の冷蔵室の構成を表す正面図である。
図4は本実施形態の冷蔵庫の風路構成を表す模式図である。
図5は本実施形態の冷蔵庫の庫内送風機を表す図である。
図6は本実施形態の冷蔵庫の冷凍室ダンパを表す図である。
【0013】
図1に示すように本実施形態の冷蔵庫本体1は上方から、冷蔵室2、製氷室4及び上段冷凍室5、下段冷凍室6、野菜室8を備えている。なお、製氷室4と上段冷凍室5は、冷蔵室2と下段冷凍室6との間に左右に並べて設けている。冷蔵室2及び野菜室8は、一例として5℃程度の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室4、上段冷凍室5及び下段冷凍室6は、一例として−18℃から−20℃程度の冷凍温度帯の貯蔵室である(以下、製氷室4、上段冷凍室5、下段冷凍室6の総称を冷凍室7とする)。
【0014】
冷蔵室2は、前方側に左右に分割された観音開き型の冷蔵室扉2a、2bを備えている。製氷室4、上段冷凍室5、下段冷凍室6、野菜室8は、それぞれ引き出し式の製氷室扉4a、上段冷凍室扉5a、下段冷凍室扉6a、野菜室扉8aを備えている。
【0015】
図2に示すように、本実施形態の冷蔵庫の庫外と庫内は、外箱1aと内箱1bとの間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体50により隔てられている。また、本実施形態の冷蔵庫は背面に真空断熱材60を実装している(真空断熱材60の実装状態については後述)。
【0016】
冷蔵室扉2a、2bの貯蔵室内側には、複数の扉ポケット47a〜47cが備えられている。また、冷蔵室2内には複数の棚46a〜46f(棚46a、46dは
図3参照)を備えている。
【0017】
また、製氷室4、上段冷凍室5、下段冷凍室6及び野菜室8は、それぞれの貯蔵室の前方に備えられた扉4a、5a、6a、8aと一体に前後方向に移動する収納容器4b、5b、6b、8bを備えている。扉4a、5a、6a、8aは、それぞれ図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器4b、5b、6b、及び、8bが引き出せるようになっている。
【0018】
本実施形態の冷蔵庫は、
図2に示すように冷蔵室2と、上段冷凍室5及び製氷室4(
図1参照)とが上側断熱仕切壁51によって断熱的に隔てられ、下段冷凍室6と野菜室8とが下側断熱仕切壁52によって断熱的に隔てられている。なお、棚46fと上側断熱仕切壁51の間には、一例として−1〜1℃程度に維持されるチルド室3を備えている。したがって、本実施形態の冷蔵庫では、上側断熱仕切壁51の上方の貯蔵領域のうち、低温に維持されるチルド室3を除く領域が冷蔵温度帯の貯蔵室となる。なお、チルド室3を減圧状態に維持して食品の酸化を抑制する、減圧貯蔵室としてもよい。
【0019】
本実施形態の冷蔵庫は、
図2に示すように冷凍室7の背部に蒸発器収納室9を備え、蒸発器収納室9内には冷却手段として蒸発器21(一例として、フィンチューブ型熱交換器)を備えている。また、蒸発器21の上方には、送風手段として庫内送風機22を備えている。
【0020】
本実施形態の冷蔵庫の庫内送風機22は、
図5に示すように、外径が110mmの羽根91を中央のモータ収納部92内のモータ(図示せず)により駆動する軸流送風機(プロペラファン)である。なお、モータ収納部92は支持部93によってハウジング94と連結されている。また、吹き出し面積(π×[0.5×羽根外径]
2)は一例として9503.3mm
2である。
【0021】
また、
図2に示す通り、蒸発器収納室9の下方には、除霜ヒータ56が備えられている。蒸発器21及びその周辺の蒸発器収納室9の壁に成長した霜は、除霜ヒータ56に通電する除霜運転によって解かされる。霜が融解することで生じた除霜水は、蒸発器収納室9の下部に備えられた樋57に流入した後に、排水管58を介して機械室10に配された蒸発皿59に達する。蒸発皿59内の除霜水は、機械室10内に配設される圧縮機23及び凝縮器(図示せず)の発熱により蒸発する。
本実施形態の冷蔵庫は、機械室10内に配設された圧縮機23と、凝縮器(一例として、フィンチューブ型熱交換器)と、外箱1aと内箱1bの間であって外箱1a面に接するように配設された放熱パイプ(図示せず)と、断熱箱体10の上部断熱仕切壁51の前面や下部断熱仕切壁52の前面等に配設された結露抑制パイプ(図示せず)と、冷媒中の水分を乾燥吸湿するためのドライヤ(図示せず)と、キャピラリチューブ(図示せず)と、蒸発器21を冷媒管で順次接続することで冷凍サイクルを構成している。なお、冷媒はイソブタンである。
【0022】
図3に示すように、冷蔵室2の背面には、略中央に下方から上方に向かって延在する冷蔵室第一送風ダクト11a、冷蔵室第二送風ダクト11bを備えている。冷蔵室2背面左側の冷蔵室第一送風ダクト11aは、最上段の棚46a,46bより下方で、最下段の棚46fより上方の領域2d(
図2及び
図3参照)に冷気を吹き出す冷蔵室吹き出し口31a〜31cを備えている。なお、冷蔵室吹き出し口31aの開口面積は1000mm
2、冷蔵室吹き出し口31bの開口面積は500mm2、冷蔵室吹き出し口31cの開口面積は200mm
2である。また、冷蔵室2背面左側の冷蔵室第二送風ダクト11bは、棚46a、46bの上方の領域2c(
図2及び
図3参照)に吹き出す冷蔵室吹き出し口31d、31eを備えている。なお、冷蔵室吹き出し口31dの開口面積は500mm
2、31eの開口面積は500mm
2である。また、冷蔵室第一送風ダクト11a及び冷蔵室第二送風ダクト11bの最小流路断面積は、それぞれ1640mm
2及び1110mm
2である。
【0023】
ちなみに、棚46a〜46eは所定範囲で高さ位置を変更できるようになっている(なお、棚46fは固定)。したがって、 領域2c及び領域2dの大きさは変化するが、棚46a及び棚46bの可変範囲は、棚46a及び棚46bから上壁に至るそれぞれの距離(
図3中に示す高さH1及び高さH2)が、棚46a及び棚46bのそれぞれの奥行寸法より小さくなるようにしている。また、棚46a、46bの設置高さを最も低くした状態における領域2cの容積は50L、領域2dの容積は140L、扉ポケット47b,47cや製氷水タンク55が設置されている領域2eの容積は40Lである。
【0024】
冷蔵室2への送風を制御する冷蔵室ダンパ24(風路抵抗制御手段)は、
図3に示すように、上側断熱仕切壁51の後方投影領域内に備えられている。これにより食品収納スペースの減少を抑えてダンパを実装できる。
また、
図6に示すように、冷蔵室ダンパ24は、モータ収納部81の左右に開口82a、82bを備えている。開口82aと開口82bは、開閉板83a、83bによって開閉される。具体的には、モータ収納部81内に設置されたステッピングモータ(図示せず)によって開閉板83a、83bは、それぞれ開角度0度の全閉鎖状態から開角度90度の全開放状態の範囲で制御できるようになっている。以下冷蔵室ダンパ24の機能のうち、開口82aの開閉状態を制御する機能を冷蔵室第一ダンパ24a、開口82bの開閉状態を制御する機能を冷蔵室第二ダンパ24bとする。
【0025】
図3に示すように、冷蔵室第一ダンパ24a及び冷蔵室第二ダンパ24bは、それぞれ冷蔵室第一送風ダクト11a、及び、冷蔵室第二送風ダクト11bの入口に備えられて、冷蔵室第一送風ダクト11a、及び、冷蔵室第二送風ダクト11bへの送風が制御される。
【0026】
図2及び
図3に示すように、最下段の棚46fと下から二段目の棚46dにより区画された領域の背部には、主として領域2dの負荷を検知する冷蔵室第一温度センサ41a(温度検知手段)が備えられている。また、冷蔵室2の上壁には、主として領域2cの負荷を検知する冷蔵室第二温度センサ41b(温度検知手段)が備えられている。さらに、棚46fと上側断熱仕切壁51により区画された領域の背部(チルド室3の背部)には、チルド室温度センサ42(温度検知手段)が備えられている。なお、冷蔵室第一温度センサ41a、冷蔵室第二温度センサ41b、チルド室温度センサ42は、比較的流速が高い冷気が直接当たらない場所に設置することで検知精度を高めている。
【0027】
また、冷凍室7の背部と、野菜室8の背部には、それぞれ冷凍室温度センサ43と、野菜室温度センサ44が備えられている(
図2参照)。
【0028】
なお、棚46fと上側断熱仕切壁51により区画された領域の左端には製氷用の水を貯留する製氷水タンク55が備えられている。製氷水タンク55内の水は、ポンプ(図示せず)を駆動することにより、配管(図示せず)を介して製氷室4内に備えられた製氷皿(図示せず)に供給される。
【0029】
図7は本実施形態の冷蔵庫に実装している真空断熱材を表す図である。
図8は真空断熱材の実装状態を表す図(
図2における領域A近傍の拡大図)である。
【0030】
図7に示すように真空断熱材60は、芯材61(一例としてグラスウール)を、吸着剤62(一例として合成ゼオライト)と共に圧縮密閉し、外包材64(アルミ蒸着フィルム層を含むラミネートフィルム)内に挿入し、真空引き後、端部を熱溶着することで製造される。したがって、真空断熱材の端部には、
図7に示す熱溶着部60aが存在するが、本実施形態の冷蔵庫では
図8に示すように熱溶着部60aを、庫内側(発泡断熱材側)に折り返して固定した後に、発泡断熱材を内箱1bと外箱1aとの間に充填して、断熱箱体50を形成している。したがって、真空断熱材60は、外周に熱溶着部60aを折り返した折り返し部60bを有する。なお、本実施例では真空断熱材60を外箱1a内面にホットメルト等の接着剤によって貼付しているが、これに限るものではない。例えば、内箱1b内面に貼付する構成や、内箱1bと外箱1aに支持部材を介して配置する構成であってもよく、いずれの構成であっても、熱溶着部60aを庫内側(発泡断熱材側)に折り返して配置する。
【0031】
なお、内袋63(一例としてポリエチレン)内に芯材61を収納して仮圧縮状態として外包材64内に収納した後、内袋63及び外包材64内を圧縮密封する構成とすれば、芯材61の取り扱い性が向上して、製造工程を効率化できる。
【0032】
図3中に破線で示すように、真空断熱材60は冷蔵庫の背面断熱壁内に実装されるが、外周には上述の折り返し部60b(内側の破線と外側の破線で囲まれる領域)を有する。
本実施形態の冷蔵庫では、
図3に示す通り、冷蔵室第一送風ダクト11aを後方の真空断熱材60に投影した際に、冷蔵室第一送風ダクト11a端部から真空断熱材60の端部に至る最短距離Lを100mmとしている。また、冷蔵室第一送風ダクト11aは真空断熱材60の折り返し部60bよりも内側に収まるようにしている。これにより、真空断熱材60の外包材64における金属層を通じて熱が伝わる、いわゆるヒートブリッジ現象による影響が、冷蔵室第一送風ダクト11aに及ばないように抑制できる。詳細は後述する。
【0033】
次に
図4と、適宜
図2及び
図3を参照しながら、本実施形態の冷蔵庫の冷気循環経路について説明する。
【0034】
図4に示すように、蒸発器21と熱交換した冷気は、庫内送風機22によって昇圧され、冷蔵室第一ダンパ24aが開放状態では、冷蔵室第一送風ダクト11aを流れて冷蔵室吹き出し口31a〜31cから冷蔵室内の領域2d(
図2及び
図3参照)に吹き出す。領域2dに吹き出した冷気は、扉ポケット47b、47cや製氷水タンク55が設置されている領域2e(
図2及び
図3参照)、チルド室3を流れて、冷蔵室戻り口35に至る。一方、冷蔵室第二ダンパ24bが開放状態では、冷蔵室第二送風ダクト11bを流れて冷蔵室吹き出し口31d、31eから冷蔵室内の領域2c(
図2及び
図3参照)に吹き出す。
領域2cに吹き出した冷気は、扉ポケット47b、47cや製氷水タンク55が設置されている領域2e(
図2及び
図3参照)、チルド室3を流れて、冷蔵室戻り口35に至る。
【0035】
領域2c、2d、2e及びチルド室3を冷却した冷気は、冷蔵室戻り口35から冷蔵室戻りダクト15(一例として最小流路断面積1700mm
2)に入り、蒸発器収納室9に至って再び蒸発器21と熱交換する。
次に、冷凍室ダンパ26が開放状態では、庫内送風機22によって昇圧された冷気は、冷凍室送風ダクト13を流れて冷凍室吹き出し口33a〜33c(
図2参照)から冷凍室7に吹き出す。冷凍室7を冷却した冷気は、冷凍室戻り口36から蒸発器収納室9に戻って再び蒸発器21と熱交換する。
【0036】
野菜室ダンパ27が開放状態では、庫内送風機22によって昇圧された冷気は、野菜室送風ダクト14を流れて野菜室吹き出し口34から野菜室8に吹き出す。野菜室8を冷却した冷気は、野菜室戻り口37から野菜室戻りダクト17に入り、蒸発器収納室9に至って再び蒸発器21と熱交換する。
【0037】
次に本実施形態の冷蔵庫の庫内送風機の特性と、庫内各風路の風路抵抗について
図9〜
図11を参照しながら説明する。
【0038】
図9はダンパの開閉状態の組み合わせを表す図であり、
図10は、庫内送風機22の風量−静圧特性と動作点の関係を示す図である。また、
図11は庫内送風機22から吹き出される空気の吹き出し流れを示す模式図である。
【0039】
冷気循環経路の風路抵抗はダンパの開閉状態によって変化する。本実施形態の冷蔵庫は、冷蔵室第一ダンパ24a、冷蔵室第二ダンパ24b、冷凍室ダンパ26、野菜室ダンパ27を備え、それぞれが開放状態と閉鎖状態の2つの状態を取ることから、ダンパの開閉状態の組み合わせは16通りとなる。
図9は、これらのうち、冷蔵室第一ダンパ24a、または、冷蔵室第二ダンパ24bの少なくとも一方が開放状態で、冷蔵室2への送風が行われる状態となる組み合わせを示している。
【0040】
図9に示すように、冷蔵室2への送風が行われる状態は状態1〜状態12の12通りあり、各状態における冷気循環経路の風路抵抗をR1〜R12とする。なお、「風路抵抗の大きさ」欄は、R1〜R12に関して、風路抵抗が小さい順に1〜12の番号を付けている。すなわち、R1〜R12の大小関係は、「R6<R12<R4<R10<R5<R11<R3<R9<R1<R7<R2<R8」となる。
【0041】
図10は、庫内送風機22の風量−静圧特性と、
図9中に示す状態1〜状態6とした際の動作点を示す図である。
【0042】
庫内送風機22の風量−静圧特性は、
図10中に示す通り、大風量側に勾配が上昇から下降に転じる極大点、小風量側に勾配が下降から上昇に転じる極小点を有する。これは一般的な軸流送風機に見られる特性であり、静圧が0の開放点から風量を減少させていくと、所定風量に到達した時点で羽根から流れが剥離する失速が生じる。失速が生じる点を失速点と呼び、一般には風量−静圧特性の極大点が失速点とみなされる。失速点より風量を減少させると、静圧が低下する領域(右上がり特性域)が現れ、極小点に至った後に再び遠心作用で静圧が上昇し、風量が0の締切点に至る。また、開放点から極大点に至るまでの大風量側では、
図11(a)中に矢印で示すように庫内送風機22からの吹き出される空気は軸方向に流れ、極小点から締切点に至る小風量側では、
図11(b)中に矢印で示すように庫内送風機22からの吹き出される空気は径方向(遠心方向)に広がって流れる。したがって、以下では、開放点から極大点までを「軸流域」、極大点から極小点までを「右上がり特性域」、極小点から締切点までを「遠心流域」と呼ぶことにする。
【0043】
図10に示す状態1〜状態6における抵抗R1〜R6の抵抗曲線と、庫内送風機22の風量−静圧特性曲線との交点が各状態における動作点となる。したがって、各ダンパを状態1〜状態6とした場合の風量は、
図10中に示すQ1〜Q6となり、何れの動作点も遠心流域となる。また、風量の大小関係は「Q6>Q4>Q5>Q3>Q1>Q2」となる。ちなみに、
図10中では省略したが、抵抗R7〜R12の風量をQ7〜Q12として、風量の大小関係を示すと、「Q6>Q12>Q4>Q10>Q5>Q11>Q3>Q9>Q1>Q7>Q2>Q8」となる。すなわち、各状態の風路抵抗の大きさが小さい順に、風量が大きくなる傾向となる。
【0044】
本実施形態の冷蔵庫は、冷蔵室2、チルド室3、冷凍室7や野菜室8の温度設定をする温度設定器等(図示せず)を備えており、冷蔵庫本体1の上壁の上部後方側にはCPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御基板49が配置されている(
図2参照)。制御基板49は、前記した冷蔵室第一温度センサ41a、冷蔵室第二温度センサ41b、チルド室温度センサ42、冷凍室温度センサ43、野菜室温度センサ44、及び、冷蔵室扉2aや庫内に設けられた温度設定器等と接続される。
【0045】
圧縮機23のON/OFF、冷蔵室ダンパ24、冷凍室ダンパ26、及び野菜室ダンパ27を稼動するそれぞれのアクチュエータ(図示せず)の制御、庫内送風機22のON/OFF制御や回転速度制御、扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御は、ROMに予め搭載されたプログラムにより行われて、これらによって制御装置が構成される。
【0046】
次に、本実施形態の冷蔵庫の制御について
図12を参照しながら説明する。
【0047】
図12は本実施形態の冷蔵庫の冷却運転中の制御を表す制御フローチャートである。本実施形態の冷蔵庫は、電源の投入により圧縮機23が駆動して冷却運転が開始する(スタート)。ここでは、庫内が十分冷えるまでの制御状態については省略し、庫内が十分冷却され、圧縮機23が停止している状態から圧縮機23が駆動する条件が満足した時点から説明を開始する。圧縮機23の駆動条件が満足した場合(圧縮機23の駆動条件については後述)、圧縮機23及び庫内送風機22が駆動し(ステップS101)、冷蔵室第一ダンパ24aの開放条件が成立しているか否かが判定される(ステップS102)。本実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室第一ダンパ24aの開放条件は、「圧縮機23停止状態、冷蔵室第一温度センサ41a検知温度がTr1_a以上(本実施形態の冷蔵庫ではTr1_a=3℃)」、または、「圧縮機23駆動状態、冷凍室ダンパ26閉鎖状態、冷蔵室第一温度センサ41a検知温度がTr1_a以上」、または、「圧縮機23駆動状態、冷凍室ダンパ26開放状態、冷蔵室第一温度センサ41a検知温度がTr1_b以上(本実施形態の冷蔵庫ではTr1_b=7℃)」の場合に成立する。ステップS102が成立した場合(Yes)、冷蔵室第一ダンパ24aが開放され(ステップS103)、冷蔵室2内の領域2d(
図2または
図3参照)に冷気が送られる。
【0048】
続いて、冷蔵室第二ダンパ24bの開放条件が成立しているか否かが判定される(ステップS104)。本実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室第二ダンパ24bの開放条件は、「圧縮機23停止状態、冷蔵室第二温度センサ41b検知温度がTr2_a以上(本実施形態の冷蔵庫ではTr2_a=4℃)」、または、「圧縮機23駆動状態、冷凍室ダンパ26閉鎖状態、冷蔵室第二温度センサ41b検知温度がTr2_a以上」、または、「圧縮機23駆動状態、冷凍室ダンパ26開放状態、冷蔵室第二温度センサ41b検知温度がTr2_b以上(本実施形態の冷蔵庫ではTr2_b=8℃)」の場合に成立する。ステップS104が成立した場合(Yes)、冷蔵室第二ダンパ24bが開放され(ステップS105)、冷蔵室2内の領域2c(
図2または
図3参照)に冷気が送られる。
【0049】
次に、冷蔵室第一ダンパ24aの閉鎖条件が成立しているか否かが判定される(ステップS106)。本実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室第一ダンパ24aの閉鎖条件は、「冷蔵室第一温度センサ41a検知温度がTr1_c以下(本実施形態の冷蔵庫ではTr1_c=2℃)」、または、「チルド室温度センサ42検知温度がTc_a以下(本実施形態の冷蔵庫ではTc_a=−1℃)」の場合に成立する。ステップS106が成立した場合(Yes)、冷蔵室第一ダンパ24aが閉鎖される(ステップS107)。
【0050】
続いて、冷蔵室第二ダンパ24bの閉鎖条件が成立しているか否かが判定される(ステップS108)。本実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室第二ダンパ24bの閉鎖条件は、「冷蔵室第二温度センサ41b検知温度がTr2_c以下(本実施形態の冷蔵庫ではTr2_c=3℃)」、または、「チルド室温度センサ42検知温度がTc_a以下」の場合に成立する。ステップS108が成立した場合(Yes)、冷蔵室第二ダンパ24bが閉鎖される(ステップS109)。
【0051】
次に、冷凍室ダンパ26の開放条件が成立しているか否かが判定される(ステップS110)。本実施形態の冷蔵庫では、冷凍室ダンパ26の開放条件は、「圧縮機23駆動状態、冷蔵室第一ダンパ24a閉鎖状態、冷蔵室第二ダンパ24b閉鎖状態」、または、「圧縮機駆動状態、冷凍室温度センサ43検知温度がTf_a以上(本実施形態の冷蔵庫ではTf_a=−14℃)」の場合に成立する。ステップS110が成立した場合(Yes)、冷凍室ダンパ26が開放され、冷凍室7に冷気が送られる(ステップS111)。
【0052】
続いて、庫内送風機22の停止条件が成立しているか否かが判定される(ステップS112)。本実施形態の冷蔵庫では、庫内送風機22の停止条件は、「圧縮機23停止状態、冷蔵室第一ダンパ24a閉鎖状態、冷蔵室第二ダンパ24b閉鎖状態」の場合に成立する。ステップS112が成立した場合(Yes)、庫内送風機22が停止される。
【0053】
次に、圧縮機23の停止条件が成立しているか否かが判定される(ステップS114)。本実施形態の冷蔵庫では、圧縮機23の停止条件は、「冷凍室温度センサ43検知温度がTf_b以下(本実施形態の冷蔵庫ではTf_b=−20℃)」の場合に成立する。ステップS114が成立しない場合(No)、再びステップS102の判定に戻る。
【0054】
ステップS114が成立した場合(Yes)、圧縮機23が停止し、冷凍室ダンパ26が閉鎖される(ステップS115)。続いて圧縮機23の駆動条件が成立するか否かが判定される(ステップS116)。本実施形態の冷蔵庫では、圧縮機23の駆動条件は、「冷凍室温度センサ43検知温度がTf_c以上(本実施形態の冷蔵庫ではTf_c=−16℃)」の場合に成立する。ステップS116が成立しない場合(No)、再びステップS102の判定に戻る。また、ステップS116が成立した場合(Yes)、ステップS101によって圧縮機23、庫内送風22が駆動して、ステップS102の判定に移る。
【0055】
なお、以上の制御フローでは、野菜室ダンパ26の動作の説明を省略したが、本実施形態の冷蔵庫において野菜室ダンパ26は、冷蔵室第一ダンパ24a、または、冷蔵室第二ダンパ24bの開放と連動して開放され、野菜室温度センサ44の検知温度が下限温度Tv(本実施形態の冷蔵庫ではTv=3℃)より低くなった場合に閉鎖される。
【0056】
以上で、本実施形態の冷蔵庫の構成を説明したが、以下では、本実施形態の冷蔵庫の奏する効果について説明する。
【0057】
本実施形態の冷蔵庫は、冷蔵室第一ダンパ24a、または、冷蔵室第二ダンパ24bの少なくとも一方が開放状態時には、動作点が庫内送風機22の風量−静圧特性における極小点より小風量側(遠心流域)になるようにしている(
図10参照)。これにより、冷却効率の高い冷蔵庫を提供することができる。理由を以下で説明する。
【0058】
本実施形態の冷蔵庫は、冷蔵室2への送風経路として独立した冷蔵室第一送風ダクト11aと第冷蔵室第二送風ダクト11bを備えており、主に冷蔵室第一送風ダクト11aによって冷却される領域2dに温度を検知する冷蔵室第一温度センサ41aと、主に冷蔵室第二送風ダクト11bによって冷却される領域2cに温度を検知する冷蔵室第二温度センサ42bを備える。冷蔵室第一温度センサ41aと冷蔵室第二温度センサ42bの検知温度に基づいて、冷蔵室第一ダンパ24a、冷蔵室第二ダンパ24bの開閉状態を制御している(
図12参照)。これによって、冷蔵室2内の領域2cと領域2d(
図2または
図3参照)は、送風量が過大であれば、短時間で冷却が完了し、送風量が過小であれば、冷却時間は延びるが確実に所定値まで冷却できる。すなわち、領域2c、領域2dに関しては、送風量によらず冷却の過不足がなくなるため高効率な冷却状態が得られる。一方で、冷蔵室第一ダンパ24aと冷蔵室第二ダンパ24bの何れを開放状態としても共通に冷気が通過する領域2eは、冷蔵室第一ダンパ24aと冷蔵室第二ダンパ24bの何れか一方でも開放された状態であれば冷却されるため、送風状態を切り替えることで冷却の過不足を抑制することができない。例えば、領域2eへの送風量が過大になると、領域2cあるいは領域2dが十分冷却された時点で、領域2eは過剰に冷却された状態となり、送風量が過小になると領域2cあるいは領域2dが十分冷却された時点で、領域2eは冷却不足の状態となる。特に、本実施形態の冷蔵庫のように、製氷水タンク55を共通に冷気が通過する領域2eに備える場合は、領域2eが過剰に冷却されると、製氷水タンク55内の水が凍結する場合がある。したがって、製氷水タンク55内の凍結を防止するためにヒータ等による加熱を要するため、その分熱負荷が増加して冷却効率が低下する。
【0059】
そこで、共通に冷気が通過する領域2eを過不足なく冷却できる送風量となるように、冷蔵室第一ダンパ24a、冷蔵室第二ダンパ24bを開放した状態における冷気循環経路の風路抵抗や庫内送風機22の回転速度を調整することが求められる。
【0060】
一般に、庫内送風機の風量−静圧特性と風路抵抗(
図10における抵抗曲線)により定まる動作点が安定していれば、送風量は庫内送風機の回転速度に比例するため、回転速度を変えることで容易に送風量を調整できる。
【0061】
一方、動作点が大きく変化する場合は、庫内送風機の回転速度と送風量の関係が変化するため、所定の送風量を得ることが難しくなる。従来の冷蔵庫(例えば特許文献1あるいは特許文献2に記載の冷蔵庫)では、以下に述べる理由により、冷気循環経路の動作点が大きく変化することがあり、それに伴う冷却効率の低下が問題となっていた。
【0062】
軸流送風機は、一般に、失速点より大風量側の軸流域(
図10参照)で使用する送風機である。したがって、比較のために、まず、冷気循環経路の風路抵抗を小さく抑えて、動作点が軸流域となるように風路を構成する場合について説明する。
【0063】
冷蔵庫では、冷却運転中に蒸発器に霜が成長するため、風路抵抗は霜の成長に伴って次第に増加することが避けられない。このとき、動作点を軸流域とするために風路抵抗が小さく抑えられていると、蒸発器に成長した霜に起因する風路抵抗の増加度合いが大きくなり、霜の成長に伴って動作点が大きく小風量側に変化する。したがって、冷蔵室第一ダンパ24aと冷蔵室第二ダンパ24bの何れを開放状態としても共通に冷気が通過する領域2eへの送風量が大きく変化して、冷却効率の低下を招く。
【0064】
そこで、本実施形態の冷蔵庫のように、風路抵抗を比較的大きくして、動作点が遠心流域となるように風路を構成した場合、霜が成長しても、ベースとなる風路抵抗が比較的大きいために、霜の成長に起因する風路抵抗の増加度合いは相対的に小さくなる。したがって、風量の減少度合いは小さくなるため、冷蔵室第一ダンパ24aと冷蔵室第二ダンパ24bの何れを開放状態としても共通に冷気が通過する領域2eの冷却効率の低下を抑制できる。
【0065】
また、軸流域と遠心流域の間の右上がり特性域は動作が不安定となることがある。したがって、一般に、安定した送風量を得るためには避けることが望ましいが、動作点が軸流域となるように風路を構成した場合、霜の成長に伴って風路抵抗が増加して、右上がり特性域に動作点が入ることで領域2eへの安定した送風量が得られなくなる事態に至ることがある。
【0066】
したがって、本実施形態の冷蔵庫のように、動作点が遠心流域となるようにすれば、霜の成長に伴って風路抵抗が増加しても、風量の減少度合いは小さく抑えられ、また、動作が不安定となることがある右上がり特性域に入ることも避けられるため、冷蔵室第一ダンパ24aと冷蔵室第二ダンパ24bの何れを開放状態としても共通に冷気が通過する領域2eを過不足なく冷却できる冷却効率の高い冷蔵庫となる。
【0067】
なお、動作点が遠心流域にあることは、例えば、以下のように判別すれば良い。
【0068】
はじめに、庫内送風機単体の風量−静圧特性を、JISB8330:2000に則って測定する。次に、冷蔵庫の風量を測定する。
図13は本実施形態の冷蔵庫の冷蔵室戻り口35を流れる風量を測定している状態を表す模式図である。
【0069】
図13に示すように、冷蔵室扉2a、2bを開放して、ダクト100が冷蔵室戻り口35を覆うように設置し、ダクト100の内部の圧力と外部の圧力(大気圧)の差圧を測定する第一差圧計103と、上流側と下流側の差圧に基づいて風量を算出できるオリフィス102と、オリフィス102の上流側と下流側の差圧を測定する第二差圧計104と、オリフィスの上流側に送風機101によって構成される風量測定装置を用いて風量を測定する。具体的には、第一差圧計103の差圧がゼロになるように送風機101を調整して、その際の第二差圧計104に基づいて冷蔵室戻り口35を流れる風量を測定することができる。なお、冷蔵室扉2a、2bは開放状態となるが、第一差圧計の差圧がゼロとなるように調整しているので、冷蔵室扉2a、2bを閉鎖した状態とほぼ同等の状態とみなせる。ちなみに、オリフィス102と、送風機101を
図13に記載の設置状態から反転させてダクト100内の空気を吸い出すようにすることで、吹き出し口から吹き出される風量を測定することもできる。例えば、冷蔵室第一送風ダクト11aの吹き出し口31a〜31cからの送風を導くようにダクト100を設置して、第一差圧計103の差圧がゼロになるように送風機101を調整すれば、第二差圧計104の差圧に基づいて冷蔵室第一送風ダクト11aからの吹き出し風量を測定することもできる。なお、ここでは、絞り機構による風量測定方法の一例を説明したが、例えば熱式流量計等の他の手段を用いて風量を測定しても良い。
【0070】
以上の方法によって、送風機単体の風量−静圧特性と、冷蔵庫の動作風量とが明らかとなるので、両者から、動作点が遠心流域となるか否かを実用上十分な精度で判別することができる。
【0071】
なお、軸流送風機の単体性能において、極大点と極小点が明確に現れなかった場合、次のようにして遠心流域であることを確認できる。
【0072】
軸流送風機は、一般に、軸流域では軸方向に流れが吹き出し、遠心流域では径方向に流れが吹き出す(
図11参照)。したがって、極大点と極小点が明確に現れない風量−静圧特性を有する送風機の場合は、吹き出し流れの変化によって軸流域と遠心流域を判別できる。具体的には、
図11中に示すように、軸流送風機22の羽根外周の前縁91aの前方から45度傾斜した仮想面(円錐台面)を考え、面の内側(前方)を前方領域、面の外側を径方向領域として、前方領域に流れが吹き出す場合は動作点が軸流域にあり、径方向領域に流れが吹き出す場合には遠心流域に動作点があると判定する。したがって、例えば、送風機単体の風量−静圧特性の測定とともに、羽根外周の前縁91aから一定距離の子午面上の風速を測定して、風速の最大値を示す点が前方領域に入る場合は軸流域、径方向領域に入る場合は遠心流域と判定すればよい。ちなみに、送風機から吹き出される風速は、軸方向成分、径方向(遠心方向)成分、及び、周方向成分を有している。したがって、例えば無指向性の風速計で測定すると、これらの成分が合成された風速が計測されるが、軸方向に向かう流れが相対的に小さくなり、径方向に向かう流れが形成される遠心流域にあることは判別が可能である。
【0073】
本実施形態の冷蔵庫は、背面断熱壁内に真空断熱材60を備え、冷蔵室第一送風ダクト11aを後方の真空断熱材60に投影した際に、冷蔵室第一送風ダクト11a端部から真空断熱材60の端部に至る最短距離Lを50mm以上(本実施形態の冷蔵庫はL=100mm)離間させるようにしている。この状態で、冷蔵室第一送風ダクト11aに送風する冷蔵室第一ダンパ24aを開放状態、冷蔵室第二送風ダクト12aに送風する冷蔵室第二ダンパ24bを閉鎖状態とする運転モードを実施する(
図3及び
図12参照)。これにより、冷却効率の高い冷蔵庫を提供することができる。理由を以下で説明する。
【0074】
本実施形態の冷蔵庫の真空断熱材60(
図7参照)のように、熱伝導率が高い金属層を含む外包材(本実施形態の冷蔵庫ではアルミ蒸着フィルム層を含むラミネートフィルム)により覆われた真空断熱材は、外周から50mm未満の領域は、外包材を介して熱が多く移動するために断熱性能が低くなる、いわゆるヒートブリッジ領域となる。したがって、ヒートブリッジ領域の前方にダクトを配設すると、熱損失が大きくなり冷却効率が低下する。したがって、ヒートブリッジ領域の前方にダクトを配設しないように配慮することが望ましい。しかしながら、冷蔵室内の冷却を良好に行うためには、所定位置までダクトで冷気を導くことが必要となる。特に、自然対流によって冷気が届き難くなる冷蔵室の上方の領域(本実施形態の冷蔵庫における領域2c)に確実に冷気を届けるためには、ダクトを冷蔵室の上部にまで配置させる必要がある。これに伴って、ヒートブリッジ領域の前方にダクトが配設されることとなる。
【0075】
そこで、本実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室第一送風ダクト11aを後方の真空断熱材60に投影した際に、冷蔵室第一送風ダクト11a端部から真空断熱材60の端部に至る最短距離Lを50mm以上離間させるようにして、冷蔵室第一送風ダクト11aを熱損失が小さい高断熱風路として、領域2cの冷却を行う必要がない状態では、冷蔵室第一送風ダクト11aに送風する冷蔵室第一ダンパ24aを開放状態、冷蔵室第二送風ダクト12aに送風する冷蔵室第二ダンパ24bを閉鎖状態とする運転モードを実施することで、ヒートブリッジによる熱損失を抑えた冷却効率が高い冷蔵庫となる。
【0076】
また、背面断熱壁内に真空断熱材60を備え、冷蔵室第一送風ダクト11aを後方の真空断熱材60に投影した際に、真空断熱材60の折り返し部60bの内側の領域に冷蔵室第一送風ダクト11aが収まるように構成して、冷蔵室第一送風ダクト11aに送風する冷蔵室第一ダンパ24aを開放状態、冷蔵室第二送風ダクト12aに送風する冷蔵室第二ダンパ24bを閉鎖状態とする運転モードを実施する(
図2、
図3、
図8及び
図12参照)。真空断熱材の折り返し部は、外包材が重なるためにヒートブリッジの影響が大きくなる。そこで、本実施形態の冷蔵庫では上記構成を採用することで、折り返し部60bに起因するヒートブリッジによる熱損失を抑えた冷却運転を実施することで、冷蔵室第一送風ダクト11aを熱損失が小さい高断熱風路として、冷却効率を向上させている。
【0077】
また、最上段の棚46a、46bより上方の領域2cに送風する冷蔵室第二送風ダクト11bと、最上段の棚46a、46bより下方の領域2dに送風する冷蔵室第一送風ダクト11aを備え、冷蔵室第一送風ダクト11aに送風する冷蔵室第一ダンパ24aを開放状態、冷蔵室第二送風ダクト12aに送風する冷蔵室第二ダンパ24bを閉鎖状態とする運転モードを実施する(
図2、
図3及び
図12参照)。これにより、領域2cの冷却を行う必要がない状態では、最上段の棚46a、46bより上方の領域2cの空気層が、冷蔵室2の上壁からの熱影響が領域2dに及ぶことを抑制する断熱層として作用するので、効率の良い冷却が可能となる。
【0078】
また、棚46a及び棚46bから上壁に至るそれぞれの距離(
図3中に示すH1及びH2)が棚46a及び棚46bのそれぞれの奥行寸法より小さくなるようにしている。これにより、冷蔵室第一送風ダクト11aに送風する冷蔵室第一ダンパ24aを開放状態、冷蔵室第二送風ダクト12aに送風する冷蔵室第二ダンパ24bを閉鎖状態とする運転モードを実施して、領域2cの空気層を断熱層として作用させる際に、領域2c内の対流が生じ難くなるので、領域2cによる断熱効果が高められ、より効率の良い冷却が可能となる。
【0079】
また、冷蔵室第一ダンパ24aと冷蔵室第二ダンパ24bの何れを開放状態としても共通に冷気が通過する領域の容積(領域2eの容積)が、冷蔵室第一ダンパ24aと冷蔵室第二ダンパ24bの開閉状態によって独立に送風が制御される領域の容積(領域2cと領域2dを併せた容積)より小さくなるようにしている。これにより、霜の成長に伴って動作点がやや小風量側に変化しても、冷却効率の低下の影響が顕著に現れることを抑制できる。
【0080】
また、冷蔵室第一送風ダクト11a及び冷蔵室第二送風ダクト11bの最小流路断面積を、庫内送風機22の吹き出し面積よりも小さくしている。これにより、ダクト占有体積を抑えつつ、冷蔵室2の冷気循環系路の風路抵抗を大きくしている。したがって、冷却効率とスペース効率が高い冷蔵庫となる。
【0081】
また、冷蔵室戻りダクト15の最小流路断面積を、庫内送風機22の吹き出し面積よりも小さくしている。これによりダクト占有体積を抑えつつ、冷蔵室2の冷気循環系路の風路抵抗を大きくしている。したがって、冷却効率とスペース効率が高い冷蔵庫となる。
【0082】
また、冷蔵室第一送風ダクト11aの最小流路断面積を、冷蔵室第二送風ダクト11bの最小流路断面積より大きくしている。これにより冷蔵室第一ダンパ24aと冷蔵室第二ダンパ24bの双方が開放状態となった場合に、高断熱風路である冷蔵室第一送風ダクト11aにより多くの冷気が流れるので、熱損失を抑えた冷却効率が高い冷却運転を実施することができる。
【0083】
また、冷蔵室第一送風ダクト11aから送風される冷気と、冷蔵室第二送風ダクト11bから送風される冷気が共通に流れる経路(領域2e、チルド室3、冷蔵室戻り口35、冷蔵室戻りダクト15)に温度センサ(チルド室温度センサ42)を備え、所定温度以下(Tc_a以下)にセンサ検知温度が低下した場合には、冷蔵室第一送風ダクト11aに送風する冷蔵室第一ダンパ24a、冷蔵室第二送風ダクト12aに送風する冷蔵室第二ダンパ24bの何れも閉鎖状態とするようにしている(
図2、
図3、
図4及び
図12参照)。これにより、冷蔵室第一送風ダクト11aと冷蔵室第二送風ダクト11bからの送風によって共通に冷却される領域(本実施形態の冷蔵庫の冷蔵室内の領域2eやチルド室3)が過度に冷却され、凍結に至るといった不具合が生じないようできる。
【0084】
なお、本実施形態の冷蔵庫では、チルド室3は冷気の吹き出し口を備えなくても所定温度に冷却できるため、チルド室に吹き出す吹き出し口を備えていないが、冷蔵室第一送風ダクト11a、あるいは、冷蔵室第二送風ダクト11bにチルド室吹き出し口を備えても良い。また、チルド室吹き出し口からの送風を制御するためのチルド室ダンパを備えて、所定温度に維持し易い構成としても良い。
【実施例3】
【0093】
本発明に係る冷蔵庫の第三実施形態を、
図17〜
図20を参照しながら説明する。
図17は第三実施形態の冷蔵庫の庫内の構成を表す縦断面図、
図18は第三実施形態の冷蔵庫の冷蔵室の構成を表す正面図、
図19は第三実施形態の冷蔵庫の風路構成を表す模式図である。また、
図20は第三実施形態の冷蔵庫のダンパの開閉状態の組み合わせを表す図である。なお、
図17〜
図20において、第一実施形態の冷蔵庫と同一機能部品については、同一符号を付して説明を省略する。
【0094】
本実施形態の冷蔵庫は、
図18に示すように、冷蔵室2の背面略中央に、冷蔵室2の下方から上方に延伸する冷蔵室第一送風ダクト11aと、冷蔵室第一送風ダクト11a(最小流路断面積1400mm
2)の上部に冷蔵室第二送風ダクト11b(最小流路断面積1400mm
2)を備えており、冷蔵室第一送風ダクト11a及び冷蔵室第二送風ダクト11bの入口部にはそれぞれ冷蔵室第一ダンパ24a、及び、冷蔵室第二ダンパ24bを備えている。なお、
図17及び
図18に示すように、冷蔵室第一ダンパ24aは、上側断熱仕切壁51の後方投影領域内に配設され、冷蔵室第二ダンパ24bは、及び、冷蔵室棚46冷蔵室第一ダンパ24bは棚46aの略背部(棚46aの高さ位置を下端にした場合)に配設されている。
【0095】
次に
図19と、適宜
図17及び
図18を参照しながら、本実施形態の冷蔵庫の冷気循環経路について説明する。
【0096】
図19に示すように、蒸発器21と熱交換した冷気は、庫内送風機22によって昇圧され、冷蔵室第一ダンパ24aが開放状態で、冷蔵室第二ダンパ24bが閉鎖状態では、冷蔵室第一送風ダクト11aを流れて冷蔵室吹き出し口31a〜31c(
図18参照)から冷蔵室内の領域2d(
図17及び
図18参照)のみに吹き出す。領域2dに吹き出した冷気は、扉ポケット47b、47cが設置されている領域2e(
図17参照)、チルド室3を流れて、冷蔵室戻り口35に至る。また、冷蔵室第一ダンパ24aが開放状態で、且つ、冷蔵室第二ダンパ24bが開放状態では、冷気は、冷蔵室第一送風ダクト11aを流れて冷蔵室吹き出し口31a〜31cから領域2dに吹き出すとともに、冷蔵室第二送風ダクト11bを流れて冷蔵室吹き出し口31d、31eから冷蔵室内の領域2c(
図17及び
図18参照)に吹き出す。領域2cに吹き出した冷気は、扉ポケット47b、47cや製氷水タンク55が設置されている領域2e、チルド室3を流れて、冷蔵室戻り口35に至る。
【0097】
領域2c、2d、2e及びチルド室3を冷却した冷気は、冷蔵室戻り口35から冷蔵室戻りダクト15(最小流路断面積1700mm
2)に入り、蒸発器収納室9に至って再び蒸発器21と熱交換する。
【0098】
なお、本実施形態の冷蔵庫においても、冷蔵室第一ダンパ24a、冷蔵室第二ダンパ24b、冷凍室ダンパ26、野菜室ダンパ27を備え、それぞれが開放状態と閉鎖状態の2つの状態を取ることから、ダンパの開閉状態の組み合わせは16通りとなるが、冷蔵室第二ダンパ24bは冷蔵室第一ダンパ24aの下流に位置するため、冷蔵室第一ダンパ24aが開放状態の場合のみ、冷蔵室第二ダンパ24bを開放して冷蔵室第二送風ダクト11bを介した送風が可能となる。
【0099】
図20は、冷蔵室第一ダンパ24aが開放状態で、冷蔵室2への送風が行われる状態となる組み合わせを示している。
図20に示すように、冷蔵室2への送風が行われる状態は状態1〜状態8の8通りあり、各状態における冷気循環経路の風路抵抗をR1〜R8とする。なお、「風路抵抗の大きさ」欄は、R1〜R8に関して、風路抵抗が小さい順に1〜8の番号を付けている。すなわち、R1〜R8の大小関係は、「R4<R8<R3<R7<R2<R6<R1<R5」となる。本実施形態の冷蔵庫では、状態1〜状態8における抵抗R1〜R8の抵抗曲線と、庫内送風機22の風量−静圧特性曲線との交点により定まる動作点は、何れも遠心流域となる。
以上のように本実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室第二ダンパ24bは冷蔵室第一ダンパ24aの下流に位置するため、冷蔵室第一送風ダクト11aと冷蔵室第二送風ダクト11bを併設する必要がなくなる。したがって、冷蔵室送風ダクトをコンパクトに配設できるので食品収納スペースの減少を抑えた冷蔵庫となる。
【0100】
以上より、本発明の各実施例は以下の効果を奏することができる。
【0101】
すなわち、貯蔵室(冷蔵室2、チルド室3)と、冷却器21と、冷却器21と熱交換した冷気を送風する軸流送風機22と、軸流送風機22で送風された冷気を貯蔵室へ導く送風経路11と、貯蔵室に送風された冷気を冷却器21に戻す戻り経路15と、を備え、送風経路11と戻り経路15の少なくとも一方は、冷気の通過する経路が分岐した分岐経路(冷蔵室第一送風ダクト11a、冷蔵室第二送風ダクト11b)を有し、分岐経路の風路抵抗を制御する風路抵抗制御手段24を備え、貯蔵室は、分岐経路のうちの一方の経路(冷蔵室第一送風ダクト11a)を通過する冷気によって冷却される第一の独立冷却領域2dと、分岐経路のうちの他方の経路(冷蔵室第二送風ダクト11b)を通過する冷気によって冷却される第二の独立冷却領域2cと、分岐経路のいずれの経路を通過する冷気によっても冷却される共通冷却領域2eとを有し、第一の独立冷却領域2d、第二の独立冷却領域2c及び共通冷却領域2eのいずれか1つ又は複数を組み合わせて冷却する複数の送風モードを有し、該複数の送風モードのいずれの場合でも軸流送風機22は風量−静圧特性曲線の極小点より小風量側の動作点となるように制御する。
【0102】
これにより、風量の減少度合いは小さくなるため、複数の送風モードのいずれの場合でも(冷蔵室第一ダンパ24aと冷蔵室第二ダンパ24bの何れを開放状態としても)、共通に冷気が通過する領域2eの冷却効率の低下を抑制できる。
【0103】
なお、冷蔵室2、チルド室3に限らず、その他の貯蔵室にも上記構成を適用することで、同様に高い冷却効率を得ることができる。
【0104】
また、貯蔵室(冷蔵室2、チルド室3)と、冷却器21と、冷却器21と熱交換した冷気を送風する軸流送風機22と、軸流送風機22で送風された冷気を貯蔵室へ導く送風経路11と、貯蔵室に送風された冷気を冷却器21に戻す戻り経路15と、を備え、送風経路11と戻り経路15の少なくとも一方は、冷気の通過する経路が分岐した分岐経路(冷蔵室第一送風ダクト11a、冷蔵室第二送風ダクト11b)を有し、分岐経路の風路抵抗を制御する風路抵抗制御手段24を備え、貯蔵室は、分岐経路のうちの一方の経路(冷蔵室第一送風ダクト11a)を通過する冷気によって冷却される第一の独立冷却領域2dと、分岐経路のうちの他方の経路(冷蔵室第二送風ダクト11b)を通過する冷気によって冷却される第二の独立冷却領域2cと、分岐経路のいずれの経路を通過する冷気によっても冷却される共通冷却領域2eとを有し、第一の独立冷却領域2d、第二の独立冷却領域2c及び共通冷却領域2eのいずれか1つ又は複数を組み合わせて冷却する複数の送風モードを有し、該複数の送風モードのいずれの場合でも軸流送風機22の吹き出し流れが遠心流域となる動作点とする。
【0105】
これにより、動作点が遠心流域となるようにすれば、霜の成長に伴って風路抵抗が増加しても、風量の減少度合いは小さく抑えられ、また、動作が不安定となることがある右上がり特性域に入ることも避けられるため、複数の送風モードのいずれの場合でも(冷蔵室第一ダンパ24aと冷蔵室第二ダンパ24bの何れを開放状態としても)、共通に冷気が通過する領域2eを過不足なく冷却できる冷却効率の高い冷蔵庫となる。
【0106】
また、共通冷却領域2eの容積が、第一の独立冷却領域2d及び第二の独立冷却領域2cの容積より小さくなるようにした。これにより、霜の成長に伴って動作点がやや小風量側に変化しても、冷却効率の低下の影響が顕著に現れることを抑制できる。
【0107】
また、共通冷却領域2e、又は複数の送風モードのいずれの場合でも共通に冷気が流れる戻り経路15の領域に温度検知手段42を備え、温度検知手段42により検知される温度が所定温度以下になった場合、貯蔵室への送風を停止する。これにより、共通冷却領域2e、又は複数の送風モードのいずれの場合でも共通に冷気が流れる戻り経路15の領域を過度に冷却して凍結することを防止でき、冷却効率を向上できる。
【0108】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、軸流送風機の風量−静圧特性と風路抵抗により定まる動作点が遠心流域となれば、使用する軸流送風機の風量−静圧特性に基づいて風路構成を定めても良いし、風路構成を定めた後に、動作点が遠心流域となる軸流送風機を設計あるいは選定しても良い。あるいは、動作点が遠心流域とならないダンパの開閉状態の組み合わせが生じる場合は、その組み合わせの使用を回避するように制御したり、ダンパを半開状態(例えば開角度45゜)として、軸流域や右上がり特性域の動作点を遠心流域となるように調整しても良い。
また、送風ダクトや戻りダクトの分割数を増しても良い。また、温度検知手段として、サーミスタ(thermistor)、熱電対、半導体温度センサ、デジタル温度センサ、アナログ温度センサ等、公知の温度センサを適用することができる。また、光センサ、赤外線センサ等の貯蔵物を検知する手段を備え、検知した貯蔵物の配置と温度検知手段の検知温度とを組み合わせることで、これらに基いてダンパの開閉や送風を制御する構成としてもよい。
すなわち、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。