(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
密着手段は、複数のシール部と、扉体によって開口を閉鎖状態にした際に、当該シール部が当接する当接部を備えており、当該当接部は、金属によって成形されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高温環境形成装置。
高温環境形成装置は、被加熱物たる被試験物を所望の環境にさらすことが可能な環境試験装置であり、前記被加熱物載置室は、被試験物を載置する試験室であり、内部に所望の温度及び/又は湿度環境を作ることができ、前記開口は、試験室から被試験物を出し入れするための開口であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の高温環境形成装置。
高温環境形成装置は、熱処理装置であり、前記被加熱物載置室は、被加熱物たるワークを熱処理する熱処理室であり、前記開口は、熱処理室からワークを出し入れするための開口であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の高温環境形成装置。
【背景技術】
【0002】
製品や素材等(以下、単に試料体という)の性能や耐久性等を試験する装置として、環境試験装置がある。環境試験装置は、試験対象の試料体が載置される試験室(所定の空間)を有し、この試験室内の温度や湿度を所望の試験環境に調整する機能を備えた装置(高温環境形成装置)である。すなわち、試験室内は、試料体の性能や耐久性等の評価を行うべく、低温環境に制御されたり、逆に高温環境に制御される。また同時に、試験室内を、高湿環境にしたり、低湿環境にするような場合もある(以下、このような動作を環境試験という)。
【0003】
そのため、環境試験装置では、環境試験が実施されると、試験室内と外部との間において、温度や湿度に著しい格差が生じる。例えば、試験室内が過度に高温(摂氏200〜300度)であったり、過度に低温(摂氏マイナス10〜40度)であるのに対して、外部は常温(摂氏10〜20度程度)という状況が発生する。また、試験室は、外部環境に比べると、著しく狭小な空間と言えるため、外部環境の影響を受け易い。つまり、試験室と外部との間で意図せず気体が往来し得る状況(試験室内の気圧の調整を目的として意図的に気体を往来させる場合は除く)が発生した場合、試験室内の環境は大きく乱れ、試験の信頼性が大幅に低下してしまうおそれがある。
【0004】
一方で、環境試験装置には、試験室が設けられた装置本体に、試料体を出し入れするための開口が設けられている。つまり、環境試験装置は、開口を介して、試験室と外部との間で気体が往来し得る構造となっている。そして、この種の環境試験装置では、装置本体に対して開閉自在な扉体が設けられ、扉体によって、前記開口を閉鎖できる構造となっている。
【0005】
このような事情に鑑みると、環境試験装置においては、環境試験の実施中、試験室と外部との間で起き得る意図しない気体の往来を防止するべく、扉体によって開口を確実に閉鎖状態にする必要がある。そのため、環境試験装置では、装置本体と扉体との間に、十分なシール構造を形成することが求められていた。
【0006】
そこで、従来より、環境試験装置では、装置本体と扉体との間に、ガスケットを配し、当該ガスケットによって、試験室内の気密性が図られている。例えば、特許文献1には、扉体にガスケットを設け、当該ガスケットを装置本体側に密着させて、装置本体と扉体との間にシール構造を形成する環境試験装置の技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の環境試験装置においては、装置本体と扉体の間に設けられたガスケットは、試験室内の高温雰囲気や低温雰囲気等の影響を受け易くなっており、劣化が加速度的に早められてしまう不具合があった。すなわち、この種の環境試験装置では、ガスケットの一部が試験室側に露出しており、当該露出した部分が、試験室内に流れる気体にさらされる構造となっている。そのため、ガスケットは、試験室における環境の影響を大いに受け、その寿命を本来の設計寿命よりも著しく短くしてしまっていた。またそれに伴い、ガスケットの交換サイクルが著しく短縮化され、環境試験装置における維持費の増大を招いていた。
【0009】
また、これと同様の問題が、恒温装置(あるいは恒温恒湿装置)、並びに、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display)、有機ELディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)の製作に使用される熱処理装置(高温環境形成装置)においても露呈している。
【0010】
そこで、本発明では、装置本体と扉体との間に設けられたガスケット(密着手段)における、所定の空間の環境から受ける影響を抑制し、その劣化の進行を抑えることが可能な高温環境形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するべく提供される請求項1に記載の発明は、被加熱物を載置する被加熱物載置室
を有する装置本体と、当該被加熱物載置室とその外部を連通する開口と、当該開口を開放状態及び閉鎖状態にすることが可能な扉体を有する高温環境形成装置において、
扉体には、開口に嵌り込む嵌合部があり、扉体で前記開口を閉塞した状態において前記嵌合部と開口との間には、隙間が形成されるものであり、被加熱物載置室と扉体との間には、前記開口を閉鎖状態にした際に、被加熱物載置室側あるいは扉体側に密接する密着手段が設けられており、さらに前記開口を閉鎖した状態を基準として、密着手段の近傍
であって密着手段よりも被加熱物載置室側には、被加熱物載置室内の気体が当該密着手段側に流れ込むのを阻害する遮蔽部が設けられて
おり、前記遮蔽部は、装置本体側又は扉体側の一方に固定されており、扉体で前記開口を閉塞した状態においては前記遮蔽部は前記隙間内にあり、
前記遮蔽部は、扉体の開閉を阻害しないものであることを特徴とする高温環境形成装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、被加熱物を載置する被加熱物載置室を有する装置本体と、当該被加熱物載置室とその外部を連通する開口と、当該開口を開放状態及び閉鎖状態にすることが可能な扉体を有する高温環境形成装置において、扉体には、開口に嵌り込む嵌合部があり、扉体で前記開口を閉塞した状態において前記嵌合部と開口との間には、隙間が形成されるものであり、被加熱物載置室と扉体との間には、前記開口を閉鎖状態にした際に、被加熱物載置室側あるいは扉体側に密接する密着手段が設けられており、さらに前記開口を閉鎖した状態を基準として、密着手段の近傍であって密着手段よりも被加熱物載置室側には、被加熱物載置室内の気体が当該密着手段側に流れ込むのを阻害する遮蔽部が設けられており、前記遮蔽部は、扉体で前記開口を閉塞した状態においては前記隙間の開口端部にあって隙間の開口を絞るものであり、前記遮蔽部は、装置本体側又は扉体側の一方に固定されており、前記遮蔽部は、扉体の開閉を阻害しないものであることを特徴とする高温環境形成装置である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記遮蔽部は、装置本体側又は扉体側の一方に固定されており、扉体で前記開口を閉塞した状態において、前記遮蔽部は装置本体側又は扉体側の他方に当たらないものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温環境形成装置である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、被加熱物を載置する被加熱物載置室を有する装置本体と、当該被加熱物載置室とその外部を連通する開口と、当該開口を開放状態及び閉鎖状態にすることが可能な扉体を有する高温環境形成装置において、被加熱物載置室と扉体との間には、前記開口を閉鎖状態にした際に、被加熱物載置室側あるいは扉体側に密接する密着手段が設けられており、扉体で前記開口を閉塞した状態において扉体と装置本体の間には被加熱物載置室から密着手段に繋がる経路となる隙間があり、さらに前記開口を閉鎖した状態を基準として、密着手段の近傍には、被加熱物載置室内の気体が当該密着手段側に流れ込むのを阻害する遮蔽部が設けられており、前記遮蔽部は、扉体で前記開口を閉塞した状態においては前記遮蔽部は前記隙間内あるいは隙間の外にあり、前記遮蔽部は、前記隙間の内部または隙間に通ずる経路を絞るものであり、前記遮蔽部は、装置本体側又は扉体側の一方に固定されており、扉体で前記開口を閉塞した状態においては装置本体側又は扉体側の他方に当たらず、扉体の開閉を阻害しないものであることを特徴とする高温環境形成装置である。
【0015】
上記した各本発明の高温環境形成装置は、被加熱物載置室と扉体との間にシール構造を形成する密着手段が設けられており、当該密着手段の近傍に遮蔽部が設けられている。そして、遮蔽部によって、被加熱物載置室内の気体が密着手段側に流れ込むのを阻害している。すなわち、被加熱物載置室内が高温雰囲気に制御されたり、あるいは低温雰囲気に制御されて、その被加熱物載置室内の気体が密着手段側に流れ込むような状況(密着手段方向に気体の流れが向いている状況)にあっても、遮蔽部によってその流れが阻害される。これにより、本発明においては、被加熱物載置室内における高温あるいは低温の気体が、密着手段に対して直接的に吹き付けられるという状況が発生しないため、密着手段における被加熱物載置室内の環境から受ける影響が抑制されて、従来のような密着手段の加速度的な劣化を抑えることが可能となる。その結果、密着手段の交換サイクルの短縮化が抑制され、高温環境形成装置の維持費増大を防止できる。
【0016】
請求項
5に記載の発明は、密着手段及び遮蔽部は、扉体によって開口を閉鎖した状態を基準として、当該開口の縁端に沿って環状に配されていることを特徴とする請求項1に記載の高温環境形成装置である。
なお、ここで言う「環状」には、円形だけでなく、その他の形状、例えば長方形のような円形以外の閉じた形状の概念を含む。
【0017】
本発明の高温環境形成装置は、密着手段が開口の縁端に沿うように配されており、さらにその密着手段と同様、遮蔽部も開口の縁端を沿うように配されているため、被加熱物載置室と扉体との間により確実なシール構造を形成しつつも、そのシール構造を形成する密着手段の劣化をより確実に防止することができる。
【0018】
請求項1,2に記載の発明
では、扉体は、開口を閉鎖状態にした際に、その一部が開口に嵌り込む凸形状となっている。
【0019】
請求項1,2に記載の高温環境形成装置は、扉体に凸形状を呈する部分を設け、その部分を開口に嵌り込むようにしているため、従来、被加熱物載置室側に露わになっていた密着手段を、扉体の凸状部によって、被加熱物載置室から遮蔽したような配置にできる。これにより、被加熱物載置室内の気体が、密着手段側に至り難くなる。そして、本発明では、前記したように、密着手段の近傍に遮蔽部が設けられているため、それらの相乗効果によって、密着手段が、被加熱物載置室内に流れる気体に直接的にさらされてしまうといった現象を、より効果的に防止することができる。
【0020】
請求項1,2に記載の発明
では、扉体には、開口に嵌り込む嵌合部と、開口に嵌り込まない非嵌合部があり、当該嵌合部と開口との間には、隙間が形成されるものであり、遮蔽部は、扉体が開口を閉鎖した状態において、前記隙間に位置することを特徴とす
る。
【0021】
ここで、嵌合部と開口(開口縁部)との間に形成される隙間は、扉体の開閉動作を行うため、構造上必要な隙間である。そして、この構造上の隙間は、扉体の嵌合部の大きさを、開口の大きさよりも若干小さくすることで形成される。具体的には、嵌合部は、扉体を開閉する際に、当該嵌合部の軌跡が、開口縁部に衝突しない程度の大きさに設定される。
一方、この構造上の隙間は、その延長上に密着手段が配された場合には、当該密着手段に繋がる気体の経路になり得る。
【0022】
そこで、
請求項1,2に記載の発明では、扉体で開口を閉鎖した状態において形成される隙間のいずれかの位置に、遮蔽板を配した構成となっている。かかる構成により、被加熱物載置室内の気体が隙間に流入することが防止されるため、より効果的に密着手段の劣化の進行を抑えることができる。
なお、前記したように、扉体と開口縁部との間に形成される隙間は、構造上必要なものであり、また扉体を開閉する際の嵌合部の軌跡に応じて形成されるものである。そのため、遮蔽板の設置位置は、当該隙間上であっても、扉体の開閉を阻害しないように配慮する必要がある。
【0023】
請求項
6に記載の発明は、密着手段は、複数のシール部を備えており、当該複数のシール部が、被加熱物載置室と扉体との間を多重にシールすることを特徴とする請求項1〜
5のいずれかに記載の高温環境形成装置である。
【0024】
本発明の高温環境形成装置は、密着手段が有する複数のシール部によって、被加熱物載置室と扉体との間を多重にシールすることができるため、扉体と被加熱物載置室との間のシール性を向上させることができる。また、複数のシール部で多重のシール構造を形成し、隣接するシール部同士の間に空気層を介在させれば、被加熱物載置室内の熱が外部側に伝熱し難くなるため、装置の外装が過度に高温となったり、過度に低温となる不具合を防止できる。また、装置の外装が過度に低温となった場合は、外装表面に結露が生じたり、霜付きが生じるおそれがあるため、このような不具合も抑制することができる。
【0025】
請求項
7に記載の発明は、密着手段は、複数のシール部と、扉体によって開口を閉鎖状態にした際に、当該シール部が当接する当接部を備えており、当該当接部は、金属によって成形されたものであることを特徴とする請求項1〜
6のいずれかに記載の高温環境形成装置である。
【0026】
ここで、従来の当接部について付言しておくと、従来、シール部が当接する当接部には、耐熱性を有した樹脂が採用されていた。これは、被加熱物載置室内の熱が、当接部を伝って装置の外装等に伝熱することを防止(所謂熱切り)するためであり、この技術分野においては常識であった。ところが、近年、試料体をさらす環境を、より高温にしたり、より低温にする傾向があるため、当接部に使用される樹脂として、より高価な耐熱性樹脂を選定せざるを得なくなってきている。つまり、この種の樹脂製の当接部は、装置全体の製造コストを増大させる原因の1つとなってきている。そこで、樹脂製の当接部は、より少しでもコストを抑えるべく、歩溜まりを高められる構成となっている。具体的には、樹脂製の当接部101は、
図12に示すように、4つの直線状の板体102〜105を組み合わせた構成にされている。
【0027】
また、高温環境形成装置は、主たる部分が金属によって構成されるものであるため、当接部は、その金属に対して固定される。しかしながら、金属と樹脂は、熱伝導率が異なるだけでなく、その熱膨張率も異なる。つまり、金属と樹脂は、同じ温度環境にさらされた場合であっても、各伸び率が異なる。特に、金属と樹脂は、高温環境にさらされる程、その伸び率の差が大きくなる傾向にある。そのため、被加熱物載置室内が高温環境に制御された場合には、伸び率の違いに起因して、樹脂製の当接部が破損してしまう場合があった。
【0028】
そこで、そのような不具合を解消するべく、請求項6に記載の高温環境形成装置では、金属によって成形された当接部を採用している。これにより、本発明では、従来のように、素材の伸び率の違いに起因して、当接部が破損してしまうというおそれはない。
なお、当接部に使用する金属として、例えば、当該当接部が固定される部分(固定部)と同一の金属を採用すれば、当接部と固定部の両者を、同一の熱膨張率とすることができる。
【0029】
さらに、本発明では、当接部を金属によって成形することで、コスト削減、及び、組み立て時における作業効率の向上にも成功している。すなわち、前記したように、従来、高温環境にも耐え得る樹脂を選定せざるを得なかったため、当接部は、そもそも材料単価が高かった。それに伴い、樹脂製の当接部は、少しでも歩溜まりを高めるべく、前記したように、4部材構成にされていた。それに対して、金属(例えばステンレス鋼)によって当接部を成形すれば、材料単価を抑制することが可能となるため、歩溜まりの善し悪しに関わらず、樹脂を用いる場合よりも大幅にコストを抑えることが可能となる。また同時に、本発明によれば、歩溜まりを考慮する必要がなくなり、4部材で構成されていたものを、1部材にすることができるため、組み立て時における作業効率を向上させることができる。
【0030】
本発明の高温環境形成装置は、被加熱物たる被試験物を所望の環境にさらすことが可能な環境試験装置であり、前記被加熱物載置室は、被試験物を載置する試験室であり、内部に所望の温度及び/又は湿度環境を作ることができ、前記開口は、試験室から被試験物を出し入れするための開口であることが推奨される。(請求項
8)
【0031】
本発明の高温環境形成装置は、熱処理装置であり、前記被加熱物載置室は、被加熱物たるワークを熱処理する熱処理室であり、前記開口は、熱処理室からワークを出し入れするための開口であることが推奨される。(請求項
9)
【発明の効果】
【0032】
本発明の高温環境形成装置は、所定の空間(試験室あるいは熱処理室)と扉体との間に設けられた密着手段の近傍に遮蔽部を設けて、当該密着手段における、前記所定の空間に形成される環境から受ける影響を抑制することを可能にしたため、密着手段の劣化の進行を抑えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の実施形態に係る環境試験装置について説明する。
本実施形態の環境試験装置(高温環境形成装置)1は、所謂冷熱衝撃試験装置であり、電子部品や電子機器等の試料体(被加熱物)に対して、熱風や冷風を所定のサイクルで送って(冷熱衝撃試験)、当該試料体に熱ストレスを与える機能を備えた装置である。そして、本実施形態では、
図1、2に示すように、その主たる構成として、直方体状の装置本体4と、その装置本体4に対して開閉自在な扉体6が備えられている。
なお、装置本体4及び扉体6は、いずれも断熱性を備えた構造となっている。
【0035】
装置本体4は、
図3に示すように、その内部に、試料体が載置される試験室(被加熱物載置室)5と、その試験室5に熱風を送ることが可能な高温室2と、試験室5に冷風を送ることが可能な低温室3とを備えている。そして、本実施形態では、試験室5を基準として、上部に高温室2が配され、下部に低温室3が配されている。また、試験室5と高温室2の間、及び、試験室5と低温室3の間には、互いに連通した通気口20が設けられている。そして、それぞれの通気口20には、室間の気体の往来を制限するダンパー21が設けられている。
【0036】
試験室(被加熱物載置室)5は、所望の環境が形成される部分であり、試料体が載置される複数(本実施形態では2つ)の載置棚24と、試験室5内の雰囲気温度を検知する試験室側温度センサ34を有する。
【0037】
高温室2は、当該室内の気体を予め設定した高温側の設定温度まで加熱し、その加熱した気体を試験室5との間で循環させる機能を備えた部分であり、主たる構成として、気体を加熱する加熱ヒータ22と、気体を循環させる高温側送風機23と、高温室2内の雰囲気温度を検知する高温側温度センサ25を有する。
【0038】
低温室3は、室内の気体を予め設定した低温側の設定温度まで冷却し、その冷却した気体を試験室5との間で循環させる機能を備えた部分であり、主たる構成として、気体を冷却する冷却器26と、気体を循環させる低温側送風機27と、冷却した気体の温度を微調整する調整用ヒータ28と、低温室3内の雰囲気温度を検知する低温側温度センサ30を有する。
なお、冷却器26は、冷凍サイクルを備えた公知の冷凍機29の一部であり、具体的には蒸発器である。
【0039】
また、装置本体4には、
図2に示すように、その正面側に、試験室5に試料体を出し入れするための装置開口11が設けられている。この装置開口11は、試験室5の内外を連通する位置に配されており、正面視した形状が横長のほぼ長方形状(装置本体4の幅方向の長さが長い長方形状)を呈している。そして、この装置開口11は、その大きさが、ほぼ直方体状の試験室5の一面(正面側の一面)と同程度の大きさとなっている。
なお、装置開口11の開口縁は、ヘミング曲げ(あざ折り)加工が施されており、その部分は装置本体4の外部方向に張り出した姿勢となっている。
【0040】
また、装置本体4には、
図2、4に示すように、装置開口11の開口縁に沿った部分に、後述するシール部が当接する額縁部材(当接部)12が設けられている。この額縁部材(密着手段の一部)12は、所定の金属(例えばステンレス鋼)によって成形された枠状の板体である。より具体的には、額縁部材12は、
図5に示すように、長方形状の1枚の金属板の一部を、部材厚方向に打ち抜く加工が施されており、平面状の枠状部31と、打ち抜かれた部分たる額縁開口32を有する。
なお、本実施形態では、額縁開口32が、装置開口11とほぼ同一の大きさ及び形状となっている。
【0041】
一方、扉体6は、
図1、2に示すように、装置本体4に対して、ヒンジ40を介して取り付けられた開き戸型の扉であり、主たる構成として、
図6に示すように、扉本体13と、シール部(密着手段の一部)15と、遮蔽部材17とを備えている。
なお、以下においては、特に断りがない限り、装置本体4を基準とした方向を用いる。
【0042】
扉本体13は、外観が一方向に突出した形状であり、
図6、7に示すように、直方体形状の凸状部35を備えた構成となっている。具体的には、本実施形態では、扉本体13の正面側に基部(非嵌合部)36を備え、その基部36の背面側に、装置開口11に嵌り込む凸状部(嵌合部)35が設けられた構成となっている。より具体的には、扉本体13は、
図7に示すように、その断面形状が段状となっており、基部36の背面側の縁端側(以下、基部縁端部43という)を露出させた状態で、凸状部35を扉本体13の厚み方向(正面側から背面側に向けた方向)に重ね合わせたような構造となっている。つまり、扉本体13は、中央側(凸状部35が位置する部分)が縁端側(基部縁端部43が位置する部分)よりも厚みが増した構造である。
【0043】
また、凸状部35は、基部36からの突端側の面を形成する背面壁41と、その背面壁41の各辺(4つの辺のそれぞれ)から正面側に張り出した側面壁42a〜42dとで形成されている。そして、凸状部35は、
図9に示すように、装置開口11に嵌め込んだ状態において、その周囲であって、凸状部35の側面壁42a〜42dと、装置開口11の縁部との間にほぼ均等な隙間sが形成される大きさに設計されている。
一方、基部36は、装置本体4の正面側に露出する部分であり、扉体6の開閉用のレバー45(
図1)が設けられている。
【0044】
シール部(密着手段の一部)15は、所謂ガスケットであり、扉本体13に設けられて、扉本体13と装置本体4との間のシール性を向上させる部分である。具体的には、シール部15は、
図6に示すように、扉本体13の基部縁端部43に取り付けられ、扉体6で装置開口11を閉鎖した際に、装置本体4の額縁部材12の枠状部31に密接する部分である。
なお、本実施形態では、このシール部15が扉本体13に設けられた構成を示したが、装置本体4側に設けても構わない。
【0045】
そして、本実施形態では、シール部15が、2つのシール形成部材37、38により構成されている。このシール形成部材37、38はいずれも、可撓性を有した長尺状の部材であり、
図6、7に示すように、一方のシール形成部材(以下、内側シールという)37が、凸状部35に近接した位置で、その周囲を囲繞するように環状を呈する状態で固定され、さらに他方のシール形成部材(以下、外側シールという)38が、前記内側シール37よりも外周側の位置で、環状を呈する状態で固定される。すなわち、シール部15は、2つの内側シール37及び外側シール38によって2重のシール構造を形成し、それぞれを一定距離離反した配置にしている。
なお、本実施形態では、内側シール37、外側シール38のいずれにも、シリコン製のものを採用している。
【0046】
遮蔽部材17は、扉本体13に設けられて、試験室5内の気体が、扉本体13と装置開口11の縁部との間に形成された隙間sに流入するのを抑制するものである。一方で、遮蔽部材17は、扉本体13の装置本体4に対する開閉動作を阻害し得るものともなり得るため、扉本体13が装置本体4に対して開閉可能な範囲で、且つ、可能な限り隙間sを遮蔽するように設置することが好ましい。そこで、本実施形態では、遮蔽部材17が、
図6に示すように、扉本体13の凸状部35に取り付けられ、扉体6で装置開口11を閉鎖した際に、
図9に示すように、前記隙間sの開口面積の概ね50%以上を遮蔽、より好ましくは前記隙間sの開口面積の60〜80%を遮蔽するようにして設置されている。
【0047】
そして、本実施形態では、この遮蔽部材17が、
図8に示す「L」字断面を呈した長尺状のL字金具45によって構成されている。すなわち、遮蔽部材17は、L字金具45の一方の面(固定面p)を側面壁42a〜42dに固定しつつ、他方の面(遮蔽面q)で隙間sを閉塞する。より詳細には、遮蔽部材17は、4つのL字金具45a〜45dを有し、当該各L字金具45a〜45dを、凸状部35の側面壁42a〜42dを囲むように配して固定される。つまり、遮蔽部材17は、4つのL字金具45a〜45dを凸状部35に固定して形成される枠構造体である。
【0048】
次に、本実施形態の環境試験装置1の環境試験時における動作について説明する。
なお、以下においては、高温さらし試験、低温さらし試験の順番で一連の試験サイクルが、所定回数繰り返し実施される冷熱衝撃試験(環境試験)について説明する。
【0049】
本実施形態の環境試験装置1は、冷熱衝撃試験が開始されると、まず1サイクル目の高温さらし試験を開始する。すなわち、環境試験装置1では、ダンパ21を閉鎖した状態で、高温室2内を予め設定された目標温度まで加熱する。その後、高温室2内の雰囲気温度が、目標温度に到達すれば、高温室2と試験室5との間のダンパ21を開放して、熱風を高温室2と試験室5との間で循環させる。これにより、試験室5内には、高温室2から送り込まれる高温の気体によって気流が発生する。こうして、試験室5内が急激に加熱され、試料体に高温の熱衝撃が与えられる。そして、この高温さらし試験は、予め設定された所定時間行われる。
【0050】
高温さらし試験が開始されてから所定時間が経過すると、高温室2と試験室5との間のダンパ21を閉鎖して高温さらし試験を終了し、同サイクルの低温さらし試験を開始する。
ここで、低温さらし試験を実行する場合、当該試験動作を開始する以前に、低温室3内を予め冷却しておく予冷動作が実施される。すなわち、前記高温さらし試験の開始と同時、あるいは、タイミングをずらして、低温室3内を予め設定された目標温度まで冷却する。そして、このようにして低温室3内を冷却した状態で、高温さらし試験の終了を待機する。
すなわち、高温さらし試験が終了して、低温さらし試験に移行すれば、低温室3と試験室5との間のダンパ21を開放して、低温室3内に生成された冷風を低温室3と試験室5との間で循環させる。これにより、試験室5内には、低温室3から送り込まれる低温の気体によって気流が発生する。こうして、試験室5内が急激に冷却され、試料体に低温の熱衝撃が与えられる。そして、この低温さらし試験は、予め設定された所定時間行われる。
【0051】
このような流れで、1サイクル目の低温さらし試験が終了すると、次サイクルに突入し、前記同様に、高温さらし試験と低温さらし試験が実施される。そして、この冷熱衝撃試験は、予め設定された所定回数のサイクルに至るまで繰り返し行われる。
【0052】
次に、本実施形態の環境試験装置1の特徴的機能について説明する。
先にも説明したように、環境試験装置において、試験室内に一定の気密性を維持するためには、装置本体と扉体とのシール性が重要である。そのため、従来より、環境試験装置は、装置本体と扉体との間にガスケット(シール部)を設けて、試験室内の気密性を確保している。一方で、このガスケットは、一部が試験室内に露出するため、環境試験が実施されると、試験室内に形成される試験環境に直接的にさらされ、加速度的に劣化してしまうという問題を抱えていた。
【0053】
そこで、本実施形態では、シール部15が試験室5の環境に直接的にさらされないようにするべく、前記したように、扉本体13に遮蔽部材17が設けられている。また、本実施形態では、同様の観点から、扉本体13に凸状部35が設けられている。すなわち、本実施形態では、遮蔽部材17と凸状部35の双方によって、シール部15を試験室5における試験環境が形成される領域から遮蔽する機能(遮蔽機能)が付与されている。
これについて以下に詳述する。
【0054】
環境試験装置1は、前記したように、環境試験たる冷熱衝撃試験を実施する機能を有する。そして、冷熱衝撃試験を実施する際には、
図9に示すように、扉体6が装置本体4の装置開口11を閉鎖した状態となっている。この装置開口11を閉鎖した状態においては、扉本体13の凸状部35が、装置本体4の装置開口11内に挿通されている。つまり、凸状部35が装置開口11に挿通されることで、凸状部35の側面壁42a〜42dが、装置本体11の縁部に対向した配置となる。そして、対向した配置の凸状部35と装置開口11の縁部との間に、所定の大きさの隙間sが形成されると共に、遮蔽部材17が配される。そしてこのとき、遮蔽部材17は、遮蔽面qが隙間sの大半を閉塞するような姿勢となっている。
【0055】
一方、扉本体13の基部36側は、装置本体4の外側であって装置開口11から逸脱した位置に配される。そして、その基部36の基部縁端部43に設けられたシール部15が、装置本体4に設けられた額縁部材12の枠状部31に密接した状態となる。またこのとき、基部縁端部43におけるシール部15以外の部分であって、試験室5側(内側)の部分には、額縁部材12との間に所定の大きさの隙間tが形成される。そして、この基部36側の隙間tは、前記した凸状部35側の隙間sと連通する。つまり、凸状部35側の隙間sの延長上に、シール部15が位置する。
【0056】
したがって、本実施形態では、扉本体13の背面側に、凸状部35を設けることで、シール部15を、隙間sの延長上に位置するようにしている。つまり、本実施形態では、従来のようにシール部15が試験室5側に露わになっておらず、凸状部35によって、シール部15が試験室5から概ね隔離された状態となっている。一方で、シール部15は、隙間sを介して、試験室5と連通した位置に配されているため、試験室5内で発生する気流によって、隙間sに試験室5内の加熱あるいは冷却された気体が流入することが考えられるが、前記したように、隙間sには、気体の流入を遮る遮蔽部材17が設けられている。
【0057】
このように、本実施形態では、シール部15を隙間sの延長上に配し、さらにその隙間sに遮蔽部材17を設けたため、試験室5内における試験環境から受ける影響を大幅に減縮することができる。その結果、本実施形態では、シール部15が、試験室5内の高温又は低温の気体に直接的にさらされることが抑制されるため、当該シール部15が加速度的に劣化してしまうことが抑制される。
【0058】
また、本実施形態では、従来、熱切り機能を果たしていた樹脂製の額縁部材に替えて、金属製の額縁部材12を採用したため、伝熱性の向上により、装置本体4の外装が過度に高温又は低温となってしまう懸念があるが、2重のシール構造を形成するシール部15を設けることで、そのような懸念を払拭している。すなわち、シール部15は、2つのシール形成部材37、38を有し、それらを一定距離離間するように並列に並べている。そのため、シール部15が、額縁部材12に密接した状態においては、
図9に示すように、シール形成部材37、38間に空気層vが形成される。つまり、この空気層vが、熱切り機能を果たす。また前記した、扉体6の凸状部35と、遮蔽部材17の作用も働き、装置本体4に起き得る外装の過剰な温度変化を、より効果的に抑えることができる。
したがって、本実施形態では、金属製の額縁部材12を用いても、装置本体4の外装が過度に高温又は低温となってしまうおそれはない。
【0059】
そして、本実施形態の効果を実証するため、以下に示す実験を行った。
本実施形態の環境試験装置(実施例)1と、従来の環境試験装置(比較例)を、同一の試験条件(設定する目標温度等)の下、前記した環境試験を実施し、高温さらし試験時における内側シール37と外側シール38における測定温度を比較した。
【0060】
実施した試験の試験条件は、以下の通りである。
高温さらし試験を4時間連続的に実施。
高温さらし試験の設定温度: 摂氏300度
高温さらし試験の実施時間: 4時間
【0061】
内側シール37の測定温度は、実施例では、比較例に対し、40度程度下がり、16%程度の温度降下が見られた。また、外側シール38については、比較例と実施例の双方で概ね同程度であった。これにより、樹脂に比べると、熱伝導率が高い金属(例えばステンレス鋼)を、額縁部材12の材料として使用することが可能となった。
【0062】
上記実施形態では、装置本体4と扉本体13との間に形成される隙間s内に、断面形状がL字型を呈した遮蔽部材17を設けて、その隙間sを概ね遮蔽する構成を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、遮蔽部材を隙間s内に設けることなく、当該隙間sを概ね遮蔽できる他の構成であっても構わない。例えば、
図10(a)に示すように、平板状の遮蔽部材51を、扉本体13の背面側(試験室5側)の突端面、つまり背面壁41に設けて、隙間sを概ね遮蔽するものや、
図10(b)に示すように、平板状の遮蔽部材51を、装置本体4の内側であって、装置開口11よりも内側(試験室5側)寄りの位置に設けて、隙間sを概ね遮蔽するものが挙げられる。
【0063】
上記実施形態では、扉本体13に凸状部35を設けて、装置開口11に扉本体13を嵌り込むような構成を示したが、本発明はこれに限定されず、凸状部35を備えない扉本体を採用した構成であっても構わない。ただし、この構成を採用する場合は、
図11に示すように、扉本体50と装置開口11との間に、隙間sが形成されることはないため、遮蔽部材17は扉本体13の基部36に相当するところに設ける必要がある。
【0064】
また、上記実施形態では、遮蔽部材17を、4部材構造にした構成を示したが、本発明はこれに限定されず、その4部材が予め一体成形されたものであっても構わない。
【0065】
上記実施形態では、2つのシール形成部材37、38によって、2重のシール構造を形成したシール部15を示したが、本発明はこれに限定されず、1重又は3重以上のシール構造を形成したシール部を採用しても構わない。
【0066】
上記実施形態では、遮蔽部材17を扉本体13に設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、装置本体4に設けた構成であっても構わない。すなわち、遮蔽部材17を、装置開口11の縁部に設けた構成である。
【0067】
上記実施形態では、装置本体4において、長方形状を呈した装置開口11を備えた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、円形や正方形、あるいは、その他の多角形等の形状の開口であっても構わない。また、それに伴って、シール部15の形状を装置開口11の形状に合わせることが好ましい。
【0068】
上記実施形態では、高温環境形成装置として環境試験装置1を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、高温環境形成装置が、液晶ディスプレイ等のワーク(被加熱物)を熱処理する熱処理装置であっても構わない。すなわち、一般的に、熱処理装置は、ワークを熱処理するための熱処理室(被加熱物載置室)を有し、当該熱処理室を所定の温度環境に調整するため、装置本体と扉体との間には、環境試験装置と同様の構造が形成される。そのため、この熱処理装置に、前記した実施形態と同様の構成を付与しても、同様の作用効果を期待することができる。
また同様に、高温環境形成装置を、冷熱衝撃試験を目的とした装置ではなく、温度サイクル試験装置や、恒温装置あるいは恒温恒湿装置等の他の環境試験装置としても構わない。