【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度 独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1の模式図は、冷蔵庫を示す。
図2のブロック図は、冷蔵庫に内蔵される電気回路等を示す。
【0012】
図1及び
図2に示されるように、冷蔵庫100は、筐体102、プラグ付きコード104、二次電池106、電気回路108及び冷凍サイクル機構110を備える。電気回路108は、AC/DC変換器114、充電回路116、放電回路118、温度検出機構120、停電検出機構122、充電状態(SOC)検出機構124及び制御回路126を備える。冷凍サイクル機構110は、冷媒128、循環路130、圧縮機132、放熱器(凝縮器)134及び冷却器(蒸発器)136を備える。冷蔵庫100がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。AC/DC変換器114、充電回路116、放電回路118、温度検出機構120、停電検出機構122、SOC検出機構124及び制御回路126の全部又は一部が統合されてもよい。
【0013】
筐体102の内部には、冷蔵室138が形成される。冷蔵室138以外の室が筐体102の内部に形成されてもよい。例えば、冷凍室が筐体102の内部に形成されてもよい。すなわち、冷蔵庫100が冷凍冷蔵庫であってもよい。
【0014】
プラグ付きコード104は、屋内配線のコンセントに電気的及び機械的に接続可能である。屋内配線は、商用電源の給電経路である。プラグ付きコード104は、屋内配線から電力Pを受電する。プラグ付きコード104は、電力PをAC/DC変換器114に給電する。プラグ付きコード104が他の種類の受電機構に置き換えられてもよい。例えば、プラグ付きコード104がプラグを経由しないで屋内配線に直接的に接続されるコードに置き換えられてもよい。
【0015】
二次電池106は、全固体型ポリマーリチウム二次電池である。
【0016】
全固体型ポリマーリチウム二次電池は、リチウムイオン二次電池の一種である。全固体型ポリマーリチウム二次電池は、固体電解質を含むが、揮発性及び可燃性を有する液体電解質及びゲル電解質を含まない。このため、全固体型ポリマーリチウム二次電池は、冷蔵庫100が水没した場合、冷蔵庫100の設置場所に火災が発生した場合等の保護装置の動作を期待できない状況においても、発火、爆発等の危険性を有しない。これにより、冷蔵庫100の安全性が高くなる。
【0017】
液体電解質又はゲル電解質を含むリチウムイオン二次電池は、揮発性及び可燃性を有する溶媒、例えば、エチレンカーボネート系の溶媒を含む。このため、液体電解質又はゲル電解質を含むリチウムイオン二次電池は、保護装置の動作を期待できない状況においては、発火、爆発等の危険性を有する。圧縮機132を駆動する電力を放電可能な中容量又は大容量のリチウムイオン電池においては、発火、爆発等の危険性はより顕著になる。このため、液体電解質又はゲル電解質を含むリチウムイオン二次電池を家庭内に設置される冷蔵庫100に内蔵することは現実的でない。ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等は、発火、爆発等の危険性を有しないが、サイクル寿命が十分でなく、長期間にわたって使用される冷蔵庫100への内蔵に適さない。
【0018】
二次電池106は、典型的には、複数のセルが電気的に接続された組電池である。
【0019】
AC/DC変換器114は、電力Pを交流から直流へ変換し、直流に変換された電力Pを電力P1及びP2に分離して給電する。電力P1は、二次電池106を経由する。電力P2は、二次電池106を経由しない。電力P1は、充電回路116に給電される。電力P2は、制御回路126を経由して圧縮機132に給電される。AC/DC変換器114が他の種類の給電機構に置き換えられてもよい。例えば、AC/DC変換器114の外部に分岐を有する給電経路が設けられ、直流に変換された電力Pが分岐を有する給電経路により電力P1及びP2に分離して給電されてもよい。電力Pが直流であり昇圧又は降圧が必要である場合は、AC/DC変換器114がDC/DC変換器に置き換えられる。DC/DC変換器は、電力Pを昇圧又は降圧し、電力P1及びP2に分離して給電する。
【0020】
充電回路116は、給電される電力P1により、二次電池106を充電する。充電回路116は、定電流定電圧方式により二次電池106を充電する。充電回路116が定電流定電圧方式以外の方式により二次電池106を充電してもよい。
【0021】
放電回路118は、二次電池106を放電させ、二次電池106が放電した電力P3を制御回路126を経由して圧縮機132に給電する。
【0022】
温度検出機構120は、冷蔵室138の温度を検出する。温度検出機構120は、例えば、冷蔵室138に設置された温度センサーにより冷蔵室138の温度を検出する。
【0023】
停電検出機構122は、屋内配線からの電力Pの受電が停止したことを検出する。停電検出機構122は、例えば、AC/DC変換器114の入力電圧を監視することにより、屋内配線からの電力Pの受電が停止したことを検出する。
【0024】
SOC検出機構124は、二次電池106のSOCを検出する。SOC検出機構124は、例えば、二次電池106の電圧、充放電電流の時間積分等から、二次電池106のSOCを検出する。
【0025】
冷凍サイクル機構110においては、冷却器136が冷蔵室138から冷媒128へ熱を吸収させ、放熱器134が冷媒128から外部へ熱を放出させる。冷媒128は、循環路130を循環する。圧縮機132、放熱器134及び冷却器136は、循環路130に挿入される。圧縮機132は、電力P2及びP3を消費し冷媒128を圧縮する。冷凍サイクル機構110の構成が変更されてもよい。例えば、循環路130が省略され、圧縮機132、放熱器134及び冷却器136が直結されてもよい。
【0026】
制御回路126は、温度検出機構120、停電検出機構122及びSOC検出機構124の検出結果を取得し、AC/DC変換器114、充電回路116及び放電回路118を制御する。制御回路126においては、組み込みコンピューターに制御プログラムを実行させることにより、タイマー、システム制御等の機能が実現される。制御回路126が同様の機能を有する他の種類の制御器に置き換えられてよい。例えば、制御回路126の機能の全部又は一部がプログラムを伴わないハードウェアにより実現されてもよい。ハードウェアは、例えば、演算増幅器、コンパレーター、論理回路等の電子回路を含む。
【0027】
制御回路126は、基本的には、23時から7時までの夜間時間帯に充電回路116に充電を許可し7時から23時までの昼間時間帯に放電回路118に放電を許可することにより、23時から7時までの夜間時間帯に屋内配線から受電した電力Pを7時から23時までの昼間時間帯に圧縮機132が消費するようにする。これにより、電力需要の平準化に寄与できる。
【0028】
23時から7時までの時間帯は、深夜電力向けの電力料金が適用される時間帯である。電力料金の体系、電力需要の平準化の社会的要請等によっては、充電回路116に充電を許可する時間帯が23時から7時までの時間帯以外の時間帯に変更されてもよく、放電回路118に放電を許可する時間帯が7時から23時までの時間帯以外の時間帯に変更されてもよい。
【0029】
二次電池106は、放熱器134に沿って配置される。これにより、冷媒128から放出される熱により二次電池106の温度が上昇する。全固体型ポリマーリチウム二次電池は、液体電解質又はゲル電解質を含むリチウムイオン二次電池と比較して、温度が高い場合に良好な充放電性能を有する。このため、二次電池106が放熱器134に沿って設置された場合は、二次電池106の充放電性能が向上する。全固体型ポリマーリチウム二次電池は塗工工程を経て製造可能であり板状又はシート状にすることが容易であるので、放熱器134が板状である場合でも二次電池106を放熱器134に沿って配置することは容易である。ただし、二次電池106の配置が変更されてもよい。
【0030】
圧縮機132は、直流駆動される。圧縮機132に内蔵され冷媒128を圧縮する動力を発生するモーターは、直流モーターである。これにより、電力P3が圧縮機132に給電される場合に直流から交流への変換を行う必要がなくなり、直流から交流への変換に伴う損失がなくなり、圧縮機132が交流駆動される場合と比較して電力P3の損失が減少する。ただし、電力P3を直流から交流へ変換するDC/AC変換器が設けられ、圧縮機132が交流駆動されてもよい。
【0031】
図3のフローチャートは、制御回路によるAC/DC変換器、充電回路及び放電回路の制御のアルゴリズムを示す。
【0032】
23時から7時までの夜間時間帯に(ステップS101においてYES)、電力Pの受電が停止したことを停電検出機構122が検出していない場合は(ステップS102においてNO)、制御回路126は、AC/DC変換器114に給電を許可し、充電回路116に充電を許可し、放電回路118に放電を許可しない(ステップS105)。この場合は、電力P1を充電回路116に給電可能であり、電力P1により二次電池106を充電可能である。また、制御回路126を経由して電力P2を圧縮機132に給電可能であり、圧縮機132が電力P2を消費して冷媒128を圧縮可能である。
【0033】
23時から7時までの夜間時間帯に(ステップS101においてYES)、電力Pの受電が停止したことを停電検出機構122が検出し、SOC検出機構124が検出したSOCが基準以上である場合は(ステップS102においてYES、ステップS103においてYES)、制御回路126は、AC/DC変換器114に給電を許可し、充電回路116に充電を許可し、放電回路118に放電を許可する(ステップS104)。この場合は、制御回路126を経由して電力P3を圧縮機132に給電可能であり、圧縮機132が電力P3を消費して冷媒128を圧縮可能である。これにより、停電が発生した場合でも冷蔵庫100の運転が継続される。この場合は、AC/DC変換器114による給電及び充電回路116による充電は許可されているが、電力Pの受電が停止しているため、電力P1による二次電池106の充電は実際には行われず、電力P2の圧縮機132への給電は実際には行われない。したがって、この場合において、AC/DC変換器114による給電及び充電回路116による充電の両方又は片方を許可しないことも許される。
【0034】
23時から7時までの夜間時間帯に(ステップS101においてYES)、電力Pの受電が停止したことを停電検出機構122が検出し、SOC検出機構124が検出したSOCが基準以上でない場合は(ステップS102においてYES、ステップS103においてNO)、制御回路126は、AC/DC変換器114に給電を許可し、充電回路116に充電を許可し、放電回路118に放電を許可しない(ステップS105)。この場合は、電力P2及びP3のいずれも圧縮機132に供給されず、圧縮機132は冷媒128を圧縮しない。この場合は、AC/DC変換器114による給電及び充電回路116による充電は許可されているが、屋内配線からの電力Pの受電が停止しているため、電力P1による二次電池106の充電は実際には行われず、電力P2の圧縮機132への給電は実際には行われない。したがって、この場合において、AC/DC変換器114による給電及び充電回路116による充電の両方又は片方を許可しないことも許される。
【0035】
7時から23時までの昼間時間帯に(ステップS101においてNO)、SOC検出機構124が検出したSOCが基準以上である場合は(ステップS106においてYES)、制御回路126は、AC/DC変換器114に給電を許可せず、充電回路116に充電を許可せず、放電回路118に放電を許可する(ステップS107)。この場合は、制御回路126を経由して電力P3を圧縮機132に給電可能であり、圧縮機132が電力P3を消費して冷媒128を圧縮可能である。
【0036】
7時から23時までの昼間時間帯に(ステップS101においてNO)、SOC検出機構124が検出したSOCが基準以上でない場合は(ステップS106においてNO)、制御回路126は、AC/DC変換器114に給電を許可し、充電回路116に充電を許可し、放電回路118に放電を許可しない(ステップS108)。この場合は、制御回路126を経由して電力P2を圧縮機132に給電可能であり、圧縮機132が電力P2を消費して冷媒128を圧縮可能である。また、AC/DC変換器114を経由して電力P1を充電回路116に給電可能であり、電力P1により二次電池106を充電可能である。これにより、二次電池106の過放電が抑制される。
【0037】
図4のフローチャートは、制御回路による圧縮機の制御のアルゴリズムを示す。
【0038】
圧縮機132に電力P2又はP3を給電可能である場合は、温度検出機構120により検出される温度が設定温度以上であるときは(ステップS111においてYES)、圧縮機132が駆動される(ステップS112)。温度検出機構120により検出される温度が基準温度以上でないときは(ステップS111においてNO)、圧縮機132は駆動されない(ステップS113)。このON−OFF制御により、冷蔵室138の温度が設定温度の付近に調整される。ON−OFF制御以外の制御が行われてもよい。例えば、PID制御等が行われてもよい。
【0039】
図5の模式図は、全固体型ポリマーリチウム二次電池のセルの断面図である。
【0040】
図5に示されるように、セル140は、負極集電体142、負極活物質層144、固体電解質層146、正極活物質層148及び正極集電体150を備える。セル140がこれらの構成物以外の構成物を備えてもよい。例えば、セル140が外装フィルムを備えてもよい。負極集電体142、負極活物質層144、固体電解質層146、正極活物質層148及び正極集電体150は、この順序で積層される。固体電解質層146は、負極活物質層144及び正極活物質層148の間にある。負極活物質層144及び正極活物質層148は、それぞれ、負極集電体142及び正極集電体150に接触する。セル140の構造が変更されてもよい。
【0041】
負極活物質層144は、リチウムイオン伝導性の固体電解質、負極活物質及び導電助剤を含む。固体電解質層146は、リチウムイオン伝導性の固体電解質を含む。正極活物質層148は、リチウムイオン伝導性の固体電解質、正極活物質及び導電助剤を含む。負極活物質層144、固体電解質層146及び正極活物質層148の全部又は一部が他の成分を含有してもよい。例えば、負極活物質層144、固体電解質層146及び正極活物質層148の全部又は一部がポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のバインダを含有してもよい。負極活物質層144に含有されるリチウムイオン伝導性の固体電解質、固体電解質層146に含有されるリチウムイオン伝導性の固体電解質及び正極活物質層148に含有されるリチウムイオン伝導性の固体電解質は、同じものであってもよいし異なるものであってもよい。負極活物質層144に含有される導電助剤及び正極活物質層148に含有される導電助剤も、同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
【0042】
負極活物質は、正極活物質よりも低い電位でリチウムイオンを挿入/脱離できる物質である。負極活物質は、炭素、黒鉛、Li
4Ti
5O
12等のスピネル化合物、Si、Siを含む合金、Sn、Snを主成分とする合金等である。負極活物質がこれらの物質以外の物質であってもよい。
【0043】
正極活物質は、リチウムイオンを挿入/脱離できる物質である。正極活物質は、LiCoO
2,LiNiO
2等の層状岩塩型化合物、LiMn
2O
4等のスピネル化合物、LiFePO
4,LiMn
xFe
1−xPO
4等のポリアニオン化合物等である。正極活物質がこれらの物質以外の物質であってもよい。
【0044】
導電助剤は、導電性の物質の粉末又は繊維である。導電助剤は、カーボンブラック等の導電性炭素粉末、カーボンナノファイバ・カーボンナノチューブ等の導電性炭素繊維等である。導電助剤がこれらの物質以外の物質であってもよい。
【0045】
負極集電体142は、銅又は銅を主成分とする合金からなる。負極集電体142の材質が変更されてもよい。
【0046】
正極集電体150は、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金からなる。正極集電体150の材質が変更されてもよい。
【0047】
図6の模式図は、リチウムイオン伝導性の固体電解質のマトリクスの第1の例を示す。
図6は、マトリクスの微構造を示す。
【0048】
リチウムイオン伝導性の固体電解質は、マトリクス152にリチウム塩を溶解させることにより得られる。
【0049】
マトリクス152は、高分岐ポリマー154と架橋性エチレンオキシド多元共重合体156とが化学架橋された共架橋体158に非反応性ポリアルキレングリコール160が保持された微構造を有する。共架橋体158は、高分岐ポリマー154と架橋性エチレンオキシド多元共重合体156とが化学架橋する架橋点162を少なくとも有するが、高分岐ポリマー154同士が化学架橋する架橋点164を有してもよいし、架橋性エチレンオキシド多元共重合体156同士が化学架橋する架橋点166を有してもよい。非反応性ポリアルキレングリコール160は、主に、高分岐ポリマー154の部分に保持される。
【0050】
リチウムイオン伝導性の固体電解質は、高分岐ポリマー154、架橋性エチレンオキシド多元共重合体156、非反応性ポリアルキレングリコール160及びリチウム塩を含有する前駆体混合物の高分岐ポリマー154と架橋性エチレンオキシド多元共重合体156とを架橋反応させることにより得られる。架橋反応は、望ましくは電子線照射により進行させられる。架橋反応が加熱、光照射等により進行させられてもよい。
【0051】
分子鎖の運動性が高い高分岐ポリマー154及び分子鎖の運動性が高分岐ポリマー154よりさらに高い非反応性ポリアルキレングリコール160を固体電解質が含むことにより、固体電解質のリチウムイオン伝導性が向上し、セル140の低温における性能が向上する。マトリクス152によれば、架橋性エチレンオキシド多元共重合体156の分子鎖が十分に長く、高分岐ポリマー154の分子鎖の運動性が損なわれにくく、固体電解質のリチウムイオン伝導性が低下しにくい。
【0052】
高分岐ポリマー154及びポリアルキレングリコール160は、負極活物質層144、固体電解質層146及び正極活物質層148のタック性を向上することにも寄与する。これにより、負極活物質層144、固体電解質層146及び正極活物質層148の密着性が向上し、セル140の製造が容易になる。密着性の向上は、層間の界面の電気抵抗を減らし、セル140の充放電性能を向上することにも寄与する。
【0053】
伸縮性が高い架橋性エチレンオキシド多元共重合体156がスペーサとなることにより、マトリクス152の伸縮性が向上し、固体電解質の強度が向上し、セル140の強度が向上する。
【0054】
常温で液体又は粘稠液体の高分岐ポリマー154が架橋性エチレンオキシド多元共重合体156と架橋することにより、高分岐ポリマー154がマトリクス152から漏出しにくくなり、固体電解質の安定性が向上する。
【0055】
常温でワックス状固体の非反応性ポリアルキレングリコール160が高分岐ポリマー154の部分に保持されることにより、非反応性ポリアルキレングリコール160がマトリクス152から漏出しにくくなり、固体電解質の安定性が向上する。
【0056】
高分岐ポリマー154、架橋性エチレンオキシド多元共重合体156及び非反応性ポリアルキレングリコール160は、多数のエーテル酸素を含む。これにより、エーテル酸素にリチウムイオンを溶媒和させ、マトリクス152にリチウム塩を溶解させることが可能になる。
【0057】
高分岐ポリマー154及び非反応性ポリアルキレングリコール160の合計の重量に占める高分岐ポリマー154の重量は、望ましくは10〜60重量%であり、さらに望ましくは20〜60重量%である。高分岐ポリマー154の含有量がこれらの範囲よりも少ない場合は、固体電解質の強度が低下する傾向が顕著になるからである。また、高分岐ポリマー154の含有量がこれらの範囲より多い場合は、固体電解質のリチウムイオン伝導性が低下する傾向が顕著になるからである。
【0058】
高分岐ポリマー154及び非反応性ポリアルキレングリコール160の合計の重量の100重量部に対する架橋性エチレンオキシド多元共重合体156の重量は、望ましくは10〜130重量部であり、さらに望ましくは20〜80重量部である。架橋性エチレンオキシド多元共重合体156の含有量がこれらの範囲よりも少ない場合は、固体電解質の強度が低下する傾向が顕著になるからである。また、架橋性エチレンオキシド多元共重合体156の含有量がこれらの範囲よりも多い場合は、固体電解質のリチウムイオン導電率が低下する傾向が顕著になるからである。
【0059】
マトリクス152に含まれるエーテル酸素のモル量[O]に対するリチウムイオンのモル量[Li]のモル比[Li]/[O]は、望ましくは1/5〜1/25であり、さらに望ましくは1/8〜1/20であり、特に望ましくは1/10〜1/13である。モル比[Li]/[O]がこの範囲内である場合は、リチウムイオン導電性が良好な固体電解質が得られるからである。
【0060】
高分岐ポリマー154は、ポリアルキレンオキシド鎖を含む枝分かれ分子鎖を有し、架橋性エチレンオキシド多元共重合体156の架橋基と反応する架橋基を有する。ポリアルキレンオキシド鎖とは、アルキレン基とエーテル酸素とが交互に配列された分子鎖を意味する。ポリアルキレンオキシド鎖は、典型的には、ポリエチレンオキシド鎖である。ポリアルキレンオキシド鎖が置換基を有してもよい。
【0061】
高分岐ポリマー154の平均分子量は、望ましくは2000〜15000である。
【0062】
高分岐ポリマー154が架橋性エチレンオキシド多元共重合体156の架橋基と反応する架橋基を有することにより、高分岐ポリマー154と架橋性エチレンオキシド多元共重合体156との3次元網目状の共架橋体158が形成される。
【0063】
架橋基は、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の不飽和結合を有する基から選択される。これらの中でも、望ましくはアクリロイル基が選択される。アクリロイル基は、反応性が良好であるとともに、リチウムイオンの移動を妨げないからである。
【0064】
高分岐ポリマー154の末端基は架橋基であることが望ましいが、高分岐ポリマー154の末端基の全部が架橋基である必要はなく、高分岐ポリマー154の末端基の一部がアセチル基等の架橋基でない基であってもよい。ただし、望ましくは高分岐ポリマー154の末端基には水酸基が含まれない。水酸基が含まれる場合は、リチウムイオンが水酸基に補足され、固体電解質のリチウムイオン伝導性が低下する傾向があらわれるからである。
【0065】
高分岐ポリマー154は、末端基が水酸基でありポリアルキレンオキシド鎖を含む2本の分子鎖及び末端基が水酸基と反応するAである1本の分子鎖がXから延在する化学式(1)に示すモノマーの水酸基とAとを反応させることにより得られるポリマーの末端基を架橋基としたポリマーであることが望ましい。ポリアルキレンオキシド鎖が置換基を有してもよい。
【0067】
化学式(1)のXは3価の基であり、Y
1及びY
2はアルキレン基であり、m及びnは0以上の整数である。ただし、Xがポリアルキレンオキシド鎖を含まない場合は、m及びnの少なくとも一方は1以上の整数である。
【0068】
化学式(1)のAは、望ましくは、カルボキシル基、硫酸基、スルホ基、リン酸基等の酸性基、これらの酸性基をアルキルエステル化した基、これらの酸性基を塩素化した基、グリシジル基等であり、さらに望ましくは、酸性基をアルキルエステル化した基であり、特に望ましくは、カルボキシル基をアルキルエステル化した基である。Aが酸性基をアルキルエステル化した基である場合は、エステル交換反応により水酸基とAとを容易に反応させることができるからである。
【0069】
エステル交換反応は、望ましくは、塩化トリブチルスズ・塩化トリエチルスズ・ジクロロブチルスズ等の有機スズ化合物、チタン酸イソプロピル等の有機チタン化合物等の触媒の存在下で行われ、窒素気流下で行われ、100〜250℃の温度下で行われる。ただし、他の条件によりエステル交換反応が行われてもよい。
【0070】
ポリアルキレンオキシド鎖の導入は、望ましくは炭酸カリウム等の塩基の触媒の存在下でポリアルキレンオキシド鎖を前駆体の水酸基に付加することにより行われる。ただし、他の方法でポリアルキレンオキシド鎖が導入されてもよい。
【0071】
化学式(1)のXは、望ましくはQから延在するZ
1,Z
2及びZ
3を含む3本の分子鎖を有する化学式(2)に示す基である。化学式(2)のQはメチン基、芳香族環又は脂肪族環であり、Z
1,Z
2及びZ
3はアルキレン基又はポリアルキレンオキシド鎖である。アルキレン基又はポリアルキレンオキシド鎖が置換基を有してもよい。Z
1,Z
2及びZ
3の全部又は一部が省略されてもよい。
【0073】
高分岐ポリマー154は、さらに望ましくは化学式(3)に示す構成単位のカルボニル基とポリアルキレンオキシド鎖とを結合して得られるポリマーの末端基を架橋基としたポリマーである。化学式(3)のm及びnは、望ましくは1〜20である。当該ポリマーは、3,5−ジヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加物又はその誘導体(例えば、3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル)を重合し、末端基として架橋基を導入することにより合成される。
【0075】
架橋性エチレンオキシド多元共重合体156は、エチレンオキシド及び架橋基を有するグリシジルエーテルを含む2種類以上のモノマーの多元共重合体である。
【0076】
架橋性エチレンオキシド多元共重合体156は、望ましくはエチレンオキシド及び架橋基を有するグリシジルエーテルの二元共重合体である。当該二元共重合体は、化学式(4)及び(5)に示す構成単位が不規則に配列された二元共重合体である。化学式(5)のR
1は、架橋基であり、望ましくはアルケニル基であり、さらに望ましくはアリル基である。
【0079】
架橋性エチレンオキシド多元共重合体156は、エチレンオキシド、架橋基を有するグリシジルエーテル及びエチレンオキシド以外のアルキレンオキシドの三元共重合体であってもよい。当該三元共重合体は、化学式(4)及び(5)に示す構成単位に加えて化学式(6)に示す構成単位が不規則に配列された三元共重合体である。化学式(6)のR
2は、炭素数が1〜2のアルキル基である。
【0081】
架橋性エチレンオキシド多元共重合体156が二元共重合体である場合は、化学式(4)及び(5)に示す構成単位の合計に占める架橋基を有する化学式(5)に示す構成単位が占める比率は、望ましくは20%以下であり、さらに望ましくは0.2〜10%であり、特に望ましくは0.5〜5%である。架橋性エチレンオキシド多元共重合体156が三元共重合体である場合は、化学式(4)、(5)及び(6)に示す構成単位の合計に占める架橋基を有する化学式(5)に示す構成単位が占める比率は、望ましくは20%以下であり、さらに望ましくは0.2〜10%であり、特に望ましくは0.5〜5%である。架橋基を有する構成単位の比率がこの範囲より多い場合は、リチウムイオン導電性が低下する傾向が顕著になるからである。また、架橋基を有する構成単位の比率がこの範囲より少ない場合は、固体電解質の強度が低下する傾向が顕著になるからである。
【0082】
架橋性エチレンオキシド多元共重合体156の重量平均分子量は、望ましくは50000〜300000である。これにより、共架橋体158の3次元網目構造に伸縮しやすい部分ができ、固体電解質の弾性が向上し、固体電解質の強度が向上する。
【0083】
非反応性ポリアルキレングリコール160の分子鎖の両末端は、非反応性の末端基で封止される。「非反応性」とは、マトリクス152の他の要素と反応せず、リチウムイオンの移動を阻害しないことを意味する。これにより、非反応性ポリアルキレングリコール160が架橋して非反応性ポリアルキレングリコール160の分子鎖の運動性が低下することが抑制され、非反応性ポリアルキレングリコール160がリチウムイオンの伝導を阻害することが抑制される。
【0084】
非反応性ポリアルキレングリコール160は、エチレンオキシドの単独重合体、プロピレンオキシドの単独重合体、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの二元共重合体等であり、オリゴアルキレングリコール鎖を含む分子鎖を有する。
【0085】
末端基は、炭素数が1〜7のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルエステル基等から選択される。
【0086】
非反応性ポリアルキレングリコール160は、望ましくは化学式(7)に示すオリゴマーである。化学式(7)のnは、望ましくは4〜45であり、さらに望ましくは5〜25である。非反応性ポリアルキレングリコール160の分子量は、望ましくは200〜2000であり、さらに望ましくは300〜1000である。
【0088】
図6には、直鎖状の非反応性ポリアルキレングリコール160が共架橋体158に保持された状態が示されるが、直鎖状の非反応性ポリアルキレングリコール160に代えて、オリゴアルキレングリコール鎖を含む枝分かれ分子鎖を有するオリゴマーが共架橋体158に保持されてもよい。もちろん、当該オリゴマーの全末端は、非反応性の末端基で封止される。
【0089】
リチウム塩は、LiPF
6,LiClO
4,LiBF
4,LiN(CF
3SO
2)
2[LITFSI],LiN(CF
3CF
2SO
2)
2,LiCF
3SO
3等から選択される。これらのリチウム塩以外のリチウム塩がマトリクスに溶解されてもよい。
【0090】
図7の模式図は、リチウムイオン伝導性の固体電解質のマトリクスの第2の例を示す。
【0091】
マトリクス166は、高分岐ポリマー168と架橋性エチレンオキシド多元共重合体170とが化学架橋された共架橋体172に非反応性ポリアルキレングリコール174が保持された微構造を有する。さらに、マトリクス166においては、高分岐ポリマー168の架橋基と反応する基を有さない非架橋性エチレンオキシド単独重合体176が共架橋体172に物理架橋される。「物理架橋」とは、化学結合による化学架橋を形成せずに分子鎖同士をからませることをいう。非架橋性エチレンオキシド単独重合体176により、固体電解質の強度がさらに向上する。
【0092】
非架橋性エチレンオキシド単独重合体176は、化学式(8)に示す構成単位が配列された単独重合体である。
【0094】
非架橋性エチレンオキシド単独重合体176の重量平均分子量は、望ましくは50000〜300000である。
【0095】
非架橋性エチレンオキシド単独重合体176に代えて、又は、非架橋性エチレンオキシド単独重合体176に加えて、高分岐ポリマー168の架橋基と反応する架橋基を有さない非架橋性エチレンオキシド多元共重合体が共架橋体172に物理架橋されてもよい。
【0096】
非架橋性エチレンオキシド多元共重合体は、エチレンオキシド及びエチレンオキシド以外のアルキレンオキシド(例えば、炭素数が3〜4のアルキレンオキシド)を含む2種類以上のモノマーの多元共重合体である。
【0097】
非架橋性エチレンオキシド多元共重合体は、望ましくは化学式(8)に示す構成単位に加えて化学式(9)に示す構成単位が不規則に配列された二元共重合体である。化学式(9)のR
1は、炭素数が1〜2のアルキル基であり、望ましくはメチル基である。
【0099】
非架橋性エチレンオキシド多元共重合体の重量平均分子量は、望ましくは50000〜300000である。
【0100】
高分岐ポリマー168、架橋性エチレンオキシド多元共重合体170、非反応性ポリアルキレングリコール174及びリチウム塩の望ましい含有量は、第1の例の場合と同様である。
【0101】
高分岐ポリマー168、架橋性エチレンオキシド多元共重合体170及び非反応性ポリアルキレングリコール174の合計の重量の100重量部に対する非架橋性エチレンオキシド単独重合体176又は非架橋性エチレンオキシド多元共重合体の重量は、望ましくは5〜150重量部であり、さらに望ましくは10〜100重量部である。非架橋性エチレンオキシド単独重合体又は非架橋性エチレンオキシド多元共重合体の含有量がこれらの範囲よりも少ない場合は、固体電解質の強度を向上する効果があらわれにくくなるからである。また、非架橋性エチレンオキシド単独重合体又は非架橋性エチレンオキシド多元共重合体の含有量がこれらの範囲より多い場合は、固体電解質のリチウムイオン伝導性が低下する傾向が顕著になるからである。
【0102】
リチウムイオン伝導性の固体電解質は、高分岐ポリマー168、架橋性エチレンオキシド多元共重合体170、非反応性ポリアルキレングリコール174、非架橋性エチレンオキシド単独重合体176(非架橋性エチレンオキシド多元共重合体)及びリチウム塩を含有する前駆体混合物の高分岐ポリマー168と架橋性エチレンオキシド多元共重合体170を架橋反応させることにより得られる。
【0103】
リチウムイオン電導性の固体電解質のマトリクスが、第1の例及び第2の例以外のものに変更されてもよい。
【0104】
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての局面において例示であって限定的ではない。したがって、本発明の範囲からはずれることなく無数の修正及び変形が案出されうると解される。