特許第5909487号(P5909487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 立川ブラインド工業株式会社の特許一覧

特許5909487縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置
<>
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000002
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000003
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000004
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000005
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000006
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000007
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000008
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000009
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000010
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000011
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000012
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000013
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000014
  • 特許5909487-縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909487
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/36 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   E06B9/36 A
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-522980(P2013-522980)
(86)(22)【出願日】2012年6月29日
(86)【国際出願番号】JP2012066717
(87)【国際公開番号】WO2013005678
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2011-147765(P2011-147765)
(32)【優先日】2011年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250672
【氏名又は名称】立川ブラインド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河合 英治
【審査官】 川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2552854(JP,B2)
【文献】 特公昭59−42182(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンガーレールと、
前記ハンガーレールに支持された多数のランナーと、
前記各ランナーに吊下げて支持されたスラットと、
前記ハンガーレール内で回動可能に支持されるとともに、前記ランナーに挿通された角度調節軸であって、該角度調節軸の回転に基づいて前記各スラットを回動操作可能とする角度調節軸と、
前記ハンガーレール内において周回可能に支持され、前記ランナーを該ハンガーレールに沿って移送する移送コードと、
前記ハンガーレールの一端に設けられ、操作コードの操作により前記角度調節軸を回転させるとともに、前記移送コードを周回させる操作装置とを備えた縦型ブラインドにおいて、
前記操作装置は、
前記操作コードの操作により前記角度調節軸を回転させるチルト装置と、
前記操作コードの操作により前記移送コードを周回させるスラット移送装置とを備え、
前記チルト装置は、前記角度調節軸に作用する回転トルクが増大したとき、前記操作コードの操作力の前記角度調節軸への伝達を遮断するクラッチ手段を備えたことを特徴とする縦型ブラインド。
【請求項2】
前記スラット移送装置は、前記角度調節軸の回転停止後に、前記移送コードの周回動作を開始させる移送遅延装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の縦型ブラインド。
【請求項3】
前記クラッチ手段は、切替スプリングの付勢力で互いに係合するチルトクラッチとチルトクラッチ軸とを備え、前記操作コードの操作に基づいて前記チルトクラッチを介して回転する前記チルトクラッチ軸で前記角度調節軸を回転させ、前記角度調節軸に作用する負荷が増大したとき、前記切替スプリングの付勢力に抗してチルトクラッチとチルトクラッチ軸との係合を解除可能であるたことを特徴とする請求項1又は2記載の縦型ブラインド。
【請求項4】
前記クラッチ手段は、前記チルトクラッチ軸との係合が解除されたチルトクラッチで、前記角度調節軸に回転トルクを伝達するクラッチスプリングを空回りさせることを特徴とする請求項3記載の縦型ブラインド。
【請求項5】
前記移送遅延装置は、
前記操作コードの操作に基づいて回転される開閉ギヤと、
前記移送コードを周回するように駆動する開閉プーリーと、
前記開閉ギヤと開閉プーリーとの間に介在され、前記開閉ギヤがあらかじめ設定された角度を回転した後に、前記開閉ギヤの回転を前記開閉プーリーに伝達する伝達プレートとを備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の縦型ブラインド。
【請求項6】
前記クラッチ手段は、前記ランナーの全個数のうち半数以上のランナーで前記スラットが全閉状態若しくはその状態からほぼ180度反転した逆全閉状態となったとき、前記チルトクラッチと前記チルトクラッチ軸との係合を解除可能であることを特徴とする請求項3記載の縦型ブラインド。
【請求項7】
入力部を有するチルト軸と、前記チルト軸の入力部に設けられ、操作により入力された回転トルクを前記チルト軸に対し伝達又は遮断可能なクラッチスプリングと、
前記回転トルクを前記チルト軸に対して伝達するチルトクラッチ軸と、
前記回転トルクの前記チルト軸への伝達を遮断するチルトクラッチとを備えたブラインドのチルトクラッチ装置であって、
前記チルトクラッチ軸は、径方向に延びるフランジと、該フランジに設けられた作動片とを有し、該作動片は、前記回転トルクが所定値以下である場合に前記クラッチスプリングを前記チルト軸に締め付けるよう前記クラッチスプリングに当接し、
前記チルトクラッチは、径方向に延びるフランジと、該フランジに設けられた解除片とを有し、該解除片は、前記回転トルクが所定値を超える場合に前記チルト軸に対する前記クラッチスプリングの締め付けを解除するように前記クラッチスプリングに当接することを特徴とするブラインドのチルトクラッチ装置。
【請求項8】
前記チルトクラッチは操作により入力される回転トルクを常に受け、
前記チルト軸へ前記回転トルクが伝達される時、前記チルトクラッチと前記チルトクラッチ軸とが一体回転するとともに前記回転トルクが前記チルトクラッチ軸からクラッチスプリングへと伝達され、
前記チルト軸への前記回転トルクが遮断されている時、前記チルトクラッチと前記チルトクラッチ軸とが相対回転するとともに前記回転トルクが前記チルトクラッチから前記クラッチスプリングへ伝達されることを特徴とする請求項7記載のブラインドのチルトクラッチ装置。
【請求項9】
前記クラッチスプリングは捩じりコイルスプリングであり、該捩じりコイルスプリングは径方向外側に突出する二つの端部を有し、前記二つの端部は前記捩じりコイルスプリングの全周を二つの周面部に区分し、前記作動片は前記コイルスプリングを縮径させるための一方の周面部に配置され、前記解除片は前記コイルスプリングを拡径させる ための他方の周面部に配置されていることを特徴とする請求項7又は8記載のブラインドのチルトクラッチ装置。
【請求項10】
前記チルトクラッチ軸と前記チルトクラッチとは軸方向に相対移動可能であり、前記チルトクラッチ軸と前記チルトクラッチとを互いに係合可能な係合部が前記チルトクラッチ軸と前記チルトクラッチとの間に設けられ、前記回転トルクが所定値以下である場合に前記係合部が前記チルトクラッチ軸と前記チルトクラッチとを係合させた状態に保持されるよう前記チルトクラッチを付勢する付勢手段を備える請求項7又は8記載のブラインドのチルトクラッチ。
【請求項11】
前記係合部は、前記チルトクラッチ軸及び前記チルトクラッチの一方に設けられた係止凹部と、前記チルトクラッチ軸及び前記チルトクラッチの他方に設けられた係止突部とを備え、前記係止凹部の周方向の側面が斜面として形成されている請求項10記載のブラインドのチルトクラッチ装置。
【請求項12】
前記チルトクラッチと一体に回転する伝達するギヤを備え、該ギヤ は、スラットを移送する移送装置又はスラットを昇降する昇降軸に対して前記チルトクラッチの回転を伝達すること特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載のブラインドのチルトクラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、共通の操作コードの操作によりスラットの移送操作と角度調節操作を行う縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
縦型ブラインドは、ハンガーレール内に多数のランナーが移動可能に支持され、各ランナーにはそれぞれスラットが吊下支持される。そして、操作装置の操作により、各スラットをハンガーレールに沿って移送し、あるいは各スラットを同位相で回動して、室内への採光量を調節可能としている。
【0003】
このような縦型ブラインドの操作装置の一例として、ハンガーレールの一端に垂下される無端状の操作コードを操作することにより、スラットを全閉状態まで回動させた後に、移送操作を開始する構成としたものが提案されている。
【0004】
特許文献1には、操作装置から垂下されるビーズチェーンを横方向に変位させることにより、スラットの移送操作と回動操作とを切り替え可能とした縦型ブラインドが開示されている。
【0005】
特許文献2には、チェーンの操作により回転されるネジ軸に沿って歯車を移動させ、その歯車の移動により、スラットの移送操作と回動操作とを切り替え可能とした縦型ブラインドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008‐531891号公報
【特許文献2】特開昭49‐89332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された縦型ブラインドでは、スラットの移送操作と回動操作とを切り替えるために、ビーズチェーンを横方向に変位させる操作が必要となる。従って、移送操作と回動操作との切り替え操作が煩雑となる。
【0008】
特許文献2に開示された縦型ブラインドでは、螺旋溝を備えたネジ軸を回転させてランナーを移送する構成であるため、スラットの移送操作に要する操作力が増大する。また、ネジ軸を回転させて歯車を移動操作することにより、スラットの移送操作と回動操作とを切り替える構成であるため、歯車の移送操作に要する操作力が大きくなる。
【0009】
さらに、スラットの回動操作と移送操作とを切り替えるタイミングは、スラットの実際の角度に関わらず、ネジ軸に対する歯車の移動位置で決定される。このため、スラットの角度が不揃いとなっている状態からスラットの回動操作及び移送操作を行うと、全てのスラットが同一の所定角度に揃えられる前にスラットの移送操作が開始されてしまうことがある。
【0010】
また、スラットの角度を全閉状態に揃えるとき、先に全閉状態となったランナーではネジ軸とスラット吊下軸とを摩擦させながら空回りさせるため、チェーンを操作するために要する操作力が増大するという問題点がある。
【0011】
この発明の目的は、共通の操作コードでスラットの移送操作と回動操作を行う縦型ブラインドにおいて、スラットの移送操作と回動操作とを円滑に切り替え可能とし、かつスラットの移送操作と回動操作に要する操作力を軽減し得る縦型ブラインド及びブラインドのチルトクラッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1では、ハンガーレールと、前記ハンガーレールに支持された多数のランナーと、前記各ランナーに吊下げて支持されたスラットと、前記ハンガーレール内で回動可能に支持するとともに角度調節軸を前記ランナーに挿通された角度調節軸であって、該角度調節軸の回転に基づいて前記各スラットを回動操作可能とする角度調節軸と、前記ハンガーレール内において周回可能に支持され、前記ランナーを該ハンガーレールに沿って移送する移送コードと、前記ハンガーレールの一端に設けられ、操作コードの操作により前記角度調節軸を回転させるとともに、前記移送コードを周回させる操作装置とを備えた縦型ブラインドにおいて、前記操作装置は、前記操作コードの操作により前記角度調節軸を回転させるチルト装置と、前記操作コードの操作により前記移送コードを周回させるスラット移送装置とを備え、前記チルト装置は、前記角度調節軸に作用する回転トルクが増大したとき、前記操作コードの操作力が前記角度調節軸へ伝達することを遮断するクラッチ手段を備える縦型ブラインドを提供する。
【0013】
請求項2では、前記スラット移送装置は、前記角度調節軸の回転停止後に、前記移送コードの周回動作を開始させる移送遅延装置を備える。
【0014】
請求項3では、前記クラッチ手段は、切替スプリングの付勢力で互いに係合するチルトクラッチとチルトクラッチ軸とを備え、前記操作コードの操作に基づいてチルトクラッチを介して回転するチルトクラッチ軸で前記角度調節軸を回転させ、前記角度調節軸に作用する負荷が増大したとき、前記切替スプリングの付勢力に抗してチルトクラッチとチルトクラッチ軸との係合を解除可能とする。
【0015】
請求項4では、前記クラッチ手段は、前記チルトクラッチ軸との係合が解除されたチルトクラッチで、前記角度調節軸に回転トルクを伝達するクラッチスプリングを空回りさせた 。
【0016】
請求項5では、前記移送遅延装置は、前記操作コードの操作に基づいて回転される開閉ギヤと、前記移送コードを周回駆動する開閉プーリーと、前記開閉ギヤと開閉プーリーとの間に介在され、前記開閉ギヤがあらかじめ設定された角度を回転した後に、前記開閉ギヤの回転を前記開閉プーリーに伝達する伝達プレートとを備える。
【0017】
請求項6では、前記クラッチ手段は、前記ランナーの全個数のうち半数以上のランナーで前記スラットが全閉状態若しくはその状態からほぼ180度反転した逆全閉状態となったとき、前記チルトクラッチと前記チルトクラッチ軸との係合を解除可能とする。
【0018】
請求項7では 、入力部を有するチルト軸と、前記チルト軸の入力部に設けられ、操作により入力された回転トルクを前記チルト軸に対し伝達又は遮断可能なクラッチスプリングと、前記回転トルクを前記チルト軸に対して伝達するチルトクラッチ軸と、前記回転トルクの前記チルト軸への伝達を遮断するチルトクラッチとを備えたブラインドのチルトクラッチ装置であって、前記チルトクラッチ軸は、径方向に延びるフランジと、該フランジに設けられた作動片とを有し、該作動片は、前記回転トルクが所定値以下である場合に前記クラッチスプリングを前記チルト軸に締め付けるよう前記クラッチスプリングに当接し、前記チルトクラッチは、径方向に延びるフランジと、該フランジに設けられた解除片とを有し、該解除片は、前記回転トルクが所定値を超える場合に前記チルト軸に対する前記クラッチスプリングの締め付けを解除するように前記クラッチスプリングに当接することを特徴とするブラインドのチルトクラッチ装置を提供する。
【0019】
請求項8では 、前記チルトクラッチは操作により入力される回転トルクを常に受け、前記チルト軸へ前記回転トルクが伝達される時、前記チルトクラッチと前記チルトクラッチ軸とが一体回転するとともに前記回転トルクが前記チルトクラッチ軸からクラッチスプリングへと伝達され、前記チルト軸への前記回転トルクが遮断されている時、前記チルトクラッチと前記チルトクラッチ軸とが相対回転するとともに前記回転トルクが前記チルトクラッチから前記クラッチスプリングへ伝達される。
【0020】
請求項9では 、前記クラッチスプリングは捩じりコイルスプリングであり、該捩じりコイルスプリングは径方向外側に突出する二つの端部を有し、前記二つの端部は前記捩じりコイルスプリングの全周を二つの周面部に区分し、前記作動片は前記コイルスプリングを縮径させるための一方の周面部に配置され、前記解除片は前記コイルスプリングを拡径させための他方の周面部に配置されている。
【0021】
請求項10では 、前記チルトクラッチ軸と前記チルトクラッチとは軸方向に相対移動可能であり、前記チルトクラッチ軸と前記チルトクラッチとを互いに係合可能な係合部が前記チルトクラッチ軸と前記チルトクラッチとの間に設けられ、前記回転トルクが所定値以下である場合に前記係合部が前記チルトクラッチ軸と前記チルトクラッチとを係合させた状態に保持されるよう前記チルトクラッチを付勢する付勢手段を備える。
【0022】
請求項11では 、前記係合部は、前記チルトクラッチ軸及び前記チルトクラッチの一方に設けられた係止凹部と、前記チルトクラッチ軸及び前記チルトクラッチの他方に設けられた係止突部とを備え、前記係止凹部の周方向の側面が斜面として形成されている。
【0023】
請求項12では 、前記チルトクラッチと一体に回転する伝達するギヤを備え、該ギヤは、スラットを移送する移送装置又はスラットを昇降する昇降軸に対して前記チルトクラッチの回転を伝達する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、共通の操作コードでスラットの移送操作と回動操作を行う縦型ブラインドにおいて、スラットの移送操作と回動操作とを円滑に切り替え可能とし、かつスラットの移送操作と回動操作に要する操作力を軽減し得る縦型ブラインドを提供することができる。
【0025】
また、本発明のブラインドのチルトクラッチ装置によれば、クラッチスプリングに入力された回転トルクの大きさに応じて、該回転トルクをチルト軸に伝達したり遮断したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】縦型ブラインドを示す正面図である。
図2】ランナーを示す断面図である。
図3】操作装置を示す断面図である。
図4】操作装置を示す断面図である。
図5】チルト装置を示す分解斜視図である。
図6】チルト装置の動作を示す断面図である。
図7】チルト装置の動作を示す断面図である。
図8】チルトクラッチとチルトクラッチ軸の動作を示す側面図である。
図9】チルトクラッチとチルトクラッチ軸の動作を示す側面図である。
図10】チルトクラッチとチルトクラッチ軸の動作を示す側面図である。
図11】移送遅延装置を示す分解斜視図である。
図12】伝達プレートを示す斜視図である。
図13】開閉プーリーを示す平面図である。
図14】別例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。図1に示す縦型ブラインドは、ハンガーレール1内に多数のランナー2が移動可能に支持され、各ランナー2からそれぞれスラット3が吊下支持されている。
【0028】
前記ハンガーレール1の一端に設けられる操作装置4からボールチェーン5が垂下され、そのボールチェーン5の操作により、各ランナー2から吊下支持されるスラット3が回動され、あるいは各ランナー2がハンガーレール1内を移送される。このようなスラットの回動操作と移送操作は、まずスラット3が全閉状態まで回動され、その後に各スラット3がハンガーレール1に沿って移送される。
【0029】
前記スラット3の移送操作は、前記ボールチェーン5の操作に基づいてハンガーレール1内を周回する移送コード6の一方に先頭ランナー2aが取着され、その先頭ランナー2aを移送すると、後続のランナー2が等間隔を隔てて順次引き出され、あるいは押し戻される。
【0030】
図1においては、先頭ランナー2aがハンガーレール1の右端側へ移送されると、後続のランナー2が図2に示すスペーサー46を介して等間隔を隔てて順次引き出されて、スラット3がハンガーレール1の右端側へ引き出される。
【0031】
また、先頭ランナー2aがハンガーレール1の左側へ移送されると、後続のランナー2が先頭ランナー2aにより順次ハンガーレール1の左側へ押し戻されて、スラット3がハンガーレール1の左側へ畳み込まれる。
【0032】
前記各スラット3の下端部にはバランスウェイト7が吊下支持され、各バランスウェイト7はボトムコード7aで連結されて、風等によるスラット3のバタつきを防止するようになっている。
【0033】
前記ランナー2の具体的構成を図2に従って説明する。前記ランナー2は、そのケース8の中央部から一側にかけて上方に開口した中空状の直方体部9が形成され、その直方体部9の側壁10に形成された軸受孔(図示しない)にウォーム11が回転可能に支持されている。前記ウォーム11は、軸受孔に対しウォーム11の径方向及び回転軸方向に若干のクリアランスを設けて支持されている。
【0034】
前記ケース8の中央部において、前記直方体部9には弾性を有する合成樹脂で形成された吊下軸12がその軸心を上下方向として軸受部13に回転可能に支持され、その吊下軸12の上部に前記ウォーム11に噛み合うウォームホィール14が常には相対回転不能に嵌合されている。
【0035】
前記直方体部9の側壁10の間隔は、前記ウォームホィール14の直径より若干狭く形成されている。そして、側壁10にはウォームホィール14の外周面に沿って抉られた保持部15が形成され、その保持部15間でウォームホィール14が回転可能に支持されている。
【0036】
前記ウォーム11の中心部には、角度調節軸16が軸方向に相対移動可能に、かつ相対回転不能に挿通されている。従って、角度調節軸16が回転されると、ウォーム11及びウォームホィール14を介して吊下軸12が回転される。
【0037】
前記吊下軸12の上端部は二股状に形成されるとともに、その二股部分の先端には吊下軸12の径方向両側に楔状に突出するストッパー部17が形成されている。前記ウォームホィール14は中心部に貫通孔18を備えた筒状に形成されている。
【0038】
そして、前記貫通孔18に前記ストッパー部17を縮径方向に撓ませながら挿入し、貫通孔18の一端側(図2において上端側)にストッパー部17を露出させると、ストッパー部17がウォームホィール14の一方の端縁に係合する。すると、吊下軸12の長手方向中間部に設けられたフランジ部19とストッパー部17との間で、ウォームホィール14が吊下軸12に対し軸方向に相対移動不能に支持される。
【0039】
前記ウォームホィール14の上部外周面にはウォーム11と噛み合う歯が形成されている。ウォームホィール14の下部はその歯先と同一の外形を備えた円筒状に形成されて、ウォームホィール14の上部と下部との間の境界部には段差20が形成されている。そして、吊下軸12がケース8に対し上方へ移動しようとすると、段差20がウォーム11の歯に係合するため、吊下軸12が容易には上方へ抜けないようになっている。
【0040】
前記吊下軸12のフランジ部19の下面には、中心に対し90度の範囲でフランジ部19を肉厚とする被回転規制部21が形成されている。また、前記軸受部13には前記被回転規制部21に当接する回転規制部22が形成されている。
【0041】
そして、被回転規制部21及び回転規制部22の作用により、スラット3が全閉状態から該状態からほぼ180度反転した逆全閉状態まで回動されるときの吊下軸12の回動範囲がほぼ180度に設定されている。
【0042】
前記吊下軸12のフランジ部19の上部には、径方向に突出して前記ウォームホィール14の内周面との間の摩擦を確保する摩擦生成部23が形成されている。そして、摩擦生成部23とウォームホィール14の内周面との間に生成される摩擦により、常には吊下軸12とウォームホィール14とが一体に回転される。
【0043】
また、スラット3が全閉状態あるいは逆全閉状態まで回動された後、ウォーム11が同方向にさらに回転されると、ウォームホィール14が吊下軸12に対し空回りするようになっている。従って、スラット3の角度が不揃いであるときは、角度調節軸16を回動操作し続ければ、全てのスラット3が全閉方向あるいは逆全閉状態まで回動される。
【0044】
前記ランナー2は、ケース8の両側において水平方向に延びるローラー軸24にローラー25が回転可能に支持され、そのローラー25が前記ハンガーレール1の内側面に突出されるリブ26を案内レールとしてハンガーレール1内を移動するようになっている。
【0045】
図2において、前記ランナー2のケース8の左右両側には、前記移送コード6を挿通可能とした透孔27が形成されている。ハンガーレール1内で周回可能に引き回される移送コード6でランナー2の移送操作を行うコード操作仕様の縦型ブラインドでは、この透孔27に移送コード6が挿通される。
【0046】
前記吊下軸12は、前記ウォームホィール14を嵌合した状態でケース8の軸受部13に上方から挿入される。ウォーム11は径方向及び軸方向に若干のクリアランスを設けてケース8に支持され、ウォーム11はウォームホィール14を回避しながらウォームホィール14に嵌合する。
【0047】
また、ウォーム11の外周面には螺旋状に連なる歯が形成され、その歯にウォームホィール14の歯が噛み合っているので、その噛み合いにより常にはウォームホィール14の上方への抜けが防止されている。
【0048】
吊下軸12をケース8から取り外すには、吊下軸12を上方へ押し上げる。すると、ウォームホィール14がウォーム11を押しのけながら上方へ移動してウォーム11から外れ、吊下軸12を上方へ抜き取り可能となる。
【0049】
前記吊下軸12の下端部には前記スラット3を吊下支持するためのフック部28が形成されている。前記フック部28は下方に向かって開口する二股状に形成されて、支持片29aと案内片29bが形成されている。
【0050】
そして、支持片29aと案内片29bとの間で、スラットハンガー30の支軸31が保持され、そのスラットハンガー30から前記スラット3が吊下支持されている。
【0051】
図1に示すように、前記スラットハンガー30の両端部には、該スラットハンガー30の厚さを増大させた鍔状のガイド部30aが形成されている。
【0052】
スラット3の畳み込み操作は、各スラット3が全閉状態すなわちハンガーレール1に沿う方向に回動された状態で畳み込まれる。また、スラットハンガー30の中央部で前記支軸31が形成された吊り下げ部の周縁部30bは、その厚さがフランジ状に厚くなっている。
【0053】
そして、スラット3の畳み込み操作時には、スラットハンガー30の端部が前記周縁部30bに引っかかり易いが、この実施形態ではスラットハンガー30の端部が前記周縁部30bに当接しても、ガイド部30aによりスラットハンガー30の両端部が前記周縁部30bに引っ掛からないようになっている。
【0054】
次に、前記操作装置4の具体的構成を説明する。図3に示すように、操作装置4のケース32の側面に操作ギヤ33が回転可能に支持され、その操作ギヤ33の入力軸にプーリー34が嵌着されている。
【0055】
前記プーリー34には前記ボールチェーン5が掛装され、ボールチェーン5の操作によりプーリー34が回転される。そしてプーリー34の正逆方向の回転にともなって操作ギヤ33が正逆方向に回転される。
【0056】
前記操作ギヤ33には、前記ケース32に回転可能に支持される伝達ギヤ35が噛み合わされ、操作ギヤ33の回転にともなって伝達ギヤ35が回転される。
【0057】
図5に示すように、前記伝達ギヤ35は筒状に形成され、その内周面にはチルトギヤ36の軸部37が相対回転不能に嵌合されている。従って、伝達ギヤ35とチルトギヤ36は同一の回転軸芯上で一体に回転される。
【0058】
前記チルトギヤ36は筒状に形成され、その内周面に同じく筒状に形成されたチルトクラッチ38の基端側の軸部39が相対回転不能に嵌合されている。すなわち、前記チルトクラッチ38はその基端部の軸部39が二股状に形成され、その軸部39が前記チルトギヤ36の内周面に嵌合される。従って、チルトギヤ36とチルトクラッチ38は同一の回転軸芯上で一体に回転される。
【0059】
前記チルトクラッチ38の軸方向中間部にはフランジ部40が形成され、中央部に形成される貫通孔41の周囲には、3つの係止凹部42が中心に対し等間隔に形成されている。各係止凹部42の周方向側面は係止凹部42の内外が緩やかに連なるような斜面に形成されている。詳しくは、各係止凹部42の周方向側面は、チルトクラッチ38のフランジ部48に近づくに従って周方向の両側面間の間隔が広くなるように傾斜している。
【0060】
前記フランジ部40の一側には、チルトクラッチ38の先端側に延びるクラッチ解除片43が中心に対しほぼ100度の範囲で延設されている。
【0061】
また、前記チルトクラッチ38と前記チルトギヤ36との間には、コイルスプリングで構成される切替スプリング44が配設され、チルトギヤ36を支点とする切替スプリング44の付勢力でチルトクラッチ38が常に先端側に向かって付勢されている。よって、切替 スプリング44は付勢手段(又は付勢部材)として機能する。
【0062】
前記チルトクラッチ38の中心部にはチルトクラッチ軸45の基端側の軸部47が挿通されている。チルトクラッチ軸45は、その基端側に前記チルトクラッチ38の軸部39に挿通可能とし、かつ前記チルトギヤ36の軸部37内に挿入可能とした筒状の軸部47が形成され、チルトギヤ36の基端側からチルトクラッチ軸45の軸部47に螺入されるネジ47aでチルトギヤ36に対し軸方向に移動不能に支持されている。
【0063】
前記チルトクラッチ軸45の軸方向中間部にはフランジ部48が形成され、そのフランジ部48の軸部47側の側面には、前記チルトクラッチ38の係止凹部42に係合可能とした3つの係止突部49が形成されている。
【0064】
前記フランジ部48の一側には、チルトクラッチ軸45の先端側に延びるクラッチ作動片50が中心に対しほぼ100度の範囲で延設されている。また、クラッチ作動片50の先端縁中央部には断面半円形の凹部51が形成されている。
【0065】
前記フランジ部48より先端側において、チルトクラッチ軸45の中心部には、前記軸部47より細い軸部52が形成されている。
【0066】
前記チルトクラッチ軸45の軸部52には、筒状のチルト軸53の基端側の筒部54(入力部)が回転可能に嵌合されている。前記チルト軸53は、軸方向中間部にフランジ部55が形成され、そのフランジ部55から基端側には前記筒部54が形成されている。そして、筒部54内にチルトクラッチ軸45の軸部52が回転可能に嵌合されている。
【0067】
前記フランジ部55の基端側には、前記筒部54の外周面から径方向外側に延びる係止溝56がチルト軸53の軸心を通って径方向に延びる一直線に関して線対称をなすように形成されている。前記フランジ部55より先端側に形成される筒部57は、基端側の筒部54より大きい径で形成され、その中心部には前記角度調節軸16を相対回転不能に嵌合可能とした嵌合孔58が形成されている。
【0068】
そして、嵌合孔58に嵌合された角度調節軸16は、チルト軸53と一体に回転するようになっている。
【0069】
前記チルト軸53の筒部54には、金属で円筒状に形成されたクラッチ環59が嵌合されている。クラッチ環59の一端縁には、軸方向に突出する一対の突起60が形成され、前記チルト軸53の係止溝56に係合している。従って、クラッチ環59はチルト軸53と一体に回転する。
【0070】
前記クラッチ環59の外周面には、捩じりコイルスプリングで構成されるクラッチスプリング61が装着され、そのクラッチスプリング61の両端部62a,62bは、図8に示すように、径方向外側に突出するように屈曲され、その間隔はクラッチ環59の中心に対し約130度の間隔を隔てている。両端部62a,62bはクラッチスプリング61の全周を二つの周面部に区分している。クラッチ作動片50は一方の周面部に配置され、クラッチ解除片43はクラッチ作動片50が位置しない他方の周面部に配置されている。本実施形態において、チルトクラッチ38、切替スプリング44及びクラッチスプリング61がクラッチ手段(またはクラッチ部)を構成する。また、チルトクラッチ38、チルトクラッチ軸45及びクラッチスプリング61がチルトクラッチ装置を構成する。
【0071】
そして、図9に示すように、チルトクラッチ38とチルトクラッチ軸45が一体に回転されて、クラッチ作動片50の一端がクラッチスプリング61の端部62a,62bの一方に当接すると、クラッチスプリング61が縮径されて、クラッチ環59との摩擦が増大する。この結果、チルトクラッチ軸45の回転がクラッチ環59を介してチルト軸53に伝達されるようになっている。即ち、チルトクラッチ軸45は、クラッチスプリン61に入力される回転トルクが所定値以下である場合にクラッチスプリング61をチルト軸53に締め付けるようクラッチスプリング61の端部62a,62bの一方に当接するクラッチ作動片50を備える。そのため、クラッチ作動片50の締め付け動作により回転トルクがチルト軸53に対して伝達される。
【0072】
また、図10に示すように、チルトクラッチ38のクラッチ解除片43がクラッチスプリング61の端部62a,62bの一方に当接すると、クラッチスプリング61が拡径されて、クラッチ環59との摩擦が減少する。この結果、チルトクラッチ38及びチルトクラッチ軸45の回転がクラッチ環59及びチルト軸53に伝達されないようになっている。即ち、チルトクラッチ38は、クラッチスプリング61に入力される回転トルクが所定値を超える場合にチルト軸53に対するクラッチスプリング61の締め付けを解除するようにクラッチスプリング61の端部62a,62bの一方に当接するクラッチ解除片43を備える。そのため、クラッチ解除片43の解除動作により回転トルクのチルト軸53への伝達が遮断される。
【0073】
前記チルトギヤ36は、該チルトギヤ36の側方に位置する開閉ギヤ63に噛み合っている。この開閉ギヤ63は外周面に斜歯歯車を備えた筒状に形成され、ケース32に対しその回転軸心を垂直方向として回転可能に支持されている。従って、水平方向の回転軸心で回転するチルトギヤ36の回転が、垂直方向の回転軸心での回転に変換される。
【0074】
図4及び図11に示すように、前記開閉ギヤ63の回転は2枚の伝達プレート64a,64bを介して開閉プーリー65に伝達される。開閉プーリー65は、前記ケース32の底面から上方に延びる支持筒66にプーリーカラー66aを介して回転可能に支持され、その上面には前記開閉ギヤ63の中心軸67を回転可能に支持する支持孔68が形成されている。
【0075】
また、前記支持孔68の周囲には上方に突出する突部69が形成されている。前記突部69は、開閉プーリー65の中心に対し25度の範囲で形成されている。
【0076】
前記伝達プレート64a,64bは円盤状に形成され、その中心部には前記開閉ギヤ63の中心軸67を挿通可能とした支持孔70が形成されている。前記伝達プレート64a,64bの上面には、前記支持孔70の外周側に突部71a,71bがそれぞれ形成されている。この突部71a,71bは、伝達プレート64a,64bの中心に対し25度の範囲で形成されている。
【0077】
図12に示すように、前記伝達プレート64aの下面には、伝達プレート64bの突部71bを収容可能とした凹部72が形成され、その凹部72内には前記突部71bに当接する突部73が形成されている。突部73は伝達プレート64aの中心に対し25度の範囲で形成されている。
【0078】
前記伝達プレート64bの下面には、前記開閉プーリー65の突部69を収容可能とした凹部74が形成され、その凹部74内には前記突部69に当接する突部75が形成されている。突部75は伝達プレート64bの中心に対し25度の範囲で形成されている。
【0079】
図4に示すように、前記開閉ギヤ63内には、前記中心軸67の一側に下方に向かって突出する突部76が形成され、その突部76は開閉ギヤ63の中心に対し45度の範囲で形成されて、前記伝達プレート64aの突部71aと同一回動軌跡上に位置している。
【0080】
このような構成により、開閉プーリー65及び開閉ギヤ63はケース32の支持筒66に回転可能に支持され、伝達プレート64a,64bは開閉ギヤ63の中心軸67に回転可能に支持されている。
【0081】
そして、前記チルトギヤ36の回転に基づいて開閉ギヤ63が回転されると、開閉ギヤ63の突部76が伝達プレート64aの突部71aに当接した後に、開閉ギヤ63と伝達プレート64aが一体に回転される。
【0082】
また、伝達プレート64aが開閉ギヤ63と一体に回転されると、伝達プレート64aの裏面の突部73が伝達プレート64bの突部71bに当接した後に、開閉ギヤ63と伝達プレート64a,64bが一体に回転される。
【0083】
また、開閉ギヤ63と伝達プレート64a,64bが一体に回転されると、伝達プレート64bの裏面の突部75が開閉プーリー65の突部69に当接した後に、開閉ギヤ63と伝達プレート64a,64b及び開閉プーリー65が一体に回転される。
【0084】
このような動作により、開閉ギヤ63の回転方向が逆転したとき、開閉ギヤ63が所定角度以上回転した後に、開閉ギヤ63の回転が開閉プーリー65に伝達されるようになっている。そして、この所定角度は前記角度調節軸16がほぼ1回転する間に開閉ギヤ63が回転する角度、言い換えれば前記スラット3が全閉状態から逆全閉状態まで回動される間に開閉ギヤ63が回転される角度を超える角度に設定されている。
【0085】
図13に示すように、前記開閉プーリー65には前記移送コード6が掛装され、開閉プーリー65の回転に基づいて、移送コード6が前記ハンガーレール1内を周回するようになっている。
【0086】
次に、上記のように構成された縦型ブラインドの操作装置4の作用を説明する。
【0087】
ハンガーレール1から垂下される各スラット3が例えばハンガーレール1に対し直角方向となる開放状態で吊下支持されている状態から、ボールチェーン5の一方を下方に操作すると、プーリー34が回転される。
【0088】
プーリー34の回転は操作ギヤ33から伝達ギヤ35を経てチルトギヤ36に伝達される。チルトギヤ36の回転に基づいて開閉ギヤ63が回転されるが、伝達プレート64a,64b及び開閉プーリー65からなる移送遅延装置の作動により、開閉プーリー65は直ちには回転されない。
【0089】
チルトギヤ36の回転に基づいてチルトクラッチ38が回転され、チルトクラッチ38と一体にチルトクラッチ軸45が回転される。
【0090】
チルトクラッチ軸45の回転により、図9に示すようにクラッチ作動片50の一端がクラッチスプリング61の端部62a,62bの一方に当接すると、クラッチスプリング61とクラッチ環59との摩擦が増大し、チルトクラッチ軸45の回転がクラッチスプリング61及びクラッチ環59を介してチルト軸53に伝達される。
【0091】
すると、角度調節軸16が回転されて、各ランナー2,2aから吊下支持されるスラット3が回動される。
【0092】
各スラット3が全閉状態あるいは逆全閉状態まで回動された状態から、ボールチェーン5をさらに同方向に操作して、角度調節軸16を同方向に回転させようとすると、各ランナー2,2aで吊下軸12の被回転規制部21が軸受部13の回転規制部22に当接して吊下軸12の回転が阻止される。すると、吊下軸12の摩擦生成部23に対しウォームホィール14が摩擦しながら回転する状態となるので、角度調節軸16に作用する回転トルクが増大する。
【0093】
すると、チルトクラッチ軸45の係止突部49からチルトクラッチ38の係止凹部42が外れて、図6に示す状態から図7に示す状態までチルトクラッチ38が軸方向にスライドする。
【0094】
そして、チルトクラッチ38がチルトクラッチ軸45に対し相対回転して、図10に示すようにチルトクラッチ38のクラッチ解除片43がクラッチスプリング61の端部62a,62bの一方に当接する。
【0095】
この結果、クラッチスプリング61とクラッチ環59との間の摩擦が減少し、クラッチスプリング61がクラッチ環59の外周面上を空回りする。従って、チルトクラッチ38の回転はチルト軸53に伝達されない。
【0096】
スラット3が全閉状態あるいは逆全閉状態まで回動された状態から、ボールチェーン5をさらに同方向へ引くと、開閉ギヤ63の回転が開閉プーリー65に伝達される状態となる。そして、開閉プーリー65の回転に基づいて移送コード6がハンガーレール1内を周回し、先頭ランナー2aが移送されてスラットの引き出し操作あるいは畳み込み操作が行われる。
【0097】
スラット3を所望位置まで引き出し、あるいは畳み込んだ後、ボールチェーン5を逆方向に操作すると、チルトギヤ36の回転によりチルト軸53が回転される状態に復帰し、角度調節軸16が回転されて各スラット3が回動される。
【0098】
切替スプリング44の付勢力は、全てのスラット3が全閉状態あるいは逆全閉状態に回動された後にボールチェーン5を同方向へ回動させたときに、チルトクラッチ38とチルトクラッチ軸45との係合が外れるようにしてもよい。
【0099】
しかし、この実施形態では全スラット枚数の半分の枚数を超えるスラット3が全閉状態あるいは逆全閉状態まで回動された後にボールチェーン5を同方向へ回動させたとき、チルトクラッチ38とチルトクラッチ軸45との係合が外れるように切替スプリング44の付勢力は設定されている。
【0100】
このような構成により、図1に示すように、枚数の多い第一のスラット群G1と、第一のスラット群G1より枚数の少ない第二のスラット群G2でスラット3の角度が異なる場合には、次のような操作が行われる。
【0101】
すなわち、第一のスラット群G1が先に全閉状態あるいは逆全閉状態となる方向にスラット3を回動して、第一のスラット群G1が全閉状態あるいは逆全閉状態とされる。このとき、第二のスラット群G2は全閉状態あるいは逆全閉状態まで回動されていない。
【0102】
次いで、スラット3を逆方向に回動させると、まず第二のスラット群G2が全閉状態あるいは逆全閉状態となる。そして、さらにボールチェーン5を同方向へ操作してスラット3を回動させると、第一のスラット群G1が全閉状態あるいは逆全閉状態まで回動されて、全スラット3の角度が揃えられる。
【0103】
このとき、第二のスラット群G2のランナー2でのみウォームホィール14が吊下軸12に対し空回りする状態となり、角度調節軸16に作用する回転トルクは大きく増大しない。従って、チルトクラッチ38とチルトクラッチ軸45の係合が維持され、第一のスラット群G1のスラット3の回動操作が可能となる。
【0104】
上記のように切替スプリング44の付勢力を設定することにより、全スラット3の角度を揃える際に要する操作力を軽減することが可能となる。
【0105】
上記のように構成された縦型ブラインドでは、次に示す効果を得ることができる。
【0106】
(1)共通のボールチェーン5を操作して、スラット3の移送操作と、スラット3の角度調節操作を行うことができる。
【0107】
(2)スラット3の角度調節操作時には、スラット3の移送操作を停止することができる。(3)スラット3を全閉状態あるいは逆全閉状態まで回動した後に、スラット3の移送操作を行うことができる。
【0108】
(4)スラット3の角度調節操作時に、伝達プレート64a,64bと開閉プーリー65とからなる伝達遅延装置の動作により、開閉プーリー65が回転されない。そして、伝達プレート64a,64bと開閉プーリー65との間には摺動抵抗がほとんど作用しないので、角度調節操作時の操作力を増大させることはない。
【0109】
(5)切替スプリング44の付勢力で係合するチルトクラッチ38とチルトクラッチ軸45及びクラッチスプリング61の作用により、角度調節軸16の回転トルクが増大したとき、クラッチスプリング61をクラッチ環59に対し空回りさせて、角度調節軸16の回転を停止させることができる。従って、スラット移送操作時には、ランナー2,2aでウォームホィール14を空回りさせないので、スラット移送操作時の操作力を軽減することができる。
【0110】
(6)切替スプリング44の付勢力を調整することにより、スラット3の角度を揃える操作に要する操作力を軽減することができる。
【0111】
(7)スラット3の畳み込み操作時に、スラットハンガー30の端部がスラットハンガー30の中央部に形成された吊り下げ部の周縁部30bに当接しても、ガイド部30aによりスラットハンガー30の両端部が前記周縁部30bに引っ掛からない。
【0112】
(8)移送コード6は、各ランナー2の透孔27に挿通されてハンガーレール1内を周回するため、ハンガーレール1内での移送コード6の絡まりを防止することができる。
【0113】
上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
図14に示すエンドロック80が角度調節軸16の端部に嵌合され、そのエンドロック80の一端側の外周面に雄ネジ82が形成するとともに軸方向中間部に突部81が形成される。ハンガーレール1のエンドキャップ83には軸受部84が形成され、その軸受部84の内周面に雌ネジ85が形成される。また、軸受部84の先端に突部86が形成されるとともに、エンドキャップ83に取着されるエンドケース87の挿通孔88内に突部89が形成される。そして、エンドロック80を軸受部84が螺入されて、角度調節軸16の回転にともなってエンドロック80が軸方向に移動するようにする。
【0114】
そして、例えばスラットの全閉時にはエンドロック80を突部86に当接させて角度調節軸16の回転を阻止し、スラットの逆全閉時にはエンドロック80の突部81をエンドケース87の突部89に当接させて角度調節軸16の回転を阻止するようにする。
【0115】
このような構成により、スラットの全閉時及び逆全閉時には、角度調節軸16の同方向へのそれ以上の回転を阻止して、前記操作装置でクラッチスプリング61をクラッチ環59に対し空回りさせるようにすることができる。
・切替スプリング44の付勢力は、各スラット3の重量や、スラット3の枚数に応じて、適宜変更してもよい。
・スラットの回動操作を停止させるスラットの角度は、全閉位置及び逆全閉位置に限らず、任意の角度を各ランナーに設定してもよい。
・本実施形態のチルトクラッチ装置は、スラットを上下方向に昇降可能なブラインドに適用されてもよい。その場合、チルトギヤ36は、スラットを上下方向に昇降する昇降軸に連結され、チルトギヤ36の回転トルクが昇降軸に伝達されてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…ハンガーレール、2,2a…ランナー、3…スラット、4…操作装置、5…ボールチェーン(操作コード)、6…移送コード、16…角度調節軸、38…チルトクラッチ(チルト装置、チルトクラッチ装置、クラッチ手段)、44…切替スプリング(クラッチ手段、付勢手段)、45…チルトクラッチ軸(チルトクラッチ装置)、61…クラッチスプリング(クラッチ手段、チルトクラッチ装置)、63…開閉ギヤ(スラット移送装置)、64a,64b…伝達プレート(移送遅延装置)、65…開閉プーリー(スラット移送装置)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14