(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909489
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】ジアンヒドロガラクチトール等の置換ヘキシトールの合成方法
(51)【国際特許分類】
C07D 301/26 20060101AFI20160412BHJP
C07D 301/32 20060101ALI20160412BHJP
C07D 303/14 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
C07D301/26
C07D301/32
C07D303/14
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-524951(P2013-524951)
(86)(22)【出願日】2011年8月17日
(65)【公表番号】特表2013-534250(P2013-534250A)
(43)【公表日】2013年9月2日
(86)【国際出願番号】US2011048032
(87)【国際公開番号】WO2012024368
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2014年7月11日
(31)【優先権主張番号】61/401,710
(32)【優先日】2010年8月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513037661
【氏名又は名称】デル マー ファーマスーティカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デニス エム ブラウン
【審査官】
前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−166679(JP,A)
【文献】
特表2008−507526(JP,A)
【文献】
特開平04−261166(JP,A)
【文献】
Carbohydrate Research,1969年,9(2),p.139-147
【文献】
Zhurnal Obshchei Khimii,1973年,43(2),p.365-369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 301/00
C07D 303/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアンヒドロガラクチトール(DAG)を合成及び精製するための方法であって、
(a)ジブロモガラクチトールを生成するために、80℃の温度で、ズルシトールと
、臭化水素酸の濃縮液と、を反応させる工程と、
(b)ジアンヒドロガラクチトールを生成するために、t−ブタノール中でジブロモガ
ラクチトールと、炭酸カリウムと、を反応させる工程と、
(c)精製されたジアンヒドロガラクチトールを生成するために、エチルエーテルの懸
濁液を用いて、前記ジアンヒドロガラクチトールを精製する工程と、
を含む、ジアンヒドロガラクチトール(DAG)を合成及び精製するための方法。
【請求項2】
前記臭化水素酸の濃縮液は、70%の臭化水素酸であり、高温で、前記臭化水素酸中
でリンと、臭素と、を反応させることによって生成される、請求項1に記載のジアンヒド
ロガラクチトール(DAG)を合成及び精製するための方法。
【請求項3】
前記ジブロモガラクチトールは、10ミリリットルの前記t−ブタノールに対して1グラムのジブロモガラクチトールの割合で、前記t−ブタノール中に溶解される、請求項1に記載のジアンヒドロガラクチトール(DAG)を合成及び精製するための方法。
【請求項4】
前記ジブロモガラクチトールは、ジアンヒドロガラクチトールへのその転換の前に、再
結晶化によって精製される、請求項1に記載のジアンヒドロガラクチトール(DAG)を
合成及び精製するための方法。
【請求項5】
前記ズルシトールは、植物Maytenus(ハリツルマサキ属) conferti
flora(コンフェルティフロラ)から、以下の工程;
(i)50%〜80%のエタノールの浸漬溶液中に、24時間の間、前記植物Maytenus(ハリツルマサキ属) confertifloara(コンフェルティフロラ)を浸漬させる工程と、
(ii)工程(i)から前記浸漬溶液を回収する工程と、
(iii)50%〜80%のエタノールの新鮮な浸漬溶液を用いて、24時間の間、工程(ii)の浸漬工程を繰り返す工程と、
(iv)工程(iii)から前記浸漬溶液を回収して、該浸漬溶液と、工程(ii)に
おいて回収された前記浸漬溶液と、を混合する工程と、
(v)濃縮液を生成するために、減圧下で加熱することによって、工程(iv)の前記
混合された浸漬溶液から溶剤を除去する工程と、
(vi)工程(v)の前記濃縮液を一晩中静置して、純粋な上清を回収する工程と、
(vii)残渣を生成するために、クロロホルムを用いて、工程(vi)からの前記純
粋な上清を抽出して、加熱及び減圧下でクロロホルムを除去する工程と、
(viii)加熱メタノール中に工程(vii)からの前記残渣を溶解させて、結晶化
を許容するために冷却する工程と、
(ix)前記ズルシトールの回収された結晶を回収して濾過し、減圧下で結晶を乾燥さ
せる工程と、
によって精製される、請求項1に記載のジアンヒドロガラクチトール(DAG)を合成
及び精製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本願は、2010年8月18日に出願された、Dennis M. Brown博士による米国特許仮出願第61/401,710号明細書、発明の名称「ジアンヒドロガラクチトール等の置換ヘキシトールの合成方法」からの優先権を主張し、本明細書は、その全体において参照によって本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、置換ヘキシトール、特に、ジアンヒドロガラクチトールの合成のための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ジアンヒドロガラクチトール等の、多数の置換ヘキシトールは、薬理活性を有する。とりわけ、ジアンヒドロガラクチトールは、例えば、Nielsenらの米国特許第7,157,059号明細書において、化学療法において使用されるために提案されており、本文献は、参照によって本明細書中に援用される。
【0004】
しかしながら、ジアンヒドロガラクチトール等の、そのような多数の置換ヘキシトールの現行の合成方法は、非効率的であり、これらの置換ヘキシトールの改良された合成方法が、臨床用途のためのより大量のこれらの化合物を提供するために要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,157,059号明細書
【特許文献2】米国特許第3,993,781号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ジアンヒドロガラクチトール等のジアンヒドロヘキシトールの改良された合成方法は、濃縮臭化水素酸との反応によるヘキシトールのジブロモヘキシトールへの転換、及び炭酸カリウムとの反応によるジブロモヘキシトールのジアンヒドロヘキシトールへの転換を含む。
【0007】
一般的に、ジアンヒドロガラクチトールの合成に適用される、該方法は、
(1)ジブロモガラクチトールを生成するために、約80℃の温度で、ズルシトールと、臭化水素酸の濃縮液と、を反応させる工程と、
(2)ジアンヒドロガラクチトールを生成するために、t−ブタノール中でジブロモガラクチトールと、炭酸カリウムと、を反応させる工程と、
(3)精製されたジアンヒドロガラクチトールを生成するために、エチルエーテルの懸濁液を用いて、ジアンヒドロガラクチトールを精製する工程と、
を含む。
【0008】
本方法において、一般的に、臭化水素酸の濃縮液は、約70%の臭化水素酸であり、高温で、臭化水素酸中でリンと、臭素と、を反応させることによって生成される。一般的に、ジブロモガラクチトールは、10ミリリットルのt−ブタノールに対して約1グラムのジブロモガラクチトールの割合で、t−ブタノール中に溶解される。
【0009】
本方法において、一般的に、ズルシトールは、植物Maytenus(ハリツルマサキ属) confertiflora(コンフェルティフロラ)から、以下の工程;
(a)約50%〜約80%のエタノールの浸漬溶液中に、約24時間の間、植物Maytenus(ハリツルマサキ属) confertifloara(コンフェルティフロラ)を浸漬させる工程と、
(b)工程(a)から浸漬溶液を回収する工程と、
(c)約50%〜約80%のエタノールの新鮮な浸漬溶液を用いて、約24時間の間、工程(a)の浸漬工程を繰り返す工程と、
(d)工程(c)から浸漬溶液を回収して、該浸漬溶液と、工程(b)において回収された浸漬溶液と、を混合する工程と、
(e)濃縮液を生成するために、減圧下で加熱することによって、工程(d)の混合された浸漬溶液から溶剤を除去する工程と、
(f)工程(e)の濃縮液を一晩中静置して、純粋な上清を回収する工程と、
(g)クロロホルムを用いて、工程(f)からの純粋な上清を抽出して、加熱及び減圧下でクロロホルムを除去する工程と、
(h)加熱メタノール中に工程(g)からの残渣を溶解させて、結晶化を許容するために冷却する工程と、
(i)ズルシトールの回収された結晶を回収して濾過し、減圧下で結晶を乾燥させる工程と、によって精製される。
【0010】
本方法は、ジアンヒドロガラクチトールの合成及び精製のために記載されているが、本方法は、ジアンヒドロガラクチトールに限定されるものではなく、置換ジアンヒドロガラクチトール等の二つのエポキシ基を有する他のヘキシトールに適用されることができる。
【0011】
より一般的には、本発明に係るジアンヒドロヘキシトールを合成及び精製するための方法は、以下の工程;
(1)ジブロモヘキシトールを生成するために、約80℃の温度で、二つのエポキシ基を有するヘキシトールと、臭化水素酸の濃縮液と、を反応させる工程と、
(2)ジアンヒドロヘキシトールを生成するために、第三級アルコール中でジブロモヘキシトールと、アルカリ金属の炭酸塩と、を反応させる工程と、
(3)精製されたジアンヒドロヘキシトールを生成するために、エーテルの懸濁液を用いて、ジアンヒドロヘキシトールを精製する工程と、
を含む。
【0012】
一般的に、ジアンヒドロヘキシトールは、ジアンヒドロガラクチトール及び置換ジアンヒドロガラクチトールからなる群より選択される。好ましくは、ジアンヒドロヘキシトールは、ジアンヒドロガラクチトールである。
【0013】
一般的に、臭化水素酸の濃縮液は、約70%の臭化水素酸であり、高温で、臭化水素酸中でリンと、臭素と、を反応させることによって生成される。
【0014】
一般的に、第三級アルコールは、t−ブタノール、2‐メチル‐2‐ブタノール及び3‐エチルペンタノールからなる群より選択される。好ましくは、第三級アルコールは、t−ブタノールである。
【0015】
一般的に、ジブロモヘキシトールは、10ミリリットルの第三級アルコールに対して約1グラムのジブロモヘキシトールの割合で、第三級アルコール中に溶解される。
【0016】
一般的に、ジブロモヘキシトールは、ジアンヒドロヘキシトールへのその転換の前に、再結晶化によって精製される。
【0017】
一般的に、アルカリ金属の炭酸塩は、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群より選択されるアルカリ金属の炭酸塩である。好ましくは、アルカリ金属の炭酸塩は、炭酸カリウムである。
【0018】
一般的に、エーテルは、低級アルキル基を有する脂肪族エーテルである。好ましくは、エーテルは、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルプロピルエーテル及びエチルプロピルエーテルからなる群より選択される。より好ましくは、エーテルは、ジエチルエーテルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ジアンヒドロガラクチトール(DAG又はジアンヒドロズルシトール)は、自然源(例えば、Maytenus(ハリツルマサキ属) confertiflora(コンフェルティフロラ)又は商業的供給源から生成されることができるズルシトールから合成されることができる。
【0020】
DAGの構造は、以下の式(1)によって示される。
【0022】
Maytenus(ハリツルマサキ属) confertiflora(コンフェルティフロラ)からズルシトールを調製するための一つの方法は、以下の通りである;(1)Maytenus(ハリツルマサキ属) confertiflora(コンフェルティフロラ)植物を、約24時間の間、希エタノール(50〜80%)中で浸漬し、浸漬溶液を回収する。(2)浸漬工程を繰り返し、全ての浸漬溶液を混合する。(3)減圧下で加熱することによって溶剤を除去する、(4)濃縮液を、一晩中静置させ、純粋な上清を回収する。(5)クロロホルムを用いて上清を抽出する。クロロホルムを、加熱及び減圧下で除去する。(6)次に、残渣を、加熱メタノール中に溶解させ、結晶化を許容するために冷却する。(7)回収したズルシトールの結晶を濾過し、減圧下で乾燥させる。精製された材料は、約0.1%(1/1000)の濃度で、元のMaytenus(ハリツルマサキ属) confertiflora(コンフェルティフロラ)植物中に含まれる、ズルシトールである。
【0023】
DAGは、以下に記載される一般的な二つの合成経路によって調製されることができる。
【0025】
経路1において、「Ts」は、トシル基、又はp-トルエンスルホニル基を示す。
【0026】
しかしながら、経路1の中間体である、1,6‐ジトシルズルシトールを、低収率(36%まで)で調製したので、1,6‐ジトシルズルシトールの合成は、再性能に乏しかった。したがって、第二経路工程を、二つの主要な工程;(1)ズルシトールからのジブロモズルシトールの調製、及び、(2)ジブロモズルシトールからのジアンヒドロズルシトールの調製を含むように発展させた。
【0027】
ジブロモズルシトールを、以下のようにズルシトールから調製する;(1)約45%の臭化水素酸濃度の水溶性臭化水素酸溶液を用いて、加圧滅菌器内で、濃縮臭化水素酸中でリンと、臭素と、を反応させることによって、約70%まで臭化水素酸濃度を増加させる。0℃まで溶液を冷却する。反応は、以下に示す通りである;2P+3Br
2→2PBr
3+H
2O→HBr↑+H
3PO
4。(2)濃縮臭化水素酸溶液にズルシトールを添加し、反応を完了させるために80℃で還流する。(3)溶液を冷却し、氷水上に混合物を注ぐ。ジブロモズルシトールを、再結晶化を介して精製する。
【0028】
ジブロモズルシトール(DBD)の調製の結果を、以下の表1に示す。
【0030】
DBDからのDAGの調製のために、DBDは、40℃でのメタノール及びエタノール中の溶解能が乏しかった(Horvath nee Lengyelらの米国特許第3,993,781号明細書に記載されたものと異なる。本文献を、参照によって本明細書中に援用する)。還流時に、DBDは溶解されたが、TLC(薄層クロマトグラフィ)は、DBDから除去することが難しい新規の不純物が形成したことを示した。
【0031】
DBDを、ジアンヒドロガラクチトールに転換するために、DBDを炭酸カリウムと反応させた。
【0034】
拡大された展開において、粗収量が有意に低下することを見出した。DAGがブタノール(BuOH)と共沸性であるかどうか不明である。t−ブタノールは、反応に不可欠であることが確認された。溶剤としてメタノールを用いることによって、TLC(薄層クロマトグラフィ)上に多数の不純物の斑点が示される。しかしながら、改良された精製方法を、エチルエーテルを有する懸濁液を用いることによって発展させ、良好な純度を有するDAGを提供することができた。このことは、DAGの再結晶化における多数の失敗した試みの後に発展された。
【0035】
それに応じて、本発明の一局面は、ジアンヒドロガラクチトール(DAG)を合成及び精製するための方法であって、以下の工程;
(1)ジブロモガラクチトールを生成するために、約80℃の温度で、ズルシトールと、臭化水素酸の濃縮液と、を反応させる工程と、
(2)ジアンヒドロガラクチトールを生成するために、t−ブタノール中でジブロモガラクチトールと、炭酸カリウムと、を反応させる工程と、
(3)精製されたジアンヒドロガラクチトールを生成するために、エチルエーテルの懸濁液を用いて、ジアンヒドロガラクチトールを精製する工程と、
を含む。
【0036】
本方法において、一般的に、臭化水素酸の濃縮液は、約70%の臭化水素酸であり、高温で、臭化水素酸中でリンと、臭素と、を反応させることによって生成される。一般的に、ジブロモガラクチトールは、10ミリリットルのt−ブタノールに対して約1グラムのジブロモガラクチトールの割合で、t−ブタノール中に溶解される。一般的に、ジブロモガラクチトールは、ジアンヒドロガラクチトールへのその転換の前に、再結晶化によって精製される。
【0037】
本方法において、一般的に、ズルシトールは、植物Maytenus(ハリツルマサキ属) confertiflora(コンフェルティフロラ)から、以下の工程;
(a)約50%〜約80%のエタノールの浸漬溶液中に、約24時間の間、植物Maytenus(ハリツルマサキ属) confertifloara(コンフェルティフロラ)を浸漬させる工程と、
(b)工程(a)から浸漬溶液を回収する工程と、
(c)約50%〜約80%のエタノールの新鮮な浸漬溶液を用いて、約24時間の間、工程(a)の浸漬工程を繰り返す工程と、
(d)工程(c)から浸漬溶液を回収して、該浸漬溶液と、工程(b)において回収された浸漬溶液と、を混合する工程と、
(e)濃縮液を生成するために、減圧下で加熱することによって、工程(d)の混合された浸漬溶液から溶剤を除去する工程と、
(f)工程(e)の濃縮液を一晩中静置して、純粋な上清を回収する工程と、
(g)クロロホルムを用いて、工程(f)からの純粋な上清を抽出して、加熱及び減圧下でクロロホルムを除去する工程と、
(h)加熱メタノール中に工程(g)からの残渣を溶解させて、結晶化を許容するために冷却する工程と、
(i)ズルシトールの回収された結晶を回収して濾過し、減圧下で結晶を乾燥させる工程と、によって精製される。
【0038】
本発明の他の実施形態は、ジアンヒドロヘキシトールを合成及び精製するための方法であって、以下の工程;
(1)ジブロモヘキシトールを生成するために、約80℃の温度で、二つのエポキシ基を有するヘキシトールと、臭化水素酸の濃縮液と、を反応させる工程と、
(2)ジアンヒドロヘキシトールを生成するために、第三級アルコール中でジブロモヘキシトールと、アルカリ金属の炭酸塩と、を反応させる工程と、
(3)精製されたジアンヒドロヘキシトールを生成するために、エーテルの懸濁液を用いて、ジアンヒドロヘキシトールを精製する工程と、
を含む。
【0039】
本方法において、ジアンヒドロヘキシトールは、例えば、ジアンヒドロガラクチトール、又は、上述のように、置換ジアンヒドロガラクチトール等の、二つのエポキシ基を有する他のジアンヒドロヘキシトールであってもよい。
【0040】
本方法において、アルカリ金属の炭酸塩は、一般的に、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群より選択されるアルカリ金属の炭酸塩である。好ましくは、アルカリ金属の炭酸塩は、炭酸カリウムである。
【0041】
本方法において、第三級アルコールは、一般的に、t−ブタノールである。しかしながら、他の第三級アルコールが、代わりに使用されることができる。そのような第三級アルコールとしては、例えば、2‐メチル‐2‐ブタノール、3‐エチルペンタノール、及び、一般的に、6炭素又はそれより少ない炭素を含む、他の第三級アルコールが挙げられる。
【0042】
本方法において、脱臭素化工程(上記工程(2))は、還流条件下で生じるが、第三級アルコールがt−ブタノールである場合、82℃の沸点を有するため、還流温度は、約80〜85℃であろうことを意味する。
【0043】
本方法において、エーテル懸濁液からジアンヒドロヘキシトールを精製する工程(上記工程(3))において、エーテルは、一般的に、ジメチルエーテル、、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルプロピルエーテル及びエチルプロピルエーテル等の、低級アルキル基を有する脂肪族エーテルである。しかしながら、好ましくは、エーテルは、ジエチルエーテルである。
【0044】
(本発明の利点)
本発明は、置換ヘキシトール、とりわけ、ジアンヒドロガラクチトール(DAG)の合成のための改良された及び効率的な方法を提供する。本発明の方法は、容易に測定可能であるため、多量のジアンヒドロガラクチトールが、薬理用途又は他の用途のために調製されることができる。本発明の方法は、高収率でかつ不純物を含まないジアンヒドロガラクチトールを生成する。
【0045】
本発明に係る方法は、置換ヘキシトール、とりわけ、ジアンヒドロガラクチトール(DAG)の合成に対する産業上の利用可能性を有し、薬理学等における用途を有する。
【0046】
数値の範囲に関して、特に明確に指示しなければ、本発明は、下限値の少なくとも十分の一までの範囲の上限と下限との間の各介在値(intervening value)を包含する。さらに、特に既定の範囲から除外されなければ、本発明は、範囲の上限及び下限の何れか又は両方を含む、任意の他の規定の介在値(intervening value)及び範囲を包含する。
【0047】
特に定義されていなければ、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語の意味は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されるものである。当業者は、また、本明細書中に記載の方法及び材料と同じ又は同等の任意の方法及び材料は、本発明を実施又は試験するために使用されることができることを理解されよう。
【0048】
本明細書中で議論される公開公報及び特許公報は、本願の出願日の前にそれらの開示のためだけに提供されている。本明細書中で、本発明が先行発明のためにそのような公開に先行する権利を認められていないという承認として理解されるべきものは何もない。さらに、提供される公開日は、単独で確認される必要があり得る実際の公開日と異なるかもしれない。
【0049】
全ての公開された特許、特許出願、及び参考文献、並びに、それらの公開書類中に援用された刊行物を含む、引用された全ての刊行物は、それらの全体において参照によって本明細書中に援用されている。しかしながら、参照によって本明細書中に援用される任意の刊行物が公開されるべき情報に言及する程度にまで、出願人は、そのような任意の情報が、先行技術に対して本願の出願日の後に公開されたことを認めない。
【0050】
本明細著中及び添付の特許請求の範囲中で使用されるように、単数形は複数形を含む。特に明確に指示しなければ、例えば、用語「a」、「an」及び「the」は、複数形を含む。さらに、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連の要素中のあらゆる要素に言及しているものとして理解されるべきである。本明細書中に例示的に記載された発明は、特に本明細書中に開示されていなくても、任意の要素又は複数の要素、限定又は複数の限定の存在なしに適切に実施されることができる。したがって、例えば、用語「備える(comprising)、「含む(including)」及び「包含する(containing)」等は、拡張して及び限定することなく解釈されるべきである。さらに、本明細書中で使用される用語及び表現は、限定の用語としてではなく、説明の用語として使用されてきており、示される及び記載される未来の任意の同等物又はその任意の部分を除外するそのような用語及び表現の使用における意図はない。多様な変更が請求される発明の範囲内で可能であることが、理解されることができる。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び選択的特徴によって特に開示されてきたが、本明細書中に開示された発明の改変及び変更は、当業者によって行われることができること、及び、そのような改変及び変更は、本明細書中に開示された発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。本発明は、本明細書中に広く及び総称的に記載されてきた。一般的開示の範囲内にあるより狭い種及び亜属群のそれぞれもまた、これらの発明の部分を形成する。これには、削除された材料が特にその中に存在するかどうかに拘らず、属から任意の主題を削除する条件又は否定的限定を有する各発明の一般的な記載が含まれる。また、発明の特徴又は局面がマーカッシュグループの用語で記載されているが、当業者は、本発明が、また、それによって、マーカッシュグループの任意の個々の要素又は要素の部分群を単位として記載されていることを認識するであろう。上記明細書は、また、例示的であることを意図しており、制限的であることを意図していないことを理解されるべきである。多くの実施形態は、上記明細書を考察する上で当業者に明らかとなろう。したがって、発明の範囲は、上記明細書を基準にして、決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲を基準にして、そのような特許請求の範囲が認められる同等物の全範囲とともに、決定されるべきである。当業者は、記載された発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、又は、たかが日常実験を用いて確認することができよう。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図されている。