(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909493
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】カルシウムカーバイド粒、カルシウムカーバイド粒製造方法及びカルシウムカーバイド粒製造システム
(51)【国際特許分類】
C01B 31/32 20060101AFI20160412BHJP
C07F 3/04 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
C01B31/32
C07F3/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-529909(P2013-529909)
(86)(22)【出願日】2012年2月7日
(86)【国際出願番号】JP2012052716
(87)【国際公開番号】WO2013027426
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-183661(P2011-183661)
(32)【優先日】2011年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】谷村 恭一
(72)【発明者】
【氏名】鎌本 隼平
(72)【発明者】
【氏名】窪野 孝治
(72)【発明者】
【氏名】大森 博昭
(72)【発明者】
【氏名】長崎 俊一
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−017413(JP,A)
【文献】
特公昭35−013471(JP,B1)
【文献】
特開2004−082045(JP,A)
【文献】
特公昭55−004688(JP,B1)
【文献】
特開昭58−088112(JP,A)
【文献】
特開昭61−178412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/32
C07F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径4mm以上が5wt%以下でかつ粒径0.15mm以下が20wt%以下のカルシウムカーバイド粒を製造する方法であって、
カルシウムカーバイドを粉砕機で粉砕する工程Aと、
粉砕機で粉砕されたカルシウムカーバイドを目開が4mmの篩にかける工程Bと、
前記篩上に残ったカルシウムカーバイドを前記粉砕機に再度導入する工程Cとを含み、
前記工程A〜Cは不活性ガス雰囲気中で行われ、
前記工程Aで粉砕機に導入するカルシウムカーバイド量aと、前記工程Bで篩を通過したカルシウムカーバイド量bとが、(a−b)/b=1〜2.5となるように、前記粉砕機による粉砕粒度を制御するカルシウムカーバイド粒製造方法。
【請求項2】
前記工程Aと工程Bとの間にカルシウムカーバイドから異物を除去する工程を含む請求項1に記載のカルシウムカーバイド粒製造方法。
【請求項3】
粒径4mm以上が5wt%以下でかつ粒径0.15mm以下が20wt%以下のカルシウムカーバイド粒を不活性ガス雰囲気中で製造するためのシステムであって、
カルシウムカーバイドを粉砕するための粉砕機と、
粉砕機で粉砕されたカルシウムカーバイドに適用する目開が4mmの篩と、
前記篩上に残ったカルシウムカーバイドを前記粉砕機に再度導入するためのカーバイド戻し路とを備え、
前記粉砕機に導入するカルシウムカーバイド量aと、前記篩を通過したカルシウムカーバイド量bとが、(a−b)/b=1〜2.5となるように、前記粉砕機による粉砕粒度を制御するカルシウムカーバイド粒製造システム。
【請求項4】
前記粉砕機と篩との間にカルシウムカーバイドから異物を除去するための異物除去機を備える請求項3に記載のカルシウムカーバイド粒製造システム。
【請求項5】
前記粉砕機は、外周に複数の打撃部材を有する、ロータ軸を中心に回転可能なロータと、ロータを向く円弧状内側面に凹凸状の破砕ライナを有する破砕板と、前記ロータ軸を油冷するための手段とを備える請求項3又は4に記載のカルシウムカーバイド粒製造システム。
【請求項6】
前記篩を通過したカルシウムカーバイドを中間タンクを介して、乾式アセチレン発生機に付随する原料シールタンクに搬送するためのフローコンベアを備え、フローコンベアは、左右に延びるケーシングと、ケーシング内において中仕切で上下に仕切られ、左端部又は右端部の連通部で互いに連通する上方の上り路及び下方の下り路と、上り路に不活性ガスを供給し、この不活性ガスを上り路、連通部、次いで下り路の順に流す不活性ガス供給手段とを備え、
前記ケーシングは、上り路に対応する部分に、カルシウムカーバイドの導入口を、下り路に対応する部分に、前記原料シールタンクが連結する開口及びカルシウムカーバイドの排出口をそれぞれ有し、
前記不活性ガスにより、前記導入口から上り路に導入されたカルシウムカーバイドを、上り路、連通部、次いで下り路の順に搬送し、下り路を搬送されるカルシウムカーバイドは、前記開口から原料シールタンクを満たし、原料シールタンクから溢れたカルシウムカーバイドは、前記排出口から前記中間タンクに戻される請求項3〜5のいずれか一項に記載のカルシウムカーバイド粒製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムカーバイド粒、カルシウムカーバイド粒製造方法及びカルシウムカーバイド粒製造システムに関し、更に詳しくは、乾式アセチレン発生に適したカルシウムカーバイド粒と、そのようなカルシウムカーバイド粒を製造するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムカーバイド(以下単に「カーバイド」ともいう。)を乾式アセチレン発生のためにアセチレン発生機に供給する際、カーバイド塊を予備破砕し、このカーバイドを粉砕機に導入して微粉砕し、このカーバイドを、アセチレン発生機の上方の原料シールタンクに搬送している。カーバイドは粒度が細かくなる程、アセチレン発生時の反応性が向上し、また、原料シールタンク内に密に収容されたカーバイドが原料シールタンク内へのアセチレンガスの流入を防ぐマテリアルシール機能が高まる。そのため、従来は、カーバイドの粒度を粉砕機や篩により極力細かくしていた。カーバイドの粒度について、中国特許文献CN101100617Aには、3mm以下かつ1mm以下70%以上との記載がある。また、原料シールタンクへはスクリューコンベアによりカーバイドを搬送しているが、原料シールタンクから溢れたカーバイドを中間タンクに戻すために別のスクリューコンベアが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許文献第101100617A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者は、カーバイドの粒度が細か過ぎると、アセチレン発生の反応温度が上昇して保安上のリスクが増長し、また、アセチレン発生機においてアセチレン重合等の副成反応が増加し、アセチレンガスの収率に悪影響を及ぼすことを見出した。そのため、本発明は、乾式アセチレン発生において、反応温度上昇による保安上のリスクの増長を招くことがなく、また、アセチレン重合等の副成反応を増加したり、収率に悪影響を及ぼすことがない、カルシウムカーバイド粒、カルシウムカーバイド粒製造方法及びカルシウムカーバイド粒製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明によれば、粒径4mm以上が5wt%以下でかつ粒径0.15mm以下が20wt%以下のカルシウムカーバイド粒が提供される。カーバイド粒の粒径4mm以上の比率が増えると、アセチレン発生機で未反応のカーバイドが増加し、アセチレンガスの収率が低下し得る。また、粒径0.15mm以下のカーバイドが20wt%を上回ると、アセチレン発生時の反応温度が上昇して保安上のリスクが増長し、更に、アセチレン発生機でアセチレン重合等の副成反応が増え、これによってもアセチレンガスの収率が下がる。本発明では更に、平均粒径を0.8mm〜1.5mmとすることが好ましい。カーバイドの平均粒径が0.8mm未満の場合、アセチレン発生が反応温度の上昇及び副反応増加となり、他方、1.5mmを超えると、アセチレン発生収率が低下する。
【0006】
別の本発明によれば、粒径4mm以上が5wt%以下でかつ粒径0.15mm以下が20wt%以下のカルシウムカーバイド粒を製造する方法であって、カルシウムカーバイドを粉砕機で粉砕する工程Aと、粉砕機で粉砕されたカルシウムカーバイドを目開が4mmの篩にかける工程Bと、前記篩上に残ったカルシウムカーバイドを前記粉砕機に再度導入する工程Cとを含み、前記工程A〜Cは不活性ガス雰囲気中で行われるカルシウムカーバイド粒製造方法が提供される。篩の目開が4mmであっても、4mm以上のカーバイド粒が若干篩を通過し得る。カーバイドは、空気中で風化しやすく、また、水に触れるとアセチレンガスが発生する可能性があるため、カーバイドの粉砕、搬送、貯蔵等は不活性ガス雰囲気中で行われる。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム等が使用可能である。
【0007】
本発明に係るカルシウムカーバイド粒製造方法において、前記工程Aで粉砕機に導入するカルシウムカーバイド量aと、前記工程Bで篩を通過したカルシウムカーバイド量bとが、(a−b)/b=1〜2.5となるように、前記粉砕機による粉砕粒度を制御することができる。本発明者は、粉砕機において粉砕粒度が細かくなり過ぎないように比較的粗く粉砕し、その分、意図的に、一定量のカーバイドが篩を通らずに粉砕機に戻されるようにするとにより、粒径0.15mm以下のカーバイド粉を20wt%以下に抑えることができることを見出した。すなわち、粉砕機に導入するカーバイド量(投入原料)をa、カーバイド量aに対して篩を通過したカーバイド量(製造量)をb、カーバイド量aに対して篩を通過せずに粉砕機に戻されるカーバイド量(循環量)をcとすると、循環比率=(a−b)/b=c/b=1〜2.5となるように粉砕機を稼働させる。なお、循環比率が1未満であると、粉砕機による粉砕で粒径0.15mm以下のカーバイド粉が増加する傾向があり、20wt%を超えて生じ得る。また、循環比率が2.5を上回ると、カーバイド粒の製造効率が落ちると共に、粒径4mm以上のカーバイド粉が増える傾向にあり、5wt%を超え得る。なお、粉砕機通過後、篩通過前に除去される鉄等の異物の量についてはカーバイドの量に比べて格段に小さいため、無視している。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記工程Aと工程Bとの間にカルシウムカーバイドから異物を除去する工程を含む。これは、カーバイドに混入している鉄等を除去するものであり、これにより、粉砕機の負荷や篩い網破れを軽減することができる。
【0009】
更に別の本発明によれば、粒径4mm以上が5wt%以下でかつ粒径0.15mm以下が20wt%以下のカルシウムカーバイド粒を不活性ガス雰囲気中で製造するためのシステムであって、カルシウムカーバイドを粉砕するための粉砕機と、粉砕機で粉砕されたカルシウムカーバイドに適用する目開が4mmの篩と、前記篩上に残ったカルシウムカーバイドを前記粉砕機に再度導入するためのカーバイド戻し路とを備えるカルシウムカーバイド粒製造システムが提供される。本発明に係るカルシウムカーバイド粒製造システムにおいて、前記粉砕機に導入するカルシウムカーバイド量aと、前記篩を通過したカルシウムカーバイド量bとが、(a−b)/b=1〜2.5となるように、前記粉砕機による粉砕粒度を制御することができる。更に、前記粉砕機と篩との間にカルシウムカーバイドから異物を除去するための異物除去機(除鉄機等)を備えることができる。
【0010】
本発明において、前記粉砕機は、外周に複数の打撃部材を有する、ロータ軸を中心に回転可能なロータと、ロータを向く円弧状内側面に凹凸状の破砕ライナを有する破砕板と、前記ロータ軸を油冷するための手段とを備え得る。ロータ軸を油冷するための手段としては、ロータ軸の軸受の保持器内に冷却用油を通すもの等を好ましく採用することができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記篩を通過したカルシウムカーバイドを中間タンクを介して、乾式アセチレン発生機に付随する原料シールタンクに搬送するためのフローコンベアを備え、フローコンベアは、左右に延びるケーシングと、ケーシング内において中仕切で上下に仕切られ、左端部又は右端部の連通部で互いに連通する上方の上り路及び下方の下り路と、上り路に不活性ガスを供給し、この不活性ガスを上り路、連通部、次いで下り路の順に流す不活性ガス供給手段とを備え、前記ケーシングは、上り路に対応する部分に、カルシウムカーバイドの導入口を、下り路に対応する部分に、前記原料シールタンクが連結する開口及びカルシウムカーバイドの排出口をそれぞれ有し、前記不活性ガスにより、前記導入口から上り路に導入されたカルシウムカーバイドを、上り路、連通部、次いで下り路の順に搬送し、下り路を搬送されるカルシウムカーバイドは、前記開口から原料シールタンクを満たし、原料シールタンクから溢れたカルシウムカーバイドは、前記排出口から前記中間タンクに戻され得る。中間タンクは、篩とフローコンベアとの間に配置されて、カーバイド粒を貯蔵しつつ原料シールタンクに送るカーバイド量を調節する役割を果たす。このような中間タンクとしては、篩からカーバイドを受け入れるタンクと、フローコンベアから戻されたカーバイドを受け入れるタンクとが別個であってもよい。中間タンクから原料シールタンクへのカーバイドの搬送には、フローコンベア以外の搬送手段(垂直搬送機等)も使用され得るが、本実施形態では、カーバイドを原料シールタンクに最終的に渡す搬送手段としてフローコンベアが使用される。従来は、原料シールタンクに対しカーバイドの送り用と戻し用の2台のスクリューコンベアを要したが、上り路と下り路を併有する1台のフローコンベアを使用することで、設備費の削減等の利点が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、粒径4mm以上が5wt%以下でかつ粒径0.15mm以下が20wt%以下のカルシウムカーバイド粒が提供される。このような粒度範囲(%は質量基準)のカーバイドは、乾式アセチレン発生において、反応温度上昇による保安上のリスクの増長を招くことがない。また、アセチレン重合等の副成反応を増加したり、収率に悪影響を及ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカーバイド粒製造システムを示す説明図である。
【
図3】粉砕機の側面断面説明図であり、概略的な油流通回路が付加される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態の図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係るカーバイド粒製造システムを示す説明図である。カーバイド粒製造システムは、乾式アセチレン発生に適したカーバイド粒を製造し、乾式アセチレン発生機(図示せず)に供給するためのもので、カーバイド塊を予備破砕した粒径約40mm以下(40〜50mmが3wt%以下)のカーバイドを、受入搬送機1及び垂直搬送機2を介して受け入れるストックタンク10と、ストックタンク10から導入したカーバイドを粉砕するための粉砕機20と、粉砕機20で粉砕されたカーバイドに適用する目開が4mmの篩30と、篩30上に残ったカーバイドを粉砕機20に再度導入するための戻し路40と、篩30を通過したカーバイド粒を貯蔵する原料タンク(第1の中間タンク)50とを備える。ストックタンク10と粉砕機20との間、及び粉砕機20と篩30との間には、カーバイドに混入している鉄等の異物を除去するためのマグネット式の除鉄機4、6が設置される。除鉄機4、6による除鉄により、粉砕機20の負荷や篩い網破れを軽減することができる。カーバイド粒製造システムは更に、原料タンク50から、乾式アセチレン発生機に付随する原料シールタンク70へとカーバイド粒を搬送するための、スクリューコンベア8、垂直搬送機9、及びフローコンベア60と、原料シールタンク70から溢れたカーバイド粒を収容するための戻りタンク(第2の中間タンク)80とを含む。本実施形態では、原料シールタンク70は複数台あり、1台の原料シールタンク70が1台の乾式アセチレン発生機に付随する。なお、
図1中、参照番号3は振動フィーダ、5は垂直搬送機、7、11はロータリーバルブ、12はスクリューコンベアである。粉砕機20、原料タンク50等は複数台を並列に使用可能である。カーバイド粒製造システムにおけるカーバイドの破砕、搬送、貯蔵等は、カーバイドの風化及びアセチレン爆発を防ぐために、水分を排除した窒素雰囲気中で行われる。
【0015】
図2及び3は、粉砕機20の正面断面説明図及び側面断面説明図である。粉砕機20は、特開2004−82045号公報等に開示される衝撃式粉砕機とほぼ同じ構成の粉砕機に後述する油冷機構等を加えたものである。粉砕機20は、上部に供給口21aを有しかつ底部を排出口21bとして開放するボックス状のケーシング21と、ケーシング21内において、外周に複数(
図2において八つ)の打撃板22aを有する、ロータ軸22bを中心に正逆回転可能なロータ22と、ケーシング21内のロータ22の左右に配置され、ロータ22を向く円弧状内側面に山谷凹凸状の破砕ライナ23aを有する破砕板23とを備える。粉砕機20において、供給口21aから供給されたカーバイドは、回転するロータ22の打撃板22aと、破砕板23の破砕ライナ23aとの間で破砕された後、排出口21bから排出される。粉砕機20で粉砕するカーバイドの目標粒度は、ロータ22の打撃板22aと破砕板23の破砕ライナ23aとの間のクリアランスやロータの回転数を調整することにより、ある程度の精度で設定され得る。なお、打撃板22aと破砕ライナ23a間のクリアランスの調整は、上段(上方)と下段(下方)で別々に調整することができる。本実施形態では、カーバイドの粒度が細かくなりすぎないように(粒径0.15mm以下のカーバイド粉が20wt%を超えないように)、比較的粗く粉砕し、一定量のカーバイドが篩30を通過せずに戻し路40から粉砕機20に循環されるように、粉砕機20を稼働させる。
【0016】
破砕機20で破砕されたカーバイドは、除鉄機6による除鉄後、篩30にかけられる。篩30は、4mm以下のカーバイド粒を通過させ、4mmより大きいカーバイド粒を通過させない(4mm以上のカーバイド粒も若干通過し得る)。この篩30を通過せずに残ったカーバイドは戻し路40から粉砕機20へと再導入される。本実施形態では、粉砕機20にストックタンク10から導入するカーバイド量(投入原料)をa、カーバイド量aに対して篩30を通過したカーバイド量(製造量)をb、カーバイド量aに対して篩を通過せずに戻り路40を介して粉砕機に戻されるカーバイド量(循環量)をcとすると、循環比率=(a−b)/b=c/b=1〜2.5となるように粉砕機の粉砕粒度を制御する。なお、粉砕機通過後、篩通過前に除去される鉄等の異物の量についてはカーバイドの量に比べて格段に小さいため、無視している。これにより、原料タンク50には、粒径4mm以上が5wt%以下、粒径0.15mm以下が20wt%以下、更に平均粒径が0.8mm〜1.5mmであるカーバイド粒が貯蔵される。
【0017】
粉砕機20では、カーバイドの風化及びアセチレン爆発を防ぐためにケーシング21内が窒素封入され、ケーシング21の前壁21c及び後壁21dとロータ軸22bとの間にグランドパッキン24(
図3参照)を設置してシール性を高めている。また、カーバイドの粉砕熱によりロータ軸22bが高温になると、カーバイドの還元性が高まる等、危険であるため、前後の軸受25a、25b(
図3参照)(の保持器内)に潤滑油を流通させて油冷を実施するための以下に述べる油流通回路(
図3に概略的に示す)を備える。油流通回路は、粉砕機20のケーシング21の外部に配置されるオイルクーラーユニット26と、オイルクーラーユニット26から前後の軸受25a、25bに比較的低温の潤滑油をそれぞれ送る送りライン27a、27bと、前後の軸受25a、25bから、これらとの熱交換作用により比較的高温となった潤滑油をオイルクーラーユニット26に戻す戻りライン28a、28bとを含む。オイルクーラーユニット26は、送りライン27a、27b及び戻りライン28a、28bが接続する油タンク26aと、油タンク26a内の油を送りライン27a、27bから送り出すためのオイルポンプ26bと、送りライン27a、27bに介設される、外気との熱交換により油を冷却するための熱交換部26cと、熱交換部26cに外気(空気)を吹き付けるためのファン26dとを有する。なお、カーバイドは禁水であるため、水冷は不適である。
【0018】
原料タンク50に貯蔵されたカーバイド粒は、スクリューコンベア8、垂直搬送機9及びフローコンベア60により、複数の原料シールタンク70に供給される。各原料シールタンク70は一対一で図示しない乾式アセチレン発生機に付随する。
図4は、フローコンベア60の側面説明図である。フローコンベア60は、水平に長く、断面矩形のケーシング61内において中仕切64で上下に仕切られた上方の上り路62と、下方の下り路63とを含む。中仕切64はケーシング61内の右端部で途切れ、この右端部に上り路62と下り路63とが連通する連通部64aが形成される。ケーシング61の上壁には、垂直搬送機9からカーバイド粒を受け入れる導入口61aが設けられる。また、ケーシング61の底壁には、各原料シールタンク70の上端部が接続する開口61bと、原料シールタンク70に入りきらなかったカーバイド粒を戻りタンク80に戻すための排出口61cとが形成される。ケーシング61内には上り路62の左端部付近から窒素が窒素供給機により導入され、この窒素が上り路62を左方から右方へと流れた後、連通部64aにて下り路63に入り、次いで、下り路63を右方から左方へと流れる。かかる窒素の流れにより、導入口61aから上り路62内に導入されたカーバイド粒が上り路62を右方の連通部64aまで搬送され、次いで、下り路63を右方から左方の排出口61c側へと運ばれる。カーバイド粒は、下り路63を左方に移動する際、開口61bから原料シールタンク70内へと落下して原料シールタンク70を満たし、原料シールタンク70から溢れたカーバイド粒はそのまま下り路63を左方に運ばれ、排出口61cから戻りタンク80に戻される。各原料シールタンク70は常にカーバイド粒で満たされ、このように密に収容されたカーバイドは、アセチレンガスが原料シールタンク70内に流入するのを防ぐマテリアルシールとして機能する。戻りタンク80に戻されたカーバイド粒は、適宜、原料シールタンク70に再導入される。
【実施例】
【0019】
実施例1
上述した粉砕機20に対し、ロータ22の打撃板22aと破砕板23の破砕ライナ23aとの間の上段のクリアランスを50mm、下段のクリアランスを30mm、ロータ22の回転数を45m/s(650rpm)とし、供給口21aからカーバイドを40t/hで投入した。粉砕機20による粉砕後に篩30を通過したカーバイド量は15t/hとなり、循環比率は、(40−15)/15=約1.7であった。この循環比率で粉砕機20を長時間稼働させて得た(篩30を通過した)カーバイド粒の粒度分布(質量基準)を表1に示す。
【0020】
【表1】
反応温度:127℃
発生収率:96.0%
残留カーバイド:900ml/kg
ここで示す反応温度は、カーバイドに、3等量の水を噴霧させ、アセチレンガスを発生させたときの発生機内固相温度であり、上昇により保安上のリスクが高まる。また、発生収率とは、発生ガス量を、理論発生量(カーバイド使用量×アセチレンガス発生量)で割った値で、この値が高い方が効率的にアセチレンガスを発生させている事が示される。更に、残留カーバイドとは、反応せずに消石灰中に残留するカーバイド量を、アセチレンガス発生量として示した値であり、この値が低い方がカーバイドを無駄なく使用出来ていることが示されることに加え、値が高いと、消石灰の後処理時、保安上のリスクが高まる。
【0021】
比較例1
粉砕機20に対し、ロータ22の打撃板22aと破砕板23の破砕ライナ23aとの間の上段のクリアランスを40mm、下段のクリアランスを20mm、ロータ22の回転数を45m/s(650rpm)とし、供給口21aからカーバイドを27t/hで投入した。粉砕機20による粉砕後に篩30を通過したカーバイド量は15t/hとなり、循環比率は、(27−15)/15=0.8であった。この循環比率で粉砕機20を長時間稼働させて得た(篩30を通過した)カーバイド粒の粒度分布(質量基準)を表2に示す。
【0022】
【表2】
反応温度:147℃
発生収率:94.3%
残留カーバイド:300ml/kg
この場合、カーバイドが細かすぎて、反応温度が上昇し、保安上のリスクが高まり得る。
【0023】
比較例2
粉砕機20に対し、ロータ22の打撃板22aと破砕板23の破砕ライナ23aとの間の上段のクリアランスを60mm、下段のクリアランスを35mm、ロータ22の回転数を45m/s(650rpm)とし、供給口21aからカーバイドを60t/hで投入した。粉砕機20による粉砕後に篩30を通過したカーバイド量は15t/hとなり、循環比率は、(60−15)/15=3.0であった。この循環比率で粉砕機20を長時間稼働させて得た(篩30を通過した)カーバイド粒の粒度分布(質量基準)を表3に示す。
【0024】
【表3】
反応温度:119℃
発生収率:94.5%
残留カーバイド:2500ml/kg
この場合、未反応残留カーバイドが多く、アセチレンガスの収率が下がり得る。
【0025】
実施例2
粉砕機20に対し、ロータ22の打撃板22aと破砕板23の破砕ライナ23aとの間の上段のクリアランスを55mm、下段のクリアランスを32mm、ロータ22の回転数を45m/s(650rpm)とし、供給口21aからカーバイドを52.5t/hで投入した。粉砕機20による粉砕後に篩30を通過したカーバイド量は15t/hとなり、循環比率は、(52.5−15)/15=2.5であった。この循環比率で粉砕機20を長時間稼働させて得た(篩30を通過した)カーバイド粒の粒度分布(質量基準)を表4に示す。
【0026】
【表4】
反応温度:122℃
発生収率:95.66%
残留カーバイド:1500ml/kg
【0027】
実施例3
粉砕機20に対し、ロータ22の打撃板22aと破砕板23の破砕ライナ23aとの間の上段のクリアランスを45mm、下段のクリアランスを22mm、ロータ22の回転数を45m/s(650rpm)とし、供給口21aからカーバイドを30t/hで投入した。粉砕機20による粉砕後に篩30を通過したカーバイド量は15t/hとなり、循環比率は、(30−15)/15=1.0であった。この循環比率で粉砕機20を長時間稼働させて得た(篩30を通過した)カーバイド粒の粒度分布(質量基準)を表5に示す。
【0028】
【表5】
反応温度:138℃
発生収率:95.4%
残留カーバイド:500ml/kg
【符号の説明】
【0029】
4、6 除鉄機
10 ストックタンク
20 粉砕機
21 ケーシング
22 ロータ
22a 打撃板
22b ロータ軸
23 破砕板
23a 破砕ライナ
25a、25b 軸受
26 オイルクーラーユニット
27a、27b 送りライン
28a、28b 戻りライン
30 篩
40 戻り路
50 原料タンク
60 フローコンベア
61 ケーシング
62 上り路
63 下り路
64 中仕切
64a 連通部
70 原料シールタンク
80 戻りタンク