特許第5909527号(P5909527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909527
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】紙添加材、紙およびこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/02 20060101AFI20160412BHJP
【FI】
   D21H17/02
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-146156(P2014-146156)
(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公開番号】特開2016-23374(P2016-23374A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2014年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇紀
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−162899(JP,A)
【文献】 特開平06−235198(JP,A)
【文献】 実開昭63−078099(JP,U)
【文献】 特開2005−213680(JP,A)
【文献】 特開平01−213499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00〜 1/38
D21C 1/00〜11/14
D21D 1/00〜99/00
D21F 1/00〜13/12
D21G 1/00〜 9/00
D21H11/00〜27/42
D21J 1/00〜 7/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物の種子部を含有する紙添加材であって、
穀物の種子部は、JIS Z8801−1:2006に規定する目開き1mmの篩を通過する粒径を有し、前記穀物の種子部は、水分率50〜99質量%の湿潤状態であることを特徴とする紙添加材。
【請求項2】
前記穀物の種子部は、JIS Z8801−1:2006に規定する目開き106μmの篩を通過しない粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の紙添加材。
【請求項3】
前記穀物の種子部は、穀物飲料の製造残渣であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙添加材。
【請求項4】
前記穀物は大麦であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の紙添加材。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の紙添加材が配合されていることを特徴とする紙。
【請求項6】
前記紙添加材は、紙パルプと前記穀物の種子部との合計質量に対する前記穀物の種子部の質量が乾燥固形分換算で2〜17質量%となるように配合されていることを特徴とする請求項に記載の紙。
【請求項7】
乾燥質量で1kgの前記紙について測定したときの前記紙添加材の含有量は、前記穀物の種子部の乾燥固形分換算で10〜200gであることを特徴とする請求項5または6に記載の紙。
【請求項8】
JIS Z8801−1:2006に規定する公称目開き1mmの篩を通過するように粒径が調整され、水分率50〜99質量%に湿潤した穀物の種子部を、紙添加材とすることを特徴とする紙添加材の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の紙添加材を紙パルプに配合することを特徴とする紙の製造方法。
【請求項10】
前記紙パルプと前記穀物の種子部との合計質量に対する前記穀物の種子部の質量が乾燥固形分換算で2〜17質量%となるように、前記紙添加材を配合することを特徴とする請求項に記載の紙の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載の紙添加材を紙パルプに配合することを特徴とする紙の紙力増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙添加材、紙、紙添加材の製造方法、紙の製造方法、および紙の紙力増強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、茶系飲料やコーヒー飲料などの嗜好飲料の伸長と共に、飲料工場等からは嗜好飲料の製造残渣が多量に排出されており、さらにそれらの量は年々増加している。これら嗜好飲料の製造残渣をリサイクルし有効活用する方法として、茶系飲料の製造残渣である茶殻を紙に配合する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。一方、焙煎した大麦を水などで抽出した麦茶など穀物飲料についても、製造残渣の排出量が年々増加しており、その有効利用が求められている。
【0003】
穀物から得られる副産物を有効利用する方法として、例えば、穀物種子の皮部を配合した紙の製造方法が知られている(特許文献3参照)。また、稲わらや麦わら等、穀物の茎部や葉部等から得られる非木材パルプを配合した紙が開示されている(例えば、特許文献4〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−057089号公報
【特許文献2】特開2004−312254号公報
【特許文献3】特開平7−145592号公報
【特許文献4】特開2001−039014号公報
【特許文献5】特開平8−013367号公報
【特許文献6】特表2011−505505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2のように茶系飲料の製造残渣(茶殻)を紙に配合する場合、得られた紙は、抗菌効果や消臭効果が付与されたものとなるが、茶殻無配合の紙と比較して紙力(紙の強度)の面で同等以上のものとはならなかった。
【0006】
一方、茶系飲料やコーヒー飲料などと異なり、穀物飲料の製造残渣は、有効利用が十分になされているとはいえない。例えば、特許文献3の方法は、穀物飲料の製造残渣に主として含まれる穀物の種子部(種子の皮部以外の部分)が有効利用されるものではない。また、前述したように、穀物を含む各種植物の茎部や葉部などを配合した紙はこれまでに知られていたが、穀物の種子部を紙に配合することは知られていなかった。
【0007】
ところで、引張強度等といった所謂「紙力」を増強させるために、粘性のあるコーンスターチ等の精製した微細なデンプンを添加することが既に知られていた。しかしながら、紙力増強剤として別途、コーンスターチを用いることは、製造コストや省資源の観点からも望ましいものではなかった。
【0008】
そこで、本発明者は、飲料製造残渣等の穀物の種子部について有効資源としての利用を図るべく、穀物飲料の製造残渣の紙への配合を試みたところ、抄紙工程において紙パルプから脱離してしまい、紙力増強の効果が十分に発揮できないという課題があることが判明した。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するものであって、抄紙工程において紙パルプから脱離しにくく、配合した紙の紙力を増強させることができる紙添加剤、および抄造が容易であり、かつ紙力が増強された紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究の結果、所定の粒径を有する穀物種子部を紙に配合することで、紙力が増強されることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、第1に本発明は、穀物の種子部を含有する紙添加材であって、穀物の種子部は、JIS Z8801−1:2006に規定する目開き1mmの篩を通過する粒径を有することを特徴とする紙添加材を提供する(発明1)。
【0012】
上記発明(発明1)に係る紙添加材は、穀物の種子部を含有するため、配合した紙の紙力を増強させることができ、かつ、穀物の種子部が目開き1mmの篩を通過する粒径を有するため、抄紙工程において紙パルプから脱離しにくいものとなる。
【0013】
上記発明(発明1)において、前記穀物の種子部は、JIS Z8801−1:2006に規定する目開き106μmの篩を通過しない粒径を有することが好ましい(発明2)。
【0014】
上記発明(発明1,2)において、前記穀物の種子部は、湿潤状態であることが好ましく(発明3)、また、前記穀物の種子部の水分率は、50〜99質量%であることが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明1〜4)において、前記穀物の種子部は、穀物飲料の製造残渣であることが好ましく(発明5)、また、前記穀物は大麦であることが好ましい(発明6)。
【0016】
第2に本発明は、上記発明(発明1〜6)に係る紙添加材が配合されていることを特徴とする紙を提供する(発明7)。
【0017】
上記発明(発明7)に係る紙は、上記紙添加材が配合されているため、抄造が容易であり、かつ紙力が増強されたものとなる。
【0018】
上記発明(発明7)において、前記紙添加材は、前記紙パルプと前記穀物の種子部との合計質量に対する前記穀物の種子部の質量が乾燥固形分換算で2〜17質量%となるように配合されていることが好ましく(発明8)、また、乾燥質量で1kgの前記紙について測定したときの前記紙添加材の含有量は、前記穀物の種子部の乾燥固形分換算で10〜200gであることが好ましい(発明9)。
【0019】
第3に本発明は、JIS Z8801−1:2006に規定する公称目開き1mmの篩を通過するように粒径を調整した穀物の種子部を、紙添加材とすることを特徴とする紙添加材の製造方法を提供する(発明10)。
【0020】
第4に本発明は、上記発明(発明1〜6)に係る紙添加材を紙パルプに配合することを特徴とする紙の製造方法を提供する(発明11)。
【0021】
上記発明(発明11)においては、前記紙パルプと前記穀物の種子部との合計質量に対する前記穀物の種子部の質量が乾燥固形分換算で2〜17質量%となるように、前記紙添加材を配合することが好ましい(発明12)。
【0022】
第5に本発明は、上記発明(発明1〜6)に係る紙添加材を紙パルプに配合することを特徴とする紙の紙力増強方法を提供する(発明13)。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る紙添加材は、配合した紙の紙力を増強させることができ、かつ、抄紙工程において紙パルプから脱離しにくいものとなる。また、本発明に係る紙は、抄造が容易であり、かつ紙力が増強されたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔紙添加材,紙添加材の製造方法〕
本実施形態に係る紙添加材は、JIS Z8801−1:2006に規定する目開き1mmの篩を通過する粒径を有する、穀物の種子部を含有するものである。なお、本実施形態において「穀物の種子部を含有する」との記載は、穀物の種子部のみからなる概念を包含するものである。
【0025】
本実施形態における穀物とは、種子を食用とするため栽培される植物をいう。本実施形態において使用し得る穀物としては、大麦、米、小麦、ライ麦、トウモロコシ、キビ、アワ、ヒエ等のイネ科植物;ダイズ、アズキ等のマメ科植物;ソバ、ダッタンソバ等のタデ科植物;などが例示され、これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、大麦および米が好ましく、特に大麦が好ましい。
【0026】
大麦(学名:Hordeum vulgare)は、イネ科の植物であって、二条大麦、四条大麦、六条大麦、裸大麦等が挙げられる。これらの中でも、六条大麦、二条大麦が好ましい。
【0027】
本実施形態においては、上記穀物の種子部を用いる。穀物種子部を用いることで、本実施形態に係る紙添加材を配合した紙の紙力を増強させることができる。ここで、本実施形態における「穀物の種子部」(単に「穀物種子部」ということがある。)とは、種子における皮部以外の部分(主として胚乳および胚芽からなる)を指す。また、「紙力」とは紙の強度をいい、本実施形態においては、好ましくは紙の引張強さおよび引張伸びを意味する。
【0028】
前述したとおり、穀物の茎部、葉部、種子における皮部などは、植物繊維を多く含有するため、これらをパルプ化して紙原料に配合することは従来知られていた。しかし、穀物の種子部は、植物繊維を豊富に含んでおらず、紙パルプ中の繊維との絡み合いや水素結合などの紙力発現機能を有さないと従来考えられていたため、種子における皮部以外の部分を紙に配合することは知られていなかった。さらに、穀物種子部を配合することにより紙力が増強されることは全く知られておらず、本発明者の新知見である。
【0029】
上記穀物種子部は、JIS Z8801−1:2006に規定する目開き1mmの篩を通過する粒径を有する。ここで、本発明者は、粒径を全く調整しない穀物種子部を紙へ配合するだけでは、抄紙工程において紙パルプから脱離してしまうことを知見した。より具体的には、目開き1mmの篩を通過しない穀物種子部は、後述する抄紙工程のワイヤーパートやプレスパートにおいて、ワイヤー(網)へ付着したり、紙パルプ(湿紙)から脱離したりする。これに対し、目開き1mmの篩を通過する粒径を有する穀物種子部は、紙パルプとよく絡まり合い、紙パルプ(湿紙)への定着率が良好なものとなる。
【0030】
上記穀物種子部は、JIS Z8801−1:2006に規定する目開き106μmの篩を通過しない粒径を有することが好ましく、目開き125μmの篩を通過しない粒径を有することが特に好ましく、目開き150μmの篩を通過しない粒径を有することがさらに好ましい。かかる粒径を有する穀物種子部は、抄紙工程においてワイヤー(網)を通り抜けにくいため、穀物種子部の脱水液への流亡が抑制され、紙パルプ(湿紙)への定着率が良好なものとなる。
【0031】
本実施形態において、上記穀物種子部は湿潤状態であることが好ましい。より具体的には、穀物種子部の水分率は、50〜99質量%であることが好ましく、特に60〜98質量%であることが好ましく、さらに62〜85質量%であることが好ましく、さらには65〜80質量%であることが好ましい。穀物種子部が湿潤状態であり、特に穀物種子部の水分率が50質量%以上であると、後述する抄紙工程(ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート等)において、穀物種子部がワイヤー(網)に付着し難くなり、紙パルプ(湿紙)からの脱離が抑制される。一方、水分率が99質量%以下であると、抄紙工程の原料となる紙パルプ(一般的には水分率が約98〜99質量%)が、穀物種子部を添加しても希釈されず、穀物種子部を含有する紙の抄造が容易になる。
【0032】
上記穀物種子部は、穀物飲料の製造残渣であることが好ましい。ここで、穀物飲料は、上記穀物の種子部を主たる抽出原料として製造される飲料であり、例えば、大麦を用いた麦茶、米(玄米)を用いた玄米茶、トウモロコシを用いたトウモロコシ茶、ソバを用いたソバ茶、ダッタンソバを用いたダッタンソバ茶などが挙げられる。これら穀物飲料の製造残渣は、穀物種子部を含有し、かつ穀物種子部の水分率が概ね50〜99質量%であるため、脱水・乾燥などの水分率の調整が不要であることが多く、本実施形態に特に好適である。また、穀物飲料の製造残渣は、これまで未利用の資源であったため、これを有効活用し地球環境に負荷を与えないという観点からも、極めて好ましい。
【0033】
上記穀物種子部は、そのまま紙添加材として用いてもよく、また本実施形態による効果を損なわない範囲で他の添加剤等を配合し、本実施形態に係る紙添加材としてもよい。他の添加剤としては、例えば、紙力増強剤、サイズ剤、歩留向上剤、濾水剤、撥水剤、漂白剤、染料、顔料、凝集剤、粘剤、フィラー、嵩高剤、消泡剤、柔軟剤、デポジットコントロール剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、凝結剤などが挙げられる。
【0034】
本実施形態に係る紙添加材の製造方法は、目開き1mmの篩を通過するように、好ましくは目開き106μmの篩を通過しないように、上記穀物種子部の粒径を調整する以外、特に限定されない。穀物種子部の粒径の調整は、例えば、穀物の種子部(種子の皮部が含まれていてもよい)を常法に従って粉砕した後、目開き1mmの篩などの所定の目開きを有する篩を用いた篩分けにより行うことができる。粉砕方法としては、湿式粉砕、乾式粉砕等が挙げられるが、前述した穀物飲料の製造残渣を用いる場合、粉砕前の乾燥および粉砕後の水分率調整が不要であり、抄紙工程で乾燥粉砕物を用いると、製紙工程のワイヤーパートやプレスパート、ドライヤーパートでワイヤー(網)部分に粉砕物が残存するため、湿式粉砕が好ましい。上記粒径を有する穀物種子部をそのまま用いるか、または所望により他の添加剤を配合することにより、本実施形態に係る紙添加材が得られる。
【0035】
なお、穀物種子部の水分率を50〜99質量%に調整する場合、例えば、穀物種子部を温水等の水に一定時間浸漬した後にろ過し、必要に応じて脱水・乾燥などを行えばよい。ここで、前述した穀物飲料の製造残渣は、このような工程を経て得られるものであるため、本実施形態において用いる穀物種子部として特に好適である。
【0036】
以上述べた本実施形態に係る紙添加材は、配合した紙の紙力を増強させることができる。また、本実施形態の紙添加材は、抄紙工程において紙パルプから脱離しにくく、配合した紙の抄造が容易である。
【0037】
〔紙,紙の製造方法,紙の紙力増強方法〕
本実施形態に係る紙は、紙パルプに、前述した実施形態に係る紙添加材を配合して抄紙したものである。
【0038】
紙パルプは、紙の原料となる植物繊維その他の繊維であって、紙パルプの原料の相違により、N材、L材などの木材繊維(木材パルプ);古紙パルプ;ケナフ、バカス等の非木材パルプなどが挙げられる。また、紙パルプは、パルプ化の方法の相違により機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプなどが挙げられる。本実施形態においては、これらのいずれを用いてもよく、また単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
本実施形態に係る紙は、前述した紙添加材が配合されており、紙力が増強されているため、紙力が要求される用途、例えば、段ボール原紙等の包装用紙、包装用袋、ノートや書籍の表紙、裏表紙、カタログ、封筒、印刷用紙、板紙などに特に好適である。
【0040】
本実施形態において、上記紙添加材は、紙パルプと穀物の種子部との合計質量に対する穀物の種子部の質量が乾燥固形分換算で2〜17質量%となるように、特に3〜15質量%となるように、さらには3〜10質量%となるように、紙パルプに配合されることが好ましい。乾燥固形分換算で穀物種子部が2質量%以上となるように上記紙添加材を配合することで、紙の紙力をより効果的に増強することができる。一方、乾燥固形分換算で穀物種子部が17質量%以下となるように上記紙添加材を配合すると、抄紙工程のワイヤーパートやプレスパートにおいて、ワイヤー(網)への付着・紙パルプ(湿紙)からの穀物種子部の脱離がより効果的に抑制される。
【0041】
また、乾燥質量で1kgの本実施形態に係る紙について測定したときの上記紙添加材の含有量は、穀物の種子部の乾燥固形分換算で10〜200gであることが好ましく、特に20〜170gであることが好ましく、さらには30〜150gであることが好ましい。上記紙添加材の含有量がかかる範囲であると、紙力が効果的に増強され、また穀物種子部の脱離が効果的に抑制される。
【0042】
上記紙添加材を配合せずに抄紙した紙の乾燥引張強さを1とした場合、上記紙添加材を配合して抄紙した本実施形態に係る紙の乾燥引張強さは、1.05以上であることが好ましく、特に1.13以上であることが好ましい。また、上記紙添加材を配合せずに抄紙した紙の乾燥引張伸びを1とした場合、上記紙添加材を配合して抄紙した本実施形態に係る紙の乾燥引張伸びは、1.02以上であることが好ましく、特に1.20以上であることが好ましい。
【0043】
なお、本実施形態における乾燥引張強さおよび乾燥引張伸びは、JIS P8113:2006に準拠して測定した値である。本実施形態に係る紙は、所定の粒径を有する穀物種子部を含有する紙添加材が配合されているため、その穀物種子部の作用により、かかる引張強さおよび/または引張伸びの比を容易に達成することができる。
【0044】
本実施形態に係る紙の坪量は、14〜400g/m2 であることが好ましく、特に14〜180g/m2 であることが好ましい。本実施形態において、かかる坪量を有する紙は、上記紙添加材を配合することによる紙力の増強効果がより顕著なものとなる。
【0045】
本実施形態に係る紙は、前述した紙添加材を配合する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、まず、紙パルプと上記紙添加材とが水に分散したパルプスラリーを調製する。紙パルプへの上記紙添加材の配合は、パルプスラリーを調製する前後のいずれであってもよい。ここで、上記紙添加材は、紙パルプと穀物の種子部との合計質量に対する穀物の種子部の質量が乾燥固形分換算で2〜17質量%となるように、紙パルプに配合することが好ましい。
【0046】
得られたパルプスラリーを、ワイヤーに流し込みながら所望の厚さのフェルト状に成形し、湿紙を得る(ワイヤーパート)。ここで、ワイヤーの目開きは、106〜250μmであることが好ましく、特に125〜200μmであることが好ましい。かかるワイヤーを用いることで、紙添加材に含まれる穀物種子部と紙パルプとを効果的に絡まり合わせることができる。
【0047】
次に、プレス機等を用いて湿紙を脱水し(プレスパート)、続いて加熱乾燥することにより残留水分を十分に除去し(ドライヤーパート)、本実施形態に係る紙を得る。このようにして得られた紙は、単層として用いてもよく、紙どうしや他の層との積層体として形成してもよい。
【0048】
以上述べた本実施形態に係る紙は、所定の粒径を有する穀物種子部を含有する紙添加材が配合されているため、抄造が容易であり、かつ紙力が増強されたものとなる。
【0049】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例、試験例等に何ら限定されるものではない。
【0051】
〔定着性評価−1〕
製造例1
焙煎した大麦(六条大麦および二条大麦を含有)の種子部を、焙煎大麦:80℃の温水=10g:1000mLの割合にて80℃の温水に10分間浸漬し、その後目開き1mmの篩にてろ過し、含水大麦(水分率:80.5質量%)を得た。
【0052】
得られた含水大麦に、含水大麦:水=10g:65gの割合にて水を加え、ジューサーミキサー(東芝社製,JC−L80MR)に投入して3分間湿式粉砕した。得られた粉砕物を、目開き1mmおよび150μmの篩を用いて水を流しながら篩分けし、粒径1mm超の紙添加材(試料1)、粒径150μm超1mm以下の紙添加材(試料2)、および粒径150μm以下の紙添加材(試料3)を得た。なお、「粒径1mm超」とは目開き1mmの篩を通過しなかったことを、「粒径150μm超1mm以下」とは目開き1mmの篩を通過し目開き150μmの篩を通過しなかったことを、および「粒径150μm以下」とは目開き150μmの篩を通過したことを、それぞれ表す。
【0053】
製造例2〜4
製造例1で得られた試料1〜3の紙添加材を、各々シャーレ上で105℃にて40分(製造例2,試料4〜6)、70分(製造例3,試料7〜9)、および90分(製造例4,試料10〜12)乾燥し、その後シャーレ中で混合して水分率を均質化して、試料4〜12の紙添加材を得た。
【0054】
製造例5
製造例1で得られた含水大麦(水分率:80.5質量%)を、105℃にて24時間静置した後、ジューサーミキサー(東芝社製,JC−L80MR)に投入して3分間乾式粉砕した。得られた粉砕物を、公称目開き1mmおよび150μmの篩を用いて篩分けし、粒径1mm超の紙添加材(試料13)、粒径150μm超1mm以下の紙添加材(試料14)、および粒径150μm以下の紙添加材(試料15)を得た。
【0055】
水分率の測定
得られた試料1〜15の紙添加材について、赤外線水分計(ケット科学研究所社製,FD−620)を用いて水分率を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0056】
定着性の評価−1
A4判コピー用紙に水を加えて20分間浸漬し、その後ジューサーミキサー(東芝社製,JC−L80MR)に投入して10分間湿式粉砕し、濃度2質量%の紙パルプを得た。得られた紙パルプに、試料1〜15の紙添加材を、紙パルプと含水大麦との合計質量に対する含水大麦の質量が乾燥固形分換算で表1〜3に示す配合量となるように配合し、含水大麦(紙添加材)配合パルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーを50gづつ小分けして、目開き180μmのワイヤー(篩面積:0.0044m2 )上に流し込んだ。ワイヤー上の湿紙にガラス板を載せ、その上から30g/cm2 の圧力をかけて脱水を行った。脱水した湿紙をガラス板ごとワイヤーから取り除き、ワイヤーの網目に付着した大麦の有無を目視にて確認した。結果を表1〜3に表す。ここで、表中、○は付着した大麦なし(良好)、×は網目に大麦の付着あり(不良)を表す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表1〜3に示すように、粒径が1mm超の含水大麦(紙添加材)を配合した試料は、ワイヤーの網目に大麦の付着が確認された。抄紙工程においてワイヤー(網)に大麦が残存すると、穴が開いた紙、汚れが付着した紙、スジ・切れが入った紙などの不良紙の発生原因となる。
【0061】
一方で、粒径1mm以下の大麦は、おおむね定着性が良好であった。特に、大麦の水分率が50〜99質量%である紙添加材(含水大麦)は、網目に付着物がほとんど確認されず、定着性・抄造性が良好であることが明らかとなった。
【0062】
〔定着性評価−2〕
粒径が150μm以下の含水大麦は、ワイヤーへの付着こそほとんど認められなかったが、脱水工程において脱水液(白水)とともにワイヤーを通り抜け、紙パルプ(湿紙)に定着せず脱水液に流亡している可能性がある。そのため、下記試験により含水大麦の定着性を評価した。
【0063】
定着性の評価−2
A4判コピー用紙に水を加えて20分間浸漬し、その後ジューサーミキサー(東芝社製,JC−L80MR)に投入して10分間湿式粉砕し、濃度2質量%の紙パルプを得た。得られた紙パルプに、製造例1で得られた試料2(粒径150μm超1mm以下)、および試料3(粒径150μm以下)の紙添加材を、紙パルプと含水大麦との合計質量に対する含水大麦の質量が乾燥固形分換算で表4に示す配合量となるように配合し、含水大麦(紙添加材)配合パルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーを50gづつ小分けして、目開き180μmのワイヤー(篩面積:0.0044m2 )上に流し込んだ。ワイヤー上の湿紙にガラス板を載せ、その上から30g/cm2 の圧力をかけて脱水を行った。
【0064】
ワイヤー(網)を通過した脱水液について、分光色差計(日本電色工業社製,Spectro photometer,SE6000)を用い、照明受光条件を透過(JIS Z8722に準拠するn−n後分光方式)として、脱水液のL値を測定した。表4に結果を示す。
【0065】
【表4】
【0066】
表4に示すL値は、0に近いとより黒く、100に近いとより白いことを示す。表4に示されるように、粒径150μm以下の含水大麦(紙添加材)を配合した湿紙は、脱水液のL値が著しく低下していた。すなわち、抄紙工程において目開き180μmのワイヤーを用いた場合、粒径150μm以下の大麦のうち一定量が脱水液に流亡してしまうことが明らかとなった。
【0067】
表1〜表4の結果より、粒径が150μm超1mm以下に調整され、水分率が50〜99質量%である含水大麦を、紙パルプと含水大麦との合計質量に対する含水大麦の質量が乾燥固形分換算で3〜15質量%となるように配合した場合、抄紙工程における抄造性が特に良好であり、かつ紙パルプへの含水大麦の定着率が特によいことが判明した。
【0068】
〔紙力の評価〕
製造例6,7
広葉樹を原料とするL材を、パルプ離解機(熊谷理機工業社製)にて10分間離解し、L材パルプ5質量%溶液を調製した。得られたL材パルプ溶液に、試料2の紙添加材(含水大麦,粒径:150μm超1mm以下)または試料14の紙添加材(乾燥大麦,粒径:150μm超1mm以下)を、紙パルプと大麦(試料2または14)との合計質量に対する大麦の質量が乾燥固形分換算で表5に示す配合量となるように配合し、大麦配合L材パルプスラリーを調製した。
【0069】
得られたL材パルプスラリーについて、JIS P8222に準拠した方法で湿紙を作製することができるセミオートマチック角型マシン抄紙機(熊谷理機工業社製,No.2557,抄紙網:80mesh(目開き180μm))を用い、250mm×250mmに抄紙して大麦配合湿紙を得た。得られた湿紙について、回転型乾燥機(熊谷理機工業社製,ROTARY DRYER,DR-200)にて乾燥し(乾燥温度:120℃,speed control:0.2)、大麦配合紙を得た(坪量:60g/m2 )。
【0070】
乾燥引張強さおよび引張伸びの測定
乾燥後の大麦配合紙について、全自動紙物性測定装置(熊谷理機工業社製,横型引張強度試験機,No.2000−C)を用いて、JIS P8113に準拠した方法にて乾燥引張強度(kN/m)および乾燥引張伸び(%)を測定した。測定結果を表5に表す。また、紙添加材(大麦)を配合しないL材パルプスラリーについても同様に抄造し、乾燥引張強度および乾燥引張伸びを測定した。さらに、得られた結果をもとに、大麦無配合紙の乾燥引張強度および乾燥引張伸びに対する大麦配合紙の乾燥引張強度および乾燥引張伸びの比を算出した。結果を表5に示す。
【0071】
【表5】
【0072】
表5に示すように、試料2の紙添加材(含水大麦,粒径:150μm超1mm以下)を配合した紙は、良好な引張強さおよび引張伸びを有することが示された。一方、試料14の紙添加材(乾燥大麦,粒径:150μm超1mm以下)を配合した紙は、抄紙工程においてワイヤーに大麦が付着し(3質量%配合紙)、さらには紙が穴だらけになり、引張強さまたは引張伸びを測定するためのサンプルが得られなかった(5〜15質量%配合紙)。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る紙添加材は、配合した紙の紙力を増強させることができ、かつ、抄紙工程において紙パルプから脱離しにくいものとなる。また、麦茶などの穀物飲料の製造残渣を用いることで、未利用資源の有効活用を図ることができる。さらに、本発明に係る紙は、抄造が容易であり、かつ紙力が増強されたものとなり、段ボール原紙などの包装用板紙として特に好適である。