(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
元画像および仮の所望画像における相互に対応する複数の座標から得られる複数の画像ブロック対の各々に対応する複数の点広がり関数を得るように構成されたPSF推定部であって、前記仮の所望画像は、前記元画像および仮の点広がり関数に基づいて得られる、PSF推定部と、
前記PSF推定部によって得られた前記複数の点広がり関数の中から前記元画像のブレを規定する候補の点広がり関数を選定するように構成されたPSF選択部と、
前記候補の点広がり関数を用いて前記元画像から最終的な画像を出力するように構成された出力装置と、
を備え、
前記最終的な画像におけるある点の像は、前記元画像におけるぶれた像に対応する、画像処理表示装置。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラで画像を撮像すると、CCD(Charge−Coupled Device)、あるいはCMOSの読み出し回路の特性や伝送路の特性により画像にノイズが加えられることがある。また、撮像時にフォーカスが合っていないこと(焦点外れ:out−of−focus)による画像のぼやけ(ブラー:blur)や、手振れ(camera shake)などによる画像のぼやけが発生する。このように撮像画像には、撮像画像固有の特性によるノイズに、撮影時の人為的な操作を起因とするぼやけが加わることにより、画像が劣化することになる。これらの「ぼやけ」のうち、撮影(露光)中におけるカメラの運動による画像のぼやけを「ブレ(motion blur)」と称し、焦点外れによるぼやけ(out−of−focus blur)と区別することにする。
【0003】
近年、特に高感度撮影の需要が増大していることにより、ぼやけによって劣化した画像(以下、「劣化画像」という)を元の画像(以下、「理想画像」という)にできるだけ近い画像に復元することが必要となる。高感度撮影に要求される、明るくノイズやぼやけのない画像を実現するために、大別して感度を高めるという考え方と、露光時間を長くするという考え方がある。
【0004】
しかしながら、感度を高めるとノイズも増幅されてしまう。そのため、信号がノイズに埋もれてしまい、ノイズが大半を占める画像になることが多い。一方で露光時間を長くすることで、その場で生じる光を多く蓄積し、ノイズの少ない画像が得られる。この場合、信号がノイズで埋もれることはないが、手振れによって画像にブレが生じるという問題がある。
【0005】
そこで、従来、2通りの考え方で露光時間を長くする場合の対処法がとられていた。一
つは、レンズシフトやセンサシフトといった光学式手振れ補正である。他方は、得られた画像からブレの方向/大きさを求め、そこから信号処理によって画像を復元するという方法(信号処理による復元方法)である。信号処理による復元方法は、例えば特許文献1、特許文献2、非特許文献1〜5などに開示されている。
【0006】
手振れによって理想画像から劣化画像へと画像が劣化する現象は、以下のようにモデル化することができる。劣化画像における各画素の輝度を表す関数は、理想画像における各画素の輝度を表す関数と、画像撮影時の手振れによる画像のブレを表す点広がり関数(PSF; Point Spread Function)との畳み込み(convolut
ion)によって得られると考えられる。そして得られた劣化画像を理想画像へと復元するためには、劣化画像とPSFとの逆畳み込み(deconvolution)を行えばよい。畳み込み演算は周波数空間において乗算になるため、周波数空間において劣化画像をPSFで除算することにより、復元画像を得ることができる。
【0007】
このようにPSFが既知の場合、ノイズの影響を無視すれば、上記の逆畳み込み演算によって比較的容易に復元画像を得ることができる。一方、PSFが未知の場合、復元画像を得るためには劣化画像からPSFを推定する必要がある。PSFの推定には、例えば非特許文献1に開示されたスパースコーディングによる方法などが知られている。
【0008】
この方法では、まず手動で与えた初期PSFと劣化画像とから、第1の復元結果を得る。続いて第1の復元結果と劣化画像とを用いてより真のPSFに近いと考えられるPSFを推定し、推定されたPSFで初期PSFを修正する。修正されたPSFを用いて劣化画像から第2の復元結果を得る。以降、第(N−1)のPSFと劣化画像とから第Nの復元画像を得て、第Nの復元画像と劣化画像とから第NのPSFを推定する、という操作を繰り返すことにより、PSFの推定と劣化画像の復元を同時に行っていく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
暗い環境で十分な光量を集めるために露光時間を長くすると手振れが発生し易くなる。
そのような暗い環境において光学式手振れ補正によってブレに対応するためには、レンズやセンサの稼動範囲を大きくする必要がある。しかし、稼動範囲が大きくなるとレンズ等の移動の際に時間遅れが生じるという問題点がある。また、稼動範囲を大きくすることには物理的な限界がある。よって、光学式手振れ補正には限界がある。
【0012】
一方、従来の信号処理による復元方法によれば、画像全体の情報に基づいてPSFの推定と画像の復元が行われるため、処理に必要な計算量とメモリ量が多くなるという問題がある。一般に、画像を構成する画素の数をnとすれば、必要な計算量とメモリ量はO(n^2)で表される。従って、画素数の多い画像を復元するためには多くの計算リソースが必要となる。また、画像にノイズや被写体ブレなどが含まれている場合、画像全体を用いて復元処理を行うと、PSFの推定に誤差が生じ、真のPSFに近いPSFを推定することが困難となる。
【0013】
特許文献3において、画像に含まれる主要な被写体を抽出するための演算量を削減させる技術が開示されている。この技術によれば、画像を複数の部分領域に分割し、部分領域に主要被写体が含まれているか否かによって処理が切り替えられる。しかし、特許文献3に開示された技術を画像の復元に適用することはできない。ブレを含む画像を復元するためには、画像のどの領域についても同一の復元処理を行う必要がある。すなわち、画像を複数の部分領域に分割した場合であっても、同一のPSFによる復元処理が必要である。
【0014】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものである。劣化画像および復元画像のサイズがPSFのサイズに比べて大きいことが圧倒的に多いことに着目し、推定に最低限必要なデータを用いることにより、精度を保持したまま計算量の削減を可能にする。本発明の目的は、復元の精度を保持しながら、PSF推定のための計算量を削減する画像処理装置、方法、ならびに当該画像処理装置を備えた撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある態様に係る画像処理装置は、入力された劣化画像から前記劣化画像よりもブレの少ない復元画像を生成する画像処理装置であって、仮の復元画像を設定する初期画像設定部と、各々が前記劣化画像および前記仮の復元画像において同一座標に位置する2つの画像ブロックからなる複数の画像ブロック対を前記劣化画像および前記仮の復元画像から選定する画像ブロック選定部と、前記複数の画像ブロック対の各々に対応する複数の点広がり関数を得るPSF推定部と、前記PSF推定部で得られた前記複数の点広がり関数の中から前記劣化画像のブレを規定する候補の点広がり関数を選定するPSF選択部と、前記候補の点広がり関数を用いて前記劣化画像から復元画像を生成する画像復元部と、を備えている。
【0016】
ある実施形態において、本発明の画像処理装置は、仮の点広がり関数を設定する初期PSF設定部を備え、前記初期画像設定部は、前記仮の点広がり関数を用いて前記劣化画像から前記仮の復元画像を生成する。
【0017】
ある実施形態において、前記劣化画像および前記仮の復元画像の横方向をX方向、縦方向をY方向とするとき、前記複数の画像ブロック対に含まれる各画像ブロックのX方向サイズおよびY方向サイズの各々は、前記仮の点広がり関数が有限値をとる画素からなる領域のX方向サイズおよびY方向サイズのうち大きい方に等しい。
【0018】
ある実施形態において、前記画像ブロック選定部は、前記劣化画像および前記仮の復元画像から前記複数の画像ブロック対をランダムに選定する。
【0019】
ある実施形態において、n=1,2,・・・N(Nは2以上の整数)として、前記仮の復元画像を第nの仮の復元画像とし、前記復元画像を第nの復元画像とするとき、前記第
nの復元画像が生成された後において、前記初期画像設定部は、前記第nの復元画像によって前記第nの仮の復元画像を第(n+1)の仮の復元画像として更新し、前記画像ブロック選定部は、前記複数の画像ブロック対とは少なくとも一部が異なる複数の画像ブロック対を前記劣化画像および前記第(n+1)の仮の復元画像から選定することにより、前記候補の点広がり関数および前記復元画像の更新を繰り返す。
【0020】
ある実施形態において、前記画像ブロック選定部は、前記複数の画像ブロック対の選定とは独立に、複数の画像ブロックを第1画像ブロック群として前記劣化画像から選定し、前記PSF推定部によって得られる前記複数の点広がり関数のうち、k番目の点広がり関数をf
k(kは1以上の整数)と表し、前記第1画像ブロック群に含まれるb番目の画像
ブロックにおける輝度分布を示す関数をi
b(bは1以上の整数)と表し、i
bとf
kとの
間の逆畳み込み演算によって得られる関数をs
kbと表すとき、前記PSF選択部は、s
kbとf
kとの間の畳み込み演算によって得られる関数(s
kb*f
k)とi
bとの間の差に基づ
いて前記候補の点広がり関数を選定する。
【0021】
ある実施形態において、前記PSF選択部は、前記複数の点広がり関数の各々について、(s
kb*f
k)とi
bとの間の二乗誤差が所定の閾値以下の値となる画像ブロックの数を算出し、前記画像ブロックの数が最大となる点広がり関数を前記候補の点広がり関数として選定する。
【0022】
ある実施形態において、前記画像ブロック選定部は、前記複数の画像ブロック対の選定とは独立に、複数の画像ブロックを第1画像ブロック群として前記劣化画像から選定し、各々が前記第1画像ブロック群に含まれる各画像ブロックと同一座標に位置する複数の画像ブロックを第2画像ブロック群として前記仮の復元画像から選定し、前記PSF推定部によって得られる前記複数の点広がり関数のうち、k番目の点広がり関数をf
k(kは1
以上の整数)と表し、前記第1画像ブロック群に含まれるb番目の画像ブロックにおける輝度分布を示す関数をi
b(bは1以上の整数)と表し、前記第2画像ブロック群に含ま
れる前記i
bに対応する画像ブロックにおける輝度分布を示す関数をs
b(bは1以上の整数)と表すとき、前記PSF選択部は、s
bとf
kとの間の畳み込み演算によって得られる関数(s
b*f
k)とi
bとの間の差に基づいて前記候補の点広がり関数を選定する。
【0023】
ある実施形態において、前記PSF選択部は、前記複数の点広がり関数の各々について、(s
b*f
k)とi
bとの間の二乗誤差が所定の閾値以下の値となる画像ブロックの数を算出し、前記画像ブロックの数が最大となる点広がり関数を前記候補の点広がり関数として選定する。
【0024】
ある実施形態において、前記画像ブロック選定部は、前記第1画像ブロック群をランダムに前記劣化画像から選定する。
【0025】
ある実施形態において、前記PSF選択部は、前記PSF推定部によって得られた前記複数の点広がり関数を互いに類似する複数の点広がり関数から構成される複数のクラスタに分け、前記複数のクラスタの各々における平均的な点広がり関数を代表PSFとしてクラスタごとに決定し、決定した複数の代表PSFの中から候補の代表PSFを選定し、前記候補の代表PSFに対応するクラスタの中から前記候補の点広がり関数を選定する。
【0026】
本発明の撮像装置は、本発明の画像処理装置を備える撮像装置であって、固体撮像素子を備え、前記固体撮像素子によって取得された信号を前記劣化画像として前記画像処理装置に入力する。
【0027】
本発明のある態様に係る画像処理方法は、入力された劣化画像から前記劣化画像よりもブレの少ない復元画像を生成する方法であって、n=1,2,・・・N(Nは2以上の整数)とするとき、第nの復元画像を設定するステップ(A)と、各々が前記劣化画像および前記第nの復元画像において同一座標に位置する2つの画像ブロックからなる複数の画像ブロック対を前記劣化画像および前記第nの復元画像から選定するステップ(B)と、前記複数の画像ブロック対の各々に対応する複数の点広がり関数を得るステップ(C)と、前記PSF推定部で得られた前記複数の点広がり関数の中から前記劣化画像のブレを規定する候補の点広がり関数を選定するステップ(D)と、前記候補の点広がり関数を用いて前記劣化画像から第n+1の復元画像を生成するステップ(E)と、を含み、前記ステップ(A)から前記ステップ(E)までの各ステップをn=1から開始して第N+1の復元画像が生成されるまで繰り返すことにより、前記劣化画像を復元する。
【0028】
本発明のある態様に係るプログラムは、入力された劣化画像から復元処理を繰り返すことによって前記劣化画像よりもブレの少ない復元画像を生成する画像処理装置の動作を制御するプログラムであって、n=1,2,・・・N(Nは2以上の整数)とするとき、第nの復元画像を設定するステップ(A)と、各々が前記劣化画像および前記第nの復元画像において同一座標に位置する2つの画像ブロックからなる複数の画像ブロック対を前記劣化画像および前記第nの復元画像から選定するステップ(B)と、前記複数の画像ブロック対の各々に対応する複数の点広がり関数を得るステップ(C)と、前記PSF推定部で得られた前記複数の点広がり関数の中から前記劣化画像のブレを規定する候補の点広がり関数を選定するステップ(D)と、前記候補の点広がり関数を用いて前記劣化画像から第n+1の復元画像を生成するステップ(E)とを含み、前記ステップ(A)から前記ステップ(E)までの各ステップをn=1から開始して第N+1の復元画像が生成されるまで繰り返す処理を前記画像処理装置に実行させる。
【0029】
なお、本発明のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されていてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、PSF推定によって劣化画像を復元するシステムにおいて、計算量およびメモリ量の削減が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の基本的原理を説明する。
【0033】
図1は、本明細書における画像の構成を模式的に示す図である。本明細書では、劣化画像を表す関数をi(x,y)で表すことにする。座標(x,y)は、画像における画素の位置を示す二次元座標である。画像130が例えば行列状に配列されたM×N個の画素135からなる場合において、xおよびyが、それぞれ、0≦x≦M−1、0≦y≦N−1の関係を満足する整数であるとすると、画像を構成する個々の画素の位置を座標(x,y)によって特定することができる。ここでは、座標の原点(0,0)を画像の左上隅に置き、X軸は垂直方向、Y軸は水平方向に延びるものとする。ただし、座標の取り方は任意である。i(x,y)は、劣化画像上の座標(x,y)における輝度を表すものとする。本明細書において、画像上の座標(x,y)における輝度を「画素値」と呼ぶことがある。
【0034】
以下の説明において、劣化画像i(x,y)は手振れによって発生するものとし、「ブレ」とは手振れによるぼやけを意味するものとする。ブレのない画像(理想画像)の輝度分布をs(x,y)とし、ブレを規定する点広がり関数(PSF)」をf(x,y)とする。f(x,y)は、露光中におけるカメラの軌跡に基づいて決定される。露光中にカメラが移動することにより、理想画像に含まれる1つの画素における像(点像)は、劣化画像においては複数の周辺画素に広がった像となる。
図2は、理想画像における点像が、劣化画像においてぶれた像になっている様子を例示している。このようなブレは、全ての点像において等しく生じる(shift−invaliant)とすると、f(x,y)は、ある点像からその点像を原点とする相対座標(x,y)に位置する周辺画素にどのような重みでその点像が広がるかを表す関数であると言える。本明細書において、f(x,y)は、−m≦x≦m、−n≦y≦n(m,nは1以上の整数)でのみ有限の値を持つ関数とする。言い換えれば、手振れによって理想画像における1つの点像にブレが生じる範囲は、(2m+1)×(2n+1)のサイズを有する矩形領域内に含まれるとする。i(x,y)、s(x,y)、f(x,y)について、ノイズの影響を無視すれば、以下の式1が成立する。
【数1】
ここで、記号「*」は、畳み込み演算(コンボリューション)を示している。式1の右辺は、一般に、以下の式2で表される。
【数2】
f(x,y)が(2m+1)×(2n+1)個の画素からなる場合、上記の式2は、以下の式3で表すことができる。
【数3】
【0035】
ブレの点広がり関数f(x,y)が既知である場合、得られた劣化画像i(x,y)に対する逆畳み込み演算(デコンボリューション)により、ブレの無い画像s(x,y)を復元することができる。また、f(x,y)が既知でない場合は、画像からf(x,y)を推定した上でs(x,y)を求める必要がある。
【0036】
一般に、2つの関数の畳み込みのフーリエ変換は、各関数のフーリエ変換の積によって表される。このため、i(x,y)、s(x,y)、f(x,y)のフーリエ変換を、それぞれ、I(u,v)、S(u,v)、F(u,v)で表すと、式1から、以下の式4が導かれる。なお、(u,v)は、周波数空間における座標であり、それぞれ、実画像におけるx方向およびy方向の空間周波数に対応している。
【数4】
ここで、記号「・」は、周波数空間における関数の「積」を示している。式(4)を変形すると、以下の式5が得られる。
【数5】
【0037】
この式5は、劣化画像i(x,y)のフーリエ変換I(u,v)を、点広がり関数PSFであるf(x,y)のフーリエ変換F(u,v)で除算して得られた関数が、理想画像s(x,y)のフーリエ変換S(u,v)に相当することを示している。すなわち、i(x,y)およびf(x,y)が求まれば、S(u,v)を決定できる。I(u,v)は、劣化画像i(x,y)をフーリエ変換したものであるため、手振れの点広がり関数PSFであるf(x,y)が求まれば、信号処理によって劣化画像から画像を復元する(真の画像に近づける)ことが可能になる。
【0038】
本発明では、点広がり関数PSFであるf(x,y)は、劣化画像と復元過程の画像(仮の復元画像)とを用いて決定される。f(x,y)の決定の過程で、劣化画像および仮の復元画像から複数の画像ブロック対が抽出され、画像ブロック対ごとにPSFが推定される。これらのPSFは公知のblind−deconvolution手法によって求められる。画像ブロック対によってはノイズや被写体ブレなどが含まれることに起因して、真のPSFとは大きく異なるPSFが推定され得る。従って、推定される各PSFは画像ブロック対ごとに異なる関数となり得る。これらのPSFの中から、真のPSFに近いと考えられるPSFが候補PSFとして選定される。候補PSFの選定には、例えばRANSAC(Random Sample Consensus)に基づく方法が用いられる。この方法によれば、PSFごとに、PSFと仮の復元画像との畳み込みによって得られる画像が、どの程度劣化画像に近いかが判定される。判定の結果、誤差が大きくなるPSFは排除され、誤差が小さくなるPSFが候補PSFとして選定される。そのため、ノイズや被写体ブレなどを含む画像ブロック対から推定されたPSFは排除され、真のPSFに近いPSFが候補PSFとして選定される。選定された候補PSFと劣化画像とから、逆畳み込みによって復元画像が生成される。
【0039】
このように、画像全体ではなく、画像の一部である画像ブロック対ごとにPSFの推定が行われるため、復元に要する処理量およびメモリ量を削減することができる。また、局所的なノイズや被写体ブレなどの影響を受けずに真のPSFに近いPSFを選定することができる。
【0040】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。以下の説明において、同一の要素には同一の符号を付している。
【0041】
(実施形態1)
図3は、本発明の第1の実施形態における画像処理装置200の概略構成を示す図である。本実施形態の画像処理装置200は、入力された劣化画像100から復元処理を繰り返すことによって理想画像に近い復元画像120を生成する。画像処理装置200は、入力された劣化画像100に基づいて信号処理を行う画像処理部220と、処理の過程で生成される各種のデータが格納されるメモリ240を備えている。
【0042】
劣化画像100は、デジタルスチルカメラなどの撮像装置で撮影された画像のデータであり、手振れによるブレを含んでいる。画像処理部220は、劣化画像100の復元処理を実行するとともに、色調補正、解像度変更、データ圧縮などの各種信号処理も行う。画像処理部220は、公知のデジタル信号処理プロセッサ(DSP)などのハードウェアと、画像処理を実行するためのソフトウェアとの組み合わせによって好適に実現される。メモリ240は、DRAMなどによって構成される。メモリ240は、劣化画像100を記録するとともに、画像処理部220によって各種の画像処理を受けた画像データや、圧縮された画像データなどを一時的に記録する。画像処理部220によって最終的に生成された復元画像120は、不図示の通信装置を介して、無線又は有線で他の装置(不図示)に送信され得る。
【0043】
以下、
図4を参照しながら、画像処理部220の構成を説明する。
【0044】
画像処理部220は、画像入力部250と、PSF決定部260と、復元部270とを備える。画像入力部250は、仮のPSFを設定する初期PSF設定部222と、仮のPSFを用いて劣化画像100から仮の復元画像を生成する初期画像設定部224とを有している。PSF決定部260は、劣化画像および仮の復元画像から複数の画像ブロック対を抽出する画像ブロック選定部226と、各画像ブロック対からPSFを推定するPSF推定部228と、推定された複数のPSFの中から候補PSFを選定するPSF選択部230とを有している。復元部270は、選定された候補PSFを用いて劣化画像100から復元画像を生成する画像復元部232と、復元処理が収束しているか否かを判定し、収束していると判定した場合、復元結果を出力する収束判定部234とを有している。
【0045】
以下、各構成要素をより詳細に説明する。
【0046】
初期PSF設定部222は、画像復元処理に必要な仮のPSFを設定する。仮のPSFは、例えば劣化画像100を撮影した撮像装置に搭載されたジャイロスコープや加速度センサなどの検出器によって検出された撮影時のカメラの軌跡を示すデータに基づいて設定される。そのようなデータは、例えばメモリ240や不図示の記録媒体などに格納されており、初期PSF設定部222によって読み込まれる。仮のPSFは、これらの検出器によって検出されたデータによらず、使用者によって手動で入力されてもよい。画像処理に要する時間を短縮するという観点から、仮のPSFは真のPSFに近いことが好ましいが、真のPSFから大きくずれていたとしても後述の処理によって復元は可能である。
【0047】
初期画像設定部224は、メモリ240や不図示の記録媒体などに格納された劣化画像100を取得するとともに、後述のPSF推定処理に必要な仮の復元画像を設定する。第1サイクル目の処理においては、仮の復元画像は仮のPSFおよび劣化画像100から生成される。第2サイクル目以降の処理においては、1サイクル前の処理で復元された画像が仮の復元画像として設定される。仮のPSFを用いて劣化画像100を復元する方法としては、公知のウィーナーフィルタ法やリチャードソン・ルーシー(RL)法などのnon−blind deconvolution手法を用いることができる。また、非特許文献1などに開示されたblind−deconvolution手法を用いることも可能である。仮の復元画像は、第1サイクル目の処理において、初期画像設定部224によって生成されてもよいし、他の機器によって生成され、メモリ240や不図示の記録媒体
に予め格納されていてもよい。
【0048】
画像ブロック選定部226は、劣化画像100および仮の復元画像の各々から、互いに同一座標に位置する2つの画像ブロックの対をランダムに複数抽出する。画像ブロックのサイズは、仮のPSFや推定されるPSFのサイズよりも大きいサイズに設定される。本実施形態では、画像ブロックのX方向サイズおよびY方向サイズは、仮のPSFまたは前回のステップで推定されたPSFのX方向サイズおよびY方向サイズのうち大きい方に合わせて設定されるものとする。例えば、劣化画像のサイズが1000×1000画素であるとして、仮のPSFまたは推定されたPSFの画素値が有限の値(0よりも大きい値)をとる画素が、50×100画素の中に全て含まれている場合においては、100×100画素の矩形領域をもつ画像ブロックが抽出される。なお、画像ブロックがあまりにも小さいと、ブレを判別し易いエッジ部分(輝度が空間的に大きく変化する部分)を含まない画像ブロックの割合が大きくなる。そのような画像ブロックでは、輝度の変化がブレによるものなのか、テクスチャ(模様)なのかが判断できなくなるため、真のPSFに近いPSFを推定することが困難となる。従って、PSFのサイズが小さすぎる場合(例えば30×30画素以下の場合)、画像ブロックのサイズを例えばPSFのサイズの3〜5倍以上に設定することが好ましい。なお、本実施形態では各画像ブロックは同一のサイズを有しているが、画像ブロックごとにサイズが異なっていても処理は可能である。
【0049】
画像ブロックの数は多いほど真のPSFに近いPSFを推定できる確率が高くなるが、必要な計算量およびメモリ量も増大する。抽出される画像ブロック対の数は、計算リソースに応じて任意に設定され得る。本実施形態では、一例として(劣化画像の全画素数)/(1つの画像ブロックの画素数)個の画像ブロック対が抽出されるものとする。なお、画像ブロック対はランダムに選定されるとしたが、所定の基準に基づいて選定されてもよい。例えば、後述のPSF推定部228において真のPSFに近くないPSFを推定する画像ブロックがわかるため、2サイクル目以降の処理ではそのようなブロックの近傍を除いてランダムに選定するような制御を行ってもよい。真のPSFに近いPSFを選定するためには、画像ブロック対は、特にエッジを含む箇所から選定されることが好ましい。具体的には、公知のソーベルフィルタやプリューウィットフィルタなどを用いて各画像ブロックのエッジを算出し、算出したエッジ強度に基づいて画像ブロック対を選定してもよい。例えば、ランダムに選ばれた複数の画像ブロックの中から、エッジ強度が一定値以上の画素を50%以上含む画像ブロックのみを選定してもよい。
【0050】
画像ブロック選定部226はまた、PSFの評価用に複数の画像ブロックを劣化画像100から抽出する。これらの画像ブロック(劣化画像ブロック)は、後述するPSF選択部230において複数のPSFの中から候補PSFを選定するために用いられる。これらの劣化画像ブロックは、上記のPSF推定用の画像ブロック対とは独立に抽出され得る。なお、計算量やメモリ量を低減させる観点から、上記のPSF推定用に選定された画像ブロックを流用することも可能である。後述するPSF選択部230における評価を効果的に行うため、これらの評価用の画像ブロックのサイズおよび選定箇所は、上記の画像ブロック対の選定時のものとは異なっていることが好ましい。ただし、同一であっても処理は可能である。なお、劣化画像ブロックはランダムに選定され得るし、上記の画像ブロック対と同様、所定の基準に基づいて選定されてもよい。また、特にエッジを含む箇所から選定されることが好ましい。劣化画像ブロックの数は、上記の画像ブロック対の数と同様、計算リソースに応じて任意に設定され得る。
【0051】
PSF推定部228は、画像ブロック選定部226によって選定された複数の画像ブロック対の各々に基づいてPSFを推定する。推定方法としては、公知のblind-de
convolution法を用いることができる。例えば非特許文献1に開示されたスパースコーディングによってPSFを推定することが可能である。
【0052】
PSF選択部230は、PSF推定部228で推定された複数のPSFの中から真のPSFに近いと考えられるPSFを候補PSFとして選定する。候補PSFの選定についての詳細は後述する。
【0053】
画像復元部232は、選定された候補PSFを用いて劣化画像100を復元する。ここでの復元処理は、初期画像設定部224における復元処理と同様、公知の復元方法によって実現される。なお、本実施形態では、画像復元部232と初期画像設定部224とを異なる機能ブロックとしているが、これらの機能を1つの機能部が実現する構成であってもよい。
【0054】
収束判定部234は、画像復元部232が復元した画像と仮の復元画像とを比較して変化が所定の閾値よりも小さい場合、復元処理が収束したと判断し、その画像を復元画像120として出力する。変化が閾値以上である場合、その画像は初期画像設定部224に入力され、新たな仮の復元画像として設定される。
【0055】
図4に示される構成は、画像処理部220の機能ブロックの一例であり、画像処理部220は、他の機能ブロックに分割され得る。また、各機能ブロックは、個別のハードウェアによって実現されてもよいし、公知のハードウェアに上記処理を実行させるソフトウェアを組み込むことによっても好適に実現され得る。
【0056】
次に、
図5を参照しながら復元処理の流れを説明する。
【0057】
まず、初期画像設定部224は、復元対象の劣化画像100をメモリ240などから取得する(S502)。次に、初期PSF設定部222は、初期PSFをメモリ240などから取得する(S504)。取得された劣化画像100と初期PSFとを用いて、初期画像設定部224は仮の復元画像を生成する(S506)。なお、初期PSFの設定と劣化画像の取得の順序は互いに入れ替わっていてもよいし、同時であってもよい。
【0058】
次に、画像ブロック選定部226は、劣化画像100と仮の復元画像とから複数の画像ブロック対を選定する(S508)。PSF推定部は、推定された複数の画像ブロック対の各々からPSFを推定する(S510)。続いてPSF設定部230は、推定されたPSFの中から真のPSFに近いと考えられるPSFを選定し、それを候補PSFとして設定する(S512)。
【0059】
以下、
図6および
図7を参照しながら画像ブロックの選定(S508)、各画像ブロックにおけるPSFの推定(S510)、および候補PSFの選定(S512)の詳細を説明する。
【0060】
図6は、画像ブロックの選定と各画像ブロックにおけるPSFの推定の様子を模式的に表す図である。画像ブロック選定部226は、劣化画像と仮の復元画像とから複数の画像ブロック対を選定する。図示されるように、選定数をK(Kは2以上の整数)とし、劣化画像から選定されるk番目の画像ブロックを表す関数をi
k(k=1,2,・・・K)、
仮の復元画像から選定されるk番目の画像ブロックを表す関数をs
k(k=1,2,・・
・K)と表す。i
kとs
kとから公知のPSF推定方法を用いてPSFであるf
kが推定さ
れる。その結果、K個の画像ブロック対からK個のPSF(f
1,f
2,・・・,f
K)が
得られる。
【0061】
ここでは一例として、非特許文献1に開示された手法に基づくPSF推定手法を説明する。PSFであるf
kは、以下の式6の右辺を最小化するfkを求めることにより決定さ
れる(f
kの最適化)。
【数6】
【0062】
式6の右辺における第1項は、復元画像ブロックs
kとPSFであるf
kとの畳み込みが劣化画像ブロックi
kに近いか否かを示す評価基準を与える。変数w
kは手動で設定される「重み」である。Θは、どのような微分を画像に施すかを規定する演算子の集合である。具体的には、0回微分、1回微分(x、y方向それぞれ)、2回微分(x方向に2回、y方向に2回、xとy方向に1回ずつ)の合計6個の微分パラメータを持つ。d
*は、微分
演算子である。d
*を用いてΘを表現すると、Θ={d
0、d
x、d
y、d
xx、d
xy、d
yy}となる。d
*により、輝度情報とエッジ情報の両方を用いた処理を行うことが可能になり
、輝度だけでは得られない情報も得ることができる。式6の右辺における第2項は、f
k
の1ノルムである。この項は、スパースコーディングに基づく項である。f
kを表す行例
における大部分の要素が0(動きがない)であることから、この最適化項が用いられる。本実施形態では、非特許文献1と同様に「interior point method」による最適化を行い、全体最適化を実現できる。f
kの最適化の具体的な計算方法は、
非特許文献1に開示されている。
【0063】
次に、
図7を参照しながら候補PSFの選定(S512)の詳細を説明する。
【0064】
PSF推定部228によって画像ブロック対ごとにf
kが求められると、画像ブロック
選定部226は、劣化画像100から評価用の複数の画像ブロック(劣化画像ブロック)を選定する。
図7に示すように、劣化画像ブロックの選定数をB(Bは2以上の整数)とし、b番目の劣化画像ブロックを表す関数をi
b(b=1,2,・・・B)と表す。PS
F選択部230は、f
kと劣化画像ブロックi
bとの間で逆畳み込み演算を行うことにより、復元された画像ブロック(復元画像ブロック)を表す関数s
kbを得る。その結果、K個あるPSFの各々に対してB個の復元画像ブロックが生成される。PSF選択部230は、復元画像ブロックs
kbとf
kとの間でさらに畳み込みを行い、得られた結果(s
kb*f
k)と劣化画像ブロックi
bとの誤差に基づいて各PSFを評価する。
【0065】
以下、誤差に基づくPSFの評価方法を説明する。まず、1つの劣化画像ブロックにはJ個の画素が含まれるとし、劣化画像ブロックi
bにおけるj番目の画素値をi
bj(j=
1,2,・・・J)と表す。また、復元画像ブロックs
kbとf
kとの間の畳み込みによっ
て得られる画像におけるj番目の画素値を(s
kb*f
k)
j(j=1,2,・・・J)と表す。本実施形態では、(s
kb*f
k)とi
bとの間の二乗誤差をΔ
kbと定義し、このΔ
kbが所定の閾値t以下となる画像ブロックの数に基づいて候補PSFが選定されるものとする。例えば、以下の式7を満足する画像ブロックの数が最大となるf
kが候補PSFとして
選定される。
【数7】
【0066】
この評価方法は、RANSAC(Random Sample Consensus)
に基づいている。この評価方法によれば、複数の画像ブロック対から推定されたPSFのうち、ノイズや被写体ブレなどが含まれている画像ブロック対から推定されたPSFは誤差が大きくなるため排除される。ノイズや被写体ブレなどが比較的少ない画像ブロック対から推定されたPSFのいずれかが候補PSFとして選定されるため、画像にノイズや被写体ブレなどが含まれていても真のPSFに近いPSFを推定することができる。
【0067】
なお、本実施形態において候補PSFは、必ずしも式7を満足する画像ブロックの数が最大となるf
kである必要はない。例えば、式7を満足する画像ブロックの数が所定の閾
値よりも大きくなるf
kのうち、いずれか1つを選択し、それを候補PSFとしてもよい
。また、推定された複数のPSFのうちの1つが候補PSFとして選定されるとしたが、そのような選定の仕方に限られない。例えば、複数(例えば画像ブロック対の数の5%程度)のPSFのうちの一部を式7に基づいて選択し、それらの平均を候補PSFとしてもよい。
【0068】
候補PSFが選定されると、画像復元部232は、候補PSFを用いて劣化画像100を復元する(S514)。復元処理は、公知のリチャードソンルーシ(LR)法やウィーナフィルタ法などの公知の方法が用いられる。
【0069】
復元された画像は、収束判定部234によって仮の復元画像と比較され、復元処理が収束しているか否かが判定される(S518)。復元処理が収束したか否かの判定は、任意の基準に基づいて行われ得る。例えば、復元された画像と仮の復元画像との間の画素ごとの誤差の平均(画素値の差の絶対値/総画素数)が0.0001を満足するときに収束したと判定することができる。収束していると判定された場合は、復元された画像が最終的な復元画像120として出力される(S520)。収束していないと判定された場合は、復元された画像は初期画像設定部224で新たな仮の復元画像として設定され(S519)、S508からS518までの処理が繰り返される。
【0070】
以上のように、本実施形態における画像処理装置200は、入力された劣化画像100に基づいて繰り返し復元処理を行い、真の画像(理想画像)に近い復元画像120を出力する。復元の過程で、複数の画像ブロックが選定され、画像ブロックごとにPSFの推定および評価が行われ、候補PSFが選定される。サイズの小さい画像ブロックごとに計算が行われるため、本実施形態における画像処理装置200は、従来技術と比較して計算量とメモリ量の削減が可能となる。また、RANSACに基づいて候補PSFが選定されるため、局所的なノイズや被写体ブレなどの影響を受けずに真のPSFに近いPSFを選定することができる。
【0071】
以下、本実施形態の画像処理装置200における復元処理に要する演算量およびメモリ量が従来技術と比較してどの程度改善するかを説明する。画像の画素数をN、PSF推定に用いられる各画像ブロックに含まれる画素数をn、復元処理の繰り返し数をmとすると、従来技術における演算量O(N
2)に対して、本実施形態における演算量はO(m×n
2)と表される。一例として、N=10
6、n=10
4、m=10
2であるとすると、従来技
術を用いた場合に必要な演算量はO(10
12)であるが、本実施形態における演算量はO(10
10)となり、演算量は約1/100に低減する。一方、メモリ量については、復元演算に用いる一時的な記憶領域が、従来技術では概ねNに比例し、本実施形態では概ねnに比例するため、必要なメモリ量はn/Nに比例して小さくなる。N=10
6、n=10
4の場合、必要なメモリ量は約1/100に低減する。
【0072】
以上の説明において、画像処理装置200は単体の装置として記述したが、画像処理装置200は、様々な形態で実現され得る。例えば、CD−ROMやフラッシュメモリなどの記録媒体に記録され、または電気通信回線を通じて提供された上記の復元処理を実行可
能なプログラムを、任意のコンピュータに実行させることにより、画像処理装置200として機能させることができる。
【0073】
本明細書において、劣化画像の画素値i(x,y)や復元画像の画素値s(x、y)は、座標(x、y)における輝度を表すものとした。ここで「輝度」とは、いわゆる輝度信号の強度のみならず、RGBのいずれかの色成分の信号強度や、RGB各成分の信号強度の和などとして解釈してもよい。また、本実施形態の画像処理装置がX線カメラや赤外線カメラによって撮られた画像の復元処理に用いられる場合、「輝度」は、X線や赤外線の信号強度を表すものと解釈してもよい。
【0074】
(実施形態2)
次に、
図8を参照しながら本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態の画像処理装置は、実施形態1における画像処理装置と比較して、PSF選択部230における候補PSFの選定の方法が異なるだけであり、それ以外は同一である。そのため、実施形態1における画像処理装置と重複する点については説明を省略し、異なる点のみを説明する。
【0075】
本実施形態の画像処理装置と実施形態1における画像処理装置との違いは、
図5におけるS512において、評価用の画像ブロックが劣化画像だけでなく仮の復元画像からも抽出されることにある。
図5に示すS508でPSF推定部228が画像ブロック対ごとにf
k(k=1,2,・・・K)を求めると、画像ブロック選定部226は、劣化画像10
0および仮の復元画像から、互いに同一座標に位置する2つの画像ブロックからなる評価用の画像ブロック対を複数選定する。以下、評価用の画像ブロック対のうち、劣化画像から抽出されたものを「劣化画像ブロック」と呼び、仮の復元画像から抽出されたものを「復元画像ブロック」と呼ぶことにする。
【0076】
図8に示すように、評価用の画像ブロック対の選定数をB(Bは2以上の整数)とし、b番目の劣化画像ブロックを表す関数をi
b(b=1,2,・・・B)と表す。同様に、
b番目の復元画像ブロックを表す関数をs
b(b=1,2,・・・,B)と表す。PSF
選択部230は、f
kと復元画像ブロックs
bとの間で畳み込みを行い、得られた結果(s
b*f
k)と劣化画像ブロックi
bとの誤差に基づいて各PSFを評価する。
【0077】
本実施形態における誤差に基づくPSFの評価方法については、実施形態1における評価方法と同様である。劣化画像ブロックi
bにおけるj番目の画素値をi
bj(j=1,2
,・・・J)と表し、復元画像ブロックs
bとf
kとの間の畳み込みによって得られる画像におけるj番目の画素値を(s
b*f
k)j(j=1,2,・・・J)と表す。所定の閾値をtとして、以下の式8を満足する画像ブロックの数が最大となるf
kが候補PSFとし
て選定される。
【数8】
【0078】
この評価方法によっても、実施形態1における評価方法と同様に、ノイズや被写体ブレなどが含まれている画像ブロック対から推定されたPSFは排除される。ノイズや被写体ブレなどが比較的少ない画像ブロック対から推定されたPSFのみが候補PSFとして選定されるため、画像にノイズや被写体ブレなどが含まれていても真のPSFに近いPSFを推定することができる。
【0079】
本実施形態においても候補PSFは、必ずしも式8を満足する画像ブロックの数が最大
となるfkである必要はない。例えば、式8を満足する画像ブロックの数が所定の閾値よりも大きくなるfkのうち、いずれか1つを選択し、それを候補PSFとしてもよい。また、推定された複数のPSFのうちの1つが候補PSFとして選定されるとしたが、そのような選定の仕方に限られない。例えば、複数(例えば画像ブロック対の数の5%程度)のPSFのうちの一部を式7に基づいて選択し、それらの平均を候補PSFとしてもよい。
【0080】
(実施形態3)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態の画像処理装置は、実施形態1、2における画像処理装置と比較して、PSF選択部230による候補PSFの選定の方法が異なるだけであり、それ以外は実施形態1、2と同一である。そのため、実施形態1、2における画像処理装置と重複する点についての説明は省略し、異なる点を以下に説明する。
【0081】
本実施形態におけるPSF選択部230は、
図5に示すステップS512において、推定された複数のPSFの相互の類似の程度に基づいて複数のクラスタに分類した後、真のPSFに近いPSFが含まれていると想定されるクラスタの中から候補PSFを選定する。これにより、処理量をさらに削減することができる。
【0082】
図9は、本実施形態におけるPSF選択部230がステップS512において行う処理の流れを示すフローチャートである。PSF選択部230は、まず、複数のPSF(f
1
、f
2、・・・、f
K)を、それらの類似の程度に基づいて複数のクラスタに分類する(S601)。次に、クラスタごとに、そのクラスタにおける平均的なPSF(代表PSF)を算出する(S602)。続いて、算出した複数の代表PSFの中から真のPSFに最も近いと想定される代表PSFを選定する(S603)。最後に、選定された代表PSFに対応するクラスタの中から真のPSFに最も近いと想定されるPSFを候補PSFとして選定する(S604)。
【0083】
以下、各ステップにおける処理をより具体的に説明する。
【0084】
図10は、本実施形態における処理を模式的に表す概念図である。
図10(a)は、ステップS510において算出された複数のPSF(f
1、f
2、・・・、f
K)の例を表し
ている。PSF選択部230は、ステップS601において、
図10(b)に示すように、これらのPSFを複数のクラスタに分類する。
【0085】
複数のクラスタへの分類は、例えば以下の手順によって行われる。まず、複数のPSFから2つのPSFを
KC
2通りの組み合わせの中から選択する。続いて、選択した2つのPSFの差の絶対値(L1ノルム)Δfを算出する。選択した2つのPSFをf
k1およびf
k2と表し、それらを画像と考えたときのj番目の画素における輝度値をそれぞれ(f
k1)
j、(f
k2)
jと表すと、Δfは次の式9で表される。
【数9】
【0086】
PSF選択部230は、Δfが所定の閾値ftよりも小さい場合には2つのPSFを同じクラスタに分類し、Δfが閾値ft以上である場合には2つのPSFを異なるクラスタに分類する。以上の処理を任意の2つのPSFの組み合わせに対して行うことにより、複数のPSFを、それらの類似度に基づいて複数のクラスタに分類することができる。
【0087】
PSF選択部230は、ステップS602において、分類した複数のクラスタの各々から代表PSFを決定する。代表PSFは、各クラスタに属する全PSFの平均値をとることによって求められる。なお、平均値ではなく、中央値をとることによって代表PSFを求めてもよい。
図10(c)は、このようにして求めた代表PSF(f
s1、f
s2、・・・、f
sK)の例を表している。
【0088】
続くステップS603において、PSF選択部230は、複数の代表PSFの中から真のPSFに最も近いと想定される代表PSFを選定する。選定方法としては、実施形態1における式7または実施形態2における式8に基づいて行われる候補PSFの選定方法と同様の方法を用いることができる。
【0089】
続いて、ステップS604において、PSF選択部230は、選定した代表PSFに対応するクラスタに属する複数のPSFの中から真のPSFに最も近いと想定されるPSFを候補PSFとして選定する。候補PSFの選定方法は、実施形態1または2における方法を用いればよい。
【0090】
本実施形態によれば、PSF推定部228によって推定された全てのPSFについて式7または式8に示す判定を行うのではなく、真のPSFに近いと考えられるPSFのグループ(クラスタ)をまず特定した上で、そのようなクラスタに属する比較的少数のPSFについて式7または式8に示す判定を行う。クラスタへの分類に関する処理は差分演算であるため、畳み込み演算である式7、8の処理よりも計算量が少なくて済む。そのため、全体の処理に係る計算量を低減することができる。
【0091】
(実施形態4)
次に、
図11を参照しながら本発明の第4の実施形態を説明する。本実施形態は、実施形態1における画像処理装置を備える撮像装置に関するものである。そのため、実施形態1と重複する部分については説明を省略し、異なる点のみを説明する。
【0092】
図11は、本実施形態における撮像装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の撮像装置は、デジタル式の電子カメラであるが、本発明はこれに限定されない。本実施形態の撮像装置は、
図11に例示するように、撮像部300と、各種信号処理および画像の復元を行う画像処理装置200と、撮像によって取得した画像を表示する撮像表示部600と、画像のデータを記録する記録部400と、各部を制御するシステム制御部500とを備える。本実施形態の撮像装置が公知の撮像装置と異なる主な点は、画像処理装置200の動作である。
【0093】
本実施形態における撮像部300は、撮像面上に配列された複数の光感知セル(フォトダイオード)を備える固体撮像素子(イメージセンサ)310と、絞り機能を有するシャッタ315と、固体撮像素子310の撮像面上に像を形成するための撮影レンズ320とを有している。固体撮像素子310の典型例は、CCDまたはCMOSセンサである。撮影レンズ320は、公知の構成を有しており、現実には複数のレンズから構成されたレンズユニットであり得る。シャッタ315および撮影レンズ320は、不図示の機構によって駆動され、光学ズーミング、自動露光(AE:Auto Exposure),オートフォーカス(AF:Auto Focus)に必要な動作が実行される。
【0094】
更に、撮像部300は、固体撮像素子310を駆動する撮像素子駆動部330を備えている。撮像素子駆動部330は、例えばCCDドライバなどの半導体集積回路から構成され得る。撮像素子駆動部330は、固体撮像素子310を駆動することにより、固体撮像素子310からアナログ信号(光電変換信号)を読み出してデジタル信号に変換する。
【0095】
本実施形態における画像処理装置200は、画像処理部(イメージプロセッサ)220、メモリ240を備えている。画像処理装置200は、液晶表示パネルなどの表示部300、および、メモリカードなどの記録媒体400に接続されている。
【0096】
画像処理部220は、色調補正、解像度変更、データ圧縮などの各種信号処理を行うほか、本発明による劣化画像の復元処理を実行する。画像処理部220は、公知のデジタル信号処理プロセッサ(DSP)などハードウェアと、画像処理を実行するためのソフトウェアとの組合せによって好適に実現される。メモリ240は、DRAMなどによって構成される。このメモリ240は、撮像部300から得られた画像データを記録するとともに、画像処理部220によって各種の画像処理を受けた画像データや、圧縮された画像データを一時的に記録する。画像データは、アナログ信号に変換された後、表示部300によって表示され、あるいは、デジタル信号のまま記録媒体400に記録される。画像データは、不図示の通信装置を介して、無線または有線で他の装置(不図示)に送信されてもよい。
【0097】
上記の構成要素は、不図示の中央演算処理ユニット(CPU)およびフラッシュメモリを含むシステム制御部500によって制御される。なお、本実施形態の撮像装置は、光学ファインダ、電源(電池)、フラッシュライトなどの公知の構成要素を備え得るが、それらの説明は本発明の理解に特に必要でないため省略する。
【0098】
以上の構成はあくまでも一例であって、本実施形態の撮像装置は、画像処理装置200に固体撮像素子310で取得された劣化画像を入力できればどのような構成を有していてもよい。
【0099】
本実施形態の撮像装置を用いてユーザが被写体を撮影すると、撮像部300における固体撮像素子310は、撮像面に形成された像に応じた信号を取得する。画像処理装置200は、固体撮像素子310によって取得された信号を受け取る。こうして得られた画像は、式7の左辺にあるi(x、y)で表される劣化画像である。画像処理装置200における画像処理部220は、i(x、y)からs(x、y)を復元するための処理を行う。この復元処理の流れは、
図5に示す復元処理の流れと同一である。復元処理によって得られた復元画像s(x、y)は、表示部600によって表示される。
【0100】
本実施形態の撮像装置によれば、画像処理装置200は、固体撮像素子310によって取得された劣化画像に基づいて繰り返し復元処理を行い、真の画像(理想画像)に近い復元画像を出力する。復元の過程で、複数の画像ブロックが選定され、画像ブロックごとにPSFの推定および評価が行われ、候補PSFが選定される。サイズの小さい画像ブロックごとに計算が行われるため、本実施形態における撮像装置は、画像復元処理を行う従来の撮像装置と比較して高速な復元処理が可能となる。また、RANSACに基づく候補PSFの選定が行われるため、本実施形態の撮像装置は、撮影した画像に局所的なノイズや被写体ブレなどが含まれていても真の画像に近い復元画像を得ることが可能である。
【0101】
なお、本実施形態では画像処理装置として実施形態1の装置を利用したが、これに限るものではない。画像処理装置として実施形態2、3の装置を利用してもよいし、本発明の他の画像処理装置を用いてもよい。